第4部~星暦の行方と再会そして…~
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ー翌朝ー
『くそ……まだ目の前が揺れる……』
食堂のテーブルに突っ伏して、シリウスは気だるそうに呟いた
星たちも含め、全員が食堂に集まっていた
丁度朝食を取り終えて、少し休んでいたユーリ達は、ほんの少し憐れむように、シリウスの方を見た
「随分とまぁしんどそうねえ…」
苦笑いしながら、レイヴンはシリウスに声をかけた
『……いや、やり過ぎたオレが悪いのは事実だからな……』
そう言いながら、シリウスは顔を上げた
『ホント、ちゃーんと反省したんだよね?シリウス?』
シリウスの隣で頬杖をつきながら、カペラが問いかける
『何度も反省したと言ってるじゃないか……お前らに加えて、リゲルとアリオトまで参加しやがって……危うく死ぬかと思ったぞ』
『あら?大暴れするあなたよりは、幾分マシだったのではないですか?それとも……まだ、足りなかったでしょうか?』
少し文句を言うシリウスに、アリオトはニッコリと笑いながら鉄扇を構えた
『ばっ!!それを構えるなっ!!』
ガタンッと音を立てながら、シリウスは立ち上がって、アリオトから距離を取ろうとする
「……アホくさ」
そんなシリウスをリタは呆れながら見ていた
「アリシアも、きっと、大変だったんだろうね……」
どこか遠い目で、カロルは小さく呟いた
「ったく、本当にライラックさん以上の親馬鹿だな」
「あはは……確かにそうだね」
ユーリとフレンはそう言って顔を見合わせた
『…あ、ライラックと言えば……』
何かを思い出したように、アルタイルは声を上げると、カープノスの方を見る
『カープノス、まだ見つかんないの?二人の
首を傾げてそう問いかける
『いや、まだだ。……全く、あの銀髪の男め……どこにやったんだ……』
少し苛立った様子で、カープノスはため息をついた
「ちょいまち、今、『二人の
そう言って立ち上がりながら、ユーリはアルタイルとカープノスの二人を見た
『……あれ?レグルス様、もしかして……』
恐る恐るレグルスの方を向きながら、アルタイルは声をかける
「……言われてみれば、話してなかった気もするな……」
『…おい、初代、それを教えてないのは聞いてないぞ?!』
半分怒り気味に、カープノスはレグルスを見た
当の本人は気まずそうに顔を背けていた
『レグルス様……また、でございますか……』
大きくため息をつきながら、ペテルギウスはユーリ達の方を見る
『二人の
静かに、ペテルギウスはそう告げた
「じゃあ……『銀髪の男』、というのは…」
「恐らく、デュークのこと、ね」
ジュディスの言葉に、リゲルは頷いた
『そうだよ。あの人、いつ知ったのかわかんないけど……帝都の屋敷にあった
ほんの少し不機嫌そうに、リゲルは答えた
『確かに二人とも、
リゲル同様、ベガも不機嫌そうに顔を歪めていた
『しかも、打ち上げる方法までは知らなかったみたいだからねえ……打ち上げてくれなきゃ、狭間へ行く機能は作動しないし……
おかげで、二人が
普段残りの
困ったように笑いながら、アルタイルは言う
『その上、諸々の設定もされてないし、ボクらと連絡さえ取れない状況だからね……
ホント、あの人どこにやったんだか……』
そう言って、カペラは頭を搔いた
「あの、素質があった、という事は……お二人も、何か得意な力があったのです?」
エステルはそう言って首を傾げた
「その通りだ。ライラックは雷、アイリーンは氷だ」
「あれ?その二つって確か、アリシアの見つかってない力じゃなかった?」
レグルスの答えに、カロルは更に問いかけた
「ああ、そうだ」
その問いに、レグルスは頷いた
「あん時、あんた、『九つ集まれば自然と集まる』って言ってたよな?んじゃ、もしかして……」
「二人がアリシアの力の欠片を持っているのであれば、二人の
恐る恐る聞いたユーリに、レグルスはハッキリとそう答えた
「…因みに、アリシアはその事は…」
『
ほんの少し困った顔で、シリウスはフレンの問いに答えた
『アリシア宥めるの、大変だったよねえ……』
『びっくりするくらいの大泣きだったもんね…』
『ふふ……シリウスがなんとか宥めようと奮闘しているのに、お構い無しでしたものね』
『……一度泣くと泣き止まないのは、昔から変わらんからな……』
四人はそう言って、困り顔で笑った
「あはは、確かに、アリシアは本気で泣き出したら、いつまでも泣き止まないからね」
「だな。オレらも何度苦労した事か…」
同意するようにフレンとユーリはそう言って、懐かしそうに笑った
「ふふ……じゃその泣き虫な彼女、早く連れ戻してあげないと、ね?」
ジュディスは笑いながらそう言って立ち上がった
他の面々も同じように立ち上がる
