第一章 始まりの出会い
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*新しい家族
そして……
下町の外れ、住む者もなく畑もない廃墟が草木に半ば埋もれた見捨てられた土地
その片隅の、ある程度整地された一角には、沢山の石碑が置いてある
様々な大きさ、形のそれらには大半が何も記されていない
そうした石碑の一つの周囲に人々が集まっており、そこからすすり泣きが流れ出していた
どの石碑よりも大きく、真新しいそれには、『ノレイン・シーフォ』と、はっきり刻まれていた
そう、ここは下町の墓場なのだ
人々の中心で、アリシアとフレンはただひたすら泣いていた
ノレインの死は二人には大きすぎた
「…フレン、アリシア、最後のお別れを言っておいで」
ハンクスは優しく二人を促す
彼のその目にも、涙が溜まっていた
二人は穴の中に入り、じっとノレインを見つめる
ほんの数分だったかもしれないし、数十分だったかもしれない
最初にフレンが穴の中から出てきた
が、アリシアはその場から動こうとはしない
小さな声で何かを呟いているようだったが、誰にもその声は聞き取れなかった
言いたいことを言いきれたのか、しばらくしてからようやく穴の中から出てくる
「…お願いします……」
掠れた声で、フレンはそう言った
近くにいた二人の男が頷きあうと、穴の中に入り、棺桶の蓋を閉めた
そして、ハンクスはフレンに鍬を差し出す
棺桶にかける最初の土は身内がかけるのが、下町の決まりであった
無言でそれを受け取ると、フレンはゆっくりと土を被せた
次いでアリシアもフレンと同じように、土を被せる
そのあとに続くように、次々と下町の住民たちは土を被せていく
皆それぞれ、目に涙を溜めていた
それ程までに、ノレインは下町の住民たちに愛されていたのだ
全員にいき通る前に、土は被せ終えた
そして、一人、また一人と街の方へ帰って行く
残ったのはアリシアとフレン、それに、ユーリとハンクス夫妻だった
フレンはただただ、石碑を見つめ続けた
ノレインの為にと稼いだお金は、少年たちの希望で石碑代に回された
もっといいものをつくれたのだが、周りと差が出ることを躊躇ったフレンたちの意見により、比較的簡素なものになった
それでも、充分な装飾が施された石碑を、フレンはじっと見つめ続ける
アリシアはそのフレンの隣で未だに泣いていた
そんな二人をユーリは見つめ続けた
自分にはわからない感覚…
共有出来ないその感覚を二人は今持っている
ハンクスたちと目を合わせると、コクンと頷く
そして、街の方へ帰って行った
しばらくして、ユーリもその後をついて行く
後に残された二人は、未だ動けずにいた……
それから、二人も我が家に住まないかとハンクスに促されたが、数年でもノレインと暮らした家を離れられずにいた
結局、しばらくの間は今の家に住み、昼と夕飯だけは我が家で一緒に食べることになった
基本的に、食事はジリが作ってくれるのだが、たまにジリが来れない日がある
そうゆう日を、我が家では『ハズレ』と呼んでいた
元より料理なんてした事の無い子どもたちがやるのだ
当然ながら、いいのもは出来ない
どんなに頑張っても、例え複数人でやったとしても、文句を言われるのが目に見えていた
そして、この日、運が悪いと言うべきかジリが来れなかった
誰が作るかと、言う話になり真っ先にアリシアがやると言い出した
当然と言うべきか、誰もが驚いた
我が家の中では、恐らく一番年下であろう彼女がやるというのだから
他にやりたい者もおらず、渋々アリシアに任せた
が、誰もが不安なのか、チラチラと台所を覗きに行く
ただ一人、フレンを除いて
しばらくして、美味しそうな匂いとアリシアの出来た!という声が響く
最初に動いたのはフレンだった
アリシアと一緒に、出来た料理を皿に盛り付ける
その次にユーリがやってきて、運ぶのを手伝った
彼が見る限り、ジリが作ったものと同等か、それ以上の見た目をしていた
いただきます、という合図で食べ始めるが、おいしい!と驚く声があちこちから聞こえてくる
