第4部~星暦の行方と再会そして…~
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一行が次に辿り着いたのは、エレアルーミンだった
さすがにフィエルティア号で中までは入れず、洞窟の入口の前に着地していた
「ここは相変わらずキラキラなのじゃ〜」
ほんの少し楽しそうに目を輝かせながら、パティは辺りを見回していた
「ここがエレアルーミンか……」
ほんの少し驚いた表情で、フレンは周囲を見ていた
ユーリ達がグシオスを精霊化させる為に訪れた時よりも、周囲に洞窟の中と同じ結晶が増えていた
「中に入ったらもっと驚くぜ?」
ニヤッと笑いながら、ユーリはフレンを見た
『これは……全部マナか』
船から降り、近くの結晶の側にしゃがみ込みながら、カープノスは興味深そうに結晶を見つめていた
『そうですわね……恐らく、体内に取り込みすぎたエアルを、少しでも還元しようとしていたのでしょうが……彼もそれだけの無理をしてしまっていたのですわね』
ペテルギウスはカープノスの側に降り、少し寂しそうに結晶に触れた
「グシオスがおった地か……と、言うことは……」
『ここにいるのは、カペラだね』
小さく息を吐きながら、リゲルはそう言ってレグルスを見上げた
『レグルス様、ここはエアルも異常なさそうだし、僕ここで待っててもいい?』
ほんの少し気だるそうに彼は問いかける
「……そうだな。まだ後一箇所、エアルの異常が発生している地がある。少し休んだ方がいいだろう」
リゲルの頭を撫でながら、レグルスは微笑んだ
『うん、そうするよ。……ユーリ、頑張ってね』
リゲルはニコッとユーリに向かって笑いかけると、船室の方へと消えていった
「力使うのって、そんなに疲れるの?」
ふと湧いた疑問をカロルはレグルスに投げた
「リゲルとベガは特別だ。二人の力はそもそも発現する者の方が少ない。力の使用に、どれだけの体力が使われるのかは、二人にしかわからん」
ベガの方を見ながら、レグルスはそう言った
『特別って言ったら、カープノスもそう。…空間移動、カープノス以外で使えた人、見たことないから』
どことなく、楽しそうに結晶の観察をしているカープノスの背を、ベガは呆れたように見詰めた
『でも、カープノスは、自分の感情を表に出すの苦手だから……力使って、疲れるのか、そうじゃないのか、よくわかんない』
ベガの言葉に、ユーリ達もカープノスの方へと視線を向けるが、確かに、疲れているかどうかは判別し難かった
「じゃあ、しばらくは彼に頼らずに移動しません?」
エステルはそう言ってユーリ達を見回した
「そうね。そろそろバウルも、自分で飛びたいでしょうから、そうしましょうか」
ジュディスがそう言いながら、バウルを見上げると、肯定するように、バウルが一声鳴いた
「賛成!あんまりカープノスに無理させたら、ボクらがアリシアに怒られちゃいそうだしね」
元気よく手を上げながら、カロルはそう言って笑った
「自分は無理無茶する癖に、人には怒るからな、あいつは」
困ったように笑いながら、ユーリは肩を竦めた
そんな会話を聞きながら、レグルスはひっそりと微笑んだ
「さて……向かうとしようか」
そう言って、彼も船から降りると、カープノスとペテルギウスの傍へと歩み寄った
ユーリ達もそれに続き、船から降りた
「カープノス、そろそろ行くぞ?」
レグルスがそう声を掛けると、不機嫌そうにカープノスは振り返った
『……俺もか?』
「当たり前だろう。
あからさまに目的を忘れ、目の前の結晶に興味を惹かれてしまっているカープノスに、レグルスはため息をついた
小さな子どものようにその場から動くものかと、彼は一切微動だにしない
「リゲルの時と同じで、後から呼んだらいいんじゃねえか?」
そんなカープノスを姿を見て、ユーリは呆れ気味にレグルスにそう声を掛けた
「……致し方ない……カープノス、呼んだら来るのだぞ?」
『……気が向いたらな』
カープノスはそう言って、再び結晶の方へと顔を向けた
『困った人ですわね』
ペテルギウスはそう言いながら、レグルスの側に寄った
「ペテルギウスとベガ、お主らはついてくるか?」
『ええ』『うん』
二人は同時にそう答えた
「んじゃ、行きますか。ここより洞窟の中の方が結晶あんのに、残念だなっと」
わざとカープノスに聞こえるようにそう言いながら、ユーリは背を向けて、歩き出そうとする
『……何?』
ユーリの言葉に、カープノスは反応した
