*1年生
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看病
~次の日~
「……38.9度………」ゲホッ
体温計を見て、ため息をつく
どうやらかなり重症らしく、中々熱が下がらない
いや、むしろ上がってる
体は相変わらず動かないし、頭はクラクラするし、寒気がするわ、暇だわ、勉強出来ないわで散々だ
……いや、わたしがいけないんだけどね……
一昨日の自分を心から恨むよ、本当……
……まあ、1つだけ、いいことあったんだけど……
「シア?測れたか?」
ガチャッとドアを開けて部屋に入ってくる
手には昨日と同じものが乗っている
「……ん………」
「どれどれ……って、はぁっ!?また上がってるっ!?!!」
「うっ……ユーリ……叫ばないで……」ゴホッゴホッ
「あ…悪ぃ……つい…」
大丈夫か?と心配そうに聞きつつ、昨日みたいにお粥を食べさせてくれる
昨日から、ほぼずっとユーリは傍に居てくれる
今日だって、わたしがこんな状態だからって学校を休んでくれた
テスト近いのに……
そんなことを考えながらペロっとお粥を完食しきる
毎回のことだが、風邪引いてても食欲だけはあるようだ
「ごちそうさま…」ケホッ
「お粗末様、薬飲めそうか?」
コクンと頷いて手渡された薬を飲む
「ありがとう……ユーリ」コホッ
「気にすんなって、ほら、オレここで勉強してっから眠かったら寝とけよ?」
ポンポンと頭を撫でながら言ってくる
「本当ごめん……テスト前なのに……」
「いいっての、こんくらいさ、どうせ学校に居たとこで寝ちまうんだからさ」
ニカッと笑って言ってくる
そう言われてみれば確かにいつも寝てる……
その割にはテストで赤点取らないんだよなぁ……
「……わたしに対する嫌味か……」ケホッケホッ
「そんなんじゃねぇって
それに、あの鬱陶しい奴らから解放されるっていうのも、理由の1つだな」
「ん………そっか」
「ほーら、寝とけって」
「わかった……」
ユーリに言われて、目を瞑る
未だに頭に置かれてるユーリの手の感覚が心地いい
やっぱり落ち着くなぁ……ユーリの傍は………
そんなこと考えてると、本気で眠くなってきて、いつの間にかまた眠っていた
起こさないようにそっとシアの頭に乗せてた手を退かして、テーブルの方を向き直す
また昨日みたいにシアの事見てたら、寝ぼけて抱きついてきそうだしな
オレ的にはウェルカムだが、そうなったら当分離れられない
今日はテスト前で、職員会議するらしく授業は午前中だけ
終わったらフレンが来るし、ジュディも見舞いに来ると言っている
後3時間程だし、流石にそれはやばい
だから、大人しくオレもテスト勉強しようと、フレンに頼んで持って来てもらった問題集を広げたのだが……
……まぁ、集中出来るわけもなくて
ちょっとつらそうな寝息と、時折聞こえる咳…
(心配過ぎて集中出来ねぇ……!)
心の中で呟く
ただでさえ熱が下がるどころか徐々に上がっているのに、こうもつらそうな咳が聞こえたら心配でならない
それに、昨日のあの言葉……
『ユーリ………好き…………』
頭ん中で何度も何度も、声が反響する
「……本当、集中出来ねぇ…………////」
小さく呟いて俯き、頭を抱える
心配だけでなく、シアへの想いまで集中を乱してくる
いや、本当、襲いたくなるんだけど…
「……ユー………リ…………」
急に名前を呼ばれて慌てて振り替えるが、また寝言のようだ
何でこいつは寝言でオレのことを呼ぶのが好きなんだ……
「はぁ……どうしたもんかねぇ……」
苦笑いしながら、そっと手を伸ばして頬に触れる
熱があるから若干熱い
額に乗せたタオルを触ると、少し熱くなっていた
熱が高いせいか、あるいは徐々に上がっているせいか
1度タオルを取って濡らし直して、また額に乗せる
起きてる時は平気そうな顔をしている癖に、眠るとつらそうな顔に変わる
起きている時は無理しているんだろう
「……つらいのバレバレなんだから、無理してんなよバーカ」
軽く小突きながら呟く
そんなことは気にしないかのように、すやすやと眠っている
タオルを濡らし直したからか、少し表情が和らいだ
……本当、どんな時でも可愛いんだよなぁ……
いい加減、オレの片想いに気づいてくれないですかねぇ…
他人のことには凄く敏感なのに、自分に関することは全く気づかない
何年悩ませていることか……
結局、フレンから連絡が来るまで見つめてしまっていた
~約2時間後~
ピロリンッ
突然の通知音にビクッとしてしまう
慌てて携帯を見るとフレンからメッセージが来ていた
