第4部~星暦の行方と再会そして…~
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーー数時間後ーー
「……なぁ、カープノスのやつ、全然話しかけて来ねえな?」
流れる星が減ってきたタイミングで、不意にユーリが口を開いた
「……確かに、全然反応ないね」
ユーリに視線を向けながら、アリシアは少し困ったように笑う
「いい加減、陽も昇って来そうなんだが……」
そう言って頭を上げると軽く伸びをした
「だよねぇ……寝なくて平気?ユーリ」
「それはこっちのセリフだよ。お前こそ、散々力使っておいて、眠くねえのか?」
言い合いながら、お互いの顔を見た
「私は別に平気だよ?散々寝た後だったしね」
「オレも別に、眠くはねえな」
そう言うと、二人は揃って笑い出した
そうこうしているうちに、空がほんのりと明るくなり始めた
「あーあ、ホントに昇って来ちゃった」
明るくなり始めた空を見上げながら、アリシアは呟く
「シアの瞳の色、だな」
彼女の顔を見ながら、ユーリはクスッと笑った
「朝は一瞬だけだけどね」
空を見上げたまま、アリシアはクスクスと笑う
そんな他愛もない話をしていた時だった
『アリシア、ユーリ』
不意にカープノスの声が聞こえて来た
「あ、カープノス。終わったの?」
アリシアはそう問いかけながら首を傾げた
『…ああ。迎えに行くからそこにいろ』
「さっきのとこから、動いちゃねーよ」
ユーリがそう返すと、後ろに人の気配を感じた
二人が振り返ると、カープノスが腕を組んで立っていた
「おつかれさま、カープノス」
ニコッとアリシアが笑うと、彼もほんの少し笑顔を見せた
『……とりあえず、あの馬鹿はしばらく動けないようにしておいた。……初代もようやく笑い終わって、馬鹿を見張っているから、もう大丈夫だろ』
大きくため息をつきながら、カープノスはそう告げた
「ええ……レグルス、まだ笑ってたの……?」
若干引き気味にアリシアは問いかけた
『……ああ………全く、何がそんなに面白かったんだか……初代のせいで俺が苦労するのは、いつまでも変わらないな……』
少し苛立った声で、カープノスは呟いた
「えーっと……なんか、ごめんなさい……」
肩を竦めて、申し訳なさそうに、アリシアはカープノスに言った
『確かにお前にも原因はあるが……だからと言って、あの馬鹿の行動はないだろ
あいつも昔から変わらん。当主の頃から、何度言えばわかるんだか』
呆れ気味にカープノスはそう言って、腰に手を当てた
『……さて、お前らの仲間たちも、もう屋敷に集まってたぞ?』
軽く首を振ると、彼はそう告げる
それに、アリシアの肩がビクッと上がった
「うわぁ……次はフレンとリタかぁ……」
苦笑いしながら、アリシアは頬を搔いた
「はっはっは、それは諦めろって」
笑いながらそう言うと、ユーリは立ち上がる
「……ほれ、あいつらも待ってる」
アリシアに手を差し伸べて、ユーリは優しく笑った
「うー……怒られるってわかってたけど、いざとなると憂鬱〜……」
そう言いながらも、その顔はどこか嬉しそうに笑っていた
『お前が起きてからの一通りの出来事は、アリオトとペテルギウスが話してる。……まぁ、怒られとけ』
カープノスもそう言って、アリシアに手を差し伸べた
少し嫌そうにしながらも、アリシアは二人の手を取って立ち上がった
そして、そのまま軽く伸びをする
「……じゃ、怒られに行きますか」
そう言ってアリシアが笑ったのを合図に、カープノスは指を弾いた
ーーーその頃ーーー
屋敷の食堂にフレン達は集まっていた
「……ふーん……あの子……起きて早々そんなに元気なのね……!」
アリオトとペテルギウスから話を聞いたリタは、拳を握りしめながら肩を震わせていた
「本当に困ったものだよ」
その隣で、フレンはニコニコとドス黒い笑みを浮かべていた
「で、でも、よかったじゃないですか?アリシアが元気で」
苦笑いしながら、エステルは隣にいるリタを見た
「ふふ、本当、相変わらず、ね」
腕を組みながらジュディスはどこか嬉しそうに笑っていた
「そうそう!アリシアちゃんはそういう子よ」
ケラケラと笑いながら、レイヴンはジュディスに同意するように言う
「うむ、シア姐が落ち着いてしもうたら、ちょっと嫌なのじゃ」
頷きながら、パティも笑顔を浮かべていた
「落ち着いたアリシアなんて、想像出来ないよね」
そう言って、カロルはフレンとリタを見る
