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下町少女は人気者
(※フレンの妹でユーリの恋人)
「はぁ………まーだ帰って来ない……」
テーブルに突っ伏したまま誰に言うわけでもなく、呟く
ユーリが帝都を飛び出してからもう3ヶ月が経とうとしていた
魔核取り返したらすぐ帰るって言ってたのに…
それでも、ちょくちょく手紙をくれるからまだいい方だろう
ただ1つ心配なのは、たまに様子を見に来くる、あたしの3つ上の兄さんが
『僕にはただ無茶の規模が膨れ上がった様にしか見えないよ…』
と、ボソッと言っていたことくらいだ
「……買い物行かなきゃ」
ふぅ、とため息をついてから立ち上がって買い物に行く支度をする
と言っても、特に持ってくものはないんだけどね
忘れ物がないことを確認して家を出る
たまには市街地の方まで行こうと思って広場に来ると、テッド達が遊んでいた
まだ朝早いというのに、とても元気そうに走りまわってる
「あっ!アリシア姉ちゃんっ!」
「お姉ちゃんだっ!!」
あたしに気づくと、テッド先頭に数人の子供達が近寄ってくる
「みんな元気だねぇ、何して遊んでるの?」
「鬼ごっこっ!!アリシアお姉ちゃんも一緒に遊ぼうよ!」
1人が言い出すと、みんなして遊ぼうっ!と誘ってくる
「ごめんね、今から買い物行かないと行けないんだ。また今度遊ぼう?」
少ししゃがんで目線を合わせて言うけど、みんなは遊びたいようで「えー」っと落ち込んだ顔をしてしまう
「あら、アリシアちゃん、お買い物?」
「あ、女将さん!そうなんですよ、たまには市民街の方まで行って、お菓子の材料買ってこようかなって」
「そうかい。……なら、私が変わりに行ってきてあげるから、この子達の相手してあげててよ」
「え!でもそんなの悪いですよ!」
唐突に言われてしまって驚く
確かにみんなと遊んであげたいが、女将さんに買い物を頼むなんて出来ない
「大丈夫だよ、アリシア!この時間は俺ら常連しか居ねぇさ!数10分くらい問題ないぜ!」
「そうそう!遊んでやってくれよ!」
箒星からひょこっとおじさん達が顔を出して言う
「…じゃあ…お言葉に甘えて、お願いします!」
「はいよ!テッド達!私が帰って来るまでだからね!」
『はーい!!』
女将さんにお金と、欲しい物を伝えて買い物を任せた
「アリシア姉ちゃん!鬼ごっこしよ!」
「いいよ!じゃああたしが最初に鬼になるからね!」
「うんっ!!」
「よーしっ!!みんなっ!にっげろー!!」
「アリシアちゃん、頼まれたもの買ってきたよ!」
「あ!おかえりなさい!」
「うー…もーだめ…アリシア姉ちゃんもう少し手加減してよー…」
「ふふ、テッドが手加減しないでって言ったでしょ~?」
ニコッと笑って、目の前に座ってるテッドの頭を撫でながら言う
女将さんが買い物から帰って来るまで30分程の間、ずーっと遊んでいた
久々に思いっきり走って、あたしも少し疲れてしまったけど、とっても楽しかった
「じゃあ、あたしはそろそろ帰るね」
「にしても、なんでまたお菓子なんて作ろうと思ったんだい?」
「んー…なんとなくユーリが帰って来そうな気がしたから?」
「なーるほど!ユーリに作ってやろうってか!」
「アリシアの勘は当たるからなぁ、案外帰って来そうだな」
「アリシア姉ちゃん、僕にもくれる?」
「大丈夫、テッド達にも明日作って持ってくるからね」
そう言うとさっきまでの疲れは何処に行ったのやら、やったぁ!!とみんな飛び跳ねて喜ぶ
そんなみんなにまた明日ねって手を振って帰路につく
帰る途中におじさん達にも作ってくれって凄い勢いでせがまれたけど、女将さんがすっ飛んできてなんとか助かった
家について、真っ先にキッチンに向かう
「さーてと、作るとしますかっ」
いつもつけてるエプロンをつけて、金色の長い髪を結きながら呟いた
~数時間後~
「ん、この前より上手く出来たかな」
味見用に焼いたアップルパイを1切れ摘む
ユーリが居ない間に色々作っていたから、かなり上達した気がする
