第4部~星暦の行方と再会そして…~
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カープノスの力で、ユーリ達はフィエルティア号へと戻って来た
「あ、おかえりなさい!」
帰って来た三人に微笑みながら、エステルは言う
「おぅ、ただいま
……すっかり日が落ちちまったな」
空を見上げながら、ユーリは呟く
真っ黒な空にはキラキラと星が輝いていた
「そうだね。だから、今日は一度戻って、明日また探しに出ようと彼女達と話していたところさ」
フレンはそう言いながら、ベガとアリオトを見る
『あなたたちが無理して、倒れちゃったりしたら、本末転倒……休める時に、休んだ方がいい』
そう言いながら、ベガはユーリに引っ付いたリゲルを見る
『…リゲル、それ、ずるい』
ほんの少し頬を膨らませながら、ジト目で彼女はリゲルを見つめる
『…何がずるいのか、僕わかんない』
ずっとユーリの体に顔を埋めていたリゲルは、ようやく顔を上げた
その顔には、いたずらっ子のような笑みが浮かんでいた
『僕、戦えないのに、一人で頑張ってたんだから、このくらいいいじゃん!』
ユーリに抱きついたまま、リゲルはそう言って舌を出す
『……やっぱり、ずるい……』
ムッとしながら、ベガは小さく呟いた
「…あんたそれ、どうゆう状況なわけ?」
引っ付いているリゲルを見ながら、リタは呆れ気味に問いかける
「……それはオレが一番知りたいんだがね」
ユーリはそう言って苦笑いする
実際、訳も分からず引っ付かれているのだから、理由が知りたいのも当然だろう
『……初代、放っておいていいのか?』
呆れ気味にカープノスはそう言ってリゲルを指さした
その声に、リゲルが反応する
『……カープノス……っ!!』
ガバッとユーリから離れると、リゲルはカープノス目掛けて、勢いよく飛びついた
『……っ!?!!なっ!リ、リゲル…っ!!やめろ…っ!!』
急に飛びつかれたカープノスは、勢いそのままに後ろへ倒れた
『バカバカバカバカバカバカバカァァァっ!!!
カープノスのバカァァアァァっ!!!
なんで僕が三番目なのっ?!!!きみ知ってたよね!?僕が魔物に囲まれてるの、知ってたでしょっ?!!!
なんで後回しなんかにしたのさぁぁっ!?!!』
カープノスの襟元を掴み、前後に大きく揺らしながら、リゲルは問いただす
『…バカなの?ねぇ、バカなの…っ!?僕が戦えないの、知ってるよねぇっ?!!』
『わ……悪かった、悪かったから、いい加減…やめてくれ……っ!!』
カープノスがそう言うと、リゲルは揺らすのをやめ、勢いよくカープノスの襟元を押しながら離した
当然、すぐに対応などできず、カープノスは地面に頭を勢いよくぶつけた
『………っ!!!?!』
悲鳴こそ上げなかったものの、相当痛いらしく、頭を両手で覆った
「………あれ、何してるの?」
若干引き気味に、カロルは三人に問いかける
カロルの問いに、三人は顔を見合わせ肩を竦めた
「あー……実はね……」
レイヴンは森の中での出来事を簡潔に、残っていたメンバーに伝えた
「むむ……流石にそれは可哀想なのじゃ」
リゲルの方を見ながら、パティは言う
「そりゃあんだけ怒っても無理ないわ。……あたしなら八つ裂きにしてやるわよ」
呆れ気味にリゲルとカープノスを見ながら、リタはそう言った
「それにしても、エアルの制御ができる刀が他にもあったとはね」
「もう壊れちまったがな」
フレンの言葉に、ユーリは肩を竦めた
「そうねぇ……この先、暴走してるエアルクレーネが後二箇所残ってる訳だし、どうしたもんかねぇ」
頭の後ろで手を組みながら、少し不安そうにレイヴンは呟く
「何、一晩あれば充分だ」
そんな彼らの会話に、レグルスが混ざってきた
「一晩って……そんなに早く作れるものなの?」
訝しげにカロルが問いかける
「エアルの制御ができるだけで良いのなら容易いものだ。黒雷ように、あれもこれもとなると、話は別だが」
レグルスはそう言いながら、少し悲しげに微笑んだ
「……なあ、黒雷は復元しねえのか?」
ふと浮かんだ疑問を、ユーリはレグルスに投げかけた
精霊達の話では黒雷は復元可能だったはず
作った本人の彼ならば、それこそ、黒雷を作り直した方が早いのではないと
「……今は無理だ、黒雷の核、
