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お酒はほどほどに
「うひゃ〜満開ねぇ〜」
ござを片手に小さく口笛を吹きながら、レイヴンはハルルの樹を見上げた
ユーリ達一行は花の街ハルルへとやって来ていた
やるべき事もある程度片付き少しのんびりしようかという話になり、それならば、以前ハルルの長と約束した花見でもしようかとなったのだ
「おーい、おっさん!感動する前にさっさとござ敷いてくんない?」
「そうだよ!荷物置けないじゃんかー!」
その声にレイヴンが振り返ると、両手にお弁当やら飲み物なんかを抱えて呆れ気味に見つめてくるユーリとカロルの姿が目に映る
その2人の後ろから同じく両手に荷物を抱えたフレンとその隣を歩くラピードの姿も視界に映った
「すまんすまん、つい見惚れちゃってたわ」
ヘラッと笑いながらそう言うと、その場にござを敷いた
その上に、2人は持って来た荷物を下ろす
「見惚れてしまうのはわかりますが、先にやる事をやってくださいね、レイヴンさん」
後から来たフレンはニッコリと笑いながら声をかけ、ござの上に荷物を下ろした
彼の言葉にレイヴンはただ苦笑いして肩を竦めた
「相変わらず満開だね〜」
「うむ、とっても綺麗なのじゃ!」
「ふふ、そうね」
楽しそうな声に彼らが振り返ると、アリシアとパティ、ジュディスが飲み物を抱えて歩いて来ていた
「全く……!ちょっと用意しすぎなんじゃない?!」
「リタ、そんなふうに言わないでください。長もわたし達の為に一生懸命準備してくださったんですから」
その3人の後ろからお弁当を抱えて、少し不機嫌そうなリタと、そんな彼女を宥めようとしているエステルがやって来る
「魔導少女は不機嫌ねぇ……せっかくの花見なんだから、楽しみましょーよ」
ござの上に荷物を置くリタを見ながら、レイヴンは苦笑いした
「楽しむねぇ……花見ながら、飲んで食べての何が楽しいんだか」
呆れたようにそう呟きながら、リタはため息をつく
こんな事をするくらいならば、研究でもしていたいとでも言いたげな目でハルルの樹を見上げていた
「たまにはこうしてのんびり過ごすのもありだと思うけどなぁ」
そんなリタを、アリシアは少し困ったように笑いながら見つめる
アリシアの声に、リタは不機嫌そうに彼女に顔を向けた
「大体、ここ最近ずーっと研究ばっかしてたじゃん?息抜きしとかないといい結果も出ないよ?」
そう言いながら、アリシアは首を傾げる
「……ま、それもそうね」
ようやく諦めたのか、小さくそう呟くとリタはござの上に腰を下ろした
それにならってアリシアたちも腰を下ろす
「ねぇ!早くお弁当開けよう!」
声を弾ませながらそう言って、カロルがお弁当箱を指さす
「ははっ、カロル先生は花より団子ってわけだな」
クスッと笑いながらユーリは言うと、箱を開けていく
「わぁ……!とっても美味しそうですね!」
「うふふ、そうね」
綺麗に詰められた中身を見て、目を輝かせているエステルを見て、ジュディスは微笑んだ
「んー……確かに美味しそうだけんども……おっさんはこっちの方が…」
そう言いながら、レイヴンが酒瓶に手を伸ばした
「おっさん……真っ昼間から飲む気かよ」
「花見と言ったら酒でしょーよ!」
ため息をついたユーリを、酒瓶を抱きしめながらレイヴンが見つめる
そんな彼にユーリたちは若干呆れていた
「まぁ……いいんじゃない?たまにはさ?」
苦笑いしながらアリシアは隣に座っているユーリを見つめた
「……ったく……おっさん、飲みすぎんなよ?」
止めるのを諦めたらしいユーリは、レイヴンにそう声をかけた
「はいはーい、わかってますって。ちゃんと節度は弁えますよ」
ほんの少し嬉しそうに笑いながら、レイヴンは酒瓶の栓を抜いた
「……お酒ってそんなに美味しいの?」
