*1年生
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風邪
~あれから2週間~
「はぁ………週間前に戻りたい……」
部屋で1人、ボソッと呟く
みんなと遊んだ最後の日は、ゲーセン行ったり、スイパラ行ったりして終わった
フレンがエステルにってクレーンゲームでぬいぐるみ一発で取ったのは本気で驚いた←
負けじとユーリもぬいぐるみ取ってくるし…(因みにわたしが貰った)
スイパラじゃ、ユーリが1番食べまくってたなぁ……
食べ過ぎだっ!とフレンが怒っていたのも、まだ記憶に新しい
そんな楽しかった日ももう過ぎ去っていて
再来週には夏休みが来る
が、その前に、期末テストという名の悪魔が待ってる←
前回、中間テストがズタボロだったわたしは非常にマズイ
下手したら夏休み返上して補習という自体になりかねない
いや、本当、真面目に勉強しないとやばいのだ
でも、机に広げられた問題集には一向に手が付かない
理由は単純、ユーリのことだ
あの日以来、フレンがエステルと付き合ってることは瞬く間に広がって、フレンに告白してくる人がいなくなった
それはそれで良かったと思うのだが、ユーリは前にも増してその頻度が増えた
酷い時には同じ子から告白されたと、呆れていた程だ
わたしやフレンに迷惑がかかるからと、最近一緒に帰っていないし、家にも来なくなった
フレンは、エステルが呼ばない限り極力わたしと居てくれる
だが、1人になる時間がものすごく増えた
今もそうだ
あまりにも2人以上いる空間に慣れすぎてしまった
だからと言ってジュディスやリタを呼ぶわけにもいかず……
スピーカーで音楽を流して寂しさを誤魔化すようになった
夕飯もフレンが居る時しか食べなくなったし……(作るのが面倒だから)
そんなんで、全く勉強に集中出来そうになかった
「はぁ………」
何度ついたかわからないため息をつきながら、問題集を閉じる
もういい、寝てしまおう
寝れば何も考えずに済むのだから
椅子から立ち上がって、ベッドに倒れ込む
すると、すぐに睡魔が襲ってくる
それに逆らうことなく、意識を手放した
~次の日~
ピピピピッピピピッ
「………ん……………」
目覚ましの音で目が覚める
体を少し起こして、携帯の時計を見ると
「えっ!?嘘っ!?」
時計はもう10時を過ぎた頃を刺している
夢かと思って、部屋の壁掛け時計を見るが、やはり10時だ
完全な遅刻だ
今から行っても1時限目に間に合わない
携帯をよく見ると、ユーリとフレン、それにジュディスから通知が大量に来ている
「はぁ………」
ため息をつきながら起き上がろうとするが、うまく力が入らずまたベッドに逆戻りする
突然の事態に驚く
よくよく考えてみると、体が怠い…というか、頭痛いし喉痛いし……
ふと、昨日の夜のことを思い出す
そーいえば暑いからってエアコンつけたままだった気がする……
オマケに髪を乾かすのを完全に忘れていた
つまり、風邪を引いたわけだ
「………最悪…………」ケホッ
そこまで酷く無いのだろうが、軽く咳が出る
多少熱っぽいようで、頭がくらくらし出す
自覚するまで眠気で気づかなかったようだ
さてどうしたものか…
とりあえず飲み物が飲みたいのだが、下に降りるのも無理そうだ
いや、その前に連絡しなくては……
そんなことを考えていると、不意に携帯が鳴り出す
着信音が頭に響くが、誰がかけてきたかは予想がつく
うつ伏せの状態から少し体を横に向かせて、電話をとってスピーカーにすると、焦ったような怒鳴り声が聞こえる
『シアっ!?やっと出たっ!!お前何してんだっ!?』
紛れもない、ユーリの声だ
微かにフレンの声も聞こえる
確か今の時間は体育だったはず……
『おーいっ!聞いてんのかっ!?』
「………うっさい…………ちょっと声量下げて………頭に響く………」ゲホッケホッ
掠れた声で言うと、少しだけ声量を下げてくれた
『ん?どうした…?咳してるみてぇだけど』
「………多分、風邪………引いた……」コホッ
『……はぁっ!?!!』
『ユーリ?どうしたんだい?そんなに驚いて……アリシアになんかあったのかいっ!?』
「だからぁ…………叫ばないで………」
『いや、だってお前っ!?なんでこの時期に風邪なんて引くんだっ!?』
『……なっ!?!アリシアっ!?大丈夫かいっ?!』
「……………2人の……その声で……頭割れそうだよ……」ゲホッゲホッ
訂正しよう、かなり重症だこれ
そう言えばエアコンのリモコン………机の上だ………
『と、とりあえず、立てっか??』
「無理…………まず起き上がれないし………」
『『はぁぁっ!!?!?!!』』
スピーカーから大音量の声が聞こえる
……だから………頭痛いんだって………
『ちょっ!?ま、待ってろ!すぐ行くからっ!!』
そう言って、わたしの返事も聞かずに電話を切ってしまう
「………さむ…………」
流石に一晩中つけっぱなしは寒い
だが、どう頑張ってもここからでは手が届かない
