3. リーマス
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私、別に両親を責めてなんか……」そうは言ったものの、フォーラの語尾は次第に霞 になっていた。彼女は夏休みの最初の頃に自宅で過ごしている間、自室で涙を流しながら両親を疎んだ記憶をかき消した。
「君が一旦全てを忘れた気でみんなと過ごせば、きっと今まで気付かなかったことに気付ける筈だ。そして、今後ご両親に対してどう接すべきか、今のような気持ちも含めてどうしていくべきかが分かるかもしれない。私はそう信じている」
ルーピンの言葉を受けて、フォーラは視線を再度彼の方に戻した。彼女のその瞳には不安と期待が伺え、そこに映るルーピンは優しく笑っていた。
「もしかしたら、元と全く同じ関係には戻れないことだってあるかもしれない。だけど、これまでと違っていたっていいんだ。ご両親と新しい関係を築けたなら、私はそれが君の出した答えなんだと思うよ」
フォーラは数回瞬きした後、ルーピンの言葉が腑に落ちた。今までの自分はあまりにも家族とこれまでどおりの関係に戻ることを望みすぎていた気がした。そのことに気付かされ、彼女はなんだかほんの少し胸のつかえがマシになった気分だった。そしてようやくルーピンに笑みを見せたのだった。
「なんだかルーピン先生と話していると、両親や純血への気持ちも、そのうち納得できる答えを出せるような気がしてきました。」
「焦らなくていいよ。ゆっくり進めばいいんだから」ルーピンは彼女の様子に心から安堵した。
「はい。……先生、私とは随分お顔を合わせていなかったのに、こうして気遣ってくださって本当にありがとうございます。私、本当に嬉しく思っています。」
「元教え子に親身になるのは当然のことだよ。それに、他のみんなもフォーラには早く元気になってほしいと思っている筈だ。先ずは少しでも君が前を向けたのなら良かったよ」
「はい。きっと先生が落ち着いて励ましてくださったから、それで少し安心できたんだと思います。」
「はは、そんな風に言われると気恥ずかしいな。私は特段何をしたわけでもないさ」
照れて笑うルーピンにフォーラは首を横に振った。
「そんなことないです。それに私、ルーピン先生のそういうところがずっと好きなんですよ。」
「!」あまりにも突然の言葉にルーピンは随分驚き、一瞬何も言葉が出てこなかった。それこそ数日前、この館で初めてフォーラと再会して彼女に抱きつかれた時よりも動揺した。
「はは、ありがとう」ルーピンは咄嗟に発した声が、まるで自分自身のものではないように思えて妙な気分になった。
そしてルーピンはその感情にあてられて、これまでずっと考えていたことをフォーラに伝えるべきか、それが今でいいのかと少しばかりジリジリとした想いを抱えた。
「そういえばフォーラ、君は私のことをまだ『ルーピン先生』と呼んでくれるけど、分かっているとは思うがもう私は君たちの先生ではないから、ハーマイオニーや他のみんなは私のことをルーピンと呼ぶんだ。私はそれが自然だと思うし、だから」
ルーピンの頭の中を、ほんの一瞬だけ『リーマス』という自身のファーストネームがかすめていった。しかし彼はそれを上書きするかのように浅く短い息を吸って続けた。
「私のことは、単にルーピンでいい」
フォーラは彼をじっと見つめた後で頷いた。
「ええと……ルーピン。なんだか慣れませんね。」
その呼びかけに彼は納得したようで、満足そうな笑みを返した。
「ここにいる間は、ここでの時間を存分に楽しみなさい。それから、何か相談があったらいつでも私に話しにおいで。一緒に悩もう」
「……はい。」
ルーピンは先程よりもフォーラの不安感が減っているように見え、自らの手でそうしてあげられたことを嬉しく思った。そしてフォーラはとうとう椅子から立ち上がった。
「こんな時間に押し掛けてすみませんでした。また明日からも、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。またいつでも話しにおいで」ルーピンはそう言ってフォーラに続いて立ち上がり、直ぐそばの出入口まで一緒に向かった。彼が扉を開けるとフォーラが廊下に出て彼を振り返った。
「今度、ルーピンの買ってきた本に載っていたチョコレートケーキを作りますね。上手く出来るように祈っていてください。」
「!ありがとう、勿論だよ」
「それじゃあ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ」
そうしてフォーラが廊下から見えなくなると、ルーピンは静かに扉を閉めて蛇を象ったドアノブからゆっくりと手を離した。
(フォーラが少しでも元気になって安心した。無理にではあったが悩みを考えないようにと提案してみてよかった。みんなと過ごしていれば、きっと純血とどうあるべきか、家族とは何か、彼女なりの答えが見つかる筈だ)
ルーピンはデスクに向かいながらそのようなことを考えていたが、いや、正確にはそれしか考えないように努めていたのだが、途端に先程のフォーラが見せたありとあらゆる表情が脳裏に映し出された。そして無意識のうちに身体中が熱くなり、仕舞いには先程の彼女の声も思い出された。
『ルーピン先生のそういうところがずっと好きなんですよ。』
『ルーピン』
深く長いため息と共に、ルーピンは先程までフォーラのいたデスク横の椅子に倒れ込むようにドサッと座り込んだ。そんな彼は耳まで真っ赤になっていた。
(こんなことで喜んで、だから何だというんだ。私には騎士団の任務が山積みじゃないか。フォーラは確かに可愛い元教え子だ。しかし私にとってはそれ以上でも以下でもないだろう。それをファーストネームで呼ばせようなんてもってのほかだ。私たち大人は子供たちが頼ってくれるならそれに応えるまでだ。そうあるべきだし、それでいいんだ)
