第4部~星暦の行方と再会そして…~
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ドスンッと大きな音を立てて、フィエルティア号は地面に着地した
目を瞑っていたユーリ達が目を開けると、そこはテムザ山の山頂だった
「うわ……目、目が……チカチカする……」
クラクラと頭を揺らしながら、カロルが呟いた
「こ、これが……船酔いってやつ……?」
船のヘリにもたれかかりながら、少し気持ち悪そうにレイヴンが言う
「カープノス……お主、もう少し優しく出来ぬのか……」
盛大にため息をつきながら、レグルスはカープノスを見た
『……ふん』
彼の問いに答えず、カープノスはそっぽを向いた
「全く……皆、無事か?」
やれやれと首を振りながら、レグルスは問いかける
「な、なんとか無事ではあります……」
若干の吐き気を覚えながらも、フレンがそう答えた
「……暫くは動けそうにないな……カープノス、次はもっと加減をしろ。毎回こうでは時間が掛かるだろう」
小さな子を叱るかのように、レグルスは彼にそう告げた
『……善処する』
不機嫌そうに、カープノスはそう答えた
「……にしても……なんでこんなとこに、シアの力の欠片が?」
ユーリの問いかけに、レグルスは何かを思い出したのか、ハッとした表情を浮かべる
「……すまぬ。我が話さなければならぬ事が話せてなかったな」
そう言うと、彼はその場に腰を下ろした
「アリシアの力の欠片はあの子と繋がりのある地に散って行った
……ここもその内の一つ、ここは……人魔戦争で、二体の
レグルスの言葉をユーリ達は静かに聞いていた
「二体の内、一体は彼女と仲がよかった。……エルシフル、という名に聞き覚えはあるか?」
「デュークの友の
ジュディスの返しにレグルスは頷いた
「そうだ。……彼もまた、この地で命を落とした……もう一体の
レグルスはそう言って、空を見上げた
時刻は夕方が近かった
ほんのりと、空は赤みがかってきている
「……これから向かう場所は、全てではないが、アリシアに馴染みのある地が多い。こやつらも…思うところがある場所もあるかもしれんがな」
レグルスはそう言って、隣に佇むカープノスを見た
彼は特に何か言うわけでもなく、顔を背ける
「……さて、そろそろ動けるか?」
そう言ってレグルスは立ち上がる
ようやく、気持ち悪さも落ち着いてきたユーリ達もそれに続くように立ち上がる
船を降りると、崖のすぐ側に今度はオレンジ色の髪のリタと同じくらいの背丈の少女が立っていた
ユーリ達の気配を感じたのか、彼女はゆっくりと振り返る
『……待ってたよ、ユーリさん』
凛と澄んだ声で、彼女はそう言った
ユーリを見るその目は半分閉じかかっているものの、やはり瞳はオレンジ色だった
「あんたがベガ、か?」
ユーリの問いかけに、ベガはゆっくりと頷く
『うん……そうだよ』
ニッコリと笑顔を浮かべて、彼女は答えた
「ベガ、アリシアの力の欠片は?」
『ちゃんとここにあるよ、レグルス様』
レグルスの問いに答えながら、彼女は胸に手を当てた
すると、彼女の中から小さな光の玉が出てくる
『……ユーリさん、白雷、あたしに向けて?』
ユーリは言われるがままに、白雷を彼女に向ける
ベガの手の中にあった光の玉はゆっくりと白雷の方へと飛んでくると、そのまま、白雷の中へと消えて行った
『……はい、これで終わり』
ニコッとベガが笑う
「……え、これだけ?」
唖然としながらリタが問いかける
「ああ、これだけだ」
そんなリタにあっけからんとレグルスはそう答えた
彼の返答が気に入らなかったのか、リタの中で何かが切れた
「……さ………先に言いなさいよっ!!!」
