第1部〜水道魔導器魔核奪還編〜
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カロルの鼻曲がり大作戦
材料を取りに、クオイの森までやってきたオレ達
来る途中、シアはパナシーアボトルで毒を浄化出来ることや、その材料にエッグベアの爪、ニアの実が必要だと言う事をカロルから聞いていた
「ニアの実ってあのめっちゃまっずいやつ?」
シアは首を傾げながらカロルにそう聞く
「えっ!?あれ食べちゃったの!?」
それに驚いたようにカロルは声をあけだ
「え?う、うん。すっごい前に森に来た時に食べれるかな~って思って…」
あはは……とシアは苦笑いする
「あれ、食用じゃないから食べない方がいいよ」
「えっ、あぁ…確かにあれは食べ物じゃないよね…」
ニアの実について楽しそうに話ながら先頭を歩くカロルとシアを見て、俺は少し顔をしかめた
いくら子供だとしても、自分の恋人と二人で仲良く話しているのは非常に気に食わない
「えっと…どうかしたんてす?ユーリ。顔…怖いですよ…?」
言いにくそうにエステルが声をかけてくる
「クゥン…」
ラピードも、少し心配そうに見上げてくる
「別にどうもしてねーよ。ほら、さっさと行かないと置いていかれっちまうぞ」
そう言って二人を追いかける
どうやら二人はオレらが追いついてないことに気づいていないようだ
(いくらなんでも気づかなさすぎだろ)
心の中でそう呟いて、やっと追いついたシアの腕を掴んで自分の方へと抱き寄せる
「!?え?あ、ユーリ?どしたの?」
一瞬抱き寄せられたことに驚いたようだが、そんなことは気にせずに俺に問いかけてくるシア
「どうしたじゃねーよシア。オレらが追いついてないこと、気づいてなかっただろ」
少しむっとしながらそう言う
すると二人は、始めてエステルとラピードが離れたところにいることに気がついたようだ
「ご、ごめん!話に夢中になってて…」
カロルは咄嗟に謝る
「ったく、はぐれたらどうするつもりだったんだよ」
呆れ気味に腕の中にいる彼女にそう問いただす
「迷子になっても、ユーリが見つけ出してくれること、私知ってるから」
悪びれる様子もなく、ニコッと満面の笑みでそう言われ、はぁ…っと、長いため息をついた
「み、皆さん…置いていかないでください…」
「ご、ごめんね!;」
やっと追いついたエステルは多少息が乱れており、相当走ったことがわかる
そんなエステルを見て、シアはオレの腕の中から抜けるとエステルの元へと行って何度も謝る
…オレには謝らないのな…
ガックリと呆れ気味に項垂れながら苦笑いする
こうゆうやつだって昔っから分かってはいるんだが、やっぱり納得がいかない
「あ!あった!!」
突然、カロルが大声をあげて走って行ってしまった
何事かと呆気に取られていると、手にニアの実を2つ持ってカロルが帰ってきた
「ほら!ニアの実だよ!」
得意げに見つけたニアの実を見せつけてくる
「やりましたね!カロル!」
エステルが褒めると嬉しそうに頬を少し赤らめる
「んじゃ、後はエッグベア探しだな」
オレが先に進もうとするが、それをカロルに静止される
「あ、待ってよ!そんなに闇雲に探しても見つからないよ!」
