第三章 満月の子と新月
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*喉笛の封鎖
ーー翌日ーー
「ふわあぁあっ……、久しぶりによく寝た〜…」
大きく欠伸をしながらレイヴンが伸びをしている
「レイヴン、遅いよ?」
一番最後に宿屋から出てきたレイヴンに、この前言われた事を言い返した
「あちゃぁ……仕返しされちゃったわ」
ケラケラと笑いながら、レイヴンは頬を掻いている
「……あれ?騎士団が少なくなってる……?」
レイヴンとそんなやり取りをしていると、エステルが辺りを見回しながら呟いた
…言われてみれば、確かに……
「ああ。フレンたちならノードポリカに戻っていったぞ」
「えっ、そうなの?」
サラッと答えたユーリの方を向いて、首を傾げた
兄さん……ぼくらにはそんな話しなかったじゃん……
「あんた……昨日あいつと話してたんじゃなかったの?」
リタの声に彼女の方を見ると、ジトーっとぼくを見つめてきていた
「話……って言うか、半分以上お説教だったし……大体、兄さんはいっつもそうゆう話、してくれないもん」
ムッと頬を膨らませながら答えた
会う度にお説教食らってるのを知ってるせいか、リタはそれ以上、聞いてこなかった
「にしてもラッキーだったよね、フレンが来てくれるなんて!」
どこか嬉しそうにカロルがニコニコと笑いながら言った
……そっか、カロルたちは知らないんだ
『……アリシア、言ってしまえば?』
「(んー……そうだねえ……)」
アリアの声に答えながら、隣にいるユーリをチラッと見る
どうやらユーリも話していいのか迷ってたらしく、少し困り顔でぼくを見てきていた
みんなに気づかれないように小さく頷くと、苦笑いしながら、ユーリが口を開いた
「ラッキーってわけじゃなかったみたいだぜ」
「…え?そうなの?」
ユーリの声にカロルが首を傾げたのが視界に映った
「ああ、ラゴウの時と同じで、あいつも、新月絡みで極刑だったらしい」
「はぁ!?」
誰よりも早く、リタが反応する
彼女は半分睨むように、ユーリを見ている
「あいつも何か知ってるって事!?あんた、それちゃんと問いただしたんでしょうね!?」
リタは声を荒らげながら、ユーリに詰め寄っている
……これ、ぼくが言ってたら、ぼくが詰め寄られるやつじゃん…
あぶなぁ……
「リ、リタ……?少し落ち着きましょう?」
動揺しながらも、エステルはリタを宥めている
「フレンが詳しく話してくれると思うか?
……ああ、けど去り際に言ってたな。『新月が沈めば、世界に災厄がふりかかる』って」
その言葉に、みんなが息を飲んでいた
「それは…どういう意味なんでしょう…?」
恐る恐るエステルがユーリに問いかける
「さあな?言うだけ言って、行っちまったからな」
困り気味に肩を竦めてユーリは答える
『……アリシア』
「(ん、わかってる)」
アリアにそう答えて、軽く深呼吸をした
「『新月沈む時、災厄、降り注がん』」
「……え?」
目を閉じてゆっくりと、静かに口を開く
「『新月を沈ませるべからず。かの者は守らねばならぬ。決して害してはならぬ。害することは許さぬ。かの者の心の安寧を崩してはならぬ。心の安寧崩れし時、新月沈む時。……再び新月、沈むことあらば……それ即ち、世界の破滅』……それが、ぼくと兄さんがおばさんから聞いた伝承だよ」
言い切って目を開けると、みんな揃って驚いた顔をしてぼくを見つめてきていた
「アリシアちゃん……それ……」
「…あ……あんた…っ!!やっぱり知ってるんじゃないっ!!」
恐る恐る問いかけようとしてきたレイヴンの声をかき消して、リタが怒鳴り声を上げた
あー……うん、そうなるよねぇ…
「ぼくちゃんと言ったじゃん。知ってるかもしれないし、知らないかもしれないよ?って」
苦笑いしながらそう答えた
どこか悔しそうに、リタがぼくを睨んでくる
