4. チョコレートケーキと彼
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「勿論じゃとも。料理もケーキもとっても美味しかった。こちらの方はリーマスのリクエストじゃろうか?」
ダンブルドアがテーブルの残りのケーキを見て言うと、ジニーは笑顔で頷いてルーピンと目を合わせた。するとルーピンは少々気恥ずかしそうに笑った。
「ええ、まさかこんなに美味しく作ってもらえるとは。何かお礼をしないといけませんね」
ダンブルドアは長い髭をフサフサと揺らして笑うと、スネイプの方を振り返った。
「セブルス、せめて君の教え子たちが作ったケーキを一切れ持ち帰らせていただいてはどうかの」
スネイプの視線はフォーラの方に向いた後、彼女のそばに座っていたルーピンに移った。スネイプがルーピンを見る目は先程よりも嫌悪と敵意が入り混じっていたが、皆にとっては一瞬のことで特段気になりはしなかった。しかしスネイプと目を合わせたルーピンにとっては長い時間に感じられた。ルーピンは何故か後ろめたい気持ちを見透かされたような、そんな気分だった。
スネイプはルーピンから視線を外すと、再びフォーラを見て答えた。
「では『フォーラ』、君の『恩師』のリクエストを我輩も是非いただきたいのだが」
ルーピンはその『フォーラ』という名を聞いたことで喉の奥が急に乾くのを感じた。フォーラとスネイプが昔馴染みであるとは知らされていたが、ルーピンがこうしてスネイプの口から彼女のファーストネームを聞くのは殆ど初めてだった。普段スネイプは親しい生徒であっても大衆の前で滅多に名前を呼ぶことはないのだが、今現在フォーラには特別感を示した。それに加え先程のスネイプが、まるでルーピンを彼女の外敵であるかのように嫌みたらしく『恩師』と呼んだところを見るに……。ルーピンは、自身が彼女に向ける複雑な気持ちをスネイプに気付かれている可能性を察した。
フォーラは突然大勢の前でスネイプに珍しく名前を呼ばれて驚いたが、「は、はい」と返答すると直ぐにケーキをカットした。するとスネイプが杖を一振りし、それをパッと消失させた。
「有り難くいただこう。……それでは失礼する。さあ、ダンブルドア」そう言って彼はダンブルドアを出口まで促した。
フォーラは久しぶりに顔を合わせたスネイプに、ここで過ごすよう提案してくれたことについて直接お礼を言おうと思っていた。彼が現れてから今までの間にすっかりタイミングを失っていたが、とはいえそもそも大勢いる場でその話題に触れるのは些か躊躇われた。そのため彼女は玄関までの道中で話ができればと思い、二人を見送ろうと椅子から立ち上がりかけた。しかしそれより早くにウィーズリー夫妻が見送りを申し出たため、フォーラは上げかけた腰を静かに降ろすしかなかった。
すると不意にスネイプがこちらを振り向き、声を投げてきた。
「フォーラ」その呼びかけに彼女はパッと顔を上げ、彼と視線を合わせた。
「近いうちに手紙を出そう」
途端にフォーラの表情が明るくなり、溌剌とした声が喉から飛び出した。
「はい!セブルスさん、お待ちしています。」
ダンブルドアとスネイプが立ち去ってからの食堂には、再び人々のお喋りが戻っていた。シリウスがスネイプの目つきの悪さに憤慨して悪態を吐いていたため目立たなかったのだが、ルーピンは先程のスネイプを思い出して黙り込んでいた。
彼にわざわざ注意されなくとも、フォーラとは彼が予想したような関係になりたいだなんて思わない。彼はわざとらしく保護者面をしてこちらのことを『恩師』などと強調していたが、そこまでしてフォーラとこちらの立場や年齢が異なることを知らしめてもらう必要はないのだ。何故なら、本当にそんな気は元から持ち合わせてなんか―――。
『セブルスさん』
ルーピンはフォーラがそのように発した声を思い出し、途端に胸の内側に気持ちの悪いむかつきを感じた気がした。しかし彼はそれを気のせいとしてすぐに片付けて蓋をするのを忘れなかった。すると、ふと彼の耳にハーマイオニーがフォーラに質問する声が聞こえてきた。
