第4部~星暦の行方と再会そして…~
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
光が収まって、一行が目を開けると、視界に映ったのは先程までの真っ暗な空間ではなく、一度ユーリも見た青い空間だった
「……なるほどな、奴がアリシアに取り憑けぬわけだ」
クスッと笑いながら、レグルスはアリシアを見た
その言葉に、アリシアはただ笑って返す
「……あー……終わった終わった〜」
呑気にそう言いながら、アリシアは白雷を収めて、レグルスから黒雷を受け取った
『終わった終わった〜…じゃないんだけど!?』
アルタイルの怒声が辺りに響いた
「そうよ!!さっきの何!?」
続いてリタも肩を鳴らしながら、アリシアに詰め寄った
「うげ……もう、だから言ったじゃん、レグルス。後が大変だって」
顔を顰めながら、アリシアはレグルスを見つめた
「別に無理も無茶もしておらんかっただろ?何をそんなに怒る必要が」
『それはアリシアだけだっ!!初代は突っ込んで行っただろ?!それのどこが無理無茶じゃないと言うんだ!?』
レグルスの言葉をかき消すように、カープノスが怒鳴り声を上げる
「む?……あれも無理無茶に入るのか?」
不思議そうに首を傾げながら、レグルスはカープノスを見る
「私にはわからないけど……みんなの基準じゃ、そうなんだよ、きっと」
苦笑いしながら、アリシアはレグルスにそう答えた
『つか……いつから変わってたんだよ…?』
「ここに入る前には、変わっていたが?」
恐る恐る聞いたカストロに、レグルスはあっけ絡んと答えた
『……通りで様子が少しおかしかったわけだ……初代にしては、少し自信なさげな雰囲気だったし、アリシアにしては、自信が満ち溢れている雰囲気だったからな……』
大きくため息をつきながら、カープノスが項垂れた
「サラッと酷いこと言われた気がする……私、そんなに自信なさそうにしてたかな……」
ムッと頬を膨らませながら、アリシアはカープノスを見た
「自信なさげっつーか、不安で不安で仕方ないっていう風にオレには見えたけどな?」
アリシアの傍に近づいたユーリは、彼女の頭にポンッと手を乗せた
「えっ!?ユーリ、入れ替わってること、気づいてたの!?」
ユーリの言葉にカロルが驚いたような声を上げた
「気づいてたっつーか、入る前から違和感はあったけど……確信持ったのは、フレンと『あれ』の間に飛び出して来た時だな」
『はっはっは!やはりユーリくんも気づいていたか』
ライラックが楽しそうに笑いながら、アリシアとレグルスを見た
『なんか……おかしな所、あった?』
こてんっと首を傾げながら、リゲルが呟く
近くにいたベガは分からないと首を横に振った
『……刀を持つ手、だな』
ようやく納得がいったかのように、シリウスが呟いた
「ああ。シアが片手で刀振る時は絶対右手だ。でも、あん時左手で持ってたからな。レグルスが左手で刀持ってんのは何度か見たから、どうやったか知らねえけど、入れ替わってるんだろうなと」
「ははっ!よく気がついたものだ!アリシア、お主は相当こやつに好かれているのだな?」
楽しそうに笑いながら、レグルスはアリシアを見る
アリシアはほんの少し、恥ずかしそうにしながらレグルスから顔を背けた
『それで?何故そんな事になったのか……お答えいただけますか?レグルス様?』
鉄扇を片手に持ち、ニッコリと笑いながら、アリオトがレグルスを見据える
彼女の言う通り、肝心な部分を二人はまだ話していない
「そんな顔をするな、アリオト。……シリウス、ライラック、我から一つ、質問だ」
唐突な言葉に、シリウスとライラックは首を傾げた
「自分と全く同じ人間が二人いたとしよう。片方は味方で、片方は敵だ。……どちらに勝って欲しいと思う?」
レグルスの問いかけに、シリウスとライラックは口を噤んだ
それは、二人には答えることができない質問だったのだ
『ええ……なんで二人とも何も言わないの?』
カペラが呆れ気味に、二人を見る