キッとレグルスを睨みながら、リタは怒鳴り声をあげる
なにかもっと、大変なことが待っているのだろうと思っていたからだ
「う、うむ……すまない……」
リタの気迫に押されたのか、若干引き気味にレグルスはそう言った
『……全く、初代は相変わらず、言葉足らずだな』
『……無愛想なカープノスには、言われたくないと思う』
そんなレグルスを、カープノスとベガは少し呆れ気味に見ていた
「と…ところで、ベガよ、お主も知っていると思うが……」
リタから逃れようとしてか、レグルスはベガに話しかける
『…うん、知ってる。……アリシア、また無茶してるんでしょ?』
彼の言葉を遮るように、ベガは言葉を繋いだ
『……大丈夫、予定通り、だから』
そう言って、彼女は微笑んだ
「……『予定通り』?」
ベガの答えにレグルスは首を傾げた
『…うん、予定通り。未来は変わらない』
詳しく話すつもりはないのか、彼女はただ同じ言葉を繰り返す
「未来は変わらない…って、どうゆう事?」
そう言って、カロルは首を傾げた
それが知りたいのはカロルだけではない
他の面々も同じように思っていた
「……そういや、シアが言ってたな……『ベガの予言は当たる』って」
ふと、思い出したように、ユーリは呟いた
「では……アリシアは必ず帰って来る……という事ですか?」
『うん、変わっていないから』
まるで機械のように、彼女はまた同じ言葉を繰り返した
『…俺も大概かもしれんが……ベガ、お前もだな』
『……これ以上は聞かないで欲しい……うっかり口が滑っちゃいそうだから……』
少し申し訳なさそうに眉を下げながら、彼女は頼んでくる
「むむ……聞いちゃいけんのかの?」
コテンと首を傾げながら、パティは問いかける
『…………喋って、未来が変わったら……嫌だから』
ほんの少し考えた後、彼女はそう言って首を竦めた
「……そっか、ならもう聞かねーよ」
彼女の返しに若干の違和感を覚えながらも、ユーリはそう答える
『…ありがとう』
ニコッと笑うと、彼女はゆっくりとユーリ達に近寄ってくる
『…さ、次行こう?』
「あんたも着いてくるのか?」
ユーリの問いかけに、ベガはゆっくりと頷いた
『…アリシアが本体落としたせいで、あたしたちも地上を移動するしか、移動手段ないから……』
困ったように肩を竦めながら、ベガは苦笑いした
「……その星の回収もせねばならんな……」
大きくため息をつきながら、レグルスは額に手を当てた
『星なら、アリシアの欠片の傍に落ちたはず……ほら、そこ』
そう言ってベガは、フィエルティア号の右側を指差す
ユーリ達がその方向を向くと、白い球体が転がっていた
「うはぁ、後ちょっとズレてたら船の下敷きになってたわよ、これ…」
あらら、と肩を竦めながらレイヴンが言う
『きっと、皆の所にもあるよ。……カープノス、屋敷まで飛ばしてくれる?』
『……ああ』
カープノスは短く答えると球体の側まで行き、そっと左手を添える
そして空いている右手の指をパチンッと鳴らすと、一瞬にして球体はその場から姿を消していた
『……これでいいか?』
『うん、多分』
クスッと笑いながらベガは答える
「えと……どうして多分なんです?」
エステルはそう言って首を傾げた
『…カープノスが、屋敷のどこに飛ばしたかまではわかんないから……変なところに飛んでなければいいね、レグルス様』
どこか楽しそうに笑いながら、彼女はレグルスを見た
「……この際、アリシアの体がある場所でなければどこでもいい。……屋敷が壊れてなければいいが……」
半ば諦め気味にレグルスは答えた
「……壊れる可能性、あるんだ……」
若干引き気味にカロルは呟く
『……ふん。……それよりも、次に行かなくていいのか?』
