*1年生
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体育祭も終わり……
「………つかれた………」
家に着いて、小さく呟きながらテーブルに突っ伏した
最優秀クラス賞を取ったわたしたちのクラスとエステルのクラスは先に帰宅
残りのクラスは、順位事に片付けしてから帰宅らしい
ジュディスとリタのクラスもそこそこ高めの順位だったみたいだから、そんなに長くかからないはず……
……で、フレンとエステルは昼ご飯の買い出ししに行ったみたい
さすがに作るだけの余力は誰もないから、ファストフードかなんか買ってくるみたい
……だから、ものすごく久しぶりに、今ここにはわたしとユーリしかいない
……なんか、ちょっと変な感じ……
「シア、先に薬飲んどくか?」
ユーリの声に顔を上げると、薬と水を持って来ていた
「……そーする〜……」
若干喉に違和感あったし、その方がいいだろう
体を起こして、薬と水を受け取ってすぐに飲んだ
「……ん、ありがとう」
「はいよ。……つか、そんなんで劇出て平気なのかよ?」
ちょっと心配そうにわたしの隣に座りながら、ユーリが聞いてくる
……確かに、ちょっとまずそうではある……
「相談必須かなぁ…これ……」
また病院かと思うと、かなり憂鬱だ
本当、病院なんて行きたくないんだけど……
「勝手して怒られるよりかずっとマシだろ?ついて行ってやっから、大人しく行こうぜ?」
わたしの頭を撫でながら、ユーリは首を傾げて見てくる
……その言い方、ちょっとずるいよ……
やだって、言えないじゃん……
「……気が向いたら行く…」
「…やだって言わないだけマシか。まぁ、今日明日はオレも勘弁して欲しいしな。さすがに疲れたからな」
そう言って苦笑いしてくるけど、全然疲れてるように見えないんだけど…
「にしても、なんだかんだ4年連続で優勝しちまったな。今年はちと手抜くつもりだったんだが……」
「嘘つき、そんなつもり、最初から微塵もなかったでしょ?」
わたしの言葉に、ユーリはバレたかとでも言いたげにニヤッと笑う
勝負事じゃユーリが手抜かないなんて、昔からよく知ってる
「さてと……あいつらが帰って来る前に、軽く風呂入ってくるわ」
「ん、わかった〜」
そう答えると、カタンッと音を立てて立ち上がって、ユーリがリビングの扉の方に歩いて行く
さてと……今のうちにゲームしておこうかな……
そう思って携帯を取り出すと、おびただしい数の着信履歴が目に入る
……それも、全部お母さんの携帯と、病院の先生の電話番号だ……
え、なんで……?
そんなこと考えてると、また着信があった
…お母さんではなく、病院の先生から……
出るの嫌だけど……出ないと押しかけられそう……
渋々電話を取ってスピーカーにした
「はー『アリシアさんっ!体育祭の時に放送をするなら、事前に連絡をと言ってあったでしょう!?』……ごめんなさい……」
先生の怒鳴り声に、若干驚きながら謝る
……確かにそう言われてたかもしれない……
『全くもう!!いくら病院が嫌いでも、連絡くらいはしておいてください!!……今日の午後、2時には伺いますから、逃げないでくださいよ……!?』
「……はい……」
短く答えると、あまり時間がなかったのか、すぐに電話が切れた
ホッとしたのも束の間、今度はお母さんからの着信だ
……今、向こうって夜だったはずだけど……
そんなこと考えながら、電話に出る
「もしも『アリシア!!なんでもっと前に放送することと、文化祭に出ることを教えてくれなかったんだ!?』げ……お父さん……」
電話口から聞こえてきたのは、お母さんじゃなくて、お父さんの声
……そう言えば、着拒したままだった……
『お前という子は……!!ただでさえ中等部の頃に喉を痛めていたんだから、先に言っておいてくれなければ不安になるだろう?!』
「あー……うん、ごめんなさい……」
……なんか、さっきも同じような会話したけど……
『全く……病院の先生の方には、家に行ってもらえるようお願いしたから、大人しく診察してもらうんだぞ?』
「……さっき電話あったよ、来るって……言われなくとも、大人しくしてるからー」
『そう言って大人しくしなかったことが何度あったことか……だいたいアリシアはな……』
グチグチと長ーいお説教が始まってしまった
こうなると、中々終わんないんだよなぁ……
そう思いながらイヤフォンを取り出して耳に当てる
携帯本体から、イヤフォンの方へとお父さんの声が移動したのを確認して、声を聞きながらゲームを起動した
……とりあえず、ログボだけでも確保しておかないと……
よくやっているゲームのログボだけを受け取っていると、玄関の方から音がした
まずい……フレン達、帰って来たな……
はぁ……と小さくため息をついて、電話の画面に戻して、イヤフォンを外した
それと同時にリビングの扉が開く
「ただい」
「……あーもう!!そんな昔の話ばっか持ち出して来ないでよ!!わかったからもう切るよ!?切るからね!?」
携帯を耳に当てながらフレンの声をかき消すように電話口のお父さんに向かって怒鳴る
扉の前でびっくりしているフレンとエステルの顔が横目に映った
『んなっ!?ま、待てアリシア!!まだ話は』
「切るったら切るから!!ちゃんと診てもらうから、もう絶対!!電話して来ないでね?!!」
未だに電話口で何か言ってるけど、問答無用で電話を切った
……危なぁ……フレンの声聞こえてたら、また何言い出すかわかったもんじゃないし……
「おーい、シア。怒鳴り声聞こえたんだが……なんかあったか?……って、お前らなんでんなとこで突っ立ってんだよ?」
フレンの後ろから、ユーリの声が聞こえてくる
「……おばさん達、お母さん達に連絡したでしょ……お父さんが電話で大騒ぎだよ……」
小さく唸りながら、ユーリとフレンを見た
「あ、ああ……そう言えば、母さんがそんなこと言ってたかも……?」
驚いてたフレンがハッとして、そう言いながらエステルの手を引いてリビングに入って来た
2人とも、ファストフード店の袋を持ってる
「やっぱり……もー……先生まで電話して来たよ……」
大きくため息をつきながら、またテーブルに突っ伏した
「ああ……だからそんな顔してるんだね……」
ガサッと袋が置かれた音が近くでした
「そりゃ、災難だったな……」
「それはむしろこっからだよ……14時には家行くから、大人しく待ってろって」
少し顔を上げて、ムッと頬を膨らませながらそう言うと、ユーリとフレンが慌てて時計を見た
「14時って……後1時間ねぇだろ?!」
「い、いくらなんでも急すぎじゃないかい?!」
「別にそんなに慌てなくても……」
「「慌てるに決まってる“だろ/よ”!?」」
仲良く、息ピッタリに2人はわたしを見てそう言ってくる
「シアの診察、長けりゃ1時間かかるだろ?!」
「まだジュディスたちも帰って来ていないし、昼食もまだなのに、いくらなんでも早すぎる!!」