『今からジュディスと向かうよ
ついでに昼ご飯も買って行ってしまおうと思っているんだが、何かリクエストはあるかい?』
「なっ!?もうそんな時間かよ…!」
よくよく時計を見れば、もう12時を過ぎている
またやってしまった……
結局、問題集は手付かずだ
はぁ…っとため息をつく
シアが寝ている時はいつもそうだ
つい時間を忘れて見つめてしまう
とりあえずフレンに
『丼系だったらなんでもいいや
鍵開けとくから、勝手に入って来てくれ』
と、返信してアプリを閉じる
通知を見ると、エステルやリタからもメッセージが来ている
…全く気づかなかった……
……とりあえず後にしよう
それよりも、今はこの眠姫を起こさねぇと……
薬飲ませなきゃだし、熱測らせなきゃだし……
「………起こせるかよ………」
頭を抱えて俯きながら呟く
起こせるわけがない
まだ少しつらそうではあるが、気持ちよさそうに寝ている彼女を起こすなんてオレには出来ない
……いじめかよ……鬼だろ……
なんの拷問だよ……
可哀想じゃねーかよ……
でも起こさなきゃ薬飲ませらんねぇし、熱測れねぇし……
うーん……っと1人で悩んでいると、ガチャッと部屋のドアの開く音がした
それと同時に、今朝も聞いた幼なじみの声が聞こえてくる
「何……してるんだ?ユーリ…」
ドアの方を向くと、フレンが唖然とした顔で見てきている
「あら?襲おうとでもしてたのかしら?」
その後から、ジュディがひょこっと顔を出して、冗談混じりに言ってくる
「なわけねぇっつーの…どうやってシア起こそうか迷ってただけだ」
テーブルの方に向き直して、広げていたものを片付ける
片付けると、フレンがそこに買ってきた昼飯を置く
「まだ寝かせてあげていいんじゃないか?」
床に座りながらフレンは言ってくる
「そんなわけにもいかねぇの。シア、段々熱上がってるし、飯食わせて薬飲まさせねぇと…それに、ずっと寝てて水分とってねぇんだよ…」
「ご飯食べていたら案外起きるんじゃないかしら?」
ジュディも床に座ってガサガサと袋を漁る
「ほらユーリ、君の分だよ」
「ん、サンキュ」
「それじゃ食べちゃいましょ?」
「あぁ、そうだね」
「んじゃまぁ…」
「「「いただきます」」」
シアを起こさないように、なるべく小さい声で言って食べ始めた
「……Zzzzz…………」
「……起きないね……」
「起きねぇな……」
「ここまで気持ちよさそうだと起こすに起こせないわね……」
ベッドの上で寝ているシアを見ながら3人揃って軽くため息をつく
昼飯食ってから約1時間経った
相変わらずシアは寝続けている
ただ少し熱が下がってきているのか、表情が少し和らいでいる
「うふふ、でも大丈夫そうで良かったわ」
「あぁ、昨日よりはマシになったんじゃないか?」
「……まぁ……な…」
昨日、と言われてまた思い出してしまった
駄目だ、当分頭から離れそうにねぇ……
「あら?もしかして昨日何かあったのかしら?」
ニヤッとジュディが笑って聞いてくる
……本当、こうゆう時だけ妙に鋭いんだよな……
「さしずめ寝ぼけているアリシアに抱き着かれでもしたんだろ?」
「……それだけならどれだけ良かったことか……」
思わずそう呟いてしまった
声に出して言ったことに気づいた時には時既に遅く、新しいおもちゃでも見つけたかのような目でジュディとフレンが詰め寄ってくる
「それだけってことはその先があったのかしら?」
「まさか、アリシアから告白されたとかかい?それともキスされたとか?」
「……言わねぇ……つーか言いたくねぇ」
「じゃあ彼女に直接聞こうかしら」
「…鬼かお前らは……」
ベッドに顔を埋めながら呟く
もうやだ、この2人……←
なんで毎度毎度オレばっかいじってくるんだよ……(※反応が面白いからbyフレン)
オレ、いじられるよりいじる方が好きなんですけどねぇ……
「で?結局のところどうなんだい?」
言うまで引かねぇって顔してフレンが聞いてくる
……これもうあれだ、言う以外の選択肢がねぇ……
2人の威圧に圧されて、渋々諦めて言うことにした
「…………寝言で『ユーリ好き』って言われた上に、思い切り抱きつかれたんだよ………!//////」
「へぇー?」ニヤニヤ
「うふふ、良かったじゃない」ニヤニヤ
「っ~~////お前らっ!//そのニヤニヤした顔やめろっ!//だから言いたくなかったんだよっ!」
本当もう、穴があったら入りたいレベルで恥ずかしい
鏡見なくても顔が赤くなってんのが分かる
本当、マジで、こいつらだけには知られたくなかった……!