嬉しそうなレイヴンを見ながらカロルが首を傾げる
「人に寄るとは思うけど……カロル、君はまだ飲んではいけないよ?」
少しだけ飲みたそうな雰囲気のカロルに、フレンは釘を刺した
さすがにまだ子どものカロルたちに飲ませるわけにはいかない
「そーそ、お酒は大人になってからだね〜」
ニコッと笑いながら、アリシアも酒瓶を手を伸ばそうとした
それを、ユーリは慌てて腕を掴んで止める
「バッカ!お前はダメだっつーの!」
「えっ!?なんで?!」
「アリシア……君はすぐ酔うんだから、ダメに決まっているだろう?」
「シアは酔うと、後が大変なんだから頼むからやめてくれって」
止められたことに納得いかなさそうな彼女を、ユーリとフレンは必死で止めていた
アリシアは超がつくほど酒に弱く酔いやすい
飲める年齢になってから、2人は何度か彼女と飲みはしたものの……
その度に酔った彼女の相手をするのが、正直面倒であったのだ
「えー……たまにはよくない?」
「勘弁してくれって……酔ったお前の相手すんの、結構大変なんだって言ってんだろ?」
困り気味なユーリを見て、アリシアは渋々伸ばそうとしていた手を引っ込めた
彼女が諦めたことに、2人はホッと息をつく
「シア姐、そんなにお酒弱いのかの?」
そんな3人のやり取りを不思議そうな顔をしてパティは見ていた
「らしいよ?私はぜーんぜん、覚えてないけど」
「あんた……それタチ悪いわよ……」
ケロッとして言ったアリシアを、リタは苦い顔をして見つめた
親友とはいえ、リタも彼女が酔ったところは見たことがなかった
「あはは……とりあえず、食べましょう?」
エステルは手を合わせながらそう言って、ユーリたちを見回した
一同は頷くと、彼女と同じように手を合わせて「いただきます」と言ってお弁当を食べ始めた
楽しくおしゃべりをしながら、彼らは花見を始める
時折ハルルの樹を見上げながら食べているアリシアを、酒瓶片手にレイヴンがジッと見ていた
ーー食べ始めて暫く経った頃ーー
「そういえば、さっき長から聞いたのだけど」
不意に、ジュディスが口を開く
「聞いたって、何をじゃ?」
「ハルルの樹から落ちてるく花びらが、地面に着く前に取ると願い事が叶うそうよ」
首を傾げたパティにクスッと笑いながら、ジュディスは答える
「それ、迷信でしょ?」
呆れたようにリタはそう言ってジュディスを見た
「んー、それが、そうでもないんだよね〜」
そんなリタを、アリシアはニヤッと笑って見つめた
「え?そうなんです?」
「うん。ハルルの樹って、ハルモネア、ルルリエ、ルーネンスって3つの花が合わさってるでしょ?その内の1つ、ハルモネアの花びらは地面に落ちる前に取れたら本当に願い事が叶ったって、カペラたちが言ってたよ」
ニコニコと笑いながらアリシアは答える
「……それ、さすがに冗談なんじゃ……」
訝しげにアリシアを見つめてカロルは呟く
確かににわかには信じ難い話なのだが……
「さすがに違うと思うなぁ。だって、あのシリウスだってそう言ってたし……それに当主だった頃、まだハルルの樹がなかったベガだってそう言ってるし」
アリシアがそう答えた途端、カロルとフレンが立ち上がった
「ボク、ちょっと試してみる!!」
アリシアがポカーンとしていると、カロルは大慌てで舞っている花びらを取ろうと駆け出した
対してフレンは無言で樹の傍に近寄って行った
「あー……っと、フレン?何してるの?」
遠慮気味にアリシアは問いかけるが、大方の予想はついていた
「……いや……ベガがそう言っているのであれば、叶うんじゃないかな、と……」
少し聞き取りずらい声でフレンは答える
その言葉の意味を理解したらしいユーリは、血相を変えて立ち上がる
「バッ!!おまっ!!それ今すぐやめやがれ!!」
そう言いながら、フレンに飛びかかるが、案の定簡単に避けられてしまっていた