カープノスはそう言うと、さっさとしろとフィエルティア号を指さした
「へいへい……わかりましたよ」
ユーリが歩き始めると、それに続くように他の面々も歩き出す
全員が乗り込んだことを確認すると、カープノスはまた指を鳴らした
次に着いたのはアスピオの跡地……今はもう以前の面影はどこにもない
山は崩れ、元々山があった場所に墜落したタルカロンが横たわっていた
フィエルティア号は、そのタルカロンの上に降り立った
「ホント……いつ見ても、あんまいい気しないわね」
不機嫌そうにリタは呟く
彼女からしてみれば、故郷の跡地なのだから、それも仕方ない事だが…
「あ……誰かいるよ!」
ユーリ達が船から降りようとしていると、こちらに近づいてくる人影が彼らの目に入る
朱色の胸の高さ程で切りそろえられた髪をなびかせながら、その人物はゆっくりと歩いてくる
船に近づくと、地面を蹴って船のヘリまで飛び上がってきた
船のヘリに足をつけると、ゆっくりと顔を上げる
「アリオト、無事で何よりだ」
レグルスは飛び上がって来た人物にそう告げる
『…時が来ましたね。レグルス様』
ニッコリと微笑みながら、アリオトはレグルスを見た
『…お久しぶりですね、ユーリさん。こうして会うのは初めてですが』
そう言って今度はユーリを見た
アリシアと同じ目で、彼女はユーリに笑いかける
「……ああ、そうだな。オレによく話しかけて来たのはあんただったな」
聞き覚えのある声にユーリは少し懐かしさを感じた
ニコッとユーリに笑い返すと、彼女は少し真剣な表情でレグルスを見た
『……憎悪は動いたのですね』
「……ああ」
アリオトの問いに、レグルスは短く答えた
『では、急がねばいけませんね。…ユーリさん、白雷をこちらに』
小さく深呼吸をすると、再びユーリの方を見る
ユーリは頷き、白雷をアリオトに向ける
先程同様、彼女の中から小さな光の玉が現れ、白雷の中へと消えて行った
『…終わりましたね』
『…終わったならばアリオト、お前の星はどこだ?』
どこか不機嫌そうにカープノスはアリオトに問いかける
『…カープノス、あなた、彼らにもそんな風に語り掛けていたのですか?』
先程よりも、ほんの少し低めの声で咎めるようにアリオトはカープノスに問いかけた
『……ふん』
『…アリオト、カープノスに何言っても無駄…カープノスは愛想、どっかに捨ててきちゃってるから』
顔を背けたカープノスを半ば呆れ気味に見ながら、ベガは言う
『……アリシアが帰ってきた時、怒られても知りませんよ?……私の星はあちらに』
そう言ってアリオトが指さした方向に、カープノスは無言で向かって行った
「彼、人と話すの苦手なようね」
クスッと笑いながら、ジュディスが呟いた
「うーん……話すのがっていうか、人と関わるのがって言った方が近いんでない?」
頭の後ろで手を組みながらレイヴンもクスリと笑った
「そうですね……あまり、僕ら話したいというような雰囲気ではありませんね」
レイヴンの言葉にフレンが頷いた
「なんか、出会ったばっかの時のリタに少し似てるよね」
カロルはそう言いながらリタを見た
「はぁ?どこがよ?」
「あ、それ少しわかります!あまり人と関わり合いたくないと言うか……」
「自分以外誰も信用出来ねえって感じの口調がよく似てるよな」
エステルとユーリにそう言われ、出会ったばかりの時の事を思い出したのか、リタはほんのりと頬を赤らめた
「あ、あたしはあいつよりもマシだったでしょ!!」
「えぇ…そうかなぁ?」
そんな事ないと思うけど、とカロルは首を傾げる
「のじゃ。リタ姐とどっこいどっこいだと思うのじゃ」
カロルに同意するようにパティもカロルの隣で頷いた