『……いや、なぁ……?』
同意を求めるように、シリウスがライラックを見た
『……敵だろうが味方だろうが、自分同士の戦いなど、どちらにも負けて欲しくはない』
ほんの少し顔を背けながら、ライラックが小さな声で答えた
『そう言うと思ったわ。あなたは自分自身にさえ、負けるのを嫌がるもの。そんな戦いの勝敗、ついて欲しくはないわよね?』
少し困ったように微笑みながらアイリーンがライラックに言うと、彼は少し頬を赤らめた
それを見ていたシリウスは少し気まずそうに顔を背けた
『……ほんと、タチ悪いよね……その性格』
呆れ気味に二人を見ながら、ポルックスは呟いた
『けど、レグルス様?今のとこの状況……なんか関係あるの?』
不思議そうに首を傾げながら、アルタイルが問いかける
「今のは二人が唯一、我に似なかったところだな。……アリシア、お主はどうだ?」
傍にいるアリシアの方を見ながら、レグルスは優しく問いかける
ゆっくりとアリシアはレグルスの方を向いて、ニッと笑った
「……味方一択、でしょ?」
「ああ、そうだな?」
二人はそう言い合って、クスッと笑った
『え……なんで?』
キョトンとした顔でカペラが問いかける
「なんでって……別に自分同士の戦いに、どっちに勝って欲しいなんてないよ。絶対どっちかは負けるわけだし、それなら、味方に勝って欲しいじゃん?」
問いかけられた言葉に、アリシアはさも当然と言わんばかりに答えた
『……そこだけ、思考が普通なの……変』
ポツリとベガが呟くと、アリシアがうっと言葉を詰まらせた
「ははっ!仕方ないないだろう?…だが、アリシアがそこまで我に似たおかげで助かったな」
「……『あれ』の標的が、フレン達に向いて、私が飛び出しそうになる前に、レグルスが私の姿で飛び出してくれれば、冷静になれると思ったからね……
確かに冷静にはなったけど、間に合わなさそうでヒヤヒヤした」
「そんなヘマはせぬさ。そこまで耄碌した覚えはまだないぞ?」
不服そうなアリシアに対し、レグルスは笑いながら答える
「僕らはあなたが出てこられてから、ずっとヒヤヒヤしていましたけどね…」
「そうね。失敗してしまうんじゃないかと思ったわ」
フレンとジュディスは苦い顔でレグルスを見て言った
「ははっ!心配せずとも、我がいなくとも、アリシア一人で事足りておったよ。……なんせ、我よりも強いのだからな」
ニッと笑いながら、レグルスは二人の方を見た
『……レグルス様の大ドジが、ここで役に立ったわけですね……』
呆れたようにため息をつきながら、アリオトは鉄扇をしまった
『はぁ……本当に、レグルス様の無理無茶には困ったものだよね〜』
アルタイルはそう言って、上を見上げた
どこまでも続く青い空間は、まるで、空と湖の様だった
「……さっきまで暗かったのが嘘だったみたいです」
エステルは辺りを見回しながら呟く
『ここは、空間を維持する人の心でできてるから……今の権限って、アリシア?』
カペラはそう言いながら、アリシアを見る
「ん、そうだよ?」
『……これだけ青い、ということは……もう何も心配することはなさそうね?』
クスッと笑いながら、アイリーンがアリシアを見る
彼女はただ笑ってアイリーンを見つめ返した
「青い方がいいのかの?」
首を傾げながら、パティが問いかける
『青……という訳ではありませんが……明るければ明るいほど、怨みや憎しみ、後悔や自責の念などの気持ちがない事を表しているのです』
ニッコリと微笑みながら、アリオトが答えた
「……でも、あんた……」
小さく呟きながらリタはアリシアを見る
不思議に思ったのはリタだけではない
さっきの『憎悪』の言葉は、全員が気になっていた
『……いつだ?お前がそんな風に思っていたのは?』
静かに、カープノスはアリシアに問いかける
アリシアは少し肩を竦めて、目を閉じる
「……お兄様が死ぬまで、かな?」
ほんの少し寂しそうな声で、彼女は答えた
「割と最近までじゃない、それ……っ!」
少し悲鳴じみた声で、リタが声をあげた