「…なによ、その『
聞きなれない単語に、リタが問い返す
「……ふむ、そうか……この時代では、完全に忘れ去られているのか……」
腕を組みながら、何処か寂しげにレグルスは呟く
「……それは我よりも、カープノスの方が詳しい分野だ。……屋敷に戻ってから説明させよう」
レグルスはそう答えると、カープノスの方を向く
「リゲル、そろそろカープノスから退いてやれ」
未だにカープノスの上から退かないリゲルに対し、レグルスはあやす様に言う
『……退かなくても、屋敷まで戻れるでしょ?』
ムッと頬を膨らませながら、リゲルはレグルスの方へ顔を向けた
どうやら彼の上から退くつもりはないらしい
『…………流石に、お前が乗ったまま、は無理だ』
ほんの少し、息苦しそうにしながら、カープノスは答えた
『…ねぇ、アリオト、あれカープノス気絶しない?』
『…そうですね……リゲルがかなり負荷を掛けているみたいですし……可能性はありますね』
「……はぁ……そうなると、戻るのが面倒だ……」
そう言ってレグルスは大きくため息をつく
『でも、怒ったリゲル、止められるのって…アリシアかアルタイルくらいだし……諦めるしかないかも、レグルス様』
半ば諦め気味にベガは肩を落とす
「ユルゾレア大陸までは、バウルでもすぐに行けるけど……あの集落に辿り着くのは時間がかかるものね」
聞こえてきた三人の会話に、ジュディスが答える
『…そうですね……さすがに
アリオトはそう言って、上にいるバウルを心配そうに見上げる
「あら、バウルは強い子だから大丈夫よ」
そんな彼女に、ジュディスは大丈夫だと微笑んだ
「でもさ、気絶しちゃったら、話聞けないよ?」
カロルの言葉に、一瞬空気が凍った
確かにそれはまずい
それに気づいたリタが慌てながら、リゲルに声をかけた
「ちょっと!!後で幾らでもそいつに制裁加えていいから、今はやめなさいよっ!!」
『……やだ』
リゲルはそう言うと明後日の方向へ顔を背けた
「〜〜〜~っ!!!あんたねぇ……っ!!」
今にもリゲルに掴みかかりそうな勢いのリタをエステルとカロルが止める
「リ、リタ!!待って下さい!!穏便にいきましょう?ね、ね?!」
「そうだよ!!リタまでキレてどうするのさ!!」
「だぁーー!!もうっ!!ちょっと!!離しなさいよっ!!」
ジタバタと暴れるリタを、二人は何とか止めようと必死にしがみつく
そんな三人を見て、ユーリはため息をついて苦笑いした
「…ったく、しゃーねぇな」
そう呟くと、リゲルの元に歩み寄って、傍にしゃがむ
「……なぁ、オレら、そいつに聞きたいことあんだよ。だから、今気絶されちゃ困るんだ。後でどんだけ今やってる事やっていいから、今は抑えてくれねえか?」
優しくそう言いながら、ユーリはリゲルの頭を撫でた
『……そう言って、まただめって言うでしょ』
納得いかなかったのか、リゲルはムッとしながら問い返す
「言わねえよ。何なら、お前が飛びつきやすいように押さえといてやるって」
リゲルに話しかけるユーリの声色は、アリシアを宥めている時のものと殆ど同じだった
『……約束、してくれる?』
「おう、してやるよ」
ニッと笑いながら、ユーリはそう答えた
『……なら、いいよ』
リゲルはそう言うと、ようやくカープノスの上から退いた
『…あのリゲルが、人の言うこと、聞いた……
明日は雷、落ちるかも』
驚いた表情でリゲルを見ながらベガは呟く
『…ベガ、あなたが言うと本当にそうなってしまいますよ?』
そう言うアリオトもベガ同様、驚いた表情を浮かべていた
「え、そんなに…?」
カロルの問いかけに、レグルスは頷いた
「リゲルが癇癪を起こした際、人の言う事を聞くのは中々ない。それこそ仲が良いアルタイルか、アリシアくらいなものだ。……何故、あの青年の……」
そう言いかけて、レグルスは気づいた
それは、先程のリゲルの突然彼に抱きついた行動を思い出したからだ
『…なるほど。そうゆうことですか』
アリオトも何かに気づいたらしく、微笑ましそうにリゲルを見ていた
「……ああ、そうゆうことだろう」
半ば呆れながらも、レグルスも微笑んだ
「え、え?どうゆう事??」
レグルスを見ながらカロルは首を傾げた
「ふふ、それは言うこと聞くしかないわね」
二人が気づいた事を理解したジュディスはニコッと笑う
