5. 意外な一面
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「マートラップのエキスと―――他にもここに載っているものが入っているわ」
フォーラはモリーから薬の調合方法の書かれた本を受け取ると、手順を黙読した。モリーとシリウスはそんな彼女を見た後で幾らか不思議そうに視線を交わした。するとフォーラが顔を上げた。
「失礼ですがマートラップの触手は、きっちり一時間酢漬けされましたか……?」
「ああ、タイマーで時間を計って漬けたとも」シリウスの回答にフォーラは小さく唸った後、もう一度手元の文章を読み直して再び視線を上げた。
「イチジクの汁は、果肉をどうしましたか?」
「果肉?」シリウスは記憶を呼び覚ますように考えた後で続けた。「果肉は使っていないな。汁だけボウルに加えたよ。本にも特別何も書いていなかったし」
フォーラは本の手順に「実をすりつぶし、汁を加える」と端的に書かれている部分を見た。
「もしかしたら潰した果肉を入れれば、十分な効果が得られるかもしれません。効果が薄い場合に、それを進めている本を読んだことがあって。」
「なるほど。モリー、もしまだ材料が残っているなら、もう一度彼女の言うやり方で薬を作りたいんだが」
「ええ勿論よ。フォーラ、アドバイスをありがとう」
モリーに礼を言われてフォーラは慌てて首を横に振り、たじたじと返答した。
「い、いいえ。まだ上手くいくか分からないので……。」
さて、それからのモリーは昼食と夕食のための買い物に出かけ、シリウスはフォーラと手順を見ながら薬を作っていった。この二人が並び立つ姿が珍しくて、台所には子供たちがシリウスの鍋を覗き込むようにして二人を囲んでいた。材料をひとしきり煮込んだ後、シリウスが火を止めるとフォーラが言った。
「この後で薬を濾 すように指示があるので、固体を取り除けば恐らくはそれで出来上がりです。」
シリウスが薬を完成させると、先程使っていた薬よりもやや濃いオレンジがかった透明の液体が出来上がった。彼は早速適量を鍋からボウルに移して冷まし、瘡蓋だらけの片手をその中に浸けた。すると以前の薬ではほんの少ししか瘡蓋が浮いてこなかったのに、今は彼の手から先ほどよりも多くの瘡蓋が剥がれ、水面にゴミのように浮き上がってきたではないか。瘡蓋が覆っていた手の甲はすっかり綺麗な元の肌に戻り始めていた。
みんなシリウスとモリーが作った薬の効き目を知っていただけに、これにはオーッと声が上がった。シリウスは手を浸けたままフォーラに礼を言った。
「フォーラ、ありがとう!君は目の付け所がいいんだな」
「いいえそんな。ブラックさんが完成させたんです。」褒められたことでフォーラの頬が少し赤くなった。すると横で見ていたハーマイオニーも感嘆の声を上げた。
「学校で習った別の魔法薬で、生の果実を使うのなんて一、二回だったじゃない?果肉の応用方法はスネイプ先生の板書にも教科書にも書かれていなかったから、てっきり果汁と分けて使うものだと思っていたわ」
「ええ、そうよね。果物は魔法薬に出番が少ないもの。私も家にあった参考書で使い方を偶然読んで、別の魔法薬で真似したことがあっただけなの。」
フォーラはハーマイオニーのキラキラとした視線を受けたせいで、先程よりも余計に顔が赤くなっていた。すると今度はジョージが彼女をチラと見た後で、手順を覗き込みながら付け加えた。
「それだけじゃないな。ここ、『杖で三回掻き回す』ってあるけど、シリウスに三回半ゆっくり掻き回すよう指示してただろ?書かれてる内容と違うのに、ちゃんと成功してるし凄いじゃないか」
「ええとそれは、途中で書かれている色よりも薄い気がしたから、それで……。」
フォーラがなんとか恥ずかしさに耐えるように眼を泳がせていると、今度はその様子を見たフレッドが彼女の言葉に補足を投げた。
「シリウスの混ぜるスピードが速かったりでもしたか?」
