*1年生
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終業式
「ーーーーーーー以上をもって終業式を終了とする。各学年、A組から順に………」
ガヤガヤ ワーワー
「はぁ………」
「おいおい…そんな世界の終わりみたいな顔してんなよ……」
「だってさぁ……」
深くため息をつきながら項垂れる
今日は終業式
つまり、明日から夏休みだ
でもぜんっぜん嬉しくない
理由は夏休みにある補習のせいだ
確かにテスト受けなかったわたしに責任があるけど、入院してたのにどうしろというんだ……
重い足取りで教室に戻る途中
「あ、居た居た!おーい!アリシアっ!」
ユーリとフレンに愚痴を言ってると、後ろから担任のレイヴン先生に声をかけられた
「あ、先生…」
「丁度よかった、夏休みの補習なんだが」
「あー、あー、聞きたくなーいです!」
わざと耳を塞いで聞こえない振りをする
「アリシア……ちゃんと話を聞かないと」
呆れ気味にフレンがわたしの手を耳から無理矢理離そうとする
「やーだー!ろくな事言われないもんっ!」
「あー、いや…入院してたから夏休みの補習免除になったっていうのを教えに来ただけなんだけど……」
「えっ!?本当っ!?」
バッと手を離してレイヴン先生を見る
「お、おう。ただし、休み明けのテスト頑張らないと放課後居残り補習あるらしいから、勉強頑張れよ」
それを聞いて一気にテンションが下がる
いや、夏休み返上にならなかったからまだいいんだけどさ……
「はっは、よかったなシア」
ユーリは笑いながらポンッと頭に手を乗せてくる
確かによかったけど、わたし的には全く良くない
だってそれって、夏休みちゃんと勉強して来いよって言ってるようなものじゃん……
「ま、そうゆうことだからもう今日帰っていいぞー。手紙とか成績表はそれぞれの家に郵送してあっから」
「え、それいいんですか…?」
「ん?いーの、いーの。校長のなっがいお話聞いて飽きてるっしょ?事件起こさない程度に夏休み楽しめよ~」
そう言うだけ言って、職員室へ戻って行ってしまった…
「あ、相変わらず適当だなぁ……」
「ま、楽でいいだろ?楽で」
苦笑いしているフレンの反面、嬉しそうに笑っているユーリ
…まぁ確かに楽だけどね…
「よっし、フレン!じゃんけんして負けた方が3人の鞄取りに行くっていうのはどうだ?」
ビシッと指をさしながらフレンに向かって不敵な笑みを浮かべて言う
…またやるのね……
「ふっ、いいだろ!受けて立とうっ!」
フレンはフレンでやってやる!っていうような笑みを浮かべてるし……
はぁ……っと深くため息をついて項垂れる
なんでこの2人はことある如く、何かしら勝負したがるんだか……
「よっしゃっ!!オレの勝ちっ!!」
ユーリの嬉しそうな声に気づいて顔をあげれば、悔しそうにしているフレンとめっちゃ嬉しそうな笑顔を浮かべているユーリが目に入った
ユーリが勝つなんて珍しい…
「んじゃ、頼んだぜ、フレン!」
「あっ!ちょっ!ユーリっ!!」
わたしの手を取ると、ユーリは真っ先に玄関へと走り出す
だから、廊下は走っちゃ駄目だってば……っ!!
ーーーーーーーーーー
「はっ……はぁ……はぁ……ユーリっ……わたしの……体力……考えてる……?」
玄関についた時にはもう息が上がっていた
昔から身体が弱かったせいで、体力があまりついていないのだ
それなのに、玄関からだいぶ離れた場所にある体育館から走るなんて無理にも程がある
「ったく、本当体力ねぇよな…いざって時に真っ先に逃げ遅れそうだよな」
壁に寄りかかっていると、呆れ気味にユーリが言ってくる
流石体育会系男子と言うべきか、息が全く乱れていない
…その体力、わたしにわけて……
「仕方…ないじゃん……昔から………運動……制限されて……るんだから……」
「ま、それもそうだよな」
深呼吸を繰り返してなんとか息を整える
「はぁ………それに、いざって時はユーリが背負ってくれるでしょ?」
多少息苦しくはあるが、ニコッと微笑みながら言うと何故か硬直してしまった
……なんで?
