第4部~星暦の行方と再会そして…~
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「では、いい加減本題に入ろうか」
全員が再び座ると、レグルスは口を開く
「『あれ』がアリシアの全てを模倣している想定で動くとして…ベガ、アリシア、お主らが見た『あれ』に勝てた未来では、どうしていたのだ?」
レグルスはベガとアリシアを見ながら問いかける
「それが、ねぇ?」
アリシアは少し表情を曇らせ、ベガの方を見る
『どう戦ってたかまでは、アリシアも、あたしにも、見えなかった……』
申し訳なさそうに、ベガは口を開いた
「何度試してみても、勝てたか負けたか、大まかなところしか見られなかったんだよね」
苦笑いしながらアリシアは答える
「ふむ…となると、だ。アリシア、お主ならどう動く?」
「んー……そうだね……」
レグルスの問いにアリシアは小さく唸りながら腕を組んで目をつぶった
「……私なら……私自身か、レグルスを真っ先に潰しにかかるかな」
目を開けながら、アリシアは答えた
『まぁ、それが一番無難だよな?』
『そうだよね。アリシアかレグルス様のどっちか潰せれば、浄化はできなくなるわけだし』
カストロとポルックスはそう言いながら顔を見合せた
「それならば、カストロの傍に二人とも居れば問題ないんじゃないかしら?あなたなら、憎悪も近づいて来られないのでしょ?」
『それが、そうもいかねーんだよなぁ……』
ジュディスの言葉に、カストロは顔を顰めた
『リゲルと違って、おれは戦闘型だから、あんまり守るのに向いてねえ。昨日みたいに、狭間の入口から出て来れねぇようにする事はできても、攻撃から守りながらってなったら一人が限界なんだよな』
「じゃあポルックスは?」
カストロの答えに、カロルはポルックスを見ながら首を傾げた
『残念ながら、ぼくもカストロと同じだよ。守るのは不得意……一人だけならまだしも、二人同時に隠すのは厳しいかな』
申し訳なさそうに眉を下げてポルックスは答えた
「そうなると、アリシアちゃんとレグルスの傍に、二人が別々に居るしかないんじゃない?」
『そうですわね、それしかないでしょう』
レイヴンの言葉に、ペテルギウスが頷いた
「そうなると、奴が次にどう出てくるかが問題だが……」
「……まぁ、無難なのは、見えてるカストロに守られている方を狙うことかなぁ……」
少し自信なさげにアリシアは呟いた
「では、カストロの方にリゲルもいたらどうでしょう?」
『うん、それならば……カストロと力を合わせれば、幾ら攻撃してこようが防ぎ切れると思う』
エステルの問いに、リゲルは頷く
「その上で、攻撃がなるべく五人にいかないように、僕らが相手をすれば、何とかなりそうですね」
『そうだな。オレらが『あれ』に攻撃出来ずとも、飛んできた攻撃を受け流す事くらいは出来よう』
着々と話が進んでいく中、アリシアは一人、考え込んでいた
「なーに考えてんだよ、シア?」
隣でアリシアを見ていたユーリが、不意に彼女に声を掛けた
「んー……そう単純な思考で動いてくれたら、楽なんだけどなあって」
少しユーリの方を見て、アリシアは苦笑いした
「どういう事じゃ?」
彼女の声に、パティは首を傾げる
「仮に……どっちにも攻撃が当たらないってなったら……
『あれ』なら、私自身の心を折りにいくかな、って」
不安そうに、それでも、真剣な顔でアリシアは答えた
『心を折りにって、なんで?』
キョトンとしながらアルタイルは問いかける
「……二人とも手を出せないなら、それが一番有効的でしょ?片方でも、術の準備ができなければ発動しないんだから」
『でもそれ、どうやって?』
「それは……」
ベガの問いにそう言いかけて、アリシアは口を閉じた
この先は言いたくないとでも言いたげな表情で、少し俯いて目を閉じた
「アリシア、言わねばさすがに分からぬぞ?」
沈黙した彼女にレグルスは少し厳しめな声で問いかける
彼の言う通り、話さなければ伝わらない
それでも、彼女自身もそれは考えたくも、口に出したくもない選択だった
『必ずそうなるとも限らないのだから、言うだけ言ってみたらどうかしら』
彼女の気持ちを察したのか、アイリーンは優しく声を掛ける
その声に、アリシアは一度深呼吸すると、ゆっくりと口を開いた