前に出そうとしていた足を止め、ユーリは顔をカープノスの方へと向けた
「ん?なんだよ?」
『……洞窟の方が、ここより多いのか?』
疑わしそうに、カープノスは問いかけてくる
「そりゃもう、辺り一面結晶だらけ!キラキラですごいんだよ!」
楽しそうにニコニコと笑いながらカロルが言うと、突然、カープノスは立ち上がって、ユーリ達の方へと近づいて来た
『……やはり、俺も行く』
「カープノス……お主と言うやつは……」
あからさまに結晶目当てなその反応に、レグルスは呆れ、額に手を当てた
「あはは……でも、ついてきてくれるなら、よかったのでは?」
苦笑いしながら、エステルはそう言って首を傾げた
「……まぁ、そうだが……はぁ……考えても仕方ないな……では、本当に行くぞ」
カープノスについて考える事を放棄し、レグルスはそう言って洞窟の入口の方へと足を進め始めた
ーーーーーー
『…………っ!!!マナの結晶が、こんなにも……!!』
普段の無愛想な彼からは想像できないほど、生き生きとした表情で、カープノスを洞窟内部を見回した
相変わらずキラキラと光が反射し、目が痛くなるような空間を、カロルは楽しげに見回していた
「相変わらずキラキラしてて綺麗だね〜!」
「これは…確かに、綺麗だけど、目が痛くなるね……慣れるのに時間がかかりそうだ」
ほんの少し目元を隠すようにしながら、フレンは苦笑いする
「歩いてりゃそのうち慣れるさ。…んで、カペラってやつは……」
『…一番奥、グシオスがいた場所だよ』
ユーリの問いに、ベガが答えた
「了解」
そう言って笑うと、ユーリ達は奥へ向かって進み始めた
進み始めて少しして、ユーリのすぐ後ろを歩いていたレイヴンが不思議に辺りを見回し始めた
「おっさん、さっきから何キョロキョロしてんのよ?」
レイヴンの少し後ろを歩いていたリタは、鬱陶しそうに彼に声をかけた
「あ、いやぁ……ここも魔物がそんなにいないなー、なんて思ってね」
彼の答えに、一行は足を止めて辺りを見回す
以前訪れた時には確かにいた魔物達が、今は姿は疎か、気配すらない
「言われてみれば、おじ様の言う通りだわ」
「ペテルギウス、お主、何か知らぬのか?」
レグルスは隣にいる彼女にそう問いかける
『カペラの仕業でしょう。魔物相手に八つ当たりでもしているのだと思いますわ。……わたくしもそうしていましたから』
ほんの少し、バツが悪そうに彼女はそう答えた
「ああ、そゆことなのね……」
若干引き気味にレイヴンは言った
「八つ当たりで倒されまくって、周辺に魔物がいなくなってるってわけね」
腕を組みながら、リタは呆れ気味に言う
「ちょっと……可哀想な気もします」
「あら、おかげで進みやすいから、私はいいと思うわ」
少し眉を下げたエステルに対し、ジュディスはそう言ってニコッと笑った
「ま、とにかく、魔物が沸いてくる前に進もうぜ」
ユーリの言葉に頷くと、一行は再び洞窟の奥を目指して歩き始めた
しばらく歩くと、洞窟の最深部が見えてきた
辺りを覆う結晶の塊と、広い空間……
その中央に一人の少年が立っていた
短く、赤みがかったオレンジ色の髪の少年の右手には弓が握られていた
「カペラ!」
レグルスがそう呼ぶと、少年はゆっくりと振り返った
先程のペテルギウス同様に、彼の瞳は濃いオレンジ色をしていた
『レグルス様……』
そう名を呼ぶ声は少し震えていた
『…ボクら、『あれ』からアリシアを守れなかった…アリシアより、ボクらの方が強かったはずなのに……』
どこか悔しそうで、同時に悲しそうに、彼は言葉を続けた
『ボクらが守らなきゃいけなかったのに…っ!!アリシアの事を逃がさなきゃいけなかったのに…っ!!ボクらは何もできなかった……っ』
薄らと涙を溜めながら、彼は少し俯いた
レグルスはそんな彼にほんの少し違和感を持った
だが、違和感の正体は掴めずにいた
『……ボクらは、『あれ』に勝てない……でも、アリシアを守る為には、立ち向かわなきゃいけない……だから』
彼はそう言うと胸の前で手を組んだ
『…我が呼び掛けに答え、今ここに、具現化せよ…『グシオス』!!』
そう呼びかければ、彼の傍に
「さっきと全く同じ状況……だね」
苦笑いしながら、フレンは剣を抜いた
「だな」
肩を竦めながら、ユーリも刀を抜こうとするが、途中でその手を止めた
「……ベガ、また白雷、使ってもいいのか?」
傍にいるベガにそう問いかければ、彼女はどこか嬉しそうに目を細めた