「はぁ?なんなのよ?」
未だ意味がわからないリタは不機嫌そうにジュディスを見た
「……リタ、それは、多分……」
「アリシアちゃんと仲のいい彼は、アリシアちゃんが大好きなユーリとも仲良くなりたいから、言うこと聞いたって事でしょーよ」
言いづらそうに言葉を詰まらせたフレンの代わりに、レイヴンが言う
その答えで、わからなかった面々もようやく納得した
「可愛いわね、彼」
クスクスと笑いながら、ジュディスはレグルスを見た
「……全く……リゲルめ……」
再びレグルスはため息をついた
リゲルがアリシアを好いているのは承知だが、その彼女が好いている青年にまで好意を持っていたのは想定外だった
「……アホくさ」
呆れたようにそう呟きながら、リタはため息をついた
「でも……とりあえず、よかったですね」
苦笑いしながらエステルは言った
「……まあ、な。……カープノス、動けるか?」
レグルスが問いかけると、彼はゆっくりと起き上がる
『……ああ。……屋敷だろ?』
カープノスは不機嫌そうにそう言うと、指を鳴らした
一行は再び星暦の集落へと辿り着いた
最初に来た時と違うのは、レグルスに呼ばれて行った屋敷の目の前にフィエルティア号が着地した事だけだろう
「……とりあえず、壊れてはいなさそうだ」
屋敷を見ながら、レグルスはホッと息を着いた
『……ふん』
リゲルに乗られていたのが相当嫌だったのか、カープノスは未だ不機嫌そうだった
「とりあえず、中へ入ろう」
フレンがそう言うと皆頷き、フェルティア号から降りた
『…リゲル、いつまでそうしてるの?』
ムッとしながら、ベガはリゲルに問いかけた
『…?なにが?』
コテンと首を傾げながら、リゲルは問い返す
『…ユーリさんの手、いつまで握ってるつもり…?』
指をさしながら、ベガは再び問いかけた
カープノスの上から退いて以来、彼はずっとユーリの右手を繋いで離さなかった
『…だめ?』
リゲルはベガではなく、ユーリにそう問いかける
「ん?いや、オレは別に…」
『…ダメ!!』
ユーリが言い切る前に、ベガが声をあげる
『…リゲルばっか、ずるい!あたしだって…アリシアがいないから、勝手にそんな事したら、後で怒られるって思って、我慢、してるのに…っ!』
その答えに、一同は呆れ返った
「あーらら……まーた一人増えちゃったわよ」
ベガの声に、レイヴンは苦笑いしながらユーリを見た
「モテる男は大変ねえ?」
何処か楽しげにレイヴンはユーリに言った
「…おっさん、うっせーよ」
若干レイヴンを睨みながら、ユーリは言う
何故こうも彼らに気に入られているかがわからないのに、そんな事言われても困る
小さくため息をつくと、左手に持っていた自身の刀を腰に差し、空いた左手をベガに差し出した
「…ほれ、ちょっとくらいなら、シアも怒んねーよ」
困り顔で笑いながらそう言うと、ベガはほんの少し躊躇いながらも、ユーリの手を取った
その顔はどこか嬉しそうな表情を浮かべていた
「……全く……お主らときたら……青年、すまないな」
「このくらい別にいいって」
謝ったレグルスに対し、ユーリはあまり気にしていないようだ
「……あの、レグルスさん、一つ聞いてもいいです?」
少し遠慮気味にエステルは声をかける
「なんだ?」
「あの二人も、元当主……なんですよね?それにしては、やけに……その……子どもっぽい……と言いますか……」
先程からユーリ達も感じていた違和感を、エステルはレグルスに問いかけた
彼女の言う通り、元当主にしてはリゲルとベガの二人は言動と行動が幼すぎる
「……空に打ち上げた星……
レグルスはそう言いながら、嬉しそうにユーリと手を繋いでいる二人を見た
『……だからと言って、あれはないだろ』
呆れ気味にカープノスは二人を見た
『…あら、無愛想なあなたよりは好感を持てると思いますよ?』
クスッと笑いながらアリオトが言うと、カープノスは顔を背けた
「というより、あいつら、いつまであそこにいるつもり?」
そう言って、リタは大きくため息をついた
既に他の面々は屋敷の入口に着いているというのに、三人は未だにフィエルティア号の側にいた
「全く……リゲル!ベガ!いい加減来い!!」
レグルスの声にハッとした二人は、ユーリの手を繋いだまま、少し小走りで動き出す
