4. チョコレートケーキと彼
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『もし、お主が自身を受け入れられ、自分自身を認めてやる事が出来たら、
次は別の誰かに手を差し伸べてやって欲しいのじゃ』
『別の、誰か・・・。』
『そう、身近な誰かを。それが痛みを克服した人間に課せられた使命というものじゃ。
恐らく、お主に一番近く、一番お主が手を差し出すべきはミスター・マルフォイじゃろう』
『彼を見守って、いや、見張っていてはくれんかの』
あの時ダンブルドアは具体的にどの様にすべきかは教えてはくれなかった。フォーラは周囲にダンブルドアのお願いとは言え、敵側である彼女の幼馴染に手を差し伸べようとすることが、今ここにいる人達の反感を買うに十分な材料だと気づいていた。
「ごめんなさい、先生。」
うっかりしていたと言うようにフォーラが後ろめたそう伝えると、ダンブルドアは微笑んで彼女の頭をポンポンと軽く撫でた。
「ゆっくりでよい。思うようにやってみるのが一番じゃからの。」
「・・はい、ありがとうございます。」
フォーラはその時ハーマイオニーがこちらを振り返ったのを合図に、ダンブルドアへ話題を変えて質問した。
「それで、あの・・・先生?もしよろしければ、一つ質問したいことがあるのですが。
その・・・ハリーのことで。」
ハリーの名を聞いてダンブルドアもハーマイオニーもロンもピクリと反応したが、ダンブルドアはフォーラからの質問が来る前に答を言ってしまった。
「ハリーは夏休みの間、余程のことが無い限りは叔母さんの家で過ごさなくてはならぬ」
彼が以前来た時と変わらぬ答にハーマイオニーが尋ねた。
「あの、先生?ハリーのお母様と先生の魔法の守りが、叔母様の家にかかっていると仰っていたのは覚えています。
でも、この屋敷だって十分ハリーが過ごすには安全な場所ではありませんか?ここなら毎日騎士団の見張りをハリーの側に置いておく必要も無いですし・・・」
「いい質問じゃ、ハーマイオニー」
ハーマイオニーは恐れ多い事を質問する様子だったが、ダンブルドアが微笑んでいるのを見て少しだけ緊張がほぐれた様子だった。
「じゃが、儂からお主らに伝えられるのはこれまでの事となんら変わらぬ。
お主の主張は何も間違ってはおらぬ。この隠れ家は儂が"秘密の守人"をしておるし、敵に見つかる事もない。実に合理的じゃ。
ただ儂がハリーには伝えたくない。本当にそれだけなんじゃよ」
ハーマイオニーはまだ何か言いたげだったが、半月眼鏡の奥の瞳がそれ以上を拒んでいるのがわかって何も言えなかった。それから夕食となり、ダンブルドアの来訪もあってモリーがいつもより更に腕によりをかけた料理が振舞われた。夕食の間も結局ダンブルドアにあれ以上の質問をすることは叶わず、ハーマイオニーはすっかり諦めた様子だった。
皆の空腹が丁度よく満たされた頃、フォーラは今朝一緒にケーキを作った友人達とキッチンに向かい、タイミング良くホールケーキを二つ運んできた。その様子に一番反応したのは言わずもがなルーピンだった。
「ハーマイオニー、これは?」
彼は自分の近くにそれを運んできた彼女に尋ねた。
「フォーラに教わりながら皆んなで作ったんです。最高の見た目でしょう?」
「ああ、すごく綺麗に出来てるいよ。中も楽しみだ。
・・フォーラ、これはもしかして僕がリクエストしたやつかい?」
ルーピンは嬉しいあまりに、後半の部分はフォークを配りに来たフォーラに戸惑いながらこっそりそう尋ねると、彼女は優しく微笑んで彼だけに聞こえるよう伝えた。
「この間のお礼です。約束しましたから。」
「ありがとう。まさかこんなに美味しそうだなんて。
どんな味か待ちきれないよ」
ルーピンは彼女が少しでも自分のことを思って好物を作ってくれたことが本当に嬉しかった。皆ケーキを堪能していたが、中でもルーピンが一番幸せそうに食べる様子が印象的だった。しかし彼の幸福な時間は、彼が自分のケーキを食べ終わった後の来訪者によって掻き消されることになるのだった。