「別にいいだろ?実際、本当に叶うかどうかは掛けなんだから、試すくらい」
「ふざけんな!!それで叶いでもしたらシャレになんねえっつーの!!」
「あははっ!なら、力ずくででも止めてみたらどうだい?」
「言われなくともそのつもりだっつーの!!」
そう言いながら、ユーリはフレンを必死な顔で追いかける
対してフレンは少し楽しそうに笑いながら、ユーリから逃げつつ花びらを取ろうとしていた
「あんた……あれ、ほっといていいわけ?」
「んー……まぁ、日常茶飯事だしね〜……って言うか、どれがハルモネアの花びらなのか、わかってるのかな……」
子どものように走り回っている幼馴染たちを見つめながら、アリシアは苦笑いした
まだどの花びらがハルモネアの花びらなのか、説明はしていなかったのだが……
2人はもう、聞きそうにはなかった
「どれか分からずとも、楽しければそれでよいのじゃ」
ニコッと笑うとパティも立ち上がる
「どれ、うちも試して来ようかの」
そう言って、彼女も3人の方へと向かって行った
「……ちょっと、楽しそうです」
ジーッと4人を見つめながら、ポツリとエステルは呟いた
「ふふ、そうね。私たちも試してみないかしら?」
「あたしはパス。願い事は、自力で叶えたいから」
立ち上がりながら問いかけてくるジュディスに、リタはそう答えるとまたお弁当を食べ始めた
エステルはどうしようかと迷ってはいたが、結局立ち上がってジュディスと共に先に行ったメンバーの方へと歩いて行く
「はっはっ!楽しそうね〜若人は元気があっていいわ〜」
ニコニコと楽しそうに笑いながら、レイヴンは彼らを見た
「……若干1名、楽しんでなさそうだけど?」
ジトーっとリタが見つめる先にいるのはユーリだった
確かに、ユーリからしてみれば楽しんでいる余裕はないだろう
「ホーント、フレンも諦めが悪いよねえ」
困ったように笑いながら、アリシアは尚2人を見つめていた
「……ところで、アリシアちゃん?」
2人を見つめていると、不意にレイヴンが彼女を声をかける
「んー?」
「……お酒、飲みたいなら今のうちじゃない?」
ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべながら、レイヴンはアリシアを見た
ほんの少し、彼女は目を見開いてレイヴンを見返す
「……あたし、何も見てないから」
「…………フン………」
リタはそう言うと、持って来ていたらしい魔導書を開き、そちらに目を落とし
ラピードも何も見ていないと言いたげに目を閉じて伏せていた
「ほれほれ、魔導少女も犬っころも見逃してくれるみたいだし〜?」
ニヤニヤと笑うレイヴンに、アリシアはクスッと笑った
「……じゃ、お言葉に甘えて……」
そう呟くと、アリシアは酒瓶に手を伸ばした
ーーーーー
「そう言えばあなた達、いつまでもそんなことをしていていいのかしら?」
花びらを取ろうとして数分、不意にジュディスがユーリとフレンに声をかけた
「ジュディ……っ!今それどころじゃっ」
「彼女、おじ様と一緒にしていたらまずいんじゃないかしら?」
ジュディスの言葉に、ユーリとフレンはピタリと動きを止めた
「む……そう言えばおっさん、シア姐のことをずーっと見ておったの?」
「言われてみれば……アリシアと酒瓶を交互に見ていた気も……」
エステルがそう呟いた瞬間、慌ててユーリとフレンはレイヴンの方を向く
「おっさん!?」「レイヴンさん!?」
同時に2人が声をかけると、離れていてもわかるくらいに、レイヴンが肩を竦めた
その仕草で何かを悟った2人が、慌てて駆け寄る
「……あちゃぁ……こりゃ、バレたかね……」
近くまで近づくと、レイヴンのそんな声が小さく聞こえた
心配していたアリシア本人は、何故かラピードに抱きついていた
「……♪」
ニコニコと嬉しそうに笑っているが、その頬は赤く染まっている