…まぁ、それでもユーリには敵わないだろうけどさ
アップルパイ以外にもユーリ好みの甘いクッキーや、兄さん用に少し甘さ控えめのクッキーも作った
ふと、窓の外を見るとだいぶ日が昇っているから時計に目をやると、既にお昼をだいぶ過ぎていた
「ありゃぁ……全然気づかなかった」
頬を軽く掻きながら苦笑する
普段から元々そんなに食べないから、完全に気づかなかった
お昼ご飯食べてないのがユーリにバレたら怒られるだろうなぁ…と思っていると
コンコンコンッ
と、不意に玄関のドアがノックされた
~ユーリside~
「…………」
「?ユーリ、何書いてるんです?」
「っ!?エ、エステルか……急に声掛けないでくれ…」
オレらは今、ハルルの街で一旦休憩してる
休憩中にシアに手紙を書いてる途中、後ろからエステルに突然声を掛けられてびっくりしてしまった
「何よ青年、手紙書いてたの?」
「っ!?」
いつの間に横に居たのか、おっさんが手紙を読もうとするから慌てて隠す
「あら?私達には言えないことかしら?」
何か面白いおもちゃでも見つけたかのようにジュディが聞いてくる
…言えないっつーか、言いたくねぇ
あんな可愛いシアをこいつらに会わせるとか、絶対嫌だ
そもそも、フレンだって自分に妹が居ることを隠してるのだ
理由は同じ、会わせたくないから
ただ、フレンの方は余計なことを教えそうだから、が理由らしい
答える気がなかったからふっと顔を背ける
すると、いきなり窓を『何か』が叩いた
『何か』の正体なんて分かっている
カロルが窓を開けようとするから、それを遮るように間に割って入って窓を開けると、シアが飼ってる小鳥が入ってきた
「あれ?この小鳥……ノードポリカでも見たよ?」
「あたしも、マンタイクで見かけたわよ」
「おっさん、ダングレストで見かけたわよん?」
「…………」
最悪だ、まさか見られてるとは思っていなかった
無言で小鳥の足に付けられた手紙を取って、見られないようにして開く
『ユーリっ!アップルパイ作ったから早く帰って来てっ!いい加減寂しいよ…』
見慣れたシアの字でそう書いてあった
「っ!!」
……ついに食い物で釣ろうとし出したな……!
いや、まぁ、それはいいんだよ、それは
……こんなこと書かれたら帰るしかねぇだろ…!
「ユーリ?」
手紙を見たままかたまったオレを心配してか、エステルが顔の前で手を振ってくる
「……悪ぃ、カロル。ちょい野暮用思い」
「そうはいかないわよ、青年?今の手紙、なーに書いてあったのよ?」
部屋を出ようとすると、おっさんに手を掴まれた
…邪魔、もの凄く邪魔
「……なんでもねぇ、おっさんには関係ねぇよ」
「何よ…水臭いわねっ!教えてくれてもいいでしょーよ!」
「いや無理、絶対教えらんねぇ」
そう言うと、あからさまに不機嫌そえな顔をしてリタが聞いてくる
「なによ、あたし達が信用出来ないから言えないわけ?」
「いや…そうゆう意味じゃねぇんだけど……」
ガシガシとおっさんに掴まれてるのと逆の手で頭を掻く
「じゃあ、彼女さんからかしら?」
唐突にジュディに当てられ固まってしまった
…嘘だろ…おい……気づかれてたのかよ……
「ま、またまたぁ、そんなわけ…」
反射的にふいっと顔を背けてしまう
いよいよ全員にバレた
それに気づいたのはおっさんに両肩を掴まれてからだ
「せ、青年……?嘘……よね?」
必死になって聞いてくるおっさんが鬱陶しくて、ヤケになって言ってしまった
「…いちゃ悪ぃかよ」
ボソッと言うと等々おっさんが石化する
……このまま叩き割ってやろうか
「ユーリ……彼女さんが居たんですね…」
ちょっとショック気味にエステルが言ってくる
まずい……フレンに知られたら何言われっか分かったもんじゃねぇ
「それで?なんて言われたのよ?」
「…いい加減、1度帰ってきてくれと」
「じゃあ、みんなで行こうよ!帝都!僕会ってみた」
「会うのは却下っ!!特におっさんはな」
会いたいと言うカロルの意見を真っ向から却下するが、当然文句を言われたわけで…
