運命
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「ふぅ…………」
アリシアはパタリとノートを閉じてペンを机の上に転がす
手紙は精霊たちに預けて、既にそれぞれの元に届けられていた
伸びをしながら立ち上がり、窓際に向かって足を進める
そこから見えるのは夜の帝都の街並み
光照魔導器 が精霊の力で光り、以前程ではないが明るくなった街……
依然として偉そうにしている貴族の家にはまだ明かりが灯っていない
そんな光景を、何処か嬉しそうにしながらアリシアは一人見つめていた
しばらく一人でそうしていると、不意に後ろから誰かに引き寄せられる
「………シア」
普段よりも少し低く、何処か甘えるような声でユーリが彼女の名を呼んだ
「んー?」
「………手紙の最後の、何?」
「…読むの、早くない?」
ユーリを見上げながら、彼女は苦笑いした
「バーカ。同じ家に住んでんのに、読んですぐ来ねぇ方がおかしいだろ?」
アリシアを抱きしめる彼の腕に少しだけ力が入る
「あはは、それもそっか」
そう言って彼女はユーリの左手に自身の左手を重ねた
二人の薬指には、同じ指輪がはめられている
「んで、何?」
少しだけ何かを期待しているように、ユーリは再び促す
「………あのね」
「ん?」
「…私、この先も心配かけると思う」
「…おう」
「多分、無茶だってする」
「……それはお互い様、だな」
「でもね……この先何があっても、ずーっと……ユーリのこと、誰よりも愛してるよ」
恥ずかしそうに頬を赤らめてアリシアはユーリを見つめる
「………ははっ、先に言われちまったな。…オレもアリシアのこと、誰よりも愛してる。この先、何があってもずーっと、な?」
嬉しそうに微笑んで、ユーリは彼女の頬に唇を落とす
「フレンに見られたら泣かれそうだね」
冗談混じりにクスクスと笑いながらアリシアは言う
「泣くっつーか、オレ殺されそー」
苦笑いしながらユーリは少し離れて肩を竦めた
「……ユーリ」
「ん?」
「………ありがとう」
「なんだよ、急に」
「今まで、沢山心配かけたのに、それでも…私がいいって言ってくれたから」
「ああ…そうゆうことな。……オレの方こそ、ありがとな」
そう言ってユーリは彼女の前に立った
「…あはは、やっぱりなんか恥ずかしいね、こーゆうの」
「そうか?」
「ユーリは言いなれてるもんね…」
「シアにしか言ってねえけどな」
「私以外にも言ってたら怒るよ?」
むっと頬を膨らませながアリシアは彼を見つめる
「冗談、万が一にでもないな」
ユーリはニヤリと笑うと彼女の頬に手を添える
少しだけ背のびしながらアリシアが軽く目をつぶるとその唇にユーリはそっと自身の唇を重ねた
ゆっくりと二人の顔が離れると、ユーリは彼女を抱きしめる
「……明日、だな」
少し上ずった声で何処か緊張気味にユーリは言う
「………ふふ、ユーリ見たらみんな笑いそうだよね」
「……………あのお気楽陛下の野郎……余計なお節介しやがって……」
「仕方ないよ、私結局貴族の権限破棄して貰えなかったんだもん。事実上貴族なんだし、そうゆうとこ、ちゃんとしないと」
「……フレンにだけは、会いたくねえよ、本気で……」
アリシアの首元に顔を埋めながらユーリは大きく息を吐いた
擽ったそうにアリシアは首を窄めた
「…シア」
「んー?」
「やること終わったら、2人で旅、しに行こうな」
「…うん!!」
嬉しそうに微笑んだ彼女の頬にそっとユーリは口付けした
~次の日~
「ふ……っ……くく…………!」
「あのなぁ…笑うなら普通に笑えっての…」
真っ白なタキシードに身を包んだユーリは、目の前で笑いを堪えている幼馴染を若干睨み気味に見る