『嘘……ボクら、全然気づかなかった……』
「気づかれないようにしてたからねぇ。結構大変だったよ?その感情押し殺すの」
困ったように笑いながら、アリシアは答える
「でも……なんで、そう思ってたの……?」
恐る恐る、カロルが問いかけると、目を開けて寂しそうに微笑み、全員から少し離れて背を向けた
「……お父様とお母様を見殺したお兄様が嫌いだった。そうなるように仕向けた評議会も憎かったし……それを見て見ぬフリしてた人も恨んでた
ただでさえ、時が来るまで一族の事を話すなって言われて、話せないことばっかだったのに、お兄様からも話すなって言われる事が多くて……隠し事ばっかが、どんどん増えていって……脅されてたとはいえ、やっちゃいけない事だって何度もして……
……何もかも、全部嫌だった。一人で全部背負って行くのはしんどくて……息苦しかった
こんな思いするなら……苦しいのがずっと続くなら……もういっそ、ぜーんぶ壊れればいいのにって……全部、なかったことになればいいのにって、正直思ってた」
アリシアの言葉を、一同はただ黙って聞いていた
そこまで思い詰めていたとは、誰一人、思ってもいなかった
「けど……私は星暦だから……世界を守り続けた一族の、当主だから……怨霊を祓うのは私の役目っ!……それを放棄する訳にはいかない
……その私が、それを生み出す訳にもいかない……そんな事わかってる。わかってるから……ずーっと、必死で堪えてたの」
普段と変わらない、明るい声でそう言って彼女は上を見上げていた
『では……何故、そう思わなくなったのです……?』
恐る恐る、アリオトはアリシアに問いかける
「……シリウス達は気づいてた?お兄様が頼んできた殺しで、私が受けてたの、みーんなあの時の主犯だったの」
小さく、それでもハッキリした声でアリシアは問い返す
シリウス達はその問いに目を見開いた
「…憎んでた人は、みんな自分で葬ったし、大嫌いだったはずのお兄様は、私に『生きろ』って言って消えてった……話したかった事は全部話せたし……ユーリとフレンが、一緒に背負ってくれるって、言ってくれたから……
……そしたらさ?そう考えてたのがバカらしくって。……私の事を、想ってくれてる人がいるこの世界が、また大事に思えるようになった。まだ、ここに居たいって……思えるようになった」
そう言って、アリシアは振り返る
普段と変わらぬ笑顔を浮かべて、アリシアは全員を見回した
「この世界は……私だけのものでもないもんねっ!」
背中で手を組んで、ニコッと笑いながら、アリシアはそう言った
いつもと変わらない彼女に、ユーリ達は少し安堵した
「……あの時、もらっておいて正解だったね、ユーリ?」
「…だな。最悪、マジでシア相手にしなきゃいけないとこだったな」
苦笑いしながら、二人は互いに顔を見合わせた
『ユーリとフレンがいなかったらって考えっと……ゾッとするな……』
『アリシアが相手は、本当に勝てっこないよ……』
少し怯えた様子で、カストロとポルックスも互いに顔を見合わせていた
四人の行動があまりにも似すぎていて、アリシア はほんの少しクスッと笑いながら、ユーリの傍に歩み寄る
傍に戻って来た彼女の頭を、ユーリは優しく撫でた
ニコニコと嬉しそうに微笑んでいる彼女を見て、自然とユーリも微笑んでいた
『……隠させていた事が裏目になっていたとは……やはり、アリシアが産まれた時から、オレは選択を間違えていたのか……?』
アリシアから少し離れた所で、頭を抱えてシリウスはブツブツと呟いていた
そんな彼を、アリオトとペテルギウスはため息をつきながら、呆れ気味に見つめる
『私らが早くに居なくなってしまったせいで、無理をさせすぎてしまったな……』
『そうね……あの時、わたし達が気づいていれば……そうはならなかったのかもしれないわ……』
ほんの少し、悔しそうにライラックとアイリーンが呟いた
自分達さえ傍に居られればと……
「……だが、一連の出来事がなければ、『あれ』は倒せんかったな」
数名が後悔している中、レグルスは静かに口を開いた