「……ま、それもそうよね」
少し納得したらしいリタは、拳を緩めて腕をんだ
「……僕はもう少し、落ち着いてくれてもいいと思うんだけどね」
フレン達は互いに顔を見合わせると、少し嬉しそうに笑った
『確かに、あなた達の言う通りですね』
『ええ、あの子が落ち着いた姿は想像できませんわ』
カロル達の言葉に、アリオトペテルギウスの二人はクスッと笑う
そんな話をしていると、扉の向こうから声が聞こえてきた
『……ほら、逃げるなよ?』
「カープノスもしつこいなあ……もう逃げないって」
「それ、逃げようとしてた奴が言うセリフじゃねーよ」
そんな会話と共に、扉が開いた
最初に入って来たのはカープノスとユーリだった
「あ、ユーリ!おはよ!」
「おはよ」
ニコニコと笑いかけてくるカロルに、ユーリは右手を上げて返した
「ふふ、あなたも元気そうね」
少し安心したように笑いながら、ジュディスはユーリを見た
「おろ?アリシアちゃんはどうしたよ?」
さっき聞こえていたはずの声の持ち主の姿が見えない事に、レイヴンは首を傾げた
「ん?……って、シア、お前いつまでそこにいるつもりだよ?」
レイヴンに言われてユーリは後ろを向く
『アリシア……いい加減そこから動いてくれ』
呆れ気味ため息をつきながら、カープノスも後ろを見た
フレン達が首を傾げていると、カープノスの後ろから、赤い髪がチラリと見えた
「……だって、何言えばいいか考えてたから……」
少し気まずそうな笑みを浮かべながら、アリシアはカープノスの後ろから姿を現した
「アリシア!!」
見えた姿に、嬉しそうにカロルが声を上げた
「………ただいま、みんな」
自身の後ろに手を回し、アリシアはそう言って笑った
懐かしい姿に、エステルとリタ、それにカロルとパティが彼女に思い切り飛びついた
「うわっ!?」
いきなり飛びつかれ、少し体勢を崩したが、アリシアはなんとかその場に踏みとどまった
「アリシア…っ!!本当にアリシアですよね…っ!?」
「全くもう……っ!!!あんたは、いつもいつも、心配かけて……っ!」
涙声で二人はアリシアに声をかける
「ホントだよ!!もう、絶対あんな事しちゃだめだからね!!」
「そうなのじゃっ!!シア姐がいないとつまらないのじゃ!!」
少し怒り気味にカロルとパティは言うが、二人は嬉しそうに泣きながら笑っていた
「ごめんね、心配させて」
引っ付いている四人を見回しながら、アリシアは苦笑いする
前にもこんなに事があったな、と
以前と違うのは、彼らか泣いているのは、自分が帰って来て嬉しいからということだけだろう
「本当に心配したのよ?」
そう言って、ジュディスはアリシアの肩に手を乗せた
「そそ、おっさん達も大変だったのよ?」
レイヴンはそう言いながら、彼女の頭を撫でた
「…ごめん」
肩を竦めながらそう言って、レイヴンとジュディスの顔を見る
二人は泣いてこそいないものの、泣きそうに少し眉を下げて微笑んでいた
「………アリシア」
未だに少し離れたところにいたフレンは、ゆっくりと彼女の名前を呼んだ
「……フレン、ごめんね?」
アリシアがそう言えば、彼は無言で近づいてくる
彼女の傍に来ると、彼女の額を軽く指で弾いた
「あたっ…!?」
弾かれたところを、アリシアは右手で押さえ、フレンを見上げる
「……全く、無理無茶も程々にしてくれ。これ以上は、僕らの心臓が持たないぞ?」
アリシアの目に映るフレンは、少し泣きそうにしながら笑っていた
「……そうだね、気をつけるよ」
そう言ってアリシアは笑った
「ったく、そこで『もうしない』じゃねーのがシアらしいな」
フレンに返した言葉に、ユーリは苦笑いした
「だって、どっからが無理無茶なのかなんて、わかんないじゃん?」
少し困った顔をしながら、アリシアはユーリを見る
「……まぁ、少なくとも、もう自分の命を投げ出すようなことはしないって、誓うよ」
そう言って、アリシアは仲間たちを見た
「…それ、絶対よ?今度破ったら……本当の本当の本当に許さないわよ!?」
リタは顔を上げて、そう怒鳴り気味に言った
ほんの少し泣いた跡のある顔で、少し睨むようにアリシアを見上げていた
「わかってるよ、リタ。……今度は絶対、だよ」
アリシアはそう言って笑いかけた
前と変わらぬ笑顔に、リタは少しだけ安心した
「……それで、さ?みんな、そろそろ離れてくれたり……?」
遠慮気味に、でも、少し困ったようにアリシアは引っ付いている四人に問いかけた