「えっ!ええと、多分……」フォーラはそこまで言った時、自分の回答がシリウスに対して失礼なのではと思い至り、慌てて首を横に振りながら訂正した。「少しだけそんな気がしただけで!」
フォーラが赤くなって狼狽えるのを見てみんな面白半分に彼女を称賛した。するとシリウスが続けた。
「おかげですっかり早く治りそうだ。君にはまた助けられてしまったな。私が犬の姿で城から逃げおおせた時と合わせて二回だ。感謝しているよ、フォーラ。……そういえば君は私を『ブラックさん』と呼ぶが、その名は私がこの館の一家の一員に数えられているようで嫌いでね。できればファーストネームを使ってほしいんだが」シリウスが微笑むと、フォーラは少し落ち着いてきたのか彼に微笑み返した。
「は、はい。では……シリウスさん。お役に立てて本当によかったです。」
それからはみんなでお茶を入れ、ダイニングテーブルを囲んで座った。シリウスは片手をボウルに浸けたまま、もう片方の手で紅茶のカップを持ち上げていた。するとジニーが瞳を輝かせてフォーラに尋ねた。
「ねえ、フォーラは変身術だけじゃなくって魔法薬学も得意なのね?フォーラのお父さんに色々教わったの?難しいこととか?」
「そうね……得意かどうかは分からないけれど、魔法薬学は好きよ。父の部屋には魔法薬の材料が沢山並べてあるけれど、だからといって家で何か難しい特別なことを教わったわけではないの。父の調合作業を隣で眺めたり、学校でみんなが既に習ったような、魔法を使わない材料の処理を手伝ったりしたくらいかしら。」
「でも、さっきの感じは本当に得意じゃないか。学年末試験だっていつも一位だし。あっ、けどハーマイオニーだって魔法薬学は一位だよね?」ロンが小首を傾げて言うと、ハーマイオニーが不意を突かれて照れた。そして彼女はその照れを幾らか昇華するように熱心に語った。
「フォーラ、ところであなたが授業で提出するサンプルはいつもとっても綺麗よね!」
「何だよハーマイオニー、君は毎回フォーラの調合した薬を確認してるのか?」フレッドの問いにハーマイオニーは顔をパッと赤くした。
「だって!いつも本当に本当に綺麗な出来なのよ」
フォーラはモリーから薬の調合方法の書かれた本を受け取ると、手順を黙読した。モリーとシリウスはそんな彼女を見た後で幾らか不思議そうに視線を交わした。するとフォーラが顔を上げた。
「失礼ですがマートラップの触手は、きっちり一時間酢漬けされましたか……?」
「ああ、タイマーで時間を計って漬けたとも」シリウスの回答にフォーラは小さく唸った後、もう一度手元の文章を読み直して再び視線を上げた。
「イチジクの汁は、果肉をどうしましたか?」
「果肉?」シリウスは記憶を呼び覚ますように考えた後で続けた。「果肉は使っていないな。汁だけボウルに加えたよ。本にも特別何も書いていなかったし」
フォーラは本の手順に「実をすりつぶし、汁を加える」と端的に書かれている部分を見た。
「もしかしたら潰した果肉を入れれば、十分な効果が得られるかもしれません。効果が薄い場合に、それを進めている本を読んだことがあって。」
「なるほど。モリー、もしまだ材料が残っているなら、もう一度彼女の言うやり方で薬を作りたいんだが」
「ええ勿論よ。フォーラ、アドバイスをありがとう」
モリーに礼を言われてフォーラは慌てて首を横に振り、たじたじと返答した。
「い、いいえ。まだ上手くいくか分からないので……。」
さて、それからのモリーは昼食と夕食のための買い物に出かけ、シリウスはフォーラと手順を見ながら薬を作っていった。この二人が並び立つ姿が珍しくて、台所には子供たちがシリウスの鍋を覗き込むようにして二人を囲んでいた。材料をひとしきり煮込んだ後、シリウスが火を止めるとフォーラが言った。
「この後で薬を