それに、アリシアは満足そうに微笑んだ
それ以来、アリシアが料理することが多くなった
ジリが来ない日はアリシアか、フレンのどちらかが、夕飯を作った
それが、新しい日常となっていた
アリシアは持ち前の適応力で、生活に馴染んで行ったが、フレンの方は未だに馴染めずにいた
そんなフレンを心配そうに見つめるアリシアを下町の住民たちが見るのは毎日の事だった
ノレインの薬代にと溜め、墓石を買った後に残ったお金は、稼いできた子どもたちに均等にわけられた
当初は下町に寄付すると、言い張っていたのだが、ハンクスに気持ちだけもらうと言われ、それぞれが受け取った
ユーリはそのお金で、新しい剣を買った
フレンと一緒に使っていたものは、もう大分小さくなってしまったからだった
他の者達も思い思いのものを買った
本を買う者、それに貯めるもの……
人それぞれだったが、フレンは一人、何もしようとしなかった
受け取りはしたものの、何を買う訳でも、ましてや貯めるわけでもなかった
ユーリにも、そんなフレンが心配でならなかった
そんなある日のことーー
「あれ、塩がない」
夕飯を作ろうとしている最中に、フレンが呟く
「本当だ、何処にもないや」
フレンが見ている棚と、別の棚を見ながらジャレスは言った
「んじゃ、ハンクスじいさんのとこに取り行こうぜ」
「ハンクスさんのとこに?」
「ここではそうゆう決まりなんだよ」
そう言って、ユーリは玄関の方へ歩いて行く
「ほら、行こうぜ」
そう言ってフレンに手招きする
フレンは少したじろいだが、黙ってユーリの後をついて行った
「兄さん…大丈夫かな…」
アリシアはポツリとそう呟いた
ここ最近、全く誰とも話していないフレンが心配なようで、じっと玄関を見つめ続けた
「アリシアー!フレンたち帰ってくるまで遊ぼうぜー!」
ジャレスたちの声に振り向く
こっちにおいでと、手招きしている彼らと、玄関を交互に見る
やがて、ユーリなら大丈夫と感じたのか、ジャレスたちの元へとやってきた
「遅せぇよ………あいつらぁ………」
パタッと、倒れ込みながらジャレスは呟いた
フレンたちが出て行ってから、かなりの時間が経った
未だに二人が帰ってくる気配はない
「……ちょっと見てこようかな」
アリシアはそう言って立ち上がる
「えー!アリシアも行っちゃうのー!?」
「だって、じゃないと夕飯作れないもん…」
そう言って肩を竦め、アリシアは薄暗くなった外へと走り出して行った
ハンクスたちの家にはすぐについた
が、人のいる気配がしない
コンコンッと軽く扉をノックしてみる
……中から反応はない
さて、どうしようかとアリシアは扉の前で腕を組む
ここで待つのも手だが、みんなが待ってる
どうしようかと唸っていると、ガチャっと扉が開く音が聞こえる
「そんなところで、何をしているんだい?」
聞こえてきた声に顔をあげると、不思議そうにしたジリの顔が目に入った
「えっと…夕飯作ろうと思ったらお塩なくて…ユーリと兄さんが取りに来てるはずなんですけど、来てませんか?」
「……あぁ、だから居たんだね」
何処か納得した表情を浮かべると、一度家の中へと姿を消す
そして、次に出てきた時には手に塩のはいった袋を持っていた
「あの二人なら、今頃話し合いでもしてるさ。のんびり、夕飯を食べながら待とうじゃないか」
ニカッと笑いながらジリはアリシアに言った
アリシアは首を傾げながら、ジリの後ろをついて行った
二人が帰ってきたのは、日が昇ってからだった
二人の顔は、殴り合いでもしたのか腫れ上がっていた
アリシアは慌てて二人に冷やしたタオルを渡す
バタバタと一人慌てるアリシアに、ユーリとフレンはただただ苦笑いし合っていた
その顔には、何処か打ち解けあったような穏やかな表情が浮かんでいた
消毒液や絆創膏を持ったアリシアが、心配そうな、怒ったような表情を浮かべて戻ってくる
二人は大人しく、アリシアに怪我の手当をされながら、彼女の説教を聞いていた
〜数年後〜
「にーさーん!!!ユーリー!!!早くーー!!」
「おいおい、一人でそんなに先行くなっての」