結局、会うだけならと約束して渋々了承した
「おっ!ついたわよん!」
やけにテンション高めにおっさんが言う
帝都の近くでバウルに降ろしてもらって、下町の入り口から入る
シアの住んでる所は、箒星の前の通りだ
広場に行くと、テッド達が遊んでいた
「あっ!ユーリ!!おかえりっ!!」
「久しぶりだな、テッド、やけに嬉しそうだな?」
「あのねあのねっ!今朝、アリシアお姉ちゃんが遊んでくれたのっ!」
「そうなんだ!後、明日お菓子作ってくれるって!」
嬉しそうに目を輝かせてテッド達は言う
シアは下町でもかなり人気者で、特に小さい子供達からは凄く好かれている
…同じくらいおじさん共に気に入られてるのは癪だが
「ん?ユーリじゃないか!それに、あの時のお嬢さんまで…」
散歩をしていたんだか、爺さんがシアの家の方向から歩いてきた
「お久しぶりです」
「まったく、いつまでもアリシアをほっといてうろつきおって」
「ほっといてなんてねぇっての、ちゃんと手紙で現状報告してたっつーの」
「ふん、まぁいいがの……」
「ユーリっ!やっと帰って来たねっ!」
「女将さん…っ!?」
「まったく、アリシアちゃん置いていったってのにいつまでも帰って来ないで、一体何してたんだいっ!」
箒星から女将さんが出てきてそうそうに怒られる
……オレ、女将さんには一生勝てねぇ気がする
「まぁ、無事に帰って来たからいいけどね…」
「ユーリって、下町の人から愛されてるよね」
「ふふ、そうね」
後ろでジュディとカロルがなんか言ってたが、聞かなかったことにした←
「おっ!帰って来たなっ!やっぱアリシアはすげぇな!」
「あん?どうゆうことだ?」
「今朝言ってたんだよ、『そろそろ帰ってくる気がする』ってさ」
「……そーかい……」
こりゃまたやられたな、と苦笑いする
「シアは今家か?」
「そうじゃと思うぞ、さっき家の前通ったら甘い匂いがしてたしの。きっとお前さんにとお菓子でも作ってたんじゃろ」
それを聞いた瞬間、カロル達を置いてシアの住んでる家まで走った
…呼ばれた気がしたがスルーだ
少ししてシアの家につく
いきなり入ると驚くだろうから、ドアをノックした
……まぁ、どっちにしろ驚くだろうな……
「はーい………って…………」
ドアを開けるとそこには、帰って来るのをずっと待っていたユーリが、気まづそうにして立っていた
突然のことにポカーンとするが、そう言えば今朝リーナ(小鳥の名前)に頼んだ手紙は昼前には届いていたはずだ、と思い出した
「あー…っと……ただいまっつーか……帰って来んの遅くなって悪ぃ…」
バツが悪そうに目線を少し反らせてユーリは言う
本当は、馬鹿って叫んじゃいたいけど
ちゃんと、帰って来たし、謝ってるし
「……本当、遅いよ…でも、ちゃんと帰って来てくれたからいいよ」
そう言うとユーリはちょっと驚いた顔をする
そんなユーリに思いっきり飛びついて
「おかえりっ!ユーリ!」
って、笑顔で言う
「…おう、ただいま、シア」
そう言って頬にキスしてくれる
久々のユーリの温もりが嬉しくって、ずっと抱きついてたいけどお菓子あるし
少し離れて今度はユーリの手を取る
「中入ろっ!お菓子いーっぱい作ったのっ!」
「ははっ、そりゃ楽しみだわ」
ニコニコして言うと、ユーリも微笑んでくれた
「うまっ!しばらく会ってねぇうちにかなり腕上げたな、シア」
「えへへ、そうかな?」
すっごい美味しそうにあたしの作ったのお菓子を食べるユーリ
とっても嬉しそうに食べるから、あたしも嬉しくって自然と顔がほころぶ
「…やべぇ、まだやんなきゃなんねぇことあっけど行きたくねぇや」
アップルパイを食べながら言っている
「あたし的には一緒に居てくれるの嬉しいけど、ちゃーんとやるって決めたことやりきってほしーな」
ちょっとムスッとして言うと、冗談だよ、と言ってくる
…嘘だ、あの顔は本気の時の顔だもん
「…あ、そーいや……あいつらにちょっとだけ会わせてやるって言ったの忘れてた」
ケロッといつもの顔に戻って言う
……あいつら?