パッと見で飲んだことがわかったユーリは若干青ざめる
「シア……っ!おま、飲んだな?!」
ユーリがそう声をかけると、ラピードが「どうにかしろ」とでも言いたげにユーリを見上げる
「レイヴンさん……?!なんで止めてくれなかったんですか!?」
「あー……いや、気づいたら手にしてたと言うか……?」
半分キレ気味なフレンに、レイヴンは少し気まづそうに頬を掻きながら答えた
ここで「飲ませました」などと言えば、2人から猛攻が来るのが目に見えていた
「え〜……のめばー?って、いったの、レイヴンなのに〜」
が、レイヴンの言い訳も虚しく、アリシアがラピードから少し離れながらそう呟いた
誘って来たのはレイヴンなのにとでも言いたげに、ジト目で彼を見つめていた
アリシアの手が緩んだのを好機と見たのか、ラピードはそのままアリシアの腕の中からするりと抜け出して行った
「あ〜……いっちゃった」
不服そうに頬を膨らませながら、離れて行ったラピードをアリシアは見つめる
完全に酔っているらしく、目はトロンとしていた
「レイヴンさん……っ?」
ニッコリと笑いながらも、こめかみをヒクつかせながら、フレンはレイヴンに詰め寄る
「……すまん……酔ったアリシアちゃん、ちょーっと見てみたいな〜……と思って…つい……」
フレンの圧に負けたらしいレイヴンは大人しく白状した
彼の答えに、ユーリとフレンは盛大にため息をつく
「ったく……どうすんだよ、これ……」
「……とりあえず……アリシア?……何本飲んだんだい……?」
額に手をついて項垂れるユーリに代わって、フレンはアリシアに問いかける
「ん〜……っとねぇ……1……?」
首を傾げながらアリシアは答える
「……あのー……アリシアちゃん?嘘はダメよ?もう既に……3本は飲んでたじゃない?」
そんな彼女に恐る恐る声をかけたレイヴンに、更に首を傾げた
「そ〜だっけぇ……?」
トロンとした少し眠そうな目で、彼女はレイヴンを見つめる
そんな彼女に、レイヴンの心臓が跳ねた
「……こりゃ心臓に悪いわ……」
小さくそう呟くと、額に手を当てて項垂れる
なるべくアリシアを見ないようにしながら、自身の顔が見られないようにと俯いていたが、隠しきれている訳もなく、見える頬はほんのりと赤く染まっていた
「おいおい…さすがに3本は飲みすぎだろ……」
「これは……少し、まずいかもしれないね……」
ユーリとフレンは困ったように顔を見合わせる
「……?レ〜イヴン〜?」
2人がどうしようかと悩んでいる間、返事がない彼を不思議そうに見ていたアリシアだったが、急に立ち上がった
おぼつかない足で彼の後ろに回ると、半分倒れ込むように後ろからレイヴンに抱きついた
「んなん……っ!?////」
急に抱きつかれ驚いたレイヴンが振り返ろうとすると、自分の肩に顎を乗せてニコニコと微笑んでいるアリシアの顔がすぐ近くに見えて硬直してしまった
「わ〜……レ〜ヴンって、いがいとからだ、ガッチリしてるね〜…♪」
アリシアの声にどうしようかと相談していた2人が慌てて2人の方を見る
「あー……くそ……やりやがったわ……」
困り気味にアリシアを見つめながら、ユーリが小さく呟いた
「〜〜〜っ!!////……はぁ……ホント、心臓に悪いわ……////」
硬直が解けたらしいレイヴンはそう呟くと、額に手を当ててまた俯いた
「……なるほどね、あんたらがこの子にお酒飲ませたくなかったのはこうゆう事ね」
魔導書から目を離してリタはアリシアを見た
楽しそうで、嬉しそうな表情でニコニコと笑いながらレイヴンに抱きついている彼女に、少し複雑そうな表情を浮かべていた
「……酔っ払うと、誰彼構わず抱きつくクセあんだよな……無理やり引き剥がそうとすっと、ヤケになって離れようとしねえから、本人が自分から離れるの待たねえといけねえし……あれに何人落とされたことか……」