起き上がろうと試みるが、やはり体に力が入らない
「はは…………ユーリ…………来たら………怒られる………よ…これ……」
駄目だ、眠い……
とりあえず布団だけでも被ろう……
なんとか手を伸ばして布団を頭から被る
これで少しはマシだろう
熱からか、徐々に瞼が重くなってくる
眠気に逆らうことをやめて、再び意識を手放した
ーーーーーーーーーーー
~少し遡ること数時間前~
「おはよーさん………ってフレン、シアはどうした?」
教室に入って最初にフレンに話しかける
ここ最近は2人といる時間が学校くらいしかなくなった
フレンもエステルと時間さえ合えばそちらへ行くから、実質3人ともバラバラに行動する時間が増えた
ただ、それでもフレンとシアは一緒に登校していたはず
なのに今日はそのシアの姿が見えない
「おはよう、ユーリ。実は今朝、インターフォン鳴らしたんだけど出てこなくてね……なんどメッセージ送ったり電話しても出ないし、合鍵は家に置いてきてしまっていたから、仕方なく先に来たんだ」
「はぁ?あのシアが?」
まさか、と思いつつ携帯を取り出して電話をかける
だが、一向に出る気配がない
仕方なく1度切って、トークアプリを起動してシアのトークを開く
《おーい、シア?どうした?学校始まるぞ?》
そう送信したと同時にチャイムが鳴る
「おいおい…先生来るぞ……」
あの先生、授業適当な割に出席とんのはえんだよな…
「ふぁ……おーい、授業始めるぞー」
「も、もう来たよ……」
ガタガタッと慌てて席につき始める
「出席は…………ん?アリシアがいないようだが、そこのおふたりさんなんか聞いてないんかね?」
「いや……今日は朝からずっと連絡取れなくて……」
「ふーん……ま、そのうち来るでしょ。さ、授業始めるぞー。期末テストまで後1週間だからな~」
ぶーぶーとクラスメイト達は文句を言い出すが、オレとフレンだけは浮かない顔をしていた
左隣のアリシアの席を見つめながら
ーーーーーーーー
「おいおい……体育始まっても来ねぇぞ……」
2限目、体育が始まってもアリシアは姿を見せない
流石にこんなことは初めてだった
そもそもアリシアが寝坊したとしても、普段からオレかフレンが上がり込んで起こしていたからなのだが……
音に敏感な彼女がここまで電話しても連絡してこないなんて初めてだ
「悪ぃフレン、もっかいだけかけさせてくれ」
「あぁ、構わないよ」
流石の異常事態に普段注意してくるフレンも許可してきた
(頼むから出てくれ……!)
そう祈りながらかけていると、ようやく繋がった
「シアっ!?やっと出たっ!!お前何してんだっ!?」
「っ!!繋がったかいっ!?」
オレの声にフレンが駆け寄って来る
「おーいっ!聞いてんのかっ!?」
なかなか返事が返って来ないからそう聞くと、掠れた声で答えてくる
『………うっさい…………ちょっと声量下げて………頭に響く………』ゲホッケホッ
「ん?どうした…?咳してるみてぇだけど」
『………多分、風邪………引いた……』コホッ
「……はぁっ!?!!」
あまりに衝撃的なことを言われ、つい大声を出してしまう
「ユーリ?どうしたんだい?そんなに驚いて……アリシアになんかあったのかいっ!?」
駆け寄って来たフレンに片方のイヤフォンを渡す
『だからぁ…………叫ばないで………』
「いや、だってお前っ!?なんでこの時期に風邪なんて引くんだっ!?」
「……なっ!?!アリシアっ!?大丈夫かいっ?!」
『……………2人の……その声で……頭割れそうだよ……』ゲホッゲホッ
辛そうな声でそう言ってくる
こりゃかなり重症だな…
「と、とりあえず、立てっか??」
慌てつつも立ち上がれるかを聞く
立てればまだ問題はないだろう
『無理…………まず起き上がれないし………』
「「はぁぁっ!!?!?!!」」
フレンと一緒に絶叫してしまう
いや、起き上がれないって大問題だろ……
顔を見合わせると、フレンはすかさず先生の元へ走って行く
「ちょっ!?ま、待ってろ!すぐ行くからっ!!」
そう言って電話を切り、オレも先生の方へ向かった
フレンが既に話をつけていてくれてて、オレらは急いで教室まで戻る
教室に入って自分達の鞄からを引っ掴むと、踵を返して下駄箱に急ぐ
さっと靴を履き替えて猛ダッシュでシアの家へ向かう
彼女の家は学校からさほど離れていない為、数分でついた
鞄から合鍵を出して鍵を開けようとするが、手応えがない
「…おい、フレン…手応えねぇんだが…」
「……ま、まさか……アリシアでも流石にそれは……」
鍵を抜いてドアノブを回すと簡単に開いた
「「……なんでかけてないんだ!?」」
フレンと声が重なる
いや、マジでなんでかかってねぇんだよ……
「いや、ユーリっ!今はそんなことよりもっ!」
「あ、あぁっ!!」
中に入って靴を脱ぎ捨てて、急いでシアの部屋へ向かう
バンッと音を立ててドアを開ける
「シアっ!だいじょ………って、寒っ!?」
部屋に入った瞬間に思ったのはそれだ
異常な程寒い
真冬かっ!?