「ふふ…いやすまない、あまりにも似合っていないものだからつい、ね」
笑いを堪えて目元に溜まった涙を拭いながらフレンは謝る
いつも身に纏っている鎧ではなく、黒いタキシードに身を包んだ彼は騎士団長の雰囲気がまるでない
「でも…ほ、本当に、に、似合ってないよね…っ」
「うはははっ!!!!お、おっさん、笑い堪えるとか…っ!無理無理…っ!!」
クスクスと隠そうともせずに、レイヴンとカロルは笑う
こちらの2人も黒のタキシードに身を包んでいた
「たく…どいつもこいつも人のこと馬鹿にしやがって…」
大きくため息をつきながらユーリは項垂れた
こうなるとわかっていたが、いざ笑われるとイライラしてしまう
「あんたらね…いくら似合わないからってそんなに笑ってたら、アリシアに怒られるわよ?」
ガチャリと扉を開けながらリタが言う
彼女もまたいつもの服ではなく、パーティー用の衣装を身に纏っていた
「そうですよ!それに、そんなに笑うほど似合ってなくないじゃないですか」
「じゃのう。むしろ普段よりもカッコイイのじゃ!」
続いてエステルとパティが部屋の中に入ってくる
こちらの2人も正装している
「それにしてもようやくって感じよねぇ。中々アリシアに言おうとしないんだもの」
腕を組みながらリタがため息をついた
「本当だよ。これ以上延ばすつもりなら僕が彼女を貰おうかと」
「お前のそれはシャレになんねぇからやめてくれ…!」
そう言ってユーリはフレンを睨みつける
「それはそうと…アリシアちゃんはどったの?」
話題を変えようとレイヴンがエステルたちを見た
「多分もう少し掛かるわよ?あの子、髪無駄に長いから」
リタはそう言って扉を見つめる
今ここに居ないアリシアとジュディス、そしてラピードはユーリたちのいる隣の部屋で、まだ準備をしていた
「というか、なんでラピードは向こうにいるの?」
不思議そうにカロルが首を傾げる
犬とは言えラピードも雄なのだから、ユーリたちといることの方が多かったからだろう
「それが…珍しくアリシアから離れないんです…」
困ったように苦笑いしながらエステルが答えた
「それは珍しいですね…」
顎に手を当てながらフレンも首を傾げた
「ああ、それオレが言ったからだわ」
「え?なんで?」
「いや…おっさんのことだからオレらが見てないうちにシアんとこ行きそうだったから」
ユーリがそう言うと全員納得したようにレイヴンをジト目で見る
「おっさんだって流石にそこまでしないわよ…!!」
半分涙目になりながらレイヴンは言った
「あら、楽しそうね」
綺麗なドレスに身を包んだジュディスが部屋に入ってきながら微笑んだ
「ジュディ姐!準備できたのかの?」
わくわくと弾んだ声でパティが問いかけた
「ええ。でも、あなたたちは後での楽しみにとっておいたほうがいいわよ?」
ユーリ以外を見回しながらジュディスは微笑んだ
「では私たちは先に行って待っていましょう」
「ええ、そうしましょう。…ユーリ、駆け落ちだけはするなよ?」
「それしたらオレ、お前に殺されるじゃねえかよ…」
「あら、フレンだけじゃないわよ?」
ポキポキと音を鳴らしながらジュディスはニコリと微笑んだ
「…おっかないのが増えちまったな」
苦笑いしながらユーリは仲間たちを見送った
「……さて、迎えに行きますか」
そう呟いてユーリは嬉しそうに微笑んで部屋を出た
隣の部屋の扉の前に立つと、一度深呼吸してからノックする
「……入っていいよ」
彼女の声が聞こえてきてからユーリは扉を開けた
「っ~~~!!」
入って早々ユーリは扉の前で固まった
純白のドレスに身を包んだアリシアは綺麗に結わかれた赤髪を揺らしながらユーリの方を振り向いた
「ユーリ…?」
首を傾げながら彼女はユーリをみる