小走りの二人に対し、ユーリはいつも通りに歩いていた
『…ごめんなさい、レグルス様』
扉の前に着いたリゲルしゅんとしながらそう謝る
ベガも口には出さなかったものの、反省しているらしく、肩を落としていた
が、依然としてユーリの手を離そうとはしなかった
「……嬉しいのはわかった。が、青年も休ませてやらぬと、アリシアに怒られるぞ」
レグルスはそう言って落ち込む二人の頭を撫でた
「……本当にすまぬな」
レグルスはそう言いながらユーリを見る
「気にすんなって」
そう答えたユーリの声はどことなく嬉しそうだった
「む……ユーリも嬉しそうじゃの?」
それに気づいたパティは不思議そうに首を傾げる
「……リゲルとベガの二人が、ユーリに甘えてくるアリシアの姿そっくりだからだろ?」
若干恨めしそうな顔でフレンはユーリを見る
「……うっせーよ、フレン」
そう言ってそっぽを向いたユーリの頬はほんの少し紅くなっていた
『……いい加減、入るぞ。俺に聞きたいこともあるんだろ?』
カープノスはそう言って扉を開けた
先に入っていくカープノスの後に続いてユーリ達も中へ入る
最初に来た時と違い、今度は最初から部屋の扉があった
カープノスは廊下の突き当たりの扉の前に立つと、その扉を開け、中へ入った
追いかけるように、ユーリ達も扉を潜ると、そこは最初にレグルスと対話した部屋だった
『……全員が聞く訳にもいかないだろ。休む奴は休め』
扉の向かい側の席に腰掛けながら、カープノスは言う
『…では、私はあなたが飛ばした
アリオトが問いかけると二人は一瞬、顔を見合わせる
すぐに頷き合うと、アリオトの方を向いて同時に口を開く
『もう少し、ユーリといたい』『もう少し、ユーリさんといたい』
綺麗にハモらせながら、二人は確かにそう言った
『…わかりました。ユーリさん、二人をお願いしてもいいですか?』
困ったように笑いながら、アリオトはユーリに問いかける
「ああ、構わねえよ」
さすがのユーリも苦笑いしながらそう返した
ユーリに軽くお辞儀をすると、アリオトは部屋を出て行った
「カロル達も休んだらどうだ?」
ユーリはそう言って、自身の後ろにいるカロル達を見る
「うん、そうしようかな。ボクには理解出来そうにないし…」
「うちもそうするのじゃ」
「わたしも……少し休もうと思います」
カロル、パティ、エステルの三人はそう言うと部屋を後にした
残ったユーリ達はそれぞれ席に座る
カープノスの真正面にユーリが
その両隣に、くっつける様にベガとリゲルは椅子を並べそこに座り
ベガの隣にフレンとレイヴン、リゲルの隣にリタとジュディス
そして、カープノスの隣にレグルスが腰掛けた
『……お前ら……いつまでそいつにくっついてるつもりだ?』
大きく息を吐きながら、カープノスはユーリの両隣にいる二人に声をかける
『…いいじゃん、別に』
ムッと頬を膨らませながらリゲルが言う
『…カープノス、もうリゲルに乗られたいの?』
こちらも同じく頬を膨らませながらベガが言う
『……もういい。話が進まん』
カープノスは諦め気味にそう言うと、ユーリ達を見る
『……お前らが知りたいのは『
「ええ、そうよ」
リタが頷くと、少し面倒くさそうにしながら口を開いた
『
ゆっくりと、カープノスは言葉を続ける
『……当時の人間は、空気中に存在しているのはエアルではなく、マナだと思い込んでいた。……実際はエアルが存在していたわけだがな』
ぶっきらぼうに彼はそう語った
「嘘……そんな昔に、マナの存在が認知されていたなんて……」
遥か昔に、既にマナの存在が知られていた事に、リタは驚きを隠せずにいた
『……当時はエアルの存在の方が御伽噺のような存在だったのだ
……だが、
……エアルを力に変える……つまり、我ら星暦や満月の子の力が必要だった。マナとは、エアルと物質の中間の存在……
「でも、それでは普通の人が使えないのでは?」
そうフレンが問いかけると、カープノスは頷く
『そうだ。……だから
どこか蔑むように、カープノスは言う
「なるほどね……だから、
納得したようにリタは呟く
「っつーことは……白雷と黒雷にも、その
自身の腰にある白雷に目を落としながらユーリは言う
『……その通りだ。そして、黒雷を再生させる為には、黒雷の
ユーリの言葉に、カープノスはほんの少し苛立ったような口調でそう告げる
