第5部〜箱庭の世界〜
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予想外の人物
「ユーリ…いいの?あれ」
少し遠慮気味にカロルが問いかけてくる
「ん?何がだ?」
「何がって……シリウスとアリシア、戦わせていいんです?」
エステルの問いに窓の外を見つめた
怒っているシリウスとは対照的に、シアはどこか楽しそうに剣を交えている
「こんな部屋ん中で大剣ぶん回されるよりはいいだろ?それに、シアもやりたそうにしてたし、シリウス相手じゃ、無理無茶なんてしないだろうしな」
ほんの少しため息をつきながら頬杖をついた
……ホント、相変わらず刀振ってる時が一番楽しそうな顔すんな
楽しそうなシアを見ていたら、思わず頬が緩む
「ふふ、あなた達、前よりも随分仲がよくなったわね?」
ジュディの声に視線を向けると、微笑ましそうに笑いながら、オレを見て来ていた
「そうか?あんま変わってねえと思うけど?」
「よく言うわよ。あんた、ずーっとあの子に引っ付いてたじゃない」
リタの言葉に、若干肩が跳ねる
「着いてからずっと左手、アリシアちゃんの腰に回したまんまだったわよね〜いやぁほんっと!仲がいいわねぇ〜
おっさん妬いちゃいそうだったわ」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべて、おっさんがこっちを見てくる
「仲が良いのはいい事なのじゃ」
首を縦に振りながら、パティもニヤニヤと笑っていた
そんな反応がいたたまれなくて、全員から視線を逸らす
……しまった、いつもの癖で、つい腰に回した手どけんの忘れてたわ……
『……なぁ、シリウスがブチ切れてんの、目の前でイチャつかれたせいもあんじゃねえか?』
『あー……ありそう……ユーリに負けたくせに、未だに文句言ってるもんね』
窓の傍に寄っていたカストロとポルックスが、呆れ気味に呟いている
チラッと見ると、二人の視線は、どうやらシリウスに向いてるようだ
『器ちっさいよねぇ、シリウス。いい加減諦めたらいいのに』
『アリシアがユーリさんしか見てないのなんて、今に始まった事でもないしね?』
アルタイルとカペラがそう言い合う声が聞こえる
『でもさ……?ちょっと場所は考えて欲しい、かも……?』
『……目の前でそういうことされるの……見てるこっちが恥ずかしいかも……』
リゲルとベガの声に、二人を見るとほんの少しだけ、頬が赤く染まっていた
……そこまでの事をした覚えはねえんだけど……
『あら、そうかしら?ライラックだっていつもそうよ?』
『『え…っ!?』』
アイリーンさんの声に、リゲルとベガが勢いよく彼女の方を振り返った
『なっ!!アイリーン……っ!』
隣にいたライラックさんが、あからさまに動揺している
『今だって、こんな話していても、手は離してくれないもの』
クスクスと笑いながらアイリーンさんが右手を上げると、しっかりとライラックさんは彼女の手を握っていた
『〜〜っ!!なっ、何故バラす!?//』
『あら、だって彼だけが弄られては可哀想よ?あなただって、しょっちゅう私に引っ付いて、離れようとはしてくれないでしょう?』
依然、クスクスと笑っている彼女の隣で、ライラックさんは顔を隠そうと右手を額に当てながら項垂れていた
そういや……ライラックさんって、シアも大事にしてたが、それ以上にアイリーンさんが大事だったな
『……恥ずかしい割に、手……離さないんだ……』
呆れたようにカペラがつっこむが、ライラックさんには聞こえていないらしく、全く動く気配がない
『……今更何を恥ずかしがっているんだ、ライラック?お前のそれは、今に始まった事じゃないだろ……』
呆れ気味にため息をつきながらカープノスが声をかけるが、それも聞こえていないらしい
……あれ、大丈夫か?
「全く……お主らめ……」
レグルスが呆れ気味に深くため息をついていた
「……ところで……あれ、いつ終わります……?」
窓の外を指さしながら、エステルが遠慮気味に問いかけてくる
窓の外に視線を戻すと、二人の戦いはまだ終わりそうにねえ
……ホント、楽しそうだな
『……もう、終わるよ』
ベガがそう言った瞬間、ドーンッと大きな地鳴りがした
その音に、オレも含めて全員が慌てて窓に駆け寄って、窓を押し開けた
「はいっ!私の勝ち〜っ!」
刀を収めながら、シアはニコッと笑っていた
少し離れた所で、シリウスが地面に突っ伏している
前にも……見たな、この光景……
『う……アリシア……それは、反則、だろ……っ』
小さく唸りながら、シリウスは顔を上げてシアを観ている
「本気で向かってきたのはシリウスの方じゃん?だから本気で返してあげただけだけど……嫌だった?」
シリウスの前でしゃがんで、彼女は首を傾げた
その仕草に、シリウスは目を見開いていた
が、すぐに諦めたように目を閉じて、体を反転させた
『……いや、完全に俺の負けだな……まさか、本気を出してやって、負けるとはな……』
悔しそうだが、どこか嬉しそうにシリウスは呟いた
そんなシリウスに、シアはニッコリと微笑んだ
……シリウスも、『あれ』やられっとそうなんだな……
「……あ、アリオト〜、後頼んでもいい?」
アリオトを見ながら、シアはそう言って彼女を手招きした
『……これは、シリウスの惨敗のようですね……』
ほんの少し困ったように彼女は笑うと、窓から飛び出してシリウスに駆け寄った
彼女が駆け寄ったのと入れ替わるように、シアが窓に近づいて来る
「シア、ありゃまたやり過ぎじゃねえか?」
窓の縁で頬杖をつきながら問いかける
「そう?本気で来たから本気で返しただけなんだけど……」
少し肩を竦めて、シアは答える
「まっ、怪我してねえみたいだからいいんだけどな。……ほれ」
頬杖をついていた手をシアに伸ばす
一瞬驚いたように目を見開いていたが、すぐにクスッと笑ってオレの手を取った
「よっ……と」
手を握って引き上げる
あの日と同じように、少し浮いたシアの体を抱き上げる
……あの日と違うのは、シアが嬉しそうにニコニコと笑ってることくらい、だな
「……あんたもだいぶ変わったわよね」
若干驚いたように、リタが問いかけてくる
「そうかな?」
リタの方を向いて、シアは首を傾げた
「前は恥ずかしがってたじゃない」
腕を組みながらリタが言うと、シアは小さく「あー…」っと呟いた
「そりゃ……ここ半年ずーっと引っ付かれてたし、さすがに慣れたよ」
「そう言うシアだって、しょっちゅう自分から引っ付いてくんだろ?」
シアを下ろしながら言うと、ニヤッといたずらっ子のように笑って見上げてくる
「嫌だった?」
首を傾げてオレを見上げながら、ほんの少し体を屈めて、シアが見つめてくる
その仕草に心臓が若干跳ねる
「……シア、頼むからそれやめてくれって」
シアから顔を背けながら、左手で口元を隠して言う
頼むから……ホント、勘弁して欲しいわ……
なんでこんなに可愛いことしてくんだよ……
顔を背けたまま、チラッとシアを見ると、満足そうに微笑んでいた
「……やっぱ変わったわね……あんた…」
シアの行動に、リタが驚いたような声を上げていた
それもそうだよな……半年前までのシアじゃ、こんなこと中々しなかったしな
「大将も形なしねぇ〜……」
ほんの少し同情するようなおっさんの声が聞こえる
「……最近、的確なタイミングでやってくっから困ってんだよな」
苦笑いしながら、シアに視線を戻した
「本気で困ってなんてないでしょ?」
オレを見つめながらシアはニヤッと笑う
いやまぁ……確かにそうなんだが……
何も言い返せなくて、ただ肩を竦めてシアを見つめ返した
『……いつの間にか、アイリーンに似たな』
ライラックさんの声に彼の方を見ると、微笑ましそうにオレらを見て来ていた
『よくやってたよね〜。その度に、ライラックが顔真っ赤にしてそっぽ向いてたっけ』
クスクスと楽しそうに笑いながら、アルタイルがライラックさんを見てる
そんな彼女に、ライラックさんはただ苦笑いしていた
……シアのこの仕草は、アイリーンさん譲りだったんだな……
「ところで……レグルスの話って、もう終わってるの…?」
和やかな雰囲気の中、恐る恐るカロルが問いかけてくる
……そういや、そうだよな……
恐る恐る、レグルスの方を見る
「我が話さなければならんことはもう伝えた。後は好きにするが良い」
呆れ気味にため息をつきながら、レグルスは立ち上がっていた
怒ってはない……か……?