「……いや、綺麗だなって思って、さ?」
左手で緩んだ口元を隠しながら彼は少し顔を背けた
「えへへ、ありがとう!…ユーリもカッコイイよ?」
頬を赤らめながらアリシアは彼を見つめる
「サンキュ、シア」
ユーリはそう言いながら彼女に近づく
「……やっべ…あいつらにお前見せんのもったいねぇ」
そっと頬に触れながらユーリは言う
「それ、フレンに怒られるよ?」
「ゥワン!!」
クスリと笑いながらどこか嬉しそうに彼女は微笑み、肯定するようにラピードが一声鳴いた
「だな…仕方ねえから行きますとしませんか?おじょーさん」
ユーリはそう言って手を差し出す
「うん!……でも、さ?」
差し出された手に自分の手を重ねながらアリシア弾んだ言いにくそうに口を開いた
「ん?」
「…………このままユーリに攫われるのも、いいかなぁって」
悪戯っ子のように微笑みながら彼女はユーリを見つめた
「……あのなぁ……今のオレには冗談に聞こえねぇぜ?」
困ったように笑いながらユーリは重ねられた手を恋人繋ぎにした
「………………冗談なんて、言ってないよ」
ポツリと彼女は呟くように言う
すると彼女の足が地面から浮いた
「きゃっ…!!」
「……その言葉、後悔すんなよ?」
ニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべながら、腕の中にいる彼女を見つめた
「……ユーリこそ、私を攫ったこと、後悔しないでね?」
嬉しそうに微笑みながら彼の首の後ろに手を回す
「誰が後悔なんてするかよ」
ユーリも嬉しそうに微笑むと彼女の頬に唇を落とした
「ワフゥン……」
呆れたように鳴くとラピードも立ち上がって窓に近づいた
行くなら早くしろと言わんばかりに彼は2人を見る
「ラピードも来てくれるの?」
「ワンっ!」
アリシアが問いかけると、力強く鳴いた
「んじゃ、しっかり掴まっていろよ?」
「うん!」
アリシアの返事と共にユーリとラピードは窓から外に飛び出した
2人と一匹が仲間たちに捕まったのは、当分先の話だ
~後日談(捕まる前の2人)~
「うわ……ここにも張り紙あるよ…」
「あいつらも必死だな」
「……なんか、指名手配されてるみたいでやな感じ~…」
「だな。流石にこれはねぇだろ」
【大至急!!この2人を見かけたらギルド凛々の明星まで!!
ユーリとアリシアへ
いい加減帰って来いっ!!】
「…まだ、帰りたくないかな」
「まだっつーか、オレはこのまま2人でいたいんですけどねえ?…っつーか、あいつらシアのこと見てもすぐにはわからなさそうだよな」
「あー、髪切っちゃったからね」
「長いのもいーけど、短いのもいいな」
「もう…わかったから早く行こう?ラピード待ってるんだから」
「はいよ。仰せのままに」
~一方~
「あんの2人…!!見つけたらただじゃ置かないんだから!!」
「そうね。とりあえずユーリは半殺し、ね」
「ラピードも、なんで止めないで一緒に行っちゃうんだよ…!!」
「流石に今回は擁護できないのじゃ」
「全く…だから2人きりはまずいんでないのって言ったのに」
「…………」
「フ、フレン…えっと、あの、みんなも落ち着いてください!!」
「「落ち着けるか!!!!」」
【失踪から半年後の出来事】
~あとがき~
どうも!如月です!
今回は少し長めの短編を書いてみました
いかがでしたか?
ノリと思いつきと深夜テンションの産物なので、誤字脱字多いかもしれません
それでも楽しんでいただければ幸いです!
最初にも書きましたが、このお話のベースは『星降る夜に』ですが、本編とは関係のない別ストーリーです
本編の方は原作部分が終わり次第、外伝的なものを書く予定です
それではまた別のお話でお会いしましょう!