「全く、そこまでわかったんだから、さっさと付き合ってしまえばいいのに」
「そうね、早く彼女を安心されるべきだわ
ここ最近、ずっとユーリが構ってくれないって、私にぶつぶつ文句言ってくるくらいだもの」
グサグサっとジュディの言葉が心に刺さる
…頼む、傷を抉らないでくれ……
「……オレにだって色々考えがあんだって、前にも言ったじゃねぇか……」
「その考えのせいで彼女、気に病んでいるのだけれど?」
「そうだね。僕にはさっさと告白しろだの言ってきたんだから、今度はユーリの番だろう?」
「う"…………」
それもそうだ
散々フレンに早く告白しろって言ったんだから、言われても仕方ない
いやでもオレにも都合ってもんがな……
「ふぁ…………あれ………?フレン……?」
「っ!?シアっ……起こしちまったか?」
急にシアの声が聞こえて驚いてしまった……
体を起こすと首を横に振りながら目をこすっている
どうやらオレらが騒いで起こしたようでは無さそうで、少しほっとした
「おはよう、アリシア。気分はどうだい?」
「ん……昨日に比べたら大分楽……」
「シア、1回熱測ってみろよ」
体温計を差し出すと、素直に受け取って熱を測りだす
……オレには朝とさほど変わってねぇように見えるんだが……
「ふふ、思っていたよりも大丈夫そうで良かったわ」
「ん……まだ頭クラクラする……」ケホッ
体温計をオレに渡しながら言う
渡された体温計を見て一瞬フリーズした
「……あのー、シアさん?」
「……?」
「……楽とか言ってるけど……朝より…上がってるんですが……?」
体温計に表示されていた数字は39.5
確実に朝よりも上がっている
それで楽になったって……
「……アリシア、やっぱり本気で1度病院行くよ?」
ものすごく真面目な顔をしてフレンがシアに言う
すると、あからさまに嫌そうな顔になる
「えぇ……………やだ………」
「流石にこれは行かなければいけないと思うわよ?」
「……やだ………病院だけは……絶対……や……」
すっげぇ虚ろな目して嫌がるんだが…
つらいのがバレバレ過ぎる
「あのなぁ……治んねぇと学校行けないだろ?それに、熱上がっていってんだから病院で観てもらったほうがいいって」
「や…………病院だけは……………絶対……いや……」
「はぁ……わがまま言わないで行くよ?」
「じゃ保険書取ってくるわね、それとついでに飲み物も持ってくるわ」
そう言ってジュディは部屋を出て行った
ここはシアの家だが、多分オレら3人の方が何処に何があるか把握している気がする←
「ちょっと父さんに電話して迎えに来てもらうよ。今日休みだからさ」
「おう、頼むわ。オレはこのわがままお嬢さん連れてくから」
「あぁ、わかった」
そういうなりフレンは携帯を起動させながら、部屋を出て行った
残ったのはオレとシア
「ほーら、行くぞシア」
「やだ……絶対や………」
「はぁ…なんでそんなに病院嫌いなんだかねぇ…」
「……病院なんて………入院しか……記憶にない……から……や……」
座っているのがつらくなったのか、ベッドに横になりながらそういう
小さい頃、シアは何かあればすぐ入院ってくらい体が弱くて、しょっちゅう入退院を繰り返していた
それのせいで今じゃ病院の前を通ることすら嫌がる
だから、軽い風邪なら普段は連れて行こうとすらしないが、今回はまた話が別だ
あからさまにおかしい
「今回は駄目だって。頼むからわがまま言わないでくれよ…オレとフレンもついてってやっからさ」
な?と言いながら頭を撫でる
つらそうで虚ろな目をしつつも、何処か嫌そうな雰囲気の表情をしたままぼそっと言われた
「………じゃあ……今年の誕生日………1日一緒に居て……?」
突然のことに思考が停止する
いやいやいやいや……待てって……
なんでそうなった……
確かにそうするつもりだった
そうするつもりだったよ……!
でもまさかシアから言われるだなんて夢にも思っていなかったわけで…
「………そしたら……大人しく行く………から………」
駄目?と言わんばかりな表情で言われる
おいおい……
本気でどうしたんだよ……
風邪引いて熱出ても、普段こんなに甘えてこねぇぞ……?
