19. You are very special to me: 3rd volume
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すると群衆の上に浮いていたピーブズが、何と鈴飾りの付いた帽子をさっと脱ぎ、啓礼の姿勢を取ったではないか。このポルターガイストが誰か生徒の言うことを聞く場面など、フォーラも誰も今まで一度も見たことがなかった。それだけに生徒たちはやんやと喝采した。
そうしてフレッドとジョージが満足そうに樫の大扉に踵を返そうとした時、ふとジョージとフォーラの視線がかち合った。彼はフレッドに何やら一声かけると、フレッドはやれやれと呆れた笑顔で返答し、どこからともなく例のロケット花火を幾つか取り出して火を付けた。あっという間に玄関ホールは混乱の場となり、その間にジョージは生徒たちの頭上を飛び越え、ピーブズが今にも真下のアンブリッジにクソ爆弾を落とそうとしている横を通り過ぎ、なんと群衆の外側にいるフォーラの目の前に降り立った。その際、近くにいた生徒たちは鉄の杭から逃れるためにサッと場所を空けて避難した。
フォーラもドラコも驚きのあまり何も出来ずにいたのだが、それをよそにジョージがフォーラに笑いかけた。
「やあ、俺の最愛。来ないかと思ったぜ」
ジョージが随分気軽な雰囲気でそのように挨拶し、杖を振った。彼は無言呪文を唱えたようで、杖先から燃えるように赤い色をしたフリージアの花を出現させた。そして彼自身の髪色によく似合うその花をフォーラの方に差し出し、彼女の手に握らせた。
するとドラコがハッと意識を引き戻してジョージに杖を向けようとした―――しかしその前にジョージはサッと杖を振り、武装解除呪文でドラコの杖を跳ね飛ばした。
「お別れだ」
ジョージは手短にそう言うと、フォーラの頬に軽く口付けた。するとジョージの近くにいた生徒たちがその状況にキャッと湧いたり、ヒューヒューと囃し立てたりした。そしてフォーラが驚いて頬をおさえる姿に、ジョージは困ったようにクスリと笑った。
「どうやら君を手に入れたであろうそこの野郎に、少々意地悪したくなったんでね。どうか許してくれよ」
ジョージはそう言い残すと直ぐに箒に跨り直し、地面を蹴って上空に飛んだ。そしてフォーラを振り返って彼女に手を振った。彼女の周囲の生徒何人もが元気に手を振り返す中、フォーラはまだ突然のことに驚きを隠せず呆気に取られているようだった。しかし周りにつられて彼女も直ぐに漠然と小さく手を振り返した。そしてその手を彼女の隣にいたドラコが握って制し、ドラコが彼女の頬―――先程ジョージが彼女にキスした場所を袖でゴシゴシと拭う様をジョージは見た。
(フォーラ、良かったな)
ジョージはその光景に、自分でも意外だと感じる程満足しているようだった。彼はフレッドのところまで飛んで戻ると、今度こそ二人して開け放たれた正面の扉を素早く通り抜け、輝かしい夕焼けの空へと吸い込まれていったのだった。
多くの生徒たちはフレッドとジョージが出て行くのを追いかけるようにして、ワッと樫の大扉の方へ一斉に飛び出した。アンブリッジも尋問官親衛隊もピーブズから逃れるようにその波に続いたし、ピーブズすらもその波にならった。しかしドラコとフォーラはそうしなかった。
「アクシオ―――はい、貴方の杖よ。」
フォーラは、先程フレッドがはじいたドラコの杖を呼び寄せした。そして優しく微笑むと、それをドラコに手渡した。
「ああ、……ありがとう。……随分、格好悪いところを見せた」ドラコは杖を受け取りながら、居心地悪そうにお礼を言った。
「ううん、そんなことないわよ。それに私は……貴方が守ろうとしてくれたこと自体が、嬉しかったから。」
ドラコは突然のこととはいえ、ジョージになす術もなかったことに幾らかショックを受けていた。しかし目の前の彼女が自分の行動に嬉しそうにしているのを見て、落ち込んだ気持ちがほんの僅かだけ持ち直した。ドラコは自分の未熟さに悔いるのを後回しにし、気を取り直して尋ねた。
「君は、外へ行かないのか」
「ドラコがそうしないのなら、行かないわ。」フォーラは優しくそう言って続けた。「だけど、ドラコはアンブリッジ先生のところへ行かなくて大丈夫?」
「ああ……、ウィーズリーの双子はもういないし、今は別に、先生の所へ行かなくたってかまわないだろう。あそこへ行って、僕までピーブズに汚される必要はない」
ドラコは静かにそう答えた。その声色には、フォーラが自分を選んでくれたという喜びが幾らか伺えた。