「あ、よく見たらエアコンついてる……」
「「…………はぁ………」」
2人同時にため息をつく
これじゃあ風邪を引くのは当たり前だろう
部屋に入って真っ先にオレはシアの元へ行く
頭からすっぽりと冬用の布団を被っている
フレンは机の上に置いてあるリモコンを取ってエアコンを切る
それを確認してから、軽く布団を退かして顔だけ布団から出させる
「ったく……人の気も知らねぇで…」
「まったくだよ…」
フレンと苦笑いしながらシアを見下ろす
どうやら眠っているようなのだが、熱が高いのか肩で息をしている
「ユーリ、タオルと水取ってくるよ」
「あぁ、頼む」
パタンッとフレンが出て行ったのを確認すると、ベッドの脇にしゃがみこむ
そっと顔にかかった髪を退けて顔を覗き込む
熱いのか、額に汗が滲んでいる
それに、あまり寝ていないのか目の下に薄らと隈が出来ている
机の上には、教科書だの、ノートだの、プリントだのが散乱しているから、恐らく夜遅くまで勉強していたのだろう
苦手な勉強を彼女なりに頑張っていたのだと思うと、少しだけ褒めたくなる
だが、ふといつも置いてあるドライヤーが無いことに気づく
いつもなら夜に使った後、そのまま部屋に置いといて朝髪を整えてから戻すのに……
と、考えていると、床にバスタオルが落ちているのを見つけてしまった
「…………おい、コラ、また髪乾かさずに寝たな………?」
少し怒り気味に言うが、眠っている彼女には聞こえていないだろう
まぁ、ここまで酷くなった原因もわかったし、後で説教決定だな
「ただいま、ユーリ」
「お、サンキュフレン」
タオルと水をフレンから受け取って、ベッド脇の小さな棚の上に置く
シアを仰向けに寝かし直してから、タオルに水を染み込ませて絞った後、額に乗せる
気持ちいいのか、少しだけ顔が和らいだ
「ふぅ……まぁ、とりあえず今は大丈夫そうだな」
「そうだね。急いで来て意外と正解だったね」
「あぁ、あのままエアコンつけっぱなしだったらもっと悪化してたな」
「さて……僕は少し買い物に行ってくるよ。さっきちらっと冷蔵庫見たけど、何も無かったからね
ついでに風邪薬も買ってくるよ」
「悪ぃな、行かせちまって」
「気にするなよ、アリシアには君が居てあげた方がいいからね」
財布を鞄から取り出しながらフレンは言うと、スタスタとドアに向かっていく
が、開ける手前でオレの方を振り返る
「あ、一応言っとくけど、アリシアに手は出すなよ?」
「誰が出すかよっ!?」
クスクスっと笑って、行ってくると言って部屋を出て行った
「ったく……なんつーこと言い出すんだよ…」
軽く頭を抱える
なんでそんなこと言い出すんだか……
苦笑いしつつ、そっとベッドの淵に腰掛ける
頬に触れると、オレの手の冷たさが丁度いいのか、あるいはくすぐったいのか、首を少し絞める
その反応が可愛くて顔がほころぶ
そっと頭を撫でる
綺麗なサラサラとした赤い長髪
毛先の方はベッドの上にバサッと散乱している
「ったく……何をしたらこんだけ綺麗な髪になるんだかな」
軽く髪の束をすくい上げて、そっとキスする
彼女の使っているシャンプーの甘い香りがする
そっと髪を戻して、シアに目を戻す
シン…とした部屋にシアの呼吸音と時折咳の音が聞こえる程度だ
フレンが帰ってくるまで、ずっとシアを見つめていた
~数時間後~
「……ん………」
額にひんやりとした感覚を感じて薄らと目を開ける
ぼんやりと見慣れた天井が見える
いつの間にか額にタオルが乗っているうえに、エアコンが切られている
未だに下がっていなさそうな熱にうなされながらも、どうにか考えているとユーリのことが思い浮かんだ
……そう言えば、電話を切る前に今から行くって言ってた気がする……
「お、目覚めたか?」
「……ユー……リ……?」
ケホッと咳込みながら名前を呼ぶと、すぐ傍まで来た
タオルを退けると前髪を上げて、コツンとおでこを当ててくる
普段なら逃げ出そうとしていただろうが、熱で正常な判断が出来ない頭では特にそんなことを考えられなかった
「ん、まだ下がりそうにねぇな…」
そう言って離れる
「シア、なんか食えそうか?」
「……ん………少し……なら…」
「了解」
そっと頭を撫でて部屋を出て行った
少しだけ体を起こすと、わたしのじゃないバックが2つ見える
多分、フレンも居るのだろう
これは2人からお説教だなぁ…と思いながら、寝直す
起きていようにも、体が怠くてそれどころじゃない
「ほら、持ってきたぜ」
そう言いながらユーリが戻って来た
トレーに小さな土鍋や水の入ったコップが乗っている
それをベッド脇の小さな棚の上に置くと、そっと起き上がらせてくれる
ベッドの背に寄りかかるように座ると、ユーリもベッドの淵に腰掛けて先程のトレーを自身の膝の上に乗せる
土鍋には、昔よく風邪を引いた時にお母さんが作ってくれた卵の混ざったおかゆを持ってきてくれていた
レンゲで少しすくうと軽く息を吹きかけて冷ましてから食べさせようとしてくる
……まぁ、気にせずに食べたのだが←
「…………ん…美味しい」
「そりゃ良かったよ、ほい」
次の分をすくいながら少し微笑んでいる
……正直に言ってこの時間がちょっと嬉しかった
久しぶりに1人じゃないこの部屋……
……これなら、風邪でもいっかな……
「ごちそうさま……」ケホッ
「お粗末さまでしたっと、ほい、薬飲め?」
おかゆを食べきってからユーリに差し出された薬を、飲む
こうゆう時くらいちゃんとゆうことを聞いておかないと……
「……ん………」
「やけにいい子だな…ま、その方がいいんだがな。…もう少し寝るか?」
そう聞かれゆっくり首を横に振る
流石にこれ以上眠れそうには無かった
「そっか、んじゃ横になるだけなっとけよ、座ったままはちときついだろ?」
コクンと頷くと、今度は横にさせてくれた
久々に触れたユーリの肌が少し冷たくて気持ちよかった
「ちょっとこれ片付けてくっから、大人しくしてろよな」
そう言うと空になった食器を持って部屋を出て行った
シン…とした部屋にわたしの咳だけが響く
昨日エアコンつけっぱなしで寝たわたしの馬鹿っ!と心の中で悪態をつく
テストがあるのに、これじゃあ勉強出来そうにない
まぁ…元々手なんてつけられてないのだが……
ぼーっとする頭で色々考えようとするが、そんな事が出来るわけもなく、早々に考えるのを諦めた
…もう、大人しく怒られよう……色々……
「さてと…ちとお話しようか?アリシアさんよ?」
パタンとドア閉めながらユーリが戻って来た
いつも呼んでくる愛称のシアでなく、アリシアと呼んでくる
……怒ってる、これ本気で怒ってる……!