だが、ここでイエスと言わないと絶対病院行かない気がする…
軽くため息をついて、苦笑いする
「わーったよ、1日予定空けててやっから、今は病院行くぞ?」
そっと頬を撫でながら言うと、満足そうに微笑む
未だにつらそうなことに変わりはないが、何処か落ち着いたようにも見える
「ユーリ!父さん着いたよ!」
「今降りるぜ!」
下から聞こえてきたフレンの声にそう答えて、シアをお姫様抱っこする
39度も熱があるからか、やはり少し熱く感じる
いや、それ以前にだ
「……シア、本気でここ最近まともに飯食ってなかったな……?」
抱き上げて感じたのはそれだ
元々軽かったが、更に軽くなった気がする
「だって…………面倒……だったから……」コホッ
「…治ったら最初に、フレンと一緒に説教だな、こりゃ」
ぼそっと呟いて、部屋の電気を消したのを確認してから、下に降りた
~病院にて~
「あー………これは………」
病院についてから、軽く診察して貰ってすぐに血液検査やら色々検査して、その結果がすぐに出たからフレンとオレでもう1度診察室に来たのだが……(因みにシアは病室借りて寝てる)
なんかすっごい難しい顔して検査結果とにらめっこしてんだが……
かれこれ入ってから数分間ずっとなんだが……
「いやぁ…いつものことですが、1度にまあ色々と病気が重なりますねぇ……」
「色々…ですか?」
「えぇ、まず風邪が1つなんですが少し悪化しかけてましてね…もう少し来るのが遅かったら肺炎になっててもおかしくなかったですね」
((どんだけ長時間エアコン付けっぱなしだったんだ、あの馬鹿……!))
「それと、若干栄養失調でもありますね
まぁそこまで酷くないですがね」
(だからあれほどちゃんと食えよって毎日言ったのに……!)
(…エステリーゼの誘い断って面倒見てた方が良かったかもしれないな…)
「もう1つ、恐らくストレスによるものだと思うのですが、少々胃腸炎にもなりかけてますね
こちらもあまり問題はないでしょうけれど」
(…ユーリのせいだな)
(うわっ……フレンがお前のせいだって目で見てきやがってるよ……)
「えっと……それで…?」
「まぁ、入院決定ですね」
「「ですよね……」」
また騒ぐぞこれ……
絶対に嫌がるのが目に見えてるぞ……
いやこれは完全にシアの自業自得なんだけどな……
「手続きをするので、アリシアさんの病室でお待ち下さい」
「わかりました。ありがとうございます」
医者に軽く頭を下げてから診察室を出る
ドアを閉めたところで、2人揃って大きくため息をついた
「ユーリ……どうしよう……」
「そりゃオレのセリフだわ……」
「絶対嫌がるよね……」
「……嫌がらねぇ方が不思議だろ……」
どうやって説得するか、考えながらフレンとシアの元へ向かう
診察室からさほど離れていなくて、すぐについた
「……一応、ジュディには先に言ってあんだが……」
「父さんにも車出せるように言ってあるけど……」
ドアの前でまたため息をつく
結局いい案が思いつかなかったからだ
だが、ここでこうしていても埒があかない
渋々ドアを開けて中に入る
「あら、おかえりなさい、2人とも」
「あ、あぁ……」
「あーっと……アリシア?実は……」
「……聞いた………ジュディスから………」
それを聞いた瞬間、2人して硬直してしまう
やばい、声が不機嫌すぎる……!!
