第4部~星暦の行方と再会そして…~
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ー翌日ー
陽の光に照らされて、ユーリは目覚める
両隣にはベガとリゲルの二人が横になっていた
星でも眠るのかと、クスッと笑うと、二人の肩を軽く叩く
「ベガ、リゲル、朝だぜ」
そう優しく声をかけると、二人は眠そうに目を擦りながら起き上がった
「おはようさん」
『ん……おはよう、ユーリ』
『…おはよう……眠れた?』
ベガはそう言いながら、首を傾げてユーリを見た
「おかげさまでぐっすりだ。ありがとな」
そう言って二人の頭を撫でると、彼らは嬉しそうに目を細めた
『…なら、よかった!』
『ユーリ、早く行こ!』
ニコニコと笑いながらベッドの上から飛び降りると、二人はユーリを手招きした
「へいへい、行きますよっと」
ほんの少し苦笑いしながら、ユーリは立ち上がり、壁に立てかけていた二振りの刀を手に取ると、二人に続いて部屋を後にした
三人が向かった場所は食堂だった
扉を開けると、既に他のメンバー達が席に座っていた
「あ!ユーリ!おはよう!」
ユーリを見るやいなや、カロルが声をかけてくる
「おぅ、おはよう」
そう言いながら、ユーリも席に座った
「…よく眠れたみたいだな」
ユーリの顔を見て少し安心したようにフレンは微笑んだ
「ふふ、みたいね。ちゃんと眠れていなかったらどうしようかと思ったわ」
クスクスと笑いながらジュディスはユーリを見た
「ベガとリゲルのおかげだな」
そう言って、昨日同様に両隣に座っている二人をユーリは交互に見た
「本当に懐かれていますね、ユーリ」
どこか微笑ましそうに笑いながら、エステルはユーリの両隣のベガとリゲルを見る
「みたいだな」
ユーリは困ったように肩を竦めていたものの、その表情は少し嬉しそうだった
「…んで、昨日の話を聞いて思ったんだけど……最初にあたしらが聞いた話と、やっぱりちょっと違ったわね」
リタはそう言いながら、昨日メモを取っていた紙を取り出した
「『歴史が風化し、正しい歴史がアリシアに伝わなかった』……これは違ったわけよ。少なくとも、今ここにいる星たちは知っていた。……あんたら、なんでアリシアに本当のこと教えなかったのよ?」
ユーリの両隣のベガとリゲルを訝しげに見つめながら、リタは問いかける
『……だって、本当のこと話したら……』
『アリシアはきっと、レグルス様と同じ事をしようとするって、思ったんだ』
ベガとリゲルはどこか寂しそうに言う
『幾らアムリタといえど、レグルス様の身体が永遠に持つ訳じゃない……いつかは必ず、限界がくる。そうしたら、僕らも消えてしまう』
『そんなこと知ったら……レグルス様と同じだけの力を持つアリシアは、きっと、レグルスの代わりになるって言い出す
……あたしたちは、そんな事、望んでない』
そう言うベガの声は、ほんの少し震えていた
『…あたしたち、ただこの世界の未来を守りたかっただけ……みんな、いつか星喰みを倒したら、消える覚悟で、力を残した……アリシアが、あたしたちが消える事を嫌がってそんな事するの、嫌だった……』
『アリシアが、僕らに消えて欲しくないって思う気持ちは、理解できる
……けど、だからと言って、僕らはアリシアにまで、永遠に近い時を過ごさせることなんて、したくない……僕らはただ、アリシアには、普通に生きて欲しかった……大事な人と、寿命を共にして欲しかった……
大切な人だけがいなくなって、自分だけが残る苦しみなんて……あの子に、知って欲しくない』
『…だから、言わなかった……言って、本当にそうなるの、嫌だから……』
そう言う二人の目には薄らと涙が光っていた
泣きそうなのを二人は必死で堪えていた
「……リタ」
ほんの少し咎めるような声で、エステルはリタの名前を呼ぶ