「……私の心を折る選択をしたなら……きっと、『あれ』は……」
ゆっくりと目を開け顔を上げると、アリシアはユーリ達を見回した
「……ユーリ達を、狙おうとするはず」
先程よりも少し小さな声で、ハッキリとアリシアはそう告げた
「はぁ?なんでそうなるのよ?」
不機嫌そうな声で、リタは言いながらアリシアを見る
「……今のシリウス達には、『あれ』はもう取り憑けない。僅かに取り付いてた残滓も今はもう祓われて、耐性がついてるはずだから、二度目は無理。そもそも、シリウス達には実体がないから、取り憑いたところで、レグルスに取り憑けなかったら意味がない。カストロが傍に居る以上、シリウス達に取り憑いた所でレグルスには近寄れないしね
……けど、みんなは違う
ちゃんと実体はある訳だし、耐性がある訳でもない。『あれ』が私が大切だって思ってる仲間に取り憑いて好き勝手、なんてしたら……私が黙って、浄化の準備なんてしてられると思う?」
アリシアの言葉に、皆黙り込んだ
それは、そうなった場合、彼女がどう行動するか等、言われずともわかったからだろう
「十中八九無理。隠れていないといけないとわかっていても、飛び出して行く
……全部台無しだって、わかってても……みんなが『あれ』に取り憑かれるところは、見たくないから……」
消えそうな声で、アリシアは呟く
ほんの少し、肩を震わせながら、再び俯いた
『……確かに、その線は考えてもなかったな……幾らアリシアを模倣しているとは言え、『あれ』は憎悪の塊。そう考えても、不思議じゃない』
静まり返った部屋に、カープノスの声が響く
『で、でもさ?もしかしたらそうはならないかもしれないでしょ?』
どこか縋るようにカペラはカープノスを見ながら言った
「いや、その可能性がゼロではない以上、手を打っておかねば、全て台無しになる」
レグルスの言葉に、カペラはガックリと方を落とした
『だがな、レグルス?手を打つとは言うが、どうするつもりだ?まさか、彼ら無しに戦いに行く訳にはいかぬだろう?』
「それはそうだ。今のアリシアの実力では、本気を出せないシリウス達だけでは歯が立たん。アリシアの姿をした『あれ』の相手を出来るのは、恐らくライラックと青年くらいだろう。そのお主ですら、本気を出せるか怪しいしな」
困り気味に顔を顰めながら、レグルスはライラックを見つめた
『……恐らく無理だろうな。途中までは本気を出せるだろうか、攻撃が当たる直前で躊躇うだろう』
ライラックの答えに、レグルスは腕を組んで考え始めた
どう動いても必ず、どこかで歯車が噛み合わなくなるこの状況に、頭を悩ませる
それは、ユーリ達も同じだった
何かいい案は無いかと、一同は黙り込んで考える
だが、中々いい案は思いつかない
ただただ時間だけが過ぎて行く
「………アリシア、少し良いか?」
長い沈黙をレグルスが破った
立ち上がり、アリシアを見つめて彼は手招きする
不思議そうに首を傾げながらも、アリシアも立ち上がり、レグルスの元へ寄った
自身の元にアリシアが来ると、レグルスは彼女を連れて、皆から少し離れ小声で何か話し始めた
レグルスの声は誰にも届かず、ユーリ達は不思議そうに首を傾げた
「……え」
少しして話が終わったのか、アリシアは驚いた顔をして、レグルスを見つめた
「……出来そうか?」
真剣な表情で、レグルスはアリシアを見つめ返す
「いや、まぁ……出来なくはない、と思うけど……」
唸りながら、アリシアは腕を組んで首を傾げた
なんの事かわからないユーリ達は互いに顔を見合わせる
「確かに……もうそれ以外に、できそうなことないとも思うけど……それ、後が怖くない?」
「『あれ』を野放しにしたままよりは良い案だろう?」
少し不満そうに顔を顰めながら言うアリシアに、レグルスは笑って返した
どこか楽しげな笑みに、アリシアは思わずため息をついた
が、当の本人も、どこか楽しそうな表情を浮かべていた
「……わかったよ、レグルスがそう言うなら、それで行こ」
アリシアの答えに、レグルスは満足そうに頷ずいた
『あのさー……二人だけで納得されても、ボクら全っ然わかんないんだけど?』
不服そうに、カペラが二人に声を掛ける
その声に振り返ったレグルスは、いたずらっ子のように笑う
「秘密だ」
唇に人差し指を当てながら、どこか楽しげに答えた
『えー!何それ!!』
『まさか、ぼくらに言えないところで、二人揃って無理無茶する気?!』