「でも……どうしてエステルも知らない事を、アリシアが知ってるの?」
不思議そうにカロルが首を傾げて問いかけてくる
そんなカロルに、薄らと微笑む
「……アリアを守るのが、兄さんと……ぼくの役目だから」
「役目……?」
訝しげにリタがそう呟きながら腕を組んだ
そんなリタに頷き返す
「『新月の力』を継ぐ子は、異常なくらい警戒心が強い。だから、新月の伴侶に兄弟や姉妹がいて、その人に子どもがいる場合、その子どもが次の新月の騎士になることが多いんだ
従兄妹なら会うことも多いから、自然と警戒心も解けるし、傍に居やすいからね
……ホントなら今頃、兄さんはアリアの騎士をしていたはずだし、ぼくもその為に騎士団に入っていたはずなんだ」
「……だから、教えてもらってたってこと?」
ジーッとぼくを見つめながら、リタは問いかけてくる
「そだよ?」
ほんの少し首を傾げながら答えた
「けど……どうしてそれを話したがらなかったんです?」
不思議そうに今度はエステルが首を傾げた
ほんの少し眉を下げて笑う
「……こんな話、簡単にしていいと思う?」
少し声のトーンを落として問い返すと、エステルは黙ってしまった
「本来なら、新月とその伴侶、皇帝に新月の騎士と、新月が信頼できる極々僅かな人だけにしか知らせてはいけない。……全く関係の無い人に教えなんてしたら、普通は厳罰だよ
……まぁ、アリアなら怒るだけで終わりそうだけどね〜」
ほんの少し笑いながら答えると、みんな揃って目を見開いていた
「それは……本当に大丈夫なのかしら?」
少し心配そうにジュディスが問いかけてくる
「大丈夫だよ。…それに、先に話したのは兄さんだから尚のことね。ぼくは兄さんが言ったことに補填しただけだし、問題ないよ」
「なんでフレンが先に話したら大丈夫なのじゃ?」
不思議そうに首を傾げてくるパティに答えようと口を開いた時
『アリシア、それ以上はダメよ』
ぼくを制止するアリアの声が聞こえた
……まっずい、危うく話すところだった
「……それは内緒。ぼくが話せるのはここまでだよ」
肩を竦めながらそう答えた
「あ……あんたねぇ……っ!」
「リタっち、そこまでにしとこうや」
問い詰めようとしてくるリタをレイヴンが止めた
「おっさんの言う通りだぞ、リタ。今の聞いて、これ以上問い詰めるつもりかよ?」
咎めるような声でユーリが言うと、リタは渋々口を閉ざした
「……悪いとは思ってるよ、ここまで話しておいて、これ以上何も言えないのは。けど……」
「……いいわよ。あたしの方こそ……悪かったわ」
気まずそうにリタはぼくから視線を逸らした
とりあえずは大丈夫そう、かな?
「これで一つわかったわね」
「え?何がわかったの?」
「何故、『新月』という存在を隠したのかが」
「…そうね。『沈む』って表現は分かりずらいけど、『新月』に何かあれば、世界が滅ぶかもしれない。だから、隠す事で守ろうとしたって事ね」
ジュディスとリタはそう言い合って顔を見合わせていた
「……聞きたい事は山ほどあるけど……今は聞かないでおくわ」
やっぱりまだリタは聞きたそうだけど、それをグッと堪えてくれたみたい
「ん、ありがとう、リタ」
ニコッと笑ってリタにそう返した
「……とりあえず、ノードポリカに向かうとすっか」
みんなが頷いたのを確認して、ユーリはぼくの手を引いて歩き出した
『もう……油断すると、すぐ全部話そうとするんだから……』
呆れたようなアリアの声が頭に響く
「(いや……ホントごめん……)」
『昨日の夜も、少し寝てる間に余計なこと言って……どうしてくれるのよ……アリシアのバカ……』
不服そうな声に思わず口角が上がる
「(アリアだって、似たようなことしたくせに。……それに、アリアから言うまで、何も聞かないよう言ったし、大丈夫だよ)」
『……バーカ……』
「…アリシア?」
アリアが小さく悪態づいて来たのと同時に、ユーリが呼ぶ声がした
「……ん?」
「ボーッとしてどうしたんだよ?」
