4. チョコレートケーキと彼
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「ああ、みんなここにいたのね」
手の空いた何人かが彼女の荷物を運ぶために駆け寄った。
「おかえりママ。いつもより荷物が多いね」ロンが紙袋の中を覗き見ながらそれを抱えた。
「そうなのよ。それがね、今日の夕食にダンブルドア先生がいらっしゃることになったの。お仕事で近くを通るから、ここにも寄ってくださるそうよ。スネイプ先生も一緒だけど彼の方は食事をなさらないそうなの」
「!」みんなダンブルドアが来ると聞いて顔が明るくなったが、スネイプの名を聞いた途端にフォーラを除いた学生メンバーは表情がやや引きつった。するとジニーが気を取り直したように発言した。
「じゃあ、校長先生が来るなら今晩は一杯おもてなししなきゃ。夜ならケーキも食べ頃になるし」
ハーマイオニーはそれを聞いてソワソワした。
「わあーっ校長先生に食べてもらうと思うと、急に緊張してきちゃった」
フォーラもつられてドキドキしたが、彼女に至っては、スネイプが夕食を食べないのなら、せめてカットケーキは持ち帰ってくれるだろうかという期待も強く感じたのだった。
それから夕食時までの間、フォーラはみんなと一緒に過ごし、主にハリーの件でダンブルドアに質問する内容を話し合った。熱の入るハーマイオニーの陰でロンがこっそり教えてくれたのだが、以前ダンブルドアがここへ顔を出した際、ロンとハーマイオニーの二人はもう殆どと言っていいほどハリーについて質問し尽くしてしまったらしい。何故ハリーを早く騎士団本部に連れてこないのか、何故彼に梟便の返事を書いてはいけないのか、彼は今何をしているのか。そういった想像しうる内容全てが該当した。
ハリーに関してこれまでの中で一番有益な情報だったのは、彼の家周辺を毎日騎士団の誰かが見張っているということと、ハリーの叔母の家が彼にとって一番安全らしいということだけだった。ロンが続けた。
「僕らも色々考えたよ。ダンブルドアがどうしてハリーをここから遠ざけるのかって。だけどどっちにしろ、もし新学期になってハリーと顔を合わせたらきっと騎士団の話をすることになるし、あいつはきっとカンカンになって怒るに決まってる。好きでもない叔母さんと叔父さんの家に夏休み中閉じ込められて、一方僕らは騎士団の本部にいたんだから。でも、仕方がないだろ?ダンブルドアが駄目と言ったら駄目なんだ。きっと僕らがまだ子供だから、特に新聞で騒がれてるハリーには何も知らせたくないんだよ」
「そうよね……。ハリーのお家はどんな様子なの?」フォーラがロンを見て尋ね、彼の方は彼女が自分の話に関心を示していることに心の底でソワソワした。
「えっと、まず一家はマグルなんだ。魔法を毛嫌いしてる。僕は一度ハリーの家に行ったことがあるけど、あんまり叔父さんも叔母さんもハリーを好きじゃなさそうだった。ハリー曰く、あの家には一秒も居たくないって」
「そう……。幾ら安全でもそこにじっとしているのは、とてもつらいわね……。」
フォーラはふと脳裏に、自身の家族がこちらに笑いかけてくれる姿が浮かんだ。きっと自分はハリーに比べれば帰る家もあって十分恵まれているに違いなかった。だがそれでも彼女は自身の家族を受け入れられずに家から離れ、今現在この館に逃げ込んでいる。それを思うと彼女は複雑な感情に襲われた。
「ハリーが早くここに来られるように、微力かもしれないけど私からもダンブルドア先生にお願いしてみるわ。」
その日の夕食時になると、予定どおりダンブルドアがブラック邸に現れた。そこへルーピンやアーサーもほぼ同じタイミングで仕事から帰宅し、丁度玄関先でダンブルドアを迎え入れた。ダンブルドアは食堂に入ると、以前ここに来た時には見かけなかった顔ぶれに微笑んだ。
「おおフォーラ、元気にしておったかの」
フォーラは思わず椅子から立ち上がった。友人たちはダンブルドアに挨拶した後、丁度同じく食堂に入って来たアーサーとルーピンに気を取られ、そちらと会話を始めたところだった。