「ユーリ?」
硬直してしまったユーリの顔の前で手を振るが、微動だにしない
これ……どうしたらいいの……?
頬を突っついたり肩を揺さぶってみたが、全く反応がない
困り果ててどうしたものかと腕を組んで唸っていると、誰かの足音が聞こえてきた
『誰か』なんてわかってて、足音の聞こえる方を向けばフレンがバッグを3つ持って走って来ていた
「フレン!」
手を振るとわたしに気づいて、駆け寄って来る
「アリシアっ……すまない…ちょっと遅くなった……」
少し息を切らしながら近寄って来る
ユーリ程ではないがフレンも相当体力があるなぁ…
「あれ?ユーリ…どうしたんだい?」
コンコンッとユーリの頭を小突くが、やはり動かない
「んー……わかんないけどさっきからずっとこのままなんだよね…」
苦笑いしながらそう言えば、フレンは顎に手を当てて何か考え始める
すると、いい事思いついたと言わんばかりに笑顔を浮かべて、バックを漁り始めたと思いきや、水の入ったペットボトルを取り出した
「アリシア、ちょっと離れててね」
「う、うん…?」
嫌な予感がする……
言われるがままユーリから離れると、フレンはキャップを開けてユーリの頭に思いっきり中身をかける
……絶対やると思った……
「つめたっ!?!!おいっ!!フレン!!なにしやがんだっ!!」
水がかかったからか、ようやくユーリが動き出した
「君がそこでフリーズしているからだろ?頭冷やさせてやったんだから、もう少し感謝して欲しいね」
ニヤニヤと悪戯っぽく笑いながらフレンは言う
すっごい楽しそうにしてるなぁ……
「くっそ…!マジでふざけんなよフレン……っ!!」
「あはは……ドンマイ、ユーリ……はい、タオル使いなよ」
自分の鞄からタオルを取り出してユーリに手渡す
「ん、サンキュシア」
タオルを受け取ると髪を拭いていく
「くくっ……さ、みんなが降りてくる前に学校を出てしまおうか」
笑いすぎて目に溜まった涙を拭いながらフレンは玄関の方を指さす
……流石に笑いすぎだよ……
ユーリはそんなフレンを睨みながらタオルを肩に掛けて、靴を履き替えに行く
わたしとフレンも靴を履き替えて、門に向かって歩き出す
「あっつぅ……」
外に出た途端、焼けるんじゃないかってくらい強い日差しが肌に刺さる
校内と違って物凄く暑い
「だな、さっさと帰ってアイス食いてぇ」
「賛成だよ、アイス食べながらアニメ見るのもいいかな」
「……アニオタめ……」
前にリタに言われたのにも関わらず、フレンは未だにわたしの家のテレビで勝手にアニメを撮ってる
お陰で気付けばデッキの中身はフレンのアニメまみれになっている
「そうゆうシアはまたゲーム一色だろ?」
手で顔を扇ぎながらユーリはじとーっと見つめてくる
「ユーリだってラノベとマンガ一色じゃないか」
鞄から先程とはまた別の飲み物の入ったらペットボトルを取り出しながらフレンは呟く
「……結局、3人共やることは似てるってことね」
項垂れながら呟くと、こいつと一緒にするなっ!とユーリとフレンはお互いを指さしあってる
それから家に着くまで、2人揃って言い合いをしていた
……それよりも、わたしと一緒にされることには文句ないんだ……
「あー……ついたぁ……」
家について鍵を差し込むが、手応えがない
「……あれ?」
後ろで未だに言い合いしているユーリとフレンにはまだ気づかれていないだろう
鍵を抜いてそっとドアノブを回せば、いとも簡単にドアが空いた
……またかけるの忘れちゃった……
「ん?シア、なんかあったのか?」
いつまでもドアの前に居ることに疑問を持ったのか、不意にユーリに声をかけられた
「っ!?い、いや!な、なんでもない…よ?」
慌てて取り繕うが不自然すぎた
ユーリとフレンにすぐにバレてしまって問い詰められてしまう
「アリシア?」
「ほ、本当になんでもないから…っ!」
そう言ってドアを開けて靴を適当に脱ぎ捨てて22階の自分の部屋に逃げ出す
「あっ!!おい!待てって!!」
ユーリとフレンの声が追いかけて来たが、そんなのお構い無しに部屋に飛び込んでドアに寄りかかる
階段を駆け上がるだけで息が上がってしまった
自分の体力の無さが頭にくるが、いまはそれどころじゃない
「シアっ!ここあーけーろー!!」
ドンッとドアを叩く音が聞こえた
「い、いやだっ!!」
無理矢理ドアを開けて来ようとしてくるから、全力でドアを押し返す
「アリシア?大人しく退こうか?」
フレンも来たらしくてドアの向こうからドスの効いた声がする
怒ってる……っ!めっちゃ怒ってる…っ!!