「ふふ、大丈夫よ、ちゃんと私が説得したから。ね?アリシア」
ジュディがそう聞くと渋々という感じだが、コクンと頷く
流石にこれにも驚いた
シアが素直に応じるなんて、滅多にない
「その代わり、2人ともちゃんと毎日会いに来るのよ?もちろん、エステルとリタも連れて、ね?」
くすくす笑いながらジュディはオレらに言ってくる
…なんか、怖ぇんだけど……
「お、おぅ…わーってるよ」
「アリシアが珍しくいい子に言うこと聞いたんだしね、退院するまで毎日来るよ」
「………ん……………」
「んじゃ、荷物持ってこねぇとな」
「そうね、私はもう帰らないといけないから後は頼んだわよ」
「あぁ、ありがとうジュディス」
そう言ってジュディは帰って行った
「それじゃアリシア、またすぐ来るから」
「………う、ん…………」
「また後でな」
シアの頭をそっと撫でてから、オレとフレンも病室を後にした
それからは毎日の様に会いに行った
結局、シアが退院出来たのは夏休み前日だった
~次の日~
「……38.9度………」ゲホッ
体温計を見て、ため息をつく
どうやらかなり重症らしく、中々熱が下がらない
いや、むしろ上がってる
体は相変わらず動かないし、頭はクラクラするし、寒気がするわ、暇だわ、勉強出来ないわで散々だ
……いや、わたしがいけないんだけどね……
一昨日の自分を心から恨むよ、本当……
……まあ、1つだけ、いいことあったんだけど……
「シア?測れたか?」
ガチャッとドアを開けて部屋に入ってくる
手には昨日と同じものが乗っている
「……ん………」
「どれどれ……って、はぁっ!?また上がってるっ!?!!」
「うっ……ユーリ……叫ばないで……」ゴホッゴホッ
「あ…悪ぃ……つい…」
大丈夫か?と心配そうに聞きつつ、昨日みたいにお粥を食べさせてくれる
昨日から、ほぼずっとユーリは傍に居てくれる
今日だって、わたしがこんな状態だからって学校を休んでくれた
テスト近いのに……
そんなことを考えながらペロっとお粥を完食しきる
毎回のことだが、風邪引いてても食欲だけはあるようだ
「ごちそうさま…」ケホッ
「お粗末様、薬飲めそうか?」
コクンと頷いて手渡された薬を飲む
「ありがとう……ユーリ」コホッ
「気にすんなって、ほら、オレここで勉強してっから眠かったら寝とけよ?」
ポンポンと頭を撫でながら言ってくる
「本当ごめん……テスト前なのに……」
「いいっての、こんくらいさ、どうせ学校に居たとこで寝ちまうんだからさ」
ニカッと笑って言ってくる
そう言われてみれば確かにいつも寝てる……
その割にはテストで赤点取らないんだよなぁ……
「……わたしに対する嫌味か……」ケホッケホッ
「そんなんじゃねぇって
それに、あの鬱陶しい奴らから解放されるっていうのも、理由の1つだな」
「ん………そっか」
「ほーら、寝とけって」
「わかった……」
ユーリに言われて、目を瞑る
未だに頭に置かれてるユーリの手の感覚が心地いい
やっぱり落ち着くなぁ……ユーリの傍は………
そんなこと考えてると、本気で眠くなってきて、いつの間にかまた眠っていた
起こさないようにそっとシアの頭に乗せてた手を退かして、テーブルの方を向き直す
また昨日みたいにシアの事見てたら、寝ぼけて抱きついてきそうだしな
オレ的にはウェルカムだが、そうなったら当分離れられない
今日はテスト前で、職員会議するらしく授業は午前中だけ
終わったらフレンが来るし、ジュディも見舞いに来ると言っている
後3時間程だし、流石にそれはやばい
だから、大人しくオレもテスト勉強しようと、フレンに頼んで持って来てもらった問題集を広げたのだが……
……まぁ、集中出来るわけもなくて
ちょっとつらそうな寝息と、時折聞こえる咳…
(心配過ぎて集中出来ねぇ……!)
心の中で呟く
ただでさえ熱が下がるどころか徐々に上がっているのに、こうもつらそうな咳が聞こえたら心配でならない
それに、昨日のあの言葉……
『ユーリ………好き…………』
頭ん中で何度も何度も、声が反響する
「……本当、集中出来ねぇ…………////」
小さく呟いて俯き、頭を抱える
心配だけでなく、シアへの想いまで集中を乱してくる
いや、本当、襲いたくなるんだけど…
「……ユー………リ…………」
急に名前を呼ばれて慌てて振り替えるが、また寝言のようだ
何でこいつは寝言でオレのことを呼ぶのが好きなんだ……
「はぁ……どうしたもんかねぇ……」
苦笑いしながら、そっと手を伸ばして頬に触れる
熱があるから若干熱い
額に乗せたタオルを触ると、少し熱くなっていた
熱が高いせいか、あるいは徐々に上がっているせいか
1度タオルを取って濡らし直して、また額に乗せる
起きてる時は平気そうな顔をしている癖に、眠るとつらそうな顔に変わる
起きている時は無理しているんだろう
「……つらいのバレバレなんだから、無理してんなよバーカ」
軽く小突きながら呟く
そんなことは気にしないかのように、すやすやと眠っている