だか、全員答えはノーだったらしく、何も言わずに引っ付いたままだった
「おーい、お前ら、いい加減離れてやれって」
呆れ気味にユーリは四人に声をかけた
「そうさねぇ、ここ、扉の前だし、ずっとここにいるのはさすがに邪魔になるしねえ」
レイヴンは頭の後ろで手を組むと苦笑いした
四人は不服そうにしながらも、少しだけアリシアから離れた
そのタイミングで、アリシアの元にラピードが近寄って来た
「……ラピードも、心配かけてごめんね?」
足元に寄って来たラピードに、アリシアはしゃがんで抱きつく
「……ゥワオーンッ!」
一声鳴くと、ラピードはアリシアに顔を擦り付けた
ふわふわとした毛を、アリシアはそっと撫でる
『ははっ、我が娘は本当に愛されているな』
聞こえてきた懐かしい声に、アリシアは驚きながら振り返った
自身の後ろにある扉の前に立っているのは、あの日、手を伸ばしても届かなかった両親だった
ここにいる事は知っていたが、彼女が二人にちゃんと会うのは、これが初めてだった
『……アリシア』
アイリーンはただ、優しく名前を呼んで両手を広げた
見開かれていたアリシアの目から、一筋の涙がこぼれた
「……お母……様……っ!!!」
そう言ってラピードから離れると、アリシアは一目散にアイリーンの腕の中に飛び込んだ
彼女に体温はない
それでも、しっかりと触れられる
離さないとでも言わんばかりに、アリシアは彼女を強く抱き締めた
『あらあら……本当、泣き虫なところは変わらないわね』
腕の中に飛び込んで来たアリシアの頭を撫でながら、彼女は優しげに微笑んだ
『変わっていなくてよいではないか。泣いてくれなかったら、それはそれで寂しいだろう?』
ライラックはそう言って笑いながら、アリシアの頭を優しく撫でた
自分達が最後に見た姿よりも成長したその姿に、ほんの少し寂しさを感じながらも、嬉しそうに微笑む
『……大きくなったな、アリシア。……よく頑張った』
ライラックは優しくそう言うと、アイリーンごと、アリシアを抱き締めた
「……っ!!!」
泣いているアリシアは、言葉を返すことはないが、アイリーンに回していた片手を離し、ライラックの服の裾を握った
決して離れる事のないようにと、強く握っていた
そんな三人の姿を、少し離れたところでユーリ達は見守っていた
「あーあ……大泣きじゃない。あれ、宥めるの大変よ?」
困ったように笑ってリタはユーリを見た
「だな。……やっぱ、ライラックさんには、さすがに勝てねぇか」
自分に会った時には殆ど泣かなかった彼女が、彼らには大泣きしている姿に、ユーリは少し寂しく思っていた
「ははっ、それはそうだよ。……僕らと違って、もう二度と会えないと思っていたんだから」
ユーリの気持ちを察したフレンが、フォローするようにそう声をかける
「んなこと、わかってるっての」
フレンの方を少し見ながら、肩を竦めてそう言って、再び視線を三人に戻した
彼女はまだしばらく泣きやみそうにはなさそうだった
「……そういや、シリウス達はどうしたんだ?」
食堂にいない彼らの事が少し気になり、ユーリはアリオトとペテルギウスの二人を見た
二人は顔を見合わせると、困ったように肩を竦めた
『カープノスが少々やりすぎまして…ねえ?』
『ただ……そろそろ来る頃だと思いますわよ?』
二人はそう言ってカープノスを見た
「程々にって言われたのに、結局やり過ぎたのか……」
呆れ気味にため息をつきながら、ユーリはカープノスを見た
『……ふん、あの馬鹿には、あのくらいが丁度いい』
ほんの少しだけ不機嫌そうにカープノスは答えて顔を背けた
「お主ら……感動の再会はいいが、少し場所を考えんか……」
レグルスの呆れた声にユーリが扉の方を見ると、アイリーンのすぐ傍に、彼の姿が見えた
『……ほら、やっぱり大泣き、してたでしょ?』
『ベガ……それは予言なんてしなくても、わかるじゃん』
『また会えるって、知っただけで大泣きだったんだし、当然だよね』
『だよなぁ、おれら、泣き止ますのに苦労したよな』
『だよねぇ、ぼくらじゃ全然!泣き止んでくれないんだもん』
体の小さいベガとリゲル、カペラとカストロ、ポルックスの五人は、三人の横を抜けながらそう言って部屋に入って来た
『そうそう!アリシアが二人に会って、大泣きしないなんて無理だよ、無理!』
レグルスの横からひょこっと顔を出してアルタイルは笑う
『……さすがにここに居ては、レグルス達が中に入れんな』
