#Garlic掌編
最近、体調があまりすぐれないらしい。彼のことだ。ラージャは休憩室のソファに横たわる男を発見した。長い金色の髪が彼の青白い頬の上を流れ落ち、長い手足は力なく家具から零れ落ちている。
「そんなところで寝ていると皺になるぞ」
ラージャは声をかけた。エルガーはかすかに頷いたような気がした。彼は微動だにしない。
「おい、エル」
たまりかねて彼に手を伸ばそうとしたとき、男の瞳がこちらを向いた。
「ラージャ、今、何時」
「知るかそんなもん」
「ぼく、時計でも買おうかな。腕をしょっちゅう時間に食われているのは嫌だけど」
「エル、それより、大丈夫なのか。顔色が優れない」
「そういうのは色白で美人っていうんだよ」
「そういうんじゃない。本当に血の気がない」
「いいんじゃないか。毎日ぼくが血の気がありすぎて困ってるだろ」
「ばか。そういう問題じゃないんだって」
上体を起こしたエルガーが立ち上がろうとしてふらつく。その体を支えながら、ラージャは彼の肉体の細さに驚いた。普段からこんな華奢な体で戦いに臨んでいたというのだろうか。
「エル!」
鋭く名前を言われて彼がびくりと肩を震わせた。
「いや、立ちくらみ。最近、貧血で」
「だめだろ。そんなんで出勤してくるなよ」
「敵は待っててくれないだろ」
「エル……」
軽くふざけているだけの印象しかないこの男の瞳の内側の熱い部分に触れたような気がした。いや、それはずっと前から知っている。彼はちゃらけている性格ではあるが、義務に対しては激しく真摯に向かう。それが闇と対峙する狩人としての誇りは失ってはいない。そんな男なのだ。
「ヘイヘイ、そんな顔するなよ。ラージャのほうが顔色悪いじゃないか」
「エル……」
「平気さ、何があっても。ぼくにはお前がいるんだろ」
エルの細い腰に回したラージャの手は悟った。ハンターにとって身体の一部でもある彼の愛銃が腰にないことを。
(了)
創作BLワンライ・ワンドロさまよりお題「身体の一部」をお借りして創作。
「そんなところで寝ていると皺になるぞ」
ラージャは声をかけた。エルガーはかすかに頷いたような気がした。彼は微動だにしない。
「おい、エル」
たまりかねて彼に手を伸ばそうとしたとき、男の瞳がこちらを向いた。
「ラージャ、今、何時」
「知るかそんなもん」
「ぼく、時計でも買おうかな。腕をしょっちゅう時間に食われているのは嫌だけど」
「エル、それより、大丈夫なのか。顔色が優れない」
「そういうのは色白で美人っていうんだよ」
「そういうんじゃない。本当に血の気がない」
「いいんじゃないか。毎日ぼくが血の気がありすぎて困ってるだろ」
「ばか。そういう問題じゃないんだって」
上体を起こしたエルガーが立ち上がろうとしてふらつく。その体を支えながら、ラージャは彼の肉体の細さに驚いた。普段からこんな華奢な体で戦いに臨んでいたというのだろうか。
「エル!」
鋭く名前を言われて彼がびくりと肩を震わせた。
「いや、立ちくらみ。最近、貧血で」
「だめだろ。そんなんで出勤してくるなよ」
「敵は待っててくれないだろ」
「エル……」
軽くふざけているだけの印象しかないこの男の瞳の内側の熱い部分に触れたような気がした。いや、それはずっと前から知っている。彼はちゃらけている性格ではあるが、義務に対しては激しく真摯に向かう。それが闇と対峙する狩人としての誇りは失ってはいない。そんな男なのだ。
「ヘイヘイ、そんな顔するなよ。ラージャのほうが顔色悪いじゃないか」
「エル……」
「平気さ、何があっても。ぼくにはお前がいるんだろ」
エルの細い腰に回したラージャの手は悟った。ハンターにとって身体の一部でもある彼の愛銃が腰にないことを。
(了)
創作BLワンライ・ワンドロさまよりお題「身体の一部」をお借りして創作。