先程と同じようにベッドの淵に腰掛けて、横髪を少し払って頬に触れてくる
丁度いい感じに手が冷たくて気持ちいいのだが、今は絶対言えない←
「……ん…………」
「はい1つ目、なんでエアコンつけっぱなしにした?」
「……消すの忘れた……」コホッ
「2つ目、また髪乾かさずに寝たな?」
「……面倒だった……」ケホッケホッ
「3つ目、ちゃんと寝てないだろ?」
「……寝付けない……」
「最後、ここ何日かまともに飯食ってないな?」
「…………買い物行って作ってって作業が面倒で……………」ゲホッ
はぁ……と大きくため息をついた途端、ぎゅっと頬をつねられる
「いっ……!?ゆーり、いふぁいっへ……!」(ユーリ、痛いって……!)
「……なぁ、シア?エアコンつけっぱなしだったのは100歩譲っていいんだよ、最近あんま寝てねぇのも頑張って勉強してる雰囲気あっからいいんだよ
だがな……なんで毎日のように髪は乾かせって言ってんのにやらねぇんだっての!?それと、飯もちゃんと食えよって再三言ったろっ!?」
ちょっと大きい、でも頭に響かない程度の声量で言ってくる
いつにもなく真剣な顔して怒ってくるからびっくりしてしまう
それよりも今はこの手退けて下さい……
「電話も出ないしメッセージも帰って来ないで、オレやフレンがどんだけ心配したと」
「はいはい、一旦そこでやめようか、ユーリ」
ガチャっとドアを開けてフレンが入って来た
手にはコンビニの袋…見た感じだとペットボトルが入っているようだ
フレンの言葉でユーリて渋々という感じで手を退けてくれた
「アリシア、スポーツドリンク買ってきたから、飲めそうだったら飲んでくれ」
「………ん…………ありがと…………」
差し出されたペットボトルを受け取ると、意外と冷たくて飲む前に頬にピタッとつける
「ユーリ、幾ら怒りたいからって今はないだろ?今は」
「うっ……それもそうだな……」
「まったく……僕はもう帰るから後頼んだよ。それと、先生には明日伝えておくから」
「悪ぃ、頼んだ」
「じゃあアリシア、また明日来るから、それまでユーリの言う事聞いてるんだよ?」
「……分かった………」ケホッ
またねと言ってバックを持って帰って行った
フレンが帰ったのを確認すると、そっと頭を撫でてくる
「……熱下がったら説教再開だかんな?」
「………ん………今回のはわたしが悪いし………何時間でも……」
頭痛いけど、精一杯笑おうとする
これ以上、心配かけたくないから……
「忘れんなよ?その言葉」
意地悪そうな顔をして言ってくる
久々にその顔が見れて、ちょっと嬉しくなる
やっぱりユーリが居ると安心する……
だんだんとまた、瞼が重くなってくる
「シア、もっかい寝てろよ」
な?と今度は優しく微笑んでくる
コクンと頷くと、いよいよ眠気も襲ってきた
彼が傍に居ればちゃんと眠れるのに……と心の中で苦笑する
眠気と熱で意識が朦朧として、正常な判断が出来ていなかった
夢の中に落ちる前に、ついに言ってしまっていた
「……ユーリ…………好き…………」
言ってしまったのに気づいたのは、少し先のこと………
ーーーーーーーーーー
すやすやと気持ちよさそうに寝ているシアを見ながら硬直している
「……今…………なんっつった……?」
確かに、微かにだが、『好き』と言わなかったか……?
…いや、本人は熱あるし、眠そうだったから、きっといつもの寝ぼけてだろう
きっとそうだ、そうに違いない
ていうかそうであってくれ……っ!
これでもし、聞かれたりなんてしたら答えられねぇじゃんか……!!
シアから聞いてくることはない気がするが、万が一にでも聞かれたら……
「…………勘弁してくれ………」
うなだれながら呟く
いやホント勘弁してください……
オレにだって色々計画あるんですけどねぇ……
ちらっとシアに目線を戻すが、目を覚ます前と違って何処か嬉しそうな寝顔だ
……いや、そんな露骨に喜ばないでくれよ……可愛すぎかよ……////
熱に侵されて、正常な判断が出来ていないんだろう
普段ここまで嬉しそうにしたりしない
そっと頭を撫でてから、起こさないようにベッドから降りようとするが……
立ち上がろうとしたところで、服を引っ張られてる感覚がした
振り向くと、シアがオレの服の裾を掴んでいる
「……おいおい……」
どんだけ2人になるのが嫌なんだ、このお嬢さんは……
頼む、1回だけ離れさせてくれ……
さっきの言葉が頭の中で反響してて、襲いかねない
いや、むしろ今襲う自信しかねぇ←
そんなこと考えてると、急に引っ張られる
「なっ!?」
慌てて腕をついてなんとかシアに倒れ込むとかにはならなかったが、大問題が発生した
オレが倒れかけた原因……シアが胸元に抱きついてきていた
いや、普段なら気にしねぇんだ、普段なら……
でも今日は、寝ぼけてかもしれないがあんなこと言われた後だし、熱でうなされててちょっと息荒いし、服越しでも分かるくらい顔熱いし……
引き剥がすに引き剥がせない
「……………はぁ………しゃあねぇか……」
クスッと苦笑いして諦めた