『…うん、そうしてあげて?』
ニコニコと笑いながら、彼女はそう答えた
「んじゃ、悪いけどオレの刀持っててくんない?」
ユーリはそう言って、自身の愛刀をベガに差し出した
『…いいよ、持っててあげる』
そう言ってユーリの刀を両手で抱えると、ベガはレグルスの方へと小走りで向かった
『…話が早くて助かるよ。キミたちの勝利条件は、ペテルギウスの時と同じ……ボクが武器を落とせば、キミたちの勝ちだ』
彼はそう言って弓を構える
それに合わせ、ユーリ達も武器を構えた
『それじゃあ……行くよ!!!』
戦闘開始から数分……
ほんの少し、ユーリ達は苦戦していた
カペラの相手を、ユーリ、リタ、ジュディス、フレンが
残ったメンバーはグシオスの相手をしていた
グシオスの方は一度戦っている事もあり、苦戦している様子はないが、問題はカペラの方だった
ペテルギウスとは違い、中・遠距離戦が得意らしい彼は、ユーリ達から一定の距離を保っていた
「だぁああっ!!!もう!!!ちょこまかちょこまか鬱陶しいっ!!」
リタは詠唱をしながらそう叫んだ
「打ち上げろ!アクアレイザー!!!」
リタの術をカペラは上へ飛んで回避する
『砕けろ!ストローククエイカー!!』
そう言いながらユーリ目掛けて矢を放つ
間一髪のところで回避すると、矢の落ちた先で地面が隆起したのが視界に入った
「こりゃ、ちとマズイな…」
体制を立て直しながら、ユーリは苦笑いした
危うい状況だと言うのに、どこか楽しげに、ユーリはカペラを見ていた
「だが、負けられない……だろう?」
フレンはそう言いながら、ユーリの顔を見た
ユーリがフレンの方を見ると、そのフレンも、どこか楽しそうにしているように、彼の目には映った
『ユーリ』
不意にまた、さっきと同じ声が頭に響く
幻聴ではない
自分にしか聞こえていないであろう声に、どこか確信を持てた
「…行くぜ、フレンっ!!」
「ああっ!!」
ニッと笑い合うと、ユーリとフレンは、カペラに向かって突っ込んで行った
二人を援護するように、リタは再び詠唱を始める
「目覚めよ、無慈悲で名もなき茨の女王……」
『……っ!!!させない!』
カペラはそう言ってリタに向かって矢を放つが、それをジュディスが防いだ
「それはこちらのセリフだわ」
ニコッと笑いながら、ジュディスはそう呟いて彼を見た
「アイヴィーラッシュ!!!!」
リタの詠唱が終わると、カペラの足元に茨が現れる
慌ててそれを避けるが、避けた先にはフレンがいた
「断空剣っ!!!」
『…っ!!』
ギリギリで回避をしようとするが、僅かに攻撃があたり、カペラは顔を顰めた
フレンから距離を取ろうと、彼は後ろに下がろうとするが、背後に気配を感じ驚きながら後ろを見る
カペラの後ろには、既にユーリがいたのだ
「いい加減大人しくしろってっ!!牙狼撃!!」
真後ろからの攻撃を回避できるわけもなく、彼は弓を手放して、うつ伏せで地べたへ倒れ込んだ
『……あーあ、負けちゃったかぁ』
ゴロンと仰向けになりながら、少し悔しそうに呟いて、彼は指を鳴らした
グシオスの姿は消え、カペラの弓もその場から消えていた
「うはぁ……よ、ようやく終わったわね……」
その場に座り込みながら、レイヴンは肩で息をしていた
『みんな、お疲れ様』
ユーリの刀を抱き抱えたベガはそう言ってユーリの元へ駆け寄って来ていた
『カペラ、貴方もお疲れ様でしたわね』
地べたに寝転んだままのカペラの側でしゃがみながら、ペテルギウスは声をかけた
『……あーあ!!『あれ』には手も足も出ないし、ユーリさんたちにまで負けちゃうなんて……ボクの腕も落ちたのかなぁ』
投げやり気味に、カペラはそう声を上げた
上を見上げる彼の瞳は、元のオレンジ色に戻っていた
『それはわたくしも同じですわ。…戦闘から離れ数百年……腕が鈍っていても、仕方の無いことですわ』
ほんの少し、悔しそうに笑いながら、ペテルギウスはカペラに手を差し出した
カペラはその手を取るとゆっくりと起き上がる
『さてと……ユーリさん、白雷貸して?』
カペラはそう言ってユーリに手を差し出す
「はいよ」
短く答えて、ユーリは白雷をカペラに手渡した
どこか懐かしそうに微笑むと、カペラは目を閉じる
彼の中から小さな光の玉が飛び出し、そのまま白雷の中へと消えていった
『…ん、終わり』
そう言って目を開くと、ユーリに白雷を差し出した
白雷を受け取ると、そのまま鞘へと収めた
『カープノス!!ボクの