「…なんかごめん、レグルス」
「アリシアは謝らんでも良い。問題なのはシリウスなのだからな。全く……あやつは何度言えばわかるのだか……」
ブツブツと文句を言いながら、レグルスは部屋を後にして行った
ーーーーー
『……よかった……レグルス様まで怒らなくて……』
レグルスが出て行った扉の方を見ながら、リゲルが小さく呟いた
まぁ確かにそれもそうなんだけど……
「カープノス、あれ本当に話終わってると思う?」
『……終わってなどないだろうな……後から聞いていない事が山ほど出てきそうだ……』
大きくため息をつきながら、カープノスが扉の方を睨んでいた
「だーよねぇ……まぁ、話中断させちゃった私が言えたことじゃないけどさ?」
苦笑いしながら、扉を見つめた
『シリウス、あなたのせいですよ?』
アリオトの声に振り返ると、シリウスとアリオトが窓をよじ登っていた
『……すまん』
『あら、そう思うのであれば、レグルス様を問い詰めるのは、貴方にお任せしましたからね?』
謝るシリウスを、意地の悪い笑みを浮かべならがらペテルギウスは見ている
……この光景を見るのも、久しぶりだなぁ
「そういやシア、墓所の下って、お前も行ったことあんだよな?」
そんな呑気な事を考えていたら、不意にユーリが問いかけてきた
「あー……うん、まぁ……一応」
ユーリの問いに、少し答えたくなくて言葉を濁す
あんまり話したくないんだよなぁ……
「歯切れ悪ぃな……そんなに嫌か?」
頭に手を乗せながら更に聞いてくる
「いい思い出ないからねぇ……怨念のなり損ないはウヨウヨいるし、『あいつ』は邪魔して来るし……面倒なんだよね」
小さくため息をつきながら答える
思い出しただけで嫌になる……
けど、行かなきゃいけないからね
「あの……その『あいつ』って、誰の事なんです?」
少し聞きづらそうにエステルが問いかけてくる
その問いに、私を含めた星暦全員が顔を背けた
「え……なんでみんな揃ってそんな反応なの……?」
若干引き気味にカロルが問いかけてくる
『……悪いが俺も『奴』に関しては話したくはない』
『……わたし、『あいつ』、嫌い……』
『……ぼくらだって、正直『あいつ』に、会いたくない……』
『できる事なら、視界に入れたくないですね……』
『……怨念の問題さえなければ、近づきたくもありませんわ』
『ボクらにとっても彼処は必要だから、壊せないのわかってて、煽って来るし……っ!』
『祓っても祓っても延々なり損ないは生み出すし……っ!』
『顔を合わせる度……何度斬り殺そうかと思った事か……っ!』
『レグルス様が言うから、我慢してるだけだって言うのによ……っ!』
『……思い出しただけで、ムカついてきた……っ!』
『『奴』のせいで、何度面倒な事が起こった事か……』
『……いい加減、私達も我慢が限界よね?』
みんな揃って、ワナワナと震え始める
……うん、そうだよね……なんだかんだ言って、みんなも嫌だよね……
「……全員苛立ってると、更におっかないわね……」
若干引き気味にレイヴンが私達を見回した
事情を知らないから、それも無理ないんだけど…
「……まぁ、会えばわかるから、今は聞かないで欲しいな?……じゃないと、私含めて本気でキレそうだから」
少し声のトーンを落として答える
ホント、思い出したくない……
「シアが言うと、マジでそうなるからな……もうこの話、やめとこうぜ?」
ユーリがそう言うと、みんな同時に頷いてた
「……つーか、いつまでそうしてるつもりだよ?フレン」
呆れ気味なユーリの声に、フレンの方を見ると未だに座って俯いてた
……そう言えば、さっきからずーっと声聞いてないや……
「フレンー?」
私が声を掛けると、ガバッと勢いよくフレンが顔を上げる
その勢い……首痛くないのかな……
「……二人とも、ちょっといいかい?」
ニコッと笑顔を浮かべながらそう言ってくるけど……
……目、笑ってないし……
「げ……めちゃくちゃキレてる……」
小さく呟いて、ユーリの後ろに隠れた
怒ったフレン、怖いんだよね……
「おーい、シア?オレ盾にすんのやめねえか?」
「……やだ、キレてるフレン怖いし」
絶対に動きたくなくて、ギュッとユーリの服を掴む
「だとさ?」
「……誰のせいでキレてるんだと……っ!」
ガタンッと音を立てて、フレンが立ち上がった
あ……しまった、余計に怒らせた……
「あら、二人に怒るのは違うんじゃないかしら?」
「のじゃ。怒る相手はカロルの方なのじゃ」
フレンに向かって、ジュディスとパティがそう告げる
あれ……なんか助けてくれてる…?
「うっ……ほ、本当にごめんなさーい!!!」
少し泣きそうな声でカロルがフレンに頭を下げていた
「……確かにカロルも悪いけど……そもそも、君たちが勝手に居なくなったりしなければ、こうはなっていないんだけど……?!」
それでも尚、フレンは怒ってる
うー……これ、どうしたらいいんだろ……
「へいへい、そりゃ悪かったよ」
全く謝る気のないユーリの声が聞こえてくる
それ……火に油注いでない……?
「全く……君ってやつは……」
そう言って、深くため息をつくと、フレンは項垂れてしまった
……とりあえず、怒りは収まった……のかな?
『ねぇ、そろそろさ?二人が今まで何してたか、話してくれても良くない〜?』
アルタイルの声にユーリの背からチラッと覗くと、ニヤニヤと笑いながら私たちを見てきてる
うげ…あれ、からかう気満々じゃん……
「ふふ、そうね?私達も知りたいわ」
ジュディスもクスッと笑いながら問いかけてくる
「何……っつっても、色々見て回ってただけなんだけど?」
ユーリが肩を竦めながらそう答える
まぁ……確かにそうとしか言えないよね……
「色々とは言うけどもよ?何見て来たかくらい教えてくれてもいいんでないの〜?」
ニヤニヤ笑ってくるレイヴンに、若干殺意が芽生える
なんでレイヴンだけ、こんなにムカつくんだろ……
「…僕はそれより、『子どもっぽさが増した』って事の方が、気になるけど?」
ちょっと不機嫌そうな声で、フレンが問いかけてくる
「えー……それ聞かれても……そんなに子どもっぽかった?」
ユーリを見上げながら首を傾げた
「あからさまに前より子どもっぽさ増してんだろ?誰だよ、この前エゴソーの森の近くの浜辺ではしゃいで、波にさらわれかけてたやつ」
ちょっと呆れ気味に、ユーリが言ってくる
……言われてみれば、心当たりがないわけでもない……かも……?
「……そんな事も、あったっけ……?」
ちょっと気まずくなって、視線を逸らせた
「ハルルじゃ、落ちてくる花びら必死で取ろうとしてたし、ノードポリカじゃ花火見てはしゃいでるし、テムザ山じゃ遠く見つめすぎて、崖から足踏み外しかけるし、寒いの苦手なくせに、ゾフェル氷刃海の近くじゃ、雪玉作って投げまくってきたろ?これのどこが子どもっぽさ増してねえって言うんだよ?」
……人に言われると、確かに子どもっぽい……
急に恥ずかしくなって、顔を背けた
「……思ってた以上なんだけど……ガキんちょよりも子どもっぽいじゃない」
呆れたようなリタの声に、言葉に詰まった
いやだって……楽しかったから……
「どこ行っても大抵はしゃいでんだよな……まぁ……一番は闘技場だったけどな……」
私の頬を突きながら、ユーリが困ったようにそう言ってきた
『あー……何となく、わかるかも……』
「えと……そんなに、です?」
「……200人斬り参加して、圧勝してきたからな……さすがに、ありゃ相手に同情しそうだったわ」
チラッとユーリの方に視線を向けると、困ったように笑っていた
『……まさか、術技使ってなんて……ない、よね?』
恐る恐るポルックスが問いかけてくる
「あー、いや、そりゃ使ってねえけどな?……使ってなくとも、可哀想だったんだよ」
少し言いにくそうに、ユーリはそう言ってポルックスの方に視線を向けてた
「え?なんで?」
「……楽しそうに笑いながら刀振り回してるシア想像してみ?さすがに同情するだろ」
ユーリの言葉に、お父様とシリウス以外が、あー…っと声を上げた
その反応に、ちょっとムッとした
「その言い方は酷いと思う…」
少し頬を膨らませて、ジーッとユーリを見つめる
「ライラックさんやシリウス相手でそれすんのは構わねえんだけどさ?さすがにそれ以外のヤツの前で、あれはやめてやれって。実況も引いてたろ?」
……言われてみれば……そう、かも?