「…わ、悪かったわよ……」
ほんの少しバツが悪そうに、リタはそう返す
「確かに……アリシアなら、そう言い兼ねないね」
納得したようにフレンはそう言って苦笑いした
「だな。シアならそうする。……あいつにとっては、星も家族、だもんな」
同じように苦笑いしながら、ユーリは肩を竦めた
『……だから、ユーリ』
目元に溜まった涙を拭いながら、リゲルはユーリを見上げた
『アリシアがそんなバカなこと言い出したら、殴ってでも止めて欲しい』
『あたしたちの言うこと…アリシア、聞いてなんてくれないから』
ベガもまた、涙を拭いながら、ユーリにそう言った
「シアはオレの言う事も中々聞いてくんねえけどな……ま、そんときゃ何がなんでも止めてやるって」
そう言いながら、ユーリは両隣の二人の頭に手を乗せ、頭を撫でた
「じゃが……なんで言ってないことを、レグルスに教えてあげてなかったのじゃ?」
少し不思議そうに首を傾げながら、パティは二人に問いかけた
『……教えなかったのではなく、初代が全く、俺らの呼び掛けに応えなかったのだ。…呼んでも応えないのに、教えようがないだろう?』
その問いに答えたのはカープノスだった
いつの間に来ていたのか、ユーリの後ろで腕を組んで、呆れ気味にリゲルとベガを見下ろしていた
「あら、いつからそこに?」
少し驚きながらもジュディスが問いかけた
『…つい今しがただ。お前ら…何も泣くことはないだろ?』
呆れた声で彼はそう言うが、そんな彼の表情も若干寂しげに見える
『…カープノスだって、嫌がってたくせに』
ムッと頬を膨らませながら、ベガは後ろにいるカープノスを見上げた
『……俺は泣いたりしない』
そう言ってカープノスは顔を背けた
『そうですね。……ですが、皆同じ思いです』
もう一つの声にユーリ達が振り返ると、アリオトとレグルスが扉の前に立っていた
「全く、お主らと来たら……」
呆れ気味にため息をつきながら、レグルスがユーリ達の方へと歩み寄ってくる
「…全員、ゆっくり休めたようだな」
ユーリ達の顔を見回しながら、レグルスはそう言う
「ここのベッド、寝心地良かったのよね〜。おっさん、もーちっと寝てたいか」
「そんなに寝てたいなら、今すぐ寝かせてあげましょうか?」
右手で拳をつくりながら、リタはレイヴンを見てニコッと笑う
「ちょ、リタっち!冗談よ、冗談!!」
レイヴンは慌てて顔の前で両手を振る
「朝から何リタ怒らせてるのさ、レイヴン……」
呆れた表情で、カロルはレイヴンを見る
『ふふ、さぁ皆さん、朝食を作って来たので、食べて下さい。…口に合うかは、わかりませんが…』
微笑ましそうにアリオトは笑うと、そう言ってカートを引いてくる
「わーい!ボクもうお腹ペコペコだったんだ!」
そう言って立ち上がると、アリオトの元に行き配膳を手伝った
「…あんたら、実体がないはずなのに、意外となんでも出来るのね」
少し驚きながらリタは言う
『…地上に
ほんの少し気まずそうに、カープノスは言う
「らしい…って、なんでそんなに曖昧なのよ?」
それにレイヴンが首を傾げた
『……
不機嫌そうに彼は答えた
『…つまり、地上でどう行動できるかの実験は行わなかったのですね……』
呆れ気味にアリオトがカープノスを見詰める
「はぁ……カープノス、昔からお主は詰めが甘すぎるのだ」
そう言ってレグルスも、呆れ顔でカープノスを見た
「……ま、おかげで
呆れながらも、どこか楽しげにリタはそう言った
『……ああ、そのつもりだ』
声は不機嫌なままだが、少し楽しげな表情をカープノスは浮かべる
「今は程々にしとけよ、リタ
……さっさと飯食って、昨日の続きだ」
ユーリの言葉を合図に、一同は朝食を食べ始めた
ーーーーーー
「あー!美味しかった!」
ニコニコと笑いながらカロルは言う