「大っ体!なんでっ!逃げんっ…だよっ!!」
「うっ……そ、それは……」
「……さては、また鍵かけ忘れていたね?」
フレンに正解を当てられて思わず体から少し力が抜けてしまった
チャンスと見たのか、ユーリとフレンが二人揃って思いっきりドアを押してきて、ついに部屋に入って来てしまった
「うわっ!?」
ドアに押し返されてバランスが崩れ、そのまますっ転んでしまった
フレンは部屋から出さないと言わんばかりにドアの前に居るし、ユーリは物凄い笑顔で見下ろして来ている
…やばい、逃げ場がない←
「アリシアさん……?ちゃーんと話そうかぁ?」
「あ……あはは………ユ、ユーリ……怖いよ……?」
じりじりと近寄って来るユーリから逃げるようにゆっくり後退する
が、わたしの部屋は特別広いわけじゃないからすぐに壁に追い込まれてしまう
……やだ、捕まりたくない……!!
いや、確かにユーリとフレンが怒ってる原因はわたしにあるのだが……
何か打開策がないかとキョロキョロと辺りを見渡すが、ユーリはじわじわと迫って来てる
不意に時計に目が行った
今は12時……もう少しで1時になるところだ
……ん?1時……?
「あっ!フレン!もう少しフレンが好きなアニメの特集始まるよっ!!」
「なっ!?もうそんな時間かいっ!?」
急いで携帯の画面を見ると、踵を返してリビングに駆け下りて行った
「あっ!おい!フレン!!」
ユーリがフレンを止めようとよそ見をした瞬間にユーリから距離を取るように逃げ出す
……が
「おっと!」
「わっ!!?」
逃げようと走り出した矢先、あっさりと捕まってしまった
片腕で簡単にわたしを抑える
こうなったらもう逃げられない
でも、諦めるのも嫌だからジタバタと腕の中で暴れるが、全く効果がない
「はーなーしーてー!!!」
「あん?離せって言われて離すと思うか?」
抑えつける腕に少し力を込めながら腰をおろす
もちろん、わたしも半強制的に座らせられる
……しかも、ユーリの膝の上……
完全に逃げ場がなくなった
「で、アリシアさんよ?さっきあったこと、ちゃーんと説明してもらおうか?」
わたしを抑え込んでる腕と反対の手で目線を合わせようと顎をあげられる
……ねぇ、わざとなの……!?
この距離感……わざとなの……!?