『レグルス様、どうして?』
不思議そうに、リゲルが首を傾げてレグルスを見た
「あやつは最初から、アリシアに狙いを定めておった。最初にお主らを襲ったのは、恐らくここから追い出したかったのだろう。アリシアに取り憑くにせよ、お主らが傍にいるのは邪魔でしかなかっただろうからな
だが、それでも中々取り憑くことができない。だからこそ、心を折ろうとしたのだろう
そうすれば、確実に取り憑くことができると考えてな
……逆に言えば、心が折れるまでは取り憑く事ができないと考えたはずだ。だからこそ、先程アリシアに扮した我が現れても、すぐに取り憑こうとしてこなかったのだろう」
『……言われてみればそうだよね?アリシアが出てきた時点で取り憑いていれば、それで勝負は終わってたしね』
「その上で、だ。仮にどれか一つでもこの流れがなかったとしたら……アリシアの体はエアルに弱いままだったかもしれぬし、力も不十分だったかもしれぬ
……恨みや憎しみが残っていれば、容易に彼女に取り憑く事ができてしまっていたかもしれん
そもそも、この時代で、あやつの浄化をできたのかも怪しい
何一つ、欠けてはいけなかったのだ」
レグルスの答えに、シリウス達は納得はした
が、まだ一つだけ疑問が残っていた
「けれど、『あれ』は憎しみや恨みだけでなく、後悔や自責の念にも取り憑いてしまうのではなかったかしら?」
胸の下で腕を組みながら、ジュディスは問いかける
「んー、そういやそんな事言ってたわよねぇ」
頭の後ろで手を組みながら、レイヴンは首をほんの少し傾げた
そう、彼女は少なくともまだ一つ、後悔は残っているはずだ
だが、彼女はただ笑って、それ以上は何も答えそうにはなかった
「…アリシア、他にも何か隠しているだろう?」
レグルスがそう言うと、アリシアはほんの少し肩を竦める
「それは内緒っ!」
片目を閉じてニヤリといたずらっ子のように笑いながら、アリシアは唇に人差し指を当てた
『その感じ……絶対なんかあったんでしょ!?』
カペラは少し大きめな声でアリシアに問いかける
「内緒なものは内緒だって。ぜーったい!教えてあーげないっ!」
『……そう言われると、なんか無性に問い詰めたくなる……っ!』
うーっと小さく唸りながら、アルタイルはアリシアを見つめた
「あははっ!まぁ……気が向いたら、教えてあげるよ」
クスクスと笑いながら、アリシアは答える
『……とりあえず……いい加減、戻らないか?』
呆れ気味にそう言いながら、カープノスは全員を見回した
「……ん、そうだね。……帰ろっか?」
「……ああ、そうだな。……今度は一緒に、な」
自分を優しく微笑みながら見下ろしてくるユーリに、ニッコリと笑いかけると、アリシアはカープノスと同時に指を鳴らした
ーーーーー
一瞬で一行は屋敷へと帰って来た
「……そう言えばさ?ずっと気になってたんだけど……」
屋敷につくなり、アリシアは首を傾げて皆を見回した
「どしたのよ?」
「精霊達……嫌に静かすぎない…?」
「言われてみれば……確かにこの数日、全然話しかけて来ないですね?」
キョロキョロとしながら、エステルも不思議そうに首を傾げた
アリシアの帰りを待っていたのは彼らも同じだったはずなのに、全く姿の見えないことにフレン達も少し首を傾げた
《姫……っ!!!》
不意にイフリートの声が響く
アリシアが少し驚いて上を見上げると、イフリート達が彼女の傍に現れた
「わっ!?……もう!いきなりはびっくりするじゃん!」
そう言いながらも、アリシアはどこか嬉しそうだ
が、四体はどうやらそれどころではないらしい
《『あれ』とのカタがついて早々、申し訳ないのじゃが……姫よ、少し来てはくれぬか?》
「え、どこに?」
《……レグルスの阿呆が中途半端にエアルクレーネを鎮めたせいで、また大暴走している》
《そろそろ人里にまで被害が出かねませんね……》
二体の言葉に、アリシアが勢いよくレグルスの方を見た
「レグルス?!」
「…すまん、やはり即席で作ったものではだめだったか……」