二階に用事に行っていたモリーが食堂に戻って来ると、彼女の後ろから黒装束を着た黒髪の男が部屋の中に入ってきた。皆現れた客人をパッと目に入れた。
「おお、セブルス。遅かったのう」
彼に一番に声をかけたのはダンブルドアだった。モリーはスネイプをダンブルドアの近くの席に促した。
「私がホールを通る時にちょうどいらしたところだったんですよ。
セブルス、今日くらいお茶でも飲んで行ってくださいな」
スネイプはテーブルにサッと視線を向けてフォーラの姿を一瞬捉えた。そのすぐ後にルーピンとシリウスの姿を目に入れると、彼らをじっとりと睨むように見ながら眉間の皺をほんの少し深くして首を横に振った。視線を受けた二人の内、特にシリウスが癇に障った表情を顕著に表していた。
「いや、モリー。すまないが結構だ。あまり時間がない。それに今日はダンブルドアをお迎えに上がったまでなのだから」
スネイプが一度もここで食事を摂った事がないのを考えると彼がそう答えるのは誰もが予想できたことだった。ダンブルドアは彼の言葉に時間を確認し、「おお」と声をあげるといそいそと立ち上がったのだった。
「もうそんな時間じゃったか。ではそろそろお暇せねばいかんのう。皆、食事をありがとう」
ダンブルドアがモリーと子供達に微笑むと、近くに座っていたジニーが思い切って間髪入れず尋ねた。「先生、ケーキは美味しかったでしょうか?」
少し不安そうに尋ねる彼女に、ダンブルドアはうんうんと頷いた。
「勿論じゃとも。料理もケーキもとっても美味しかった。これはリーマスのリクエストじゃろうか?」
ダンブルドアがテーブルの残りのケーキを指してそう言うと、ジニーは笑顔で頷いてルーピンと目を合わせた。するとルーピンは少し気恥ずかしそうに笑った。
「まさかこんなに美味しく作ってもらえるとは。何かお礼をしないといけませんね」
ダンブルドアは長い髭をフサフサと揺らして笑うと、スネイプの方を振り返って言った。
「セブルス、せめて君の教え子達が作ったケーキを一切れ持ち帰らせていただいてはどうかの」
次は別の誰かに手を差し伸べてやって欲しいのじゃ』
『別の、誰か・・・。』
『そう、身近な誰かを。それが痛みを克服した人間に課せられた使命というものじゃ。
恐らく、お主に一番近く、一番お主が手を差し出すべきはミスター・マルフォイじゃろう』
『彼を見守って、いや、見張っていてはくれんかの』
あの時ダンブルドアは具体的にどの様にすべきかは教えてはくれなかった。フォーラは周囲にダンブルドアのお願いとは言え、敵側である彼女の幼馴染に手を差し伸べようとすることが、今ここにいる人達の反感を買うに十分な材料だと気づいていた。
「ごめんなさい、先生。」
うっかりしていたと言うようにフォーラが後ろめたそう伝えると、ダンブルドアは微笑んで彼女の頭をポンポンと軽く撫でた。
「ゆっくりでよい。思うようにやってみるのが一番じゃからの。」
「・・はい、ありがとうございます。」
フォーラはその時ハーマイオニーがこちらを振り返ったのを合図に、ダンブルドアへ話題を変えて質問した。
「それで、あの・・・先生?もしよろしければ、一つ質問したいことがあるのですが。
その・・・ハリーのことで。」
ハリーの名を聞いてダンブルドアもハーマイオニーもロンもピクリと反応したが、ダンブルドアはフォーラからの質問が来る前に答を言ってしまった。
「ハリーは夏休みの間、余程のことが無い限りは叔母さんの家で過ごさなくてはならぬ」
彼が以前来た時と変わらぬ答にハーマイオニーが尋ねた。
「あの、先生?ハリーのお母様と先生の魔法の守りが、叔母様の家にかかっていると仰っていたのは覚えています。
でも、この屋敷だって十分ハリーが過ごすには安全な場所ではありませんか?ここなら毎日騎士団の見張りをハリーの側に置いておく必要も無いですし・・・」
「いい質問じゃ、ハーマイオニー」