「…とりあえず、アリシア?レイヴンさんから離れようか?」
「え〜……」
フレンに離れるように言われると、あからさまに不機嫌そうにむっと彼女は頬を膨らませる
「シア……頼むからおっさんはやめろって。ほら、こっち来いよ?」
困ったように笑いながら、ユーリは手を広げてアリシアを見る
すると、不服そうにしながらも、アリシアはレイヴンから離れる
そのままユーリの方……ではなく、今度は傍に座っていたリタに、彼女は抱きついた
「ちょっ!?あんたねぇ……っ!//あたしじゃなくて、あっちで呼んでるじゃないっ!//」
若干悲鳴に近い声でアリシアを制止しながら、リタはユーリを指さした
当の本人は困り気味に頬を掻きながらアリシアを見つめている
レイヴンは彼女が離れたのと同時に彼女からサッと距離を取って深く息を吐いていた
「い〜い〜じゃ〜ん、べつに〜……りた、だきごこち、いいんだもん〜♪」
顔を真っ赤に染めたリタに、ニコニコと笑顔を浮かべてアリシアは抱きついていた
そんな騒ぎを聞きつけたのか、花びらを取ろうとしていた他のメンバーたちも戻ってくる
「あら、やっぱり飲ませちゃったのね、おじ様」
クスッと笑いながらジュディスはアリシアの隣に腰を下ろした
上機嫌な彼女の頬をつついていると、それが嫌だったのか、少し鬱陶しそうにジュディスを見た
「もー…っ!//いい加減離れなさいよっ!//」
「むぅ……しかたないなぁ……」
アリシアの腕の中でリタがジタバタと暴れると、名残惜しそうにしながらも彼女は大人しく離れると、今度はジュディスに抱きついた
「…あ〜……ジュディスも、いがいとだきごこちい〜、かも…♪」
「ふふ、そうかしら?」
ジュディスはクスッと笑うと、彼女を抱きしめ返した
すると、アリシアは先程までよりも少し嬉しそうに笑う
「いや〜……抱きつかれるのは勘弁だけども……見てる分にはいいわね〜」
少し離れたところで、少しニヤニヤしながら、レイヴンは2人を見ていた
「……ちょっと……羨ましい、です……」
ジーッと2人を見つめながらエステルがポツリと呟く
「ボ、ボクは勘弁して欲しい……かも……」
まだ抱きつかれてもいないのに、カロルは少し頬を赤くしてアリシアから距離を取っていた
カロルの隣でジーッとアリシアとジュディスの2人を見つめていたパティは、無言で2人に近づいて行くと2人の間に割って入った
「…あ、パティだぁ〜」
「どうしたのかしら?」
2人は間に来たパティを不思議そうに見る
「…リタ姐とジュディ姐だけズルいのじゃ。うちだってシア姐と引っ付きたいのじゃ」
むっと頬を膨らませながら、パティはアリシアを見上げた
アリシアは一瞬驚いたが、すぐにふにゃっと笑う
「ふふ……パティ、か〜わい〜…♪しっと〜?」
ジュディスを離し、むくれているパティにアリシアは抱きつく
彼女が抱きついてきたことが嬉しかったのか、パティは嬉しそうに口角を上げた
「残念、振られちゃったわ」
ほんの少し寂しそうに微笑みながら、ジュディスはアリシアとパティを見つめる
「残念って……あんた、よく平気ね……」
「ふふ、こんなに可愛らしいアリシア、中々見られないじゃない?」
若干引き気味なリタにジュディスはそう答えた
確かに普段では、中々見られない光景なのは確かだ
「ジュディ姐も、もう少し引っ付いているかの?」
「あら、じゃそうしようかしら」
パティの言葉に頷くと、今度はアリシアとパティの2人に彼女は抱きつく
ジュディスとアリシアに挟まれているパティを、レイヴンが離れたところからジーッと見つめていた
「レイヴン、さっきからヤケに静かだね?」
「……おい、おっさん、何考えてやがる?」
どこか羨ましそうな目を見て、ユーリがほんの少しレイヴンを睨んだ
「……ん?……あー……いや……パティちゃんのあの位置……特等席だな〜……と」
小さくポツリと、レイヴンは呟く
