5. 意外な一面
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ええと、まず私の母は植物が好きで、随分前から父が家で新しい魔法薬を調合したりするのを手伝うために、温室で色々と育てていたの。ニコラスがとっても植物に詳しいから、母は自分の知識に加えて彼に教わりながら手入れをしていたみたい。そうしたらだんだん種類が増えていって、気が付いたら父用のものだけじゃなくて、外のお客様から少量多品種の植栽依頼や、品種改良なんかも受けるようになったそうなの。今では母がそういったご依頼を捌いて経営しつつ、ニコラスと分担して植物を育てているわ。ニコラスの方は、父の務め先の魔法薬メーカーに植栽の講師をしに行ったりもしているわ。」
フォーラの説明に納得したジョージが頷いて微笑んだ。
「成る程。フォーラの家は君のお父さん以外にも、みんなで協力して仕事を頑張ってるんだな。素敵じゃないか」
するとフォーラはその言葉になんだか嬉しくなって、彼女自身も自然と口角を上げて話しを続けた。
「そうなの。うちは、父様は勿論だけど、母様や他にもお家を手伝ってくれている人たちが支え合って暮らしているの。私も本当に沢山のことをみんなから学んで……。あっでも、薬草の育て方は母様に教わったりもしたけれど、十分には身に付かなくて。育てるのには当然何日も掛かるし、早朝だったり真夜中にしか作業できない植物も多かったから。父様の魔法薬はそばでよく見ていて頭に入っている物も多いのだけど。だから母様からは薬草のことより、お菓子の作り方をよく教わったわ。母様はスイーツ以外の料理が苦手で、うちは屋敷しもべ妖精がいないから、メイドによく―――」
そこまで話して、フォーラは双子の前で両親のことを普段どおり『父様』『母様』と呼んでいることにハッとしたし、薬草のことから脱線して自分の家の話を沢山してしまっていることにも気が付いた。そのため彼女はじわじわと頬が熱くなっていくのを避けられなかった。そして、自分は実家に居るのが辛くてここに身を置かせてもらっている筈なのに、その家のことを楽しげに話していることにも幾らか動揺した。
「フォーラ?どうした?」フレッドに声を掛けられ、彼女は赤い顔のまま慌てて言葉を紡いだ。
「ご、ごめんなさい。私……随分落ち着きがなくて。」
双子は顔を見合わせると互いに笑顔で彼女をフォローした。
「いいや、構わないさ。俺は君の話をもっと聞いていたいけど」そのように言うジョージに続いて、フレッドも口を開いた。
「フォーラがこんなに元気に喋るなんて珍しいな。俺も興味あるね」
二人してそんな風に話すものだから、フォーラは彼らに目を向けた後で余計に視線をうろつかせ、口を噤んだまま何度か首を横に振った。焦っている彼女には二人の笑顔やその様子が誰かを揶揄う時と同じに見えたのだ。彼女はそこで家族の話題を切り上げ、悪戯用品の話に引き戻した。
「うちの話はもういいの!その、聞いてくれてありがとう。それでええと……そう、この珍しい薬草のことだけど、もし良かったら私から」
そこまで言いかけてフォーラは再び言葉を止めてしまった。薬草を手に入れようとするならば家族に了承を得なければならない。つまり面と向かって親と話をするということだ。先程の自分は家族のことを無意識のうちに楽しげに双子に話していて、これには自分でも驚いてしまったが、勿論家族とのわだかまりが心の中から消えたわけではない。自分の血の秘密を何も知らなかった頃の日々を思い出して、少し舞い上がってしまっただけのことだ。となると現状の距離を保った状態で薬草の入手を急ぐなら、今すぐ両親に手紙でも出せば目当ての品を届けてくれるに違いない。しかしそうしようにも、結局今のフォーラはあまりにも心の整理ができていなかった。
そのように思考を巡らせていたフォーラが黙っていたのは、様子のおかしさを気取られなさそうなほんの一息の間だけだった。そして彼女が何と言葉を続けるべきか考え付かないまま兎に角声を発しようと口を開きかけた時、不意にジョージが割って入った。
「ああ、急がなくていいんだ。フォーラが家に帰ったら『ついで』でいいから、その時にでもご家族に相談してもらえると嬉しいんだけどな。もちろん計画のことは内緒で。お礼も弾むからさ」
そう言ってウインクを飛ばすジョージに、フォーラは幾らかホッとした表情を覗かせていた。自分が初めてこの館に来た時と同じように、今回も彼は気まずい話題から自分を助けてくれたのだ。