『ふふ、それは良かったです』
嬉しそうに目を細めながら、アリオトは言う
「ええ、本当に!……何となく、アリシアの味付けに似ていましたね」
少し懐かしそうにしながらエステルは言った
『…アリシアに料理教えたの、アリオトだから……』
ほんの少し不貞腐れながら、ベガがそれに答えた
「…なんか、二人とも、すっごく不機嫌じゃない…?」
ベガとリゲルの二人を見ながらカロルは首を傾げた
『…僕らも食べたかったのに……』
食事が始まって早々、ベガとリゲルも食べようとしていたが、さすがにそれは無理だったようだ
「そんなに気落とすなって。…その内、カープノスとリタが何とかしてくれんじゃねえか?」
苦笑いしながら、ユーリは二人の頭を撫でた
「あたしに振らないでよ……ま、やり甲斐はありそうだけど」
『……その内な。今は優先すべき事をやらねばならん』
ユーリ達が食事をしている間、ずっと壁にもたれかかっていたカープノスはそう言って体を起こした
「……さて、そろそろ行くか」
それを見たユーリはそう言うと立ち上がる
他のメンバー達もそれに合わせて席を立った
「リゲル、ベガ、アリオト、お主らはどうする?」
レグルスはそう三人に声をかける
『私は残ります。…カープノスが屋敷のどこに
ほんの少し嫌味のようにそう言って、アリオトは微笑んだ
『僕はついて行く』『あたし、ついて行く』
リゲルとベガの二人はレグルスを真っ直ぐ見て、同時に答えた
「…うむ、では、行くか」
レグルスの合図で、一行は再び屋敷を後にした
ーーーーーー
フィエルティア号に乗り込むと、すぐにカープノスは次の場所へと一行を飛ばした
着いた先は、ゾフェル氷刃海だった
「うへぇ……エアルの濃度、濃すぎるんでないの?」
顔を顰めながら、レイヴンは辺りを見回した
彼の言うとおり、そこらかしこに、エアルの赤い玉が浮かんでいた
「のじゃ……けど、息苦しくないの?」
本来ならある筈の息苦しさがないことに、パティは首を傾げた
『…それは、僕がエアルを防いでるから』
そう言ったリゲルの瞳は、ほんの少しだけオレンジ色が濃くなっていた
『レグルス様、早くエアルクレーネまで行こう?…この人数だと、ちょっと疲れる』
少し気だるそうにしながら、リゲルはレグルスを見上げた
「ふむ……それもそうか。では早く行くか」
レグルスはそう言って、ユーリ達を見た
「昨日のように、分けなくていいのですか?」
「よい。むしろ、リゲルから離れる方が危険だ。全員で行くのがいいだろう。……カープノス、お主もだからな」
自分は無関係とでも言いたげに船のヘリに腰掛けようとしたカープノスを、睨み気味に見ながら、レグルスは声をかける
小さく舌打ちをしながら、面倒くさそうにカープノスは側へやってくる
「全く……何がそんなに嫌なのだ?」
呆れ気味に、レグルスは問いかける
『……ここにいんのはペテルギウスだ。…今、あいつと顔を合わせれば、何を言われるかわかったもんじゃない』
嫌そうにしながら、カープノスはそう答えた
「…それは諦めろ」
ため息をつきながら、レグルスはそう答えた
「あら、何かまずいのかしら?」
「ペテルギウスとカープノスは折り合いがあまり良くないだけだ、気にする事はない」
ジュディスの言葉にそう返すと、彼は船から降りる
その後に、ユーリ達も続いた
警戒しながら歩いて行くが、ケーブモック大森林と同じく、ここも道中魔物の気配は一切なかった
一度も魔物と遭遇することなく、彼らはエアルクレーネの前へと辿り着く
「さて……まずはエアルを鎮めるか」
そう言うと彼は指を鳴らした
その手の中には、昨日と同じ刀が握られていた
「ほんとに一晩で作れちゃうのねぇ」
関心気味に、レイヴンはレグルスの手の中の刀を見る
「……以前の物の劣化版だがな。鎮めるエアルクレーネが二箇所ならば問題ないだろう」