気まずそうにそう呟きながら、レグルスはアリシアから顔を背けた
『初代……何余計な事をしているんだ……!?』
『ええ……嘘でしょ……』
『……ふふ、大変だね、アリシア?』
カープノス達が慌てている中、アリシアは困り気味に苦笑いしながら、小さくため息ついた
「はぁ……仕方ないなぁ……ほっとくわけにもいかないし……」
そう呟きながら、アリシアは指を弾こうとする
「ちょい待った、一人で行く気かよ?」
指を弾こうとしていたアリシアを止めて、ユーリが問いかける
「……じゃあ、一緒に行く?」
ユーリを見上げながら、アリシアは首を傾げた
「当たり前、一人で行かせてなんかあったらどうすんだよ」
少し不機嫌そうに顔を顰めたユーリに、アリシアはクスッと笑った
「もう早々何も起きないと思うけど……まぁいっか
……一秒でも、離れたくないもんね?」
ユーリの耳元でアリシアが小さく呟くと、少し恥ずかしげに「うっせーよ」言って、軽く彼女の頭を小突いた
「ワンッ!!」
そんな二人の足元にラピードが擦り寄って来る
「ラピードも来たいの?」
「ゥオーンッ!」
アリシアの問いにラピードは肯定するように一声鳴いた
「えっ……ラピード、連れて行って平気なの?」
少し心配そうにカロルがアリシアに問いかける
「私がいれば平気だよ」
クスクスと笑いながら、アリシアはレグルスを見た
「ああ、そうだな」
ほんの少し不服そうながらも、レグルスは少し微笑んでアリシアを見た
「じゃあ、ちょっと行ってくるね〜」
アリシアがそう言って指を弾くと、二人と一匹の姿がそこから消え、同時に精霊達も姿を消した
『……あんなことがあったばっかなのに、元気だねえ……アリシアは』
小さくため息をつきながら、カペラは苦笑いしてつい今し方までアリシアがいた場所を見つめた
『……よかったの?あの二人……一緒に行かせちゃって?』
『……よからぬこと、考えてなければいいけど……』
リゲルの言葉に、フレン達がほんの少し焦り出す
「……それは考えていなかったわね」
「あのバカップルの事だから、そのまま帰って来ないとかやりかねないわよ……!?」
「い、いくらなんでもそこまでは……」
「いえ……リタの言う通り、あの二人ならやりかねませんね」
「ど、どうしよう…!?」
あわあわとしている五人を見て、レイヴンはククッと喉を鳴らした
「まぁいいんでないの?やっとこさのんびりできるようになったわけだし、暫くほっといてあげても、バチは当たらんでしょ」
「それもそうなのじゃ。ユーリもシア姐も、今まで頑張ったのじゃから、そのくらい、許してあげればいいのじゃ」
どこか微笑ましそうに笑いながら、二人は言う
『……それによ?さっきの感じじゃ、アリシアのやつ、相当疲れてるだろ?』
『だよねぇ……ぼくらだって、アリシアと同じ歳くらいで当主になったけどさ?一人で当主の仕事とかやってらんなかったよね〜。それを一人でやり続けてたんだから、別にユーリと二人で過ごそうとするくらい、いいんじゃない?』
カストロとポルックスは顔を見合せてそう言い合う
「……アリシアには、ヨーデル様に何を言ったのか、聞かなければいけなかったのですが?」
少し不機嫌そうに、フレンがレイヴンを見た
『……ああ、それなら恐らく、短剣の事だろう』
心当たりがあったのか、シリウスが口を開いた
「短剣って、あの?」
『ああ。アレクセイが勝手に持ち出した物が、ヤツの部屋に残っているはずだから使っていいと伝えていたはずだが……その様子では、駄目だったようだな』
少し困ったようにため息をつきながら、シリウスは答えた
『……それはそうだ。あれも
困った様子のシリウスを、カープノスが呆れ気味に見た
『あら、そう言うのであれば、どうにかならないのかしら?カープノス』
『……少なくとも、後数年はエアルの活動が活発だろう……状態が落ち着くまで、俺らも動くしかないだろうな』
ペテルギウスの問いに、カープノスは不機嫌そうに答えた
『動くって言ってもさぁ?白雷か黒雷の