「お主ら、今日はどうする?」
レグルスはシリウス達を見回しながらそう問いかける
『もちろん、ついて行くに決まっている』
シリウスがそう言うと、彼らは同意するように頷いた
「…では、行こうか。カープノス、今反応が残っているところがわかるか?」
『…帝都、
カープノスの問いかけに一同が強く頷くと、彼は指を鳴らした
ーーーーーー
ザーフィアス城の最上階、
『この上、か……』
シリウスは上を見上げながら、小さく呟いた
ゆっくりと、彼らは階段を上がっていく
「シリウス、お主はカストロとポルックス、どちらが残っているのか、知らぬのか?」
不意にレグルスはシリウスに問いかけた
『いや……残念ながら、オレが飛ばされる前は二人とも残っていた
二人揃って、アリシアの元に駆け寄ろうとはしていたが……』
そう答えて、少し考えるように腕を組みながら、シリウスは足を動かしていた
『んー、でも、無難なのはカストロだと思うけどなぁ。あの子なら、そもそも『あれ』だって近寄れないわけだし?』
頬に人差し指を当てながら、アルタイルは言う
「アルタイルの言う通りだな。さすがのアリシアでも、そうするとは我も思う」
『えー……でも、アリシアだよ?案外二人とも追い出してたりしない?』
頭の後ろで手を組みながら言ったカペラの言葉に、空気が一瞬凍る
『……あれ、ボクなんかまずいこと言った…?』
顔を引き攣らせながら、カペラは首を傾げた
「……その可能性は、全く頭になかったな……」
『…あの子ならそれもやりかねないぞ……。どうする、初代。本当にそうしていれば、手遅れの可能性だってある』
深刻そうなレグルスとカープノスの声に、カペラは何故空気が凍ったのかを悟った
『あ……い、いや、でも!!さすがのアリシアもそこまではしない……かも?』
慌てて訂正しようとするが、もう既に遅い
アリシアであれば、そうしてしまいそうな選択肢が出てきてしまったのだから
『……そう言えば……』
考え込んでいたシリウスは、何かを思い出したらしく、ゆっくりと口を開いた
『!!シリウス!なんか思い出したっ!?』
どこか縋るように、カペラはシリウスに声をかける
『いや……飛ばされる直前、カストロが叫んでいたな、と。『なんで…っ!?』……と』
シリウスはカペラに視線を向けながらそう答えた
「それ、何に対してだ…?」
ほんの少し不安そうに、ユーリは問いかけた
『それはわからん。叫びを聞いてすぐに飛ばされたからな。……だが、その答えは、見ればわかるだろう』
そう言って、シリウスは前方を見た
階段の終わりはすぐそこだった
先頭を歩いていたレグルスは、恐る恐る階段を上がりきる
次いで上がって来たシリウス達もレグルス同様唖然として、少年を見つめた
立ち止まっている彼らを横目に、上がって来たユーリ達の目に入ってきたのは、金髪の少年だった
「……カストロ…?」
ほんの少し、掠れた声でレグルスは名前を呼んだ
それは、そこにいたのが、自身の想定して者ではなかったからだろう
彼はゆっくりとこちらを振り返る
その頬には、涙が伝った後が残っていた
『……みんな、集まったんだな』
服の袖で涙を拭きながら、彼は呟いた
『…お前一人か?』
『…ああ、そうだよ。ポルックスはアリシアのとこだからな』
カープノスの問いに、どこか苛立った様子で彼は答えた
「……読みがハズレたってことだね」
「ああ。シアんとこに誰も居ねえわけじゃないみたいだが……」
カストロを見ながら、ユーリとフレンは呟く
『嘘……なんで……?』
両手で口元を覆いながら、アルタイルは呟いた
『そんなの、おれだってわかんねえよ……!』
悔しそうにこちらを見ながら、カストロは叫んだ
『なんで…っ!!なんでだよ!!『あれ』から身を守るなら、ポルックスじゃなくて、おれの方がいいだろ!?なんでなんだよ!!!』
地団駄を踏みながら、彼は声を荒らげる
自分が選ばれなかった事が相当悔しかったのだろう
「……カストロ、ここで何を言っても始まらぬ。……とにかく今は、あの子の欠片を集めねばならない」
俯く彼を落ち着かせるように、レグルスは優しく声をかける
『……わかってる。…んなこと、わかってる
……だから、これは八つ当たりだ』
そう言って顔を上げた彼の瞳は濃いオレンジ色へと変化していた
『……おれは、ポルックスと一心同体、一人じゃ上手く戦えない。だから、幻影と戦ってもらう
……ユーリ、フレン。お前ら、アリシアの幼馴染なんだろ?……だったら、お前ら二人だけで、『こいつ』の武器を奪ってみろよ!!』
『…っ!!おい、待て!!カストロ!!!』
彼が『誰』を具現化させようとしているか気づいたシリウスは、制止しようと声を上げた
だが、その声は彼に届かなかった
『我が呼び掛けに答え………具現化しろ!!