そう言いながら、刀を鞘から抜くとそのまま、エアルクレーネに向かって刀を振った
強い風が巻き起こるが、すぐに止むと、辺りのエアルは正常な状態へと戻っていた
「
辺りを見回しながら、リタは呟いた
『…ペテルギウス、もう出てきても、いいんじゃない?』
不意にベガは、エアルクレーネの後方を見つめながらそう声をかける
すると、ゆっくりとエアルクレーネの後ろから女性が現れた
水色の長髪を首元で一纏めにし、前へと流している彼女の瞳もオレンジ色だったが、ほんの僅かに、その目の輝きが薄く感じられた
『………レグルス様』
どこか不安げな声で、彼女はレグルスの名を呼ぶ
「ペテルギウス…?どうしたというのだ?」
様子のおかしい彼女に、レグルスはほんの少し不安が過ぎる
『……そう……ようやく、あの子がこちらに帰れる時が来たのですわね……。……ですが……』
彼女はそう呟くと、ゆっくりと目を閉じ、指を鳴らした
すると、彼女の右手には槍が握られていた
『……貴方方には申し訳ありませんが……簡単に、彼女の欠片を渡す訳にもいかなくなりましたわ』
目を見開いて、彼女はそう告げる
その瞳は力を使っていたリゲルと同じように、ほんの少しオレンジ色が濃くなっていた
「ペテルギウス!?お主、何を言っておるのだ!?!!」
その場にいた誰よりも驚いたのはレグルスだった
彼女がそんな事を口走るなど、考えてもいなかった
「……笑えねえ冗談だな。あんたら、シアに生きてて欲しいんじゃねえのか?」
ペテルギウスを睨みながら、ユーリは不機嫌そうな声で問いかけた
『……確かに、あの子にはまだ、生きていて欲しいと願っておりますわ。……しかし、『あれ』を浄化する為には、貴方方が我らよりも強く無ければなりません』
真っ直ぐにユーリを見つめながら、彼女は悔しそうに顔を歪めた
『…あの時、狭間に残っていた者は皆、戦いに長けた者でしたわ。皆、その時代の英雄と謳われてていた程に……その我らでさえ、『あれ』には手も足も出なかったのです』
彼女の槍を握る手に力が入る
『レグルス様とあの子は浄化の際、その場から動く事は出来ず、リゲルの力は怨霊には通じません。……その際、我らでさえ適わぬ相手に、誰が二人を守るのですか?誰が……我らが最も大切な姫を守ると言うのですか…っ!?』
語気を強めて彼女はそう言った
悔しそうな表情の彼女の目には、薄らと涙が光っていた
「ペテルギウス……お主……」
『……幾らレグルス様でも、我らは引けませんわ。……引いてはならないのです。あの日と同じ事を、もう……繰り返したくはないのです』
レグルスに対し、ほんの少し申し訳なさそうにしながらも、絶対に引かないと、彼女は告げる
『あの子も、我らの力が遠く及ばないことを知っておりますわ。……貴方方もそうだと分かれば、あの子はまた、自身を犠牲にする選択をするでしょう。……わたくしはもう、全てを背負おい自らを犠牲にしようとするあの子の姿を、見たくありませんわ』
「……それはオレらも同感だな」
睨むのをやめながら、ユーリは口を開いた
「ああ、そうだね」
ユーリの隣にいたフレンもゆっくりと口を開く
「僕らだって、もう彼女に全てを背負わせたくはない」
そう言いながら、フレンは剣を抜いた
「だな。いい加減頼ってもらわねえと、オレの心臓も持ちそうにねえわ」
ユーリも自身の刀を抜こうとしたが、その手をベガが止めた
「おいおい……その手、離してくんない?」
『………そっちは、ダメ……』
俯いたまま、小さく、傍にいるユーリでさえ聞こえるか怪しい声で、ベガは呟いた
どこか迷いのある声に、ユーリは首を傾げた
『……ユーリさん、白雷、使って』
意を決したように、ベガは顔を上げると、真っ直ぐにユーリを見つめた
「おいおい……これ、大事なもんなんだろ?」
