20. The beginning of the end
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二人は湖のほとりの方に向かって、並んで芝生を踏みしめながら言葉を紡いでいた。
「それで、クリスマスパーティーの日、どうやってナルシサスの花を私の髪に挿してくれたの……?完全に二人きりだし、そろそろ教えてもらえない?」
フォーラの質問に、ドラコは口元をまごつかせた後で端的な言葉を発した。
「勿論、魔法を使った」
「やっぱり、それしかないわよね。だけど私たち未成年だから、学校外での魔法はまだ禁止されているでしょう。魔法省から連絡は来なかったの……?」
「なんだ、知らないんだな。未成年の魔法の『におい』は、マグル生まれの未成年ならまだしも、魔法使いや魔女の家系出身ならよっぽどでない限りお咎めの対象にならない。子は親の監督の元で魔法を使っているとみなされる。
特に出現呪文なんて違法性も危険性も何もないわけだし、何の問題もない」
「そうだったの……。私、ドラコは未成年だから絶対に花の贈り主じゃないと思っていたの―――えっ、出現呪文?」
フォーラはその呪文を今年度に入って早々練習し習得しただけあって、その難しさをよく理解していた。
「七年生のいもり試験レベルよ。私たちの学年じゃ、まだ消失呪文を習うまでなのに。相当練習したんじゃ……」
「あ―――まあ、大したことじゃない」
ドラコはそれについては多くを語らなかった。というのも彼はフォーラにばれないよう花を贈るため、クリスマス休暇中に自宅で毎日両親に隠れながら出現呪文を練習していたのだ。ドラコ自身、こういった陰の努力は曝け出す必要はないと思っているだけに、そんな裏事情が受け取り主本人に大っぴらになるのは随分と格好悪いと思った。
ドラコは誤魔化すようにフォーラが手に持っていた赤いフリージアの花を受け取ると、杖を振って消失させた。
「今頃さっきの赤い花は談話室の花瓶の中に納まっているだろう。本当は燃やしてしまいたいくらいだが。また後で談話室に戻った時、確認すればいい」
そうして間もなく、二人は湖のほとりに植わっている木の木陰に並んで腰掛けた。すると間もなくしてドラコが幾らか複雑そうな表情で言葉を続けた。
「実のところ、君に贈ったナルシサスの花は君へのクリスマスプレゼントだった。だけど君と距離を取ろうとした手前、直接渡すことは避けたかったんだ。匿名の贈り物だったし、花とか消え物の方が君もきっと捨てやすいだろうと思って」
「そうだったのね……。だけど私、あの花は捨てなかったわ。」
今度はフォーラが呪文を唱えながら杖を振ると、彼女の手元にナルシサスの花飾りが出現した。彼女はそれをドラコに手渡した。ドラコはフォーラも出現呪文を使いこなしていることに少々驚きつつも、受け取った花飾りを見つめた。
「君がこれを大事にしてくれていることは勿論知っていた。ホグワーツでこれを着けている君を初めて見た時、正直心臓が飛び出るかと思った。僕からの贈り物だとばれていたんじゃないかって。だけどそれはどうやら違った。しかもご丁寧にきちんとした髪飾りに加工までしてあったのは、一体どうしてなんだ……?」
フォーラはドラコに微笑むと、話し始めた。
「実は母様が教えてくれたのだけど、この花には魔法がかかっていたわ。持ち主の魅力を引き上げてくれるような、優しい魔法だって……。それに花言葉の意味―――『尊敬』とか『報われぬ恋』といった内容から考えても、贈り主から随分想われているみたいねって。」
「えっ」ドラコが戸惑いを含んだ声をあげた。
「私、その『誰か』に想われていることは純粋に嬉しかったわ。だけどそれよりも、この花にかかった魔法を使って、少しでも自分が魅力的に見えれば……もしかするとドラコがもう一度、私に振り向いてくれるかもしれないって、そう思ったわ。だからその誰かの気持ちを利用するために、髪飾りに加工して身に着けていたの。だけどまさか贈り主がドラコだったなんて。」
「フォーラ、ちょ、ちょっと待ってくれ。君の言う『魔法』を、僕はこの花にかけた覚えはないんだが」
「えっ?」
フォーラとドラコは思わず見つめあった。
「そうなの?私、てっきり贈り主の貴方が花に魔法をかけたと思ったのだけど。」
「そんな筈は。だって僕はそんな呪文自体知りもしない。僕がこの花に杖を向けた時といったら、事前に花を魔法で作り出した時と、君の髪に飾るためにそれを出現させた時だけだ。
まさか僕が知らない間にそんな魔法をうっかりかけていた、なんてことがある筈……」
ドラコはそこまで言いかけて、ふと脳裏にこの状況とよく似た記憶があるような気がした。そして記憶の片隅に見つけ出したのは、数ヶ月前にファントム家の邸宅で催されたクリスマスパーティーに参加した時の出来事だった。
『……貴方は彼女のことを大事にしているんですね』
ドラコはファントム家の廊下で出会ったメイドのマリアと交わした会話を思い出していた。
『ええ、勿論です。ドレスについてはお嬢様がより綺麗に見えるよう、一つ一つ丁寧に気持ちを込めて作っていますから、お嬢様のドレスには私の想いが詰まっているんです。もしかすると知らない内に、ドラコ様が仰ったように魔法の一つくらいはかかっているかも知れませんね』