ユーリの顔が凄い近くに見える
心臓の音が凄くうるさい
無駄にドキドキしてしまう
「おーい、聞いてんのか?」
「ふぇっ!?あ、えーっと……っ!」
「はぁ……もっかい聞くけどさ、また鍵かけ忘れてただろ?」
平然とした顔でそう聞いてくる
なんでユーリはドキドキしないのさ…
「……うん……」
早くこの状態から逃げたくて、正直に頷くと、大きなため息が聞こえた
「あのなぁ……オレとフレンがこの前言ったこと、覚えてるか?」
「えーっと………それなりには……」
『この前』とは、退院した日のことだ
言うまでもないがその日、ユーリとフレンに物凄く怒られた
エアコンつけっぱなしだったのもそうだが、まともにご飯食べていなかったり、家の鍵かけるの忘れたりと色々やらかしたからだ
「んで?それなのにまた忘れたと?」
そう言うユーリの目は笑っていない
本気で怖い←
ドキドキしてたのも忘れて怖い…
「ご…ごめんなさい……」
「……はぁ…………」
わたしが謝ると、大きくため息をついて顎から手を退かしたかと思いきや、両手をグーにして頭をグリグリしてくる
「い、痛っ!?痛い痛い痛いっ!!ユーリっ!!痛いって!!」
「あ?知るかんなこと、それよかお前はなんでそんなに無防備なんだよ?なぁ?オレもフレンもお前のこと心配して怒ったってのに全っっ然学習してねぇだろ?」
「ご、ごめんっ!!ごめんって!!ごめんなさいっ!!気をつけるからっ!!気をつけるから痛いのやめてっ!!」
痛くて目に涙が溜まり出した
バタバタと暴れているとようやく手が離れた
「いったぁぁぁぁ……っ」
ユーリの手があたっていた箇所を手で抑えながら蹲る
容赦なく本気でやられてたみたいで本当に痛い
「たく、3度目はねぇかんな?」
ポンと頭に手を乗せてきながらそう言う
……次やったらこれだけじゃ済まなさそう……
「さてと、いい加減昼飯食おうぜ?腹減ったぜ…」
「うん、そうしよっか」
ユーリの膝の上から退いて軽く伸びをする
未だに少し頭が痛いがわたしが悪いからこの際もう気にしないことにした
「んじゃ、下降りてなんか作るとでもするか」
「あ、そう言えば昨日作った夕飯まだ残ってるけど…」
「おっ、じゃあそれ食っちまおうぜ?」
ちょっと嬉しそうにしながらユーリも立ち上がる
「じゃあおり……って、次はフレンから怒られるのかぁ……」
ため息をつきながらドアの方へ向かう
「シアが悪ぃから仕方ねぇだろ?まぁ、フレンのやつなら今頃テレビに夢中だと思うがな」
苦笑いしつつ、ユーリもわたしの後に続いてくる
「……そうであることを願うよ……」
下に降りたら案の定、フレンはテレビに釘付けになっていて、わたしとユーリが声をかけても気づかなかった←
とりあえずフレンの分の昼ごはんを用意するだけしてわたしとユーリは先に食べ始めた
久々にシアの手料理だ!って嬉しそうに食べてくれてるユーリの反応が嬉しかったのは内緒だ
「ーーーーーーー以上をもって終業式を終了とする。各学年、A組から順に………」
ガヤガヤ ワーワー
「はぁ………」
「おいおい…そんな世界の終わりみたいな顔してんなよ……」
「だってさぁ……」
深くため息をつきながら項垂れる
今日は終業式
つまり、明日から夏休みだ
でもぜんっぜん嬉しくない
理由は夏休みにある補習のせいだ
確かにテスト受けなかったわたしに責任があるけど、入院してたのにどうしろというんだ……
重い足取りで教室に戻る途中
「あ、居た居た!おーい!アリシアっ!」
ユーリとフレンに愚痴を言ってると、後ろから担任のレイヴン先生に声をかけられた
「あ、先生…」
「丁度よかった、夏休みの補習なんだが」
「あー、あー、聞きたくなーいです!」
わざと耳を塞いで聞こえない振りをする
「アリシア……ちゃんと話を聞かないと」
呆れ気味にフレンがわたしの手を耳から無理矢理離そうとする
「やーだー!ろくな事言われないもんっ!」
「あー、いや…入院してたから夏休みの補習免除になったっていうのを教えに来ただけなんだけど……」
「えっ!?本当っ!?」
バッと手を離してレイヴン先生を見る
「お、おう。ただし、休み明けのテスト頑張らないと放課後居残り補習あるらしいから、勉強頑張れよ」
それを聞いて一気にテンションが下がる
いや、夏休み返上にならなかったからまだいいんだけどさ……
「はっは、よかったなシア」
ユーリは笑いながらポンッと頭に手を乗せてくる
確かによかったけど、わたし的には全く良くない
だってそれって、夏休みちゃんと勉強して来いよって言ってるようなものじゃん……
「ま、そうゆうことだからもう今日帰っていいぞー。手紙とか成績表はそれぞれの家に郵送してあっから」
「え、それいいんですか…?」
「ん?いーの、いーの。校長のなっがいお話聞いて飽きてるっしょ?事件起こさない程度に夏休み楽しめよ~」
そう言うだけ言って、職員室へ戻って行ってしまった…
「あ、相変わらず適当だなぁ……」
「ま、楽でいいだろ?楽で」
苦笑いしているフレンの反面、嬉しそうに笑っているユーリ
…まぁ確かに楽だけどね…
「よっし、フレン!じゃんけんして負けた方が3人の鞄取りに行くっていうのはどうだ?」
ビシッと指をさしながらフレンに向かって不敵な笑みを浮かべて言う
…またやるのね……
「ふっ、いいだろ!受けて立とうっ!」
フレンはフレンでやってやる!っていうような笑みを浮かべてるし……
はぁ……っと深くため息をついて項垂れる
なんでこの2人はことある如く、何かしら勝負したがるんだか……
「よっしゃっ!!オレの勝ちっ!!」
ユーリの嬉しそうな声に気づいて顔をあげれば、悔しそうにしているフレンとめっちゃ嬉しそうな笑顔を浮かべているユーリが目に入った
ユーリが勝つなんて珍しい…
「んじゃ、頼んだぜ、フレン!」
「あっ!ちょっ!ユーリっ!!」
わたしの手を取ると、ユーリは真っ先に玄関へと走り出す
だから、廊下は走っちゃ駄目だってば……っ!!