ほんの少し心配そうに問いかけてくる
「あー……いや……」
チラッと後ろを振り返る
みんなとは、少し距離があるし、小声なら平気……かな
「……アリアにちょっと、怒られてただけだよ」
苦笑いしながら小さく呟いた
「なるほどね……お前も懲りないな」
ぼくと同じように、ユーリも小声で返してくる
そんな彼に少しだけ肩を竦めた
「…ま、ボーッとしててもあんまり気にしないで?大抵、アリアと話してるだけだからさ」
「はいよ」
困ったように笑いながら、ユーリが短く答えた
…こうして、素直に話せるの、結構楽かもしれない
そんな事考えてたら、前から男の人が歩いてきた
「あんた方、カドスの喉笛へ?」
すれ違いざまに、商人っぽい男の人が問いかけてくる
「ああ、そうだけど」
「今、カドスは騎土団が封鎖してますよ。ここだけじゃなく、山を越えるルート全部
事情は知りませんが、なんでもノードポリカは危険なんだとか」
困ったようにため息をつきながら、そう教えてくれた
彼はマンタイクに戻ると言って、そのまま去って行く
封鎖って……なんでまた……
「どうしましょう……新月までにノードポリカへ行かなきゃならないのに……」
「新月過ぎちゃったら、どうしようもないものね」
エステルとジュディスがそう言って顔を見合わせていた
ぼくがいれば、ベリウスは新月じゃなくとも会ってくれるかもしれないけど……
それはさすがになぁ……
「とりあえず、行くだけ行ってみない?ここで止まってても何も始まらないよ?」
みんなを見回しながらそう問いかけた
正直、騎士がうようよいる所には近づきたくないんだけど……
けど、ここ通れなかったら始まらないし……
「だな。そうすっか」
ユーリの言葉を合図に、ぼくらはカドスの喉笛へとまた歩き出した
ーカドスの喉笛ー
「うげ……騎士がいっぱいだ……」
物陰からこっそり覗きながら、小さく呟く
あの隊服……兄さんの隊だね……
魔物まで飼い慣らしてて、兄さんに似合わない隊になってるし
「この検問、どうしよっか……」
困った顔で、カロルが問いかけてくる
んー……そう言われてもなぁ……
「(アリア、どうする?)」
『……二日連続、は……リタが怪しむ、よ』
「(あー……それもそうだよねえ……)」
フードを深く被りながら苦笑いした
リタにこれ以上疑われるのは勘弁して欲しいかも
「……マジでか……!?やるやる!で?で?」
どうしようか悩んでると、後ろからレイヴンの声が聞こえて振り返った
パティと話してたみたいだけど……なんか、楽しそう……?
「……おっさん、あんまり大きな声出すな……」
「ゴメンゴメン。面白いじゃない」
呆れ気味にユーリがレイヴンに言うと、ニヤッと笑いながら弓を取り出した
「こういうのはどうよ?」
首を傾げていたら、急に魔物目掛けて矢を放った
矢が当たった魔物は、その場で暴れ出す
周りにいた騎士達が慌てて宥めようとしてるけど……
抜けるなら、今しかなさそうだ
「今よ、行きましょ」
ジュディスの合図でぼくらは騎士の間を駆け抜けた
なんか後ろで、ユーリを呼ぶ声が聞こえた気もするけど、今は無視だ、無視
「珍しく派手に動いたな、おっさん」
走りながら、ユーリがレイヴンに問いかける
「なになに、パティちゃんの助言あってよ。人間ご褒美があると、がんばれるって言うじゃない?」
「何よ、ご褒美って」
訝しげにリタが問いかけると、レイヴンがパチッとウィンクをした
「ヒ・ミ・ツ♡約束お願いね、パティちゃん♪」
「ヒ・ミ・ツ♡なのじゃ!」
レイヴンとパティは楽しげにそう言って、先頭を走る
「……何あれ?」
「どうせしょうもない約束だろ。今はそれより先を急ぐぞ」
走りながら少し首を傾げていると、呆れ気味なユーリの声が聞こえた
まぁ…ユーリの言う通り、気にしても仕方ないか
考えるのをやめて、とにかく先に進んだ
ーーーー
「ふ~。追っかけてこないみたい」
しばらく進むと、後ろを振り返りながらカロルがホッと息を吐いた