「……次は気をつける」
あんまり納得はいかないけど、大人しく頷いた
『あら、珍しいですわ。アリシアが大人しく頷くなんて』
ペテルギウスの声に視線を向けると、驚いた顔をして私を見てきていた
「……夢でも見ているのかな……」
そう言って、フレンが少し頭を抱えた
「ちょっ、フレン!さすがにそれは酷すぎるっ!!」
いくらなんでも、その言い方はないじゃんっ!!
『……無理無茶はしなくなったが……お転婆なのはそのまま、という事か……いやむしろ酷くなったのか……?』
『ははっ!!よいではないかっ!別に危ない事をしていたわけではないのだか』
『いや十分危ねぇことしてたろ!?』
『そうだよ!!波にさらわれかけるって何!?崖から足踏み外しかけるって何さぁぁ!?!!』
お父様の言葉を遮るように、唐突にカストロとポルックスが叫び出す
びっくりして二人の方を見ると、少し怒った顔をしていた
「本当に……どこ行っても、はしゃいでたんだね…アリシア……」
「ふふ、いいじゃない、可愛らしくて」
「あのー……ジュディスちゃん?可愛らしいじゃ済まないこともしちゃってるんだけんども……?」
こっちはこっちで、揃って呆れたような顔をしていた
『あのさぁ、アリシア?怪我でもしたら、どうするつもりだったの?』
大きくため息をつきながら、アルタイルが私を見てくる
「いや……だって落ちても飛べるし……さらわれても戻って来れるし……?」
そう答えると、更に大きくため息をつかれた
『……そうじゃん……アリシア今、ここに居る誰よりも自由に力使えるんじゃん……』
『レグルス様のやらかしが、ここに来て牙を向いていますわね……』
『……やっぱり、もう少し叱っておいた方が……よかったかもね、アリオト?』
『……今からでも遅くはないでしょう』
鉄扇を取り出しながら、アリオトがドス黒い笑みを浮かべたのが視界に映った
……あ、なんかレグルスに飛び火しちゃった
ごめん、レグルス……怒られといて
「なんか……思ってたより、大騒ぎになってる?」
「そりゃそうだろうな。……だから言ったろ?気をつけてくれって」
「……というか、何も別にこんな話、しなくたってよかったじゃん……」
ムッと頬を膨らませながら、ユーリを見上げる
私が恥ずかしい思いしただけじゃん……
「そう言うけどな?エステルにゃ手紙で教えてたし、ライラックさん達には伝言伝えてたんだし、どの道どっかでバレただろ?」
ニヤッと笑いながら、ユーリが私を見てくる
……ああ、だからエステル……さっきあんな顔してたのか……
いや、だとしても、なんだけど……
あんまり納得いかなくて、頬を膨らませたままユーリを見つめてると、急に耳元に顔を近づけてきた
「……後、オレが自慢したかっただけ。シアのそういう可愛いとこ見れんの、オレだけだぜって」
小さく囁かれた言葉に、ドキッとした
……もう、ホント、平気でそう言うこと言うんだから……
「……もう……バーカ……//」
ほんの少し、頬が熱い
引っ付かれるのは慣れたけど、やっぱりまだこういう事を言われるのは慣れない
視界の端に映るユーリは、どこか嬉しそうに微笑んでる
「あんたら……いい加減イチャつくのやめてくんない?」
リタの声に、みんなの方を見ると、揃って私達を見てきていた
呆れた顔してる人もいれば、微笑ましそうに見てたり、自分の事みたいに恥ずかしそうにしてたり……
……いやと言うか、そんなに見られても私だって困るんだけど…
「リタ、それ、私じゃなくて、ユーリに言ってよ?」
ちょっと途切れ途切れになりながら、そう答える
「おーい、そりゃねえだろ?」
「人前でイチャつこうとするの、ユーリの方だもん。私、人前じゃやらないよ?」
そう言うと、ユーリはただ苦笑いしていた
『……そう言えば……アリシア、あなた今日、何か用事があるって言っていなかったかしら?』
不意にお母様がそう声を掛けてくる
……用事……?
『確かにこの前の伝言で、そんなことを言っていたな。『大事な用がある』と……済ませて来たのか?』
首を傾げながら、お父様が問いかけてくる
用事……用事……用………あっ……!?
「……まっずい、忘れてた……」
大きくため息をつきながら項垂れた
しまった……怒ってるかなぁ……
「用事……?……あっ!!」
ユーリも思い出したみたいで、少しヤバそうな声を上げていた
「シア、さっさと行った方がいいんじゃねえか?じゃねえと『あの人』、心配してんだろ?」
顔を上げると、ユーリがまずそうに顔を顰めて私を見ていていた
「うげ……やっぱそうだよねぇ……ホント過保護なんだから……もうそろそろ、子ども扱いしないで欲しいんだけど……」
「はっは、そりゃ諦めろ。『あの人』にとっちゃ、シアはいつまでも可愛い『妹』なんだからさ」
クスクスと笑いながら、ユーリはそう言ってくる
いやまぁ、確かにそうなのかもしれないけど……
『……『妹』……?』
ユーリと二人、そんな会話をしてたら、少し不機嫌そうなシリウスの声が聞こえた
……あ、まずい、これカープノスとレグルス、お父様達以外、誰にも話してないやつ……っ!