ライラックはそう言うと、アリシアを片手で抱き上げた
「わ……っ!?」
急に体が浮き上がり、アリシアは驚く
頬には涙の跡がくっきりとついており、その目元には未だに涙が溜まっていた
『ははっ、お前は相変わらず軽いな』
懐かしそうに笑いながら、ライラックはアリシアを見た
「……っ……ぅ……っ、私、もう、そこまで子どもじゃ、ないもん」
服の袖で涙を拭きながら、アリシアはムッと頬を膨らませた
『私たちにとっては、お前はいつまでも可愛い子どもだよ』
空いている手で頬を撫でながら、ライラックは優しく微笑んだ
その笑顔に、ほんの少しアリシアも笑顔を浮かべた
「うひゃー……アリシアちゃんを片腕で持ち上げるなんて、さすが騎士団随一の剣の達人だわな」
ほんの少し引き気味に、レイヴンは苦笑いした
『ははっ、その名はまだ廃れておらんか。お前ももっと精進しておれば、このくらいにはなれたんじゃないのか?アレクセイの懐刀よ』
どこか嫌味ったらしくそう言って、ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべながら、ライラックはレイヴンを見た
「それはシュヴァーンの話でしょーよ……俺様はレイヴンよ!レ・イ・ヴ・ン!!」
『ははっ!そうであったな』
ライラックはそう笑いながら言って、部屋の中へ入ってくる
ようやく扉の前が開き、レグルスとアルタイル、そして、仏頂面のシリウスが部屋の中へ入って来た
「シリウスのやつ、だいぶ不機嫌みたいだな」
シリウスを見たユーリはそう言って肩を竦めた
『それは彼奴が悪い。生身のアリシア相手に、本気で剣を振り下ろすなど、皆が怒って当然だ』
ライラックも彼に怒っていたようで、少し冷めた声でユーリにそう答えた
「……ところで、シア?泣き止んだのか?」
さすがにこれ以上、彼の話題は出してはいけないと察したユーリは、アリシアの方を見て問いかけた
彼女の瞳には、まだ少し涙が溜まっており、鼻を啜っていた
「…おーい、いつまで泣いてるつもりだよ?」
苦笑いしながら、彼女の目元に溜まった涙を、そっと指で拭った
「……だって、お父様もお母様も…っ………急に、出てくるんだもん……心臓、止まるかと思った……っ」
涙声でアリシアはそう訴える
「さすがにそりゃ困るんだけど……」
困り気味に笑いながら、ユーリはアリシアの頭に手を乗せた
「ほーら、いい加減泣き止めって。ライラックさんも困るだろ?」
優しくユーリがそう言うと、少しムッと頬を膨らませる
「……お父様、も、降ろして?」
『……ああ、わかった』
ほんの少し寂しそうにライラックは答えると、アリシアを降ろした
すると、今度はユーリに抱きつく
「……シア、それだと今度、オレが動けないんだけど?」
「……………後五分…………」
「へいへい、わかりましたよっと」
少し呆れ気味にそう言いながらも、どこか嬉しそうに微笑んで、ユーリはアリシアの頭を撫でた
『ふふ……あなたの負けね、ライラック?』
クスクスと笑いながら、アイリーンはライラックを見た
『悔しいが完敗だな……全く、ユーリくんでなければ殴っていたな』
一瞬、悔しそうにしていたが、ライラックはすぐに笑顔に戻った
「むー……やっぱりシア姐には勝てなさそうなのじゃ」
「パティ、まだ諦めてなかったの?」
少しムッとしながら、二人を見ていたパティに、呆れ気味に、カロルはそう言った
「全く、相変わらずのバカップルね」
ため息をつきながら、リタは腕を組む
「でも、いつも通り、ですね」
クスクスと笑いながらエステルは二人を見ていた
「そうね。二人がああしていないのは、違和感しかないもの」
微笑ましそうに二人を見ながら、ジュディスも笑った
「いつもの光景が戻って来て一安心、一安心!だから……あのー……フレンちゃん?そのドス黒〜いオーラ、引っ込めてくんないかしら…?」
ジュディスの言葉に同意した後、遠慮気味にそう言って、レイヴンは隣にいるフレンを恐る恐る見た
確かにフレンも笑顔ではあるが、目が据わっていた
あからさまに不機嫌な笑顔に、レイヴンは大きくため息をつく
「……こりゃダメそうだわな……」
やれやれと首を横に振って、苦笑いしながら肩を落とした
「…………やっぱり、この光景を見るのはしんどいかな………」
小さくそう言うと、フレンは剣に手を伸ばそうとする
「ちょい待った!!フレンちゃん!!いくら何でもそりゃないって!!」