「ええと、はい。おかげさまで。みなさんが大変良くしてくださっているので。」
フォーラの幾らか迷いを含んだ返答に、ダンブルドアは相変わらず優しい笑みを向けた。フォーラは彼が単に日常的なよくある挨拶をしてきたのではなく、養子の件について少しは元気を取り戻したかを尋ねているのだと理解していた。それに、先程自分が発した『はい』という返事が嘘だと見透かされているのも十分に分かっていた。
「先生、私がここで過ごすことをお許しくださって本当にありがとうございました。それから、今学期の終わりに突然校長室に一人でお邪魔した時のことは、改めてすみませんでした。私がここで過ごし始めてから幾らか経ちますが、あの時先生から伺った『お願い』には、まだ向き合う余裕が―――」
「いいんじゃよ。」ダンブルドアがフォーラの発言を遮るようにして言った。それを受けてフォーラはこの話題をこの場でするべきではないのだと察した。彼女が学年末に一人でダンブルドアの部屋を訪ね、自身と家族の関係で悩んでいる旨を相談した時、彼からは次のようなお願いをされていた。
『もし、お主がいつかマグル生まれとしての自身を受け入れ、認めてやることができたなら、次はお主が別の誰かに手を差し伸べてやってほしいのじゃ』
『別の、誰か……。』
『そう、身近な誰かを。それが痛みを克服した人間に課せられた使命というものじゃ。そうした助け合いが明るい未来を切り開く鍵になる。恐らくお主に最も近く、最も手を差し伸べるべきはミスター・マルフォイじゃろう』
『彼を見守って、いや、見張っていてはくれんかの』
あの時ダンブルドアは具体的にどのようにすべきかまでは教えてくれなかった。
フォーラはたった今ダンブルドアがこの話題を打ち切った理由として、幾ら騎士団を率いる彼の直々のお願いとはいえ、騎士団の敵側である彼女の幼馴染に手を差し伸べようとすることが、今ここにいる人たちの反感を買うには十分すぎる材料なのだと察した。
「ごめんなさい、先生。」フォーラが後ろめたさ故に謝罪すると、ダンブルドアは相変わらず微笑んでいた。
「ゆっくりでよい。思うようにやってみるのが一番じゃからの」
「はい、ありがとうございます。」
手の空いた何人かが彼女の荷物を運ぶために駆け寄った。
「おかえりママ。いつもより荷物が多いね」ロンが紙袋の中を覗き見ながらそれを抱えた。
「そうなのよ。それがね、今日の夕食にダンブルドア先生がいらっしゃることになったの。お仕事で近くを通るから、ここにも寄ってくださるそうよ。スネイプ先生も一緒だけど彼の方は食事をなさらないそうなの」
「!」みんなダンブルドアが来ると聞いて顔が明るくなったが、スネイプの名を聞いた途端にフォーラを除いた学生メンバーは表情がやや引きつった。するとジニーが気を取り直したように発言した。
「じゃあ、校長先生が来るなら今晩は一杯おもてなししなきゃ。夜ならケーキも食べ頃になるし」
ハーマイオニーはそれを聞いてソワソワした。
「わあーっ校長先生に食べてもらうと思うと、急に緊張してきちゃった」
フォーラもつられてドキドキしたが、彼女に至っては、スネイプが夕食を食べないのなら、せめてカットケーキは持ち帰ってくれるだろうかという期待も強く感じたのだった。
それから夕食時までの間、フォーラはみんなと一緒に過ごし、主にハリーの件でダンブルドアに質問する内容を話し合った。熱の入るハーマイオニーの陰でロンがこっそり教えてくれたのだが、以前ダンブルドアがここへ顔を出した際、ロンとハーマイオニーの二人はもう殆どと言っていいほどハリーについて質問し尽くしてしまったらしい。何故ハリーを早く騎士団本部に連れてこないのか、何故彼に梟便の返事を書いてはいけないのか、彼は今何をしているのか。そういった想像しうる内容全てが該当した。
ハリーに関してこれまでの中で一番有益な情報だったのは、彼の家周辺を毎日騎士団の誰かが見張っているということと、ハリーの叔母の家が彼にとって一番安全らしいということだけだった。ロンが続けた。