その答えが気に入らなかったのか、リタは右手で拳をつくって二人の方を向く
「……殴るわよ?」
「ちょっ!!暴力反対!!」
慌てて、カロルはバッグで頭をガードし、パティは逃げようと一歩後ろに下がっていた
『…ふふ、賑やかですね』
『…うん、そうだね』
そんな面々をアリオトとベガの二人は微笑ましそうに見守っていた
『……これが、アリシアがいつも見ていた光景、なんだよね』
『ええ、そうですね。……彼女が命を懸けてでも、守りたいと願った光景なのでしょう』
そう言い合った二人はどこか羨ましそうにしていた
「……お主らも会話に混ざって来たらどうだ?」
二人の感情に気がついたレグルスはそう問いかける
その問いに、アリオトはゆっくりと首を横に振った
『いいえ、レグルス様。あそこはアリシアの居場所であり、私たちが安易に踏み入る訳にはいきません』
『……そうだよ。今は……アリシアが、いつも見ていたものを見られるだけで、あたしたちは充分……』
『それにまだ、彼女から仲間の紹介をしてもらえていませんからね。帰ってきたら……ちゃんと紹介してもらわなければいけませんね』
二人はそう言ってレグルスを見て微笑む
「……そうか、お主らがそう言うのであれば、好きにするがよい」
レグルスもまた、二人を見て微笑んだ
『……おい、戻ったぞ』
そこにカープノスが戻って来る
『おかえりなさい、見つかりましたか?』
『……ああ、ちゃんと屋敷に飛ばしておいた』
ぶっきらぼうに彼はそう答える
「うむ……お主ら、そろそろ次へと向かうぞ」
レグルスはそう言って、ユーリ達を見る
「ああ、わかった」
ユーリの返事を聞くと、カープノスは再び指を弾いた
ーーーーーー
一行が次に着いたのはケーブモック大森林のすぐ側だった
「こりゃひでぇ……」
森を見て、レイヴンは顔を顰める
その声に、いつものふざけた様子は無い
木々は以前よりも更に巨大化しており、森も以前より範囲が広くなっていた
「エアルクレーネの暴走、ね」
真剣な表情で森を見つめながら、ジュディスが呟く
「こんな風になってしまうなんて……」
あまりにも異常な状態にエステル達は息を飲んだ
「……ふむ……少し妙だな」
レグルスは冷静にそう呟いて森を見つめた
「妙って何がだ?」
ユーリはそう言ってレグルスを見た
「エアルクレーネの活発化が起こったのはこの半年……だったな?」
「え、ええ、そうよ」
レグルスの問いに、ハッとしながら、リタは答える
「ならば、周辺のエアルがもっと異常な量になっていてもおかしくないはずだ。だが、見た限りでは周辺のエアルに異常はない。妙だとは思わないか?」
そう言ってレグルスはリタを見た
「……言われてみば、確かにそうだわ……他の二つの活発化してるエアルクレーネの周辺は、エアルが異常な量になってるのに……」
「もしかして、アリシアが何か関係してます?」
エステルはそう言って首を傾げた
そんな彼女を全員が見る
「あ、あれ……?だって……ここにも、アリシアの力の欠片があるから来たんですよね……?」
全員に見つめられ、驚いた彼女は少し遠慮気味にそう問いかけた
『……確かに……ここの彼女の力の欠片なら、何かしていてもおかしくはありませんね』
どこか腑に落ちたような声でアリオトが呟いた
「ここの欠片の力とはなんなのじゃ?」
三つ編みを揺らしながらパティは首を傾げる
『……守護の力だ』
短くカープノスがそう答える
「……リゲルか。なるほど、それなら合点がいく。あやつならエアルを鎮めることはできなくとも、結界を貼り、外に漏れないようにする事はできる」
納得したようにそう言うと、レグルスは再び森に目を向けた