『ライラック』!!!』
「んな…っ!?」
彼の叫んだ名前に、ユーリとフレンは身構えた
カストロの目の前現れたのは、アリシアと同じ色の短髪、そして、赤い騎士団の鎧を身にまとった、ライラック・ラグナロク、その人だった
『……聞いてると思うから言うが、これは幻影。……本人じゃねえ。あの人が今どこにいるかなんて、おれも知らない』
濃いオレンジ色の瞳を、真っ直ぐにユーリとフレンに向けて、カストロは言う
『ポルックスがいる所に行くには、おれから欠片を回収しなきゃ行けない。本気でバカアリシアを救いたいなら……勝ってみろ!!』
そう叫んだカストロの瞳には、ほんの少し涙が滲んでいた
「…ったく、こんなとこであの人と戦うことになるなんてな」
困った顔で笑いながら、ユーリは白雷を抜いた
「…真打登場、だね。ここで僕が彼を倒したら、僕の方が認めてもらえたりしないかな」
クスッと笑いながら、フレンも剣を抜く
「お前……まだそれ言うか。なら、シリウスにも勝って来ねーとだぞ?」
「ははっ、それもそうだ。彼に勝つのは……ちょっと難しそうだな」
普段と全く変わらない様子で、二人は前へ出る
「……お主ら……本気か?」
驚いた表情で、レグルスは問いかけた
それは、シリウス達も同じ気持ちだった
ライラックの実力は、彼らも認めるもので、幾らユーリがシリウスに勝ったとはいえ、二人が彼に勝てるとは思ってもいなかった
「あん?当たり前だろ?」
後ろを少し向きながらユーリは答える
「ライラックさんでも、僕らは負けるわけにいきませんから」
ユーリと同じように、フレンも答えた
「そうね。あの子の為ですもの」
「あんた達!気合い入れて行きなさいよ!」
「ユーリ!頑張るのじゃ!」
「フレンも頑張って!」
ジュディス達はそう言って、二人を見送った
『いや、だが……』
「シリウスさん、ユーリとフレンならきっと大丈夫です」
「俺らの中じゃ、誰よりもよく知ってるからねえ。心配ご無用っ!ってね?」
引き止めようとしたシリウスを、エステルとレイヴンはそう言って止めた
ライラックの強さは彼らにはわからない
だが、二人が負けるとも思ってはいなかった
それは、彼がアリシアに戦い方を教えた本人であり、なによりも…
二人は誰よりも、アリシアの戦う姿を見てきていたからだ
幻影のライラックの前に立つと、二人は武器を構えた
『……始めようか』
カストロが指を弾くと、彼も刀を抜いた
そして、両者同時に、足を前へと踏み出した
ーーーーーー
カキィンッと剣の当たる音が辺りに響く
二人は彼と剣を交えながら、攻撃の重さを感じていた
幻影の彼は、術や技を使うことはないが、それでも一撃一撃が重かった
「っ!!…ははっ、やっぱシアより重いわ」
攻撃を跳ね返しながら、ユーリは笑う
周りから見ると、シリウスと戦っていた時よりも、ほんの少し戦いやすそうに見えていた
実際、大剣を使うシリウスと比べれば、双剣のライラックの方が、ユーリからしてみれば戦いやすいのだろう
「っ……そうだね、彼女の方が、軽かった」
振り下ろされる刀を避けながら、フレンも笑っていた
今までと違い、二人は話しをしていられるだけの余裕があった
『嘘………なんで、ライラック相手に……そんなに余裕そうなんだよ…っ!!』
そんな二人に一番驚いていたのはカストロだった
彼の攻撃は中々二人に当たらない
それどころか、二人はどこに攻撃が来るかわかっているかのように動き、幻影に攻撃を当てていた
「あん?……そりゃ、なぁ?」
後ろに飛んで、少しライラックから距離を取りながら、ユーリはフレンを見た
「……そんなこと、分かりきってるよね」
ユーリの側まで後退しながら、フレンもユーリを見た
二人は顔を見合せて頷くと、真っ直ぐカストロを見て、剣を向けた
「「“シア/アリシア”と、何度剣交えたと思って“んだ/いるんだい”?」」