隣にいたレイヴンは慌ててフレンを止めに入る
それに気づいたカロルとエステルも、フレンの事を宥めようと奔走していた
「あいつら……何やってんだか……」
自身の後ろで大騒ぎしている仲間たちを、横目で見ながら、ユーリは呆れたようにため息をついた
「……どーせまた、フレンが、ユーリに切りかかろうとでも、してるんでしょ」
少し不機嫌そうに、アリシアが口を開く
「そりゃ勘弁願いたいね」
肩を竦めながら、ユーリはアリシアの方に視線を戻した
『ははっ、我が娘は本当に人気者のようだな』
楽しそうに笑いながら、ライラックはフレン達を見ていた
「もう……フレンを好きになる可能性なんて、一ミリもないって、何回言えばわかるんだろ」
ゆっくりとユーリから離れ、服の袖で頬を拭きながら、アリシアは呟いた
「それ、勘か?それとも予言?」
ユーリがそう問いかけると、アリシアはニッと笑う
「どっちも!」
ほんの少し意地悪そうに笑いながら、アリシアは答えた
「はは、そうかい。……もう平気そうだな」
アリシアの答えにクスッと笑うと、少し安心したように笑いかけた
それに、彼女は笑顔で返す
『さすが、ユーリだねえ……あんなに泣いてたのに、もう泣き止んだよ』
驚いた表情でアリシアを見ながら、アルタイルは呟いた
『……おれら、あんなに苦労したっつーのに……』
『なんか……悔しいね……』
ムッと頬を膨らませて、カストロとポルックスは、ユーリをジト目で見ていた
『あらあら……あんなに簡単に……やはり、わたくし達では、ダメでしたのね』
『……当然の結果だろ』
少し寂しそうにアリシアを見つめているペテルギウスに、カープノスは小さく呟いた
『……今、何か言いまして?』
『…………なんでもない』
ニコッと笑いながら自身を見つめてくるペテルギウスから、カープノスは顔を逸らせた
「…………お主ら、いい加減座らんか??」
これまで黙っていたレグルスは、少し低い声でそう問いかける
どこか圧を感じる声に、アリシアとライラック以外がビクッと肩を震わせた
「ありゃりゃ、レグルスがちょっと怒り気味みたい」
苦笑いしながら、アリシアは頬を搔いた
『だがレグルス、座ると言っても、全員がまとまって座れる場所はないだろう?』
腕を組んで、首を傾げながら、ライラックは問いかける
ここにあるテーブルでは、多くても十人程度しか、まとまって座れなさそうだったからだ
「……それもそうか……」
その事は頭にはなかったようで、レグルスは少し腕を組んで考え込む
「……もうさ、各自好きなところに座れば良いと思うけど……」
少し面倒くさそうにアリシアは呟く
「それだときっと、シアの争奪戦が始まるぜ?オレは譲る気、一切ねえけどな」
腰に手を当てながら、ユーリはニヤッと笑った
「あー……それは面倒だなぁ……」
少し目を閉じて、アリシアは唸る
どうしようかと考えていたが、どう分けても誰かしらからは文句を言われるだろうと、アリシアは考えるのをやめた
「……うん、やっぱり各自好きなとこ座ればいいと思う」
目を開いてアリシアは、左手でユーリの手を掴む
そのままフレンの方へユーリを引っ張っていくと、今度はフレンの手を右手で掴んだ
「って事で、私の両隣は埋まってるから、文句はなしね?」
意地悪げに笑ってそう言うと、近くにあった椅子に三人並んで座った
『僕らが意見言う前だったのに……』
ムッと頬を膨らませながも、リゲルは空いている場所に座った
それを合図に、各々席についた
「シア……ちと強引すぎじゃねーのか?」
頬杖をつきながら、ユーリはアリシアを見る
「全くだよ。少しは彼らの意見を聞いてあげても良かったんじゃないかい?」
フレンも困ったように笑いながら、アリシアを見た
「あのままじゃ、いつまで経っても決まらないよ」
クスッと笑って、彼女は答えた
全員が座ったところで、レグルスが立ち上がった
「さて……アリシアが戻って来たところで、状況の整理と、これからについて話さねばいけないのだが……」
そう言いながら、レグルスはアリシアを見つめる
「アリシアよ、狭間はいつまで持ちそうなんだ?」
「んー……まぁ、当面は崩れることはないよ」
レグルスの方を見ながらアリシアは答える
「『あれ』が私を完全に模倣しちゃったせいで、狭間も私と『あれ』の違いを区別できてないみたい。狭間が『あれ』を私だって誤認してる間は崩れることはないし、力は模倣できないから、自力じゃ結局出られないし