ーーーーーーーーーー
「はっ……はぁ……はぁ……ユーリっ……わたしの……体力……考えてる……?」
玄関についた時にはもう息が上がっていた
昔から身体が弱かったせいで、体力があまりついていないのだ
それなのに、玄関からだいぶ離れた場所にある体育館から走るなんて無理にも程がある
「ったく、本当体力ねぇよな…いざって時に真っ先に逃げ遅れそうだよな」
壁に寄りかかっていると、呆れ気味にユーリが言ってくる
流石体育会系男子と言うべきか、息が全く乱れていない
…その体力、わたしにわけて……
「仕方…ないじゃん……昔から………運動……制限されて……るんだから……」
「ま、それもそうだよな」
深呼吸を繰り返してなんとか息を整える
「はぁ………それに、いざって時はユーリが背負ってくれるでしょ?」
多少息苦しくはあるが、ニコッと微笑みながら言うと何故か硬直してしまった
……なんで?
「ユーリ?」
硬直してしまったユーリの顔の前で手を振るが、微動だにしない
これ……どうしたらいいの……?
頬を突っついたり肩を揺さぶってみたが、全く反応がない
困り果ててどうしたものかと腕を組んで唸っていると、誰かの足音が聞こえてきた
『誰か』なんてわかってて、足音の聞こえる方を向けばフレンがバッグを3つ持って走って来ていた
「フレン!」
手を振るとわたしに気づいて、駆け寄って来る
「アリシアっ……すまない…ちょっと遅くなった……」
少し息を切らしながら近寄って来る
ユーリ程ではないがフレンも相当体力があるなぁ…
「あれ?ユーリ…どうしたんだい?」
コンコンッとユーリの頭を小突くが、やはり動かない
「んー……わかんないけどさっきからずっとこのままなんだよね…」
苦笑いしながらそう言えば、フレンは顎に手を当てて何か考え始める
すると、いい事思いついたと言わんばかりに笑顔を浮かべて、バックを漁り始めたと思いきや、水の入ったペットボトルを取り出した
「アリシア、ちょっと離れててね」
「う、うん…?」
嫌な予感がする……
言われるがままユーリから離れると、フレンはキャップを開けてユーリの頭に思いっきり中身をかける
……絶対やると思った……
「つめたっ!?!!おいっ!!フレン!!なにしやがんだっ!!」
水がかかったからか、ようやくユーリが動き出した
「君がそこでフリーズしているからだろ?頭冷やさせてやったんだから、もう少し感謝して欲しいね」
ニヤニヤと悪戯っぽく笑いながらフレンは言う
すっごい楽しそうにしてるなぁ……
「くっそ…!マジでふざけんなよフレン……っ!!」
「あはは……ドンマイ、ユーリ……はい、タオル使いなよ」
自分の鞄からタオルを取り出してユーリに手渡す
「ん、サンキュシア」
タオルを受け取ると髪を拭いていく
「くくっ……さ、みんなが降りてくる前に学校を出てしまおうか」
笑いすぎて目に溜まった涙を拭いながらフレンは玄関の方を指さす
……流石に笑いすぎだよ……
ユーリはそんなフレンを睨みながらタオルを肩に掛けて、靴を履き替えに行く
わたしとフレンも靴を履き替えて、門に向かって歩き出す
「あっつぅ……」
外に出た途端、焼けるんじゃないかってくらい強い日差しが肌に刺さる
校内と違って物凄く暑い
「だな、さっさと帰ってアイス食いてぇ」
「賛成だよ、アイス食べながらアニメ見るのもいいかな」