どうせそんな事だろうと思っていたユーリは、深くため息をついた
「……レイヴンさん……?」
ニコッとドス黒い笑みを浮かべて、フレンがレイヴンを見つめた
「ちょっ!?何も怒ることないじゃないのよ?!『あれ』は男のロマンでしょ?!羨ましがるくらいいいじゃないの!別に割り込んだりしないわよ!」
「んなことしようもんならその前にオレが手出すぞ?」
慌てふためくレイヴンにユーリはアリシアの方を見ながら声をかける
「ったく……こうなっから飲ませたかなかったんだけどな……」
未だに嬉しそうにニコニコ笑いながら2人と引っ付いているアリシアを見て苦笑いする
とりあえずいい加減寝かせに行きたいのだが……と考えていると、不意にエステルが声をあげた
「2人だけずるいです!」
エステルの声にユーリが驚いて彼女の方を見ると、むっと膨れて3人を見ていた
「あれぇ…?エステルも〜…?」
「羨ましいのなら、エステルも来ればよいのじゃ」
パティがそう言うなり、エステルはアリシアに駆け寄って、彼女の後ろから抱きついた
「あはは〜、わたし、もてもてだぁ〜…♪」
嬉しそうに笑いながら、アリシアはエステルを見上げた
片手をパティから離すと、後ろから抱きついてきているエステルの頭を軽く撫でる
すると、エステルも嬉しそうに微笑んだ
「……あほくさ……」
そんな4人からふいっと顔を背けながらリタは呟いた
「リタも、くる〜?」
「い、行かないわよっ!//あんたさっき散々あたしに引っ付いたじゃないっ!//」
ニヤッと笑った彼女に、リタは少し頬を赤くして断った
「ちぇ〜……ふられちゃったぁ」
残念そうにそう言うが、彼女は楽しそうに笑っていた
「アリシア……いい加減、彼女たちを離してあげないかい?」
「え〜……」
フレンの言葉に、アリシアは不服そうに頬を膨らませて、フレンを見た
「お前らも、シアから離れてくんねえか?」
困り気味に苦笑いしながら、ユーリはエステルたちを見た
「もう少し……ダメです?」
「その酔っ払い、いい加減寝かせに行きたいんだが……」
肩を竦めながらユーリが答えると、彼女たちは渋々アリシアから離れた
「ほーれ、シア」
もう1度、ユーリはアリシアに向かって手を伸ばした
大人しくアリシアは立ち上がってユーリの方へと向かおうとした
……が、途中で傍にいたカロルに軽く抱きついた
「ええっ!?//な、なんで?!//」
「だぁって、カロルだけだきつかない〜のは、かわいそ〜、かなぁって」
顔を真っ赤にしているカロルにクスクスと笑いながら、アリシアは答えた
「アリシア、そろそろユーリが拗ねてしまうよ?」
困ったように苦笑いしながら、フレンはアリシアの傍に近寄って、ユーリを指さした
連続でスルーされてしまい、当の本人は少し不機嫌そうにしていた
アリシアはカロルを離すと、そのままフレンに軽く抱きついた
「な…っ!?シア!?」
「……えーっと……アリシア……?」
突然抱きつかれ、フレンは困惑した
確かに今までにも何度かこういった事はあったが、それでも彼女がフレンに抱きつくことはなかった
酔った彼女がフレンに抱きついたのは、これが初めてだった
「……あのね……?僕的にはウエルカムだけれど、こんなことしてたら、ユーリが」
「ん〜……フレンだけ、なかまはずれ〜、はかわいそ〜だったけど〜……」
フレンの言葉を遮りながらそう言って、アリシアはフレンから離れる
「や〜っぱ、ちがう〜……」
ほんの少し、頬を膨らませてそう呟くと、彼女は今度こそ、ユーリの方へ向かった
彼女がフレンに抱きついてしまい、少し放心状態なユーリに、アリシアは飛びついた
「うぉ…っ!?…っ、おい、シア、危ないだ」
「やっぱぁ……ここが、いちばん、おちつく〜……♪」
飛びついてきたアリシアに注意しようとしたユーリの言葉を遮って、彼女はそう言ってユーリを見上げた