アリシアはパタリとノートを閉じてペンを机の上に転がす
手紙は精霊たちに預けて、既にそれぞれの元に届けられていた
伸びをしながら立ち上がり、窓際に向かって足を進める
そこから見えるのは夜の帝都の街並み
依然として偉そうにしている貴族の家にはまだ明かりが灯っていない
そんな光景を、何処か嬉しそうにしながらアリシアは一人見つめていた
しばらく一人でそうしていると、不意に後ろから誰かに引き寄せられる
「………シア」
普段よりも少し低く、何処か甘えるような声でユーリが彼女の名を呼んだ
「んー?」
「………手紙の最後の、何?」
「…読むの、早くない?」
ユーリを見上げながら、彼女は苦笑いした
「バーカ。同じ家に住んでんのに、読んですぐ来ねぇ方がおかしいだろ?」
アリシアを抱きしめる彼の腕に少しだけ力が入る
「あはは、それもそっか」
そう言って彼女はユーリの左手に自身の左手を重ねた
二人の薬指には、同じ指輪がはめられている
「んで、何?」
少しだけ何かを期待しているように、ユーリは再び促す
「………あのね」
「ん?」
「…私、この先も心配かけると思う」
「…おう」
「多分、無茶だってする」
「……それはお互い様、だな」
「でもね……この先何があっても、ずーっと……ユーリのこと、誰よりも愛してるよ」
恥ずかしそうに頬を赤らめてアリシアはユーリを見つめる
「………ははっ、先に言われちまったな。…オレもアリシアのこと、誰よりも愛してる。この先、何があってもずーっと、な?」
嬉しそうに微笑んで、ユーリは彼女の頬に唇を落とす
「フレンに見られたら泣かれそうだね」
冗談混じりにクスクスと笑いながらアリシアは言う
「泣くっつーか、オレ殺されそー」
苦笑いしながらユーリは少し離れて肩を竦めた
「……ユーリ」
「ん?」
「………ありがとう」
「なんだよ、急に」
「今まで、沢山心配かけたのに、それでも…私がいいって言ってくれたから」
「ああ…そうゆうことな。……オレの方こそ、ありがとな」
そう言ってユーリは彼女の前に立った
「…あはは、やっぱりなんか恥ずかしいね、こーゆうの」
「そうか?」
「ユーリは言いなれてるもんね…」
「シアにしか言ってねえけどな」
「私以外にも言ってたら怒るよ?」
むっと頬を膨らませながアリシアは彼を見つめる
「冗談、万が一にでもないな」
ユーリはニヤリと笑うと彼女の頬に手を添える
少しだけ背のびしながらアリシアが軽く目をつぶるとその唇にユーリはそっと自身の唇を重ねた
ゆっくりと二人の顔が離れると、ユーリは彼女を抱きしめる
「……明日、だな」
少し上ずった声で何処か緊張気味にユーリは言う
「………ふふ、ユーリ見たらみんな笑いそうだよね」
「……………あのお気楽陛下の野郎……余計なお節介しやがって……」
「仕方ないよ、私結局貴族の権限破棄して貰えなかったんだもん。事実上貴族なんだし、そうゆうとこ、ちゃんとしないと」
「……フレンにだけは、会いたくねえよ、本気で……」
アリシアの首元に顔を埋めながらユーリは大きく息を吐いた
擽ったそうにアリシアは首を窄めた
「…シア」
「んー?」
「やること終わったら、2人で旅、しに行こうな」
「…うん!!」
嬉しそうに微笑んだ彼女の頬にそっとユーリは口付けした
~次の日~
「ふ……っ……くく…………!」
「あのなぁ…笑うなら普通に笑えっての…」
真っ白なタキシードに身を包んだユーリは、目の前で笑いを堪えている幼馴染を若干睨み気味に見る
「ふふ…いやすまない、あまりにも似合っていないものだからつい、ね」
笑いを堪えて目元に溜まった涙を拭いながらフレンは謝る
いつも身に纏っている鎧ではなく、黒いタキシードに身を包んだ彼は騎士団長の雰囲気がまるでない