「こんな危険なとこまで封鎖してノードポリカを孤立状態にしようってんだから。連中、かなりマジ気みたいねぇ」
口調はいつものおどけた雰囲気のままだけど、少し真剣そうにレイヴンが言う
「まったく。魔物まで出して来ちゃって」
「きっと、ロクでもない事しようとしてるのね」
「フレンがこんな事を指示するとは思えません……」
みんな口々にそう言っている
確かに、兄さんの指示とは思えない
『……ね、アリシア……もしかして…』
不安そうにアリアが声をかけてくる
「(…アリア、そんなに不安がらなくても大丈夫だよ。……兄さんなら、きっと平気だよ)」
少しでもアリアが安心できるように、優しく声をかけた
全く……兄さんってば……先にぼくらに教えておいてよね……
「悪い。リタ。エアルクレーネ調べる時間もあんまり取れねえぜ」
ユーリの声にハッとする
…いけない、また考え込んじゃってた……
「うー。でもしょうがないか。追っ手とか来ると面倒だし……」
「そういうことだ。じゃあ、とっとと行くぞ」
そういうが早いか、ぼくの手を取って足早に歩き始めた
「ユーリ…あんまり早いと、みんなついて来れないんじゃない?」
「一本道なんだし、問題ないだろ。……それよか、平気か?」
少し小さな声で、問いかけてくる
「……アリアのこと言ってるなら、ちょっと微妙かなぁ……」
少し肩を竦めながら答えた
ダメとは言いきれないし、かと言って、平気でもないし……
「フレンのヤツ、この件に関して何も言ってないのか?」
「あんまり詳しく話しても不安煽るだけだからって、兄さんいっつも、細かいこと話してくんないんだよねえ……これに関してはぼくら、本当に何も聞いてないよ」
「あいつ……自分が不安にさせるようなことしてどうすんだよ……」
呆れ気味にユーリがため息をつく
……まぁ、その気持ちはわかるけど
『……アリシア、わたし、平気よ』
小さな声で、アリアが答えてくる
「(それ……ホント?)」
『…ホント……だよ。だから……ユーリにも、そう伝えて?』
と、言いつつ……声震えてるんだよなぁ……
……まぁ、そこまで酷くはなさそうだし、ホントに平気、かな?
「(……そう?それならいいけど)……ユーリ?」
「ん?」
「アリアが『平気だから心配しないでいい』だってさ」
苦笑いしながらそう伝えた
「……ホントか?それ」
「…まぁ、前ほど不安そうにしてる訳じゃないから、そこまで心配しすぎる必要はないかもね」
油断はできないけど、と小さく付け足した
いくらぼくらの境界線が曖昧になりつつあるって言っても、まだ完全じゃないのは確かだから
何が引き金になって、また逆戻りするかなんて、ぼくらにもわからない
「……ま、油断禁物って事だな」
「ん、そゆこと」
ニコッと笑ってそう答えると、ユーリは少し困り気味に微笑み返してきた
ーーーー
しばらく進むと、前に暴走していたエアルクレーネの元までたどり着いた
「リタ、なるべく手短にな」
「わかってる」
ユーリの言葉に頷くと、リタは辺りをジッと見つめた
「今は完全におさまってる……。一時はあんなに溢れてたのに。あれでエアルを制したって事?けど、何で魔物にそんなことが……」
ぶつぶつと呟きながら、考え込んでるみたい…
リタに大丈夫なのかと問いかけてるエステル達の会話を、少し離れたところで黙って聞いてた
また余計なこと言って、アリアに怒られるのも嫌だし……
会話を聞いてる感じ、リタは自然現象ではないって判断したみたいだ
『……すごい。それ……わかるもの、なんだ…』
「(さすがリタって感じだよねえ……)」
関心気味に呟いたアリアに、そう返した
これ……ホントにいつか、ぼくらのことも気づきそうだなぁ……
「だとすると、何かがエアルクレーネに干渉して、エアルを大量放出する……?」
ポツリと呟かれた言葉に、一瞬肩が跳ねそうになった
……もしかして、『あれ』に気づいた……?