そしてふとドラコは視線をフォーラの手元のフリージアの花に移した。フォーラが自分を優先してくれたとはいえ、ドラコは彼女の手の中にある真っ赤な色にジョージを重ね、幾らか嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
「それにしても、奴は最後の最後まで―――。
この一年、めっきりフォーラに声をかけなくなったと思って油断していた。奴は結局、フォーラに惚れたままだったんだな」
「ええと……。少しは好かれている気はしていたわ。だけどまさか突然、あんな風に伝えられるとは思わなくて……驚いて何も言えなかったわ。」
フォーラはジョージにとっくに告白されていたことにはあえて触れず、曖昧な笑みを返した。とはいえジョージの行動に驚いたことは事実だ。するとドラコが悪態を突くように続けた。
「しかも僕の目の前で、ご丁寧にも君にこんな花まで押し付けて。はっきり言って、あいつが用意したものよりも……僕がフォーラに渡した花の方が、君の肌の色に合うし、ずっと似合っていた」
ドラコは後半の言葉を幾らか躊躇いを含んでそのように言った。しかしフォーラにはそれが何の話か分からなかった。
「ドラコがくれた……?」
「ああ」フォーラの疑問にドラコは短く遠慮気味に頷いた。そして彼は言い淀んだ後、思い切って続きを伝えたのだった。「クリスマスに君の家でパーティーがあっただろう。その終わり際、君の髪に黄色のラッパ水仙を飾ったのは、僕だ」
「!」フォーラはハッと息を呑んだ。「私、そんなことは少しも……。だけど、どうやって?」
ドラコはフォーラにこれまでずっと黙っていたことをとうとう打ち明けたことに、少々戸惑いながらチラと玄関ホールから外に続く大扉の方を見た。相変わらず多くの生徒がホールの外で騒いでいるが、そのうち群衆は中に戻ってくるだろう。
「それは……あまりここで話すようなことじゃない。それに一つ話しだすと他にも随分色々ありすぎて、立ち話じゃ話しきれない。……だからもし君が良ければ、場所を変えて話をしたい。二人きりになれる場所で、これまでの事も含めて」
ドラコとフォーラは大扉を通ることを避け、別の道から湖の方へ出た。晴れた春の空は夕方だというのにまだ随分と青かった。完全に冬が明け、日の入りが段々と長くなってきた証拠だ。この美しい環境に今フォーラとドラコしかいないのは、きっとみんな城の中の至る所でフレッドとジョージの話題を誰かと共有したくて仕方がないからだろう。談話室や校内の廊下とか、そう言った場所は常に誰かしら人がいて、話に花を咲かせるのにうってつけなのだ。
そうして喧騒を離れた二人は誰もいない湖の畔に向かって、並んで春の芝生を踏みしめたのだった。
そうしてフレッドとジョージが満足そうに樫の大扉に踵を返そうとした時、ふとジョージとフォーラの視線がかち合った。彼はフレッドに何やら一声かけると、フレッドはやれやれと呆れた笑顔で返答し、どこからともなく例のロケット花火を幾つか取り出して火を付けた。あっという間に玄関ホールは混乱の場となり、その間にジョージは生徒たちの頭上を飛び越え、ピーブズが今にも真下のアンブリッジにクソ爆弾を落とそうとしている横を通り過ぎ、なんと群衆の外側にいるフォーラの目の前に降り立った。その際、近くにいた生徒たちは鉄の杭から逃れるためにサッと場所を空けて避難した。
フォーラもドラコも驚きのあまり何も出来ずにいたのだが、それをよそにジョージがフォーラに笑いかけた。
「やあ、俺の最愛。来ないかと思ったぜ」
ジョージが随分気軽な雰囲気でそのように挨拶し、杖を振った。彼は無言呪文を唱えたようで、杖先から燃えるように赤い色をしたフリージアの花を出現させた。そして彼自身の髪色によく似合うその花をフォーラの方に差し出し、彼女の手に握らせた。
するとドラコがハッと意識を引き戻してジョージに杖を向けようとした―――しかしその前にジョージはサッと杖を振り、武装解除呪文でドラコの杖を跳ね飛ばした。
「お別れだ」
ジョージは手短にそう言うと、フォーラの頬に軽く口付けた。するとジョージの近くにいた生徒たちがその状況にキャッと湧いたり、ヒューヒューと囃し立てたりした。そしてフォーラが驚いて頬をおさえる姿に、ジョージは困ったようにクスリと笑った。
「どうやら君を手に入れたであろうそこの野郎に、少々意地悪したくなったんでね。どうか許してくれよ」
ジョージはそう言い残すと直ぐに箒に跨り直し、地面を蹴って上空に飛んだ。そしてフォーラを振り返って彼女に手を振った。彼女の周囲の生徒何人もが元気に手を振り返す中、フォーラはまだ突然のことに驚きを隠せず呆気に取られているようだった。しかし周りにつられて彼女も直ぐに漠然と小さく手を振り返した。そしてその手を彼女の隣にいたドラコが握って制し、ドラコが彼女の頬―――先程ジョージが彼女にキスした場所を袖でゴシゴシと拭う様をジョージは見た。