「あいつらって??」
「一緒に旅してるやつらだよ
本当は会わせたくなんてなかったんだがな…」
ユーリは苦笑いしながらそう言う
ユーリと一緒に旅をしてる人達……か……
手紙で教えてくれてたけど、面白そうな人達だと思ってた
…兄さんに1度会ってみたいと言ったらすごい反対されたけどね
「あたしは会ってみたいなぁ…兄さんに怒られそうだけど…」
「…2人ほど、余計なこと教えそうな奴がいるからな」
「?余計なこと??」
何のことかわからず首を傾げる
「シアは知らなくていいんだよ」
そう言って手を伸ばして頬を撫でてくる
その身長と腕の長さ、あたしにわけてよ…
頬を撫でてくる感覚がちょっとくすぐったくて、思わず目を細めて首をすくめる
すると、ガタッと音がした
何かと思って目を開けようとする前に何があったか把握した
ユーリが立ち上がってあたしを抱きしめに来ていた
「…本当、シア可愛いわ」
クイッと、あたしの顎を軽くあげながら言う
抱きしめられるのも、こうやって目線を合わさせられるのも久々で、ドキドキと心臓がうるさい
「オレ、シアのこと手放せそうにねぇや」
「元々離れる気、ないよ?」
「ははっ!それもそうか」
そう言って唇を重ねた
久々にくる甘い感覚にあたしの頭はついていけそうにないや
どのくらいの時間してたかなんてわからないけど、流石に息がつらくなってきた
トントンっとユーリの胸を軽く叩くと、名残惜しそうにしながら離してくれた
「ふぁ……」
「っ!/////シア、その顔マジで反則だわ///」
顔を隠すようにあたしに抱きついてくる
でも、あたしの身長だとユーリの胸のあたりに頭が来るわけで、彼の鼓動がすぐ近くで聞こえる
あたしと同じで、鼓動が早い
同じようにドキドキしててくれてのがちょっと嬉しくって思わずニヤけてしまう
「………シア、ちゃんと飯食ってるか?」
不意にユーリはそう聞いてくる
「ふぇっ?!な、なんで…??」
「いや、なんつーか……前よりも体が細くなったっつーか」
ギクッと肩があがる
……バレた、食べてないのがバレた
「…その反応、食べてねぇな??」
「えっと……あの………」
しどろもどろしていると、ユーリはため息をつく
「…ふぅ…そろそろ1度戻らねぇと、またギャーギャー文句言われそうだわ……飯の件は後でじっくり話そうか??」
あたしから離れながらそう言う
本当はもう少し抱きしめてて欲しいけど、今ユーリにはやらなきゃいけない事があって、一緒に旅をしてる仲間がいる
その人達をほっといて欲しくないから、わがままなんて言えないけど…
……というか、今このままで居ても怒られるだけなのだが………
「シア、今回にすぐ帰ってくるよ。だから少しだけ待っててな?」
頭を撫でながら言ってくる
「…わかった、待ってる!……でも、お説教は勘弁かな……」
苦笑いしながら言うと、もう1度唇を重ねてきた
今度は触れるだけ、だったけどね
「シア、行ってきます」
「行ってらっしゃい、ユーリ」
そう言ってユーリは出て行った
ユーリが居なくなって、1人の空間
さっきまで居たからか、少し寂しい
「……さてと、今のうちに片付けなきゃ」
軽く頭を横に振って食器を片付け始める
………あの短時間でほとんど食べきったよ……………ユーリ……
シアの元を後にして広場に向かったが、そこに居たはずの仲間達が居なくなっている
何処に行ったんだよ…
「あ、ユーリ!」
「お、居た居た」
箒星からカロルが出て来た