ガタンッと音を立てて立ち上がりながら、アルタイルとリゲルはレグルスを睨み気味に見る
「まさか。あくまでも万が一、『あれ』がアリシアの心を折りに行く選択をした際に備えての話だ。必ず使う訳でもない策を、安易に言わぬ方がいいだろう?」
「『あれ』に知られでもしたら御破算だしね。知ってる人数は、少なければ少ない方が確実だから」
堂々としているレグルスに対し、アリシアは少し申し訳なさそうに答える
「…それ、危ないことするってわけじゃないのよね?」
静かな声で、真っ直ぐにアリシアを見つめて、リタは問いかける
「言ったじゃん。命を投げ出す様なことはしない、って。……これは絶対だよ」
真剣な表情で、アリシアはリタを見つめ返した
二人は暫く無言で見つめ合っていたが、やがて、リタが彼女から視線を外しながら、大きくため息をついた
「ったく、あんたは本当に隠し事ばっかするんだから」
呆れ気味にそう言って、再びアリシアを見た
声とは裏腹に、どこか嬉しそうに笑いながら、彼女をジッと見ている
「……でも、それがアリシアらしいね」
リタに同意するようにフレンが口を開く
困ったように笑いながら、隣にいるユーリを見ていた
「だな。幾ら言っても言うこと聞かねえのがシアだ。文句言ったところで、一度決めちまったら考え直してすらくれねえからな」
そう言ったユーリも、困ったように笑いながら、フレンを見返した
「でも、また前みたいな事するつもりなら……」
そう言いながら、ユーリはアリシアの方を向く
「しないよ。今の話は、そういうのじゃないって、誓うよ」
ユーリの言葉を遮って、アリシアは答える
そして、少し駆け足でユーリの元に寄り、後ろから抱きついた
「……大丈夫、居なくなるつもりじゃないから」
ユーリの髪に顔を埋めて、優しい声でアリシアは告げる
約束を破るつもりはないと、ユーリに伝わるように
「……わーったよ、約束、破るなよ?」
肩に回されている腕を優しく撫でながら、少し後ろを向いた
ユーリの問いかけに、アリシアは顔を上げて彼の顔を見る
「ん、わかってるよ」
満面の笑みを浮かべて、アリシアは答えた
その笑顔に、ユーリはもう何も言い返せなくなり、苦笑いした
「大将も形なしねえ」
「ふふ、仕方ないわよ。あんな笑顔見せられたら、何も言えなくても、ね?」
クスクスと微笑ましそうに笑いながら、ジュディスとレイヴンは二人を見ていた
「ホント、怒りづらい顔すんのよね、あの子」
「それが、アリシアらしいですよね」
少し呆れ気味に笑いながら、リタとエステルはアリシアを見た
『……初代、俺らもそれを信じていいのか?』
カープノスはどこか不服そうにレグルスを見る
「お主にそれを強要したところで、信じはしないだろうが……そう言う他ないな」
ほんの少し、困ったように笑いながらレグルスはカープノスを見つめた
「少なくとも、だ。我もアリシアも、無理無茶をする気はないと言う事だ」
『……初代の言うことは当てにならないだろ?その言葉に、俺が何度騙されたことか……』
大きくため息をつきながら、カープノスは項垂れた
だが、これ以上問いただす気もないらしく、そのまま口を閉ざした
『まぁ、アリシアが言ってるし……今回は大丈夫じゃない?』
『アルタイル……だからこそ、カープノスは不安なんじゃない?』
『レグルス様とアリシアって、考えつく中でも、最悪な組み合わせだと思うけど……』
アルタイルの言葉に対し、カペラとリゲルは不安そうな顔をした
「リゲル……それは酷くない?!私、少なくともレグルスよりは無理無茶なんてしてないよ?!」
ユーリから少し離れながら、アリシアはリゲルを不満そうに見つめた
『それは普段、そういう事をしない人が言うものですわ、アリシア?』
『そーそ。言っても無駄だけどさ、アリシアも充分やらかしてるじゃん!』
『だよなぁ?レグルス様といい勝負してるんじゃねーの?なあ、カープノス』
同意を求めるようにカストロはカープノスを見るが、当の本人は項垂れたまま反応がなかった
「……それ、当主の時代に無理無茶しまくってたみんなに言われるのも、癪なんだけど」
不服そうにアリシアが呟くと、ペテルギウス達は、皆揃ってグッと喉を鳴らして固まってしまった
「カストロとポルックスだって」
『『わーーっ!!ストップ!!ストップ!!』』
