2019
指先
初めて吸血鬼として目覚めたシルビオに触れた時に、背筋に恐怖が走ったのを思い出した。
「冷たいな」
思っていたことをこぼしてしまったのは、彼と共にいるレネの心が安らかに和らいでいるからだ。
「前にもそう言われた」
シルビオは自分の手を触るレネを見おろしながら答えた。
レネの体温を感じようとして、シルビオの指がレネの指に絡まりつく。
「全然、わっかんねぇ」
冷たいとか、温かいとか。
触れれば伝わってくるはずの体温も。
どんなに深く交わっても、もう二度と取り戻せないものがある。それは生きている者にしか分からない。
「冷たい男は嫌いか?」
いじわるく目の奥を光らせてシルビオがレネに問う。嫌だと言っても、離してやる気は毛頭ないのだから。
体温を失った自分の指先。
それを温めるように重なる彼の手。
ぴったりとくっついているようでいて、その間には生死という越えられない境目がある。
「まあ、な。でも慣れた」
「慣れるものなのかなぁ」
それでも隣にいることが出来るだけで、もう十分に自分は温かい。
シルビオは幸福そうにため息をついた。
2019.12.07 1h
お題:指先
初めて吸血鬼として目覚めたシルビオに触れた時に、背筋に恐怖が走ったのを思い出した。
「冷たいな」
思っていたことをこぼしてしまったのは、彼と共にいるレネの心が安らかに和らいでいるからだ。
「前にもそう言われた」
シルビオは自分の手を触るレネを見おろしながら答えた。
レネの体温を感じようとして、シルビオの指がレネの指に絡まりつく。
「全然、わっかんねぇ」
冷たいとか、温かいとか。
触れれば伝わってくるはずの体温も。
どんなに深く交わっても、もう二度と取り戻せないものがある。それは生きている者にしか分からない。
「冷たい男は嫌いか?」
いじわるく目の奥を光らせてシルビオがレネに問う。嫌だと言っても、離してやる気は毛頭ないのだから。
体温を失った自分の指先。
それを温めるように重なる彼の手。
ぴったりとくっついているようでいて、その間には生死という越えられない境目がある。
「まあ、な。でも慣れた」
「慣れるものなのかなぁ」
それでも隣にいることが出来るだけで、もう十分に自分は温かい。
シルビオは幸福そうにため息をついた。
2019.12.07 1h
お題:指先
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