「えっと……2人が慌てるほど、診察って長いんです……?」
遠慮気味にエステルが問いかけてくる
ほら、誤解されちゃったじゃんか……
「それは検査する事が多い時の話ね……?別に今回のはそうゆうのじゃないから、すぐ終わるってば」
若干呆れ気味に2人に声をかける
もう……全部の診察が1時間超えなわけないじゃん……
……そんなだったら、絶対逃げ出してるし……
「そ、そうは言うけど……」
「平気だって、別に何か異常があるから来るわけじゃないし」
そう言いながら体を起こして頬杖をついた
「いや、でも」
ユーリが何か言いかけたところで、チャイムが鳴った
ジュディスやリタなら鳴らさない
……と、言うことは……
大きくため息をつきながら玄関に向かう
「……はーい……?」
ゆっくり扉を開けると、ガッと扉を掴まれた
目の前に見えるのは、肩で息をしている、さっきまで電話していた先生だ
……うん、そうだと思った……
「げ……先生、来るの早すぎ……まだあれから30分しか経ってないじゃん……」
「あ・な・たが!逃げ出すでしょう……!?」
語気を強めてそう言いながら、わたしを見てくる
「ちゃーんと返事したのに……」
「はいはい、いいから、診察しますからね……!?」
そう言いながら中に入って来ると、わたしの手を引いてリビングの方に向かって行く
「先生…っ!?来んの早くねぇっすか!?」
リビングに入るなり、ユーリのそんな声が聞こえてくる
「おや、ユーリ君たちもいたのですね。いえ、あまりにも焦っていて、時間を伝えてしまったものでしたから……この子が逃げ出しそうでしたので、急いで来たんですよ」
ジトーっとわたしを見ながらそう言ってくる
「逃げるだけの体力なんて残ってないってー……そもそも、連絡来たのに逃げたら、先生怒るじゃん……」
「逃げなくとも怒っていますが…!?」
あ、やっば、これガチギレじゃん……
そんな事考えてると、ソファーの方に引っ張っていかれて、そのままそこに座らせられた
「はいはい、病院まで連れて行かれたくなければ、大人しくしててくださいよ?」
……病院は嫌だ……
それ言ってくるのは卑怯だって……
ほんの少し顔を顰めつつ、大人しく診察を受けた
「……うん、とりあえずは問題なさそうですね」
聴診器とか諸々片付けながら、先生はホッと息をついてた
5分くらい……かな?
「先生もお父さんたちも、心配しすぎだって。放送で倒れたことないのに……」
「倒れなくとも、喉は痛めたでしょう?!全く……いい加減、自分の体が弱い自覚をもう少し持ってくれませんか?」
大きくため息をつきながら、先生は持って来ていたバッグを閉じた
「はーい……わかりましたよー」
「本当に……困った子ですね……しかも、また主役やると聞きましたが……それも1日目と2日目で違う役だと」
「うげ……誰だしそんな事まで言ったの……」
「別に止めやしませんけど……一応、多めに薬出しておくんで、しっかり!飲んでくださいよ?」
呆れ気味にそう言いながら、先生が立ち上がる
「それじゃあ、私はこれで。……アリシアさん、来週の定期検診、忘れないでくださいよ?」
「………はーい」
ちょっと顔を背けながら返事をする
……しまった、忘れてた
先生さえ来なければバックレられたのに……
「平気っすよ先生、オレが無理矢理でも連れてくんで」
……いや、どっちにしても無理か……
ユーリが把握してるもんね……
「あはは、それなら安心ですね。それでは、しばらく不機嫌かと思いますが……後、お願いしますね?」
「はいよ、慣れてんで大丈夫っす」
ユーリの返事を聞くと、先生は今度こそ帰って行った
「シアー、いつまでもそっちいないで、こっち来たらどうだ?」
ユーリの声に振り向くと、少し困ったように微笑みながらわたしを見てきていた
無言でソファーから立ち上がって、ユーリたちが座っているテーブルの方に歩いて行った
「まったく、そんなに不機嫌にならなくてもいいんじゃないかい?」
ユーリの隣に座ったわたしを、フレンも少し困ったように笑いながら見てきた
「……あの不意打ちはずるい、卑怯だと思う……」
ムッとほほを膨らませながらそう答えると、2人は困ったように肩を竦めていた
「ったく、ほれ、昼飯さっさと食っちまおうぜ?ジュディたちも、そろそろ帰って来んだろ」
話題を変えようとしたのか、ユーリはそう言いながら頭を撫でてくる
……まぁ、たしかにお腹は空いたかも……
小さく頷いてフレンたちが買ってきてくれたものを出すのを手伝っていると、玄関の開く音が聞こえた
あ、2人とも帰って来た
「はぁ……疲れたぁ……」
リビングに入ってくるなり、リタはそう言って椅子に座った
「お疲れさん」
「すぐそこでいつもの先生と会ったのだけれど、何かあったのかしら?」
ジュディスの言葉に、少し肩が跳ねた
「それ、今聞かねえでくんない?」
チラッと隣にいるユーリを見ると、苦い顔してジュディスを見てた
「どうせあんたらの両親が、放送してたことこの子の両親に言って、大騒ぎにでもなったんでしょ……」
ぐったりとしながらリタの言った『両親』の言葉に、さっきのお父さんとの会話を思い出した
……思い出しただけでちょっとイラつく……
「リータ、それも言うなっつーの」
「……あぁ……今まずいのね……」
呆れ気味にそう言いながら、リタがわたしを見てくる
「ほれ、いいからさっさと飯食おうぜ?」
ユーリがそう言ったのを合図に、わたしたちはお昼を食べ始めた
ーーーーーーーー
「……そう言えば……」
昼飯を食べ終わって少しして、エステルが唐突に何か思い出したようにシアを見る
「んー?」
少し機嫌が直ったらしいシアが、飲み物を飲みながらエステルの方を向く
「さっき放送聞いてて思ったんですけど……アリシアって、英語、苦手ですよね?」
「……唐突に何言い出すのかと思えば……そりゃ苦手だけど……」
「でも、最初の『LadyGO』の発音、とても綺麗だったと思いますよ?」
エステルの言葉に、シアが固まった
……言われて見りゃ、たしかにそうだな……
「確かに……アリシアは授業中も中々発言しないから気づかなかったけど……よくできていたね」
「どういうことよ、アリシア?」
ジトーっとリタがシアを見ると、気まずそうにオレらから顔を背ける
……こりゃ、なんかあるな……
「シア、大人しく言った方がいいんじゃないか?」
隣にいるシアを見ながら声をかけるが、顔を背けたまま、飲み物を飲んでいた
……いやそれもう中身ねえだろ……
「ふふ、アリシア、もう観念して言ってしまったらどうかしら?」
頬杖をつきながら、どこか楽しそうにジュディがシアを見て微笑んだ
「ジュディ、なんか知ってんのか?」
首を傾げてジュディを見ると、クスクスと楽しそうに笑い出す
「……アリシア?How are you?」
唐突に、ジュディは英語でシアに問いかける
おいおい……それ、返さねえんじゃねえか……?