アリシアの言葉をかき消すように二人は声を上げる
『ふふ、昔の話を暴露されたくなければ、大人しく信じるしかないみたいよ?』
そう言ってアイリーンは、どこか楽しそうに笑った
渋々、ではあったものの、彼らも信じると決めたらしく、口を閉ざした
「……決まりだな。最後に、いつ乗り込む事にするかだが……」
『……明日、が良いと思う』
レグルスの言葉に、ベガはほんの少し目を閉じたまま呟いた
「それは……予言か?」
レグルスの問いに、ベガは目を開く
濃いオレンジ色の瞳に、レグルスは無言で頷いた
「では明朝、またここに集まるとするか」
レグルスはそう言って手を叩き、自身はさっさと部屋から出て行った
それを合図に各々席を立ち上がる
『……アイリーン、お前、確か
カープノスは真っ先にアイリーンの傍に近づいた
『あら、唐突ねカープノス?確かに調べはしたけど?』
『知識があるだけでもいい。星の
『ふふ……あなたが頼ってくれるなんて珍しいわね?早々ない機会だから、喜んで手伝いましょう』
カープノスの誘いに、アイリーンは楽しそうに笑いながら答えた
『リタ、あなたも一緒に来るかしら?』
彼女がリタの方を向くと、ついて行きたそうに彼女を見ていたリタと目が合った
目が合った事に少し動揺していたが、すぐに大きく頷くと、彼女の元へ駆け寄って行く
嬉しそうにアイリーンは微笑むと、三人は部屋を後にして行った
『いいのか?ライラック』
『いや……口を挟む暇もなくてな……』
少し寂しそうに、ライラックはシリウスの問いに答える
『まぁ、彼女はカープノス同様、機械いじりが趣味だから、無理もないな。……それより、ライラック、久しぶりにどうだ?』
シリウスはそう言って、自身の大剣の柄を握りながらニヤッと笑う
それを見たライラックも、どこか嬉しそうに口角を上げた
『ははっ!それも悪くないな。今の勝敗は……99勝99分け99敗だったか?』
『あぁ、どっちが先に100勝目を手に出来るか……勝負と行くか!』
シリウスの言葉に、ライラックも刀の柄に手を掛けようとする
『うわっ!?今度はシリウスとライラック!?』
『てか、二人とも馬鹿なの?!ここ部屋の中だよ!?』
慌てて止めようとするアルタイルとカペラの声に、アリシアがほんの少しため息をついた
「シリウスもお父様も……勝負するのはいいけど、せめて外でやってよ?」
呆れ気味に、二人にそう声をかけるが、二人にその声は届いていないようだ
「もう……仕方ないなぁ……」
深く息を吐きながら軽く目を閉じる
再び目を開いた時には、濃いオレンジ色に変わっていた
真っ直ぐに二人を見つめながら、指を弾く
すると、二人の姿がそこから消えて行った
ユーリ達が驚いていると、外がドスンッと鈍い音が聞こえてきた
「あちゃぁ……やっぱカープノスみたいに上手くは出来ないかぁ」
しまった、と苦笑いしながら、アリシアは頬を掻く
『アリシア……シリウスはともかく、ライラックまで雑に扱っていいの?』
呆れ気味にリゲルはアリシアを見つめて問いかけるが、当の本人は軽く肩を竦めながら、笑っていた
カストロ達が窓に寄ると、二人は既に武器を持って睨み合いをしているところだった
『はは……気にしてないみたいだぞ、あの二人……』
呆れ気味にカストロは二人を見て呟いた
『しかも、あれ本気っぽいけど……』
ポルックスの声に、アルタイル達が息を飲んだ
『え、嘘っ!?それはシャレになんないじゃん!!』
『もう!アリシアも、飛ばすならもっと遠くに飛ばして置いてよ!!』
「私にそんな事言われても困るんだけど……」
苦笑いするアリシアを他所に、アルタイルとカペラは窓から飛び出していた
「えと……二人も戦うのはまずいんです?」
「ん?んー……まぁ……二人とも私の時と違って、本気出せる相手だから、ねぇ…?」
遠慮気味に聞いてくるエステルに、アリシアは少し気まずそうに答えた
「おま……止めなくてよかったのかよ、それ?」
「止めるのも面倒なんだもん……何度苦労したことか……」
アリシアは面倒くさそうにため息をつきながら答える
『大丈夫ですよ、ユーリさん。いざとなれば、私達が総出で止めますから』
鉄扇片手に、アリオトはニコッと笑う
「それはそれで問題なんだけど…」
アリオトに対して、アリシアは引き攣った顔を向ける
「あのー……呑気に話してる場合じゃないと思うんだけども…」