引き剥がして起こすのは可哀想だし、オレは元々丈夫だから風邪引かねぇし
むしろ、移されても構わない
それで少しでもシアが楽になるのであれば…な
「……オレも好きだぜ?…おやすみ、シア」
小さく呟いて軽く髪にキスした
~あれから2週間~
「はぁ………週間前に戻りたい……」
部屋で1人、ボソッと呟く
みんなと遊んだ最後の日は、ゲーセン行ったり、スイパラ行ったりして終わった
フレンがエステルにってクレーンゲームでぬいぐるみ一発で取ったのは本気で驚いた←
負けじとユーリもぬいぐるみ取ってくるし…(因みにわたしが貰った)
スイパラじゃ、ユーリが1番食べまくってたなぁ……
食べ過ぎだっ!とフレンが怒っていたのも、まだ記憶に新しい
そんな楽しかった日ももう過ぎ去っていて
再来週には夏休みが来る
が、その前に、期末テストという名の悪魔が待ってる←
前回、中間テストがズタボロだったわたしは非常にマズイ
下手したら夏休み返上して補習という自体になりかねない
いや、本当、真面目に勉強しないとやばいのだ
でも、机に広げられた問題集には一向に手が付かない
理由は単純、ユーリのことだ
あの日以来、フレンがエステルと付き合ってることは瞬く間に広がって、フレンに告白してくる人がいなくなった
それはそれで良かったと思うのだが、ユーリは前にも増してその頻度が増えた
酷い時には同じ子から告白されたと、呆れていた程だ
わたしやフレンに迷惑がかかるからと、最近一緒に帰っていないし、家にも来なくなった
フレンは、エステルが呼ばない限り極力わたしと居てくれる
だが、1人になる時間がものすごく増えた
今もそうだ
あまりにも2人以上いる空間に慣れすぎてしまった
だからと言ってジュディスやリタを呼ぶわけにもいかず……
スピーカーで音楽を流して寂しさを誤魔化すようになった
夕飯もフレンが居る時しか食べなくなったし……(作るのが面倒だから)
そんなんで、全く勉強に集中出来そうになかった
「はぁ………」
何度ついたかわからないため息をつきながら、問題集を閉じる
もういい、寝てしまおう
寝れば何も考えずに済むのだから
椅子から立ち上がって、ベッドに倒れ込む
すると、すぐに睡魔が襲ってくる
それに逆らうことなく、意識を手放した
~次の日~
ピピピピッピピピッ
「………ん……………」
目覚ましの音で目が覚める
体を少し起こして、携帯の時計を見ると
「えっ!?嘘っ!?」
時計はもう10時を過ぎた頃を刺している
夢かと思って、部屋の壁掛け時計を見るが、やはり10時だ
完全な遅刻だ
今から行っても1時限目に間に合わない
携帯をよく見ると、ユーリとフレン、それにジュディスから通知が大量に来ている
「はぁ………」
ため息をつきながら起き上がろうとするが、うまく力が入らずまたベッドに逆戻りする
突然の事態に驚く
よくよく考えてみると、体が怠い…というか、頭痛いし喉痛いし……
ふと、昨日の夜のことを思い出す
そーいえば暑いからってエアコンつけたままだった気がする……
オマケに髪を乾かすのを完全に忘れていた
つまり、風邪を引いたわけだ
「………最悪…………」ケホッ
そこまで酷く無いのだろうが、軽く咳が出る
多少熱っぽいようで、頭がくらくらし出す
自覚するまで眠気で気づかなかったようだ
さてどうしたものか…
とりあえず飲み物が飲みたいのだが、下に降りるのも無理そうだ
いや、その前に連絡しなくては……
そんなことを考えていると、不意に携帯が鳴り出す
着信音が頭に響くが、誰がかけてきたかは予想がつく
うつ伏せの状態から少し体を横に向かせて、電話をとってスピーカーにすると、焦ったような怒鳴り声が聞こえる
『シアっ!?やっと出たっ!!お前何してんだっ!?』
紛れもない、ユーリの声だ
微かにフレンの声も聞こえる
確か今の時間は体育だったはず……
『おーいっ!聞いてんのかっ!?』
「………うっさい…………ちょっと声量下げて………頭に響く………」ゲホッケホッ
掠れた声で言うと、少しだけ声量を下げてくれた
『ん?どうした…?咳してるみてぇだけど』
「………多分、風邪………引いた……」コホッ
『……はぁっ!?!!』
『ユーリ?どうしたんだい?そんなに驚いて……アリシアになんかあったのかいっ!?』
「だからぁ…………叫ばないで………」
『いや、だってお前っ!?なんでこの時期に風邪なんて引くんだっ!?』
『……なっ!?!アリシアっ!?大丈夫かいっ?!』
「……………2人の……その声で……頭割れそうだよ……」ゲホッゲホッ
訂正しよう、かなり重症だこれ
そう言えばエアコンのリモコン………机の上だ………
『と、とりあえず、立てっか??』
「無理…………まず起き上がれないし………」
『『はぁぁっ!!?!?!!』』
スピーカーから大音量の声が聞こえる
……だから………頭痛いんだって………
『ちょっ!?ま、待ってろ!すぐ行くからっ!!』
そう言って、わたしの返事も聞かずに電話を切ってしまう
「………さむ…………」
流石に一晩中つけっぱなしは寒い