「じゃあ、一体どうやって見つけるの?」
シアがそう聞くと、カロルは胸を張って得意げに答えた
「エッグベアってちょっと変わった嗅覚を持っててさ。ちょっと待っててね!」
そう言うと、先ほど手に入れたニアの実の一つをなにやらいじり始めた
不思議そうにその様子を見ていると、いきなりニアの実から煙が立ち込めた
「げほっ!げほっ!」
「うっわ!?くっさっ!?お前くっさっ!?」
「なっ!?僕が臭いみたいに言わないでよ!?」
「うぅ…でも本当に臭いですよ…」
「ワ、ワフゥゥゥン…」
「げほっ!ちょ、ちょっとラピード!大丈夫!?」
ニアの実から出された臭いにラピードがダウンしてしまう
心配そうに見つめるシアにラピードは大丈夫だと言うように体を擦り付けていた
……若干納得がいかねぇのは何でだろうかねぇ……
「こんなんで本当にエッグベア、来るのかな…」
シアがボソッと小声で呟くと、ガサガサっと茂みから物音がした
音がした方を向くと、そこには探していたエッグベアがのっそりと顔を出してきていた
さっきカロルから聞いていたが、かなりデカイ
「へぇ、カロル先生の鼻曲がり作戦は大成功ってことか」
ニッと笑いながらカロルの頭にポンっと手を乗せる
「ちょっとぉ!変な名前つけないでよね!」
心外だ!と言わんばかりにカロルが反論している
「ほら、ラピード!頑張って!」
シアはラピードを励ましてなんとか立ち上がらせる
エッグベアがゆっくりとこちらを向くとカロルはオレの後ろへと隠れてしまう
「き、気をつけてね…本当に凶暴だから」
若干怯え気味にカロルはそう言った
「そう言ってる本人が真っ先に隠れるとは、いいご身分だな」
呆れ気味に後ろに隠れたカロルの方に顔を向ける
「え、エースの見せ場は最後なの!」
と言っているが、どう見ても怯えている
強がりは大概にしといた方がいいぞ、とはあえて言わなかった
すると突然、エッグベアが雄叫びをあげた
お腹が空いているのか、あるいは好物の臭いがするからか襲いかかってくる
「んじゃ、ちゃちゃっと片付けますかっ!」
久しぶりに手応えのある戦闘が出来そうで、心が踊る
「楽しむのはほどほどに、ね!」
そう言いながらシアも鞘から剣を抜く
「エステル!援護頼む!」
「はい!」
そう言うと、エステルはエッグベアから少し距離を置く
「ぼ、僕だって!」
そう意気込んでカロルもハンマーを握り締めた
「これでもくらえっ!牙狼激っ!」
「ワォーンっ!」
「えいっ!やぁっ!臥龍アッパー!」
「はあっ!蒼破刃っ!」
「煌めいて、魂瑶の力…フォトン!」
戦闘が始まってから数分、エッグベアはなかなか倒れそうにないが、だいぶ弱ってきているようだ
時折エッグベアの攻撃が掠ったりするが、エステルが素早く治癒してくれるおかげで気にせずに戦うことが出来ている
…その度に、若干胸が痛むが、今は原因を探ってる余裕はない
それに、いくら怪我をしても大丈夫だと言っても体力には限界がある
幼いカロルは既に息切れし始めていて、限界が近いようだ
「あー、もうっ!しぶといなぁ!」
そう言いながら小さく舌打ちする
(このまま戦っていてもいずれ、こっちが倒れちゃう…あまり気は乗らないけど…やるしかないっ!)