「あの時壊れてしまった…という訳では無いのかしら?」
カープノスの方を見ながらジュディスが問いかける
『……
少しムッとしながらカープノスは答えた
「作ったって……黒雷はレグルスが作ったんじゃねぇのか?」
『…白雷も黒雷も、形を作ったのは、確かにレグルス様……でも、その内部に埋め込まれた
ユーリの問いかけに答えたのはベガだった
『…次いでに、当主の力と魂を、空に星として空に打ち上げる
ほんの少し不機嫌そうに、リゲルが付け足した
「ん……?でも、それって、つまり……」
「……カープノスは我の次の当主。我からみると玄孫になるな」
レグルスの答えに四人は驚いた
彼の次の当主となると、カープノスは二代目の当主という事だ
レグルス同様、千年近い時を生きてきたことになる
『…カープノス、レグルス様大好きだから……星喰みを満月の子が退けた後、カープノスに当主を譲って、前線から引いたレグルス様が、アムリタ使って長生きしようとして、異形な姿になるの、嫌だったんだよね』
どこか嫌味ったらしくベガは言いながら、カープノスを見る
『…だから、星と白雷と黒雷の
力がある当主なら、
力がなくても、白雷と黒雷があれば、いつでも、残った子孫と話せるから』
どこか呆れたような口調で喋りながら、リゲルはカープノスを見た
二人の視線に耐えきれなくなったのか、カープノスは顔を背ける
「……じゃあ、二つの宝刀は……星喰みを退けた後に作られたのか」
『…うん、そうだよ。黒雷に、エアルを鎮める力を付けたのは、星暦の数が減って、小さな歪みをちまちま消していくのが大変だったから』
フレンの呟きにリゲルが答えた
「……おい、あんたさっき、『白雷のことはこれで全部』って言ってなかったか?」
半分睨みながら、ユーリはレグルスに問いただす
『……ごめんね、ユーリさん。レグルス様、説明するの苦手。何を聞いてたかわかんないけど……多分、もっと聞いてないこと、出てくる』
呆れながら、どこか申し訳なさそうに、ベガはユーリを見上げる
「……いや、お前のせいじゃねえから、謝んなくていいって」
そう言って、ユーリはベガの頭を撫でた
「……ねえ、
ジト目でカープノスを見つめながら、リタは問いかける
『……ああ、
そう言いながら、カープノスはレグルスの方へ顔を向けた
『……初代、俺に愛想を求める前に、その説明不足なところを何とかしろ。俺にまで飛び火している』
半分睨むようにカープノスはレグルスを見つめる
「……すまぬ。どうも苦手なのだ」
レグルスはそう言って肩を竦めた
「…ねね、ベガちゃん、あれ本当に好いてるの…?」
レイヴンは小さな声でそう問いかける
『……うん、あれがカープノスなりの、愛情表現だから』
ベガはそう言って、ニコッと笑う
五人は少し顔を見合わせた後、前に座る二人に顔を向けた
目の前では、カープノスがレグルスに苦言を呈しているところだった
『……大体、初代は当主だった頃からそうだ。説明不足で何度他の奴らに怒られたと思ってるんだ?……満月の子らにだって、結局初代の説明が足りてなかったせいで、俺が説明させられてただろ』
「何故今その話を持ち出すのだ…!?」
『今同じ事が目の前で起きてるだろ?!どうせ怨霊の事も、浄化の事も、ちゃんと話してないだろ!?』
「それは…………話す前に
『……今一瞬考えただろ…?!ただ話すの忘れてただけだろ?!』
五人の事など頭から抜けているのか、二人の言い合いは止まらない
『大体、さっきも、あの刀が限界近かったのわかってただろ?!何故自分から飛び込んだ!?昔からその無鉄砲で無茶する癖を治せと、何度俺が言えばわかる?!!』
「お主にだけは言われたくないわっ!!世界の監視などと抜かしておったが、精霊化しきれなかった
「……シアのあの性格の元祖は、レグルスとカープノスってわけか……」
二人の言い合いを聞きながら、ユーリは大きくため息をついた
先程自分の言う子を聞かないなどと言っていた人物が元祖だったなど、考えるだけで頭が痛くなった
『うーん……それはちょっと違うかなぁ……』
困ったように笑いながらリゲルが言う
「えっと……どういう事だい?」
首を傾げながらフレンが問いかける
『…確かにアリシアは、隔離遺伝でレグルス様の要素を多く発現してる』