苦笑いしながら、ユーリは自分たちより少し遠くにいるアリシアの元に駆け寄る
その後を同じように、フレンが追いかけた
「だーって、二人とも遅いんだもん!」
肩の高さで切りそろえられた金色の髪を揺らしながら、アリシアはムッとする
「全く、僕らよりもアリシアがはしゃいでどうするんだい?」
追いついたフレンはアリシアの頭を撫でながら、そう問いかける
「兄さんたち、嬉しさを顔にださないんだもん!その分ぼくが出してあげてるんだから、ちょっとは感謝してよね!」
ふふん、と鼻を鳴らしながら、アリシアは言う
我が家で暮らすようになってから、アリシアは元あった髪をバッサリと切り、一人称も『あたし』から『ぼく』に変わった
多少なりとも、自分の素性が騎士にバレないようにという配慮からだ
「へいへい、わかりましたよっと」
アリシアの肩に手を置きながら、ユーリは微笑む
ユーリとフレンは普段着ていた服ではなく、騎士の見習いの制服を身に纏っている
そう、今日は、騎士団への入団式の日なのだ
「アリシア、しばらく帰れないけど、我が家のことは任せたよ」
ゆっくりとアリシアの傍を離れながら、フレンは言う
「もー、兄さんは心配症なんだから…大丈夫だって!」
困ったように笑いながら、アリシアはそれに答えた
「だな、アリシアならなんも問題ねぇよな?」
ニカッと笑いながら、ユーリはアリシアに言う
「あったり前じゃん!ぼくを誰だと思ってるのさ」
ドヤッと自慢げな顔をしてユーリを見つめる
「ほら、ユーリ、いい加減行くよ!」
「はいよ!…んじゃ、アリシア、またな!」
フレンに呼ばれ、ユーリもアリシアから離れる
「…うん!二人とも、頑張ってねーー!!!」
一拍間を開けて、アリシアは笑顔で二人を見送った
二人が、お城の門を潜るまで、アリシアはずっと手を振り続けた
「………さてと…夕飯の材料買って帰ろうかな」
寂しさで、少し涙が溜まった目を軽く擦り、アリシアは帰路へとついた
お城の窓から、ジッと、アリシアを見つめていた影に、気づかずに………
そして……
下町の外れ、住む者もなく畑もない廃墟が草木に半ば埋もれた見捨てられた土地
その片隅の、ある程度整地された一角には、沢山の石碑が置いてある
様々な大きさ、形のそれらには大半が何も記されていない
そうした石碑の一つの周囲に人々が集まっており、そこからすすり泣きが流れ出していた
どの石碑よりも大きく、真新しいそれには、『ノレイン・シーフォ』と、はっきり刻まれていた
そう、ここは下町の墓場なのだ
人々の中心で、アリシアとフレンはただひたすら泣いていた
ノレインの死は二人には大きすぎた
「…フレン、アリシア、最後のお別れを言っておいで」
ハンクスは優しく二人を促す
彼のその目にも、涙が溜まっていた
二人は穴の中に入り、じっとノレインを見つめる
ほんの数分だったかもしれないし、数十分だったかもしれない
最初にフレンが穴の中から出てきた
が、アリシアはその場から動こうとはしない
小さな声で何かを呟いているようだったが、誰にもその声は聞き取れなかった
言いたいことを言いきれたのか、しばらくしてからようやく穴の中から出てくる
「…お願いします……」
掠れた声で、フレンはそう言った
近くにいた二人の男が頷きあうと、穴の中に入り、棺桶の蓋を閉めた
そして、ハンクスはフレンに鍬を差し出す
棺桶にかける最初の土は身内がかけるのが、下町の決まりであった
無言でそれを受け取ると、フレンはゆっくりと土を被せた
次いでアリシアもフレンと同じように、土を被せる
そのあとに続くように、次々と下町の住民たちは土を被せていく
皆それぞれ、目に涙を溜めていた
それ程までに、ノレインは下町の住民たちに愛されていたのだ
全員にいき通る前に、土は被せ終えた
そして、一人、また一人と街の方へ帰って行く
残ったのはアリシアとフレン、それに、ユーリとハンクス夫妻だった
フレンはただただ、石碑を見つめ続けた
ノレインの為にと稼いだお金は、少年たちの希望で石碑代に回された