困り顔でユーリはベガに問いかける
『………いいよね?レグルス様』
そう言って、ベガはレグルスの方を見た
「……ベガがそう言うのであれば、何か意味があるのだろう。好きにするがいい」
半ば諦め気味にレグルスはそう言い、ユーリ達から離れた
後に続くように、カープノスもその場から離れる
「……わかったよ。リゲル、ベガ、お前らも離れてろ」
白雷を抜きながらユーリがそう言うと、二人は顔を見合せ、嫌々ながらも、レグルス達の元へと向かった
「んでもよ、お前さん方、攻撃してもなんともないんでしょ?どう勝敗つけるのよさ」
弓を取り出しながら、レイヴンはペテルギウスに問いかける
『あの四人と違い、我らは攻撃が当たればダメージを受けますわ。ですが……わたくしが武器を手放したら、と言うのが一番わかりやすくて良いでしょう』
エアルクレーネから離れながら、ペテルギウスはそう言った
「というか、あんた一人に、あたしら全員でかかっていいわけ?」
戦闘態勢を取りながら、リタは首を傾げた
『…まさか、さすがにわたくし一人ではありませんわ』
そう言うと、槍を地面に突き刺し、両手を組みながら目を閉じた
『…我が呼び掛けに答えよ、『ベリウス』』
彼女が呟くと、その側に魔法陣が浮かび上がる
そこから出てきたのは、
「なっ……!?」
ベリウスが出てきた事に、一同は驚き、戸惑った
既に精霊となっているはずの彼女が、なぜ
「うそ……どうして……」
一番驚いていたのは誰でもない、エステル本人だった
自身のせいで命を落としたはずの彼女の姿に驚き、口元を手で覆った
『これは一種の幻のようなものですわ。……ここにいるベリウスは、わたくしの記憶にある彼女の姿。これに意思はありません』
閉じていた目を開きながら、ペテルギウスはそう告げた
濃いオレンジ色の瞳は、真っ直ぐにユーリ達に向けられていた
『貴方方全員と一人で戦うのは、さすがに荷が重いですから』
そう言って、再び槍を手にした
『……やめるなら、今の内ですわよ?わたくしは……貴方方を、殺すつもりで行きますから』
「はっ!上等だっ!」
ニッと笑いながら、ユーリはペテルギウスを見た
「こんなとこで怖気付いてちゃ、シアの背負おうとしてるもんなんて背負えるもんかってんだ!」
「ユーリの言う通りだ。ここで引く訳にはいかない!」
二人はそう言って、武器を構えた
『…では、参りましょう』
ペテルギウスの言葉を合図に、戦いの火蓋が落とされた
「虎牙破斬っ!!」
『旋月刃っ!』
ユーリとペテルギウスの技がぶつかり合う
戦闘開始から数分……
ペテルギウスの相手を、ユーリとフレン、レイヴンとラピードが
残ったメンバーでベリウスの相手をしていた
「さすが、自分で英雄だった、なんて言うだけあるわねえ……こりゃ埒が明かんわ」
苦笑いしながら、レイヴンはユーリの援護に回る
「無駄口叩いてっと、足元掬われるぜおっさん!!」
ペテルギウスの攻撃を避けながら、ユーリは少しだけレイヴンを見た
「はいはいっ!わかってますよっ!」
そう言ってレイヴンは少しペテルギウスから距離をとる
「風よ起これ、さっと吹いて斬れ……ウィンドカッター!」
レイヴンの放った術が、ペテルギウスを僅かに掠めた
『…っ!!』
少し慌てて、彼女はユーリから距離をとり、詠唱を始めた
『… 飛散せよ、流転の泉!スプレッド!』
ペテルギウスを追いかけようとしたユーリの目の前に水の柱が立つ
間一髪の所で、ユーリは攻撃を右に避けた
が、それを狙っていたかのように、防御の薄くなった右側目掛けて、ペテルギウスが突っ込んでくる
「っ!!ユーリ!!」
少し後方にいたフレンが駆け寄ろうとするが、二人の位置的にペテルギウスの方が早くユーリに近づいてしまう
さすがにこれは避けられそうにないと、ユーリは小さく舌打ちをした
ここで負ける訳にはいかない