ニヤッと笑いながら、二人は同時にそう答えた
『……なるほどな……』
離れた所で聞いていたカープノスは関心気味にそう呟いた
『何がなるほどなの?』
不思議そうにアルタイルは首を傾げる
『…アリシアに双剣の戦い方を叩き込んだのはライラックだ。あの子は、教えられた事をそのまま覚える子だったからな……』
『ライラックの悪い癖までそっくりだね。…シリウスと同じ、だよ』
カープノスとリゲルはそう言って、シリウスの方をジト目で見た
『……お前ら、なんでオレを見るんだ…っ!?』
シリウスは若干声を荒らげて、二人を見るが、二人は何も言わず、ただ見つめるだけだった
「……そうか、だからあやつらは自信ありげだったのだな」
納得したらしいレグルスは、ほんの少し微笑みながら、ユーリとフレンを見た
「………よい友と愛する者を見つけたのだな、アリシア」
誰にも聞こえない程、小さな声でレグルスは呟いた
この二人ならば、安心して彼女を任せられると、彼は思った
『…っ!!まだ……っ!まだ終わってないっ!』
悔しそうに顔を歪めて、カストロは叫ぶ
「わかってるっての。……フレン」
「……行こうか、ユーリ!」
頷き合うと、再び彼に向かって足を踏み出す
突然向かって来たことに驚いたのか、一瞬、彼の動きが止まる
その隙を、二人は見逃さなかった
ユーリは右手、フレンは左手の刀を同時に弾き飛ばした
カランッカランッと地面に刀が落ちる音が響く
「カストロ!!そこまでだ!!」
戦いに制止を掛けたのはレグルスだった
その声に、カストロは膝から崩れた
『…絶対、勝てるって……思ったのに……っ』
そう言いながら俯いて、カストロは指を鳴らした
ライラックの幻影も、落ちた刀も、その場から姿を消した
『カストロ、大丈夫…??』
カペラは彼の傍に寄り添いながら問いかける
『……大丈夫だと思うか?『あれ』には完敗、アリシアが選んだのはポルックス、おまけにライラックの幻影出した癖に、ユーリとフレンに負けた。……あーぁっ!!おれのプライドズタボロだぜ!!』
そう叫びながら、カストロは空を見た
まだ日は高く、青い空が一面に広がっていた
『……とりあえず、返すよ、アリシアの欠片』
ユーリの方へ顔を向けながら、カストロは胸に手を当てた
白雷をユーリか向けると、彼の中から光の玉が現れ、消えて行った
『一先ず、残りはポルックスか』
四人の元に皆が集まってくる
「やったね!ユーリ!!」
嬉しそうに、カロルはユーリに向かって手を伸ばした
それは、いつもやっている勝利の合図だった
「…おう!」
短く答えて、ユーリも手を伸ばし、パンッと合わせた
「残りは闇……それが集まれば、三つも戻ってくる……でしたよね?」
レグルスの方を向きながら、フレンは問いかける
「ああ。……カストロ、ポルックスはどこだ?」
『……最後に狭間の入口が開いた場所は、ザウデ不落宮の最深部……アレクセイと戦った、あの場所だよ
そこが、アリシアとポルックスと……『あれ』がいる狭間の入口だ』
ゆっくりと立ち上がりながら、カストロは答えた
『…なら、行くか』
カープノスはそう言って指を鳴らした
ーーーーーー
一行はすぐに、ザウデへと飛んだ
最深部の広場で、ユーリ達は辺りを見回すが、人影はおろか、入口らしきものも見当たらなかった
『……おい、本当にあっているのか?』
不機嫌そうにカープノスが問いかける
『間違いねえって。そんなに喧嘩腰で言ってくるなよ…』
ムッとしながらカストロは答えた
「何か足りぬとでも言うのか…?」
そう言ってレグルスは腕を組んだ
「だとしたら、他の三つの欠片じゃないかしら?」
レグルスの呟きに、ジュディスが問いかけた
『それは一理ありますわ。全てが揃わなければ、彼女は戻って来られないのですから…』
困ったように眉を下げて、ペテルギウスは言った
「でもさ、それだと二つは見つけるの無理なんでしょ…?」