少し離れたところで、膝をついてしゃがみ、結晶の観察をしていたカープノスに、カペラは声をかける
ムッと不機嫌そうな表情をして、カープノスは振り返った
『……………その辺とはどこだ?』
『今キミがいる辺りだよ』
カペラの答えに嫌そうにしながらも、彼は立ち上がり辺りを探し始めた
『もー…あんなに不機嫌になんなくったっていいじゃんかね』
胡座をかいて、呆れ気味にため息をつきながら、カペラは頬杖をついた
「カペラ……お主もやりすぎだぞ」
カペラの元に近づきながら、レグルスは少し厳しめに声をかける
『……うん、そうかもしれない。ごめんなさい、レグルス様、みんな』
レグルスの叱責を素直に聞き入れ、カペラは謝りながら、ユーリ達を見回した
「もう過ぎたことじゃし、気にすることないのじゃ!」
体の後ろで手を組みながら、パティはニッコリと笑った
「さっきみたいにどっかの誰かさんが危うくなることもなかったわけだし、あたしらもだいぶ感覚戻って来てるし、まぁ、いいんじゃない?」
少し意地悪げに笑いながら、リタはユーリを見た
「……うっせーよ、リタ」
腰に手を当てながら、ユーリは苦笑いして、リタを見た
『ええ……ペテルギウス、キミ、ユーリさん相手にそんな事したの?後でアリシアがブチ切れても、ボク知らないよ?』
若干引き気味に、カペラはペテルギウスを見た
当の本人は、バツが悪そうに微笑みながら、肩を竦めていた
『……終わったぞ』
そうこうしているうちに、カープノスが回収を終えて戻って来た
「んじゃ、船に戻るとしますか」
ユーリはそう言うと、カペラの方を見る
「…立てるか?」
そう問いかけながら、カペラに手を差し出した
カペラはほんの少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑むとユーリの手を取って立ち上がった
『…ありがと、ユーリさん』
そう言って彼は笑った
『………初代、少し持ち帰ってもいいか?』
結晶を指さしながら、カープノスはレグルスに問いかけていた
「……お主、先程から勝手に屋敷に送っていただろう……今更、我に許しを得ようとするな」
レグルスが諦め気味にため息をつくと、カープノスはそれを了承と見たらしく、結晶の欠片を幾つか広い上げ、大事そうに抱えていた
「全く……ああ、それと、この先はあの
思い出したようにレグルスが言うと、カープノスはあからさまに嬉しそうな顔をした
『……なら、次はレレウィーゼに向かうといい。旧集落の先……泉の側に、アルタイルがいる』
言うだけ言うと、一人、足早に船へと戻って行った
「現金なやつね」
一人先に行ってしまったカープノスの背を呆れ気味にリタは見つめた
『あれがカープノスだからねぇ』
頭の後ろで手を組みながら、カペラはケタケタと笑った
「我らも戻るとしよう」
レグルスの言葉に頷くと、一行はその場を後にした
ーーーーーー
船に戻り、バウルに揺られること約一時間程……
目的のレレウィーゼまでもう少しというところに一行はいた
「いんや〜にしてもこうして風を感じるのは久々ね〜」
船のヘリに寄りかかり、体に風を受けながら、レイヴンは少し楽しそうに言う
「ひゅんっと目的の場所につけるのもいいが、こうしてのんびり移動するのも、良いものなのじゃ〜」
船の舵の近くで腕を組みながら、パティはレイヴンの言葉に頷いた
『わ〜!風を切るって、こんな感じなんだね!』
誰よりも楽しそうにカペラはニコニコと笑っていた
『わ、わっ!これ、落っこちたりしないよね…?』
『リゲル、怖いこと言っちゃダメ…っ』
対してリゲルとベガの二人はほんの少し怯え気味に、ユーリにしがみついていた
『リゲルもベガも、本当に心配性なんだから……そんなに簡単に落ちたりしないって!』
カペラはそう言って、ユーリに引っ付いているリゲルの手を取って引き剥がすと、その場でリゲルと一緒にクルクルと回り始める
『わわっ!!!カ、カペラ!!やめてっ!怖いっ!!怖いからっ!!』
そう言いながらも、リゲルはカペラから手を離せずにいた
『……カペラ、いい加減にしないと、ペテルギウスに、怒られる』
ユーリにしがみついたまま、ベガはそう言うが、当の本人の耳には入っていないらしい
「それ、また予言?」
怖がっているベガの頭を撫でながら、ユーリが問いかけると、彼女は何も言わず、ただ笑顔を返した
『カペラ?』
ペテルギウスの呼ぶ声に、カペラはギクッと肩を竦めて、回るのをやめる