すると今度はフレッドが別の羊皮紙を呼び寄せながら話を移した。
「それじゃ、『気絶キャンディ』は薬草の入手結果が分かるまで待機だ。その間に他のやつも片付けちまわないといけないぞ」
今度はフレッドが先程のジョージが瞑った片目と逆側でウインクをしてフォーラを見た。双子の仕草が左右対称に揃っているのが可笑しくて、彼女はクスクス笑いつつも頷いた。だが彼女としては、本当は二人が自分の抱える家族とのわだかまりを忘れたふりをしてくれたことが何よりも嬉しかったのだった。
その後、フォーラは双子と一緒に二つの悪戯用品について確認した。手順の書かれた羊皮紙に目を通したり、実際に使っているところを見せてもらったりもした。その内の一つの、人間サイズのカナリアに一瞬変身した後にすぐ羽が抜け落ちて元に戻る『カナリアクリーム』の時は、双子が希望する魔法薬での改善ではなく、変身術を使った方法をフォーラから提案した。彼らがそれを試してみると思いの外ピッタリはまり、材料代が浮くということで二人とも大層喜んだ。
「四年生の時に習った術がこんな風に使えるとは思わなかったな」
「フォーラは変身術が得意って聞いてるけど、魔法薬の時みたいに色々試してるのか?」フレッドとジョージの感嘆の声に、フォーラはほんの少し照れを隠すように頷いた。
「ええ、どちらかというと私は変身術の方が好きで頑張っているの。魔法薬は授業でしか薬を扱えないけれど、変身術ならいつでも練習できるから沢山試しているわ。」
双子はフォーラが普段具体的にどんな練習をしているのか尋ねなくとも、先程のカナリアクリームを改良した時の発想から大体の想像がついていた。そして彼女の話を聞いているとやはり予想どおりだった。彼女は授業で術を一つ習う毎に、変身対象物や変身後のパターンを幾つも変えてその術を試していて、これまで学んだことをより一層上手に使えるように、引き出しを沢山持つ努力をしていたのだった。
ハーマイオニーも変身術が得意だが、彼女の場合は次学年分の勉強も一人である程度進めてしまっている。逆にフォーラはそれをしていないが、変身術に限っては毎年学年一位を取っている。その理由がフォーラの創造センスと探究心に現れているのだと双子は思った。ところがそれが随分特別なのだとフォーラ本人はあまり自覚していない様子だった。するとフレッドが発言した。
「フォーラは好きなことに随分のめり込むタイプだったんだな。だからたった数ヶ月でアニメーガスになれたのかもしれない。それに今日だってシリウスや俺たちの前で大活躍だ」
フォーラは確かに今言われたとおり、自分は普段から興味を持ったことに集中できている方だと思った。そして彼の話から今日の一連の出来事を自然と振り返った時、度々自身の脳裏に両親の顔が浮かんでいたことも記憶に新しかった。
(父様も母様も、自分の好きなことに一生懸命だわ)
そして今度はジョージが続いた。
「それから、フォーラは教わったことをきちんと覚えて、自分で手探りしてものにするのが好きだってことも分かった。この間のケーキのことも、魔法薬学も変身術も全部含めてだ。この部屋に君みたいな人を呼べて本当に良かったよ。どうもありがとう」
「いいえ、そんな。私はたいしたことは何も……。」
(確かにジョージの言うとおりだわ。母様にはケーキ作りを、父様からは魔法薬学を、その他のことだって沢山教わったわ。そして二人とも自分で改良したり、新しく作って試したりして本当に楽しそうで。私も学校で興味のあることを手探りするのはとっても楽しくて……)
そこまで考えた時、階下のホールが騒がしくなった。それと同時にシリウスの母親の肖像画が叫び、誰かがそれを鎮めようとする声も聞こえてきた。三人はハッと部屋の扉の方を振り返った後で互いに顔を見合わせ、誰からでもなく扉の外へ出た。揃って通路の手摺から階下に顔を覗かせると、一つ下の階で同じように真下のホールを覗くロン、ハーマイオニー、ジニーの後頭部が見えた。そして問題のホールでは何人かの大人たちがバタバタと忙しく食堂に流れていき、先程の女主人の肖像画が叫んだ原因が来客のせいだと分かった。
そしてこちらの上階へ繋がる階段からモリーが急ぎ足で上がって来るのが見え、ロンたちもそれに気付いて足早に彼女に近付いた。フォーラと双子も同じく彼女の元へ向かった。