しょんぼりとしながら、カロルはシリウスたちを見た
彼らは顔を見合わせて、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた
『ライラックとアイリーンの
悔しそうにアルタイルは答える
「デュークを見つけられれば、どこに隠したか聞けますけど……」
「それこそ無理よ。あいつ、神出鬼没なんだから」
エステルとリタはそう言ってため息をついた
『……ねえ、ベガ?』
不意にリゲルが、ベガの方を見て声をかける
呼ばれた彼女は首を傾げた
『…何か、知ってるでしょ?』
どこか確信があるかのように、リゲルは問いかける
『…………なんで、そう思うの?』
少し間を置いて、ベガは問い返した
『だって…今朝からずっと、殆ど喋らないから』
少しムッとして、リゲルはそう答えた
リゲルの顔を見て、ベガはため息をつくと、目を閉じた
ベガが喋るまで、一同は黙って待っていた
『…………カープノス』
ゆっくりと目を開けたベガは、カープノスを見る
『………今なら、
少し言いづらそうに、ベガはそう言った
『今ならとは、どういう事だ?』
ベガを見ながらシリウスは問いかける
『……あたし、これ以上、喋らない』
彼女はそう言って顔を背けた
「……カープノス、どうなんだ?」
レグルスは腕を組んだまま、カープノスに問いかける
『待て…………………確かに…………僅かだが……あるな』
そう言って、カープノスは床を見つめた
「この下……なにかあるのかの?」
不思議そうにパティが問いかけた
『…ここは、世界を守る
少し遠慮気味に、アリオトがそう告げた
それにユーリ達は驚いた
ここが、まさか墓場でもあったとは、誰も思っていなかったのだ
『普段は入れないようになっている。……二つの秘宝がない限り、人は入れない』
シリウスはしゃがんで、床を触りながら悔しそうに呟いた
『……普通は、な。ちょっと待ってろ』
カープノスはそういうが早いか、姿を消した
「なるほどね。空間を移動出来るなら、人が入れないようなところでも行けちゃうわけだわ」
口笛を拭きながら、レイヴンは頭の後ろで手を組んだ
『それじゃ、しばらくカープノス待ちかぁ』
カペラも頭の後ろで手を組むと、少しつまらなさそうに地面を蹴った
『さすがにそこまで時間かかんないんじゃない?案外すぐ帰ってくるって!』
シリウスの隣にしゃがみながら、アルタイルはクスッと笑った
カープノスが帰ってくるのを待っている間、彼らは話しながら待っていた
シリウス達や仲間たちを見回して、ユーリは少し困ったように笑って、ため息をついた
「ったく……随分大所帯になったもんだな」
白雷に目を落とし、柄を優しく撫でながら、小さく呟いた
ほんの少し、ユーリの言葉に同意するかのように、白雷が光った
一瞬驚き、目を見開くが、すぐにユーリは微笑んだ
『……のんきだな、お前ら』
呆れた声にユーリが顔を上げると、レグルスの傍に二つの
『ようやく……見つかったのですね』
嬉しそうにアリオトは目を細めた
『ああ。……全く、本気で力と魂移しただけじゃないか。俺が教えた使い方、まさか二人揃って忘れやがったのか?』
ブツブツと文句を言いながら
少しすると、
『……起動完了だ。狭間へ行く為の機能は……駄目だな、これも壊されてる』
ほんの少し残念そうにカープノスは呟いた
「起動ができたのであれば、二人が近くにおるはずだが……」
レグルスはそう言って辺りを見回した
『もちろんいるとも。レグルス』
懐かしい声に、ユーリは振り返った
視線の先には、先程幻影で見たライラックと、アリシアと同じくらいの長さの白髪の女性……アイリーンの姿が見えた
幻影のライラックとは違い、こちらの彼は軽装ではあったが、それ以外は何一つ変わらない姿だった
「「ライラックさん…っ」」
ユーリとフレンは同時に名前を呼んだ