「……アニオタめ……」
前にリタに言われたのにも関わらず、フレンは未だにわたしの家のテレビで勝手にアニメを撮ってる
お陰で気付けばデッキの中身はフレンのアニメまみれになっている
「そうゆうシアはまたゲーム一色だろ?」
手で顔を扇ぎながらユーリはじとーっと見つめてくる
「ユーリだってラノベとマンガ一色じゃないか」
鞄から先程とはまた別の飲み物の入ったらペットボトルを取り出しながらフレンは呟く
「……結局、3人共やることは似てるってことね」
項垂れながら呟くと、こいつと一緒にするなっ!とユーリとフレンはお互いを指さしあってる
それから家に着くまで、2人揃って言い合いをしていた
……それよりも、わたしと一緒にされることには文句ないんだ……
「あー……ついたぁ……」
家について鍵を差し込むが、手応えがない
「……あれ?」
後ろで未だに言い合いしているユーリとフレンにはまだ気づかれていないだろう
鍵を抜いてそっとドアノブを回せば、いとも簡単にドアが空いた
……またかけるの忘れちゃった……
「ん?シア、なんかあったのか?」
いつまでもドアの前に居ることに疑問を持ったのか、不意にユーリに声をかけられた
「っ!?い、いや!な、なんでもない…よ?」
慌てて取り繕うが不自然すぎた
ユーリとフレンにすぐにバレてしまって問い詰められてしまう
「アリシア?」
「ほ、本当になんでもないから…っ!」
そう言ってドアを開けて靴を適当に脱ぎ捨てて22階の自分の部屋に逃げ出す
「あっ!!おい!待てって!!」
ユーリとフレンの声が追いかけて来たが、そんなのお構い無しに部屋に飛び込んでドアに寄りかかる
階段を駆け上がるだけで息が上がってしまった
自分の体力の無さが頭にくるが、いまはそれどころじゃない
「シアっ!ここあーけーろー!!」
ドンッとドアを叩く音が聞こえた
「い、いやだっ!!」
無理矢理ドアを開けて来ようとしてくるから、全力でドアを押し返す
「アリシア?大人しく退こうか?」
フレンも来たらしくてドアの向こうからドスの効いた声がする
怒ってる……っ!めっちゃ怒ってる…っ!!
「大っ体!なんでっ!逃げんっ…だよっ!!」
「うっ……そ、それは……」
「……さては、また鍵かけ忘れていたね?」
フレンに正解を当てられて思わず体から少し力が抜けてしまった
チャンスと見たのか、ユーリとフレンが二人揃って思いっきりドアを押してきて、ついに部屋に入って来てしまった
「うわっ!?」
ドアに押し返されてバランスが崩れ、そのまますっ転んでしまった
フレンは部屋から出さないと言わんばかりにドアの前に居るし、ユーリは物凄い笑顔で見下ろして来ている
…やばい、逃げ場がない←
「アリシアさん……?ちゃーんと話そうかぁ?」
「あ……あはは………ユ、ユーリ……怖いよ……?」
じりじりと近寄って来るユーリから逃げるようにゆっくり後退する
が、わたしの部屋は特別広いわけじゃないからすぐに壁に追い込まれてしまう
……やだ、捕まりたくない……!!
いや、確かにユーリとフレンが怒ってる原因はわたしにあるのだが……
何か打開策がないかとキョロキョロと辺りを見渡すが、ユーリはじわじわと迫って来てる
不意に時計に目が行った
今は12時……もう少しで1時になるところだ
……ん?1時……?