恐らく女将さんが招き入れたんだろう
「ねぇユーリ、今日と明日、ちょっと帝都で休憩しよ!」
「……は?」
唐突に言われた言葉に頭がついていかない
…どうしたんだ?急に……
「さっき、一瞬だけどチラッと見えたんだよ!ユーリの彼女さんっ!」
「んなっ!?!!」
「あら、随分早いお戻りね、可愛い彼女さんをちゃんと会わせてくれる気になったのかしら?」
ジュディも箒星から出て来ながらそう言う
全員に見られてたのかよ……これ…
勘弁してくれ…
頭に手をついてうなだれる
「ユーリ、今日と明日は一緒に居てあげてよね。ここの女将さんが言ってたけど、すっごい我慢してたみたいだからさ!」
「そうね、おじ様もお酒飲んで潰れてしまってるしね」
「おや、ユーリ!」
「…女将さん…頼むから余計なこと言わねぇでくれよな……後、爺さん達にも釘指しておいてくれ……」
「はいよ!わかったから、この子達のことは任せてアリシアちゃんのとこ戻ってやんな!」
軽くため息をついて、女将さんにもう1度念を押してシアの家へ戻る
……本当、頼むから余計なこと言わねぇでくれ………
フレンに怒られんのはオレなんだぞ……
家について、今度はノックせずにそのまま入った
リビングにシアの姿がなくて、一瞬何処かに出かけたのかと思ったが、キッチンの方に居たのが見えた
洗い物をしているらしく、まだオレに気づいていなさそうだった
そっと近づいて後ろから抱きつくとようやく気がついた
「わっ!ユーリ!!もう……いきなり抱きつかないでよ……びっくりしたじゃん…」
オレを見上げながら、頬を膨らませて言ってくる
可愛くって思わず少しニヤけてしまう
「悪ぃ悪ぃ、ただいま」
チュッと音をたてて頬にキスすると、すぐいつもの笑顔に戻っておかえりって言ってくる
「あれ、連れて来てないの?」
「ん?あぁ、女将さんが気ぃ効かせてくれてな、あいつらの面倒みててやるから、シアと居ろだってよ
それから、旅出んの明後日になったから明日は1日一緒に居られるぜ」
そう言うとパァっと花が咲いたように笑顔になる
「本当っ!?」
「おう、本当だよ」
とっても嬉しそうにはしゃぐシアが可愛くて、女将さんとカロルに心ん中で礼を言った
「ほーらシア、そんなにはしゃいでっとお皿割っちまうぜ?」
「あっ、やばっ!それもそうだった!」
慌てて持っていたお皿を置くと近くにあったタオルで手を拭いていた
丁度最後だったらしい
「ねっ!ユーリ!久しぶりにユーリが作ってご飯食べたいっ!」
「はいよ、シアの為ならいくらでも作ってやるさ」
「やった!!」
「………でーも、その前に」
そう言ってくるっとシアをオレの方に向かせる
「…言いたいこと、わかってるよな?」
そう言うと、若干引きつった笑顔を浮かべる
「………な、なんのこと……かな………?」
「へぇ?とぼけるんだ??」
シアをお姫様抱っこする
「ちょっ…!!ユーリ……!!」
「…………覚悟、出来てるよな??」
そう言ってニヤッと笑う
~次の日~
「んー……どっちにしよう……」
「ん?どっちも買えばいいんじゃねぇの?」
あたしは今、ユーリと買い物に来ている
なんでかって言うと昨日、寝る前にユーリがお揃いでアクセサリーでも買おうと、珍しく言ってきたから
久々に一緒に寝れるだけで嬉しかったのに、初めてユーリがそう言ってきたから更に嬉しくなっちゃって、ちょっと眠れなかったのは内緒
……因みに、昨日、あの後何があったかも秘密だ