そう思っていたが、シアは不機嫌そうにジュディの方を見て口を開いた
「…… I feel awful because the doctor is here……」
不機嫌な声で発せられた言葉は、普段なら絶対聞けない英語で……
いや……めちゃくちゃ発音いいな……!?
「はぁ!?」
ガタンッと音を立てながら、リタが立ち上がって口をパクパクさせている
……まぁ、そりゃ驚く
オレだって驚いてる
テストじゃ万年赤点のシアが、こんなに綺麗な発音できるなんて、微塵も思っていなかった
「はぁ……ジュディス、なんで言うのさ……」
ジュディを睨みながら、シアは膨れていた
「あら、いい加減言っておいた方がいいわ。またいつ、口が滑るかわからないじゃない?」
未だにクスクスと笑いながら、ジュディはシアを見ていた
「えっと……ジュディス、これは……?」
「ふふ、アリシアは、音で単語を覚えているのよ」
「音……です?」
「ええ。昔、アリシアが中々英語を覚えないって、彼女の両親が父さんに頼んで英語を覚えさせようとしていたのだけれど……アリシアができないのは書くことだけ。会話は普通にできるのよ」
少し困ったように微笑みながら、ジュディが答える
そういや……ジュディの家は塾だったな……
だから知ってんのか……
「だとしても、なんでそうなったのよ?」
「……お父さんもお母さんも、仕事柄英語はよく使うから……子どもの時から嫌ってくらい、家の中で英語飛び交ってたし……
それ聞いてたから、自然と言葉の意味と音は覚えたけど、書くってなると、字ズラと音が噛み合わなくって、訳わかんないんだよ……」
頬杖をつきながら、不機嫌そうにシアは答える
「なるほどね……だから覚えられないのか」
「それはそれで……困りますよね……」
目の前に座るフレンとエステルはそう言い合って肩を竦めていた
「……つか、それ……先生に言ってあんのか?」
会話できることくらい知ってりゃ、先生も少しは優遇してくれんじゃ……
「言ってるわけないじゃん……」
「いや言っときなさいよ!!」
リタがそうツッコむと、シアが更に不機嫌そうに顔を顰める
「だって……テストで赤点取る人が成績はそんなに悪くないって……絶対依怙贔屓されてると思われるじゃん……ただでさえ、クラスに面倒なのがいるのに……余計に面倒になるじゃん」
あからさまに不機嫌な声……こりゃ、ちとまずいな……
「リ、リタ!これ以上はやめておこう!?」
フレンも気がついたらしく、慌ててリタを止める
なんで止められたかわかっていなさそうなリタだったが、シアを見てようやく気がついたらしい
「……あたしが悪かったわ……これ以上は何も言わないわよ」
ほんの少し気まずそうにリタが言うが、シアにはあまり響いていなさそうだな……
「と、ところで!せっかく、明日明後日は休みなんですし、優勝のお祝いに打ち上げでもしませんか?」
話題を変えようと、エステルがオレらを見回しながら問いかけてくる
「お、いいなそれ。去年はできなかったしな」
パチンッと指を鳴らしながら答えると、少しだけシアが反応した
「あら素敵、それじゃ、今日は1度帰って明日また集合しましょ?」
「そうね。さすがに1度帰っておかないとよね」
「アリシア、それでいいかい?」
「……別に……いい、けど……」
未だにムッとしたままだが、さっきよりは少し落ち着いたか……?
……って、こいつら……オレにシア押し付けて逃げるつもりだな……!?
「それじゃ、また明日ね?」
「アリシア、また明日来ますね!」
「またね、アリシア」
3人はそう言うと、そそくさと帰り支度を始めた
おいおい、マジかよ……
呆れてため息をついてると、フレンが傍に寄ってくる
「……ユーリ、後は頼んだからね?」
オレの傍で小さくそう言って、ニヤッと笑ってくる
「……お前の差し金か……」
シアに聞こえないように小声で言いながら、フレンを睨む
「2人の時間を僕ら、邪魔していたからね?機嫌が悪いのは、それも原因かなと。……まぁ、だからと言って、襲うなよ?」
「なっ!?//フレっ!!てめぇ!!//」
思わず声を上げて勢いよく立ち上がってしまった
こいつ…っ!なんつーこと言いやがんだ……っ!
「あははっ!ごめんごめん」
笑いながらオレから離れると、今度はシアの方に近づいて、彼女に何か言っていた
何を言ってたかまでは聞き取れなかったが、シアが少し驚いたような顔してフレンを見ていた
……何言ったんだよ、あいつ……
「それじゃあ2人とも!また明日!」
少し楽しそうにそう言いながら、フレンも去って行った
家の中が静まり返る
……そういや、2人きりになんのは久しぶりだったな……
ここ最近は、フレンが泊まってたりだ、あいつらがいるわで、中々シアと2人きりにはなれていなかった
「……ユーリ、フレンに何言われたの?」
少し不思議そうにシアが声をかけてくる
「……なんでもねえよ」
そう言いながら振り返った
どこか不服そうに頬を膨らませながら、シアはオレを見てきている
……さすがに言えねえっつーの……
「そう言うシアも、なんか言われてなかったか?」
腰に手を当てながら首を傾げる
正直、オレも答えてねえから、ちゃんと答えてもられるとは思ってねえんだけど……
シアは少し考え込むと、急に無言で立ち上がって、オレに飛びついてきた
「ぅおっ!?……っと……シア、急には危ねぇって」
少しよろめきはしたものの、なんとか耐えて抱きついているシアの頭を撫でる
当の本人はまだ無言で、ぎゅっとオレにしがみついてくる
……いや、ホント可愛すぎかよ……
これ襲わないは、ちと無理がねえか……?
「シアー?どうしたんだよ?」
もう1度声をかけると、ゆっくりと顔を上げる
先程までの不機嫌な顔ではなく、ほんの少しだけ、頬が赤く染まっていた
「……ずっと邪魔しちゃってたから、久々に甘えたら?って……フレンが」
少し恥ずかしそうに、ポツリとシアが答えた
……ああ、そういう……って、あいつ……!オレに襲うなとか言っておいて、それはねえだろ……っ!?