「……ユーリ、後、お願いね?私…………怒られる前に行ってくるーーっ!!」
『おい待てっ!!アリシアっ!?怒られるとは『誰』にだ、『誰』にっ!?』
シリウスの怒鳴り声を無視して、急いで指を弾いた
ーーーー
「……はぁ……ったく、全部押し付けやがって……」
さっきまでシアが居たところを見つめながら苦笑いする
さて……どうしたもんかねえ……
「……ユーリ?」
ドスの効いたフレンの声が聞こえる
シリウスだけじゃなく、こっちもお怒りだな……
「なんだよ?」
渋々フレンの方を見りゃ、あからさまに怒った時の笑顔を浮かべてやがった
「『あの人』……って、誰のことだい?」
言い訳は聞かねえって顔して、オレの事を見てくる
それは、殆どのヤツが同じだった
……しゃあねえか……
「誰も何も……アレクセイ以外いるか?シアのこと妹って言うヤツ」
「あたしらは、なんでその『アレクセイ』が、あの子と会う約束できてるのか知りたいんだけど……!?」
『そうだよ!!だって、あいつ、白匣 を使うタイミングも、素質だってなかったのに……っ!!』
リタとカペラの声を合図に、一気に全員揃って詰め寄ってきやがる
カープノスとライラックさん、アイリーンさんだけが、少し離れたところで苦笑いしてオレの方を見てきていた
「いや、なんでって言われてもな……オレも詳しい原理はわかんねえし……言えんのは、ちょこちょこ会ってるって事くらいで」
「そんなこと手紙にも書いていなかったじゃないですか!どうして隠してたんです!?」
オレの言葉を遮るように、エステルが被せてくる
さて……どうしたものかね……
説明しろと言われても、原理なんてわかんねえし……
……いや、ホント、助けてくんねえかな……カープノス
『……お前ら、ユーリに群がるな。そいつに聞いてもわからないぞ』
大きくため息をつきながら、ようやくカープノスが口を開いた
『カープノス……その言い方……知ってたの……?』
ベガが問いかけると、一斉にカープノスに視線が向いた
……こいつらも、いつの間にか、仲良いな……
『……だからなんだ?』
ぶっきらぼうにカープノスは問いに答えた
『お前……知ってて何故言わん!?』
『お前らがそうやって大騒ぎするからだろ……』
呆れ気味に、怒ったシリウスに返してるが……大丈夫か?あれ
「……一体、どういう事なのかしら?」
『そうだよ、ちゃんと説明して欲しい!』
ジュディとカペラの声に、カープノスは面倒そうに口を開く
『……奴が死んだのはザウデ不落宮だ。あそこは世界の中心、エアルとマナが、最も多く集まる場所だ。そんな場所で、後悔なんかを多く持ったまま死ねば、怨念とまでは行かずとも自ずとなり損ない程度の念は残る。……そんなこと、お前らは知ってるだろ?』
シリウス達を見回しながら、カープノスは告げる
その言葉に、シリウス達が口を噤んだ
「んー…けどそれって、危ないんじゃないの?」
「そうね。前に聞いた話では危険だと聞いていたけど」
二人の言う通り、前にアリオトに聞いた話じゃそういう話だった
……ただ、それは、『普通の人間』の話だ
『普通はな。……だが、遠縁だとしても、奴は腐っても星暦だ。普通の人間と比べ、怨念への抵抗力がある。だからこそ、今の今まで、怨念へとならずに、ただ意識だけが漂うだけで済んでいたのだ』
『『あの日』、あの子は確かに、彼に会っていたみたいなの。そのお陰で、あの子の後悔は消えたけど……でも、彼の中で、まだあの子を見届けたい気持ちが出てしまったようね』
カープノスの言葉に繋げるように、アイリーンさんが困ったように笑いながら答える
『……それで?何をしたのですか、カープノス?』
静かにアリオトは問いかける
『……屋敷に残っていた白匣 を使った。一年だけ、と言う約束でな』
少し言いづらそうにカープノスが答えた
「え、でもそれって、力がないと使えないんじゃ……?」
『確かに奴は、星暦としての力はほぼない。だが、完全にという訳ではなかったのだよ。多少はエアルをマナに変換できたようだからな
それさえできれば、意識を移すこと程度はできる』
カロルの問いに、ライラックさんは少し複雑そうな表情で答えた
『けどよ?それだと、おれらみたいには話せないだろ?』
『そうだよね?こうやって地上に現れる事だってできないだろうし……』
カストロとポルックスは不思議そうに顔を見合わせる
そんな二人から、カープノスは顔を背けた
……まぁ、言いにくいよな……
オレだって、知った時には驚いた
「屋敷に残ってた白匣 、狭間に行く為の機能が生きてたんだよ。……だから、アレクセイは今、そこにいる」
話しそうにないカープノスの代わりにそう答えた
「はぁ!?全部壊れてたんじゃなかったの!?」
最初に反応したのはリタだった
それもそうだよな……改良すんの、苦労したらしいから
「シアがぶっ壊したのは、レグルスのマナが流れてるやつだけだったらしいぜ?」
『……あの白匣 は仕様上、力と魂を移した時点で、初代のマナが流れるようにしてある。だから、何も設定がされていなかったライラックとアイリーンの白匣 も、狭間へ行く機能が壊れていた。……逆に言えば、未使用の物は壊されていないという事……それを使えば、一年程度なら奴を留めておけると、初代と判断したのだ』
顔は背けたまま、不機嫌そうにカープノスが言葉を繋げた
『んーと……ちょーっと待ってね……?』
アルタイルはそう言いながら、頭に手を当て俯く
『アレクセイの馬鹿が、今、狭間に居るって事を知ってたの……ユーリとカープノスだけじゃなくて……レグルス様と、ライラックとアイリーンも……って事であってる?』
「……ま、そうなるな?」
『……なーるほど……?』
小さくため息をつくと、アルタイルは一気に顔をあげた
『ユーリやカープノス、レグルス様はともかく……なんで二人まで教えてくれないのーー!?!!』
ライラックさんたちを睨みながら、アルタイルが大声を上げた
……近くにいたせいで、若干耳が痛い
『ははっ!いやぁすまんすまん。お前たちに教えれば、奴に文句を言う為に、是が非でもアリシアを探そうとするだろう?』
『折角重荷を下ろして、彼と二人きりになれてはしゃいで居たのに……それは可哀想じゃない?』
怒っている彼女に凄むことなく、少し呑気に二人は答える
……シアがシリウス達に怒られても響かないの……半分この人らのせいだろ……
『うぅ……っ!否定できないのが悔しい…っ!』
悔しそうに顔を顰めながら、アルタイルはまだ二人を睨んでいた
「ユーリが教えてくれなかったのも同じ理由かの?」
パティが首を傾げながらオレを見つめてくる
「いや?シアが言わないでくれって言うから言わなかっただけだよ」
「あら、どうしてかしら?」
「言ったら会わせてくれって大騒ぎするだろ?フレンが」
チラッとフレンを見ながら答える
どうやらそう言うつもりだったらしく、気まづそうにオレから顔を背けていた
「アリシアは……アレクセイにフレンを会わせたくないんです?」
「あー……いや、と言うよりか……」
『……邪魔されたくないんだろ。一年という、短い時間しか奴と話せる機会は残ってない。あの子にとっては……奴は憎むべき相手だったのと同時に、大好きな兄でもあったのだからな
残された時間を、少しでも多く独り占めしたいだけだろ』
呆れたようにため息をつきながら、カープノスがオレの代わりに言う
『あの子にとって、構ってくれないライラックの代わりに遊んでくれた、遊び相手でもあったものね?彼はいつだって、あの子が呼べば何をしていても必ず来たもの』
『……いけ好かん奴め……アリシアに止められる事さえなければ、八つ裂きにしていたというのに……』
クスクスと笑うアイリーンさんとは対照的に、ライラックさんは敵意丸出しだ
まぁ……気持ちはわかる
正直、オレもあんまり行って欲しくはねえしな
『あら……それでは、ユーリさんもお会いしていないのですか?』
「いや……最初に一度だけ会ったよ。それ以降は会ってねえけど……多分それなんだよな……シアが誰にも会わせたくない原因……」
ペテルギウスの問いにそう答えながら、肩を竦めた
『え、なんで?』
「……オレとアレクセイが、話しすぎたんだよ。あの人、一度シアの話し始めっと止まんねえんだよな」
頬を掻きながら顔を背けた
長いこと二人の間の空気が冷たかったせいで忘れてたが……あの人もシア大好き人間だったんだよな……
……ホント、ありゃ完全にやらかしだったな……
「……アリシア馬鹿が揃うと、あの子の自慢話ばっかしてそうね」
リタのため息が聞こえて、ほんの少し肩が跳ねてしまった
……実際その通りで、シアのどこが可愛いとか、昔はこうだっただとか……そんな話ばっか、オレとしてたんだよな……あの人……
……いや正直、オレは複雑だったんだけどな……
オレからしてみりゃ、あの人はシアを傷つけた張本人で、倒さなきゃいけねえ相手だったわけで……
『つーか、ユーリとライラックとアイリーンは、よく許したよな?』
『ねー?アリシアもだけど、ライラックとアイリーンはあいつのこと恨んでてもおかしくなかったのに……ユーリだって嫌いでしょ?』
不思議そうにカストロとポルックスは首を傾げる
『……アリシアに止められたのだよ。「怒るな」と』
『泣きそうな顔でそう言ってくるから、何も言えなかったのよね』
「あんな顔されちゃ、さすがに何も言えねえっすよね」
二人と顔を見合わせて、苦笑いした
まだ理由までは聞いてねえけど……
事情があった、のは確かなんだろう
……正直、聞いても許せる気になれるかわかんねえけどな……
『……とりあえず、事情はわかりました。私は少し……レグルス様の所へ行ってきますね?』
アリオトの声がした方向に顔を向けると、鉄扇片手に微笑んでる姿が目に入る
あーあ……レグルス……大丈夫か……?