少しくらいのんびりする余裕はあるよ」
そう言って、ニコッと笑った
「お主は呑気だな……だが、まぁ、猶予があるのは都合がいいな」
呆れ気味にため息をつきながらも、レグルスは少し安心したように息をついた
『アリシアとレグルス様が同時に浄化の力を使う為には、まず黒雷の
アリオトはそう言って、カープノスを見た
『カープノス、あなたにも黒雷の
『……星の
少し不機嫌そうにカープノスは答えた
『あらあら……作った本人がわからないとは…』
少し嫌味ったらしく言うペテルギウスをカープノスは睨んだ
『初代こそ、形を作った本人だろ?わからないのか?』
ペテルギウスには口で勝てないと悟ったカープノスが、レグルスに問いかける
「わかっておったら、とうに回収しておるわ」
ため息をつきながら、レグルスは答えた
「……え?カープノスもレグルスも……それ、本気で言ってる……?」
二人の答えに、アリシアは驚いた様子で問いかけた
『はははっ!アリシア、二人が覚えている訳がないだろう?』
そう言って、ライラックは笑った
「覚えていないとは、どうゆう意味だ?」
不機嫌そうにライラックを少し睨みながら、レグルスは問いかけた
「……レグルス、白雷、今どこ?」
アリシアはそう言って首を傾げる
「ここにあるが……」
レグルスはそう言って白雷を取り出した
アリシアは無言で手を伸ばすと、レグルスは白雷を彼女の元へと持って行った
彼女は白雷を受け取ると、その重さに少し懐かしそうに微笑んだ
目を閉じて、白雷の柄を額に当てる
その様子をライラックとアイリーン以外が、不思議そうに見ていた
「………『黒雷』、戻っておいで?」
小さく呟くと、白雷が輝く
ユーリ達は眩しさに目を閉じた
白雷の輝きが収まり、ユーリ達が目を開くと、アリシアの手の中には白雷と、小さな白い球体が握られていた
「……はい、黒雷の
呆気からんとそう言って、アリシアはレグルスに
『えっ!?何それ?!!』
ガタンッと音を立てて立ち上がりながらアルタイルが叫ぶ
『そんな事出来るって、聞いてねえよ!?』
アルタイル同様、カストロも立ち上がって叫んだ
「……今、何をした……?」
ポカンとしながら、レグルスはアリシアに問いかける
「何…って、これ、レグルスとカープノスがそうできるようにしてたんじゃんか」
呆れ気味にそう言ってアリシアは二人を見た
そう言われても、二人には全くと言っていい程に、そんな記憶がなかった
『忘れていても無理はない。二人は普段使いする前提で作ってなどいないのだからな』
クスッと笑いながら、ライラックは二人を見て言う
『白雷と黒雷の
『……それって、忘れてたレグルス様と、カープノスがいけないんじゃないの?』
ジト目でリゲルは二人を見つめる
どこか気まずそうに、二人は顔を逸らせた
「でもよ?レグルスやカープノスが忘れてたこと、なーんでアリシアちゃんが知ってるのよさ?」
不思議そうに、レイヴンは問いかける
「それはお父様のせいだね」
クスクスと笑いながら、アリシアはライラックの方に顔を向けた
「宝刀って言ってるのに、二日に一回はどっちか片方無くすんだもん」
いたずらっ子のように笑って彼女は言う
『アリシア……!さすがにそれは言い過ぎだ!!』
慌てたようにライラックは立ち上がる
『そうよ、アリシア』
ライラックを擁護するかのようにアイリーンは口を開き、ライラックは少しホッとした顔をする
『二日に一回、じゃなくて、三日に一回よ』
が、彼女の口から出た言葉は擁護の言葉ではなかった
『ア、アイリーン……!!お前まで……!!』
ライラックはあたふたと二人を見るが、当の本人達はクスクスと笑っていた
「みんなにバレなかったのは偶然なんだから、ちゃーんと怒られないとね?お父様」
そう言って笑うアリシアはどこか幼く見える
『ライラック……!!宝刀無くすなんて……!何してるの!?』
ライラックを睨みながら、ベガはキツめの口調で言う
『しかも三日に一回って……何したらそんな頻度で無くせるのさ』
頬杖をつきながら、カペラは呆れ気味にライラックを見つめていた
「おーい、シア、あれ、いいのか?」
苦笑いしながら、ユーリは問いかける
「いーのいーの!お父様も、たまには怒られておかないと」
未だに幼い子どものように笑いながら、アリシアは答えた
『……とりあえず、だ、アリシア、再構成はできるのか?』
どうにか気を持ち直したらしいカープノスは、アリシアに問いかけた