「あっ!フレン!もう少しフレンが好きなアニメの特集始まるよっ!!」
「なっ!?もうそんな時間かいっ!?」
急いで携帯の画面を見ると、踵を返してリビングに駆け下りて行った
「あっ!おい!フレン!!」
ユーリがフレンを止めようとよそ見をした瞬間にユーリから距離を取るように逃げ出す
……が
「おっと!」
「わっ!!?」
逃げようと走り出した矢先、あっさりと捕まってしまった
片腕で簡単にわたしを抑える
こうなったらもう逃げられない
でも、諦めるのも嫌だからジタバタと腕の中で暴れるが、全く効果がない
「はーなーしーてー!!!」
「あん?離せって言われて離すと思うか?」
抑えつける腕に少し力を込めながら腰をおろす
もちろん、わたしも半強制的に座らせられる
……しかも、ユーリの膝の上……
完全に逃げ場がなくなった
「で、アリシアさんよ?さっきあったこと、ちゃーんと説明してもらおうか?」
わたしを抑え込んでる腕と反対の手で目線を合わせようと顎をあげられる
……ねぇ、わざとなの……!?
この距離感……わざとなの……!?
ユーリの顔が凄い近くに見える
心臓の音が凄くうるさい
無駄にドキドキしてしまう
「おーい、聞いてんのか?」
「ふぇっ!?あ、えーっと……っ!」
「はぁ……もっかい聞くけどさ、また鍵かけ忘れてただろ?」
平然とした顔でそう聞いてくる
なんでユーリはドキドキしないのさ…
「……うん……」
早くこの状態から逃げたくて、正直に頷くと、大きなため息が聞こえた
「あのなぁ……オレとフレンがこの前言ったこと、覚えてるか?」
「えーっと………それなりには……」
『この前』とは、退院した日のことだ
言うまでもないがその日、ユーリとフレンに物凄く怒られた
エアコンつけっぱなしだったのもそうだが、まともにご飯食べていなかったり、家の鍵かけるの忘れたりと色々やらかしたからだ
「んで?それなのにまた忘れたと?」
そう言うユーリの目は笑っていない
本気で怖い←
ドキドキしてたのも忘れて怖い…
「ご…ごめんなさい……」
「……はぁ…………」
わたしが謝ると、大きくため息をついて顎から手を退かしたかと思いきや、両手をグーにして頭をグリグリしてくる
「い、痛っ!?痛い痛い痛いっ!!ユーリっ!!痛いって!!」
「あ?知るかんなこと、それよかお前はなんでそんなに無防備なんだよ?なぁ?オレもフレンもお前のこと心配して怒ったってのに全っっ然学習してねぇだろ?」
「ご、ごめんっ!!ごめんって!!ごめんなさいっ!!気をつけるからっ!!気をつけるから痛いのやめてっ!!」
痛くて目に涙が溜まり出した
バタバタと暴れているとようやく手が離れた
「いったぁぁぁぁ……っ」
ユーリの手があたっていた箇所を手で抑えながら蹲る
容赦なく本気でやられてたみたいで本当に痛い
「たく、3度目はねぇかんな?」
ポンと頭に手を乗せてきながらそう言う
……次やったらこれだけじゃ済まなさそう……
「さてと、いい加減昼飯食おうぜ?腹減ったぜ…」
「うん、そうしよっか」
ユーリの膝の上から退いて軽く伸びをする
未だに少し頭が痛いがわたしが悪いからこの際もう気にしないことにした
「んじゃ、下降りてなんか作るとでもするか」
「あ、そう言えば昨日作った夕飯まだ残ってるけど…」
「おっ、じゃあそれ食っちまおうぜ?」
ちょっと嬉しそうにしながらユーリも立ち上がる
「じゃあおり……って、次はフレンから怒られるのかぁ……」
ため息をつきながらドアの方へ向かう
「シアが悪ぃから仕方ねぇだろ?まぁ、フレンのやつなら今頃テレビに夢中だと思うがな」
苦笑いしつつ、ユーリもわたしの後に続いてくる
「……そうであることを願うよ……」
下に降りたら案の定、フレンはテレビに釘付けになっていて、わたしとユーリが声をかけても気づかなかった←
とりあえずフレンの分の昼ごはんを用意するだけしてわたしとユーリは先に食べ始めた
久々にシアの手料理だ!って嬉しそうに食べてくれてるユーリの反応が嬉しかったのは内緒だ