あいつ今日かなり怒らせてると思うが……
『……じゃ、その間に……ユーリ?』
アリオトが出て行くと、オレの事を呼びながらリゲルが飛びついて来た
『……ここ半年のアリシアの事……教えて?』
そう言いながら、ベガも引っ付いてくる
相変わらず……この二人はオレに引っ付くのが好きだな……
『あ、それいいね!ボクも知りたい!』
『あー!ちょっと!私も混ぜてよ!』
『んじゃおれも!』
『それなら僕も!』
そう言うが早いか、四人もオレに飛びついてくる
「うぉ…っ!?……あのなぁ……さすがにこりゃねえんじゃねえのか……?」
苦笑いしながら、引っ付いている奴らを見回す
……参ったなこりゃ……
「モテモテねえ〜大将?」
「ふふ、そうね」
ニヤニヤと笑いながら、おっさんとジュディがオレの方を見てきている
……さすがに勘弁して欲しいんだが……
「うちらにも聞かせて欲しいのじゃ!」
「ぼくも聞きたい!」
ニコニコと笑いながら、パティとカロルもオレを見てくる
……こりゃ、長くなりそうだな……
「ユーリ…いいの?あれ」
少し遠慮気味にカロルが問いかけてくる
「ん?何がだ?」
「何がって……シリウスとアリシア、戦わせていいんです?」
エステルの問いに窓の外を見つめた
怒っているシリウスとは対照的に、シアはどこか楽しそうに剣を交えている
「こんな部屋ん中で大剣ぶん回されるよりはいいだろ?それに、シアもやりたそうにしてたし、シリウス相手じゃ、無理無茶なんてしないだろうしな」
ほんの少しため息をつきながら頬杖をついた
……ホント、相変わらず刀振ってる時が一番楽しそうな顔すんな
楽しそうなシアを見ていたら、思わず頬が緩む
「ふふ、あなた達、前よりも随分仲がよくなったわね?」
ジュディの声に視線を向けると、微笑ましそうに笑いながら、オレを見て来ていた
「そうか?あんま変わってねえと思うけど?」
「よく言うわよ。あんた、ずーっとあの子に引っ付いてたじゃない」
リタの言葉に、若干肩が跳ねる
「着いてからずっと左手、アリシアちゃんの腰に回したまんまだったわよね〜いやぁほんっと!仲がいいわねぇ〜
おっさん妬いちゃいそうだったわ」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべて、おっさんがこっちを見てくる
「仲が良いのはいい事なのじゃ」
首を縦に振りながら、パティもニヤニヤと笑っていた
そんな反応がいたたまれなくて、全員から視線を逸らす
……しまった、いつもの癖で、つい腰に回した手どけんの忘れてたわ……
『……なぁ、シリウスがブチ切れてんの、目の前でイチャつかれたせいもあんじゃねえか?』
『あー……ありそう……ユーリに負けたくせに、未だに文句言ってるもんね』
窓の傍に寄っていたカストロとポルックスが、呆れ気味に呟いている
チラッと見ると、二人の視線は、どうやらシリウスに向いてるようだ
『器ちっさいよねぇ、シリウス。いい加減諦めたらいいのに』
『アリシアがユーリさんしか見てないのなんて、今に始まった事でもないしね?』
アルタイルとカペラがそう言い合う声が聞こえる
『でもさ……?ちょっと場所は考えて欲しい、かも……?』
『……目の前でそういうことされるの……見てるこっちが恥ずかしいかも……』
リゲルとベガの声に、二人を見るとほんの少しだけ、頬が赤く染まっていた
……そこまでの事をした覚えはねえんだけど……
『あら、そうかしら?ライラックだっていつもそうよ?』
『『え…っ!?』』
アイリーンさんの声に、リゲルとベガが勢いよく彼女の方を振り返った
『なっ!!アイリーン……っ!』
隣にいたライラックさんが、あからさまに動揺している
『今だって、こんな話していても、手は離してくれないもの』
クスクスと笑いながらアイリーンさんが右手を上げると、しっかりとライラックさんは彼女の手を握っていた
『〜〜っ!!なっ、何故バラす!?//』
『あら、だって彼だけが弄られては可哀想よ?あなただって、しょっちゅう私に引っ付いて、離れようとはしてくれないでしょう?』
依然、クスクスと笑っている彼女の隣で、ライラックさんは顔を隠そうと右手を額に当てながら項垂れていた
そういや……ライラックさんって、シアも大事にしてたが、それ以上にアイリーンさんが大事だったな
『……恥ずかしい割に、手……離さないんだ……』
呆れたようにカペラがつっこむが、ライラックさんには聞こえていないらしく、全く動く気配がない
『……今更何を恥ずかしがっているんだ、ライラック?お前のそれは、今に始まった事じゃないだろ……』
呆れ気味にため息をつきながらカープノスが声をかけるが、それも聞こえていないらしい
……あれ、大丈夫か?
「全く……お主らめ……」
レグルスが呆れ気味に深くため息をついていた
「……ところで……あれ、いつ終わります……?」
窓の外を指さしながら、エステルが遠慮気味に問いかけてくる
窓の外に視線を戻すと、二人の戦いはまだ終わりそうにねえ
……ホント、楽しそうだな
『……もう、終わるよ』
ベガがそう言った瞬間、ドーンッと大きな地鳴りがした
その音に、オレも含めて全員が慌てて窓に駆け寄って、窓を押し開けた
「はいっ!私の勝ち〜っ!」
刀を収めながら、シアはニコッと笑っていた
少し離れた所で、シリウスが地面に突っ伏している
前にも……見たな、この光景……
『う……アリシア……それは、反則、だろ……っ』
小さく唸りながら、シリウスは顔を上げてシアを観ている
「本気で向かってきたのはシリウスの方じゃん?だから本気で返してあげただけだけど……嫌だった?」
シリウスの前でしゃがんで、彼女は首を傾げた
その仕草に、シリウスは目を見開いていた
が、すぐに諦めたように目を閉じて、体を反転させた
『……いや、完全に俺の負けだな……まさか、本気を出してやって、負けるとはな……』
悔しそうだが、どこか嬉しそうにシリウスは呟いた
そんなシリウスに、シアはニッコリと微笑んだ
……シリウスも、『あれ』やられっとそうなんだな……
「……あ、アリオト〜、後頼んでもいい?」
アリオトを見ながら、シアはそう言って彼女を手招きした
『……これは、シリウスの惨敗のようですね……』
ほんの少し困ったように彼女は笑うと、窓から飛び出してシリウスに駆け寄った
彼女が駆け寄ったのと入れ替わるように、シアが窓に近づいて来る
「シア、ありゃまたやり過ぎじゃねえか?」
窓の縁で頬杖をつきながら問いかける
「そう?本気で来たから本気で返しただけなんだけど……」
少し肩を竦めて、シアは答える
「まっ、怪我してねえみたいだからいいんだけどな。……ほれ」
頬杖をついていた手をシアに伸ばす
一瞬驚いたように目を見開いていたが、すぐにクスッと笑ってオレの手を取った
「よっ……と」
手を握って引き上げる
あの日と同じように、少し浮いたシアの体を抱き上げる
……あの日と違うのは、シアが嬉しそうにニコニコと笑ってることくらい、だな
「……あんたもだいぶ変わったわよね」
若干驚いたように、リタが問いかけてくる
「そうかな?」
リタの方を向いて、シアは首を傾げた
「前は恥ずかしがってたじゃない」
腕を組みながらリタが言うと、シアは小さく「あー…」っと呟いた
「そりゃ……ここ半年ずーっと引っ付かれてたし、さすがに慣れたよ」
「そう言うシアだって、しょっちゅう自分から引っ付いてくんだろ?」
シアを下ろしながら言うと、ニヤッといたずらっ子のように笑って見上げてくる
「嫌だった?」
首を傾げてオレを見上げながら、ほんの少し体を屈めて、シアが見つめてくる
その仕草に心臓が若干跳ねる
「……シア、頼むからそれやめてくれって」
シアから顔を背けながら、左手で口元を隠して言う
頼むから……ホント、勘弁して欲しいわ……
なんでこんなに可愛いことしてくんだよ……
顔を背けたまま、チラッとシアを見ると、満足そうに微笑んでいた
「……やっぱ変わったわね……あんた…」
シアの行動に、リタが驚いたような声を上げていた
それもそうだよな……半年前までのシアじゃ、こんなこと中々しなかったしな
「大将も形なしねぇ〜……」
ほんの少し同情するようなおっさんの声が聞こえる
「……最近、的確なタイミングでやってくっから困ってんだよな」
苦笑いしながら、シアに視線を戻した
「本気で困ってなんてないでしょ?」
オレを見つめながらシアはニヤッと笑う
いやまぁ……確かにそうなんだが……
何も言い返せなくて、ただ肩を竦めてシアを見つめ返した
『……いつの間にか、アイリーンに似たな』
ライラックさんの声に彼の方を見ると、微笑ましそうにオレらを見て来ていた
『よくやってたよね〜。その度に、ライラックが顔真っ赤にしてそっぽ向いてたっけ』
クスクスと楽しそうに笑いながら、アルタイルがライラックさんを見てる
そんな彼女に、ライラックさんはただ苦笑いしていた
……シアのこの仕草は、アイリーンさん譲りだったんだな……
「ところで……レグルスの話って、もう終わってるの…?」
和やかな雰囲気の中、恐る恐るカロルが問いかけてくる
……そういや、そうだよな……
恐る恐る、レグルスの方を見る
「我が話さなければならんことはもう伝えた。後は好きにするが良い」
呆れ気味にため息をつきながら、レグルスは立ち上がっていた
怒ってはない……か……?