「……って、言ってもさ?みんないても一緒に寝たりしたし、ユーリもしょっちゅう抱きついてきてたし……別に甘え足りなかったってことはなかったんだけど……」
小さくため息をつきながら、シアはまた、オレの胸元に顔を埋めた
「……んじゃ、なんで引っ付いてきたんだ?」
「……お父さんとの会話思い出したらイラッとして……そのタイミングで、ジュディスがバラすから、いつもの出そうで」
「そりゃさすがに勘弁して欲しいな……前回からまだ1ヶ月も経ってねえしな」
「……だから、ユーリに引っ付いたら、落ち着くかなー……って」
「ははっ、それで落ち着くって言うんだったら、いくらでもこうしてやるよ」
そう言いながら、ぎゅっとシアを抱きしめる
シアの方からこうして抱きついてくることは早々ない
あんまりにも可愛くて、勝手に顔がニヤけてしまう
……まっずいわこれ……マジで襲いそうだわ……
「……なんか、ユーリ、ちょっと心臓の音速くない?」
顔を上げながらキョトンとした顔をしてシアが見上げてくる
いや、マジ今それやめてくれ……っ////
「……気のせいだろ、気のせい」
シアから顔を背けながらそう答える
今顔見られたら、赤いのバレる……っ//
「嘘だぁ、だって今、照れてるでしょ?」
「んな……っ!?」
言い当てられてしまい、驚いてシアを見ると、ニヤッと笑いながら見上げてきていた
「ユーリが顔逸らして、左手で口元隠す時は、大抵照れてる時だもん」
ニヤニヤと笑っているが、そう言ってる本人の顔も若干赤い
いや待て……普段なら絶対こんなこと言ってこないな……
……まさか……
「……シア……それもフレンに言われたのか…?」
「あ、バレた??こうしたら、絶対そうするからって、言ってたよ?」
恐る恐る聞いたオレに、シアはクスクスと楽しそうに笑う
あの野郎……っ!!何余計なことまでシアに教えてんだよ…っ!!
「あははっ!ユーリ、顔真っ赤だよ?」
目を細めて笑いながら、シアが頬に触れてくる
ひんやりとした手が心地いい……って、そうじゃなくて……っ!!
やられっぱなしは性に合わねえ……っ!
「こんにゃろ……っ!!」
シアの頭の後ろを押さえて、顔を近づける
「ふぇ…っ!?」
驚いていたが、お構い無しに唇を重ねた
触れるだけで勘弁してやろうかとも思ったが、最近、慣れて来ちまったのかあんまり顔を赤くしない事を思い出して、深く重ねた
前回、衝動的にやっちまった時は、嫌そうにはしてなかったし、大丈夫だろう
……いや、むしろちょい嬉しそうだったような気もしなかねえが……
そんな事考えてると、シアがぎゅっと腕を掴んでくる
……しまった、さすがに長すぎたか……?
ゆっくりと離れると頬を赤くして、ちょっと涙目でボーッとしているシアが目に映る
「……シアも顔、真っ赤だぜ?」
ちょいやりすぎたと内心反省しつつ、ニヤッと笑いながらシアの頬に触れる
「〜〜〜〜っ!//もう!///バカっ//ずるい!//」
少し上擦った声でそう言いながら、またオレの胸元に顔を埋めてくる
「シアが先にやってきたんだろ?お互い様だよ、お互い様」
笑いながら、ぎゅっとシアを抱きしめる
ホント可愛い←
「うー……っ、わたし…そこまでしてないもん……っ!」
小さく唸りながらシアが反論してくる
まだ少し、声は上擦ったままだ
「ははっ!悔しかったら、やり返してきてみ?」
「もう……っ!意地悪……っ!」
「そういう反応すっから意地悪したくなんの
顔真っ赤にしてるシアもかわいーから、定期的に見たくなんだよ」
「うー……ユーリだって真っ赤にしてたくせに……」
そう言ったシアは少し顔を上げた
未だに赤い頬を膨らませながら、ほんの少し不服そうにオレを見上げてきていた
「オレ、シアほど赤くはなってなかったろ?」
「うー……なんか納得いかないっ!」
恥ずかしそうにしながらむくれているシアが可愛くて、またニヤけそうになる
……こりゃオレもだいぶ重症だな……
「ははっ!……とりあえず、シアも風呂入って来たらどうだ?」
頭を撫でながらそう声をかける
さすがにこれ以上はまずい
本気で襲いかねねえわ……
「……ん、そーする」
そう答えて、シアはオレから離れると、少し早足でリビングから出て行った
……さて、と
スマホを取り出して、電話をかける
数コールで電話が繋がる
『ユーリ?どうし「フレン!!お前なぁ!?//」』
フレンの言葉を遮って少し叫ぶ
『……なんか、あったかい?』
笑いを必死で堪えようとしている声に、イラッとする
「オレに襲うなとか言っといたくせに、何シアに余計な事言ってんだよ……っ!!//」
『あははっ!その様子じゃ、抱き着かれた上にいじられでもしたのかい?』
耐えられなくなったのか、笑いながら言ってくるフレンに少し殺意が芽ばえる
この野郎……っ!他人事だからってっ!!//
「くっそ……っ!//お前覚えとけよっ!?//」
『別に怒ることないだろう?邪魔してたって思ったのは本当なんだから』
「それとこれとは話が別だろ……っ!//」
『あははっ、まぁまぁ落ち着けって。アリシアに聞かれるぞ?』
「っせーよ……//……はぁ……お前本気で覚えとけよな……」
『ははっ、保証はできないかな』
あー……ホント、こいつどうしてやろうか←
『それより、明日の打ち上げの事なんだけど』
「……あ?それ、全員で話した方がいいんじゃないか?」
椅子に座りながら問いかける
勝手に決めちまったら、全員揃って怒るだろ…
『あー、いや……先に君にだけは言っておこうかと思って』
少し言いづらそうにフレンが口篭る
……なんかあったか?
