昔々のこと


魔導器（ブラスティア）が生み出されるよりも更に昔のこと


エアルの存在を誰も知らなかった時代


世界には二人の『主（あるじ）』と呼ばれる存在がいた


片方を『光の主（あるじ）』、もう片方を『影の主（あるじ）』と言った


『光の主（あるじ）』は朝と昼を創り出し、世界を照らした


『影の主（あるじ）』は夜を創り出し、世界を暗闇に閉じた


それぞれの時間を二人は交互に世界を見守った


二人が混じり合うのは朝と夜の境目と、夕方だけであった


ほんの僅かの時間でしか会えぬ二人だったが、その仲は誰よりも良かった


ある時、主（あるじ）たちの力を我がものにと欲した者たちが現れる


個々の力こそ弱けれど、数の多さに主（あるじ）たちは遅れをとる


諦めかけたその時、主（あるじ）たちの前に一人の者が現れ、彼らの盾となり、剣となった


自分たちに似て非なるその者を、彼らは『騎士（ナイト）』と呼んだ


時代の流れに伴い主（あるじ）たちと騎士（ナイト）は人の世に紛れることを決める


彼らは代を変えながら、その特別な力を受け継ぎ続けた


そして時が流れ、彼らが御伽噺の中の存在だと人々に思われるようになった頃


世界を災厄が襲った


彼らは星を救うため、その身を捧げようとするが、満月の子らによってその使命を果すことはできなかった


満月の子らに存在していると知られて以来、主（あるじ）と騎士（ナイト）は彼らに監視されるようになった


自由が中々効かなくなってしまったが、それでも、彼らは平穏に暮らしていた


だがしかし…やはり人は変わらないもので


いつかの日と同じように、彼らはまた、その力を狙われるようになった


新たな主（あるじ）たちはまだ子どもで、戦うなど到底できなかった


そんな彼らを救ったのは騎士（ナイト）であった


女性であり、また、彼女も子どもであったが、使命を果たすべく、彼女は彼らの力を狙う輩から、彼らを隠すことを選択する


幼いながらに狙われ疲弊した彼らの記憶を、彼女は一時的に封じた


彼らの心が安らぐまで


彼らが再び、その使命を果す為に動こうと決意するその日まで


彼女は陰から、二人を見守っていた


ーーこれは、二人の主（あるじ）と騎士（ナイト）の物語ーー