もっといいものをつくれたのだが、周りと差が出ることを躊躇ったフレンたちの意見により、比較的簡素なものになった
それでも、充分な装飾が施された石碑を、フレンはじっと見つめ続ける
アリシアはそのフレンの隣で未だに泣いていた
そんな二人をユーリは見つめ続けた
自分にはわからない感覚…
共有出来ないその感覚を二人は今持っている
ハンクスたちと目を合わせると、コクンと頷く
そして、街の方へ帰って行った
しばらくして、ユーリもその後をついて行く
後に残された二人は、未だ動けずにいた……
それから、二人も我が家に住まないかとハンクスに促されたが、数年でもノレインと暮らした家を離れられずにいた
結局、しばらくの間は今の家に住み、昼と夕飯だけは我が家で一緒に食べることになった
基本的に、食事はジリが作ってくれるのだが、たまにジリが来れない日がある
そうゆう日を、我が家では『ハズレ』と呼んでいた
元より料理なんてした事の無い子どもたちがやるのだ
当然ながら、いいのもは出来ない
どんなに頑張っても、例え複数人でやったとしても、文句を言われるのが目に見えていた
そして、この日、運が悪いと言うべきかジリが来れなかった
誰が作るかと、言う話になり真っ先にアリシアがやると言い出した
当然と言うべきか、誰もが驚いた
我が家の中では、恐らく一番年下であろう彼女がやるというのだから
他にやりたい者もおらず、渋々アリシアに任せた
が、誰もが不安なのか、チラチラと台所を覗きに行く
ただ一人、フレンを除いて
しばらくして、美味しそうな匂いとアリシアの出来た!という声が響く
最初に動いたのはフレンだった
アリシアと一緒に、出来た料理を皿に盛り付ける
その次にユーリがやってきて、運ぶのを手伝った
彼が見る限り、ジリが作ったものと同等か、それ以上の見た目をしていた
いただきます、という合図で食べ始めるが、おいしい!と驚く声があちこちから聞こえてくる
それに、アリシアは満足そうに微笑んだ
それ以来、アリシアが料理することが多くなった
ジリが来ない日はアリシアか、フレンのどちらかが、夕飯を作った
それが、新しい日常となっていた
アリシアは持ち前の適応力で、生活に馴染んで行ったが、フレンの方は未だに馴染めずにいた
そんなフレンを心配そうに見つめるアリシアを下町の住民たちが見るのは毎日の事だった
ノレインの薬代にと溜め、墓石を買った後に残ったお金は、稼いできた子どもたちに均等にわけられた
当初は下町に寄付すると、言い張っていたのだが、ハンクスに気持ちだけもらうと言われ、それぞれが受け取った
ユーリはそのお金で、新しい剣を買った
フレンと一緒に使っていたものは、もう大分小さくなってしまったからだった
他の者達も思い思いのものを買った
本を買う者、それに貯めるもの……
人それぞれだったが、フレンは一人、何もしようとしなかった
受け取りはしたものの、何を買う訳でも、ましてや貯めるわけでもなかった
ユーリにも、そんなフレンが心配でならなかった
そんなある日のことーー
「あれ、塩がない」
夕飯を作ろうとしている最中に、フレンが呟く
「本当だ、何処にもないや」
フレンが見ている棚と、別の棚を見ながらジャレスは言った
「んじゃ、ハンクスじいさんのとこに取り行こうぜ」
「ハンクスさんのとこに?」
「ここではそうゆう決まりなんだよ」
そう言って、ユーリは玄関の方へ歩いて行く
「ほら、行こうぜ」
そう言ってフレンに手招きする
フレンは少したじろいだが、黙ってユーリの後をついて行った
「兄さん…大丈夫かな…」
アリシアはポツリとそう呟いた
ここ最近、全く誰とも話していないフレンが心配なようで、じっと玄関を見つめ続けた
「アリシアー!フレンたち帰ってくるまで遊ぼうぜー!」
ジャレスたちの声に振り向く
こっちにおいでと、手招きしている彼らと、玄関を交互に見る
やがて、ユーリなら大丈夫と感じたのか、ジャレスたちの元へとやってきた
「遅せぇよ………あいつらぁ………」
パタッと、倒れ込みながらジャレスは呟いた
フレンたちが出て行ってから、かなりの時間が経った