「ママ、どうしたの?みんな急に騒がしくなったけど」
緊張感と怒りの混ざった面持ちのモリーに、ジニーがそのように問い掛けたタイミングでフォーラたち三人が合流した。モリーが無理に落ち着きを保とうとするようなピリピリした声で返答し、そのあまりにも突然の知らせに、その場にいた誰もが驚かないわけがなかった。
「ハリーが、自宅の近くで吸魂鬼 に襲われたと連絡があったわ」
フォーラの説明に納得したジョージが頷いて微笑んだ。
「成る程。フォーラの家は君のお父さん以外にも、みんなで協力して仕事を頑張ってるんだな。素敵じゃないか」
するとフォーラはその言葉になんだか嬉しくなって、彼女自身も自然と口角を上げて話しを続けた。
「そうなの。うちは、父様は勿論だけど、母様や他にもお家を手伝ってくれている人たちが支え合って暮らしているの。私も本当に沢山のことをみんなから学んで……。あっでも、薬草の育て方は母様に教わったりもしたけれど、十分には身に付かなくて。育てるのには当然何日も掛かるし、早朝だったり真夜中にしか作業できない植物も多かったから。父様の魔法薬はそばでよく見ていて頭に入っている物も多いのだけど。だから母様からは薬草のことより、お菓子の作り方をよく教わったわ。母様はスイーツ以外の料理が苦手で、うちは屋敷しもべ妖精がいないから、メイドによく―――」
そこまで話して、フォーラは双子の前で両親のことを普段どおり『父様』『母様』と呼んでいることにハッとしたし、薬草のことから脱線して自分の家の話を沢山してしまっていることにも気が付いた。そのため彼女はじわじわと頬が熱くなっていくのを避けられなかった。そして、自分は実家に居るのが辛くてここに身を置かせてもらっている筈なのに、その家のことを楽しげに話していることにも幾らか動揺した。
「フォーラ?どうした?」フレッドに声を掛けられ、彼女は赤い顔のまま慌てて言葉を紡いだ。
「ご、ごめんなさい。私……随分落ち着きがなくて。」
双子は顔を見合わせると互いに笑顔で彼女をフォローした。
「いいや、構わないさ。俺は君の話をもっと聞いていたいけど」そのように言うジョージに続いて、フレッドも口を開いた。
「フォーラがこんなに元気に喋るなんて珍しいな。俺も興味あるね」
二人してそんな風に話すものだから、フォーラは彼らに目を向けた後で余計に視線をうろつかせ、口を噤んだまま何度か首を横に振った。焦っている彼女には二人の笑顔やその様子が誰かを揶揄う時と同じに見えたのだ。彼女はそこで家族の話題を切り上げ、悪戯用品の話に引き戻した。
「うちの話はもういいの!その、聞いてくれてありがとう。それでええと……そう、この珍しい薬草のことだけど、もし良かったら私から」
そこまで言いかけてフォーラは再び言葉を止めてしまった。薬草を手に入れようとするならば家族に了承を得なければならない。つまり面と向かって親と話をするということだ。先程の自分は家族のことを無意識のうちに楽しげに双子に話していて、これには自分でも驚いてしまったが、勿論家族とのわだかまりが心の中から消えたわけではない。自分の血の秘密を何も知らなかった頃の日々を思い出して、少し舞い上がってしまっただけのことだ。となると現状の距離を保った状態で薬草の入手を急ぐなら、今すぐ両親に手紙でも出せば目当ての品を届けてくれるに違いない。しかしそうしようにも、結局今のフォーラはあまりにも心の整理ができていなかった。
そのように思考を巡らせていたフォーラが黙っていたのは、様子のおかしさを気取られなさそうなほんの一息の間だけだった。そして彼女が何と言葉を続けるべきか考え付かないまま兎に角声を発しようと口を開きかけた時、不意にジョージが割って入った。
「ああ、急がなくていいんだ。フォーラが家に帰ったら『ついで』でいいから、その時にでもご家族に相談してもらえると嬉しいんだけどな。もちろん計画のことは内緒で。お礼も弾むからさ」
そう言ってウインクを飛ばすジョージに、フォーラは幾らかホッとした表情を覗かせていた。自分が初めてこの館に来た時と同じように、今回も彼は気まずい話題から自分を助けてくれたのだ。
すると今度はフレッドが別の羊皮紙を呼び寄せながら話を移した。
「それじゃ、『気絶キャンディ』は薬草の入手結果が分かるまで待機だ。その間に他のやつも片付けちまわないといけないぞ」