「フォーラがここに来た時から気になっていたんだけど、あなたはスネイプ先生のことを名前で呼んでるの?」
ルーピンは今しがた自分が気にしていたことを、ハーマイオニーがそっくりそのまま尋ねていたものだから思わずドキリとした。
「いつもじゃないの、私用な時だけ。私が小さい頃からお世話になっていて、基本的にはずっと名前でお呼びしているの。変かしら……。」自信なさげに言ったフォーラに、ハーマイオニーが弁解した。
「ううん、そういうわけじゃないの。何だか意外だったから気になっただけなのよ。それにしても、あのスネイプ先生がマルフォイ以外の生徒をファーストネームで呼ぶことにも正直驚いたわ」
するとそれを聞いたフォーラは不思議そうに小首を傾げていた。
「確かにセブルスさんは、他の生徒がいるところでは私を名前で呼ばないのだけど。でも、どうして今日は呼んでくださったのかしら?」
ルーピンはまさか『スネイプが私に警告していたからだ』などと言い出せる筈もなく、何も知らないふりを貫いた。するとフォーラが続けた。
「セブルスさんと私は、叔父と姪のような関係にとっても近いの。今まで沢山、他愛のない話に付き合ってもらったり、相談に乗っていただいたりしたわ。それに少しは冗談も言い合える仲だと思うの。」
(叔父と姪……)
ルーピンは静かにその言葉を頭の中で唱えた。自分と同い年のスネイプがフォーラとそんな関係にある。叔父と姪だ。遠からず近からず……いや、むしろ遠い。隣で話す以上は何もない関係だ。そして彼と同い年の自分も、必然的に彼女にとってはそのような遠い存在でしかない。いや、むしろスネイプよりも親密度が劣る分、もっと遠い存在に違いない。
(当然のことだとも。何もショックに思う必要はない。セブルスとフォーラはいい関係だ。私だって彼女とはそうありたいと思う。そうだろう?……それなら、私は彼女に何をしてやればいい?どうすればセブルスのように、彼女に対して単なる慈愛の心を持って向き合える?私が彼女にとってただ単に親切な大人なのだと、自分で認められるようになるにはどうすればいい)
ダンブルドアがテーブルの残りのケーキを見て言うと、ジニーは笑顔で頷いてルーピンと目を合わせた。するとルーピンは少々気恥ずかしそうに笑った。
「ええ、まさかこんなに美味しく作ってもらえるとは。何かお礼をしないといけませんね」
ダンブルドアは長い髭をフサフサと揺らして笑うと、スネイプの方を振り返った。
「セブルス、せめて君の教え子たちが作ったケーキを一切れ持ち帰らせていただいてはどうかの」
スネイプの視線はフォーラの方に向いた後、彼女のそばに座っていたルーピンに移った。スネイプがルーピンを見る目は先程よりも嫌悪と敵意が入り混じっていたが、皆にとっては一瞬のことで特段気になりはしなかった。しかしスネイプと目を合わせたルーピンにとっては長い時間に感じられた。ルーピンは何故か後ろめたい気持ちを見透かされたような、そんな気分だった。
スネイプはルーピンから視線を外すと、再びフォーラを見て答えた。
「では『フォーラ』、君の『恩師』のリクエストを我輩も是非いただきたいのだが」
ルーピンはその『フォーラ』という名を聞いたことで喉の奥が急に乾くのを感じた。フォーラとスネイプが昔馴染みであるとは知らされていたが、ルーピンがこうしてスネイプの口から彼女のファーストネームを聞くのは殆ど初めてだった。普段スネイプは親しい生徒であっても大衆の前で滅多に名前を呼ぶことはないのだが、今現在フォーラには特別感を示した。それに加え先程のスネイプが、まるでルーピンを彼女の外敵であるかのように嫌みたらしく『恩師』と呼んだところを見るに……。ルーピンは、自身が彼女に向ける複雑な気持ちをスネイプに気付かれている可能性を察した。
フォーラは突然大勢の前でスネイプに珍しく名前を呼ばれて驚いたが、「は、はい」と返答すると直ぐにケーキをカットした。するとスネイプが杖を一振りし、それをパッと消失させた。