「…なんかごめん、レグルス」
「アリシアは謝らんでも良い。問題なのはシリウスなのだからな。全く……あやつは何度言えばわかるのだか……」
ブツブツと文句を言いながら、レグルスは部屋を後にして行った
ーーーーー
『……よかった……レグルス様まで怒らなくて……』
レグルスが出て行った扉の方を見ながら、リゲルが小さく呟いた
まぁ確かにそれもそうなんだけど……
「カープノス、あれ本当に話終わってると思う?」
『……終わってなどないだろうな……後から聞いていない事が山ほど出てきそうだ……』
大きくため息をつきながら、カープノスが扉の方を睨んでいた
「だーよねぇ……まぁ、話中断させちゃった私が言えたことじゃないけどさ?」
苦笑いしながら、扉を見つめた
『シリウス、あなたのせいですよ?』
アリオトの声に振り返ると、シリウスとアリオトが窓をよじ登っていた
『……すまん』
『あら、そう思うのであれば、レグルス様を問い詰めるのは、貴方にお任せしましたからね?』
謝るシリウスを、意地の悪い笑みを浮かべならがらペテルギウスは見ている
……この光景を見るのも、久しぶりだなぁ
「そういやシア、墓所の下って、お前も行ったことあんだよな?」
そんな呑気な事を考えていたら、不意にユーリが問いかけてきた
「あー……うん、まぁ……一応」
ユーリの問いに、少し答えたくなくて言葉を濁す
あんまり話したくないんだよなぁ……
「歯切れ悪ぃな……そんなに嫌か?」
頭に手を乗せながら更に聞いてくる
「いい思い出ないからねぇ……怨念のなり損ないはウヨウヨいるし、『あいつ』は邪魔して来るし……面倒なんだよね」
小さくため息をつきながら答える
思い出しただけで嫌になる……
けど、行かなきゃいけないからね
「あの……その『あいつ』って、誰の事なんです?」
少し聞きづらそうにエステルが問いかけてくる
その問いに、私を含めた星暦全員が顔を背けた
「え……なんでみんな揃ってそんな反応なの……?」
若干引き気味にカロルが問いかけてくる
『……悪いが俺も『奴』に関しては話したくはない』
『……わたし、『あいつ』、嫌い……』
『……ぼくらだって、正直『あいつ』に、会いたくない……』
『できる事なら、視界に入れたくないですね……』
『……怨念の問題さえなければ、近づきたくもありませんわ』
『ボクらにとっても彼処は必要だから、壊せないのわかってて、煽って来るし……っ!』
『祓っても祓っても延々なり損ないは生み出すし……っ!』
『顔を合わせる度……何度斬り殺そうかと思った事か……っ!』
『レグルス様が言うから、我慢してるだけだって言うのによ……っ!』
『……思い出しただけで、ムカついてきた……っ!』
『『奴』のせいで、何度面倒な事が起こった事か……』
『……いい加減、私達も我慢が限界よね?』
みんな揃って、ワナワナと震え始める
……うん、そうだよね……なんだかんだ言って、みんなも嫌だよね……
「……全員苛立ってると、更におっかないわね……」
若干引き気味にレイヴンが私達を見回した
事情を知らないから、それも無理ないんだけど…
「……まぁ、会えばわかるから、今は聞かないで欲しいな?……じゃないと、私含めて本気でキレそうだから」
少し声のトーンを落として答える
ホント、思い出したくない……
「シアが言うと、マジでそうなるからな……もうこの話、やめとこうぜ?」
ユーリがそう言うと、みんな同時に頷いてた
「……つーか、いつまでそうしてるつもりだよ?フレン」
呆れ気味なユーリの声に、フレンの方を見ると未だに座って俯いてた
……そう言えば、さっきからずーっと声聞いてないや……
「フレンー?」
私が声を掛けると、ガバッと勢いよくフレンが顔を上げる
その勢い……首痛くないのかな……
「……二人とも、ちょっといいかい?」
ニコッと笑顔を浮かべながらそう言ってくるけど……
……目、笑ってないし……
「げ……めちゃくちゃキレてる……」
小さく呟いて、ユーリの後ろに隠れた
怒ったフレン、怖いんだよね……
「おーい、シア?オレ盾にすんのやめねえか?」
「……やだ、キレてるフレン怖いし」
絶対に動きたくなくて、ギュッとユーリの服を掴む
「だとさ?」
「……誰のせいでキレてるんだと……っ!」
ガタンッと音を立てて、フレンが立ち上がった
あ……しまった、余計に怒らせた……
「あら、二人に怒るのは違うんじゃないかしら?」
「のじゃ。怒る相手はカロルの方なのじゃ」
フレンに向かって、ジュディスとパティがそう告げる
あれ……なんか助けてくれてる…?
「うっ……ほ、本当にごめんなさーい!!!」
少し泣きそうな声でカロルがフレンに頭を下げていた
「……確かにカロルも悪いけど……そもそも、君たちが勝手に居なくなったりしなければ、こうはなっていないんだけど……?!」
それでも尚、フレンは怒ってる
うー……これ、どうしたらいいんだろ……
「へいへい、そりゃ悪かったよ」
全く謝る気のないユーリの声が聞こえてくる
それ……火に油注いでない……?
「全く……君ってやつは……」
そう言って、深くため息をつくと、フレンは項垂れてしまった
……とりあえず、怒りは収まった……のかな?
『ねぇ、そろそろさ?二人が今まで何してたか、話してくれても良くない〜?』
アルタイルの声にユーリの背からチラッと覗くと、ニヤニヤと笑いながら私たちを見てきてる
うげ…あれ、からかう気満々じゃん……
「ふふ、そうね?私達も知りたいわ」
ジュディスもクスッと笑いながら問いかけてくる
「何……っつっても、色々見て回ってただけなんだけど?」
ユーリが肩を竦めながらそう答える
まぁ……確かにそうとしか言えないよね……
「色々とは言うけどもよ?何見て来たかくらい教えてくれてもいいんでないの〜?」
ニヤニヤ笑ってくるレイヴンに、若干殺意が芽生える
なんでレイヴンだけ、こんなにムカつくんだろ……
「…僕はそれより、『子どもっぽさが増した』って事の方が、気になるけど?」
ちょっと不機嫌そうな声で、フレンが問いかけてくる
「えー……それ聞かれても……そんなに子どもっぽかった?」
ユーリを見上げながら首を傾げた
「あからさまに前より子どもっぽさ増してんだろ?誰だよ、この前エゴソーの森の近くの浜辺ではしゃいで、波にさらわれかけてたやつ」
ちょっと呆れ気味に、ユーリが言ってくる
……言われてみれば、心当たりがないわけでもない……かも……?
「……そんな事も、あったっけ……?」
ちょっと気まずくなって、視線を逸らせた
「ハルルじゃ、落ちてくる花びら必死で取ろうとしてたし、ノードポリカじゃ花火見てはしゃいでるし、テムザ山じゃ遠く見つめすぎて、崖から足踏み外しかけるし、寒いの苦手なくせに、ゾフェル氷刃海の近くじゃ、雪玉作って投げまくってきたろ?これのどこが子どもっぽさ増してねえって言うんだよ?」
……人に言われると、確かに子どもっぽい……
急に恥ずかしくなって、顔を背けた
「……思ってた以上なんだけど……ガキんちょよりも子どもっぽいじゃない」
呆れたようなリタの声に、言葉に詰まった
いやだって……楽しかったから……
「どこ行っても大抵はしゃいでんだよな……まぁ……一番は闘技場だったけどな……」
私の頬を突きながら、ユーリが困ったようにそう言ってきた
『あー……何となく、わかるかも……』
「えと……そんなに、です?」
「……200人斬り参加して、圧勝してきたからな……さすがに、ありゃ相手に同情しそうだったわ」
チラッとユーリの方に視線を向けると、困ったように笑っていた
『……まさか、術技使ってなんて……ない、よね?』
恐る恐るポルックスが問いかけてくる
「あー、いや、そりゃ使ってねえけどな?……使ってなくとも、可哀想だったんだよ」
少し言いにくそうに、ユーリはそう言ってポルックスの方に視線を向けてた
「え?なんで?」
「……楽しそうに笑いながら刀振り回してるシア想像してみ?さすがに同情するだろ」
ユーリの言葉に、お父様とシリウス以外が、あー…っと声を上げた
その反応に、ちょっとムッとした
「その言い方は酷いと思う…」
少し頬を膨らませて、ジーッとユーリを見つめる
「ライラックさんやシリウス相手でそれすんのは構わねえんだけどさ?さすがにそれ以外のヤツの前で、あれはやめてやれって。実況も引いてたろ?」
……言われてみれば……そう、かも?