だが、回避する方法もない
そう考えていた時だった
『……ユーリ』
頭の中で懐かしい声が響いた気がした
その瞬間、無意識に、ユーリは白雷を右手に持ち替え、彼女の攻撃を防いだ
防いだ事に気づくのに数秒かかったが、それに気づくと、勢いのまま彼女の槍を薙ぎ払った
『………っ!』
槍はそのまま、彼女の手から離れ宙を舞い、後方へと落ちて行った
『……わたくしの負け、ですわね』
両手を顔を位置まで上げながら、彼女は目を伏せた
パチンッと彼女が指を鳴らすと、ベリウスの姿は消えていた
「はっ……はぁ……か、勝ったの……?」
肩で息をしながら、カロルが問いかけてくる
「……ああ、そうみたいだな」
右手の中にある白雷を見詰めながら、ユーリはそう答えた
『…お見事ですわ』
白雷から目を離し、ペテルギウスの方を見ると、彼女の瞳は先程までの濃いオレンジ色から、アリシアと同じオレンジ色へと変わっていた
彼女は悔しそうながらも、どこか満足したように微笑んでいた
「…ペテルギウス、少しばかりやりすぎだ」
戦闘が終わった事に気づいたレグルスは、こちらに歩み寄りながら、厳しい声でペテルギウスにそう言った
『申し訳ないとは思っておりますわ。ですが……『あれ』の力は、それ程までに膨れ上がってしまっていたのですわ。このわたくしが、ほんの少しの恐怖を抱く程度には』
そう言いながら、ペテルギウスは俯いた
「だとしてもだ。真にアリシアの事を思うのであれば、これがやりすぎだと言うことはわかるであろう?」
咎めるように、レグルスはペテルギウスを見つめた
『……我らが守るべきはずだったあの子に守られ……少し、気が動転していたのかもしれませんわ』
沈んだ声で彼女はそう答えた
彼女の中で、アリシアは守るべき存在であり、その彼女に自身が守られてしまった事が、どうしても許せなかったのだろう
それは自分の役目なのに、と
「…やりすぎてしまう程に、怨霊の力は強い…という事なんですよね…?」
少し遠慮気味に、エステルは問いかける
『…それを免罪符にするつもりはありませぬが……その通りですわ』
エステルの問いかけに、彼女はようやく顔を上げる
不安と恐怖……それが、彼女の表情から読み取れた
『さぁ……約束通り、彼女の欠片をお渡し致しましょう。……ユーリさん、白雷を』
「あ、ああ……」
少し考え耽っていたユーリは、突然声を掛けられ驚くがすぐに白雷をペテルギウスの方へ向ける
彼女の中から出てきた光の玉は、白雷の中へと消えていった
『完了ですわね』
彼女はそう言うと、再び指を鳴らした
今度は飛ばされた槍がその場から姿を消していた
『……ペテルギウス、お前の
少し嫌そうにしながら、カープノスは問いかける
『あら、その辺に転がっていると思いますわよ?』
先程までと違い、優しげな声で彼女は答えた
『……探せと言うことだな』
小さく舌打ちをしながら、ブツブツと文句を言いつつも、カープノスはペテルギウスの
『…ユーリ?大丈夫??』
白雷を見つめて動かないユーリを心配して、リゲルは抱きつきながら問いかけた
「…ん…?……ああ……平気だよ」
そう言って軽く頭を振ると、白雷を鞘へ収めた
『ね?白雷で、よかったでしょ?』
リゲル同様、ユーリに抱きつきながら、ベガはニコッと笑った
イタズラが成功した子どものような無邪気な笑顔は、アリシアもよく浮かべていた笑顔とそっくりだった
『ベガ……貴女、何を見たのですか?』
不思議そうに、ペテルギウスはベガに問いかける
『…………言えないし、言わない。でも、何があっても、アリシアはこっちに帰ってくる。……絶対、帰ってくる』
ムッと頬を膨らませながら、ベガはペテルギウスを少し睨んだ
『それにしても……ユーリ相手に、本気で殺しにかかるって……それ、ホントに殺しちゃってたら、どうするつもりだったの?』