「有り難くいただこう。……それでは失礼する。さあ、ダンブルドア」そう言って彼はダンブルドアを出口まで促した。
フォーラは久しぶりに顔を合わせたスネイプに、ここで過ごすよう提案してくれたことについて直接お礼を言おうと思っていた。彼が現れてから今までの間にすっかりタイミングを失っていたが、とはいえそもそも大勢いる場でその話題に触れるのは些か躊躇われた。そのため彼女は玄関までの道中で話ができればと思い、二人を見送ろうと椅子から立ち上がりかけた。しかしそれより早くにウィーズリー夫妻が見送りを申し出たため、フォーラは上げかけた腰を静かに降ろすしかなかった。
すると不意にスネイプがこちらを振り向き、声を投げてきた。
「フォーラ」その呼びかけに彼女はパッと顔を上げ、彼と視線を合わせた。
「近いうちに手紙を出そう」
途端にフォーラの表情が明るくなり、溌剌とした声が喉から飛び出した。
「はい!セブルスさん、お待ちしています。」
ダンブルドアとスネイプが立ち去ってからの食堂には、再び人々のお喋りが戻っていた。シリウスがスネイプの目つきの悪さに憤慨して悪態を吐いていたため目立たなかったのだが、ルーピンは先程のスネイプを思い出して黙り込んでいた。
彼にわざわざ注意されなくとも、フォーラとは彼が予想したような関係になりたいだなんて思わない。彼はわざとらしく保護者面をしてこちらのことを『恩師』などと強調していたが、そこまでしてフォーラとこちらの立場や年齢が異なることを知らしめてもらう必要はないのだ。何故なら、本当にそんな気は元から持ち合わせてなんか―――。
『セブルスさん』
ルーピンはフォーラがそのように発した声を思い出し、途端に胸の内側に気持ちの悪いむかつきを感じた気がした。しかし彼はそれを気のせいとしてすぐに片付けて蓋をするのを忘れなかった。すると、ふと彼の耳にハーマイオニーがフォーラに質問する声が聞こえてきた。
「フォーラがここに来た時から気になっていたんだけど、あなたはスネイプ先生のことを名前で呼んでるの?」
ルーピンは今しがた自分が気にしていたことを、ハーマイオニーがそっくりそのまま尋ねていたものだから思わずドキリとした。
「いつもじゃないの、私用な時だけ。私が小さい頃からお世話になっていて、基本的にはずっと名前でお呼びしているの。変かしら……。」自信なさげに言ったフォーラに、ハーマイオニーが弁解した。
「ううん、そういうわけじゃないの。何だか意外だったから気になっただけなのよ。それにしても、あのスネイプ先生がマルフォイ以外の生徒をファーストネームで呼ぶことにも正直驚いたわ」
するとそれを聞いたフォーラは不思議そうに小首を傾げていた。
「確かにセブルスさんは、他の生徒がいるところでは私を名前で呼ばないのだけど。でも、どうして今日は呼んでくださったのかしら?」
ルーピンはまさか『スネイプが私に警告していたからだ』などと言い出せる筈もなく、何も知らないふりを貫いた。するとフォーラが続けた。
「セブルスさんと私は、叔父と姪のような関係にとっても近いの。今まで沢山、他愛のない話に付き合ってもらったり、相談に乗っていただいたりしたわ。それに少しは冗談も言い合える仲だと思うの。」
(叔父と姪……)
ルーピンは静かにその言葉を頭の中で唱えた。自分と同い年のスネイプがフォーラとそんな関係にある。叔父と姪だ。遠からず近からず……いや、むしろ遠い。隣で話す以上は何もない関係だ。そして彼と同い年の自分も、必然的に彼女にとってはそのような遠い存在でしかない。いや、むしろスネイプよりも親密度が劣る分、もっと遠い存在に違いない。
(当然のことだとも。何もショックに思う必要はない。セブルスとフォーラはいい関係だ。私だって彼女とはそうありたいと思う。そうだろう?……それなら、私は彼女に何をしてやればいい?どうすればセブルスのように、彼女に対して単なる慈愛の心を持って向き合える?私が彼女にとってただ単に親切な大人なのだと、自分で認められるようになるにはどうすればいい)