「……次は気をつける」
あんまり納得はいかないけど、大人しく頷いた
『あら、珍しいですわ。アリシアが大人しく頷くなんて』
ペテルギウスの声に視線を向けると、驚いた顔をして私を見てきていた
「……夢でも見ているのかな……」
そう言って、フレンが少し頭を抱えた
「ちょっ、フレン!さすがにそれは酷すぎるっ!!」
いくらなんでも、その言い方はないじゃんっ!!
『……無理無茶はしなくなったが……お転婆なのはそのまま、という事か……いやむしろ酷くなったのか……?』
『ははっ!!よいではないかっ!別に危ない事をしていたわけではないのだか』
『いや十分危ねぇことしてたろ!?』
『そうだよ!!波にさらわれかけるって何!?崖から足踏み外しかけるって何さぁぁ!?!!』
お父様の言葉を遮るように、唐突にカストロとポルックスが叫び出す
びっくりして二人の方を見ると、少し怒った顔をしていた
「本当に……どこ行っても、はしゃいでたんだね…アリシア……」
「ふふ、いいじゃない、可愛らしくて」
「あのー……ジュディスちゃん?可愛らしいじゃ済まないこともしちゃってるんだけんども……?」
こっちはこっちで、揃って呆れたような顔をしていた
『あのさぁ、アリシア?怪我でもしたら、どうするつもりだったの?』
大きくため息をつきながら、アルタイルが私を見てくる
「いや……だって落ちても飛べるし……さらわれても戻って来れるし……?」
そう答えると、更に大きくため息をつかれた
『……そうじゃん……アリシア今、ここに居る誰よりも自由に力使えるんじゃん……』
『レグルス様のやらかしが、ここに来て牙を向いていますわね……』
『……やっぱり、もう少し叱っておいた方が……よかったかもね、アリオト?』
『……今からでも遅くはないでしょう』
鉄扇を取り出しながら、アリオトがドス黒い笑みを浮かべたのが視界に映った
……あ、なんかレグルスに飛び火しちゃった
ごめん、レグルス……怒られといて
「なんか……思ってたより、大騒ぎになってる?」
「そりゃそうだろうな。……だから言ったろ?気をつけてくれって」
「……というか、何も別にこんな話、しなくたってよかったじゃん……」
ムッと頬を膨らませながら、ユーリを見上げる
私が恥ずかしい思いしただけじゃん……
「そう言うけどな?エステルにゃ手紙で教えてたし、ライラックさん達には伝言伝えてたんだし、どの道どっかでバレただろ?」
ニヤッと笑いながら、ユーリが私を見てくる
……ああ、だからエステル……さっきあんな顔してたのか……
いや、だとしても、なんだけど……
あんまり納得いかなくて、頬を膨らませたままユーリを見つめてると、急に耳元に顔を近づけてきた
「……後、オレが自慢したかっただけ。シアのそういう可愛いとこ見れんの、オレだけだぜって」
小さく囁かれた言葉に、ドキッとした
……もう、ホント、平気でそう言うこと言うんだから……
「……もう……バーカ……//」
ほんの少し、頬が熱い
引っ付かれるのは慣れたけど、やっぱりまだこういう事を言われるのは慣れない
視界の端に映るユーリは、どこか嬉しそうに微笑んでる
「あんたら……いい加減イチャつくのやめてくんない?」
リタの声に、みんなの方を見ると、揃って私達を見てきていた
呆れた顔してる人もいれば、微笑ましそうに見てたり、自分の事みたいに恥ずかしそうにしてたり……
……いやと言うか、そんなに見られても私だって困るんだけど…
「リタ、それ、私じゃなくて、ユーリに言ってよ?」
ちょっと途切れ途切れになりながら、そう答える
「おーい、そりゃねえだろ?」
「人前でイチャつこうとするの、ユーリの方だもん。私、人前じゃやらないよ?」
そう言うと、ユーリはただ苦笑いしていた
『……そう言えば……アリシア、あなた今日、何か用事があるって言っていなかったかしら?』
不意にお母様がそう声を掛けてくる
……用事……?
『確かにこの前の伝言で、そんなことを言っていたな。『大事な用がある』と……済ませて来たのか?』
首を傾げながら、お父様が問いかけてくる
用事……用事……用………あっ……!?
「……まっずい、忘れてた……」
大きくため息をつきながら項垂れた
しまった……怒ってるかなぁ……
「用事……?……あっ!!」
ユーリも思い出したみたいで、少しヤバそうな声を上げていた
「シア、さっさと行った方がいいんじゃねえか?じゃねえと『あの人』、心配してんだろ?」
顔を上げると、ユーリがまずそうに顔を顰めて私を見ていていた
「うげ……やっぱそうだよねぇ……ホント過保護なんだから……もうそろそろ、子ども扱いしないで欲しいんだけど……」
「はっは、そりゃ諦めろ。『あの人』にとっちゃ、シアはいつまでも可愛い『妹』なんだからさ」
クスクスと笑いながら、ユーリはそう言ってくる
いやまぁ、確かにそうなのかもしれないけど……
『……『妹』……?』
ユーリと二人、そんな会話をしてたら、少し不機嫌そうなシリウスの声が聞こえた
……あ、まずい、これカープノスとレグルス、お父様達以外、誰にも話してないやつ……っ!