今まで見せてきたどの笑顔よりも、遥かに嬉しそうな満面の笑みでアリシアはユーリを見つめる
「ユーリ〜、だ〜いすき〜…♪」
「〜〜っ!!////……シア……、それ、今やめてくれ……っ////」
普段あまり見ることのない満面の笑みに、ユーリは口元を隠しながら彼女から少し顔を逸らした
僅かに見える頬はほんのりと赤く染まっていた
「ふふっ、嬉しそうね?アリシア」
「じゃのう〜」
「仲良し、ですね」
「全く……イチャつくなら、あたしらのいないところでやってくんない?」
微笑ましそうに見ているエステルたちの中、リタだけは少し不機嫌そうに声をかけた
「ん〜…?リタ〜、しっと〜…?」
「なっ……!//ち、違うわよ!//」
全力で否定するリタに、アリシアはクスクスと笑った
「うぅ……//ボク、もう勘弁してほしい……かも……//」
頬を赤くしたまま、カロルは小さく呟く
「…同感だよ、カロル……あれは本当に心臓に悪い……」
アリシアを見つめて、フレンは困り気味に肩を竦めた
結局、彼女は自分を選んではくれないのかとほんの少し寂しく思いながら、彼女を見つめていた
「結局は、ユーリが1番ってことだねぇ〜」
ニヤニヤと笑いながら、レイヴンはそう言って頭の後ろで手を組んだ
「はぁ……とりあえず、宿屋連れてくわ」
小さく息を吐くと、ユーリはアリシアを抱き上げた
「ええ、行ってらっしゃい」
ジュディスの言葉に頷くと、そのまま坂道を降りて行った
「……んじゃ、花見の続きでもしますか〜」
「ふふ、そうね?まだまだ残っているもの」
レイヴンとジュディスの言葉に一同は頷くと、各々したい事をし始めた
「……レイヴンさん、ご一緒しても?」
先程同様に酒瓶の栓を抜いているレイヴンの傍に腰を下ろしたフレンも、彼と同じく酒瓶を片手に持っていた
「おろ?どしたのよ?」
「そういう気分、なんですよ」
不思議そうに首を傾げたレイヴンに、フレンは眉を下げて少し寂しそうに笑いながら答えた
なんとなく事情を察したレイヴンは、少し困ったように微笑んだ
「ま、おつかれさん、っつー事で」
そう言いながら、レイヴンはフレンに向かって酒瓶を向けた
それにならってフレンも酒瓶をレイヴンの方へと向ける
カンッ……と、乾いた音が小さく響いた
ーーその頃ーー
宿屋の一室、ユーリはアリシアを寝かせようと、彼女をベッドに下ろしその縁に腰を下ろした
「ったく、ホント、誰彼構わず抱きつきやがって」
彼女の頭を撫でながらユーリは苦笑いする
「え〜……だめぇ〜…?」
少し納得いかなさそうにそう言いながら、アリシアはユーリを見つめた
「エステルたちならいいが、さすがにおっさんやフレンは勘弁してくんない?」
少し不機嫌そうにユーリは答える
先程から我慢はしているものの、少しでも気を抜いてしまえば、フレンやレイヴンに斬りかかりに行ってしましそうであった
「……ユーリ、しっと〜…?」
ほんの少し身体を起こして、アリシアは首を傾げた
「……しちゃ悪いかよ」
アリシアから少し顔を背けながらユーリは小さく呟く
すると、彼女はニヤッと笑った
「あはは…っ!や〜としてくれた〜…♪」
「…は……?ぅお…っ!?」
彼女の言葉に驚いたユーリが振り返ろうとした途端、急に引っ張られ体勢が崩れる
慌てて手をついたため、なんとか彼女にのしかかることはなかったが、アリシアはクスクスと笑いながらユーリに抱きついていた
「おま……っ、さては確信犯だな……っ?!」
意味を理解したユーリは動揺しきった声で問いかける
「だぁって〜……たま〜に、みたくなるんだもん。しっとしてる、ユーリ〜…♪」
嬉しそうに笑いながら、アリシアは答える
そんな彼女に、ユーリは小さくため息をついた
「ったく……そんな理由でこういう事されんの困るんだけど?」
「ユーリだって、よくパティにひっつかれてたり〜ジュディスみて、かおあかくしてたり、するじゃん〜?