未だに二人が帰ってくる気配はない
「……ちょっと見てこようかな」
アリシアはそう言って立ち上がる
「えー!アリシアも行っちゃうのー!?」
「だって、じゃないと夕飯作れないもん…」
そう言って肩を竦め、アリシアは薄暗くなった外へと走り出して行った
ハンクスたちの家にはすぐについた
が、人のいる気配がしない
コンコンッと軽く扉をノックしてみる
……中から反応はない
さて、どうしようかとアリシアは扉の前で腕を組む
ここで待つのも手だが、みんなが待ってる
どうしようかと唸っていると、ガチャっと扉が開く音が聞こえる
「そんなところで、何をしているんだい?」
聞こえてきた声に顔をあげると、不思議そうにしたジリの顔が目に入った
「えっと…夕飯作ろうと思ったらお塩なくて…ユーリと兄さんが取りに来てるはずなんですけど、来てませんか?」
「……あぁ、だから居たんだね」
何処か納得した表情を浮かべると、一度家の中へと姿を消す
そして、次に出てきた時には手に塩のはいった袋を持っていた
「あの二人なら、今頃話し合いでもしてるさ。のんびり、夕飯を食べながら待とうじゃないか」
ニカッと笑いながらジリはアリシアに言った
アリシアは首を傾げながら、ジリの後ろをついて行った
二人が帰ってきたのは、日が昇ってからだった
二人の顔は、殴り合いでもしたのか腫れ上がっていた
アリシアは慌てて二人に冷やしたタオルを渡す
バタバタと一人慌てるアリシアに、ユーリとフレンはただただ苦笑いし合っていた
その顔には、何処か打ち解けあったような穏やかな表情が浮かんでいた
消毒液や絆創膏を持ったアリシアが、心配そうな、怒ったような表情を浮かべて戻ってくる
二人は大人しく、アリシアに怪我の手当をされながら、彼女の説教を聞いていた
〜数年後〜
「にーさーん!!!ユーリー!!!早くーー!!」
「おいおい、一人でそんなに先行くなっての」
苦笑いしながら、ユーリは自分たちより少し遠くにいるアリシアの元に駆け寄る
その後を同じように、フレンが追いかけた
「だーって、二人とも遅いんだもん!」
肩の高さで切りそろえられた金色の髪を揺らしながら、アリシアはムッとする
「全く、僕らよりもアリシアがはしゃいでどうするんだい?」
追いついたフレンはアリシアの頭を撫でながら、そう問いかける
「兄さんたち、嬉しさを顔にださないんだもん!その分ぼくが出してあげてるんだから、ちょっとは感謝してよね!」
ふふん、と鼻を鳴らしながら、アリシアは言う
我が家で暮らすようになってから、アリシアは元あった髪をバッサリと切り、一人称も『あたし』から『ぼく』に変わった
多少なりとも、自分の素性が騎士にバレないようにという配慮からだ
「へいへい、わかりましたよっと」
アリシアの肩に手を置きながら、ユーリは微笑む
ユーリとフレンは普段着ていた服ではなく、騎士の見習いの制服を身に纏っている
そう、今日は、騎士団への入団式の日なのだ
「アリシア、しばらく帰れないけど、我が家のことは任せたよ」
ゆっくりとアリシアの傍を離れながら、フレンは言う
「もー、兄さんは心配症なんだから…大丈夫だって!」
困ったように笑いながら、アリシアはそれに答えた
「だな、アリシアならなんも問題ねぇよな?」
ニカッと笑いながら、ユーリはアリシアに言う
「あったり前じゃん!ぼくを誰だと思ってるのさ」
ドヤッと自慢げな顔をしてユーリを見つめる
「ほら、ユーリ、いい加減行くよ!」
「はいよ!…んじゃ、アリシア、またな!」
フレンに呼ばれ、ユーリもアリシアから離れる
「…うん!二人とも、頑張ってねーー!!!」
一拍間を開けて、アリシアは笑顔で二人を見送った
二人が、お城の門を潜るまで、アリシアはずっと手を振り続けた
「………さてと…夕飯の材料買って帰ろうかな」
寂しさで、少し涙が溜まった目を軽く擦り、アリシアは帰路へとついた
お城の窓から、ジッと、アリシアを見つめていた影に、気づかずに………
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