『容姿もそうだけど……生まれ持った力もレグルス様そっくり。性格は……確かにレグルス様そっくりだけど、そっちは多分、僕らと長くいたせい』
『無鉄砲でお転婆で、無理無茶するのは…みんなの十八番だもんね』
そう言ってベガとリゲルは顔を見合わせた
「……なんかあたし、頭痛くなってきたわ……」
「まさか、彼女を止めてた本人達が、みんな揃ってそうだったなんて……」
リタは頭を抱え、ジュディスは苦笑いした
「……ユーリ、この先も苦労しそうだね……」
「……だな……」
そう言ってユーリとフレンも苦笑いする
「あのー……ところでぇ……あれ、どうするよ?」
遠慮気味にそう言いながら、レイヴンは二人を指さした
言い合いはまだ終わりそうにない
「どうするって言われてもなあ……」
ユーリがそう言った時、彼らの後ろの扉が勢いよく開かれた
ユーリ達が驚いて振り返ると、そこにはドス黒い笑みを浮かべたアリオトが立っていた
『あ、アリオトー……ちょっとあの二人、止めてよ』
呆れ気味にリゲルはそう言って二人を指さす
『ええ……そのつもりで来ましたから』
ニコッと笑うと、アリオトは静かに二人の方へと歩み寄る
二人の背後に立つと、尚言い合いをやめようとしない二人の頭に、どこから取り出したのか鉄扇を振り下ろした
『…っ!?!!』「〜〜っ!?!?」
鉄扇が落ちた箇所を手で抑えながら、二人は振り返った
そして、そこに立っているアリオトを見てほんの少し青ざめる
『ア、アリオト……戻って来たのか……』
『ええ、
そう問いかける彼女の声色は普段の優しい声色のままだが、目が完全に据わっている
「…いや……これは、だな……」
やってしまったと内心思いながら、レグルスは何か言い訳をと考えるが、上手い言い訳が思いつかずにいた
『……彼らも早く休ませてあげねば、明日に支障をきたします。そのどんぐりの背比べのような言い合いは、後に回して下さいますか?』
ニコッと笑いながら、彼女は二人に問う
いや、実際には、はい、以外の答えはありえないのだが
「……すまぬ」『……悪かった』
二人の答えに満足したらしいアリオトは頷くと、鉄扇をしまった
『……お見苦しところをお見せして申し訳ありません。さて……レグルス様が我々星暦に関して話していないのは……怨霊と浄化について、ですね』
レグルスとカープノスを左右に退け、空いた場所に椅子置き、腰掛けながら、アリオトはユーリ達に問いかける
「あ、ああ……そうだな」
少し驚きながら、ユーリは頷く
「『怨霊』って言葉自体はシアから聞いたが……」
『…あの子では説明が不足しているかもしれませんね。……怨霊とは、人のみならず生きとし生けるものが、その寿命を迎える時、極稀に発生するもの
…本来全てがエアルと還るのが自然の摂理ですが、死に際に、恨みや憎しみと言った負の感情が強い者が生み出す、意思のあるマナの塊です
普通であれば、放っておいても問題はありません。人一人の怨念など小さく、世界を滅ぼすような影響はでませんし、放っておいても、勝手に消滅しますから』
言い合いをしていた二人に代わり、アリオトはゆっくりとそう告げる
『……でも、たまにそうゆう、負の感情が一箇所に溜まりすぎて、くっついて、大きくなる事がある』
『…大きくなっちゃうと危ないから、時々浄化をする。浄化は、負の感情のマナをエアルへと還元する力……これは、星暦にしか、できないこと』
アリオトの説明に補足するように、ベガとリゲルは交互に言う
「それって具体的に何が問題なのよ?」
頭の後ろで手を組みながら、レイヴンが問いかける
『…怨霊は負の感情のマナの塊、マナと生命エネルギーは近い性質だから、怨霊は、生きるもの全てに取り憑こうとする……もし取り憑かれたら、その負の感情から、他者も自身さえも、殺そうとする』
『その負の感情が大きければ大きい程、その規模は膨れ上がります。……憎悪と呼んでいる『あれ』は、この世界を滅ぼせるだけの力を持っているのです』
『…今は狭間に閉じ込められてるけど……いつ抜け出して来ても、おかしくない。そうなったら……もう、誰にも止められない』
シン……と部屋が静まり返る
自分達が思っていた以上に事態は深刻なのだと、ユーリ達は理解した
「でも、それをあなた達は鎮める力を持っているのよね?」