今度はフレッドが先程のジョージが瞑った片目と逆側でウインクをしてフォーラを見た。双子の仕草が左右対称に揃っているのが可笑しくて、彼女はクスクス笑いつつも頷いた。だが彼女としては、本当は二人が自分の抱える家族とのわだかまりを忘れたふりをしてくれたことが何よりも嬉しかったのだった。
その後、フォーラは双子と一緒に二つの悪戯用品について確認した。手順の書かれた羊皮紙に目を通したり、実際に使っているところを見せてもらったりもした。その内の一つの、人間サイズのカナリアに一瞬変身した後にすぐ羽が抜け落ちて元に戻る『カナリアクリーム』の時は、双子が希望する魔法薬での改善ではなく、変身術を使った方法をフォーラから提案した。彼らがそれを試してみると思いの外ピッタリはまり、材料代が浮くということで二人とも大層喜んだ。
「四年生の時に習った術がこんな風に使えるとは思わなかったな」
「フォーラは変身術が得意って聞いてるけど、魔法薬の時みたいに色々試してるのか?」フレッドとジョージの感嘆の声に、フォーラはほんの少し照れを隠すように頷いた。
「ええ、どちらかというと私は変身術の方が好きで頑張っているの。魔法薬は授業でしか薬を扱えないけれど、変身術ならいつでも練習できるから沢山試しているわ。」
双子はフォーラが普段具体的にどんな練習をしているのか尋ねなくとも、先程のカナリアクリームを改良した時の発想から大体の想像がついていた。そして彼女の話を聞いているとやはり予想どおりだった。彼女は授業で術を一つ習う毎に、変身対象物や変身後のパターンを幾つも変えてその術を試していて、これまで学んだことをより一層上手に使えるように、引き出しを沢山持つ努力をしていたのだった。
ハーマイオニーも変身術が得意だが、彼女の場合は次学年分の勉強も一人である程度進めてしまっている。逆にフォーラはそれをしていないが、変身術に限っては毎年学年一位を取っている。その理由がフォーラの創造センスと探究心に現れているのだと双子は思った。ところがそれが随分特別なのだとフォーラ本人はあまり自覚していない様子だった。するとフレッドが発言した。
「フォーラは好きなことに随分のめり込むタイプだったんだな。だからたった数ヶ月でアニメーガスになれたのかもしれない。それに今日だってシリウスや俺たちの前で大活躍だ」
フォーラは確かに今言われたとおり、自分は普段から興味を持ったことに集中できている方だと思った。そして彼の話から今日の一連の出来事を自然と振り返った時、度々自身の脳裏に両親の顔が浮かんでいたことも記憶に新しかった。
(父様も母様も、自分の好きなことに一生懸命だわ)
そして今度はジョージが続いた。
「それから、フォーラは教わったことをきちんと覚えて、自分で手探りしてものにするのが好きだってことも分かった。この間のケーキのことも、魔法薬学も変身術も全部含めてだ。この部屋に君みたいな人を呼べて本当に良かったよ。どうもありがとう」
「いいえ、そんな。私はたいしたことは何も……。」
(確かにジョージの言うとおりだわ。母様にはケーキ作りを、父様からは魔法薬学を、その他のことだって沢山教わったわ。そして二人とも自分で改良したり、新しく作って試したりして本当に楽しそうで。私も学校で興味のあることを手探りするのはとっても楽しくて……)
そこまで考えた時、階下のホールが騒がしくなった。それと同時にシリウスの母親の肖像画が叫び、誰かがそれを鎮めようとする声も聞こえてきた。三人はハッと部屋の扉の方を振り返った後で互いに顔を見合わせ、誰からでもなく扉の外へ出た。揃って通路の手摺から階下に顔を覗かせると、一つ下の階で同じように真下のホールを覗くロン、ハーマイオニー、ジニーの後頭部が見えた。そして問題のホールでは何人かの大人たちがバタバタと忙しく食堂に流れていき、先程の女主人の肖像画が叫んだ原因が来客のせいだと分かった。
そしてこちらの上階へ繋がる階段からモリーが急ぎ足で上がって来るのが見え、ロンたちもそれに気付いて足早に彼女に近付いた。フォーラと双子も同じく彼女の元へ向かった。
「ママ、どうしたの?みんな急に騒がしくなったけど」
緊張感と怒りの混ざった面持ちのモリーに、ジニーがそのように問い掛けたタイミングでフォーラたち三人が合流した。モリーが無理に落ち着きを保とうとするようなピリピリした声で返答し、そのあまりにも突然の知らせに、その場にいた誰もが驚かないわけがなかった。
「ハリーが、自宅の近くで