4. チョコレートケーキと彼
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フォーラはルーピンと約束してから―――そう、彼女の両親の事をここにいる間に一旦考えないようにすると約束してから数日が経ったが、きちんとそれを守って日々を過ごしていた。どうしても思い出しそうになる瞬間はあった。だが、ルーピンがきっと両親との新しい関係を築けると断言してくれた。肩の荷が下りたわけではないが、それを信じる事で自分でも前よりいくらか笑顔が増えたように思ったし、何よりいらぬ事を―――両親のことやドラコのことも考える回数が随分減った。
この日、子供たちは久しぶりにモリーから屋敷の掃除を免除されていた。シリウスの母の屋敷は随分使われておらず初めは埃や蜘蛛の巣で一杯だったが、モリーと子供達やシリウスの努力の甲斐あって随分片付いてきたため、今日は一日お休みとなったのだ。
ハーマイオニーはフォーラが見る限り毎日日刊預言者新聞に目を通しては何かヴォルデモートの復活について真新しい記事が無いかと隅から隅まで調べていたが、とうとうこの日は気が抜けたのか、ダイニングテーブルに広げた新聞を早々に畳んでしまっていた。彼女の近くにはジニーが座っていて、その向こうでロンと双子がチェスに興じていた。
「収穫なし。またいつも通り記事の至る所にハリーの名前が散らばっているだけだわ」ハーマイオニーが言った。
終業式のあの日、ダンブルドアから学校中にハリーがヴォルデモートの復活を見たと話があった。それは瞬く間に魔法界に広まったが、残念ながら正しい情報としては伝わらなかった。新聞は闇の帝王の復活がハリーの戯言だと宣言していた。そして新聞の各記事に散らばった彼の名前は比喩的に使用され(『あんな事をしでかすとは、まるでハリー・ポッター同然だ』など)、印象操作を成功させていた。
「ハリーはきっと新聞を読んでいるから、とっても辛い筈よ。何故こんな事になっているかわけがわからないでしょうし、ダンブルドアから口止めされているから、私達からも伝えてあげられないし・・・」
フォーラがハーマイオニーから聞いた話によると、どうやら日刊預言者新聞は魔法省の指示通り動いているのだという。この屋敷でフォーラが初めて日刊預言者新聞の話を耳にした時に彼女が教えてくれた。
フォーラは朝食の片付いたキッチンの向こう側でボウルを数種類準備しながら、何日か前のハーマイオニーの言葉を思い出していた。
『魔法大臣のファッジはダンブルドアより確実に力が劣っているのを自分でわかっているのよ。それに、ダンブルドアがハリーを使って大臣の座を奪い取ろうとしてるって、そう考えているわけ。』
フォーラが言った。
「・・早く、新聞が本当の事を伝える日がくればいいのに。それには、もう大臣が変わるしか無いのかしら・・?」
するとチェスを傍観していたフレッドがこちらに言葉を投げかけてきた。
「もう一つだけ方法があるぜ。ファッジの目の前に『例のあの人』を突きつけてやるのさ」
ハーマイオニーが彼を振り返った。
「もう、そんな冗談言わないでよ。
とにかく今日はせっかくのお休みなんだから。こんな新聞より、フォーラを手伝うって決めたんだったわ。
さあ、何からすればいい?」
フォーラはルーピンが買ってきたお菓子づくりの本に載っているチョコレートケーキに取り掛かった。ハーマイオニーとジニーが手伝ってくれることになり、食べる人数が多いのもあって二ホール分作れることになった。
キッチンでハーマイオニーが計量し終わった材料をジニーとフォーラが混ぜて生地を作っていると、夜勤の任務明けで今さっき起き出してきたトンクスが部屋に入るなり彼女らに「おはよう」と声をかけた。彼女とは何日か前にこの屋敷で会ったことがある。キングズリーやムーディと同じ闇払いの仕事をしている若い女性だ。この間見たときは水色のショートヘアだったが、今日は紫のロングウェーブだった。今日は彼女も任務が無く一日休みのためここで過ごすらしい。
フレッドとジョージはフォーラが料理をするところに興味津々でキッチンに残ると申し出ていたが、ジニーに「男子禁制!」と言って追い出されていた。トンクスはそれを見て笑いながらパンと紅茶を用意し、キッチンカウンターの一番近いテーブルで朝食を摂り始めた。
「いいなあお菓子が作れて。フォーラのは美味しいって聞いたよ。」
「い、いえ、そんな・・。」
「私ったら本の通りやっても全然美味しくならないの。変身・隠遁は大得意だけど、家事の魔法はからっきしだもの」
トンクスは生まれつき自分の身体の見た目を杖なしで変化させられる「七変化」の能力を持っている。その力とセンス、そして勿論努力の甲斐あって闇払いに就職し、今ではマッドアイ・ムーディに誘われて不死鳥の騎士団に所属している。
トンクスが続けた。
「それに、杖も使わず作っているから本当に凄いよ。マグルがやるみたいにやるんでしょ?大変じゃない?」
「確かに少し疲れます。・・・でもまだ学校の外で魔法が使えないうちは仕方がないし、・・何より頑張った分、後で美味しいって言ってもらえたら、それで十分なんです。」
フォーラはトンクスに微笑んだ後、魔法の自動泡立て器を使って生地に空気を含ませにかかった。