少し気怠げにアルタイルが言うと、カープノスはグッと喉を鳴らした
『ふふ、早急に
ニコニコと微笑みながら、アイリーンはカープノスを見る
『だ、そうだぞ、レグルス?まだ暫くは、休めそうにもないな?』
「そもそも、お主らにその気がないだろう?どうせ、アリシアの寿命が尽きるまで休まぬとでも言うつもりだったであろう?」
楽しそうに笑ったライラックに、レグルスは呆れ気味に言うが、当の本人もどこか楽しげだった
『ははっ!バレたか。あのお転婆娘を置いて、もう居なくなるわけにいかなくなったからな』
笑いながら、ライラックは窓の外を見た
狭間とは時間の流れが違ったのか、それとも相当長くいたのか……空は既に日が沈みかけていた
『……ゆっくり休め、アリシア』
窓の外に向かって、少し寂しそうに微笑みながら、ライラックは小さく呟いた
ーーーーー
「はいっ、終わりっと」
黒雷を収めながら、アリシアは呟く
イフリートの岩場にアリシア達はいた
既に他の場所は鎮めており、ここが最後だった
《姫、お疲れ様でした》
ニッコリと微笑みながら、ウンディーネがアリシアに声をかける
「このくらい、全然平気だよ」
《全く……レグルスめ、姫のお転婆を増強させおって……》
イフリートはそう言ってため息をつくが、その声はどことなく嬉しそうであった
《では、レグルスに文句でも言いに行きましょうか?》
《そうじゃのう。再会を喜ぶのはこの先、いくらでも機会はあるからの》
クスッと笑いながら、ウンディーネがシルフに同調した
「あはは……あんまり大騒ぎしちゃダメだよ?」
《姫こそ、あまり無理をせぬようにな?……もう、気を張る必要もないのだからな》
イフリートはそう言って姿を消した
後に続くように三体も姿を消して行った
「もう……みーんな揃って心配性なんだから」
ユーリの方を振り返りながら、アリシアは困ったように笑う
「そりゃシアが悪いな。どんだけ言っても、無理無茶やめなかったんだからな?」
少し離れたところにいたユーリはアリシアに近寄ると軽く頭を小突いた
アリシアは肩を竦めて、ほんの少し苦笑いする
「…んで、シア?ホントにアレクセイに会ってないのかよ?」
先程から気になっていたことを、ユーリは問いかけた
その問いに、アリシアは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに少し寂しそうに微笑んだ
「……シリウス達の前で言ったら、絶対大騒ぎするから言わなかったけど……お兄様は、ちゃーんと、会いに来てくれたよ」
「やっぱりな……じゃなきゃ、後悔が残ったままだっただろうしな?……まっ、確かにあいつらが知ったら、大騒ぎだな」
ほんの少し困ったように笑いながら、ユーリはアリシアの頭を撫でた
「……ちゃんと、思ってたことは伝えられた……だから、もう本当に平気だよ」
ニッコリと笑いながら、アリシアはユーリを見上げる
先程までの寂しそうな笑顔ではなく、普段と変わらない笑顔に、少し安心したように息を吐いた
「そういや……シア、さっき『あれ』が消える前、なんか言ってなかったか?」
不意に思い出したことを、ユーリは問いかける
「あー……聞こえてた?」
少しバツが悪そうに、アリシアは問い返す
「なんか言ってるな、くらいだったけどな?」
ユーリがそう答えると、アリシアはほんの少し、肩を竦めた
「……『あれ』は星喰みの怨念ってみんな言ってたけど……ちょっと違うんだ」
「違うって?」
少し言いづらそうにしているアリシアに、ユーリは首を傾げた
「……『あれ』は星喰みだけのじゃなくて……私の後悔が少し、混じってたから」
少し困ったように笑いながら、アリシアは答えた
その答えに、ユーリは目を見開く
「憎しみや恨みは確かになかった。……けど、お兄様に何も伝えてあげられなかった後悔だけは、ずーっと残ってた……
狭間に引きずり込む時に一度、『あれ』は私の中に入って来てるから、後悔している事を、まだ憎んでるって勘違いしたみたいで……さ?