「それで、クリスマスパーティーの日、どうやってナルシサスの花を私の髪に挿してくれたの……?完全に二人きりだし、そろそろ教えてもらえない?」
フォーラの質問に、ドラコは口元をまごつかせた後で端的な言葉を発した。
「勿論、魔法を使った」
「やっぱり、それしかないわよね。だけど私たち未成年だから、学校外での魔法はまだ禁止されているでしょう。魔法省から連絡は来なかったの……?」
「なんだ、知らないんだな。未成年の魔法の『におい』は、マグル生まれの未成年ならまだしも、魔法使いや魔女の家系出身ならよっぽどでない限りお咎めの対象にならない。子は親の監督の元で魔法を使っているとみなされる。
特に出現呪文なんて違法性も危険性も何もないわけだし、何の問題もない」
「そうだったの……。私、ドラコは未成年だから絶対に花の贈り主じゃないと思っていたの―――えっ、出現呪文?」
フォーラはその呪文を今年度に入って早々練習し習得しただけあって、その難しさをよく理解していた。
「七年生のいもり試験レベルよ。私たちの学年じゃ、まだ消失呪文を習うまでなのに。相当練習したんじゃ……」
「あ―――まあ、大したことじゃない」
ドラコはそれについては多くを語らなかった。というのも彼はフォーラにばれないよう花を贈るため、クリスマス休暇中に自宅で毎日両親に隠れながら出現呪文を練習していたのだ。ドラコ自身、こういった陰の努力は曝け出す必要はないと思っているだけに、そんな裏事情が受け取り主本人に大っぴらになるのは随分と格好悪いと思った。
ドラコは誤魔化すようにフォーラが手に持っていた赤いフリージアの花を受け取ると、杖を振って消失させた。
「今頃さっきの赤い花は談話室の花瓶の中に納まっているだろう。本当は燃やしてしまいたいくらいだが。また後で談話室に戻った時、確認すればいい」
そうして間もなく、二人は湖のほとりに植わっている木の木陰に並んで腰掛けた。すると間もなくしてドラコが幾らか複雑そうな表情で言葉を続けた。
「実のところ、君に贈ったナルシサスの花は君へのクリスマスプレゼントだった。だけど君と距離を取ろうとした手前、直接渡すことは避けたかったんだ。匿名の贈り物だったし、花とか消え物の方が君もきっと捨てやすいだろうと思って」
「そうだったのね……。だけど私、あの花は捨てなかったわ。」
今度はフォーラが呪文を唱えながら杖を振ると、彼女の手元にナルシサスの花飾りが出現した。彼女はそれをドラコに手渡した。ドラコはフォーラも出現呪文を使いこなしていることに少々驚きつつも、受け取った花飾りを見つめた。
「君がこれを大事にしてくれていることは勿論知っていた。ホグワーツでこれを着けている君を初めて見た時、正直心臓が飛び出るかと思った。僕からの贈り物だとばれていたんじゃないかって。だけどそれはどうやら違った。しかもご丁寧にきちんとした髪飾りに加工までしてあったのは、一体どうしてなんだ……?」
フォーラはドラコに微笑むと、話し始めた。
「実は母様が教えてくれたのだけど、この花には魔法がかかっていたわ。持ち主の魅力を引き上げてくれるような、優しい魔法だって……。それに花言葉の意味―――『尊敬』とか『報われぬ恋』といった内容から考えても、贈り主から随分想われているみたいねって。」
「えっ」ドラコが戸惑いを含んだ声をあげた。
「私、その『誰か』に想われていることは純粋に嬉しかったわ。だけどそれよりも、この花にかかった魔法を使って、少しでも自分が魅力的に見えれば……もしかするとドラコがもう一度、私に振り向いてくれるかもしれないって、そう思ったわ。だからその誰かの気持ちを利用するために、髪飾りに加工して身に着けていたの。だけどまさか贈り主がドラコだったなんて。」
「フォーラ、ちょ、ちょっと待ってくれ。君の言う『魔法』を、僕はこの花にかけた覚えはないんだが」
「えっ?」
フォーラとドラコは思わず見つめあった。
「そうなの?私、てっきり贈り主の貴方が花に魔法をかけたと思ったのだけど。」
「そんな筈は。だって僕はそんな呪文自体知りもしない。僕がこの花に杖を向けた時といったら、事前に花を魔法で作り出した時と、君の髪に飾るためにそれを出現させた時だけだ。
まさか僕が知らない間にそんな魔法をうっかりかけていた、なんてことがある筈……」
ドラコはそこまで言いかけて、ふと脳裏にこの状況とよく似た記憶があるような気がした。そして記憶の片隅に見つけ出したのは、数ヶ月前にファントム家の邸宅で催されたクリスマスパーティーに参加した時の出来事だった。
『……貴方は彼女のことを大事にしているんですね』
ドラコはファントム家の廊下で出会ったメイドのマリアと交わした会話を思い出していた。
『ええ、勿論です。ドレスについてはお嬢様がより綺麗に見えるよう、一つ一つ丁寧に気持ちを込めて作っていますから、お嬢様のドレスには私の想いが詰まっているんです。もしかすると知らない内に、ドラコ様が仰ったように魔法の一つくらいはかかっているかも知れませんね』