リゲルはそう言って、ペテルギウスをジトッと見つめた
『…そうですわね。リゲルの言う通りですわ。……申し訳ありませんでした』
そう言って、彼女はユーリ達に頭を下げた
「…んま、そんなに怒る必要ないでしょ」
武器をしまったレイヴンはそう言って頭の後ろで手を組んだ
「あら、どうしてかしらおじ様?」
少しだけ不機嫌そうにジュディスはレイヴンを見た
「そうなのじゃ……下手したら死んでしまうとこだっんじゃぞ?」
「確かにそうだけども……俺ら、あの戦いから一年半もまともに一緒に戦ってないのよ?」
少し唸りながら、レイヴンは言う
「何度も死線を共にした仲間とはいっても、さすがに一年以上間が経ってちゃ、本番で連携ガッタガタ……みないな事になりかねないでしょーよ」
言われてみると、それもそうではあった
確かにあの日以降、
ユーリに関しては、それに殆ど参加していない
あの時と同じように、すぐに連携が取れるかと問われれば、正直微妙なところではあった
「…なんか、おっさんに言われるのムカつくわ……」
ほんの少し悔しそうにリタはそう言ってレイヴンを睨んだ
「経験の差ってやつよ、リタっち。苦楽を共にした仲でも、ちょっと時間が経ったら連携が上手くいかない……なんて、よくある話しよ」
そう言ったレイヴンはどことなく寂しげだった
「そう考えると、悪い事ばかりではない…という事ですね」
レイヴンを見ながら、フレンは言った
「そそ!本丸とやり合う前の準備運動って考えましょーよ」
パチンとウィンクをしながら、レイヴンは答えた
「だが……ペテルギウスでさえこうなると言うことは……他の者達も同じ事を考えている可能性は高いな」
若干面倒くさそうにレグルスは呟いた
『そうでしょうね。特にシリウスは……
………彼にとって、アリシアはレグルス様以上に大切な子ですから…。あの子の行動に、怒り狂っていなければ良いのですが』
ペテルギウスはそう言って眉を下げた
「もしかして……この先も、今みたいな事が起きるかも……って、事……?」
若干嫌そうにしながら、カロルはレグルスに問いかけた
「……そう言うことだ」
短く答えると、レグルスは大きくため息をついた
「全く……どいつもこいつも……アリシアの事を思うならば、そんな事をしている暇はないと言うのに……」
ブツブツと小さな声で、彼は文句を言う
この先も、彼らとの戦いが待っているのかと考えると、フレン達も彼が文句を言う気持ちがわかる気がしていた
一刻も早く、欠片を集めたいのに……
そう思っていた時だった
『………レグルス様、大丈夫だよ』
ベガはゆっくりと口を開く
『……大丈夫、予定通り、だよ』
少し迷いながらも、彼女はそう口にした
「ベガ……お主、そう言うのであれば、もっとわかりやすく教えてくれぬか?」
呆れ気味に言いながら、レグルスはベガを見た
『……だって、言えないから……大丈夫、としか、あたしは言ってあげられない』
申し訳なさそうに、ベガはそう言う
「喋ったら未来が変わっちゃうんだっけ?」
首を傾げながら、カロルはベガを見た
『……詳しく話せば、未来は変わってしまう。アリシアが、帰って来れなくなる……だから、あたしは言えない……アリシアは必ず帰ってくるとしか、言えない』
頑なに言おうとしないベガにレグルスは呆れ気味にため息をついた
「……わかった。ならばもう聞かん」
レグルスの答えに、安心したようにベガは息をついた
「だが、アリシアが戻った時には……何を見たのか、しっかりと聞かせてもらう。そのつもりでいるのだぞ?」
ほんの少し厳しめの声でレグルスはベガに言う
それに、彼女は無言のまま頷いた
『……戻ったぞ』
タイミング良く、カープノスがその場に戻って来た
『見つかりましたか?』
ニコニコと笑顔を浮かべながら、ペテルギウスはカープノスを見る