後ろに下がり、エッグベアから距離を置いて詠唱を始める
あまり使う気にはなれないが、これ以上長引かせるわけにもいかない
「正義の意思、雷撃の剣となり科あるものに降り落ちる…」
「っ!?おい!カロルっ!離れろっ!!」
私の詠唱に気づいたユーリが慌ててカロルの首元を掴んで後退する
「へ?なんっ…うわぁっ!?」
若干カロルが体制を崩してしまったのが見えるが、ユーリが抱えてることだし、大丈夫だろう
「サンダーブレードっ!!」
ユーリがカロルを掴んで後ろに飛ぶと同時に、エッグベアの辺り一面に電気を含んだ剣が降り注ぐ
剣が消えると同時に、エッグベアはようやく倒れた
「よしっ!終わりっ!」
「『終わりっ!』じゃねぇ!急にあんな大技使うなよ!」
満足気に言うとユーリに一喝される
結果的に倒せたのは確かなのだが、私の術は敵だけでなく時には味方にまで当たってしまうことがある
それ程私の術は不安定で扱い難いのだ
……まぁ、確かに今回は私が悪かった
あんな大技、何も言われずに放たれて、万が一にでもクリーンヒットしたらたまったもんじゃない
私だって嫌だ
「でもすごいよ!あんな大技使えるなんて!」
カロルは目をキラキラさせて私を見詰める
まだ十二歳の少年には難なく大技を使える私も、高度な治癒術が使えるエステルも、魔物に臆することなく立ち向かっていくユーリも輝いて見てたのだろう
「本当です!私もあんな大技初めて見ました!」
それはエステルも例外ではないようで、彼女もまた私のことを目をキラキラさせて見詰める
「そんなことないよ~!私なんかお父…お父さんに比べたらまだまだよ~」
そう明るく笑いながら言う
ついいつもの癖で『お父様』って言いそうになったけど誰も気がついていないみたい
「んじゃまぁ、カロル先生、エッグベアの爪、回収宜しくな。オレわかんねぇし」
面倒くさそうにユーリはカロルに回収させようとする
「え、えぇ!?か、簡単だから誰にでも出来るよ?」
そのカロルはというと、両手を顔の前で振って拒絶する
「見せ場作ってやろうって言ってんの」
そう言われカロルはしぶしぶ爪を取ろうとする……が、
「ぅわぁぁ!!!」
「ひぃぃぃぃ!?」
ユーリはカロルの後ろでわざと大声を出す
「いやぁ~カロル先生は驚く振りがうまいな~」
いたずらっぽく笑いながらユーリはカロルを見る
「あ、あはは…そ、そう…?」
…いやいや…これは流石に酷いでしょ…と、苦笑する
結局、エッグベアの爪はユーリが自分で回収した
「さてと、回収もしたことだし、さっさと戻りますか」
エッグベアから離れながらユーリはそう言う
「それもそうだね~そろそろ夜になりそうだしね」
空を見上げながら私はそう言った
木であまり見えないが、もう大分暗くなってきていることはわかる
「じゃあ、急いで帰ろう!」
カロルがそう言うと、エステルも頷いた
「はい!ハルルの街のみなさんも、きっと帰りを待ってます!」
そして、私達は来た方向を引き返して行った
クオイの森の入口付近まで戻ってきたところで、ラピードが急に止まって後ろを振り返り威嚇し始めた
「ん?どうした?ラピード」
ユーリが足を止めて不思議そうにラピードを見つめると、不意に聞き覚えのある声が森に響き渡る
「ユーリ・ローウェル!!森に入っているのはわかっている!」
「お、大人しく出てくるのであ~る…」
「い、今出てくればボコるのだけは勘弁するのだ…!」
その声にユーリは、ガックリと項垂れる
「おいおい…まじかよ……あいつら結界の外まで追いかけてきやがったのかよ……」
ユーリを探す声は間違いなくルブランとアデコール、ボッコスだろう