「でも…ほ、本当に、に、似合ってないよね…っ」
「うはははっ!!!!お、おっさん、笑い堪えるとか…っ!無理無理…っ!!」
クスクスと隠そうともせずに、レイヴンとカロルは笑う
こちらの2人も黒のタキシードに身を包んでいた
「たく…どいつもこいつも人のこと馬鹿にしやがって…」
大きくため息をつきながらユーリは項垂れた
こうなるとわかっていたが、いざ笑われるとイライラしてしまう
「あんたらね…いくら似合わないからってそんなに笑ってたら、アリシアに怒られるわよ?」
ガチャリと扉を開けながらリタが言う
彼女もまたいつもの服ではなく、パーティー用の衣装を身に纏っていた
「そうですよ!それに、そんなに笑うほど似合ってなくないじゃないですか」
「じゃのう。むしろ普段よりもカッコイイのじゃ!」
続いてエステルとパティが部屋の中に入ってくる
こちらの2人も正装している
「それにしてもようやくって感じよねぇ。中々アリシアに言おうとしないんだもの」
腕を組みながらリタがため息をついた
「本当だよ。これ以上延ばすつもりなら僕が彼女を貰おうかと」
「お前のそれはシャレになんねぇからやめてくれ…!」
そう言ってユーリはフレンを睨みつける
「それはそうと…アリシアちゃんはどったの?」
話題を変えようとレイヴンがエステルたちを見た
「多分もう少し掛かるわよ?あの子、髪無駄に長いから」
リタはそう言って扉を見つめる
今ここに居ないアリシアとジュディス、そしてラピードはユーリたちのいる隣の部屋で、まだ準備をしていた
「というか、なんでラピードは向こうにいるの?」
不思議そうにカロルが首を傾げる
犬とは言えラピードも雄なのだから、ユーリたちといることの方が多かったからだろう
「それが…珍しくアリシアから離れないんです…」
困ったように苦笑いしながらエステルが答えた
「それは珍しいですね…」
顎に手を当てながらフレンも首を傾げた
「ああ、それオレが言ったからだわ」
「え?なんで?」
「いや…おっさんのことだからオレらが見てないうちにシアんとこ行きそうだったから」
ユーリがそう言うと全員納得したようにレイヴンをジト目で見る
「おっさんだって流石にそこまでしないわよ…!!」
半分涙目になりながらレイヴンは言った
「あら、楽しそうね」
綺麗なドレスに身を包んだジュディスが部屋に入ってきながら微笑んだ
「ジュディ姐!準備できたのかの?」
わくわくと弾んだ声でパティが問いかけた
「ええ。でも、あなたたちは後での楽しみにとっておいたほうがいいわよ?」
ユーリ以外を見回しながらジュディスは微笑んだ
「では私たちは先に行って待っていましょう」
「ええ、そうしましょう。…ユーリ、駆け落ちだけはするなよ?」
「それしたらオレ、お前に殺されるじゃねえかよ…」
「あら、フレンだけじゃないわよ?」
ポキポキと音を鳴らしながらジュディスはニコリと微笑んだ
「…おっかないのが増えちまったな」
苦笑いしながらユーリは仲間たちを見送った
「……さて、迎えに行きますか」
そう呟いてユーリは嬉しそうに微笑んで部屋を出た
隣の部屋の扉の前に立つと、一度深呼吸してからノックする
「……入っていいよ」
彼女の声が聞こえてきてからユーリは扉を開けた
「っ~~~!!」
入って早々ユーリは扉の前で固まった
純白のドレスに身を包んだアリシアは綺麗に結わかれた赤髪を揺らしながらユーリの方を振り向いた
「ユーリ…?」
首を傾げながら彼女はユーリをみる
「……いや、綺麗だなって思って、さ?」
左手で緩んだ口元を隠しながら彼は少し顔を背けた
「えへへ、ありがとう!…ユーリもカッコイイよ?」