それ、わたしだって、しっとしてたしぃ……おたがいさま〜…♪」
いたずらの成功した子どものように笑いながらアリシアはユーリを見つめる
彼女の言葉にユーリはグッと喉を鳴らした
確かにそれはよくある事で、その度にアリシアが複雑そうな表情をしていた事にも気がついてはいた
まさかその仕返しだったとは思ってもおらず、ほんの少し、ユーリは肩を竦めた
「……悪かったよ。これからは気をつけるさ」
「ん〜……やくそく〜…だよ、?」
眠そうな目でユーリを見つめながら、アリシアはニコッと笑った
「おぅ、約束だ。……ほら、もう寝とけって」
そう言って、ユーリは優しくアリシアの頭を撫でる
嬉しそうに目を閉じて微笑んでいたアリシアだったが、相当眠かったのか少しすると規則正しい寝息が聞こえてきた
そんな彼女を、ユーリは愛おしそうに見つめていた
彼女が眠ったら、花見の席に戻ろうかとも考えてはいたが、花よりも自身の腕の中で眠っている彼女の傍にいる方がよっぽどいい
「……おやすみ、シア」
小さくそう呟いてアリシアの額に唇を落とした
どこか嬉しそうな表情で眠っている彼女を、ユーリもまた、嬉しそうに微笑みながら見つめていた
【サブタイトル:花より彼女!】
〜おまけ〜
ー翌日(会話のみ)ー
「うー……頭痛い……」
「ったく、だから飲むなって言ったろ?」
「私だって、たまには飲みたい日があるって」
「だとしても、できれば控えてくれないかい…?」
「ボクも……ちょっと勘弁して欲しい…かも…」
「遠目から見てるだけならいいんだけんどもねー
……次はおっさん、殺されかねないわ……」
「……?私、そんなにまずいことでもした?」
「ホントに覚えてないのね……あんた……誰彼構わず、抱きつきまくってたじゃないの」
「4人で抱きつきあったりもしましたよね」
「のじゃ!あれは楽しかったのじゃ〜」
「ふふ、そうね?可愛らしいあなたも見らたしね」
「…ジュディスたちは、楽しそうだよ?」
「バーカ、オレはずーっと困ってたんだぞ?おっさんとフレンにまで抱きつきやがって」
「僕は全然、抱きついてくれてよかったんだけどね?」
「このやろ…っ!まだ言いやがるか……っ!」
「はいはい、2人ともー!喧嘩はなしだからね?」
「いや、でも」
「大丈夫だよ、ユーリ。私、ユーリから離れないから」ニコッ
「…〜〜〜っ///」
「さすがアリシアちゃんねぇ……一瞬で黙らせちゃうなんて」
「そうかな?…ほーら!早く次の街行こっ!」
〜あとがき〜
どもっ!如月です!
花見って時期はとっくのとうに終わっていますが……
どうしてもアリシアちゃんにお酒を飲ませたくなりまして…(笑)
ただただ酔ったアリシアちゃんとみんなを抱きつかせたかっただけです(笑)
以上っ!久々の短編でした〜
また気が向いたら短編も書こうと思います!
ではではまた、別のお話でお会いしましょう!
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