ルーピンは心の隅で大きく目立ち始めた気持ちの昂りを、まくし立てた気持ちで上書きしてかなぐり捨てた。それでいい。ルーピンは何度も繰り返し頭の中でそう唱えたのだった。
「君が一旦全てを忘れた気でみんなと過ごせば、きっと今まで気付かなかったことに気付ける筈だ。そして、今後ご両親に対してどう接すべきか、今のような気持ちも含めてどうしていくべきかが分かるかもしれない。私はそう信じている」
ルーピンの言葉を受けて、フォーラは視線を再度彼の方に戻した。彼女のその瞳には不安と期待が伺え、そこに映るルーピンは優しく笑っていた。
「もしかしたら、元と全く同じ関係には戻れないことだってあるかもしれない。だけど、これまでと違っていたっていいんだ。ご両親と新しい関係を築けたなら、私はそれが君の出した答えなんだと思うよ」
フォーラは数回瞬きした後、ルーピンの言葉が腑に落ちた。今までの自分はあまりにも家族とこれまでどおりの関係に戻ることを望みすぎていた気がした。そのことに気付かされ、彼女はなんだかほんの少し胸のつかえがマシになった気分だった。そしてようやくルーピンに笑みを見せたのだった。
「なんだかルーピン先生と話していると、両親や純血への気持ちも、そのうち納得できる答えを出せるような気がしてきました。」
「焦らなくていいよ。ゆっくり進めばいいんだから」ルーピンは彼女の様子に心から安堵した。
「はい。……先生、私とは随分お顔を合わせていなかったのに、こうして気遣ってくださって本当にありがとうございます。私、本当に嬉しく思っています。」
「元教え子に親身になるのは当然のことだよ。それに、他のみんなもフォーラには早く元気になってほしいと思っている筈だ。先ずは少しでも君が前を向けたのなら良かったよ」
「はい。きっと先生が落ち着いて励ましてくださったから、それで少し安心できたんだと思います。」
「はは、そんな風に言われると気恥ずかしいな。私は特段何をしたわけでもないさ」
照れて笑うルーピンにフォーラは首を横に振った。
「そんなことないです。それに私、ルーピン先生のそういうところがずっと好きなんですよ。」
「!」あまりにも突然の言葉にルーピンは随分驚き、一瞬何も言葉が出てこなかった。それこそ数日前、この館で初めてフォーラと再会して彼女に抱きつかれた時よりも動揺した。
「はは、ありがとう」ルーピンは咄嗟に発した声が、まるで自分自身のものではないように思えて妙な気分になった。
そしてルーピンはその感情にあてられて、これまでずっと考えていたことをフォーラに伝えるべきか、それが今でいいのかと少しばかりジリジリとした想いを抱えた。
「そういえばフォーラ、君は私のことをまだ『ルーピン先生』と呼んでくれるけど、分かっているとは思うがもう私は君たちの先生ではないから、ハーマイオニーや他のみんなは私のことをルーピンと呼ぶんだ。私はそれが自然だと思うし、だから」
ルーピンの頭の中を、ほんの一瞬だけ『リーマス』という自身のファーストネームがかすめていった。しかし彼はそれを上書きするかのように浅く短い息を吸って続けた。
「私のことは、単にルーピンでいい」
フォーラは彼をじっと見つめた後で頷いた。
「ええと……ルーピン。なんだか慣れませんね。」
その呼びかけに彼は納得したようで、満足そうな笑みを返した。
「ここにいる間は、ここでの時間を存分に楽しみなさい。それから、何か相談があったらいつでも私に話しにおいで。一緒に悩もう」
「……はい。」
ルーピンは先程よりもフォーラの不安感が減っているように見え、自らの手でそうしてあげられたことを嬉しく思った。そしてフォーラはとうとう椅子から立ち上がった。
「こんな時間に押し掛けてすみませんでした。また明日からも、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。またいつでも話しにおいで」ルーピンはそう言ってフォーラに続いて立ち上がり、直ぐそばの出入口まで一緒に向かった。彼が扉を開けるとフォーラが廊下に出て彼を振り返った。
「今度、ルーピンの買ってきた本に載っていたチョコレートケーキを作りますね。上手く出来るように祈っていてください。」
「!ありがとう、勿論だよ」
「それじゃあ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ」
そうしてフォーラが廊下から見えなくなると、ルーピンは静かに扉を閉めて蛇を象ったドアノブからゆっくりと手を離した。
(フォーラが少しでも元気になって安心した。無理にではあったが悩みを考えないようにと提案してみてよかった。みんなと過ごしていれば、きっと純血とどうあるべきか、家族とは何か、彼女なりの答えが見つかる筈だ)
ルーピンはデスクに向かいながらそのようなことを考えていたが、いや、正確にはそれしか考えないように努めていたのだが、途端に先程のフォーラが見せたありとあらゆる表情が脳裏に映し出された。そして無意識のうちに身体中が熱くなり、仕舞いには先程の彼女の声も思い出された。
『ルーピン先生のそういうところがずっと好きなんですよ。』
『ルーピン』
深く長いため息と共に、ルーピンは先程までフォーラのいたデスク横の椅子に倒れ込むようにドサッと座り込んだ。そんな彼は耳まで真っ赤になっていた。
(こんなことで喜んで、だから何だというんだ。私には騎士団の任務が山積みじゃないか。フォーラは確かに可愛い元教え子だ。しかし私にとってはそれ以上でも以下でもないだろう。それをファーストネームで呼ばせようなんてもってのほかだ。私たち大人は子供たちが頼ってくれるならそれに応えるまでだ。そうあるべきだし、それでいいんだ)
ルーピンは心の隅で大きく目立ち始めた気持ちの昂りを、まくし立てた気持ちで上書きしてかなぐり捨てた。それでいい。ルーピンは何度も繰り返し頭の中でそう唱えたのだった。