『久しいな、二人とも。……随分と大きくなったものだ』
まるで自分の子どもかのようにそう言って、ライラックは優しく微笑んだ
『二人とも、ありがとう。アリシアの傍に居てくれて』
アリシアとよく似た声で、アイリーンは二人にそう言った
彼女もまた、優しく微笑んでいた
「全く……お主ら、
呆れ気味にレグルスはため息をついた
だが、言葉とは裏腹に、表情はどこか嬉しそうだった
『それはすまん。デュークが持って来てくれたところまでは良かったのだが、何しろ時間が足りなくてな』
こちらへ歩み寄りながら、ライラックは苦笑いした
『だから言ったじゃないですか。彼に起動の仕方も教えなくていいのかと』
ムッと少し怒り気味にアイリーンはライラックを見ていた
『懐かしみたいところではあるが…二人とも、今はそれどころじゃ…』
『わかっているとも、シリウス』
シリウスの言葉をライラックは遮ると、ユーリを手招きした
首を傾げながらも、ユーリは彼らの元へと歩み寄った
『ユーリくん、白雷を貸してもらえるか?』
近づいたユーリに、ライラックはそう声をかけた
「あ、ああ」
少し慌て気味に、ユーリは白雷を手渡した
『……全く、困ったお転婆娘だ』
受け取った白雷を見つめながら、ライラックは困ったように笑った
『あなたが言えたことじゃないでしょ?ライラック』
アイリーンの言葉に肩を竦めると、二人は胸に手を当てた
今まで同様に、二人の中から、光の玉が現れる
が、光の玉はどこか離れ難そうに二人の手から離れなかった
『…ほら、いい加減目を覚ます時間だぞ?』
『みんな待っているのだから、早く戻って来なさい』
幼子をあやす様に、二人はそう声をかける
名残り惜しそうにしながら、光の玉は二つとも、白雷の中へと消えて行った
「やはりお主らが持っていたのか」
二人を見つめながらレグルスは言う
当の本人達は顔を見合わせると、ただニッコリと笑って、ユーリ白雷を手渡した
『……これで、狭間は開くはずだ』
ライラックがそう言った途端、大きな地鳴りが辺りに響く
一同は驚きながら辺りを見渡すと、広場の中心に黒い穴がぽっかりと開いたのを見た
「『うわわっ!ホントに開いた!!』」
カロルとカペラが同時に全く同じ言葉を口にした
『ちょーっと待ってよ!!これ、『あれ』出てきちゃうじゃん!!カストロ!!』
ワタワタとアルタイルが慌ててカストロを呼ぶ
『言われなくてもわかってるっつーの!!』
大急ぎでカストロは穴の前へ立つと、右手を穴へ伸ばし光の壁をつくった
「さて……開いたはいいものの……これは……」
レグルスは穴を見つめて苦い顔をした
『入れるのは一人、ですわね』
言葉を濁したレグルスの代わりに、ペテルギウスはそう呟いた
「一人だけ……なんです?」
不安そうにエステルが問いかける
「ああ……入口が不安定で、それ以上は無理だな。……さて、誰が行く?」
レグルスはそう言ってフレン達を見回したが、そこにいたはずの人物が一人居ないことに気づく
「おろ?ユーリはどこ行ったよ??」
キョロキョロと辺りを見回しながら、レイヴンは呟いた
「あれ?さっきまでライラックの隣にいなかった??」
カロルはそう言ってライラックを見る
『あー……いや、彼なら……』
言いづらそうに苦笑いして、ライラックは穴の方を見た
『開くやいなや、真っ先に駆け込んで行きましたね』
クスクスと笑いながら、アイリーンは答えた
「はぁ!?あんのアリシア馬鹿……っ!!人の話くらい最後まで聞いときなさいよ!!」
穴の方を見てリタは怒鳴り声を上げたが、当然、ユーリには聞こえない
「リタ姐、言っても無駄なのじゃ。ユーリはシア姐の事になると、後先考えられんからのう」
パティはそう言って、リタを見ながら笑った
『お前ら……傍にいたくせに、なんで止めなかった?』
ため息をつきながら、カープノスはライラックとアイリーンを見た