「でも、いったい何が……。エアルに干渉するなんて、術式か、
そう思ったのは杞憂だったらしく、またぶつぶつと呟きながら考え始めていた
…よかった、気づいてはいないみたい……
『あれ』に関しては、ぼくが勝手に話すわけにいかないし……
ホッと息をついていると、聞き覚えのある金属音が来た道の方から聞こえてきた
「追っ手か。隊長に似て、くそまじめな騎士共だぜ。リタ、行くぞ?」
音のしてくる方向を睨みながら、ユーリは舌打ちする
まぁ……そりゃ追いかけて来るよなぁ……
騎士に追いかけられるの、正直もう勘弁して欲しいんだけど……
そんな事を考えながら、追いかけてくる騎士達と反対方向に走り出した
しばらく走ってると、急にジュディスが立ち止まった
「隠れて」
言われるがままに隠れてこっそり覗くと、出口の傍に見慣れた三人組が見えた
「うげ……ルブラン達じゃん……」
顔を顰めながら小さく呟いた
なんでこんな所にいるのさ……
ただでさえ、ユーリ見るだけで追いかけて来るから、正直会いたくなかったのに…
「まあ、当然ここも押さえてるわな」
困ったように頬を掻きながらレイヴンも呟く
「パティ、なんか突破するいいアイデアないの?」
「むー………」
「レイヴンは?さっきみたいにうまくできない?」
カロルが二人を交互に見ながら問いかける
「まじめな騎士にあまり無体なことはしたくないなぁ……」
「あれ、まじめに見えないわよ」
困り気味に言ったレイヴンに対し、リタが呆れた顔しながら三人を指さした
「私は悲しいのであ~る」
「なぜに、栄えあるシュヴァーン隊の我らがフレン隊の手伝いなのだ!」
「ええい、文句を言うな!悔しければ、結果を出すんだ!」
三人のそんな会話が聞こえてくる
「……任務中に無駄話してるから、お手伝いさせられてるんじゃないの?」
内容に呆れてしまって、思わず声が出た
「それは言ってやんなって」
チラッとユーリを見上げると苦笑いしながらぼくを見てきていた
さてと……それはともかく、これどうしようか……
そんな事を考えてると、後ろからまた金属音が聞こえてくる
「いたぞ、捕らえろ!」
その声に振り返ると、数人の騎士の姿が目に入った
「あちゃあ……見つかった」
参ったなぁ……どーしよ
「む、何事であ~る」
「お前たち、そいつらを逃がすな!」
後ろから来た騎士の声に、ルブラン達がぼくらを見た
ユーリは呑気に「久しぶり」なんて言ってるけど……
これ、絶体絶命ってやつ?
『アリシア……呑気に言ってる場合?』
「(そうは言うけど……じゃあどうする?あれやる?)」
『それは……』
アリアにそう問いかけると黙ってしまった
…まぁ、そうだよねえ……
ぼくもさすがに騎士の前じゃ、やりたくない
そうこうしてるうちに、ルブラン達もぼくらの方に向かってくる
「しゃ~ない!」
そう言って、レイヴンがルブラン達の方に駆け出して行った
「おい、おっさん!」
ユーリがレイヴンを止めようと声をかけた瞬間
「全員気を付け!」
……ヤケに、聞き覚えのある声で、レイヴンが号令をかけた
ドクンッと心臓が大きく跳ねる
ぼくらの手前でルブラン達は、少し戸惑いながらもその場で立ち止まって敬礼をした
「なんか知らんが、今のうちだ!」
止まったルブラン達を見て、ユーリがぼくの手を引いて走り出す
みんなが慌てて着いてくる足音が後ろから聞こえてくる
少しすると、ルブラン達の驚く声と、ぶつかるような音が聞こえた
あんな所で立ち止まったら、後ろから来た騎士とぶつかるのはそう…なんだけど……
「何したの、レイヴン……?」
不思議そうな声で、カロルがレイヴンに問いかける
「いいから、いいから。さあ、ぐずぐずしてると追っ手に追いつかれるぜ」
ちゃんと答える気はないらしいレイヴンはそう言って出口に向かって行く
「だな。一気にノードポリカに向かうぞ」
ユーリの掛け声合図に、みんなも出口に向かって行く
手を引かれてるから、ぼくも止まることはないけど……
『……アリシア……あの声……』
少し嬉しそうで懐かしそうな……それでいて、少し不安が混じったような声で、アリアが声をかけてくる
「(…うん、多分……そうだと、ぼくも思う)」
ぼくらが、『あの声』を聞き間違えるはずがない
けど、見た目も口調も、『あの頃』と全然違うし……
大体、なんでギルドに……
『……アリシア、考えるの……後に、しない……?』
「(……ん、それもそうだね)」
そう答えて頭を振った
アリアの言う通り、今考えても仕方ない
とにかく今は、目の前の事に集中しないと、ね?
*スキットが追加されました
*いつ代わる?
*二人の口調
*二人について