その顔には先程までの殺気も、不安の影も残っていなかった
『……ああ』
気まづそうに、彼は顔を背けた
『カープノス、次に空に
嫌味ったらしく、彼女はカープノスに向かってそう言った
『……そもそも壊されるなどと思っておらん』
不機嫌そうな声でカープノスは返した
『あら?壊されるかもしれないという可能性を考えなかった、と?二代目当主ともあろう方が、不測の事態を想定しなかったと……?』
ニコニコと笑顔を浮かべて、ペテルギウスはカープノスに歩み寄る
『貴方、それで本当に当主だったのですか?』
身体を屈めて、下から見上げるようにカープノスの顔を彼女は見た
グッと彼は喉を鳴らした
『……ほら、見たことか、初代。やっぱりこうなった』
ペテルギウスから顔を背けるように、カープノスはレグルスを見た
「……お主ら、それは後でやれ。今はそんな事している場合ではないだろう…」
呆れたようにため息をつきながら、レグルスは額に手を当てた
顔を合わせると、いつもこうなる二人に、彼は飽きれていた
『そうだよ、ペテルギウス。……僕だって、昨日の続き、我慢してるんだから、カープノスに突っかかるの、後にしよ』
ユーリから離れながら、リゲルはムッと頬を膨らませた
「……あんた、まだ昨日のこと根に持ってたのね」
『当たり前だよ。もう一度やらないと、気が済まない』
呆れ気味に聞いたリタに、ほんの少し不機嫌そうにリゲルは答えた
『あら、リゲルにも何かしたんですか?』
意地の悪い笑みを浮かべて、ペテルギウスは問いかけるが、当の本人は素知らぬ顔でそっぽを向いていた
「お主ら……いい加減にせんか!」
レグルスがそう怒鳴った瞬間、急に空が曇り始め、ゴロゴロと雷の音が辺りに響い始めた
「むむ……さっきまで晴れておったのに、急に曇ったのじゃ」
空を見上げながら、パティは首を傾げた
『……おい、早く引き上げるぞ』
カープノスはそう言って、一人先に歩き始めた
「こりゃ本気で雷落ちてきそうねえ……俺らもさっさと戻りましょ」
両手で二の腕を擦りながらレイヴンが言うと、他の者達もカープノスの後に続いて、少し小走りで船へと向かった
船についたところで、先程までいたエアルクレーネのすぐ側に雷が落ちたのが一行の目に入った
「ほ……本当に落ちたよ」
若干引き気味にカロルは呟く
『ね?言ったでしょ?…雷、落ちるかもって』
首を傾げながらベガはユーリ達を見回した
「…シアの言う通り、マジで当たんだな」
ずっと無言だったユーリが、雷が落ちた方向を見ながら、苦笑いしてそう言った
『……少しは、信じてくれる?』
ユーリを見上げながら、ベガは問いかける
「これ見て信じられねえ方が不思議だよ」
そう言って笑いながら、ユーリはベガの頭を撫でた
どこか安心したようにベガは微笑んだ
「……また思い詰めているのかと思ったけど、そうじゃないみたいで安心したよ」
ようやく口を開いた幼馴染に向かって、フレンはそう言った
「ん?あー…いや、別に思い詰めてたわけじゃねえんだけど……」
どこか言いにくそうに、ユーリは言葉を濁した
今までの仲間達の様子からして、恐らく先程の声は聞こえていなかったのだろう
そう考えると、ただの幻聴だったのかもしれないと、ユーリは思っていた
「あら、私達には言えないことなのかしら?」
そんなユーリに、腕を組みながら、ジュディスは問いかけた
「……確信持てたら話すから、今は聞かなかった事にしてくれ」
手をヒラヒラさせながらそう言うと、ユーリは船へ戻って行った
フレン達は不審に思いながらも、彼がこれ以上話しそうにないと悟り、後を追うように船へと戻る
『………次に向かっていいか?』
不機嫌そうにしながら、カープノスはユーリを見た
「ああ、構わない」
ユーリの答えを聞くと、カープノスは指を鳴らした