『止めた方がよかったかしら?』
頬に手を当てながら、彼女は笑う
『ユーリくんなら大丈夫だろう。アリシアの事を誰よりも大事に思っている事など、昔から知っている』
笑いながら、ライラックは答えた
「あら意外。大事な一人娘を簡単に任せちゃうなんて」
クスッと笑いながら、ジュディスは腕を組んだ
『仕方ないのさ。…彼ならいいと、思わされてしまったのだから』
少し寂しそうにしながら、ライラックは穴を見つめた
『………頼んだぞ、ユーリくん』
聞こえていないとわかりつつも、ライラックはそう言って微笑んだ
ーーー??ーーー
真っ暗で、右も左もわからない闇の中を、ユーリはただひたすらに走っていた
穴が開いたその瞬間から、ずっと頭の中で自身を呼ぶ声がしている
会えなくなってから、たった一年半だというのに
白雷を通じて何度か耳にしていたはずなのに
その声は懐かしくて
早く会いたいという気持ちだけで、ユーリは暗闇を進んで行った
何処にいるかなんて、検討もついていないが、頭に響く声が大きくなる方向へと、ユーリはただひたすらに走った
頭に響く声がかなり大きくなり、近くにいるのではないかと、足を止めて辺りを見回ししていると、不意に服を掴まれ、そのまま引っ張られた
「うぉっ!?」
急に引っ張られた事でバランスを崩し、その場に膝をついた
『……ユーリ』
声が聞こえて、振り返ると、そこには黒髪の少年がいた
「お前…ポルックス……か?」
ユーリが問いかけると、少年はゆっくりと頷いた
『……そっか、全部集まったんだね』
ポルックスはそう言うと、ユーリに抱きついた
「おっと…っ!……どうしたんだ?急に」
訳がわからなかったが、とりあえず彼を宥めようと、ユーリは彼の頭を撫でた
『……狭間の入口が開くまでは、アリシアの意識も彼女の姿を保ってたんだけど……そろそろ、身体に戻る準備しなきゃいけないからって、ユーリ達が集めてた光の玉になって、ぼくの中に入って来ちゃったから……
正直、一人で不安だったんだ…』
ギュッとユーリの服を掴みながら、ポルックスはそう答えた
頭の中で響いていた声は、もう聞こえなかった
それは恐らく、ポルックスと合流したからであろう
「……そっか、確かにこんな暗闇ん中じゃ一人はしんどいわな」
そう言って、ユーリは苦笑いした
『……ユーリ、白雷、持って来てるよね?』
少し顔を上げて、ポルックスは問いかけてくる
「ああ、ちゃんと持って来てる」
そう言って、ユーリはポルックスの前に白雷を出した
ポルックスが白雷に触れると、最後の欠片が、白雷の中へと入って行った
……その時だった
《ポルックス?》
聞こえて来た声に、ユーリの心臓が跳ねた
それは、ずっと会いたかった彼女の声だ
だが、今ここに、彼女は居ないはず
そう思って、ポルックスに話しかけようと彼を見ると、真っ青な顔をして震えていた
ーー今の声は彼女ではないーー
瞬間的にそう察したユーリは、彼を自身で覆い隠しながら、息を潜めた
《ポルックス……ねえ、どこにいるの……?》
近づいて来る声に、思わず反応しそうになるのを必死で堪える
白雷を握る手には、ほんの少し力が入っていた
その場から動かずにジッとしていると、少し離れたところに声の持ち主を捉え、ユーリは目を見開いた
赤く燃えるような色の毛先だけがピンク色の長髪、チューブトップスに上着を羽織り、ショートパンツにニーハイソックス……そして、ブーツを履いているその姿は、どこからどう見ても自身が知っているアリシアと、瓜二つだった
ただ一つ、違いがあるとすれば……
それは、彼女の瞳の色だけだった
夕焼けのような綺麗なオレンジ色ではなく、どこまでも続く闇のような、深い黒色の瞳……
たったそれだけで、ユーリは彼女ではないと認識できた
そして……目の前にいる『彼女』に、決して見つかってはいけないのだと
《……ねぇ、どこ……?》