回転が止まると、リゲルは慌ててユーリの元へと戻って行った
恐る恐る振り返ったカペラの目には、ニッコリと微笑むペテルギウスの姿が目に入った
『あ、あー……何?ペテルギウス…』
怯え気味にカペラはペテルギウスに問いかける
『貴方……いつからリゲルよりも偉くなったのですかね?星となったわたくし達の間には、確かにはっきりとした上下関係などありませんが……
彼は貴方よりも長い時を生きているのですよ?その彼がはっきりと、やめて、と言ったのですから、やめるのが道理……違いましたか?』
ニコニコと笑顔を崩さずに、ペテルギウスは問い返す
「……マジで怒られんのな」
自身の元に逃げてきたリゲルの頭を撫でながら、ユーリは苦笑いした
『……ごめんなさい……ボクが悪かったです……』
言い返すこともせず、カペラは自身の非を認めた
『…ごめんね、リゲル』
リゲルの方を向きながら、カペラは謝った
『……次は許さない……』
目元に涙を溜めながら、リゲルはカペラを睨みつけていた
『あらあら……カペラ、仲直りは大変そうですわね』
先程までの怒りはどこへ行ったのか、クスクスと笑いながら、ペテルギウスはそう言った
「切り替え早ぁ……おっかないわ…」
ペテルギウスを見つめながら、レイヴンはほんの少し怯えていた
『それにしても……リゲル、ベガ、貴方方、何故彼にそんなに懐いているのですか?』
頬に手を当てながら、不思議そうにペテルギウスは首を傾げた
『あんまり彼にくっついてしまうと、アリシアに怒られてしまいますわよ?』
『…だって、ベガ。どうなの?』
自身の正面にいるベガに、リゲルは問いかける
『ちょっと待って……』
そう言ってベガは目を閉じる
数秒経って、再び開かれた目はほんの少しだけ、オレンジ色が濃くなっていた
『……この程度じゃ、アリシアは怒らないみたい』
そう言って軽く目を閉じ、再び開けた時には、瞳の色は元に戻っていた
「あの……皆さんの瞳の色が時々濃くなるのはどうしてです?」
首を傾げながら、エステルが問いかけた
『それは、力を使ってるって証だよ。力を使ってる最中は、一時的に体内のエアルとマナの量が通常より増えるからね。それが瞳に現れるんだ』
カペラはそう言いながら、自身の目元を指で軽く叩いた
『力によっては、使用中か否か、分かりずらい場合もありますから、その判別の材料となっていますわね』
「では……色が濃ければ何か力を使っている、ということなんですね」
少し考えるように、フレンは顎を摘みながら唸った
「けど、シアはそんな事なかったよな?」
そんなフレンを見ながら、ユーリは首を傾げた
「君も、やっぱりそう思うかい?」
フレンの問いにユーリは頷いた
「全く……お主ら、大事な説明が抜けておる」
傍で話を聞いていたレグルスは、呆れ気味にそう言いながら近づいてきた
『瞳の色が変わるのは、力の強い人だけ。…アリシアは、力はあったけど、それを行使する体が弱かったから、上手く使えていなかった』
『…だから、アリシアは瞳の色は変わらない。……再生中の身体はどうか、わかんないけど……』
レグルスではまた説明が不足すると思ったリゲルとベガが、カペラ達の説明に補足した
「……そうゆうことだ」
どこか不服そうにレグルスは頷いた
「ふーん……で、その再生中の身体って方はどうなんだよ?」
ユーリの問いかけに、レグルスの肩がほんの少しピクリと反応した
「……………後でわかる」
バツが悪そうに彼は顔を背けた
「まさか…弱いまま、だったり……?」
カロルの疑問に一瞬、ユーリの顔が曇った
「いや、それはない」
即座にレグルスはその疑問を否定した
「それは断じてない。……が……まぁ……」
ほんの少し、額に冷や汗をかきながら、レグルスは目線を泳がせた
その反応に、何か仕出かしたことをペテルギウスは察した
『レグルス様?そのお話、後でアリオトと共に、ゆっくりと聞かせてもらいましょうかしら?』
ニコッと先程カペラを叱った時と同じ表情を浮かべながら、ペテルギウスはレグルスを見た
『…ユーリさん、大丈夫だからね』
表情が曇ったままのユーリに、ベガはそう声をかけた
「……ああ、わかったよ」
目を閉じ、深呼吸をしてから、ユーリはそう返した
『あ!!見えたよ!!』
船のヘリから、ほんの少し体を突き出しながら、カペラは前方を指さした
レレウィーゼはもうすぐ目の前だ
ーーーーーー
峡谷の中、星暦の旧集落があった場所に、バウルはフィエルティア号を下ろした