カープノスの問いに、ニコッと笑うと、アリシアは白雷をテーブルに立てかけ黒雷の
「……我が呼び掛けに答え……再び、現世に現れよ、『黒雷』」
そう唱えると、
纏った光は徐々に刀の形を成していき、光が収まった時には、あの時と変わらぬ姿の黒雷がそこにあった
目を開けて、アリシアはどこか愛おしげに柄を撫でた
「……おかえり、黒雷」
小さく呟くと、黒雷の鞘をギュッと握りしめた
『……とりあえず、ライラックを問い詰めるのは後にしておきましょうか』
アリオトはそう言って、リゲルとカペラの方を見る
『………そうだね、いくらでも時間はあるもんね』
『だね。後でじっくり聞こうか』
二人はそう言って、一旦怒りを鎮めた
「……とりあえず、目先の問題は、一つ解決したわけだな……」
小さく息を吐きながら、レグルスはそう言って、先程まで自身が座っていた場所へ戻った
「というか……アリシア、あんた、
リタはずっと気になっていた質問をアリシアに投げかけた
「知ってたけど?」
何食わぬ顔で彼女はそう答える
それに驚いたのはベガ達だった
『なんで……!?だって、あたしたち、話してない……!!』
『そうだよ!そんなの、一体いつ……!!』
慌てた様子で、二人はアリシアに問うが、彼女は至って冷静に彼らに笑いかけた
「私は、いつまでも御伽噺を信じる子どもじゃないよ」
少し寂しそうにしながら、アリシアは答える
「そりゃ、子どもの頃は何も疑わなかったけど……成長すれば、矛盾にだって気づくよ
だから、あの日以降に、勝手に家にあった歴史書、読ませてもらってた」
悪戯が成功した子どものように、彼女は笑う
アリシアは、敢えて両親が死んだ日とは言わなかった
それは、傍にいる本人たちが気にするだろうと思ったからだった
『歴史書……って、そんなの読んでたら、おれら気づくって!!』
「雪の日」
カストロの叫びに、アリシアは短く答えた
その答えに、彼らは息を飲んだ
「雪の日って……なんで?」
不思議そうにカロルが首を傾げた
「その日だけは、視界が悪くなって、みんなが私の事を見られないから。……だから、その日だけは、家に籠って、ずーっと読んでたの」
カロルの問いにほんの少し髪を揺らしてアリシアは答えた
『でも……じゃあなんで!!ぼくらにその事を聞かなかったの!?』
少し悲しそうに、ポルックスは問いかける
「……だって、知って欲しくなかったでしょ?」
少し首を傾げながらアリシアは彼らに問いかける
「知って欲しくないって思ってるの、わかってたから知らないフリ続けてたの。……子どもの頃の私ならきっと、レグルスの代わりになるって言ってただろうしね」
カラカラと笑ってアリシアはそう言った
『……では、今はどう思っていますか?』
少し躊躇いながら、アリオトは問いかけた
「さすがに私でもそれはしないよ」
苦笑いしながらアリシアは答える
「それは、レグルスの思いを無駄にする行為だから。星喰みを倒すことだけを考えて、永い時を生きることを決めた、レグルスの覚悟を踏みにじるようなことだよ
……いくら私でもそんなこと、しないよ
……それに……」
そう言いながら、アリシアは隣にいるユーリを見た
急に向けられた視線に、ユーリは首を傾げた
「もう離れるのは、嫌だからね!」
ニッコリとアリシアはユーリに笑顔を向ける
出会った時と同じ笑顔に、ユーリは安心したように微笑んだ
「……お前の口から、その答えが聞けてよかったよ。代わりになるとでも言い出したら、どうしてくれようかと思ってた」
アリシアの頭に手を乗せながら、ユーリは彼女を見つめた
『ですが……そうなると、ライラックとアイリーンがそうしていた事も、元々知っていたのですか?』
ペテルギウスは頬に手を当てながら問いかける
「んー……そうだったらいいなぁ……とは思ってたけど、そこは半信半疑だったよ
そうじゃなきゃ、あんなに泣いたりしないよ」
彼女の問いに、アリシアは肩を竦めてそう答えた
「全く……君は本当に、隠し事が多いんだから」
困ったように微笑みながら、フレンは隣にいるアリシアを見つめた
「これに関しては私のせいじゃないもん」
少し不服そうにアリシアは頬を膨らませた
「隠し事と言えば、レグルスに似た星暦共通の性格って、一体なんなのかしら?」
ふと思い出したようにジュディスが問いかける
その言葉に、レグルスとライラック、そしてシリウスの肩が少し上がった
「あー……その話をする前に……」