で、たまたま見つけたペンダントで迷ってる
両方とも宝石がついてるんだけど、片方は暗い紫で、もう片方は赤い色をしてる
「えっ!?でも…」
「たまにはいいだろ?」
ニッと笑ってユーリは言ってくる
あたしもニコッと笑って頷く
「んじゃ、ちと待っててな」
ポンポンっと頭を撫でると、お店の中に入っていった
ユーリが出てくるまでそんなに時間はかからなかった
「待ったか?」
「ううん、全然っ!」
「なら良かったよ、シア、ちょい後ろ向いてみ?」
「?うん」
ユーリに言われてクルッと後ろを向く
すると、先程買ってくれたペンダントを首に掛けてくれた
嬉しくって振り返ると、ユーリもペンダントをつけていた
「店員に聞いたらこれ、元々ペア用なんだってさ。丁度いいだろ?」
ニヤッと笑って言ってくる
嬉しすぎて思わずユーリに飛びついてしまった
「おっと…ほらシア、ここじゃ邪魔になっから、後でな?」
「あ……それもそっか」
あはは…っと苦笑いしてユーリから一旦離れる
その代わりにユーリの右手に左手を重ねた
「んじゃ、帰るとしますかね」
「だね!」
そう言って下町へと帰って行った
ユーリは赤、あたしは紫のペンダントをつけて
「うー………」
「ん?どうしたんだよ、急に唸り出してよ」
夕飯を食べてる途中、シアが急に唸り出した
何事かと思って聞くと、返ってきた返事はちょっと以外なものだった
「……だって、明日になったらまたユーリ居なくなっちゃうから……」
あたしもう少し居たいのにっと小声で付け足している
流石に少し驚いた
普段はあまり言わなかった事だから
オレがどこ行くにも、早く帰って来てね!と言うだけだったから
3ヶ月は放置しすぎたか…と少し後悔する
本当はあの時、連れて行こうとした
シアも多少は剣が使えるし、オレと違って術も使える
連れていくには申し分ないだろう
ただ、オレの心情的に嫌なんだ
もし怪我でもしたらって考えると、到底連れてく気にはなれない
いや、無理、絶対嫌だ
それに今はおっさんとかいう絶対一緒に居させたらいけない奴がいる
そもそも、シアを連れ出したらあの妹馬鹿兄貴に何言われるか分かったもんじゃねぇ
「……ねぇ、あたしもついて行っちゃ駄目?」
「っ!?!!!ゲッホ!ゲホッ!!」
紅茶を飲もうとして唐突に言われてしまい、危うく肺に入りかけた
「ちょっ!ユーリ、大丈夫っ!?」
ガタッと立ち上がってオレの背中をさすってくれる
いや、今の問題はそこじゃねぇんだ…シア
パシッと手を掴むと驚いた顔をする
「……シアさん……?今……何つった……?」
多分、今鏡見たらかなり引きつった顔してんだろうなと思いながら聞く
「え?だから…あたしも一緒に」
「やだ、絶対嫌だ、お前怪我させた時にオレが1度後悔するから嫌だ。後、フレンに雷落とされる」
「だって!兄さんとユーリだけずるいもんっ!あたしだって外行きたいっ!」
「オレもフレンも観光してるわけじゃねぇんですけど…」
「そんなこと知ってるよ……でももう1人で待つのやだもん……」
ちょっと涙目になりながら訴えてくる
やめてくれ……マジで勘弁してくれよ……
そんな顔されたら断れなくなるだろ…!
「でもな、シア?本当に危険なんだって。お前巻き込みたくねぇの」
そう言って頬を撫でる
それでもどうしても嫌らしくて
「…じゃあいいもん……1人で勝手に行くし……」
そう言われ頭がフリーズする
待て待て待て待て、今何つった……?