「ここから先は徒歩ね」
船から降りながら、ジュディスはそう言った
船から降りたレグルスは、どこか寂しそうに辺りを見回した
『……レグルス様、ここが…そうなんだね』
リゲルの問いに、レグルスは小さく頷く
「……ああ、そうだ」
その場に膝をつき、懐かしそうに地面を撫でる
「……アリシアのお陰で、同胞達の魂は救われた。……今はもう、何も残っていないのだな……」
実に千年振りに、レグルスは故郷の地へと帰って来たのだ
地面を撫でる手にも、辺りを見回す目にも、寂しさが滲み出ていた
「………感傷に浸るのは、また別の機会にせねばいかんな」
そう呟くとレグルスは立ち上がった
「……カープノス!呼んだら必ず来るのだぞ!」
船に残っているカープノスに、レグルスは声をかけるが、当の本人から反応はない
『大丈夫ですわ、レグルス様。必ず其方へ向かわせますわ』
ペテルギウスはそう言って微笑んだ
船に残るのはカープノスとペテルギウス、そして、ベガの三人だ
『ユーリさん、気をつけてね…?』
ユーリの愛刀を抱えながら、ベガは心配そうに声をかけた
ユーリの手の中には白雷だけが握られていた
「そんなに心配すんなって」
ほんの少し苦笑いしながら、ユーリはベガにそう返した
『それじゃあ、アルタイルのところへ行こう!』
元気よくカペラはそう言うと、先頭を歩き始めた
ユーリ達もその後に続いていく
以前来た時と違い、峡谷には一切魔物の姿は無い
「ここも……魔物がいませんね」
辺りを見回しながら、ほんの少し眉を下げてエステルは呟く
「……アルタイルのやつめ……あやつもか……」
大きくため息をついて、レグルスは額に手を当てた
特に苦労することも無く、一行は泉の元へと辿り着いた
「いつ見ても、ここは綺麗なのじゃ」
泉の方を見ながら、パティは小さく呟いた
「あ、泉の側!誰かいるよ!」
パティの呟きに泉を見たカロルが、そう声を上げて指さした
その先には、淡い緑色の長髪を高い位置で結んだ女性の姿があった
カロルの声に女性は振り返る
後ろ姿だけでは判別し難かったが、その顔立ちは、女性というよりも、まだ少女と言った方が正しいだろう
『……そっか、ペテルギウスとカペラ、負けちゃったのか』
その声は、以前ユーリが、カプア・トリムで聞いた少女の声だった
小さく息を吐くと、彼女は目を瞑り、指を鳴らした
自身の側に現れた大鎌を、左手で持つ
『…アルタイル……』
不安そうに、リゲルは名前を呼ぶ
『……リゲル、危ないから、離れてて』
ゆっくりと目を開きながら、彼女はそう声をかけた
濃いオレンジ色の瞳を真っ直ぐにユーリ達に向ける
『二人と戦ったんだから、ルールは知ってるでしょ?……悪いけど、わたし……今虫の居所がすっごく悪いから、手加減しないよ』
クルクルと手の中で大鎌を回しながら、彼女は睨みつけてくる
「こっちも最初からそのつもりだぜっ」
そう言って、ユーリは白雷を抜いた
それを合図にフレン達も、武器を構える
戦闘準備が整ったのを確認すると、彼女は両手で大鎌を握りしめる
『…我が呼び掛けに…答えよ!!『クロームドラゴン』っ!!』
目を見開いて、彼女がそう言えば、今度は
クロームドラゴンの咆哮を合図に、両者は足を踏み出した
ーーーーーー
『地竜吼破っ!!』
ユーリの目の間に、大鎌が振り下ろされる
間一髪のところでかわすが、大鎌の当たった地面から岩石が吹き上げ、ユーリの右腕を掠めた
「…っ!!ちっ!!」
小さく舌打ちをしながら、ユーリはアルタイルから距離を取る
アルタイルの相手をユーリ、パティ、カロル、ラピードがし、残ったメンバーはクロームドラゴンと対峙していた
「ユーリっ!!」
クロームドラゴンと対峙しているはずのエステルが、ユーリが怪我をした事に気づき、悲鳴に近い声を上げた
「エステル!!大丈夫だから、そっちに集中しろっ!!」
アルタイルの攻撃を交わしながら、ユーリは怒鳴った
不安そうにしながら、エステルはクロームドラゴンの方へと目を戻した
「ユーリっ!!…活心エイドスタンプっ!!」
名前を呼びながらユーリに近づくと、カロルは回復を行う
アルタイルの速度では、カロルの攻撃は間に合わないが故に、カロルは援護に徹していた
「サンキュ、カロル先生っ!!」
そう言うが早いか、ユーリは再びアルタイルの方へと向かって行った
その後に続くように、ラピードがかけていく
間違いなく、リーチは彼女の方が長い
だが、だからと言って、向かって行かないわけには行かなかった