沈黙を破ったのはジュディスだった
真っ直ぐにアリオトを見つめてそう問いかける
その問いに、彼女は悔しそうにしながら首を横に振った
『…当主であった頃なら、多少浄化する事ができたでしょうが……』
『今のあたし達は、当主だった時に最も強い力しか持っていない……今、『あれ』を浄化できるは、アリシアとレグルス様だけ……』
『それも、どちらか片方じゃ多分だめ……二人揃わないと、『あれ』には敵わないと思う』
そう答えたベガとリゲルもまた、悔しそうな表情を浮かべていた
「…何にせよ、シアの力の欠片ってやつを揃えきらないと、何も始まらねえって事だな」
「ああ、そうゆう事だね」
そう言って、ユーリとフレンは顔を見合わせた
「……うん、何となく分かったわ。だからあの子、あの時あんな無茶したのね」
そう言って、リタは顔を顰めた
「そういや、そのアリシアちゃんの体って、どうなってるのよ?」
ふと浮かんだ疑問を、レイヴンは投げかける
「言われてみれば…僕らはレグルスさんが用意するとしか聞いていないね」
そう言ってフレンは顎を指で摘んだ
「そうね。でも…さっき精霊達は、再生中だと言っていなかったかしら?」
首を傾げながら、ジュディスはフレンの方を向く
『……初代、それも話していないのか…?』
睨み気味にカープノスはレグルスを見た
「だから、話す暇がなかったのだと何度」
『レグルス様?』
再び言い合いが始まりそうな雰囲気に、アリオトはニコッと笑いながらレグルスを見る
ほんの少し殺気立った雰囲気に、レグルスはグッと喉を鳴らした
「……いや、なんでもない……」
はぁ……と大きくため息をつくと、レグルスはユーリ達を見た
「…確かに用意する、と言ったが、どちらかと言うと精霊の言う通り、再生に近い」
「再生って…一体どうやって?」
「…我とアリシアがよく似ているのは既に知っているな?」
リタの問いかけに、レグルスは問い返す
五人は首を傾げながらも、それに頷いた
「力の欠片の残滓……お主が集めている力の欠片から、ほんの僅かに溢れた欠片よりももっと小さな、彼女の力の欠片と、我の身体の一部を使っている」
レグルスの答えに五人は驚く
「…それって、本当に成功するの…?」
少し掠れた声でリタは問う
「…正直、これは賭けだった。幾ら容姿が似ているとはいえ、成功する確率はほんの僅かだったのは事実だ」
ほんの少し声を落として、レグルスは答える
「…だが、賭けには勝った。再生は殆ど終わっている」
「殆ど…って、完全じゃねえって事だよな…?」
不安そうにユーリが問いかけた
そんなユーリの顔を、ベガとリゲルも不安そうな表情で見上げた
「アリシアの一番得意としている浄化の力の欠片…それがまだ見つかっておらん。雷と氷の力もまだだ
……だが、九つの力さえ揃えば、その三つは自然と戻って来る」
その答えに、ユーリは不安げな表情を浮かべた
『……大丈夫だよ、ユーリさん』
ユーリの手を両手で握りながら、ベガが声をかける
『……ちゃんと、アリシアは帰ってくる。……三つの欠片は、時が来たら、ちゃんと戻ってくるから』
真っ直ぐユーリの目を見ながら、ベガはそう告げる
『…ベガがそう言うなら、大丈夫だね。ベガが言う事は、決して外れないから 』
そう言って、リゲルもユーリの手を握った
「……そうだな、シアもそう言ってたしな。…二人とも、サンキュな」
未だ少し不安そうにしながらも、ユーリは二人に笑いかけた
『……ベガ、お前……まさか、どこに三つの欠片があるか、知っているのか?』
ベガの方を見ながら、カープノスが問いかける
『…………言えない、未来変わっちゃ……嫌だから。これ以上は何も…言わない』
ムッとしながら、ベガはカープノスから顔を背ける
そんなベガの行動にカープノスとアリオトはほんの少し違和感を感じていた
『………それよりも、もう遅いから、今日はあなたたちも、寝た方がいいよ』
ベガはそう言うと、ユーリ達を見回した
「……ああ、そうだね」
「
「そうね。これ以上は明日に支障が出るわ」
「おっさんも、もうクタクタよ…早く寝ましょ」
四人はそう言うと立ち上がって、扉の方へと向かう
『……ユーリも、行こ?』
未だ立ち上がっていなかったユーリに、リゲルが声をかける
「…あ、ああ……そうだな」
そう呟くと、ゆっくりと立ち上がる