『…… アリシアを連れて外出るの、ちょっとまずいかもしれない……』
「あん?なんでだよ?」
『……また、劇出るだろ?そのせいで、懲りずに彼女に会いたがってる人が彷徨いてるの、ちらほら見かけてね……』
「あー………またか………」
フレンの言葉に大きくため息をついて項垂れた
大きくため息をつきながら、額に手を当てた
毎年毎年……懲りない奴らだな……
「んじゃ、ここで打ち上げするとしますかね?」
『その方がいいだろうね。……何をするかは、みんなで決めよう』
「おう。……んじゃ、また後で」
『ああ』
そう言って通話を切った
「ユーリ?誰かと電話してたの?」
そのタイミングで、シアがリビングに戻って来た
タオルで髪を拭きながら、キョトンとした顔でオレを見てくる
「フレンだよ。まーた懲りずに彷徨いてんのがいっから、明日の打ち上げ、ここでやろうってさ」
シアの方を見ながら肩を竦めた
すると、あからさまに嫌そうに顔を顰める
「うぇ……またぁ?やだなぁ……学校行くのも大変じゃん……」
むっと頬を膨らませながら、オレの隣に座ってくる
「ったく、また片っ端からぶっ飛ばしてきゃ、少しは大人しくなるのかね」
「んー……それはちょっと……」
髪を拭いていたタオルを首に掛けながら、シアが苦笑いする
ホント、コロコロと表情変わるな……
まぁ、そこも可愛いんだけど←
「まっ、細かい事はみんなで決めようぜ?」
「ん、そだね〜」
どこか楽しげにニコニコと笑顔を浮かべてくる
……体育祭前に、付き合えてよかったわ、ホント
じゃなきゃ、ああやってゴール直前で呼んでもらえなかっただろうし、こうやって2人きりになれることもなかったかもしれねえからな
そんな事を考えていると、いつの間にかシアはスマホを操作していた
去年できなかった打ち上げができるのが相当嬉しいのか、いつまでも笑顔を浮かべてエステル達とメッセージのやり取りをしているシアを見ていると、勝手に頬が緩む
………ホント、かわいーヤツ
「………つかれた………」
家に着いて、小さく呟きながらテーブルに突っ伏した
最優秀クラス賞を取ったわたしたちのクラスとエステルのクラスは先に帰宅
残りのクラスは、順位事に片付けしてから帰宅らしい
ジュディスとリタのクラスもそこそこ高めの順位だったみたいだから、そんなに長くかからないはず……
……で、フレンとエステルは昼ご飯の買い出ししに行ったみたい
さすがに作るだけの余力は誰もないから、ファストフードかなんか買ってくるみたい
……だから、ものすごく久しぶりに、今ここにはわたしとユーリしかいない
……なんか、ちょっと変な感じ……
「シア、先に薬飲んどくか?」
ユーリの声に顔を上げると、薬と水を持って来ていた
「……そーする〜……」
若干喉に違和感あったし、その方がいいだろう
体を起こして、薬と水を受け取ってすぐに飲んだ
「……ん、ありがとう」
「はいよ。……つか、そんなんで劇出て平気なのかよ?」
ちょっと心配そうにわたしの隣に座りながら、ユーリが聞いてくる
……確かに、ちょっとまずそうではある……
「相談必須かなぁ…これ……」
また病院かと思うと、かなり憂鬱だ
本当、病院なんて行きたくないんだけど……
「勝手して怒られるよりかずっとマシだろ?ついて行ってやっから、大人しく行こうぜ?」
わたしの頭を撫でながら、ユーリは首を傾げて見てくる
……その言い方、ちょっとずるいよ……
やだって、言えないじゃん……
「……気が向いたら行く…」
「…やだって言わないだけマシか。まぁ、今日明日はオレも勘弁して欲しいしな。さすがに疲れたからな」
そう言って苦笑いしてくるけど、全然疲れてるように見えないんだけど…
「にしても、なんだかんだ4年連続で優勝しちまったな。今年はちと手抜くつもりだったんだが……」
「嘘つき、そんなつもり、最初から微塵もなかったでしょ?」
わたしの言葉に、ユーリはバレたかとでも言いたげにニヤッと笑う
勝負事じゃユーリが手抜かないなんて、昔からよく知ってる
「さてと……あいつらが帰って来る前に、軽く風呂入ってくるわ」
「ん、わかった〜」
そう答えると、カタンッと音を立てて立ち上がって、ユーリがリビングの扉の方に歩いて行く
さてと……今のうちにゲームしておこうかな……
そう思って携帯を取り出すと、おびただしい数の着信履歴が目に入る
……それも、全部お母さんの携帯と、病院の先生の電話番号だ……
え、なんで……?
そんなこと考えてると、また着信があった
…お母さんではなく、病院の先生から……
出るの嫌だけど……出ないと押しかけられそう……
渋々電話を取ってスピーカーにした
「はー『アリシアさんっ!体育祭の時に放送をするなら、事前に連絡をと言ってあったでしょう!?』……ごめんなさい……」
先生の怒鳴り声に、若干驚きながら謝る
……確かにそう言われてたかもしれない……
『全くもう!!いくら病院が嫌いでも、連絡くらいはしておいてください!!……今日の午後、2時には伺いますから、逃げないでくださいよ……!?』
「……はい……」
短く答えると、あまり時間がなかったのか、すぐに電話が切れた
ホッとしたのも束の間、今度はお母さんからの着信だ
……今、向こうって夜だったはずだけど……
そんなこと考えながら、電話に出る
「もしも『アリシア!!なんでもっと前に放送することと、文化祭に出ることを教えてくれなかったんだ!?』げ……お父さん……」
電話口から聞こえてきたのは、お母さんじゃなくて、お父さんの声
……そう言えば、着拒したままだった……
『お前という子は……!!ただでさえ中等部の頃に喉を痛めていたんだから、先に言っておいてくれなければ不安になるだろう?!』
「あー……うん、ごめんなさい……」
……なんか、さっきも同じような会話したけど……
『全く……病院の先生の方には、家に行ってもらえるようお願いしたから、大人しく診察してもらうんだぞ?』
「……さっき電話あったよ、来るって……言われなくとも、大人しくしてるからー」
『そう言って大人しくしなかったことが何度あったことか……だいたいアリシアはな……』
グチグチと長ーいお説教が始まってしまった
こうなると、中々終わんないんだよなぁ……
そう思いながらイヤフォンを取り出して耳に当てる
携帯本体から、イヤフォンの方へとお父さんの声が移動したのを確認して、声を聞きながらゲームを起動した
……とりあえず、ログボだけでも確保しておかないと……
よくやっているゲームのログボだけを受け取っていると、玄関の方から音がした
まずい……フレン達、帰って来たな……
はぁ……と小さくため息をついて、電話の画面に戻して、イヤフォンを外した
それと同時にリビングの扉が開く
「ただい」
「……あーもう!!そんな昔の話ばっか持ち出して来ないでよ!!わかったからもう切るよ!?切るからね!?」
携帯を耳に当てながらフレンの声をかき消すように電話口のお父さんに向かって怒鳴る
扉の前でびっくりしているフレンとエステルの顔が横目に映った
『んなっ!?ま、待てアリシア!!まだ話は』
「切るったら切るから!!ちゃんと診てもらうから、もう絶対!!電話して来ないでね?!!」
未だに電話口で何か言ってるけど、問答無用で電話を切った
……危なぁ……フレンの声聞こえてたら、また何言い出すかわかったもんじゃないし……
「おーい、シア。怒鳴り声聞こえたんだが……なんかあったか?……って、お前らなんでんなとこで突っ立ってんだよ?」
フレンの後ろから、ユーリの声が聞こえてくる
「……おばさん達、お母さん達に連絡したでしょ……お父さんが電話で大騒ぎだよ……」
小さく唸りながら、ユーリとフレンを見た
「あ、ああ……そう言えば、母さんがそんなこと言ってたかも……?」
驚いてたフレンがハッとして、そう言いながらエステルの手を引いてリビングに入って来た