タオルを濡らし直したからか、少し表情が和らいだ
……本当、どんな時でも可愛いんだよなぁ……
いい加減、オレの片想いに気づいてくれないですかねぇ…
他人のことには凄く敏感なのに、自分に関することは全く気づかない
何年悩ませていることか……
結局、フレンから連絡が来るまで見つめてしまっていた
~約2時間後~
ピロリンッ
突然の通知音にビクッとしてしまう
慌てて携帯を見るとフレンからメッセージが来ていた
『今からジュディスと向かうよ
ついでに昼ご飯も買って行ってしまおうと思っているんだが、何かリクエストはあるかい?』
「なっ!?もうそんな時間かよ…!」
よくよく時計を見れば、もう12時を過ぎている
またやってしまった……
結局、問題集は手付かずだ
はぁ…っとため息をつく
シアが寝ている時はいつもそうだ
つい時間を忘れて見つめてしまう
とりあえずフレンに
『丼系だったらなんでもいいや
鍵開けとくから、勝手に入って来てくれ』
と、返信してアプリを閉じる
通知を見ると、エステルやリタからもメッセージが来ている
…全く気づかなかった……
……とりあえず後にしよう
それよりも、今はこの眠姫を起こさねぇと……
薬飲ませなきゃだし、熱測らせなきゃだし……
「………起こせるかよ………」
頭を抱えて俯きながら呟く
起こせるわけがない
まだ少しつらそうではあるが、気持ちよさそうに寝ている彼女を起こすなんてオレには出来ない
……いじめかよ……鬼だろ……
なんの拷問だよ……
可哀想じゃねーかよ……
でも起こさなきゃ薬飲ませらんねぇし、熱測れねぇし……
うーん……っと1人で悩んでいると、ガチャッと部屋のドアの開く音がした
それと同時に、今朝も聞いた幼なじみの声が聞こえてくる
「何……してるんだ?ユーリ…」
ドアの方を向くと、フレンが唖然とした顔で見てきている
「あら?襲おうとでもしてたのかしら?」
その後から、ジュディがひょこっと顔を出して、冗談混じりに言ってくる
「なわけねぇっつーの…どうやってシア起こそうか迷ってただけだ」
テーブルの方に向き直して、広げていたものを片付ける
片付けると、フレンがそこに買ってきた昼飯を置く
「まだ寝かせてあげていいんじゃないか?」
床に座りながらフレンは言ってくる
「そんなわけにもいかねぇの。シア、段々熱上がってるし、飯食わせて薬飲まさせねぇと…それに、ずっと寝てて水分とってねぇんだよ…」
「ご飯食べていたら案外起きるんじゃないかしら?」
ジュディも床に座ってガサガサと袋を漁る
「ほらユーリ、君の分だよ」
「ん、サンキュ」
「それじゃ食べちゃいましょ?」
「あぁ、そうだね」
「んじゃまぁ…」
「「「いただきます」」」
シアを起こさないように、なるべく小さい声で言って食べ始めた
「……Zzzzz…………」
「……起きないね……」
「起きねぇな……」
「ここまで気持ちよさそうだと起こすに起こせないわね……」
ベッドの上で寝ているシアを見ながら3人揃って軽くため息をつく
昼飯食ってから約1時間経った
相変わらずシアは寝続けている
ただ少し熱が下がってきているのか、表情が少し和らいでいる
「うふふ、でも大丈夫そうで良かったわ」
「あぁ、昨日よりはマシになったんじゃないか?」
「……まぁ……な…」
昨日、と言われてまた思い出してしまった
駄目だ、当分頭から離れそうにねぇ……
「あら?もしかして昨日何かあったのかしら?」
ニヤッとジュディが笑って聞いてくる
……本当、こうゆう時だけ妙に鋭いんだよな……
「さしずめ寝ぼけているアリシアに抱き着かれでもしたんだろ?」
「……それだけならどれだけ良かったことか……」
思わずそう呟いてしまった
声に出して言ったことに気づいた時には時既に遅く、新しいおもちゃでも見つけたかのような目でジュディとフレンが詰め寄ってくる
「それだけってことはその先があったのかしら?」
「まさか、アリシアから告白されたとかかい?それともキスされたとか?」
「……言わねぇ……つーか言いたくねぇ」
「じゃあ彼女に直接聞こうかしら」
「…鬼かお前らは……」
ベッドに顔を埋めながら呟く
もうやだ、この2人……←
なんで毎度毎度オレばっかいじってくるんだよ……(※反応が面白いからbyフレン)
オレ、いじられるよりいじる方が好きなんですけどねぇ……
「で?結局のところどうなんだい?」
言うまで引かねぇって顔してフレンが聞いてくる
……これもうあれだ、言う以外の選択肢がねぇ……
2人の威圧に圧されて、渋々諦めて言うことにした
「…………寝言で『ユーリ好き』って言われた上に、思い切り抱きつかれたんだよ………!//////」
「へぇー?」ニヤニヤ
「うふふ、良かったじゃない」ニヤニヤ
「っ~~////お前らっ!//そのニヤニヤした顔やめろっ!//だから言いたくなかったんだよっ!」
本当もう、穴があったら入りたいレベルで恥ずかしい
鏡見なくても顔が赤くなってんのが分かる
本当、マジで、こいつらだけには知られたくなかった……!