「……は………はぁっ!?!!」
「だって兄さんに言ってもヤダって言われるし、ユーリもヤダって言うんだもん!だからもう勝手に行くっ!」
ふぃっと顔を反らせて言う
「もっと駄目に決まってるだろ!?!!」
「じゃあ連れてってよ!!」
「頼むから言う事聞いてくれよ……シア……」
「やーだー!!!あたしも行くのっ!!」
オレに掴まれていない方の腕をバタバタさせながら言ってくる
こうなったら意地でも言う事を聞かなくなる
…頼むから言う事聞いてくれ……
~最終日~
「…………」ムスッ
「シア…そんなに不機嫌になんないでくれよ…」
昨日は結局、タイミングよくフレンから手紙が届いて、『ユーリと一緒だろうと一緒じゃなかろうと、結界の外に出たらどうなるか……わかっているよね?』と、脅迫じみた手紙が送られてきたシアが折れた
まぁ…あいつが本気で怒った時の怖さはシアが1番よく知っているだろうしな
「…………だって…………」
テーブルに突っ伏したまま泣きそうな声で言う
「オレもフレンも、シアに怪我させたり、危ない目に合わせたかねぇんだよ」
傍に寄って頭を撫でる
「わかってるけど……」
「……じゃあこうしよう、次オレが帝都戻って来てまた旅出る時は連れてってやるよ」
そう言うとガバッと起き上がる
驚いた様な、でも少し嬉しそうな目をしている
「……本当……?」
「本当、絶対だよ」
「……なにがあっても?」
「おう、まーた厄介事持ってたとしてもだ」
「絶対の絶対……?」
「オレが嘘ついたこと、1度でもあったか?」
パァっと笑うとオレに勢いよく飛びついてくる
本当可愛すぎだっての
飛びついて来たシアをそっと抱きしめる
本当ならこのまま連れてってやりたいが、フレンから手紙が来た以上それは出来ない
……手紙来なかったら連れてってたな……間違いなく
「約束、だからねっ!ユーリっ!」
「おう、わかってるよ」
「ふふ、じゃあ久々に少し剣の稽古しとかないとかな。最近やってないもん」
「んなことしなくても充分だろ?なんたってシアに剣教えたの、あのフレンなんだぜ?それに、お前はオレが全力で守るっつーの」
「それでもあたしがやりたいのー!」
抱き合ったまま、どちらともなく笑い出す
正直もうここから離れたくないが、そうも言ってられない
「さてと……そろそろ行かねぇとな」
「……ん、そっか」
名残惜しそうに離れる
やっぱりちょっと寂しそうにしている
「また手紙出すからな、今度はたっくさん」
ニカッと笑って言う
「…うん!あたしもいっぱい書くっ!」
ようやく笑ってシアも言う
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、ユーリっ!」
広場に着くと、既に仲間達は準備が終わってるようだった
「あ、ユーリ!もう、遅いよ!」
「悪ぃ悪ぃ、カロル、サンキュな」
「あら、随分嬉しそうね。余程いい事でもあったのかしら?」
「ん?まぁな」
「おりょ?青年よ…!そのペンダントなによっ!?どうしたのよ!?」
首に掛けたペンダントを見ておっさんが唖然として聞いてくる
…本当、面倒なこった
「あん?何って…」
「ユーリっ!!!」
急に名前を呼ばれて振り向くと、何故かシアが走って来ていた
「っ!?!シアっ!?」
慌てて彼女の元に駆け寄る
「ふーん、あの子がユーリの彼女ねぇ…
なんか、どっかで見たことある顔つきしてるわよ?」
「確かに……ちょっと、フレンに似てます?」
後ろからリタとエステルの会話が聞こえた
…悪ぃ、フレン、バレた
「どうしたんだよ、そんなに走ってさ」
「はぁ…よかった……渡すの忘れてたから……」
「?何をだ?」
「昨日作ったお菓子!みんなで食べて!」
そう言って、甘い香りのするバスケットを手渡して来た
「サンキュ、シア」
チュッと目元にキスする
「ふふ、ラブラブね」
「……よく見たら、彼女さんも同じペンダントつけてるわね……青年っ!おっさんにも紹介しなさいよっ!」
「あん?おっさんにだけはごめんだな。それと、こいつの兄貴に先に許可取ってきてくれよ」
パタパタと手を振って言う
その言葉でエステルとリタ、それにジュディは気づいたようだ
「やっぱり!フレンの兄妹なんですね!もう…なんでフレンも教えてくれなかったんでしょう…!」
「なるほどね、あんたが合わせようとしなかったのはそうゆう理由ね」
「うふふ、じゃ今度会ったら問いただしましょ」
楽しそうに3人は話している