目の前の存在は尚、彼女の声で、彼女の口調でポルックスを探している
ガタガタと震え始めた彼を、ユーリは少し強めに抱きしめる
彼が少しでも『彼女』を見ないように、声が聞こえないようにと、願いながら
暫く二人の周りをウロチョロとしていたが、ここには居ないと諦めたのか、『彼女』はゆっくりと遠ざかって行った
視界から消え、辺りに気配がない事を確認してから、ユーリはホッと息を吐いた
「……くっそ、最悪だな…『あれ』って、人の姿を模倣しやがんのか」
苦笑いしながら、小さな声でユーリはポルックスに問いかけた
彼は声こそ出さなかったものの、ユーリの問いに小さく頷いた
「…ったく、……シアの姿模倣しようなんざ、いい度胸してるわ
………次ここに来た時にゃ、全力でぶっ飛ばしてやる」
そう悪態をつきながら、ユーリはポルックスの背を撫でた
「……立てそうか?」
ユーリが問いかけると、彼は首を横に振った
「…了解っと。んじゃ、抱えて行ってやるよ
出口がどこかはわかるか?」
そう言いながら、ユーリはポルックスを抱えて立ち上がる
『………それは、『彼女』が……教えてくれるよ』
『……ユ…………リ…………』
ポルックスがそう言った瞬間、再び頭の中で声がした
「なるほどな、声の聞こえる方が出口か」
ニッと笑うと、ユーリは再び走り出した
先程と同じく、声の聞こえる方向へと走っていく
『あれ』が再び、自分達の前に出てこないことを願いながら……
声が聞こえる方向へと、着実に進んで行った
『……あ、光……』
不意にポルックスが前を見た
彼の言う通り、小さく光が見えてきていた
「あともうちょいだ…っ!」
少し走るスピードを上げた、その時だった
《ポルックス……?》
後ろから、あの声が聞こえて来た
思わず足を止めそうになったが、それを堪えて、ユーリは光の方向へと走った
《ポルックス……ねえ、どこに行くの……?私の事……置いていくの……?》
寂しげなその声はやはり彼女と全く同じで……
ユーリは少し虫唾が走った
それは、自分が何よりも大切で、誰よりも愛している人のものだから
全く別の…彼女でない『誰か』がその声を発している事が、堪らなく嫌だった
それでも反応してしまえば、きっと『あれ』から逃れられなくなる
直感的にそう感じ取って、ユーリは何も言わなかった
《……ねえ……行かないでよ……!!》
あと少しで出られると思った時、後ろから、黒い帯のようなものが伸びてきて、視界を遮ろうとする
ユーリがまずいと感じた、その瞬間、白雷が光を帯びた
まるで二人を守ろうとするかのように、二人を包み込んだ
《アァアアァッ!!!》
後ろから聞こえた叫び声は、彼女のものではなかった
低く、唸るような声は、あの日に聞いた、憎悪のものだった
まとわりつこうとして来ていた帯が避けていくと、ユーリは目の前の光に向かって飛び込んだ
ーーーーーー
「っ!!!!」
穴から飛び出した先は、先程と同じザウデ不落宮の中だった
「ユーリ!?」『ポルックスっ!?』
急に飛び出してきた二人を心配に仲間達が呼んで駆け寄ってくる
「っ、レグルス!!穴って塞げねえのかっ?!」
焦り気味にユーリは問いかける
「あ、ああ……塞ぐことはできるが……」
『じゃあ……じゃあ早く!!!早く閉じて!!!ぼく、もう見たくない!!!』
悲鳴じみた声でポルックスは叫んだ
顔は未だに真っ青で、ガタガタと震えていた
異常な姿にレグルスは言われるがまま、穴を塞いだ
『ユーリ、何があった?』
ユーリの傍にしゃがみながら、シリウスは問いかけてくる
「……わりぃ、ちとオレも……今は思い出したくねぇわ」
そう言って、ユーリは額に手を当てた
「…欠片の回収はできているようだな。……であれば、屋敷へ戻ろう。話はそれからでもいい」
レグルスはそう言って、カープノスを見た
『…………お前ら、飛ばすぞ』
若干嫌そうにしながら、カープノスは指を弾いた