だが、どう頑張ってもここからでは手が届かない
起き上がろうと試みるが、やはり体に力が入らない
「はは…………ユーリ…………来たら………怒られる………よ…これ……」
駄目だ、眠い……
とりあえず布団だけでも被ろう……
なんとか手を伸ばして布団を頭から被る
これで少しはマシだろう
熱からか、徐々に瞼が重くなってくる
眠気に逆らうことをやめて、再び意識を手放した
ーーーーーーーーーーー
~少し遡ること数時間前~
「おはよーさん………ってフレン、シアはどうした?」
教室に入って最初にフレンに話しかける
ここ最近は2人といる時間が学校くらいしかなくなった
フレンもエステルと時間さえ合えばそちらへ行くから、実質3人ともバラバラに行動する時間が増えた
ただ、それでもフレンとシアは一緒に登校していたはず
なのに今日はそのシアの姿が見えない
「おはよう、ユーリ。実は今朝、インターフォン鳴らしたんだけど出てこなくてね……なんどメッセージ送ったり電話しても出ないし、合鍵は家に置いてきてしまっていたから、仕方なく先に来たんだ」
「はぁ?あのシアが?」
まさか、と思いつつ携帯を取り出して電話をかける
だが、一向に出る気配がない
仕方なく1度切って、トークアプリを起動してシアのトークを開く
《おーい、シア?どうした?学校始まるぞ?》
そう送信したと同時にチャイムが鳴る
「おいおい…先生来るぞ……」
あの先生、授業適当な割に出席とんのはえんだよな…
「ふぁ……おーい、授業始めるぞー」
「も、もう来たよ……」
ガタガタッと慌てて席につき始める
「出席は…………ん?アリシアがいないようだが、そこのおふたりさんなんか聞いてないんかね?」
「いや……今日は朝からずっと連絡取れなくて……」
「ふーん……ま、そのうち来るでしょ。さ、授業始めるぞー。期末テストまで後1週間だからな~」
ぶーぶーとクラスメイト達は文句を言い出すが、オレとフレンだけは浮かない顔をしていた
左隣のアリシアの席を見つめながら
ーーーーーーーー
「おいおい……体育始まっても来ねぇぞ……」
2限目、体育が始まってもアリシアは姿を見せない
流石にこんなことは初めてだった
そもそもアリシアが寝坊したとしても、普段からオレかフレンが上がり込んで起こしていたからなのだが……
音に敏感な彼女がここまで電話しても連絡してこないなんて初めてだ
「悪ぃフレン、もっかいだけかけさせてくれ」
「あぁ、構わないよ」
流石の異常事態に普段注意してくるフレンも許可してきた
(頼むから出てくれ……!)
そう祈りながらかけていると、ようやく繋がった
「シアっ!?やっと出たっ!!お前何してんだっ!?」
「っ!!繋がったかいっ!?」
オレの声にフレンが駆け寄って来る
「おーいっ!聞いてんのかっ!?」
なかなか返事が返って来ないからそう聞くと、掠れた声で答えてくる
『………うっさい…………ちょっと声量下げて………頭に響く………』ゲホッケホッ
「ん?どうした…?咳してるみてぇだけど」
『………多分、風邪………引いた……』コホッ
「……はぁっ!?!!」
あまりに衝撃的なことを言われ、つい大声を出してしまう
「ユーリ?どうしたんだい?そんなに驚いて……アリシアになんかあったのかいっ!?」
駆け寄って来たフレンに片方のイヤフォンを渡す
『だからぁ…………叫ばないで………』
「いや、だってお前っ!?なんでこの時期に風邪なんて引くんだっ!?」
「……なっ!?!アリシアっ!?大丈夫かいっ?!」
『……………2人の……その声で……頭割れそうだよ……』ゲホッゲホッ
辛そうな声でそう言ってくる
こりゃかなり重症だな…
「と、とりあえず、立てっか??」
慌てつつも立ち上がれるかを聞く
立てればまだ問題はないだろう
『無理…………まず起き上がれないし………』
「「はぁぁっ!!?!?!!」」
フレンと一緒に絶叫してしまう
いや、起き上がれないって大問題だろ……
顔を見合わせると、フレンはすかさず先生の元へ走って行く
「ちょっ!?ま、待ってろ!すぐ行くからっ!!」
そう言って電話を切り、オレも先生の方へ向かった
フレンが既に話をつけていてくれてて、オレらは急いで教室まで戻る
教室に入って自分達の鞄からを引っ掴むと、踵を返して下駄箱に急ぐ
さっと靴を履き替えて猛ダッシュでシアの家へ向かう
彼女の家は学校からさほど離れていない為、数分でついた
鞄から合鍵を出して鍵を開けようとするが、手応えがない
「…おい、フレン…手応えねぇんだが…」
「……ま、まさか……アリシアでも流石にそれは……」
鍵を抜いてドアノブを回すと簡単に開いた
「「……なんでかけてないんだ!?」」
フレンと声が重なる
いや、マジでなんでかかってねぇんだよ……
「いや、ユーリっ!今はそんなことよりもっ!」
「あ、あぁっ!!」
中に入って靴を脱ぎ捨てて、急いでシアの部屋へ向かう
バンッと音を立ててドアを開ける
「シアっ!だいじょ………って、寒っ!?」
部屋に入った瞬間に思ったのはそれだ
異常な程寒い
真冬かっ!?