ハーマイオニーは恐れ多い事を質問する様子だったが、ダンブルドアが微笑んでいるのを見て少しだけ緊張がほぐれた様子だった。
「じゃが、儂からお主らに伝えられるのはこれまでの事となんら変わらぬ。
お主の主張は何も間違ってはおらぬ。この隠れ家は儂が"秘密の守人"をしておるし、敵に見つかる事もない。実に合理的じゃ。
ただ儂がハリーには伝えたくない。本当にそれだけなんじゃよ」
ハーマイオニーはまだ何か言いたげだったが、半月眼鏡の奥の瞳がそれ以上を拒んでいるのがわかって何も言えなかった。それから夕食となり、ダンブルドアの来訪もあってモリーがいつもより更に腕によりをかけた料理が振舞われた。夕食の間も結局ダンブルドアにあれ以上の質問をすることは叶わず、ハーマイオニーはすっかり諦めた様子だった。
皆の空腹が丁度よく満たされた頃、フォーラは今朝一緒にケーキを作った友人達とキッチンに向かい、タイミング良くホールケーキを二つ運んできた。その様子に一番反応したのは言わずもがなルーピンだった。
「ハーマイオニー、これは?」
彼は自分の近くにそれを運んできた彼女に尋ねた。
「フォーラに教わりながら皆んなで作ったんです。最高の見た目でしょう?」
「ああ、すごく綺麗に出来てるいよ。中も楽しみだ。
・・フォーラ、これはもしかして僕がリクエストしたやつかい?」
ルーピンは嬉しいあまりに、後半の部分はフォークを配りに来たフォーラに戸惑いながらこっそりそう尋ねると、彼女は優しく微笑んで彼だけに聞こえるよう伝えた。
「この間のお礼です。約束しましたから。」
「ありがとう。まさかこんなに美味しそうだなんて。
どんな味か待ちきれないよ」
ルーピンは彼女が少しでも自分のことを思って好物を作ってくれたことが本当に嬉しかった。皆ケーキを堪能していたが、中でもルーピンが一番幸せそうに食べる様子が印象的だった。しかし彼の幸福な時間は、彼が自分のケーキを食べ終わった後の来訪者によって掻き消されることになるのだった。
二階に用事に行っていたモリーが食堂に戻って来ると、彼女の後ろから黒装束を着た黒髪の男が部屋の中に入ってきた。皆現れた客人をパッと目に入れた。
「おお、セブルス。遅かったのう」
彼に一番に声をかけたのはダンブルドアだった。モリーはスネイプをダンブルドアの近くの席に促した。
「私がホールを通る時にちょうどいらしたところだったんですよ。
セブルス、今日くらいお茶でも飲んで行ってくださいな」
スネイプはテーブルにサッと視線を向けてフォーラの姿を一瞬捉えた。そのすぐ後にルーピンとシリウスの姿を目に入れると、彼らをじっとりと睨むように見ながら眉間の皺をほんの少し深くして首を横に振った。視線を受けた二人の内、特にシリウスが癇に障った表情を顕著に表していた。
「いや、モリー。すまないが結構だ。あまり時間がない。それに今日はダンブルドアをお迎えに上がったまでなのだから」
スネイプが一度もここで食事を摂った事がないのを考えると彼がそう答えるのは誰もが予想できたことだった。ダンブルドアは彼の言葉に時間を確認し、「おお」と声をあげるといそいそと立ち上がったのだった。
「もうそんな時間じゃったか。ではそろそろお暇せねばいかんのう。皆、食事をありがとう」
ダンブルドアがモリーと子供達に微笑むと、近くに座っていたジニーが思い切って間髪入れず尋ねた。「先生、ケーキは美味しかったでしょうか?」
少し不安そうに尋ねる彼女に、ダンブルドアはうんうんと頷いた。
「勿論じゃとも。料理もケーキもとっても美味しかった。これはリーマスのリクエストじゃろうか?」
ダンブルドアがテーブルの残りのケーキを指してそう言うと、ジニーは笑顔で頷いてルーピンと目を合わせた。するとルーピンは少し気恥ずかしそうに笑った。
「まさかこんなに美味しく作ってもらえるとは。何かお礼をしないといけませんね」
ダンブルドアは長い髭をフサフサと揺らして笑うと、スネイプの方を振り返って言った。
「セブルス、せめて君の教え子達が作ったケーキを一切れ持ち帰らせていただいてはどうかの」