…全く…執念深いと言うか、しつこいというか……
「ぶぁっかもーん!噂ごときに恐れるなどシュヴァーン隊の名が廃れるではないかっ!!」
「ふふっ相変わらず仕事熱心なことで」
そう笑って言いながらも、私は近くに生えている木を剣でなぎ倒した
「さっ!さっさと逃げよっか!」
剣を鞘に収めつつニコッとみんなに笑いかける
「だな、さっさと行くか」
ニッと笑いながら、ユーリも頷く
「えっ!で、でもこんなことしたら他の人の迷惑に…!」
エステルは私がなぎ倒した木を見つめながら、おどおどし始める
「こんなこと誰も通らねぇよ」
呆れ気味に肩を竦めながらユーリは言った
「そうそう!なんてたって呪いの森、だもんね!」
ニッといたずら気味に笑いかける
「……それもそうですね」
エステルが頷いたのとほぼ同時に走り出した
たった一人、カロルだけが何が何だかわからないといった表情をしていたのは気にしないでおこう
材料を取りに、クオイの森までやってきたオレ達
来る途中、シアはパナシーアボトルで毒を浄化出来ることや、その材料にエッグベアの爪、ニアの実が必要だと言う事をカロルから聞いていた
「ニアの実ってあのめっちゃまっずいやつ?」
シアは首を傾げながらカロルにそう聞く
「えっ!?あれ食べちゃったの!?」
それに驚いたようにカロルは声をあけだ
「え?う、うん。すっごい前に森に来た時に食べれるかな~って思って…」
あはは……とシアは苦笑いする
「あれ、食用じゃないから食べない方がいいよ」
「えっ、あぁ…確かにあれは食べ物じゃないよね…」
ニアの実について楽しそうに話ながら先頭を歩くカロルとシアを見て、俺は少し顔をしかめた
いくら子供だとしても、自分の恋人と二人で仲良く話しているのは非常に気に食わない
「えっと…どうかしたんてす?ユーリ。顔…怖いですよ…?」
言いにくそうにエステルが声をかけてくる
「クゥン…」
ラピードも、少し心配そうに見上げてくる
「別にどうもしてねーよ。ほら、さっさと行かないと置いていかれっちまうぞ」
そう言って二人を追いかける
どうやら二人はオレらが追いついてないことに気づいていないようだ
(いくらなんでも気づかなさすぎだろ)
心の中でそう呟いて、やっと追いついたシアの腕を掴んで自分の方へと抱き寄せる
「!?え?あ、ユーリ?どしたの?」
一瞬抱き寄せられたことに驚いたようだが、そんなことは気にせずに俺に問いかけてくるシア
「どうしたじゃねーよシア。オレらが追いついてないこと、気づいてなかっただろ」
少しむっとしながらそう言う
すると二人は、始めてエステルとラピードが離れたところにいることに気がついたようだ
「ご、ごめん!話に夢中になってて…」
カロルは咄嗟に謝る
「ったく、はぐれたらどうするつもりだったんだよ」
呆れ気味に腕の中にいる彼女にそう問いただす
「迷子になっても、ユーリが見つけ出してくれること、私知ってるから」
悪びれる様子もなく、ニコッと満面の笑みでそう言われ、はぁ…っと、長いため息をついた
「み、皆さん…置いていかないでください…」
「ご、ごめんね!;」
やっと追いついたエステルは多少息が乱れており、相当走ったことがわかる
そんなエステルを見て、シアはオレの腕の中から抜けるとエステルの元へと行って何度も謝る
…オレには謝らないのな…
ガックリと呆れ気味に項垂れながら苦笑いする
こうゆうやつだって昔っから分かってはいるんだが、やっぱり納得がいかない
「あ!あった!!」
突然、カロルが大声をあげて走って行ってしまった