(フォーラ、良かったな)
ジョージはその光景に、自分でも意外だと感じる程満足しているようだった。彼はフレッドのところまで飛んで戻ると、今度こそ二人して開け放たれた正面の扉を素早く通り抜け、輝かしい夕焼けの空へと吸い込まれていったのだった。
多くの生徒たちはフレッドとジョージが出て行くのを追いかけるようにして、ワッと樫の大扉の方へ一斉に飛び出した。アンブリッジも尋問官親衛隊もピーブズから逃れるようにその波に続いたし、ピーブズすらもその波にならった。しかしドラコとフォーラはそうしなかった。
「アクシオ―――はい、貴方の杖よ。」
フォーラは、先程フレッドがはじいたドラコの杖を呼び寄せした。そして優しく微笑むと、それをドラコに手渡した。
「ああ、……ありがとう。……随分、格好悪いところを見せた」ドラコは杖を受け取りながら、居心地悪そうにお礼を言った。
「ううん、そんなことないわよ。それに私は……貴方が守ろうとしてくれたこと自体が、嬉しかったから。」
ドラコは突然のこととはいえ、ジョージになす術もなかったことに幾らかショックを受けていた。しかし目の前の彼女が自分の行動に嬉しそうにしているのを見て、落ち込んだ気持ちがほんの僅かだけ持ち直した。ドラコは自分の未熟さに悔いるのを後回しにし、気を取り直して尋ねた。
「君は、外へ行かないのか」
「ドラコがそうしないのなら、行かないわ。」フォーラは優しくそう言って続けた。「だけど、ドラコはアンブリッジ先生のところへ行かなくて大丈夫?」
「ああ……、ウィーズリーの双子はもういないし、今は別に、先生の所へ行かなくたってかまわないだろう。あそこへ行って、僕までピーブズに汚される必要はない」
ドラコは静かにそう答えた。その声色には、フォーラが自分を選んでくれたという喜びが幾らか伺えた。
そしてふとドラコは視線をフォーラの手元のフリージアの花に移した。フォーラが自分を優先してくれたとはいえ、ドラコは彼女の手の中にある真っ赤な色にジョージを重ね、幾らか嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
「それにしても、奴は最後の最後まで―――。
この一年、めっきりフォーラに声をかけなくなったと思って油断していた。奴は結局、フォーラに惚れたままだったんだな」
「ええと……。少しは好かれている気はしていたわ。だけどまさか突然、あんな風に伝えられるとは思わなくて……驚いて何も言えなかったわ。」
フォーラはジョージにとっくに告白されていたことにはあえて触れず、曖昧な笑みを返した。とはいえジョージの行動に驚いたことは事実だ。するとドラコが悪態を突くように続けた。
「しかも僕の目の前で、ご丁寧にも君にこんな花まで押し付けて。はっきり言って、あいつが用意したものよりも……僕がフォーラに渡した花の方が、君の肌の色に合うし、ずっと似合っていた」
ドラコは後半の言葉を幾らか躊躇いを含んでそのように言った。しかしフォーラにはそれが何の話か分からなかった。
「ドラコがくれた……?」
「ああ」フォーラの疑問にドラコは短く遠慮気味に頷いた。そして彼は言い淀んだ後、思い切って続きを伝えたのだった。「クリスマスに君の家でパーティーがあっただろう。その終わり際、君の髪に黄色のラッパ水仙を飾ったのは、僕だ」
「!」フォーラはハッと息を呑んだ。「私、そんなことは少しも……。だけど、どうやって?」
ドラコはフォーラにこれまでずっと黙っていたことをとうとう打ち明けたことに、少々戸惑いながらチラと玄関ホールから外に続く大扉の方を見た。相変わらず多くの生徒がホールの外で騒いでいるが、そのうち群衆は中に戻ってくるだろう。
「それは……あまりここで話すようなことじゃない。それに一つ話しだすと他にも随分色々ありすぎて、立ち話じゃ話しきれない。……だからもし君が良ければ、場所を変えて話をしたい。二人きりになれる場所で、これまでの事も含めて」
ドラコとフォーラは大扉を通ることを避け、別の道から湖の方へ出た。晴れた春の空は夕方だというのにまだ随分と青かった。完全に冬が明け、日の入りが段々と長くなってきた証拠だ。この美しい環境に今フォーラとドラコしかいないのは、きっとみんな城の中の至る所でフレッドとジョージの話題を誰かと共有したくて仕方がないからだろう。談話室や校内の廊下とか、そう言った場所は常に誰かしら人がいて、話に花を咲かせるのにうってつけなのだ。
そうして喧騒を離れた二人は誰もいない湖の畔に向かって、並んで春の芝生を踏みしめたのだった。