アリシアはゆっくりと、シリウスに視線をもっていく
「シリウス、いつまで不貞腐れてるの?」
若干呆れ気味にアリシアは問いかける
『……お前がオレの言う事を聞かんからだろ』
少し拗ねたようにシリウスは答えた
「だーかーらー、シリウスにとやかく言われる筋合いないって、ずっと言ってるじゃん」
少しだけ不機嫌になりながら、アリシアは答える
『だから、それは何故かと聞いている!!』
また怒りが再熱したらしいシリウスはテーブルを叩きながら問いかける
「……白雷に移してた私の意識が、気づいてないとでも本気で思った?」
シリウスを睨みながらアリシアは言う
その言葉にほんの少し、シリウスの肩がピクっと上がった
「気づいてないって、何にです?」
不思議そうにエステルが問いかける
「ユーリとタイマンしてた時、シリウス、残滓の『ざ』の字も取り憑いてなかったじゃん」
尚シリウスを睨みながら、アリシアは言う
『…はぁ…っ!?シリウス!!どういう事!?』
アルタイルは驚きながら、シリウスの方を見る
彼はほんの少し冷や汗をかきながら、視線を逸らしていた
「どーせ、私に狭間から追い出されてブチキレて、自分にまとわりついてる残滓相手に大剣ぶん回しでもしたんでしょ」
ジッとシリウスを見つめながら言うその声は、あからさまに怒っていた
『シリウス……では、貴方は、正常な状態なのに、ユーリさんに本気で、あの馬鹿力で大剣を振り下ろしたのですわね……?』
怒っているのはアリシアだけでなく、ペテルギウスも同じだった
「シリウス……お主というやつは……」
大きくため息をつきながら、レグルスは項垂れた
この大馬鹿者をどうしようかと考えている時、ガタンッと椅子が動く音が響いた
レグルスが顔を上げると、アリシアが立ち上がっており、白雷と黒雷を腰に下げているところだった
「……私、ポルックスに伝言頼んだよね?『ユーリに怪我させたの、絶対に許さない』って」
そう言って、彼女はニコッと笑う
その笑顔に、シリウスは少し青ざめた
それは、彼女がキレた時に見せる笑顔だったからだ
「……どうしても、納得いかないみたいだし……シリウス、表出よっか??」
こめかみをピクピクとさせながら、尚笑顔で彼女はシリウスを見る
『い、いや、アリシア!これは、だな……っ!?』
まずいと思ったらしいシリウスは慌てて弁明しようとするが、アリシアは指を弾いてシリウスの傍に現れる
「問答無用っ!!!!」
そう言って、シリウスの腕を掴むと、再び指を鳴らして、その場から姿を消した
「アリシアっ!?!!」
ガタンッと大きな音を立てて、フレンは立ち上がった
『あーあ……僕、しーらない』
諦めたようにリゲルはそう言ってテーブルに突っ伏した
『アリシア、本気で怒らせるって……シリウス、やっぱり馬鹿……』
リゲル同様、ベガも諦め気味にそう呟いてため息をついた
「うひゃー……ほんとにカープノスと同じことできちゃうのねえ……」
驚きながらも、苦笑いして、レイヴンは呟いた
「おいおい……どーすんだよあれ……さすがのオレでも、ブチギレたシアは止めらんねぇぞ?」
困り気味にユーリはレグルスを見た
「……もうあの子の好きにさせてやれ……こればかりは、シリウスが悪い」
レグルスはそう言って頭を抱えた
『シリウスは相変わらずだな……ユーリくんに何かあれば、アリシアが怒ることなどわかりきっていただろうに』
ライラックはそう言って立ち上がり、窓の側に行きその窓を開くと、外から声が聞こえてくる
あまり遠くには行ってなかったらしく、すぐ近くで、アリシアがシリウス相手に刀を抜いているところだった
『ま、待てアリシア!!少し冷静に話そう!!?』
「……それ、私散々言ったと思うけど……?」
『そ、それはそうだが……』
「いいから、さっさと剣抜いた方が身のためだと思うよ?」
『〜〜〜っ!!!す、すまん!!オレが悪かった!!』
「…………それで許してあげるほど……私、優しくないからっ!!!!」
そう言うが否か、アリシアはシリウス相手に突っ込んで行った
さすがのシリウスも慌てて大剣を抜いてガードするが、そのまま後ろへすっ飛ばされていた
「あーあ、始まっちまったよ……フレン、どーする?」
「どうもこうも……こうなったら、ほっとくしかないだろ?」
開かれた窓から二人を眺めながら、ユーリとフレンは苦笑いした
あのシリウスがアリシアに圧倒されている事に、ほんの少し違和感を持ちながらも、二人はことの成り行きを見守っていた