何事かと呆気に取られていると、手にニアの実を2つ持ってカロルが帰ってきた
「ほら!ニアの実だよ!」
得意げに見つけたニアの実を見せつけてくる
「やりましたね!カロル!」
エステルが褒めると嬉しそうに頬を少し赤らめる
「んじゃ、後はエッグベア探しだな」
オレが先に進もうとするが、それをカロルに静止される
「あ、待ってよ!そんなに闇雲に探しても見つからないよ!」
「じゃあ、一体どうやって見つけるの?」
シアがそう聞くと、カロルは胸を張って得意げに答えた
「エッグベアってちょっと変わった嗅覚を持っててさ。ちょっと待っててね!」
そう言うと、先ほど手に入れたニアの実の一つをなにやらいじり始めた
不思議そうにその様子を見ていると、いきなりニアの実から煙が立ち込めた
「げほっ!げほっ!」
「うっわ!?くっさっ!?お前くっさっ!?」
「なっ!?僕が臭いみたいに言わないでよ!?」
「うぅ…でも本当に臭いですよ…」
「ワ、ワフゥゥゥン…」
「げほっ!ちょ、ちょっとラピード!大丈夫!?」
ニアの実から出された臭いにラピードがダウンしてしまう
心配そうに見つめるシアにラピードは大丈夫だと言うように体を擦り付けていた
……若干納得がいかねぇのは何でだろうかねぇ……
「こんなんで本当にエッグベア、来るのかな…」
シアがボソッと小声で呟くと、ガサガサっと茂みから物音がした
音がした方を向くと、そこには探していたエッグベアがのっそりと顔を出してきていた
さっきカロルから聞いていたが、かなりデカイ
「へぇ、カロル先生の鼻曲がり作戦は大成功ってことか」
ニッと笑いながらカロルの頭にポンっと手を乗せる
「ちょっとぉ!変な名前つけないでよね!」
心外だ!と言わんばかりにカロルが反論している
「ほら、ラピード!頑張って!」
シアはラピードを励ましてなんとか立ち上がらせる
エッグベアがゆっくりとこちらを向くとカロルはオレの後ろへと隠れてしまう
「き、気をつけてね…本当に凶暴だから」
若干怯え気味にカロルはそう言った
「そう言ってる本人が真っ先に隠れるとは、いいご身分だな」
呆れ気味に後ろに隠れたカロルの方に顔を向ける
「え、エースの見せ場は最後なの!」
と言っているが、どう見ても怯えている
強がりは大概にしといた方がいいぞ、とはあえて言わなかった
すると突然、エッグベアが雄叫びをあげた
お腹が空いているのか、あるいは好物の臭いがするからか襲いかかってくる
「んじゃ、ちゃちゃっと片付けますかっ!」
久しぶりに手応えのある戦闘が出来そうで、心が踊る
「楽しむのはほどほどに、ね!」
そう言いながらシアも鞘から剣を抜く
「エステル!援護頼む!」
「はい!」
そう言うと、エステルはエッグベアから少し距離を置く
「ぼ、僕だって!」
そう意気込んでカロルもハンマーを握り締めた
「これでもくらえっ!牙狼激っ!」
「ワォーンっ!」
「えいっ!やぁっ!臥龍アッパー!」
「はあっ!蒼破刃っ!」
「煌めいて、魂瑶の力…フォトン!」
戦闘が始まってから数分、エッグベアはなかなか倒れそうにないが、だいぶ弱ってきているようだ
時折エッグベアの攻撃が掠ったりするが、エステルが素早く治癒してくれるおかげで気にせずに戦うことが出来ている
…その度に、若干胸が痛むが、今は原因を探ってる余裕はない
それに、いくら怪我をしても大丈夫だと言っても体力には限界がある
幼いカロルは既に息切れし始めていて、限界が近いようだ
「あー、もうっ!しぶといなぁ!」
そう言いながら小さく舌打ちする
(このまま戦っていてもいずれ、こっちが倒れちゃう…あまり気は乗らないけど…やるしかないっ!)