「僕らも色々考えたよ。ダンブルドアがどうしてハリーをここから遠ざけるのかって。だけどどっちにしろ、もし新学期になってハリーと顔を合わせたらきっと騎士団の話をすることになるし、あいつはきっとカンカンになって怒るに決まってる。好きでもない叔母さんと叔父さんの家に夏休み中閉じ込められて、一方僕らは騎士団の本部にいたんだから。でも、仕方がないだろ?ダンブルドアが駄目と言ったら駄目なんだ。きっと僕らがまだ子供だから、特に新聞で騒がれてるハリーには何も知らせたくないんだよ」
「そうよね……。ハリーのお家はどんな様子なの?」フォーラがロンを見て尋ね、彼の方は彼女が自分の話に関心を示していることに心の底でソワソワした。
「えっと、まず一家はマグルなんだ。魔法を毛嫌いしてる。僕は一度ハリーの家に行ったことがあるけど、あんまり叔父さんも叔母さんもハリーを好きじゃなさそうだった。ハリー曰く、あの家には一秒も居たくないって」
「そう……。幾ら安全でもそこにじっとしているのは、とてもつらいわね……。」
フォーラはふと脳裏に、自身の家族がこちらに笑いかけてくれる姿が浮かんだ。きっと自分はハリーに比べれば帰る家もあって十分恵まれているに違いなかった。だがそれでも彼女は自身の家族を受け入れられずに家から離れ、今現在この館に逃げ込んでいる。それを思うと彼女は複雑な感情に襲われた。
「ハリーが早くここに来られるように、微力かもしれないけど私からもダンブルドア先生にお願いしてみるわ。」
その日の夕食時になると、予定どおりダンブルドアがブラック邸に現れた。そこへルーピンやアーサーもほぼ同じタイミングで仕事から帰宅し、丁度玄関先でダンブルドアを迎え入れた。ダンブルドアは食堂に入ると、以前ここに来た時には見かけなかった顔ぶれに微笑んだ。
「おおフォーラ、元気にしておったかの」
フォーラは思わず椅子から立ち上がった。友人たちはダンブルドアに挨拶した後、丁度同じく食堂に入って来たアーサーとルーピンに気を取られ、そちらと会話を始めたところだった。
「ええと、はい。おかげさまで。みなさんが大変良くしてくださっているので。」
フォーラの幾らか迷いを含んだ返答に、ダンブルドアは相変わらず優しい笑みを向けた。フォーラは彼が単に日常的なよくある挨拶をしてきたのではなく、養子の件について少しは元気を取り戻したかを尋ねているのだと理解していた。それに、先程自分が発した『はい』という返事が嘘だと見透かされているのも十分に分かっていた。
「先生、私がここで過ごすことをお許しくださって本当にありがとうございました。それから、今学期の終わりに突然校長室に一人でお邪魔した時のことは、改めてすみませんでした。私がここで過ごし始めてから幾らか経ちますが、あの時先生から伺った『お願い』には、まだ向き合う余裕が―――」
「いいんじゃよ。」ダンブルドアがフォーラの発言を遮るようにして言った。それを受けてフォーラはこの話題をこの場でするべきではないのだと察した。彼女が学年末に一人でダンブルドアの部屋を訪ね、自身と家族の関係で悩んでいる旨を相談した時、彼からは次のようなお願いをされていた。
『もし、お主がいつかマグル生まれとしての自身を受け入れ、認めてやることができたなら、次はお主が別の誰かに手を差し伸べてやってほしいのじゃ』
『別の、誰か……。』
『そう、身近な誰かを。それが痛みを克服した人間に課せられた使命というものじゃ。そうした助け合いが明るい未来を切り開く鍵になる。恐らくお主に最も近く、最も手を差し伸べるべきはミスター・マルフォイじゃろう』
『彼を見守って、いや、見張っていてはくれんかの』
あの時ダンブルドアは具体的にどのようにすべきかまでは教えてくれなかった。
フォーラはたった今ダンブルドアがこの話題を打ち切った理由として、幾ら騎士団を率いる彼の直々のお願いとはいえ、騎士団の敵側である彼女の幼馴染に手を差し伸べようとすることが、今ここにいる人たちの反感を買うには十分すぎる材料なのだと察した。
「ごめんなさい、先生。」フォーラが後ろめたさ故に謝罪すると、ダンブルドアは相変わらず微笑んでいた。
「ゆっくりでよい。思うようにやってみるのが一番じゃからの」
「はい、ありがとうございます。」