恐る恐るレイヴンが問いかけてくる
「ついさっき、リゲルも飛び出して行ったから大丈夫だよ」
窓の方を指さしながらアリシアかそれに答える
その方向を見ると、既にリゲルが力を使っているようだった
「でもさ、あれって疲れるんじゃなかったっけ?」
首を傾げながら、カロルは問いかける
「そうだけど……多分、そろそろカペラとアルタイルが」
アリシアがそう言いかけた時、外から爆音が響き渡った
何事かと、ユーリ達が外を見ると、地面の一部が隆起しており、二人が宙に投げ出されていた
「あーあ、カペラ……さすがにやりすぎだって……」
隆起した地面を、呆れた表情でアリシアは見つめていた
宙に浮かんでいた二人は、既にアルタイルがどこかへ運んだらしく、既にそこに姿はなかった
「本当におっかないわねえ……」
少し身震いしながら、レイヴンは窓の外を見ていた
「ふふ、でも、アリシアの行動を見ていると、不思議と納得できるわね。彼らに似たって事が」
くすくすと笑いながら、ジュディスはアリシアの方に顔を向けた
「その納得のされ方はちょっと不服なんだけどなぁ」
少し頬を膨らませて、彼女はジュディスを見た
が、そう思っていたのはジュディスだけではなかったらしく、フレンやカロルも同意見だったようだ
「ボクはジュディスが言ってること、わかるけどな」
「そうだね。二人はアリシアの無理無茶の元凶って言ってもいいくらいだ」
そう言って、二人もくすくすと笑った
同じことを三人に言われ、余計にアリシアは不機嫌そうに顔を歪める
『あ、そういえばさ、アリシア?』
不機嫌そうに膨れている彼女に、不意にポルックスは声を掛ける
表情こそ不機嫌そうなままだが、アリシアはほんの少し首を傾げて彼を見た
『狭間に二人でいる時、『ぼくの方が落ち着く』って言ってたけど……結局、あれってなんだったの?』
唐突な質問に、アリシアは目を見開いて驚いた
が、すぐに気まずそうに全員から顔を背ける
『おい、アリシア?どういう意味だよ、それ』
不機嫌そうな声でカストロが問いかけるが、アリシアは無言のまま、口を開こうとはしなかった
「シア姐、ポルックスを選んだ理由が他にもあったのかの?」
不思議そうに問いかけられたパティの言葉に、一瞬肩が跳ねる
それは恐らく肯定だったのだろう
ほんの少し見えている頬が、ほんのりと赤くなっている事に、ユーリが気づく
「シア、なーんでまた赤くなってんだよ?」
少し意地悪げに問いかけると、また肩が跳ねが、答える気はないらしく、顔を背けたままだった
『……ポルックスの方が、見た目が小さい頃のユーリさんに、ちょっと似てるもんね?アリシア』
「なっ……!!」
ベガの言葉に驚いて、アリシアが振り返る
彼女の言う通りだったのか、顔が更に赤く染まっていた
「べっ、別にそういうわけじゃっ!!」
慌てて否定しようとするが、上手い言い訳が思いつかなったのか、口をパクパクされるだけで、それ以上の言葉は出てこなかった
『あー、はいはい、もういいって。どーせおれは似てねーよー』
少し拗ね気味にカストロはそう言ってそっぽを向いた
『……でも、口調はカストロの方が似てる。だから、ギリギリまで迷ってたんだもんね』
いたずらっ子のように笑いながら、ベガが更にアリシアに言う
「もう!!ベガ!!」
『本当の事でしょ?……だって、未来見た時からずっとそう』
「それ以上言うの禁止っ!!」
遮るように言ったアリシアの言葉に、ベガは大人しく口を閉じて、くすくすと笑っていた
『あら、わたくしはそんな事だろうとは思っていましたわよ?』
『明るい金色よりも、暗い黒色の方があなたが好きな色ですものね』
少し呆れ気味に、でも、どこか微笑ましそうにペテルギウスとアリオトの二人は笑いながら、アリシアを見た
「あーっもう!!ペテルギウスもアリオトも!!それ以上何も言わないでってばぁぁ!!」
そう叫ぶと、アリシアは両手で顔を覆った
それでも、覆いきれていない部分から、赤く染まっている事が見て取れた
「こりゃ完全に、フレンちゃんの負けだわねぇ」
楽しそうに笑いながら、レイヴンはフレンを見る
「レイヴンさん……それは言わないでください」
ほんの少し寂しげな声で、フレンは答えた
ユーリに勝てないことなど百も承知だったが、それでも、目の前でそう言われてしまえば、なんとも言えない気持ちになってしまっていた