「うちも援護するのじゃっ!」
パティはそう言って銃を手の中でクルクルと回すと、詠唱を始めた
「出たとこ勝負じゃ!…リスキーキャスト!!」
パティが詠唱を終えると、ストーンブラストが発動した
彼女はそれに気づき、その場から離れようと後ろへ飛んだ
『……っ!!我が破りしは平穏なる障壁、ここに具現せよ!……グリムシルフィ!』
パティの術に対抗するように、彼女はユーリ、ラピード、パティに向かって術を放った
術が当たるギリギリのところで、三人は回避し、彼女から距離を取った
「むむ……戦いずらいのう……」
ムッと頬を膨らませながら、パティは彼女を見つめる
「ああ……さすがに近づけなきゃ、武器を奪うもなにもねえからな」
顔を顰めながら、ユーリは彼女をジッと見つめる
『…その程度じゃ、アリシアを守るのは無理だよ』
ユーリを煽るように、彼女は口を開いた
『わたしですら、アリシアに手が届かなかった……『あれ』に、指一本触れることもできずに負けた……わたしさえ倒せる程の力がないのなら……君に、アリシアを任せるわけにはいかない!!』
そう言って、彼女はユーリを睨んだ
「……随分な言われようだな。勝手に無理って決めつけんじゃねーよ」
白雷を構えながら、ユーリは彼女を睨み返した
「シアはオレらが……オレが守るって決めてんだ!こんなところで、負けてやるかっつーの!!」
ニッと笑いながら、そう答えたユーリの頭の中にまた、声が響く
『…ユーリ』
懐かしい声は、どこか不安そうな雰囲気だった
「(……大丈夫だよ)」
心の中でそう言うと、自身の足元にいるラピードを見た
「ラピード!」
「ゥワオーーン!!」
合図を送り合うと、再び彼女目掛けて向かっていく
『…っ!!…なんで……君は諦めないのさ……』
彼女は驚きながら悔しそうに、小さく呟いた
少し俯き、軽く頭を振ると、真っ直ぐにユーリを見て、彼女も向かって来る
向かって来た彼女に対し、ラピードは高く飛び上がると、上から彼女目掛けて紅蓮犬を放つ
『!!!』
防御しようと彼女の視線がラピードの方へと向けられた
その一瞬の隙をついて、ユーリが自身の間合いに彼女を捉える
『あ……っ!!』
「これでもくらえっ!!爪竜連牙斬!!!」
彼女は防御する間もなく、モロにユーリの攻撃をくらった
『……っ!』
左手から大鎌が離れ、ユーリはそれを白雷で弾き飛ばした
カランッと地面に大鎌が落ちる音が響き渡る
『…………あーあ………結局、勝てなかったなぁ………』
左腕で目元を覆いながら、彼女は指を鳴らした
パチンッと音が響くと、クロームドラゴンの姿も、大鎌も消えていった
「……はっ……ようやくか……」
大きく息を吐きながら、ユーリはその場に座り込んだ
「ユーリっ!!」
慌てた様子で、エステルがユーリに駆け寄ってくる
「どうした?エステル?」
「どうしたじゃありません!!怪我してるじゃないですか!!」
右腕を掴まれながらそう言われて視線を向けると、いつ怪我をしたのか、確かに腕から血が流れていた
「治療しますから、動かないでください!!」
エステルはそう言って、術を唱え始める
『……アルタイル……!!!』
地面に横になったままのアルタイルの上に、リゲルが飛び乗る
襟元を掴むと、グッと彼女の上半身を引き起こした
起こされた衝撃で左腕がだらりと垂れ下がる
アルタイルの瞳は、他の者たちと同じオレンジ色に変化していた
『やりすぎ……っ!!いくらなんでも、やりすぎだよ…っ!!!もしもの事があったら、どうするつもりだったの?!!!』
以前、カープノスに怒っていた時と同様に、リゲルは声を荒らげた
その声はほんの少し、涙ぐんでいた
『ボクでもここまでしてないのに……何してるのさ、アルタイル』
リゲルとアルタイルを見下ろしながら、カペラは呆れ気味に声をかけた
「二人の言う通りだ。アルタイルよ」
さすがのレグルスもペテルギウスやカペラの時よりも低い声でアルタイルに問いかける
「仮にもアリシアの事を思っているのであれば、何故ここまでした?」
レグルスの声には怒りが混じっていた
『……どうしてだろう……何故か、ここまでしないといけない気がしたんだ』
そう言った彼女の声は動揺していた
まるで、自身の意思ではなかったかのように
『アリシアが悲しむって、わかっていた筈なのに……わたし、どうして……?』
困惑気味にそう言って、彼女は額に手を当てた
「これ……どうゆう事?」
不安そうに、カロルはレグルスに問いかける