『……アリオト、あたし、ユーリさんといる』
ベガはそう言って立ち上がった
『…じゃあ、僕もそうする』
同じようにリゲルも立ち上がる
『…ええ、わかりました。…ユーリさん、どうか、しっかりと休んで下さいね』
「…おう、わかってるよ」
そう言って、ユーリはベガとリゲルと共に、部屋を後にした
部屋を出て先程フレンに引っ張って行かれた場所と同じ扉を開ける
先程と同じ内装の部屋は、幸いと言うべきか、誰もいなかった
腰に下げていた二振りの刀を壁に立てかけると、ベッドに背中から倒れこんだ
『…ユーリ、大丈夫…?』
心配そうに、リゲルが顔を覗き込んでくる
「…ん?…ああ……平気、とは言えねえか…」
ほんの少し苦笑いしながら、ユーリは答えた
つい数時間前まであった不安が、先程の会話で一気に込み上げてきてしまっていた
『……大丈夫、大丈夫だよ。……今は、大丈夫としか、言えないけど……でも、大丈夫だから』
少し申し訳なさそうに、でも、しっかりと伝わるようにと、ベガは強くそう言った
「…その言葉、信じるさ」
そう言って、ユーリは心配してくる二人の頭を撫でた
「……さて、少し寝るとしますかね」
二人の頭から手を退けると、体の向きを整えて寝る体勢に入った
『……ね、歌おうか?』
首を傾げながら、ベガは問いかける
「子守り唄歌ってもらうような歳じゃねえって」
困り気味に笑いながら、ユーリはそう答えた
『…アリシアが好きな歌だから……聞いたら、少し安心できるかなって……』
しょんぼりとしながら、ベガは答えた
「……わかったよ、お願いしてもいいか?」
彼女に似た姿に、ユーリはすぐに白旗をあげた
これはどう頑張っても、星たちに勝てそうにもないなと、心の中で思う
ベガは少し嬉しそうな表情を浮かべると、リゲルと顔を見合わせて、一緒に歌い出す
それは、以前、彼女も歌っていた歌だった
声は確かにアリシアと違う筈なのに、どこか彼女を思い出させるような歌い方に、ユーリはゆっくりと目を閉じた
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残った三人は顔を見合わせる
『……初代、どう思う?』
「……あれは、確実に、何か隠しているな」
二人はそう言い合って、大きくため息をついた
『普段なら、どんな事が起こるか、事細かに言いますものね。……『言えない』という事は……』
『……ああ、間違いなく、アリシアから何か言われてるな』
「アリシアに口止めされると何も言わなくなるのは、リゲルにカストロ、ポルックスやアルタイルだけだと思っていたが……ベガもか……」
『なら、この状況は、彼女の意思、なのでしょう』
アリオトの言葉に、二人は項垂れた
反応といい、仕草といい、全く同じ行動を取る二人に、アリオトは半ば呆れていた
『……そうなると、だ。
『ええ……彼女は『
『…ああ。あの子の事だ。……きっと、俺らにさえ言わずに、また無茶してるんじゃないのか?』
そう言うと、アリオトの横にいるレグルスを睨みつけた
『……初代、どうするんだ?』
「……どうするも何もないだろう……欠片は探さねばならぬ。あの子の手のひらの上……と言うのは少々癪ではあるが……」
大きく息を吐きながら、レグルスは顔を上げた
「……ところでお主ら、何故アリシアに本当のことを話していないのだ?」
呆れた顔をしながら、レグルスは二人を見た
「お主らなら、正しい歴史を教えられただろう?」
『……ああ、その事か』
『…レグルス様、それは……ーーーーーーーー』
アリオトは簡潔に何故話さなかったか、彼に伝える
聞き終えるとレグルスは、納得したように苦笑いした
「確かに……それは言えんな」
『……だろう?』
そう言って、カープノスは天を仰いだ
『……全く……俺らの姫は、本当に世話が焼ける……初代のせいだぞ?』
「……お主……まだ言うか……!」
カープノスの言葉にレグルスが反応し、再び言い合いの続きが始まった
言い合う二人にため息をつきながら、アリオトは席を立った
『…世話が焼けるのは、アリシアだけではありませんね……』
誰に言うわけでもなく、そう呟きながら、彼女は窓の外の空を見上げた
真っ黒な空に輝く星を見つめ、言い合う二人の声を聴きながら、ほんの少しだけ彼女は笑っていた