「ふふ、本当、羨ましいくらい想われているのね、ユーリ?」
どこか意地悪げに笑いながら、ジュディスはユーリに言う
当の本人は思わぬ答えに、若干固まっていた
確かに自身も彼女のイメージカラーとでも言える赤色が好きではあったが、彼女もそうだとは思ってもいなかった
ましてや、ポルックスを選んだ理由の一つに自身に似ているから、などという事が含まれていたなど、考えもしていなかった
「……ボク、今ここに、リタがいなくてよかったって思う……」
どこか遠くを見つめながら、ポツリとカロルが呟いた
「あはは……確かに、そうですね」
苦笑いしながら、エステルもカロルの言葉に同意した
「リタ姐がおったら、きっと今頃大騒ぎじゃったのう」
パティは腕を組んで、二人に同調するように頷いた
「うー……あー……もう……っ!!」
そう叫びながら、顔から手を退けると、傍にいたユーリの手をアリシアは掴んだ
そのまま何も言わずに、アリシアは指を弾くと、その場から二人の姿が消えていた
「あっ!!またどっか行っちゃった!」
消えた二人に驚き、カロルが辺りを見回した
『あらあら……アリシアも本当に困ったものね』
頬に手を当て、少し首を傾げながらそう言うペテルギウスだが、本気で困ってはいなさそうだった
『まぁ、アリシアの気が済んだら帰って来るんじゃない?』
『だな。その内、帰って来るって』
ポルックスとカストロはそう言って笑いながら、窓の外を見る
空はほんの少し陽が傾き始めていた
そろそろ夕方か、と呑気に考えていると、カペラの叫ぶ声が辺りに響いた
『あーもう!!ライラックもシリウスも!!いい加減にしてってばー!!』
『……あの二人、何やらかしてるんだろ』
呆れ気味に、ポルックスは声の聞こえてきた方向を見つめる
『仕方ないですね……三人とも、あの大馬鹿者二人を止めに行きますよ?』
やれやれとため息をつきながら、アリオトが窓から身を乗り出した
『げっ……マジかよ……あいつら止めんの面倒くさいんだよなぁ』
そう言いながらも、どこか楽しそうにカストロが窓から飛び出し、ポルックスも後に続いた
『いざとなれば、レグルス様を叩き起しましょう。わたくし達の苦労を、少しは感じていただかないと』
どこか黒い笑みを浮かべて、ペテルギウスが窓の外に出ると、四人は揃って声のした方向へと向かって行った
『あーあ……僕しーらない』
そう言いながら、リゲルは部屋の中に戻って来ると、大きく欠伸をする
『ふぁ……僕疲れたからちょっと寝てくる……ベガ、きみはどうする?』
『……あたしも、そうしようかな』
リゲルとベガの二人は、フレン達に軽く手を振ると、部屋を後にして行った
「大騒ぎだったわねえ……」
苦笑いしながら、レイヴンがポツリと呟く
「ふふ、そうね。でも…これが、アリシアがいつも見ていた風景なのよ、きっと」
少し微笑ましそうに笑いながら、ジュディスが言う
「そうですね。アリシアの家族の日常……なんですよね」
エステルはクスッと笑いながら、窓の外を眺めた
普段であれば、絶対に見られなかったであろう光景に、ほんの少しエステルは羨ましそうにしていた
「こんなに賑やかだと、毎日退屈しなさそうじゃのう〜」
「パティは呑気だなぁ……毎日こんな事されてたら、疲れそうじゃない?」
楽しげに言うパティに対し、カロルは若干困り気味に首を傾げた
「はは…っ、カロルの言う通り、毎日は疲れそうだね」
ようやく気を持ち直したらしいフレンがそう言って笑う
少し伸びをして窓の外を見ると、空はほんのりと、彼女の髪と同じ赤色に代わりつつあった
空に向かって、ほんの少し寂しそうに微笑むと、軽く首を振って扉の方へ体を向けた
「さてと……そろそろ夕食の用意でもして来ようかな」
フレンの言葉に、若干空気が凍った
「フ…フレン!!ボクも手伝う!!」
「ウチも手伝うのじゃっ!!」
一人で行こうとするフレンの後を、カロルとパティが慌てて追いかけた
「あちゃぁ……こっちも大騒ぎだわ……」
そう言って苦笑いすると、レイヴンも三人の後を追いかけた
「三人だけで、止められるでしょうか…?」
「ふふ、じゃ私達も行きましょ?」
心配そうなエステルに、ジュディスが微笑みながら誘うと、彼女は頷いて、二人も部屋を後にした
ーーーその頃ーーー
「うぉっ!?」
「……っと」