2人とも、ファストフード店の袋を持ってる
「やっぱり……もー……先生まで電話して来たよ……」
大きくため息をつきながら、またテーブルに突っ伏した
「ああ……だからそんな顔してるんだね……」
ガサッと袋が置かれた音が近くでした
「そりゃ、災難だったな……」
「それはむしろこっからだよ……14時には家行くから、大人しく待ってろって」
少し顔を上げて、ムッと頬を膨らませながらそう言うと、ユーリとフレンが慌てて時計を見た
「14時って……後1時間ねぇだろ?!」
「い、いくらなんでも急すぎじゃないかい?!」
「別にそんなに慌てなくても……」
「「慌てるに決まってる“だろ/よ”!?」」
仲良く、息ピッタリに2人はわたしを見てそう言ってくる
「シアの診察、長けりゃ1時間かかるだろ?!」
「まだジュディスたちも帰って来ていないし、昼食もまだなのに、いくらなんでも早すぎる!!」
「えっと……2人が慌てるほど、診察って長いんです……?」
遠慮気味にエステルが問いかけてくる
ほら、誤解されちゃったじゃんか……
「それは検査する事が多い時の話ね……?別に今回のはそうゆうのじゃないから、すぐ終わるってば」
若干呆れ気味に2人に声をかける
もう……全部の診察が1時間超えなわけないじゃん……
……そんなだったら、絶対逃げ出してるし……
「そ、そうは言うけど……」
「平気だって、別に何か異常があるから来るわけじゃないし」
そう言いながら体を起こして頬杖をついた
「いや、でも」
ユーリが何か言いかけたところで、チャイムが鳴った
ジュディスやリタなら鳴らさない
……と、言うことは……
大きくため息をつきながら玄関に向かう
「……はーい……?」
ゆっくり扉を開けると、ガッと扉を掴まれた
目の前に見えるのは、肩で息をしている、さっきまで電話していた先生だ
……うん、そうだと思った……
「げ……先生、来るの早すぎ……まだあれから30分しか経ってないじゃん……」
「あ・な・たが!逃げ出すでしょう……!?」
語気を強めてそう言いながら、わたしを見てくる
「ちゃーんと返事したのに……」
「はいはい、いいから、診察しますからね……!?」
そう言いながら中に入って来ると、わたしの手を引いてリビングの方に向かって行く
「先生…っ!?来んの早くねぇっすか!?」
リビングに入るなり、ユーリのそんな声が聞こえてくる
「おや、ユーリ君たちもいたのですね。いえ、あまりにも焦っていて、時間を伝えてしまったものでしたから……この子が逃げ出しそうでしたので、急いで来たんですよ」
ジトーっとわたしを見ながらそう言ってくる
「逃げるだけの体力なんて残ってないってー……そもそも、連絡来たのに逃げたら、先生怒るじゃん……」
「逃げなくとも怒っていますが…!?」
あ、やっば、これガチギレじゃん……
そんな事考えてると、ソファーの方に引っ張っていかれて、そのままそこに座らせられた
「はいはい、病院まで連れて行かれたくなければ、大人しくしててくださいよ?」
……病院は嫌だ……
それ言ってくるのは卑怯だって……
ほんの少し顔を顰めつつ、大人しく診察を受けた
「……うん、とりあえずは問題なさそうですね」
聴診器とか諸々片付けながら、先生はホッと息をついてた
5分くらい……かな?
「先生もお父さんたちも、心配しすぎだって。放送で倒れたことないのに……」
「倒れなくとも、喉は痛めたでしょう?!全く……いい加減、自分の体が弱い自覚をもう少し持ってくれませんか?」
大きくため息をつきながら、先生は持って来ていたバッグを閉じた
「はーい……わかりましたよー」
「本当に……困った子ですね……しかも、また主役やると聞きましたが……それも1日目と2日目で違う役だと」
「うげ……誰だしそんな事まで言ったの……」
「別に止めやしませんけど……一応、多めに薬出しておくんで、しっかり!飲んでくださいよ?」
呆れ気味にそう言いながら、先生が立ち上がる
「それじゃあ、私はこれで。……アリシアさん、来週の定期検診、忘れないでくださいよ?」
「………はーい」
ちょっと顔を背けながら返事をする
……しまった、忘れてた
先生さえ来なければバックレられたのに……
「平気っすよ先生、オレが無理矢理でも連れてくんで」
……いや、どっちにしても無理か……
ユーリが把握してるもんね……
「あはは、それなら安心ですね。それでは、しばらく不機嫌かと思いますが……後、お願いしますね?」
「はいよ、慣れてんで大丈夫っす」
ユーリの返事を聞くと、先生は今度こそ帰って行った
「シアー、いつまでもそっちいないで、こっち来たらどうだ?」
ユーリの声に振り向くと、少し困ったように微笑みながらわたしを見てきていた
無言でソファーから立ち上がって、ユーリたちが座っているテーブルの方に歩いて行った
「まったく、そんなに不機嫌にならなくてもいいんじゃないかい?」
ユーリの隣に座ったわたしを、フレンも少し困ったように笑いながら見てきた
「……あの不意打ちはずるい、卑怯だと思う……」
ムッとほほを膨らませながらそう答えると、2人は困ったように肩を竦めていた
「ったく、ほれ、昼飯さっさと食っちまおうぜ?ジュディたちも、そろそろ帰って来んだろ」
話題を変えようとしたのか、ユーリはそう言いながら頭を撫でてくる
……まぁ、たしかにお腹は空いたかも……
小さく頷いてフレンたちが買ってきてくれたものを出すのを手伝っていると、玄関の開く音が聞こえた
あ、2人とも帰って来た
「はぁ……疲れたぁ……」
リビングに入ってくるなり、リタはそう言って椅子に座った
「お疲れさん」
「すぐそこでいつもの先生と会ったのだけれど、何かあったのかしら?」
ジュディスの言葉に、少し肩が跳ねた
「それ、今聞かねえでくんない?」
チラッと隣にいるユーリを見ると、苦い顔してジュディスを見てた
「どうせあんたらの両親が、放送してたことこの子の両親に言って、大騒ぎにでもなったんでしょ……」
ぐったりとしながらリタの言った『両親』の言葉に、さっきのお父さんとの会話を思い出した
……思い出しただけでちょっとイラつく……
「リータ、それも言うなっつーの」
「……あぁ……今まずいのね……」
呆れ気味にそう言いながら、リタがわたしを見てくる
「ほれ、いいからさっさと飯食おうぜ?」
ユーリがそう言ったのを合図に、わたしたちはお昼を食べ始めた
ーーーーーーーー
「……そう言えば……」
昼飯を食べ終わって少しして、エステルが唐突に何か思い出したようにシアを見る
「んー?」
少し機嫌が直ったらしいシアが、飲み物を飲みながらエステルの方を向く
「さっき放送聞いてて思ったんですけど……アリシアって、英語、苦手ですよね?」
「……唐突に何言い出すのかと思えば……そりゃ苦手だけど……」
「でも、最初の『LadyGO』の発音、とても綺麗だったと思いますよ?」
エステルの言葉に、シアが固まった
……言われて見りゃ、たしかにそうだな……
「確かに……アリシアは授業中も中々発言しないから気づかなかったけど……よくできていたね」
「どういうことよ、アリシア?」
ジトーっとリタがシアを見ると、気まずそうにオレらから顔を背ける
……こりゃ、なんかあるな……
「シア、大人しく言った方がいいんじゃないか?」
隣にいるシアを見ながら声をかけるが、顔を背けたまま、飲み物を飲んでいた
……いやそれもう中身ねえだろ……
「ふふ、アリシア、もう観念して言ってしまったらどうかしら?」
頬杖をつきながら、どこか楽しそうにジュディがシアを見て微笑んだ
「ジュディ、なんか知ってんのか?」
首を傾げてジュディを見ると、クスクスと楽しそうに笑い出す
「……アリシア?How are you?」
唐突に、ジュディは英語でシアに問いかける
おいおい……それ、返さねえんじゃねえか……?