後ろに下がり、エッグベアから距離を置いて詠唱を始める
あまり使う気にはなれないが、これ以上長引かせるわけにもいかない
「正義の意思、雷撃の剣となり科あるものに降り落ちる…」
「っ!?おい!カロルっ!離れろっ!!」
私の詠唱に気づいたユーリが慌ててカロルの首元を掴んで後退する
「へ?なんっ…うわぁっ!?」
若干カロルが体制を崩してしまったのが見えるが、ユーリが抱えてることだし、大丈夫だろう
「サンダーブレードっ!!」
ユーリがカロルを掴んで後ろに飛ぶと同時に、エッグベアの辺り一面に電気を含んだ剣が降り注ぐ
剣が消えると同時に、エッグベアはようやく倒れた
「よしっ!終わりっ!」
「『終わりっ!』じゃねぇ!急にあんな大技使うなよ!」
満足気に言うとユーリに一喝される
結果的に倒せたのは確かなのだが、私の術は敵だけでなく時には味方にまで当たってしまうことがある
それ程私の術は不安定で扱い難いのだ
……まぁ、確かに今回は私が悪かった
あんな大技、何も言われずに放たれて、万が一にでもクリーンヒットしたらたまったもんじゃない
私だって嫌だ
「でもすごいよ!あんな大技使えるなんて!」
カロルは目をキラキラさせて私を見詰める
まだ十二歳の少年には難なく大技を使える私も、高度な治癒術が使えるエステルも、魔物に臆することなく立ち向かっていくユーリも輝いて見てたのだろう
「本当です!私もあんな大技初めて見ました!」
それはエステルも例外ではないようで、彼女もまた私のことを目をキラキラさせて見詰める
「そんなことないよ~!私なんかお父…お父さんに比べたらまだまだよ~」
そう明るく笑いながら言う
ついいつもの癖で『お父様』って言いそうになったけど誰も気がついていないみたい
「んじゃまぁ、カロル先生、エッグベアの爪、回収宜しくな。オレわかんねぇし」
面倒くさそうにユーリはカロルに回収させようとする
「え、えぇ!?か、簡単だから誰にでも出来るよ?」
そのカロルはというと、両手を顔の前で振って拒絶する
「見せ場作ってやろうって言ってんの」
そう言われカロルはしぶしぶ爪を取ろうとする……が、
「ぅわぁぁ!!!」
「ひぃぃぃぃ!?」
ユーリはカロルの後ろでわざと大声を出す
「いやぁ~カロル先生は驚く振りがうまいな~」
いたずらっぽく笑いながらユーリはカロルを見る
「あ、あはは…そ、そう…?」
…いやいや…これは流石に酷いでしょ…と、苦笑する
結局、エッグベアの爪はユーリが自分で回収した
「さてと、回収もしたことだし、さっさと戻りますか」
エッグベアから離れながらユーリはそう言う
「それもそうだね~そろそろ夜になりそうだしね」
空を見上げながら私はそう言った
木であまり見えないが、もう大分暗くなってきていることはわかる
「じゃあ、急いで帰ろう!」
カロルがそう言うと、エステルも頷いた
「はい!ハルルの街のみなさんも、きっと帰りを待ってます!」
そして、私達は来た方向を引き返して行った
クオイの森の入口付近まで戻ってきたところで、ラピードが急に止まって後ろを振り返り威嚇し始めた
「ん?どうした?ラピード」
ユーリが足を止めて不思議そうにラピードを見つめると、不意に聞き覚えのある声が森に響き渡る
「ユーリ・ローウェル!!森に入っているのはわかっている!」
「お、大人しく出てくるのであ~る…」
「い、今出てくればボコるのだけは勘弁するのだ…!」
その声にユーリは、ガックリと項垂れる
「おいおい…まじかよ……あいつら結界の外まで追いかけてきやがったのかよ……」
ユーリを探す声は間違いなくルブランとアデコール、ボッコスだろう
…全く…執念深いと言うか、しつこいというか……
「ぶぁっかもーん!噂ごときに恐れるなどシュヴァーン隊の名が廃れるではないかっ!!」
「ふふっ相変わらず仕事熱心なことで」
そう笑って言いながらも、私は近くに生えている木を剣でなぎ倒した
「さっ!さっさと逃げよっか!」
剣を鞘に収めつつニコッとみんなに笑いかける
「だな、さっさと行くか」
ニッと笑いながら、ユーリも頷く
「えっ!で、でもこんなことしたら他の人の迷惑に…!」
エステルは私がなぎ倒した木を見つめながら、おどおどし始める
「こんなこと誰も通らねぇよ」
呆れ気味に肩を竦めながらユーリは言った
「そうそう!なんてたって呪いの森、だもんね!」
ニッといたずら気味に笑いかける
「……それもそうですね」
エステルが頷いたのとほぼ同時に走り出した
たった一人、カロルだけが何が何だかわからないといった表情をしていたのは気にしないでおこう