「……ユーリ、後、お願いね?私…………怒られる前に行ってくるーーっ!!」
『おい待てっ!!アリシアっ!?怒られるとは『誰』にだ、『誰』にっ!?』
シリウスの怒鳴り声を無視して、急いで指を弾いた
ーーーー
「……はぁ……ったく、全部押し付けやがって……」
さっきまでシアが居たところを見つめながら苦笑いする
さて……どうしたもんかねえ……
「……ユーリ?」
ドスの効いたフレンの声が聞こえる
シリウスだけじゃなく、こっちもお怒りだな……
「なんだよ?」
渋々フレンの方を見りゃ、あからさまに怒った時の笑顔を浮かべてやがった
「『あの人』……って、誰のことだい?」
言い訳は聞かねえって顔して、オレの事を見てくる
それは、殆どのヤツが同じだった
……しゃあねえか……
「誰も何も……アレクセイ以外いるか?シアのこと妹って言うヤツ」
「あたしらは、なんでその『アレクセイ』が、あの子と会う約束できてるのか知りたいんだけど……!?」
『そうだよ!!だって、あいつ、
リタとカペラの声を合図に、一気に全員揃って詰め寄ってきやがる
カープノスとライラックさん、アイリーンさんだけが、少し離れたところで苦笑いしてオレの方を見てきていた
「いや、なんでって言われてもな……オレも詳しい原理はわかんねえし……言えんのは、ちょこちょこ会ってるって事くらいで」
「そんなこと手紙にも書いていなかったじゃないですか!どうして隠してたんです!?」
オレの言葉を遮るように、エステルが被せてくる
さて……どうしたものかね……
説明しろと言われても、原理なんてわかんねえし……
……いや、ホント、助けてくんねえかな……カープノス
『……お前ら、ユーリに群がるな。そいつに聞いてもわからないぞ』
大きくため息をつきながら、ようやくカープノスが口を開いた
『カープノス……その言い方……知ってたの……?』
ベガが問いかけると、一斉にカープノスに視線が向いた
……こいつらも、いつの間にか、仲良いな……
『……だからなんだ?』
ぶっきらぼうにカープノスは問いに答えた
『お前……知ってて何故言わん!?』
『お前らがそうやって大騒ぎするからだろ……』
呆れ気味に、怒ったシリウスに返してるが……大丈夫か?あれ
「……一体、どういう事なのかしら?」
『そうだよ、ちゃんと説明して欲しい!』
ジュディとカペラの声に、カープノスは面倒そうに口を開く
『……奴が死んだのはザウデ不落宮だ。あそこは世界の中心、エアルとマナが、最も多く集まる場所だ。そんな場所で、後悔なんかを多く持ったまま死ねば、怨念とまでは行かずとも自ずとなり損ない程度の念は残る。……そんなこと、お前らは知ってるだろ?』
シリウス達を見回しながら、カープノスは告げる
その言葉に、シリウス達が口を噤んだ
「んー…けどそれって、危ないんじゃないの?」
「そうね。前に聞いた話では危険だと聞いていたけど」
二人の言う通り、前にアリオトに聞いた話じゃそういう話だった
……ただ、それは、『普通の人間』の話だ
『普通はな。……だが、遠縁だとしても、奴は腐っても星暦だ。普通の人間と比べ、怨念への抵抗力がある。だからこそ、今の今まで、怨念へとならずに、ただ意識だけが漂うだけで済んでいたのだ』
『『あの日』、あの子は確かに、彼に会っていたみたいなの。そのお陰で、あの子の後悔は消えたけど……でも、彼の中で、まだあの子を見届けたい気持ちが出てしまったようね』
カープノスの言葉に繋げるように、アイリーンさんが困ったように笑いながら答える
『……それで?何をしたのですか、カープノス?』
静かにアリオトは問いかける
『……屋敷に残っていた
少し言いづらそうにカープノスが答えた
「え、でもそれって、力がないと使えないんじゃ……?」
『確かに奴は、星暦としての力はほぼない。だが、完全にという訳ではなかったのだよ。多少はエアルをマナに変換できたようだからな
それさえできれば、意識を移すこと程度はできる』
カロルの問いに、ライラックさんは少し複雑そうな表情で答えた
『けどよ?それだと、おれらみたいには話せないだろ?』
『そうだよね?こうやって地上に現れる事だってできないだろうし……』
カストロとポルックスは不思議そうに顔を見合わせる
そんな二人から、カープノスは顔を背けた
……まぁ、言いにくいよな……
オレだって、知った時には驚いた
「屋敷に残ってた
話しそうにないカープノスの代わりにそう答えた
「はぁ!?全部壊れてたんじゃなかったの!?」
最初に反応したのはリタだった
それもそうだよな……改良すんの、苦労したらしいから
「シアがぶっ壊したのは、レグルスのマナが流れてるやつだけだったらしいぜ?」
『……あの
顔は背けたまま、不機嫌そうにカープノスが言葉を繋げた
『んーと……ちょーっと待ってね……?』
アルタイルはそう言いながら、頭に手を当て俯く
『アレクセイの馬鹿が、今、狭間に居るって事を知ってたの……ユーリとカープノスだけじゃなくて……レグルス様と、ライラックとアイリーンも……って事であってる?』
「……ま、そうなるな?」
『……なーるほど……?』
小さくため息をつくと、アルタイルは一気に顔をあげた
『ユーリやカープノス、レグルス様はともかく……なんで二人まで教えてくれないのーー!?!!』
ライラックさんたちを睨みながら、アルタイルが大声を上げた
……近くにいたせいで、若干耳が痛い
『ははっ!いやぁすまんすまん。お前たちに教えれば、奴に文句を言う為に、是が非でもアリシアを探そうとするだろう?』
『折角重荷を下ろして、彼と二人きりになれてはしゃいで居たのに……それは可哀想じゃない?』
怒っている彼女に凄むことなく、少し呑気に二人は答える
……シアがシリウス達に怒られても響かないの……半分この人らのせいだろ……
『うぅ……っ!否定できないのが悔しい…っ!』
悔しそうに顔を顰めながら、アルタイルはまだ二人を睨んでいた
「ユーリが教えてくれなかったのも同じ理由かの?」
パティが首を傾げながらオレを見つめてくる
「いや?シアが言わないでくれって言うから言わなかっただけだよ」
「あら、どうしてかしら?」
「言ったら会わせてくれって大騒ぎするだろ?フレンが」
チラッとフレンを見ながら答える
どうやらそう言うつもりだったらしく、気まづそうにオレから顔を背けていた
「アリシアは……アレクセイにフレンを会わせたくないんです?」
「あー……いや、と言うよりか……」
『……邪魔されたくないんだろ。一年という、短い時間しか奴と話せる機会は残ってない。あの子にとっては……奴は憎むべき相手だったのと同時に、大好きな兄でもあったのだからな
残された時間を、少しでも多く独り占めしたいだけだろ』
呆れたようにため息をつきながら、カープノスがオレの代わりに言う
『あの子にとって、構ってくれないライラックの代わりに遊んでくれた、遊び相手でもあったものね?彼はいつだって、あの子が呼べば何をしていても必ず来たもの』
『……いけ好かん奴め……アリシアに止められる事さえなければ、八つ裂きにしていたというのに……』
クスクスと笑うアイリーンさんとは対照的に、ライラックさんは敵意丸出しだ
まぁ……気持ちはわかる
正直、オレもあんまり行って欲しくはねえしな
『あら……それでは、ユーリさんもお会いしていないのですか?』
「いや……最初に一度だけ会ったよ。それ以降は会ってねえけど……多分それなんだよな……シアが誰にも会わせたくない原因……」
ペテルギウスの問いにそう答えながら、肩を竦めた
『え、なんで?』
「……オレとアレクセイが、話しすぎたんだよ。あの人、一度シアの話し始めっと止まんねえんだよな」
頬を掻きながら顔を背けた
長いこと二人の間の空気が冷たかったせいで忘れてたが……あの人もシア大好き人間だったんだよな……
……ホント、ありゃ完全にやらかしだったな……
「……アリシア馬鹿が揃うと、あの子の自慢話ばっかしてそうね」
リタのため息が聞こえて、ほんの少し肩が跳ねてしまった
……実際その通りで、シアのどこが可愛いとか、昔はこうだっただとか……そんな話ばっか、オレとしてたんだよな……あの人……
……いや正直、オレは複雑だったんだけどな……
オレからしてみりゃ、あの人はシアを傷つけた張本人で、倒さなきゃいけねえ相手だったわけで……
『つーか、ユーリとライラックとアイリーンは、よく許したよな?』
『ねー?アリシアもだけど、ライラックとアイリーンはあいつのこと恨んでてもおかしくなかったのに……ユーリだって嫌いでしょ?』
不思議そうにカストロとポルックスは首を傾げる
『……アリシアに止められたのだよ。「怒るな」と』
『泣きそうな顔でそう言ってくるから、何も言えなかったのよね』
「あんな顔されちゃ、さすがに何も言えねえっすよね」
二人と顔を見合わせて、苦笑いした
まだ理由までは聞いてねえけど……
事情があった、のは確かなんだろう
……正直、聞いても許せる気になれるかわかんねえけどな……
『……とりあえず、事情はわかりました。私は少し……レグルス様の所へ行ってきますね?』
アリオトの声がした方向に顔を向けると、鉄扇片手に微笑んでる姿が目に入る
あーあ……レグルス……大丈夫か……?
あいつ今日かなり怒らせてると思うが……
『……じゃ、その間に……ユーリ?』
アリオトが出て行くと、オレの事を呼びながらリゲルが飛びついて来た
『……ここ半年のアリシアの事……教えて?』
そう言いながら、ベガも引っ付いてくる
相変わらず……この二人はオレに引っ付くのが好きだな……
『あ、それいいね!ボクも知りたい!』
『あー!ちょっと!私も混ぜてよ!』
『んじゃおれも!』
『それなら僕も!』
そう言うが早いか、四人もオレに飛びついてくる
「うぉ…っ!?……あのなぁ……さすがにこりゃねえんじゃねえのか……?」
苦笑いしながら、引っ付いている奴らを見回す
……参ったなこりゃ……
「モテモテねえ〜大将?」
「ふふ、そうね」
ニヤニヤと笑いながら、おっさんとジュディがオレの方を見てきている
……さすがに勘弁して欲しいんだが……
「うちらにも聞かせて欲しいのじゃ!」
「ぼくも聞きたい!」
ニコニコと笑いながら、パティとカロルもオレを見てくる
……こりゃ、長くなりそうだな……