集落の外周、等間隔に並んだ一つの塔の頂上にアリシアとユーリは現れた
「ったく……急には危ねぇって」
苦笑いしながらユーリはアリシアの頭を撫でた
「だって……みんなして余計なことばっか言うんだもん」
頬を少し膨らませながら、不機嫌そうにアリシアは呟く
幼い子どものような表情を見せる彼女に、ユーリはクスッと笑う
「オレは知れてよかったって思ったけどな?」
「別にユーリにまで隠すつもりなかったけどさぁ……何もみんなの前で言うことじゃないじゃん」
そう言いながら、アリシアは少し、ユーリの方を向いた
赤く染まった頬は恥ずかしさからなのか、それとも夕焼けの色が反射しているのか、それはわからない
「ま、そりゃそうだけどな」
アリシアの後ろからギュッと抱きついて、ユーリは少し空を見上げる
赤く染まっている空を、どこか優しげな目で見つめていた
「……夕焼けだね。もうそんな時間だったんだ」
後ろから回されているユーリの腕を、軽く掴みながら、空を見つめてアリシアがクスッと笑った
「時間かかった理由の大半は、シアがシリウスとライラックさん相手に暴れたからだけどな?」
空に向けていた視線を、アリシアの方へ落としながら、ユーリもクスッと笑う
「確かに、シリウス相手にした時は私が悪かったかもしれないけど……お父様のは、誘って来たのお父様で、私のせいじゃないって」
少しムッとしながら、ユーリの顔を見ようと、アリシアは顔を上げた
自分を見下ろしてくる優しげな瞳に、ほんの少し心臓が跳ねる
普段は絶対見せない、自分しか見られない表情に、言われた事が少し不服だったことも忘れて、無意識に笑顔になっていた
「ホント、表情豊かだよな」
つい少し前までムッとしていたのに、急に笑顔になったアリシアに、少し呆れながらもユーリも笑顔を浮かべる
二人揃ってクスッと笑い合っていると、不意に大きな音が辺りに響いた
驚いて音のした方向を見ると、遠くでまた地面が隆起しているのが小さく見えた
「あーあ……二人とも、完全にやりすぎてるんだろうなぁ……」
苦笑いしながら、アリシアは音のした方向を見つめて呟いた
「おいおい……ありゃちと派手すぎじゃねーのか?」
「これでもまだ大人しい方だよ?」
ユーリの問いに、コテンと首を傾げながら、アリシアは答える
「ったく、あいつら人の事言えねぇじゃねーかよ」
苦笑いしながら、ユーリはアリシアの頭に手を乗せた
「もう……明日は大仕事だっていうのに、あんなに力使って……」
呆れたようにそう言って、頬杖をつきながら音のしている方向をアリシアは見つめる
呆れた声とは裏腹に、どこか楽しそうに笑っていた
「つか、平気なのか?あんだけ暴れてりゃ、エアル使いまくってそうだが」
少し心配そうにユーリは問いかける
「あはは、大丈夫だよ。みんなは自分のマナを使ってるから、エアルに影響は出ないし、レグルスがいる限り、マナが尽きることもないから」
くすくすと笑いながら、アリシアは答える
「ただ……あれだけ無駄にしてると、レグルスは怒りそうだなぁ……」
「……それはそれで大騒ぎになりそうだな」
小さくため息をつきなから、ユーリも音のする方向を見つめる
「全くもう……お父様もシリウスも戦闘バカなんだから……」
困ったように笑いながら小さくため息をつくと、アリシアは空を見上げる
真っ赤だった空は黒とチラホラとキラキラと輝く星空に変わりつつあった
「……〜〜〜〜♪」
軽く目を閉じて、アリシアは歌い出す
それは、ユーリも何度も聞いた歌だった
少し楽しそうに歌う彼女を、ユーリは優しげな眼差しで見つめていた
「……そーいや、それ、なんて歌なんだ?」
不意に、ユーリは問いかける
「〜〜〜………ん?あー……そう言えば、シリウス達に聞くの、忘れてたなぁ」
目を開けて歌うのをやめると、思い出したようにそう呟いて、肩を竦めた
「そういう事は、ちゃんと聞いとけって」
苦笑いしながら、ユーリはアリシアの頭に手を乗せた
「あはは……だって、名前なんて知らなくても、ちゃんと歌えるからさ」
頬を掻きながら、少し気まづそうにアリシアは答える
「……子どもの頃から何度も何度も聴いた歌だから、歌詞だけは、絶対忘れることはないかな」
「ふーん……それ、みんな歌えるのか?」
「そりゃ、私達星暦、みんなの子守り歌だし……」
ゆっくりと、アリシアはユーリの方を見る