「全く、そこまでわかったんだから、さっさと付き合ってしまえばいいのに」
「そうね、早く彼女を安心されるべきだわ
ここ最近、ずっとユーリが構ってくれないって、私にぶつぶつ文句言ってくるくらいだもの」
グサグサっとジュディの言葉が心に刺さる
…頼む、傷を抉らないでくれ……
「……オレにだって色々考えがあんだって、前にも言ったじゃねぇか……」
「その考えのせいで彼女、気に病んでいるのだけれど?」
「そうだね。僕にはさっさと告白しろだの言ってきたんだから、今度はユーリの番だろう?」
「う"…………」
それもそうだ
散々フレンに早く告白しろって言ったんだから、言われても仕方ない
いやでもオレにも都合ってもんがな……
「ふぁ…………あれ………?フレン……?」
「っ!?シアっ……起こしちまったか?」
急にシアの声が聞こえて驚いてしまった……
体を起こすと首を横に振りながら目をこすっている
どうやらオレらが騒いで起こしたようでは無さそうで、少しほっとした
「おはよう、アリシア。気分はどうだい?」
「ん……昨日に比べたら大分楽……」
「シア、1回熱測ってみろよ」
体温計を差し出すと、素直に受け取って熱を測りだす
……オレには朝とさほど変わってねぇように見えるんだが……
「ふふ、思っていたよりも大丈夫そうで良かったわ」
「ん……まだ頭クラクラする……」ケホッ
体温計をオレに渡しながら言う
渡された体温計を見て一瞬フリーズした
「……あのー、シアさん?」
「……?」
「……楽とか言ってるけど……朝より…上がってるんですが……?」
体温計に表示されていた数字は39.5
確実に朝よりも上がっている
それで楽になったって……
「……アリシア、やっぱり本気で1度病院行くよ?」
ものすごく真面目な顔をしてフレンがシアに言う
すると、あからさまに嫌そうな顔になる
「えぇ……………やだ………」
「流石にこれは行かなければいけないと思うわよ?」
「……やだ………病院だけは……絶対……や……」
すっげぇ虚ろな目して嫌がるんだが…
つらいのがバレバレ過ぎる
「あのなぁ……治んねぇと学校行けないだろ?それに、熱上がっていってんだから病院で観てもらったほうがいいって」
「や…………病院だけは……………絶対……いや……」
「はぁ……わがまま言わないで行くよ?」
「じゃ保険書取ってくるわね、それとついでに飲み物も持ってくるわ」
そう言ってジュディは部屋を出て行った
ここはシアの家だが、多分オレら3人の方が何処に何があるか把握している気がする←
「ちょっと父さんに電話して迎えに来てもらうよ。今日休みだからさ」
「おう、頼むわ。オレはこのわがままお嬢さん連れてくから」
「あぁ、わかった」
そういうなりフレンは携帯を起動させながら、部屋を出て行った
残ったのはオレとシア
「ほーら、行くぞシア」
「やだ……絶対や………」
「はぁ…なんでそんなに病院嫌いなんだかねぇ…」
「……病院なんて………入院しか……記憶にない……から……や……」
座っているのがつらくなったのか、ベッドに横になりながらそういう
小さい頃、シアは何かあればすぐ入院ってくらい体が弱くて、しょっちゅう入退院を繰り返していた
それのせいで今じゃ病院の前を通ることすら嫌がる
だから、軽い風邪なら普段は連れて行こうとすらしないが、今回はまた話が別だ
あからさまにおかしい
「今回は駄目だって。頼むからわがまま言わないでくれよ…オレとフレンもついてってやっからさ」
な?と言いながら頭を撫でる
つらそうで虚ろな目をしつつも、何処か嫌そうな雰囲気の表情をしたままぼそっと言われた
「………じゃあ……今年の誕生日………1日一緒に居て……?」
突然のことに思考が停止する
いやいやいやいや……待てって……
なんでそうなった……
確かにそうするつもりだった
そうするつもりだったよ……!
でもまさかシアから言われるだなんて夢にも思っていなかったわけで…
「………そしたら……大人しく行く………から………」
駄目?と言わんばかりな表情で言われる
おいおい……
本気でどうしたんだよ……
風邪引いて熱出ても、普段こんなに甘えてこねぇぞ……?