「あ、よく見たらエアコンついてる……」
「「…………はぁ………」」
2人同時にため息をつく
これじゃあ風邪を引くのは当たり前だろう
部屋に入って真っ先にオレはシアの元へ行く
頭からすっぽりと冬用の布団を被っている
フレンは机の上に置いてあるリモコンを取ってエアコンを切る
それを確認してから、軽く布団を退かして顔だけ布団から出させる
「ったく……人の気も知らねぇで…」
「まったくだよ…」
フレンと苦笑いしながらシアを見下ろす
どうやら眠っているようなのだが、熱が高いのか肩で息をしている
「ユーリ、タオルと水取ってくるよ」
「あぁ、頼む」
パタンッとフレンが出て行ったのを確認すると、ベッドの脇にしゃがみこむ
そっと顔にかかった髪を退けて顔を覗き込む
熱いのか、額に汗が滲んでいる
それに、あまり寝ていないのか目の下に薄らと隈が出来ている
机の上には、教科書だの、ノートだの、プリントだのが散乱しているから、恐らく夜遅くまで勉強していたのだろう
苦手な勉強を彼女なりに頑張っていたのだと思うと、少しだけ褒めたくなる
だが、ふといつも置いてあるドライヤーが無いことに気づく
いつもなら夜に使った後、そのまま部屋に置いといて朝髪を整えてから戻すのに……
と、考えていると、床にバスタオルが落ちているのを見つけてしまった
「…………おい、コラ、また髪乾かさずに寝たな………?」
少し怒り気味に言うが、眠っている彼女には聞こえていないだろう
まぁ、ここまで酷くなった原因もわかったし、後で説教決定だな
「ただいま、ユーリ」
「お、サンキュフレン」
タオルと水をフレンから受け取って、ベッド脇の小さな棚の上に置く
シアを仰向けに寝かし直してから、タオルに水を染み込ませて絞った後、額に乗せる
気持ちいいのか、少しだけ顔が和らいだ
「ふぅ……まぁ、とりあえず今は大丈夫そうだな」
「そうだね。急いで来て意外と正解だったね」
「あぁ、あのままエアコンつけっぱなしだったらもっと悪化してたな」
「さて……僕は少し買い物に行ってくるよ。さっきちらっと冷蔵庫見たけど、何も無かったからね
ついでに風邪薬も買ってくるよ」
「悪ぃな、行かせちまって」
「気にするなよ、アリシアには君が居てあげた方がいいからね」
財布を鞄から取り出しながらフレンは言うと、スタスタとドアに向かっていく
が、開ける手前でオレの方を振り返る
「あ、一応言っとくけど、アリシアに手は出すなよ?」
「誰が出すかよっ!?」
クスクスっと笑って、行ってくると言って部屋を出て行った
「ったく……なんつーこと言い出すんだよ…」
軽く頭を抱える
なんでそんなこと言い出すんだか……
苦笑いしつつ、そっとベッドの淵に腰掛ける
頬に触れると、オレの手の冷たさが丁度いいのか、あるいはくすぐったいのか、首を少し絞める
その反応が可愛くて顔がほころぶ
そっと頭を撫でる
綺麗なサラサラとした赤い長髪
毛先の方はベッドの上にバサッと散乱している
「ったく……何をしたらこんだけ綺麗な髪になるんだかな」
軽く髪の束をすくい上げて、そっとキスする
彼女の使っているシャンプーの甘い香りがする
そっと髪を戻して、シアに目を戻す
シン…とした部屋にシアの呼吸音と時折咳の音が聞こえる程度だ
フレンが帰ってくるまで、ずっとシアを見つめていた
~数時間後~
「……ん………」
額にひんやりとした感覚を感じて薄らと目を開ける
ぼんやりと見慣れた天井が見える
いつの間にか額にタオルが乗っているうえに、エアコンが切られている
未だに下がっていなさそうな熱にうなされながらも、どうにか考えているとユーリのことが思い浮かんだ
……そう言えば、電話を切る前に今から行くって言ってた気がする……
「お、目覚めたか?」
「……ユー……リ……?」
ケホッと咳込みながら名前を呼ぶと、すぐ傍まで来た
タオルを退けると前髪を上げて、コツンとおでこを当ててくる
普段なら逃げ出そうとしていただろうが、熱で正常な判断が出来ない頭では特にそんなことを考えられなかった
「ん、まだ下がりそうにねぇな…」
そう言って離れる
「シア、なんか食えそうか?」
「……ん………少し……なら…」
「了解」
そっと頭を撫でて部屋を出て行った
少しだけ体を起こすと、わたしのじゃないバックが2つ見える
多分、フレンも居るのだろう
これは2人からお説教だなぁ…と思いながら、寝直す
起きていようにも、体が怠くてそれどころじゃない
「ほら、持ってきたぜ」
そう言いながらユーリが戻って来た
トレーに小さな土鍋や水の入ったコップが乗っている
それをベッド脇の小さな棚の上に置くと、そっと起き上がらせてくれる
ベッドの背に寄りかかるように座ると、ユーリもベッドの淵に腰掛けて先程のトレーを自身の膝の上に乗せる
土鍋には、昔よく風邪を引いた時にお母さんが作ってくれた卵の混ざったおかゆを持ってきてくれていた
レンゲで少しすくうと軽く息を吹きかけて冷ましてから食べさせようとしてくる
……まぁ、気にせずに食べたのだが←
「…………ん…美味しい」
「そりゃ良かったよ、ほい」
次の分をすくいながら少し微笑んでいる
……正直に言ってこの時間がちょっと嬉しかった
久しぶりに1人じゃないこの部屋……
……これなら、風邪でもいっかな……
「ごちそうさま……」ケホッ
「お粗末さまでしたっと、ほい、薬飲め?」
おかゆを食べきってからユーリに差し出された薬を、飲む
こうゆう時くらいちゃんとゆうことを聞いておかないと……
「……ん………」
「やけにいい子だな…ま、その方がいいんだがな。…もう少し寝るか?」
そう聞かれゆっくり首を横に振る
流石にこれ以上眠れそうには無かった
「そっか、んじゃ横になるだけなっとけよ、座ったままはちときついだろ?」
コクンと頷くと、今度は横にさせてくれた
久々に触れたユーリの肌が少し冷たくて気持ちよかった
「ちょっとこれ片付けてくっから、大人しくしてろよな」
そう言うと空になった食器を持って部屋を出て行った
シン…とした部屋にわたしの咳だけが響く
昨日エアコンつけっぱなしで寝たわたしの馬鹿っ!と心の中で悪態をつく
テストがあるのに、これじゃあ勉強出来そうにない
まぁ…元々手なんてつけられてないのだが……
ぼーっとする頭で色々考えようとするが、そんな事が出来るわけもなく、早々に考えるのを諦めた
…もう、大人しく怒られよう……色々……
「さてと…ちとお話しようか?アリシアさんよ?」
パタンとドア閉めながらユーリが戻って来た
いつも呼んでくる愛称のシアでなく、アリシアと呼んでくる
……怒ってる、これ本気で怒ってる……!
