19. 特別な君③
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多くの生徒たちはフレッドとジョージが出ていったのを追いかけるべく、ワッと樫の大扉の方へ一斉に飛び出した。アンブリッジも尋問官親衛隊も、ピーブズから逃れるようにその波に続いたし、ピーブズすらもそれに倣った。しかしドラコとフォーラはそうしなかった。
「アクシオ―――はい、貴方の杖よ。」
フォーラは先程フレッドがはじいたドラコの杖を呼び寄せし、優しく微笑んで手渡した。
「ああ、……ありがとう。……随分、格好悪いところを見せた」
ドラコは杖を受け取りながら大層居心地悪そうにお礼を言った。
「ううん、そんなことないわ。それに私は……貴方が守ろうとしてくれたこと自体が、嬉しかったから。」
ドラコは突然の事だったとはいえ、ジョージになす術もなくやられてしまって幾らかショックを受けていた。しかし目の前の彼女がこちらの不甲斐なさとは無関係に嬉しそうにしているのを見て、落ち込んだ気持ちがほんの僅かだけ持ち直した。そのため一先ず彼は自身の未熟さに悔いるのを後回しにし、気を取り直して尋ねた。
「君は、外へ行かないのか」
「ドラコがそうしないのなら、行かないわ。」フォーラが穏やかに続けた。「だけど、ドラコこそアンブリッジ先生のところへ行かなくて大丈夫?」
「ああ……、ウィーズリーの双子はもういないし、別に先生の元へ行かなくたってかまわないだろう。何せ、今からあそこへ出向いて僕までピーブズに汚される必要はない」
ドラコが静かに答えた。その声色には、フォーラが双子よりも自分を選んでくれたという喜びが窺えた。そんな彼は、おもむろに視線を彼女の手に握られたフリージアの花に移したのだが、その真っ赤な色は容易にジョージの姿を彷彿とさせた。ドラコとしては幾ら自分の方がフォーラに優先されたとはいえ、何だかその赤が学校を去っても尚、彼女にちょっかいを出してきているように思えてしまい、嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
「それにしても、あのジョージ・ウィーズリーの奴は最後の最後まで……。この一年、めっきりフォーラに声を掛けなくなったと思って油断していた。奴は結局、君に惚れたままだったんだな」
「ええと……。少しは好かれている気はしていたわ。だけどまさか突然、あんな風に伝えられるとは思わなくて……驚いて何も言えなかったわ。」
フォーラはとっくに何度かジョージから想いを告げられていたが、その事にはあえて触れずに曖昧な回答と笑みを返した。とはいえ先程の彼の行動に驚いたのは事実だ。
するとドラコが憤慨しながら悪態を吐くように声を発した。
「しかも僕の目の前で、ご丁寧にも君にこんな花まで押し付けて。はっきり言って奴が用意したものよりも……。僕がフォーラに渡した花の方が、よっぽど君の肌の色や雰囲気に良く似合っていた」
ドラコの発言の後半部分には、幾らか躊躇いが含まれていた。しかしフォーラにはそれが何の話かさっぱり分からなかった。
「ドラコがくれた……?」
「ああ」ドラコは遠慮気味に頷き、そして少々言い淀んだ後、思い切って続きを伝えたのだった。
「クリスマスに君の家でパーティーがあっただろう。その終わり際、君の髪に黄色のラッパ水仙を飾ったのは、僕だ」
「!」フォーラは驚きでハッと息を呑んだ。「私、そんなこと少しも……。だけど、どうやって?」
ドラコはこれまでずっと黙っていた事実をとうとう打ち明けたことに、居心地悪そうにした。そしておもむろにフォーラから外した視線を、チラと玄関ホールの外に続く大扉の方に向けてみた。相変わらず多くの生徒がホールのすぐ外で騒いでいるが、そのうち群衆は中に戻ってくるだろう。
「それは……あまりここで話すようなことじゃない。それに、一つ話し始めると他にも随分色々ありすぎて、立ち話では納まりきらない。……だからもし君が良ければ場所を変えて話したい。二人きりになれる所で、これまでの事も含めて」
ドラコとフォーラは大扉を通るのを避け、別の道から湖の方へ出た。晴れた春の空は夕方だというのにまだ随分と青かった。完全に冬が明け、日の入りが段々と長くなってきた証拠だ。この美しい環境に今、フォーラとドラコしかいないのは、きっとみんな城の中の至る所でフレッドとジョージの話題を誰かと共有したくて仕方がないからだろう。談話室や校内の廊下とか、そういった場所は常に誰かしら人がいて、話に花を咲かせるのにうってつけなのだ。