そう思っていたが、シアは不機嫌そうにジュディの方を見て口を開いた
「…… I feel awful because the doctor is here……」
不機嫌な声で発せられた言葉は、普段なら絶対聞けない英語で……
いや……めちゃくちゃ発音いいな……!?
「はぁ!?」
ガタンッと音を立てながら、リタが立ち上がって口をパクパクさせている
……まぁ、そりゃ驚く
オレだって驚いてる
テストじゃ万年赤点のシアが、こんなに綺麗な発音できるなんて、微塵も思っていなかった
「はぁ……ジュディス、なんで言うのさ……」
ジュディを睨みながら、シアは膨れていた
「あら、いい加減言っておいた方がいいわ。またいつ、口が滑るかわからないじゃない?」
未だにクスクスと笑いながら、ジュディはシアを見ていた
「えっと……ジュディス、これは……?」
「ふふ、アリシアは、音で単語を覚えているのよ」
「音……です?」
「ええ。昔、アリシアが中々英語を覚えないって、彼女の両親が父さんに頼んで英語を覚えさせようとしていたのだけれど……アリシアができないのは書くことだけ。会話は普通にできるのよ」
少し困ったように微笑みながら、ジュディが答える
そういや……ジュディの家は塾だったな……
だから知ってんのか……
「だとしても、なんでそうなったのよ?」
「……お父さんもお母さんも、仕事柄英語はよく使うから……子どもの時から嫌ってくらい、家の中で英語飛び交ってたし……
それ聞いてたから、自然と言葉の意味と音は覚えたけど、書くってなると、字ズラと音が噛み合わなくって、訳わかんないんだよ……」
頬杖をつきながら、不機嫌そうにシアは答える
「なるほどね……だから覚えられないのか」
「それはそれで……困りますよね……」
目の前に座るフレンとエステルはそう言い合って肩を竦めていた
「……つか、それ……先生に言ってあんのか?」
会話できることくらい知ってりゃ、先生も少しは優遇してくれんじゃ……
「言ってるわけないじゃん……」
「いや言っときなさいよ!!」
リタがそうツッコむと、シアが更に不機嫌そうに顔を顰める
「だって……テストで赤点取る人が成績はそんなに悪くないって……絶対依怙贔屓されてると思われるじゃん……ただでさえ、クラスに面倒なのがいるのに……余計に面倒になるじゃん」
あからさまに不機嫌な声……こりゃ、ちとまずいな……
「リ、リタ!これ以上はやめておこう!?」
フレンも気がついたらしく、慌ててリタを止める
なんで止められたかわかっていなさそうなリタだったが、シアを見てようやく気がついたらしい
「……あたしが悪かったわ……これ以上は何も言わないわよ」
ほんの少し気まずそうにリタが言うが、シアにはあまり響いていなさそうだな……
「と、ところで!せっかく、明日明後日は休みなんですし、優勝のお祝いに打ち上げでもしませんか?」
話題を変えようと、エステルがオレらを見回しながら問いかけてくる
「お、いいなそれ。去年はできなかったしな」
パチンッと指を鳴らしながら答えると、少しだけシアが反応した
「あら素敵、それじゃ、今日は1度帰って明日また集合しましょ?」
「そうね。さすがに1度帰っておかないとよね」
「アリシア、それでいいかい?」
「……別に……いい、けど……」
未だにムッとしたままだが、さっきよりは少し落ち着いたか……?
……って、こいつら……オレにシア押し付けて逃げるつもりだな……!?
「それじゃ、また明日ね?」
「アリシア、また明日来ますね!」
「またね、アリシア」
3人はそう言うと、そそくさと帰り支度を始めた
おいおい、マジかよ……
呆れてため息をついてると、フレンが傍に寄ってくる
「……ユーリ、後は頼んだからね?」
オレの傍で小さくそう言って、ニヤッと笑ってくる
「……お前の差し金か……」
シアに聞こえないように小声で言いながら、フレンを睨む
「2人の時間を僕ら、邪魔していたからね?機嫌が悪いのは、それも原因かなと。……まぁ、だからと言って、襲うなよ?」
「なっ!?//フレっ!!てめぇ!!//」
思わず声を上げて勢いよく立ち上がってしまった
こいつ…っ!なんつーこと言いやがんだ……っ!
「あははっ!ごめんごめん」
笑いながらオレから離れると、今度はシアの方に近づいて、彼女に何か言っていた
何を言ってたかまでは聞き取れなかったが、シアが少し驚いたような顔してフレンを見ていた
……何言ったんだよ、あいつ……
「それじゃあ2人とも!また明日!」
少し楽しそうにそう言いながら、フレンも去って行った
家の中が静まり返る
……そういや、2人きりになんのは久しぶりだったな……
ここ最近は、フレンが泊まってたりだ、あいつらがいるわで、中々シアと2人きりにはなれていなかった
「……ユーリ、フレンに何言われたの?」
少し不思議そうにシアが声をかけてくる
「……なんでもねえよ」
そう言いながら振り返った
どこか不服そうに頬を膨らませながら、シアはオレを見てきている
……さすがに言えねえっつーの……
「そう言うシアも、なんか言われてなかったか?」
腰に手を当てながら首を傾げる
正直、オレも答えてねえから、ちゃんと答えてもられるとは思ってねえんだけど……
シアは少し考え込むと、急に無言で立ち上がって、オレに飛びついてきた
「ぅおっ!?……っと……シア、急には危ねぇって」
少しよろめきはしたものの、なんとか耐えて抱きついているシアの頭を撫でる
当の本人はまだ無言で、ぎゅっとオレにしがみついてくる
……いや、ホント可愛すぎかよ……
これ襲わないは、ちと無理がねえか……?
「シアー?どうしたんだよ?」
もう1度声をかけると、ゆっくりと顔を上げる
先程までの不機嫌な顔ではなく、ほんの少しだけ、頬が赤く染まっていた
「……ずっと邪魔しちゃってたから、久々に甘えたら?って……フレンが」
少し恥ずかしそうに、ポツリとシアが答えた
……ああ、そういう……って、あいつ……!オレに襲うなとか言っておいて、それはねえだろ……っ!?