フォーラはジニーとハーマイオニーに自分の十分に嵩高くなった生地の元を見せた。そしてジニーが混ぜていたのを今度はハーマイオニーが交代して同じになるまでかき混ぜた。嵩高くなったところでフォーラに続いて溶かしバターをサッと垂らし入れ、ボウルで大きくすくって適度に混ぜ合わせた。型に生地を流し入れ生地の型をトントンと台に落として慣らし、フォーラが予熱したオーブンに身を屈めて手際よく型を入れた。
「上手くいくかしら?」
この日、子供たちは久しぶりにモリーから屋敷の掃除を免除されていた。シリウスの母の屋敷は随分使われておらず初めは埃や蜘蛛の巣で一杯だったが、モリーと子供達やシリウスの努力の甲斐あって随分片付いてきたため、今日は一日お休みとなったのだ。
ハーマイオニーはフォーラが見る限り毎日日刊預言者新聞に目を通しては何かヴォルデモートの復活について真新しい記事が無いかと隅から隅まで調べていたが、とうとうこの日は気が抜けたのか、ダイニングテーブルに広げた新聞を早々に畳んでしまっていた。彼女の近くにはジニーが座っていて、その向こうでロンと双子がチェスに興じていた。
「収穫なし。またいつも通り記事の至る所にハリーの名前が散らばっているだけだわ」ハーマイオニーが言った。
終業式のあの日、ダンブルドアから学校中にハリーがヴォルデモートの復活を見たと話があった。それは瞬く間に魔法界に広まったが、残念ながら正しい情報としては伝わらなかった。新聞は闇の帝王の復活がハリーの戯言だと宣言していた。そして新聞の各記事に散らばった彼の名前は比喩的に使用され(『あんな事をしでかすとは、まるでハリー・ポッター同然だ』など)、印象操作を成功させていた。
「ハリーはきっと新聞を読んでいるから、とっても辛い筈よ。何故こんな事になっているかわけがわからないでしょうし、ダンブルドアから口止めされているから、私達からも伝えてあげられないし・・・」
フォーラがハーマイオニーから聞いた話によると、どうやら日刊預言者新聞は魔法省の指示通り動いているのだという。この屋敷でフォーラが初めて日刊預言者新聞の話を耳にした時に彼女が教えてくれた。
フォーラは朝食の片付いたキッチンの向こう側でボウルを数種類準備しながら、何日か前のハーマイオニーの言葉を思い出していた。
『魔法大臣のファッジはダンブルドアより確実に力が劣っているのを自分でわかっているのよ。それに、ダンブルドアがハリーを使って大臣の座を奪い取ろうとしてるって、そう考えているわけ。』
フォーラが言った。
「・・早く、新聞が本当の事を伝える日がくればいいのに。それには、もう大臣が変わるしか無いのかしら・・?」
するとチェスを傍観していたフレッドがこちらに言葉を投げかけてきた。
「もう一つだけ方法があるぜ。ファッジの目の前に『例のあの人』を突きつけてやるのさ」
ハーマイオニーが彼を振り返った。
「もう、そんな冗談言わないでよ。
とにかく今日はせっかくのお休みなんだから。こんな新聞より、フォーラを手伝うって決めたんだったわ。
さあ、何からすればいい?」
フォーラはルーピンが買ってきたお菓子づくりの本に載っているチョコレートケーキに取り掛かった。ハーマイオニーとジニーが手伝ってくれることになり、食べる人数が多いのもあって二ホール分作れることになった。
キッチンでハーマイオニーが計量し終わった材料をジニーとフォーラが混ぜて生地を作っていると、夜勤の任務明けで今さっき起き出してきたトンクスが部屋に入るなり彼女らに「おはよう」と声をかけた。彼女とは何日か前にこの屋敷で会ったことがある。キングズリーやムーディと同じ闇払いの仕事をしている若い女性だ。この間見たときは水色のショートヘアだったが、今日は紫のロングウェーブだった。今日は彼女も任務が無く一日休みのためここで過ごすらしい。
フレッドとジョージはフォーラが料理をするところに興味津々でキッチンに残ると申し出ていたが、ジニーに「男子禁制!」と言って追い出されていた。トンクスはそれを見て笑いながらパンと紅茶を用意し、キッチンカウンターの一番近いテーブルで朝食を摂り始めた。
「いいなあお菓子が作れて。フォーラのは美味しいって聞いたよ。」
「い、いえ、そんな・・。」
「私ったら本の通りやっても全然美味しくならないの。変身・隠遁は大得意だけど、家事の魔法はからっきしだもの」
トンクスは生まれつき自分の身体の見た目を杖なしで変化させられる「七変化」の能力を持っている。その力とセンス、そして勿論努力の甲斐あって闇払いに就職し、今ではマッドアイ・ムーディに誘われて不死鳥の騎士団に所属している。
トンクスが続けた。
「それに、杖も使わず作っているから本当に凄いよ。マグルがやるみたいにやるんでしょ?大変じゃない?」
「確かに少し疲れます。・・・でもまだ学校の外で魔法が使えないうちは仕方がないし、・・何より頑張った分、後で美味しいって言ってもらえたら、それで十分なんです。」
フォーラはトンクスに微笑んだ後、魔法の自動泡立て器を使って生地に空気を含ませにかかった。
フォーラはジニーとハーマイオニーに自分の十分に嵩高くなった生地の元を見せた。そしてジニーが混ぜていたのを今度はハーマイオニーが交代して同じになるまでかき混ぜた。嵩高くなったところでフォーラに続いて溶かしバターをサッと垂らし入れ、ボウルで大きくすくって適度に混ぜ合わせた。型に生地を流し入れ生地の型をトントンと台に落として慣らし、フォーラが予熱したオーブンに身を屈めて手際よく型を入れた。
「上手くいくかしら?」