シリウスが薬を完成させると、先程使っていた薬よりもやや濃いオレンジがかった透明の液体が出来上がった。彼は早速適量を鍋からボウルに移して冷まし、瘡蓋だらけの片手をその中に浸けた。すると以前の薬ではほんの少ししか瘡蓋が浮いてこなかったのに、今は彼の手から先ほどよりも多くの瘡蓋が剥がれ、水面にゴミのように浮き上がってきたではないか。瘡蓋が覆っていた手の甲はすっかり綺麗な元の肌に戻り始めていた。
みんなシリウスとモリーが作った薬の効き目を知っていただけに、これにはオーッと声が上がった。シリウスは手を浸けたままフォーラに礼を言った。
「フォーラ、ありがとう!君は目の付け所がいいんだな」
「いいえそんな。ブラックさんが完成させたんです。」褒められたことでフォーラの頬が少し赤くなった。すると横で見ていたハーマイオニーも感嘆の声を上げた。
「学校で習った別の魔法薬で、生の果実を使うのなんて一、二回だったじゃない?果肉の応用方法はスネイプ先生の板書にも教科書にも書かれていなかったから、てっきり果汁と分けて使うものだと思っていたわ」
「ええ、そうよね。果物は魔法薬に出番が少ないもの。私も家にあった参考書で使い方を偶然読んで、別の魔法薬で真似したことがあっただけなの。」
フォーラはハーマイオニーのキラキラとした視線を受けたせいで、先程よりも余計に顔が赤くなっていた。すると今度はジョージが彼女をチラと見た後で、手順を覗き込みながら付け加えた。
「それだけじゃないな。ここ、『杖で三回掻き回す』ってあるけど、シリウスに三回半ゆっくり掻き回すよう指示してただろ?書かれてる内容と違うのに、ちゃんと成功してるし凄いじゃないか」
「ええとそれは、途中で書かれている色よりも薄い気がしたから、それで……。」
フォーラがなんとか恥ずかしさに耐えるように眼を泳がせていると、今度はその様子を見たフレッドが彼女の言葉に補足を投げた。
「シリウスの混ぜるスピードが速かったりでもしたか?」
「えっ!ええと、多分……」フォーラはそこまで言った時、自分の回答がシリウスに対して失礼なのではと思い至り、慌てて首を横に振りながら訂正した。「少しだけそんな気がしただけで!」
フォーラが赤くなって狼狽えるのを見てみんな面白半分に彼女を称賛した。するとシリウスが続けた。
「おかげですっかり早く治りそうだ。君にはまた助けられてしまったな。私が犬の姿で城から逃げおおせた時と合わせて二回だ。感謝しているよ、フォーラ。……そういえば君は私を『ブラックさん』と呼ぶが、その名は私がこの館の一家の一員に数えられているようで嫌いでね。できればファーストネームを使ってほしいんだが」シリウスが微笑むと、フォーラは少し落ち着いてきたのか彼に微笑み返した。
「は、はい。では……シリウスさん。お役に立てて本当によかったです。」
それからはみんなでお茶を入れ、ダイニングテーブルを囲んで座った。シリウスは片手をボウルに浸けたまま、もう片方の手で紅茶のカップを持ち上げていた。するとジニーが瞳を輝かせてフォーラに尋ねた。
「ねえ、フォーラは変身術だけじゃなくって魔法薬学も得意なのね?フォーラのお父さんに色々教わったの?難しいこととか?」
「そうね……得意かどうかは分からないけれど、魔法薬学は好きよ。父の部屋には魔法薬の材料が沢山並べてあるけれど、だからといって家で何か難しい特別なことを教わったわけではないの。父の調合作業を隣で眺めたり、学校でみんなが既に習ったような、魔法を使わない材料の処理を手伝ったりしたくらいかしら。」
「でも、さっきの感じは本当に得意じゃないか。学年末試験だっていつも一位だし。あっ、けどハーマイオニーだって魔法薬学は一位だよね?」ロンが小首を傾げて言うと、ハーマイオニーが不意を突かれて照れた。そして彼女はその照れを幾らか昇華するように熱心に語った。
「フォーラ、ところであなたが授業で提出するサンプルはいつもとっても綺麗よね!」
「何だよハーマイオニー、君は毎回フォーラの調合した薬を確認してるのか?」フレッドの問いにハーマイオニーは顔をパッと赤くした。
「だって!いつも本当に本当に綺麗な出来なのよ」