先程と同じようにベッドの淵に腰掛けて、横髪を少し払って頬に触れてくる
丁度いい感じに手が冷たくて気持ちいいのだが、今は絶対言えない←
「……ん…………」
「はい1つ目、なんでエアコンつけっぱなしにした?」
「……消すの忘れた……」コホッ
「2つ目、また髪乾かさずに寝たな?」
「……面倒だった……」ケホッケホッ
「3つ目、ちゃんと寝てないだろ?」
「……寝付けない……」
「最後、ここ何日かまともに飯食ってないな?」
「…………買い物行って作ってって作業が面倒で……………」ゲホッ
はぁ……と大きくため息をついた途端、ぎゅっと頬をつねられる
「いっ……!?ゆーり、いふぁいっへ……!」(ユーリ、痛いって……!)
「……なぁ、シア?エアコンつけっぱなしだったのは100歩譲っていいんだよ、最近あんま寝てねぇのも頑張って勉強してる雰囲気あっからいいんだよ
だがな……なんで毎日のように髪は乾かせって言ってんのにやらねぇんだっての!?それと、飯もちゃんと食えよって再三言ったろっ!?」
ちょっと大きい、でも頭に響かない程度の声量で言ってくる
いつにもなく真剣な顔して怒ってくるからびっくりしてしまう
それよりも今はこの手退けて下さい……
「電話も出ないしメッセージも帰って来ないで、オレやフレンがどんだけ心配したと」
「はいはい、一旦そこでやめようか、ユーリ」
ガチャっとドアを開けてフレンが入って来た
手にはコンビニの袋…見た感じだとペットボトルが入っているようだ
フレンの言葉でユーリて渋々という感じで手を退けてくれた
「アリシア、スポーツドリンク買ってきたから、飲めそうだったら飲んでくれ」
「………ん…………ありがと…………」
差し出されたペットボトルを受け取ると、意外と冷たくて飲む前に頬にピタッとつける
「ユーリ、幾ら怒りたいからって今はないだろ?今は」
「うっ……それもそうだな……」
「まったく……僕はもう帰るから後頼んだよ。それと、先生には明日伝えておくから」
「悪ぃ、頼んだ」
「じゃあアリシア、また明日来るから、それまでユーリの言う事聞いてるんだよ?」
「……分かった………」ケホッ
またねと言ってバックを持って帰って行った
フレンが帰ったのを確認すると、そっと頭を撫でてくる
「……熱下がったら説教再開だかんな?」
「………ん………今回のはわたしが悪いし………何時間でも……」
頭痛いけど、精一杯笑おうとする
これ以上、心配かけたくないから……
「忘れんなよ?その言葉」
意地悪そうな顔をして言ってくる
久々にその顔が見れて、ちょっと嬉しくなる
やっぱりユーリが居ると安心する……
だんだんとまた、瞼が重くなってくる
「シア、もっかい寝てろよ」
な?と今度は優しく微笑んでくる
コクンと頷くと、いよいよ眠気も襲ってきた
彼が傍に居ればちゃんと眠れるのに……と心の中で苦笑する
眠気と熱で意識が朦朧として、正常な判断が出来ていなかった
夢の中に落ちる前に、ついに言ってしまっていた
「……ユーリ…………好き…………」
言ってしまったのに気づいたのは、少し先のこと………
ーーーーーーーーーー
すやすやと気持ちよさそうに寝ているシアを見ながら硬直している
「……今…………なんっつった……?」
確かに、微かにだが、『好き』と言わなかったか……?
…いや、本人は熱あるし、眠そうだったから、きっといつもの寝ぼけてだろう
きっとそうだ、そうに違いない
ていうかそうであってくれ……っ!
これでもし、聞かれたりなんてしたら答えられねぇじゃんか……!!
シアから聞いてくることはない気がするが、万が一にでも聞かれたら……
「…………勘弁してくれ………」
うなだれながら呟く
いやホント勘弁してください……
オレにだって色々計画あるんですけどねぇ……
ちらっとシアに目線を戻すが、目を覚ます前と違って何処か嬉しそうな寝顔だ
……いや、そんな露骨に喜ばないでくれよ……可愛すぎかよ……////
熱に侵されて、正常な判断が出来ていないんだろう
普段ここまで嬉しそうにしたりしない
そっと頭を撫でてから、起こさないようにベッドから降りようとするが……
立ち上がろうとしたところで、服を引っ張られてる感覚がした
振り向くと、シアがオレの服の裾を掴んでいる
「……おいおい……」
どんだけ2人になるのが嫌なんだ、このお嬢さんは……
頼む、1回だけ離れさせてくれ……
さっきの言葉が頭の中で反響してて、襲いかねない
いや、むしろ今襲う自信しかねぇ←
そんなこと考えてると、急に引っ張られる
「なっ!?」
慌てて腕をついてなんとかシアに倒れ込むとかにはならなかったが、大問題が発生した
オレが倒れかけた原因……シアが胸元に抱きついてきていた
いや、普段なら気にしねぇんだ、普段なら……
でも今日は、寝ぼけてかもしれないがあんなこと言われた後だし、熱でうなされててちょっと息荒いし、服越しでも分かるくらい顔熱いし……
引き剥がすに引き剥がせない
「……………はぁ………しゃあねぇか……」
クスッと苦笑いして諦めた
引き剥がして起こすのは可哀想だし、オレは元々丈夫だから風邪引かねぇし
むしろ、移されても構わない
それで少しでもシアが楽になるのであれば…な
「……オレも好きだぜ?…おやすみ、シア」
小さく呟いて軽く髪にキスした