……『あれ』は、全部憎んでた時の私も、少し含んじゃってた」
「……なるほどな、だからヤケにシアに似てたんだな」
「ん……そうだね……だから、ちゃんとお別れしておきたかったの」
目を閉じて、アリシアは少し息を大きく吸う
「私の中にいた、世界を憎んでた『私』に」
そう言って、微笑むとアリシアはそのまま、ユーリに抱きついた
いきなり抱きつかれ、少しユーリは驚いたが、すぐに困ったように笑って彼女を抱き締め返した
「……ね、ユーリ?ちょっとわがまま、言ってもいい?」
「ん?なんだよ?」
ユーリの胸元に顔を埋めたまま、少し遠慮気味にアリシアは口を開く
「……このまま、少しだけ……二人で世界、見て回らない?」
普段であれば絶対に言わないであろう言葉に、ユーリはまた驚く
「どうしたんだよ?急に」
優しい声で問いかけながら、腕の中にいるアリシアを見つめる
「……ちょっとだけ、疲れちゃったのかも
少し……本当に、少しでいいから……使命とか、当主とか……そういうの、全部忘れて……ユーリと居たいなって……」
どこか疲れたような声で、アリシアは言った
その言葉に、ユーリは目を見開いた
彼女の口から、そんな言葉が出るとは思ってもいなかった
だか、よくよく考えれば、今日という日まで彼女は奔走し続けていたのだ
当主として、一族の長として、守るべきものの為に
人に頼らなさすぎるところもあったが、それも、しきたりに従って、自分達に話せないことがあったからだろう
まだまだ子どものような所がある彼女にとって、それは重荷だったわけで……
それが今、ようやく下ろせる時が来たのだ
未だにエアルの不安定さはあるものの、これまでのような危機はない
少しくらい、休ませたっていいだろう
そんな考えが浮かんだユーリはクスッと笑う
ようやく本音を吐き出した彼女を、愛おしげに見詰める
「オレ、あいつらに返してやんねえかもしれねえぜ?」
少し意地悪げにそう言って、ユーリはアリシアの頬を撫でた
「あはは……っ、そう言って、私が帰ろうって言ったら、ちゃーんと付いてくるくせに」
顔を上げたアリシアは、どこか嬉しそうに笑っていた
「けど……それも、いいかもしれないね?」
「んな顔してそうゆうこと言うと、本気にするぞ?」
クスクスと嬉しそうに笑うアリシアの額に、ユーリは自身の額を重ねた
「ん……してもいいよ?」
ユーリの首元に手を回して、少し期待してるかのようにアリシアが微笑む
「その言葉、忘れんなよ?」
ニヤッと笑うと、ユーリはアリシアの口を塞いだ
嬉しそうに、アリシアは目を細める
しばらくそうしていた二人がゆっくりと離れると、揃って笑い出した
ひとしきり笑うと、ユーリは優しげな眼差しでアリシアを見た
「……シア、愛してる」
「私も……愛してるよ、ユーリ」
二人はそう言い合って微笑んだ
「ワフゥン……」
そんな二人の間に、ラピードが呆れたように割って入った
行くなら早くしろとでも言いたげに、ラピードは二人を見上げる
「……ん、そろそろ行こっか」
ユーリから少し離れて、アリシアは空を見上げた
自分達の頭上では、星が輝いていた
彼女が空を見上げていると、一昨日の夜と同じように、星がちらほらと流れ始めた
「ははっ、まるでシアのこと、労ってるみたいだな?」
流れる星を見ながらユーリが笑った
「……うん、そうだね」
優しい眼差しで星を見つめながら、アリシアは空に向かって手を伸ばした
「……ありがとう、みんな」
小さくそう呟いて、目を閉じる
「…………よしっ!行こっか、ユーリ、ラピード」
ニッコリと微笑みながら、アリシアはユーリとラピードを見た
「おう、行こうぜ?」
ユーリはそう言ってアリシアに手を差し出す
嬉しそうに微笑むと、その手を取って指を絡めた
そうしていると、アリシアの足元に、ラピードが擦り寄って来る
「ゥオーンッ!!」
ラピードの声を合図に、アリシアは指を弾いた
流れる星たちが、消えて行った三人の事を優しく見守っていた
〜あとがき〜
お久しぶりの如月です!
『星降る夜に』四部最終話となります!
本編が終わって何年も経ちますが、ようやく終わりを迎える事ができました!
……いやぁ、長かったですよね……
後半は特に登場人物も増えてしまい、誰が誰だかわかりずらくなってしまったのが反省です……
こんなにも長い間お待たせしてしまいましたが、待っていてくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます!
四部はこれで終わりとなりますが……
まだまだ書きたい事もあるので、もう少しだけ続きます!(笑)
あまり需要はないかもしれませんが……もしまだ、この先を読みたい方がいらっしゃいましたら、読んでいただけたらと思います!
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!
ではではこの辺りで!
また別のお話でお会いしましょう!
20/20ページ