シアはちょっと苦笑いしてそれを見ている
「もう……ユーリ、兄さん巻き込んじゃダメだよ?」
「元はと言えばあいつが喋んなって言ったの、自業自得だな」
「あはは……ユーリ、気をつけてね」
「おう、わかってるさ、シアも勝手に行こうとすんなよ?」
行く前にもう1度だけキスしてシアから離れる
「さ、おっさん、さっさと行くぞー」
「まっ!待ちなさいっての!青年!!痛いっ!痛いからっ!!」
シアの方に吹っ飛んで行こうとしたおっさんの首根っこを捕まえて引きずるようにして出口に向かう
それをエステル達は慌てて追いかけてくる
チラッとシアの方を向くと、手を振っていた
それに応えるように微笑んでオレも手を振り返した
【サブタイトル:甘い香りに誘われて】
~後日談byユーリside(会話のみ)~
「ちょっと休憩しませんか?」
「賛成っ!!ユーリっ!!さっき貰ったお菓子食べようよ!」
「へいへい、ちょっと待てって」
「にしてもあたし達の分のお菓子作ってるなんてすごいわね」
「あら、あなたが褒めるなんて珍しいわね」
「う、うるさいわね…」
「ほらよ」
「わぁ!すごい沢山ありますよ!」
「あれ?レイヴン、食べないの?」
「あー……おっさん、甘いの駄目なのよね…」
「あん?確かビターのクッキー入ってたぜ?シアも作れるが甘いもん駄目だからな」
「これじゃないかしら?別の袋に入っているし」
「むむ?どれどれ………お!これならおっさんも食べれるわ!」
「へいへい、よかったなっと」
「このガトーショコラとかもすっごく美味しいです!」
「ふふ、きっとあなたの為に一生懸命頑張ったのね」
「そうね……確かにすごく美味しいわ」
「そりゃあよかったわ、シアの手紙にも書いとくか」
「あれ?ユーリ、食べないの?」
「オレには別で、特別甘いの作ってくれてんの
ほらラピード、お前にも作ってくれてるぜ」
「ワンッ!!」
「ラピードも嬉しそうですね!」
レイヴン、カロル、小声で
「……やっぱりおっさん、青年の彼女だって信じたくないわよ……」
「僕も……こんなに色々出来る人が彼女だなんて………」
「…おい、聞こえてっぞ、お前ら」
(ユーリ!それ一口頂戴っ!)
(駄目だっつーの!)
(いいじゃないの、そのくらい)
(あっ!おい!カロル!そっちの食えっての!)
(あーあ、追っかけ始めたわよ)
(カ、カロル!返してあげてください!)
~フレンside(会話のみ)~
「あっ!兄さんっ!!」
「アリシア!どうしたんだい?」
「はいっ!クッキー作ったの!」
「!!と言うことはユーリにも作ったのかな?」
「…なんであたしが毎回お菓子作る度にそう言うのさ……まぁ、そうなんだけどね」
「…前回僕とユーリに渡すのを間違えただろ?」
「こ、今回はユーリが確認したもん!」
「ふぅ…なら良かったよ」
「あっ!後ねっ!ユーリと一緒に旅してる人達にもあげたんだ!」
「……まさかとは思うけど、ユーリと一緒にいた人達と会ったかい?」
「?お話はしてないけど、チラッと見えたよ?」
「なっ…!!!」
「え??なんか、まずかった……?」
「あ、いや……話をしてないならいいんだけど……」
「ふーん……あ、でもユーリが、髪ボサボサなおじさんに、『紹介して欲しいならこいつの兄貴に許可取ってこい』って」
「アリシア、ユーリが来たのはいつだい?」
「ふぇっ!?い、今さっき出て行ったとこ……だけど」
「わかった!また様子見に来るから、手紙でも言ったけど絶対に結界の外に出ちゃ駄目だからねっ!」
「あっ!兄さんっ!!…もう……兄さんもユーリも……人の話聞かないんだから……」
(ユーリっ!!!ようやく見つけたっ!)
(フレンっ!?おまっ!!一体どっから沸いたっ!?!!)
(そんなことよりも、アリシアから聞いたぞ!!なんで余計なこと言うんだっ!!)
(本当のこと言っただけだろっ!?)
(そもそもアリシアを会わせるなとあれだけ言ったのに!)
(シアがいきなり追っかけて来たんだよ!オレだって会わせる気なんてなかったっつーの!)
(おっ!!青年っ!!ちょっとおっさんにも妹ちゃんを)
((レイヴンさん/おっさんにだけは却下っ!!!!))
(……来て早々、喧嘩かと思えば……)
(仲いいんだか悪いんだか分からないわね)
(あら?楽しくていいじゃない)
(ふ、2人とも、穏便に行きましょう?)
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