急に見つめられ、ユーリは首を傾げる
「……これは、浄化の歌だから」
静かに、それでもはっきりとアリシアはユーリを見つめて、笑いながら答えた
その答えに、ユーリは少し驚く
「じゃあ……アルタイルが時間かかるって言ってたのは……」
「そ、全部歌いきらないといけないから。最初から全部ってなると、なっがいんだよねぇ、これ
もう少し短くできなかったのかな」
笑いながら少し困ったようにアリシアは肩を竦める
「つか、そんな大事な歌、子守り歌にしていいのかよ」
「んー……力使わなきゃ発動しないから大丈夫ってみんな言ってたし、平気平気〜」
呆れ気味に聞いてきたユーリに、くすくすと呑気に笑ってアリシアは答える
「一族揃って、呑気なのが多いな」
「レグルスがあんなんだからねぇ。今残ってるのって、比較的レグルスに似た人たちばっかりだからね。瞳の色がその証拠だよ」
そう言って、アリシアは自身の目元を軽く指で触れた
「そのわりに、全員揃ってレグルスのこと叱ってねえか?」
「それは多分……自分達が当主だった頃に叱られてたからじゃないかなぁ。自分達の無理無茶は怒るくせに、レグルスも人の事言えないくらいには、無理し続けてるからね」
「ふーん……そんなに無理してるようには見えねえけどな」
ユーリがそう言うと、少し気まずそうにアリシアが視線を反らせた
「……アムリタって、ずっと使い続けてるの、結構しんどいみたいなんだ」
少し声のトーンを落としてそう呟いた
アリシアの答えに、ユーリは一瞬目を見開いた
「……お前がレグルスの後継ぐなんて決断、しなくてよかったわ……」
小さくため息をつきながら、ユーリはアリシアに抱きついた
「子どもの頃なら、迷わずそう言っただろうけどね。……けど、さすがにもうそんなこと言えないよ」
どこか寂しそうな声でそう言いながら、ユーリの背に手を回す
「ユーリが傍にいない寂しさを感じるのは……もう、嫌だからね」
「そう思ってくれてんなら、もうあんな事絶対すんなよ?」
「ん……わかってるよ」
そう言ってアリシアは顔を上げ、ユーリを見上げて微笑んだ
「自分の命を投げ出すような事は、もうしない。もう……ユーリの前から、勝手にいなくならないよ」
もう一度、ユーリにその言葉が伝わるようにアリシアははっきりと言う
「……おぅ。約束だからな?」
「うん、約束。……今度はちゃんと、守るよ」
にっこりと満面の笑みを浮かべる彼女の唇に、ユーリは自身の唇を重ねる
唐突なことに一瞬アリシアは目を見開いたが、すぐに嬉しそうに目を細めた
今までと違い、二人は深く唇を重ねていた
星の輝く空の下で、互いに傍にいるのだと確かめ合うように
どのくらいそうしていたかはわからないが、離れた時には二人揃って嬉しそうに微笑み合っていた
「……シア、愛してるよ」
「……私も、愛してるよ、ユーリ」
そう言い合って、二人は笑い出す
今のこの、幸せな時間がいつまでも続くように願いながら……
『あーもう!!!アリシア、どこいるのさぁぁぁ!!!!』
二人が笑いあっていると、アルタイルの悲鳴じみた声が辺りに響き渡った
突然聞こえた声に二人は驚いて、声の聞こえた方向を見る
二人が見た先で、炎が巻き上がり、雷が落ちているのが見える
「あっちゃぁ……二人とも本気じゃん……あれじゃアルタイル達じゃ歯が立たないね……」
アリシアは困ったように苦笑いしながら頬を掻く
「ったく……折角シアと二人っきりになれたっつーのにな」
そう言いながら、ユーリもまた困ったように苦笑いしていた
「んで、どーするよ?」
「んー……まだユーリと二人でいたいけど……さすがにあれ止めないと、これ以上は被害が拡大しちゃいそうだし……仕方ない、行ってあげようかな」
嫌そうな声でそう言いながらも、どこか嬉しそうに微笑みながら、アリシアは答える
「しゃーねえな……二人きりになるタイミングなら、この先……幾らでもあるしな?」
ニッとユーリが笑いかけると、アリシアも嬉しそうにニコッと笑う
「ん、そうだね。……ユーリも、一緒に行く?」
「当然、言ったろ?一秒足りとも離れたくねえんだって」
「あははっ、そうだったね」
そう言って笑うと、アリシアは指を鳴らし、その場から去った
この後、シリウスとライラックの元に現れたアリシアが戦闘を止め、アリオトに二人が叱れていたのを、ユーリはただ苦笑いしながら見ていた