腕を組みながら、レグルスは考える
ペテルギウスとカペラにあったほんの少しの違和感が、アルタイルからは強く感じられていた
「……まさか……」
小さく呟くと、レグルスはアルタイルを見据える
「……カペラ、アルタイル、お主ら……狭間からは同時に追い出されたのか?」
何かに気がついたレグルスは二人を交互に見ながら問いかけた
『いや……違う。最初にペテルギウスが居なくなって、次にボク』
『……その次に、わたし……後の三人はわからない……』
二人の答えに、レグルスは目を見開いた
「同時じゃねーと、なんかまずいのか?」
治療を終えたユーリは立ち上がりながらレグルスに問いかけた
「………これは予測でしかないが……」
ユーリ達の方をゆっくりと見ながら、レグルスは口を開いた
「恐らく……怨霊の残滓が、こやつらに取り憑いていたのだろう」
「残滓…ですか?」
「ああ。怨霊から切り離された、意志を持たぬ負のマナ……こやつらの、怨霊に負けた事への悔しさと、守るべき存在から守られた自責の念……
その感情に、奴の傍に少しでも長くいた者に、多く取り憑いてしまっていたのだろう
お主らに負け、アリシアを託しても大丈夫であろう、と言う感情が強くなった事で既に残滓は消えているが……
……だが、それならば、こやつらの行動の意味も納得ができる」
レグルスの説明に、ユーリ達は息を飲んだ
それは、つまり……
「……アリシアも、そうなってる可能性が?」
重い口を開いたのはジュディスだった
彼らに取って、それが、一番の不安だった
だが、レグルスはその問いに首を横に振った
「それはない。昨日も言ったが……カストロと一緒であれば、そもそも怨霊は近づけない。ポルックスが一緒であれば、闇に同化し、奴は認識が出来ない
『そこにいる』と認識されなければ、取り憑かれることもない」
その答えに、彼らは安堵の息を吐いた
……だが、うかうかしている場合出ない事に、変わりは無い
『あーあ……ホントわたしらやらかしまくりだね、カペラ』
アルタイルはそう言って、カペラを見た
『そうだね…アリシアを守る事が出来ないどころか、ボクら自身が取り憑かれてたなんて……当主失格だ』
悔しそうに肩を落として、カペラは言った
『……アルタイル、もうあんなこと、絶対しちゃだめだからね?』
ムッと頬を膨らませて、ほんの少し涙を流しながら、リゲルはアルタイルに訴えた
『ごめん、リゲル。…もうしないよ』
そう言って、困ったように笑いながら、アルタイルはリゲルの頭を撫でた
その仕草はアリシアによく似ていた
『……さ!ユーリ!白雷こっちに向けて?』
パンッと頬を叩くと、アルタイルはそう言ってユーリを見た
「……おう」
口調もアリシアによく似たアルタイルに、ほんの少し動揺しながら、ユーリは白雷を彼女に向けた
彼女から現れた光の玉はゆっくりと白雷の中へと収まった
『はい、終わり!』
アルタイルは元気よくそう言うと、上に乗ったリゲルをそのまま抱いて、立ち上がった
『わっ!!ちょっと!!アルタイル!!』
『だってリゲルが退いてくれないから、こうするしかなかったんだよ〜!…あ、レグルス様!わたしの
そう言って、彼女は泉の方を指さす
泉の淵ギリギリの所に、
「……お主、自身の
呆れ気味にそう言うと、レグルスは大きく息を吸い込んだ
「……カープノス!!!!!!」
リゲルの元で呼んだ時と同等……いや、それ以上の大声で、彼はカープノスを呼んだ
すると、すぐに彼は姿を現した
両手は両耳に当てられており、不機嫌そうにレグルスを見ていた
『……初代、そんなに大声を出さなくても、聞こえている』
どうやら相当耳に響いていたようだ
カープノスは
『アルタイル…!お前!!あのまま泉の中に落ちていたらどうするつもりだったんだ!?』
そう言って、カープノスはアルタイルの元へとすっ飛んで来た
『え?うーん…その時は……リゲルとカープノスに任せようかなあ、なんて?』
ニヤッと笑いながら、アルタイルは答えた
『〜〜っ!!お・ま・え・なぁ!?』
「カープノス、言いたいことはわかるが、後にしろ!!…今はそれどころではなくなった」
アルタイルに掴みかかろうとするカープノスをレグルスは宥めた
『……何があった』
真剣な声と表情に、カープノスは少しだけ怒りを引っ込めた
「アルタイルとベガにも話さねばならぬ。……ひとまず、戻るぞ」
『……急ぎか。なら、飛ばすぞ』
カープノスはそう言って指を弾いた