頬を赤らめながらアリシアは彼を見つめる
「サンキュ、シア」
ユーリはそう言いながら彼女に近づく
「……やっべ…あいつらにお前見せんのもったいねぇ」
そっと頬に触れながらユーリは言う
「それ、フレンに怒られるよ?」
「ゥワン!!」
クスリと笑いながらどこか嬉しそうに彼女は微笑み、肯定するようにラピードが一声鳴いた
「だな…仕方ねえから行きますとしませんか?おじょーさん」
ユーリはそう言って手を差し出す
「うん!……でも、さ?」
差し出された手に自分の手を重ねながらアリシア弾んだ言いにくそうに口を開いた
「ん?」
「…………このままユーリに攫われるのも、いいかなぁって」
悪戯っ子のように微笑みながら彼女はユーリを見つめた
「……あのなぁ……今のオレには冗談に聞こえねぇぜ?」
困ったように笑いながらユーリは重ねられた手を恋人繋ぎにした
「………………冗談なんて、言ってないよ」
ポツリと彼女は呟くように言う
すると彼女の足が地面から浮いた
「きゃっ…!!」
「……その言葉、後悔すんなよ?」
ニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべながら、腕の中にいる彼女を見つめた
「……ユーリこそ、私を攫ったこと、後悔しないでね?」
嬉しそうに微笑みながら彼の首の後ろに手を回す
「誰が後悔なんてするかよ」
ユーリも嬉しそうに微笑むと彼女の頬に唇を落とした
「ワフゥン……」
呆れたように鳴くとラピードも立ち上がって窓に近づいた
行くなら早くしろと言わんばかりに彼は2人を見る
「ラピードも来てくれるの?」
「ワンっ!」
アリシアが問いかけると、力強く鳴いた
「んじゃ、しっかり掴まっていろよ?」
「うん!」
アリシアの返事と共にユーリとラピードは窓から外に飛び出した
2人と一匹が仲間たちに捕まったのは、当分先の話だ
~後日談(捕まる前の2人)~
「うわ……ここにも張り紙あるよ…」
「あいつらも必死だな」
「……なんか、指名手配されてるみたいでやな感じ~…」
「だな。流石にこれはねぇだろ」
【大至急!!この2人を見かけたらギルド凛々の明星まで!!
ユーリとアリシアへ
いい加減帰って来いっ!!】
「…まだ、帰りたくないかな」
「まだっつーか、オレはこのまま2人でいたいんですけどねえ?…っつーか、あいつらシアのこと見てもすぐにはわからなさそうだよな」
「あー、髪切っちゃったからね」
「長いのもいーけど、短いのもいいな」
「もう…わかったから早く行こう?ラピード待ってるんだから」
「はいよ。仰せのままに」
~一方~
「あんの2人…!!見つけたらただじゃ置かないんだから!!」
「そうね。とりあえずユーリは半殺し、ね」
「ラピードも、なんで止めないで一緒に行っちゃうんだよ…!!」
「流石に今回は擁護できないのじゃ」
「全く…だから2人きりはまずいんでないのって言ったのに」
「…………」
「フ、フレン…えっと、あの、みんなも落ち着いてください!!」
「「落ち着けるか!!!!」」
【失踪から半年後の出来事】
~あとがき~
どうも!如月です!
今回は少し長めの短編を書いてみました
いかがでしたか?
ノリと思いつきと深夜テンションの産物なので、誤字脱字多いかもしれません
それでも楽しんでいただければ幸いです!
最初にも書きましたが、このお話のベースは『星降る夜に』ですが、本編とは関係のない別ストーリーです
本編の方は原作部分が終わり次第、外伝的なものを書く予定です
それではまた別のお話でお会いしましょう!
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