「……って、言ってもさ?みんないても一緒に寝たりしたし、ユーリもしょっちゅう抱きついてきてたし……別に甘え足りなかったってことはなかったんだけど……」
小さくため息をつきながら、シアはまた、オレの胸元に顔を埋めた
「……んじゃ、なんで引っ付いてきたんだ?」
「……お父さんとの会話思い出したらイラッとして……そのタイミングで、ジュディスがバラすから、いつもの出そうで」
「そりゃさすがに勘弁して欲しいな……前回からまだ1ヶ月も経ってねえしな」
「……だから、ユーリに引っ付いたら、落ち着くかなー……って」
「ははっ、それで落ち着くって言うんだったら、いくらでもこうしてやるよ」
そう言いながら、ぎゅっとシアを抱きしめる
シアの方からこうして抱きついてくることは早々ない
あんまりにも可愛くて、勝手に顔がニヤけてしまう
……まっずいわこれ……マジで襲いそうだわ……
「……なんか、ユーリ、ちょっと心臓の音速くない?」
顔を上げながらキョトンとした顔をしてシアが見上げてくる
いや、マジ今それやめてくれ……っ////
「……気のせいだろ、気のせい」
シアから顔を背けながらそう答える
今顔見られたら、赤いのバレる……っ//
「嘘だぁ、だって今、照れてるでしょ?」
「んな……っ!?」
言い当てられてしまい、驚いてシアを見ると、ニヤッと笑いながら見上げてきていた
「ユーリが顔逸らして、左手で口元隠す時は、大抵照れてる時だもん」
ニヤニヤと笑っているが、そう言ってる本人の顔も若干赤い
いや待て……普段なら絶対こんなこと言ってこないな……
……まさか……
「……シア……それもフレンに言われたのか…?」
「あ、バレた??こうしたら、絶対そうするからって、言ってたよ?」
恐る恐る聞いたオレに、シアはクスクスと楽しそうに笑う
あの野郎……っ!!何余計なことまでシアに教えてんだよ…っ!!
「あははっ!ユーリ、顔真っ赤だよ?」
目を細めて笑いながら、シアが頬に触れてくる
ひんやりとした手が心地いい……って、そうじゃなくて……っ!!
やられっぱなしは性に合わねえ……っ!
「こんにゃろ……っ!!」
シアの頭の後ろを押さえて、顔を近づける
「ふぇ…っ!?」
驚いていたが、お構い無しに唇を重ねた
触れるだけで勘弁してやろうかとも思ったが、最近、慣れて来ちまったのかあんまり顔を赤くしない事を思い出して、深く重ねた
前回、衝動的にやっちまった時は、嫌そうにはしてなかったし、大丈夫だろう
……いや、むしろちょい嬉しそうだったような気もしなかねえが……
そんな事考えてると、シアがぎゅっと腕を掴んでくる
……しまった、さすがに長すぎたか……?
ゆっくりと離れると頬を赤くして、ちょっと涙目でボーッとしているシアが目に映る
「……シアも顔、真っ赤だぜ?」
ちょいやりすぎたと内心反省しつつ、ニヤッと笑いながらシアの頬に触れる
「〜〜〜〜っ!//もう!///バカっ//ずるい!//」
少し上擦った声でそう言いながら、またオレの胸元に顔を埋めてくる
「シアが先にやってきたんだろ?お互い様だよ、お互い様」
笑いながら、ぎゅっとシアを抱きしめる
ホント可愛い←
「うー……っ、わたし…そこまでしてないもん……っ!」
小さく唸りながらシアが反論してくる
まだ少し、声は上擦ったままだ
「ははっ!悔しかったら、やり返してきてみ?」
「もう……っ!意地悪……っ!」
「そういう反応すっから意地悪したくなんの
顔真っ赤にしてるシアもかわいーから、定期的に見たくなんだよ」
「うー……ユーリだって真っ赤にしてたくせに……」
そう言ったシアは少し顔を上げた
未だに赤い頬を膨らませながら、ほんの少し不服そうにオレを見上げてきていた
「オレ、シアほど赤くはなってなかったろ?」
「うー……なんか納得いかないっ!」
恥ずかしそうにしながらむくれているシアが可愛くて、またニヤけそうになる
……こりゃオレもだいぶ重症だな……
「ははっ!……とりあえず、シアも風呂入って来たらどうだ?」
頭を撫でながらそう声をかける
さすがにこれ以上はまずい
本気で襲いかねねえわ……
「……ん、そーする」
そう答えて、シアはオレから離れると、少し早足でリビングから出て行った
……さて、と
スマホを取り出して、電話をかける
数コールで電話が繋がる
『ユーリ?どうし「フレン!!お前なぁ!?//」』
フレンの言葉を遮って少し叫ぶ
『……なんか、あったかい?』
笑いを必死で堪えようとしている声に、イラッとする
「オレに襲うなとか言っといたくせに、何シアに余計な事言ってんだよ……っ!!//」
『あははっ!その様子じゃ、抱き着かれた上にいじられでもしたのかい?』
耐えられなくなったのか、笑いながら言ってくるフレンに少し殺意が芽ばえる
この野郎……っ!他人事だからってっ!!//
「くっそ……っ!//お前覚えとけよっ!?//」
『別に怒ることないだろう?邪魔してたって思ったのは本当なんだから』
「それとこれとは話が別だろ……っ!//」
『あははっ、まぁまぁ落ち着けって。アリシアに聞かれるぞ?』
「っせーよ……//……はぁ……お前本気で覚えとけよな……」
『ははっ、保証はできないかな』
あー……ホント、こいつどうしてやろうか←
『それより、明日の打ち上げの事なんだけど』
「……あ?それ、全員で話した方がいいんじゃないか?」
椅子に座りながら問いかける
勝手に決めちまったら、全員揃って怒るだろ…
『あー、いや……先に君にだけは言っておこうかと思って』
少し言いづらそうにフレンが口篭る
……なんかあったか?
『…… アリシアを連れて外出るの、ちょっとまずいかもしれない……』
「あん?なんでだよ?」
『……また、劇出るだろ?そのせいで、懲りずに彼女に会いたがってる人が彷徨いてるの、ちらほら見かけてね……』
「あー………またか………」
フレンの言葉に大きくため息をついて項垂れた
大きくため息をつきながら、額に手を当てた
毎年毎年……懲りない奴らだな……
「んじゃ、ここで打ち上げするとしますかね?」
『その方がいいだろうね。……何をするかは、みんなで決めよう』
「おう。……んじゃ、また後で」
『ああ』
そう言って通話を切った
「ユーリ?誰かと電話してたの?」
そのタイミングで、シアがリビングに戻って来た
タオルで髪を拭きながら、キョトンとした顔でオレを見てくる
「フレンだよ。まーた懲りずに彷徨いてんのがいっから、明日の打ち上げ、ここでやろうってさ」
シアの方を見ながら肩を竦めた
すると、あからさまに嫌そうに顔を顰める
「うぇ……またぁ?やだなぁ……学校行くのも大変じゃん……」
むっと頬を膨らませながら、オレの隣に座ってくる
「ったく、また片っ端からぶっ飛ばしてきゃ、少しは大人しくなるのかね」
「んー……それはちょっと……」
髪を拭いていたタオルを首に掛けながら、シアが苦笑いする
ホント、コロコロと表情変わるな……
まぁ、そこも可愛いんだけど←
「まっ、細かい事はみんなで決めようぜ?」
「ん、そだね〜」
どこか楽しげにニコニコと笑顔を浮かべてくる
……体育祭前に、付き合えてよかったわ、ホント
じゃなきゃ、ああやってゴール直前で呼んでもらえなかっただろうし、こうやって2人きりになれることもなかったかもしれねえからな
そんな事を考えていると、いつの間にかシアはスマホを操作していた
去年できなかった打ち上げができるのが相当嬉しいのか、いつまでも笑顔を浮かべてエステル達とメッセージのやり取りをしているシアを見ていると、勝手に頬が緩む
………ホント、かわいーヤツ
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