そうして喧騒を離れた二人は誰もいない湖の畔に向かって、並んで春の芝生を踏みしめたのだった。
「アクシオ―――はい、貴方の杖よ。」
フォーラは先程フレッドがはじいたドラコの杖を呼び寄せし、優しく微笑んで手渡した。
「ああ、……ありがとう。……随分、格好悪いところを見せた」
ドラコは杖を受け取りながら大層居心地悪そうにお礼を言った。
「ううん、そんなことないわ。それに私は……貴方が守ろうとしてくれたこと自体が、嬉しかったから。」
ドラコは突然の事だったとはいえ、ジョージになす術もなくやられてしまって幾らかショックを受けていた。しかし目の前の彼女がこちらの不甲斐なさとは無関係に嬉しそうにしているのを見て、落ち込んだ気持ちがほんの僅かだけ持ち直した。そのため一先ず彼は自身の未熟さに悔いるのを後回しにし、気を取り直して尋ねた。
「君は、外へ行かないのか」
「ドラコがそうしないのなら、行かないわ。」フォーラが穏やかに続けた。「だけど、ドラコこそアンブリッジ先生のところへ行かなくて大丈夫?」
「ああ……、ウィーズリーの双子はもういないし、別に先生の元へ行かなくたってかまわないだろう。何せ、今からあそこへ出向いて僕までピーブズに汚される必要はない」
ドラコが静かに答えた。その声色には、フォーラが双子よりも自分を選んでくれたという喜びが窺えた。そんな彼は、おもむろに視線を彼女の手に握られたフリージアの花に移したのだが、その真っ赤な色は容易にジョージの姿を彷彿とさせた。ドラコとしては幾ら自分の方がフォーラに優先されたとはいえ、何だかその赤が学校を去っても尚、彼女にちょっかいを出してきているように思えてしまい、嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
「それにしても、あのジョージ・ウィーズリーの奴は最後の最後まで……。この一年、めっきりフォーラに声を掛けなくなったと思って油断していた。奴は結局、君に惚れたままだったんだな」
「ええと……。少しは好かれている気はしていたわ。だけどまさか突然、あんな風に伝えられるとは思わなくて……驚いて何も言えなかったわ。」
フォーラはとっくに何度かジョージから想いを告げられていたが、その事にはあえて触れずに曖昧な回答と笑みを返した。とはいえ先程の彼の行動に驚いたのは事実だ。
するとドラコが憤慨しながら悪態を吐くように声を発した。
「しかも僕の目の前で、ご丁寧にも君にこんな花まで押し付けて。はっきり言って奴が用意したものよりも……。僕がフォーラに渡した花の方が、よっぽど君の肌の色や雰囲気に良く似合っていた」
ドラコの発言の後半部分には、幾らか躊躇いが含まれていた。しかしフォーラにはそれが何の話かさっぱり分からなかった。
「ドラコがくれた……?」
「ああ」ドラコは遠慮気味に頷き、そして少々言い淀んだ後、思い切って続きを伝えたのだった。
「クリスマスに君の家でパーティーがあっただろう。その終わり際、君の髪に黄色のラッパ水仙を飾ったのは、僕だ」
「!」フォーラは驚きでハッと息を呑んだ。「私、そんなこと少しも……。だけど、どうやって?」
ドラコはこれまでずっと黙っていた事実をとうとう打ち明けたことに、居心地悪そうにした。そしておもむろにフォーラから外した視線を、チラと玄関ホールの外に続く大扉の方に向けてみた。相変わらず多くの生徒がホールのすぐ外で騒いでいるが、そのうち群衆は中に戻ってくるだろう。
「それは……あまりここで話すようなことじゃない。それに、一つ話し始めると他にも随分色々ありすぎて、立ち話では納まりきらない。……だからもし君が良ければ場所を変えて話したい。二人きりになれる所で、これまでの事も含めて」
ドラコとフォーラは大扉を通るのを避け、別の道から湖の方へ出た。晴れた春の空は夕方だというのにまだ随分と青かった。完全に冬が明け、日の入りが段々と長くなってきた証拠だ。この美しい環境に今、フォーラとドラコしかいないのは、きっとみんな城の中の至る所でフレッドとジョージの話題を誰かと共有したくて仕方がないからだろう。談話室や校内の廊下とか、そういった場所は常に誰かしら人がいて、話に花を咲かせるのにうってつけなのだ。
そうして喧騒を離れた二人は誰もいない湖の畔に向かって、並んで春の芝生を踏みしめたのだった。