だが、ここでイエスと言わないと絶対病院行かない気がする…
軽くため息をついて、苦笑いする
「わーったよ、1日予定空けててやっから、今は病院行くぞ?」
そっと頬を撫でながら言うと、満足そうに微笑む
未だにつらそうなことに変わりはないが、何処か落ち着いたようにも見える
「ユーリ!父さん着いたよ!」
「今降りるぜ!」
下から聞こえてきたフレンの声にそう答えて、シアをお姫様抱っこする
39度も熱があるからか、やはり少し熱く感じる
いや、それ以前にだ
「……シア、本気でここ最近まともに飯食ってなかったな……?」
抱き上げて感じたのはそれだ
元々軽かったが、更に軽くなった気がする
「だって…………面倒……だったから……」コホッ
「…治ったら最初に、フレンと一緒に説教だな、こりゃ」
ぼそっと呟いて、部屋の電気を消したのを確認してから、下に降りた
~病院にて~
「あー………これは………」
病院についてから、軽く診察して貰ってすぐに血液検査やら色々検査して、その結果がすぐに出たからフレンとオレでもう1度診察室に来たのだが……(因みにシアは病室借りて寝てる)
なんかすっごい難しい顔して検査結果とにらめっこしてんだが……
かれこれ入ってから数分間ずっとなんだが……
「いやぁ…いつものことですが、1度にまあ色々と病気が重なりますねぇ……」
「色々…ですか?」
「えぇ、まず風邪が1つなんですが少し悪化しかけてましてね…もう少し来るのが遅かったら肺炎になっててもおかしくなかったですね」
((どんだけ長時間エアコン付けっぱなしだったんだ、あの馬鹿……!))
「それと、若干栄養失調でもありますね
まぁそこまで酷くないですがね」
(だからあれほどちゃんと食えよって毎日言ったのに……!)
(…エステリーゼの誘い断って面倒見てた方が良かったかもしれないな…)
「もう1つ、恐らくストレスによるものだと思うのですが、少々胃腸炎にもなりかけてますね
こちらもあまり問題はないでしょうけれど」
(…ユーリのせいだな)
(うわっ……フレンがお前のせいだって目で見てきやがってるよ……)
「えっと……それで…?」
「まぁ、入院決定ですね」
「「ですよね……」」
また騒ぐぞこれ……
絶対に嫌がるのが目に見えてるぞ……
いやこれは完全にシアの自業自得なんだけどな……
「手続きをするので、アリシアさんの病室でお待ち下さい」
「わかりました。ありがとうございます」
医者に軽く頭を下げてから診察室を出る
ドアを閉めたところで、2人揃って大きくため息をついた
「ユーリ……どうしよう……」
「そりゃオレのセリフだわ……」
「絶対嫌がるよね……」
「……嫌がらねぇ方が不思議だろ……」
どうやって説得するか、考えながらフレンとシアの元へ向かう
診察室からさほど離れていなくて、すぐについた
「……一応、ジュディには先に言ってあんだが……」
「父さんにも車出せるように言ってあるけど……」
ドアの前でまたため息をつく
結局いい案が思いつかなかったからだ
だが、ここでこうしていても埒があかない
渋々ドアを開けて中に入る
「あら、おかえりなさい、2人とも」
「あ、あぁ……」
「あーっと……アリシア?実は……」
「……聞いた………ジュディスから………」
それを聞いた瞬間、2人して硬直してしまう
やばい、声が不機嫌すぎる……!!
「ふふ、大丈夫よ、ちゃんと私が説得したから。ね?アリシア」
ジュディがそう聞くと渋々という感じだが、コクンと頷く
流石にこれにも驚いた
シアが素直に応じるなんて、滅多にない
「その代わり、2人ともちゃんと毎日会いに来るのよ?もちろん、エステルとリタも連れて、ね?」
くすくす笑いながらジュディはオレらに言ってくる
…なんか、怖ぇんだけど……
「お、おぅ…わーってるよ」
「アリシアが珍しくいい子に言うこと聞いたんだしね、退院するまで毎日来るよ」
「………ん……………」
「んじゃ、荷物持ってこねぇとな」
「そうね、私はもう帰らないといけないから後は頼んだわよ」
「あぁ、ありがとうジュディス」
そう言ってジュディは帰って行った
「それじゃアリシア、またすぐ来るから」
「………う、ん…………」
「また後でな」
シアの頭をそっと撫でてから、オレとフレンも病室を後にした
それからは毎日の様に会いに行った
結局、シアが退院出来たのは夏休み前日だった