「……だが、そうなると厄介だな……あの中のエアルの量は異常などという、可愛い言葉では済まぬくらいに、濃度が高くなっているだろう」
「おいおい……それじゃ入れないじゃない」
顔を顰めながら、レイヴンはレグルスを見る
『…ううん、あなたたちなら、入れるよ』
ベガはそう言って、ユーリの傍に来る
『…あなたたちには、旧星暦の集落で、石化していた同胞達が掛けた、加護がある。…エアルの濃度が高くても、短時間で戻って来れば影響ないよ』
言いながら、ベガはユーリを見上げた
その仕草が、ほんの少しアリシアに似ていて、ユーリは少し目を見開いた
「……あんたらといると、心臓に悪いわ……
それ、シアがあんたらに似たの?」
ほんの少し苦笑いしながら、ユーリは問いかける
『……?あぁ…仕草とか、口調のことだったら、似たのはアリシア』
「……んじゃ、仕方ねえか」
ベガの答えに、ユーリはため息をつきながら、頭を搔いた
「全く……彼らの方がアリシアよりも長く生きているんだから、似たのは彼女なのが当たり前だろう?」
呆れ気味にフレンはそう言ってユーリを見る
「……うっせーよ、フレン」
そう言って、ユーリはフレンを睨む
睨みつけてくる彼の頬がほんのりと紅くなっているように、フレンには見えた
「今そんな事言ってる場合じゃないでしょ。それ、後にしてくれる?」
呆れ気味にリタはユーリをジト目で見る
「へいへい……悪かったですよ」
フレンを睨むのを止めると、ユーリはリタに向かって手をヒラヒラとさせた
「んで……加護って言ったよな?あれって結局なんなんだ?」
気を取り直して、ユーリは自身を見上げてくるベガを見た
『加護とは、同胞達の最後の願い……世界を破滅へと導くものを、子孫であるアリシアと共に、倒そうとしていたあなた方へ与えた護りの力です』
ユーリの問いに最初に答えたのはアリオトだった
『……それは、エアルの影響からも、お前らを守る』
『…でも、ちょっと不完全。エアルが濃すぎる空間に長くいるのは危ない、かも』
アリオトの言葉に補足するように、カープノスとベガが告げる
「……では、向かうのは少人数の方がよいだろう。暴走した魔物も出るだろうからな」
「あら、彼に頼んでそこまで飛ばしてもらうことはできないのかしら?」
腕を組みながらジュディスが問いかける
「恐らく欠片があるのは、エアルの濃度が最も濃いエアルクレーネの側だろう。いきなり濃いエアルの中に飛ばすのは、リスクが高すぎる。徒歩で入り、徐々に慣らした方がよい」
レグルスはそう言うと、ユーリ達を見回す
そして、一通り見回すと、ユーリを見つめた
「……我と青年は共に行くとしてだ。……後二人だな」
「って事らしいが、どうする?」
ユーリはそう言うと、自身の後ろにいた仲間達を見る
「とりあえず、あたしとエステル、カロルは留守番決定ね」
ほんの少し悔しそうにしながらもリタは言った
「え?なんでです?」
首を傾げてエステルは問いかける
「エアルの濃度が異常って言うなら術メインのあたしとエステルはまともに戦えない可能性が高い。特にエステルは、精霊のお陰でエアルに干渉する量が弱まっているとはいえ、濃いエアルの中で力を使ったらどうなるかわからないし……カロルはそもそも、あの中の魔物とまともに戦えないじゃない」
そう言って、リタは二人を見た
彼女の言う通り、この二人が森に入るのはリスクが高いだろう
「……そうですね。リタの言う通り、ですね」
渋々ではあるものの、エステルはそれに頷いた
「ボ、ボクもちょっと……ここは遠慮したい、かな……」
怯え気味にカロルも頷く
「それじゃ、私が行こうかしら」
そう言ってジュディスがユーリの側に来る
「私、術は使わないから」
彼女はそう言って、ニコッと笑う
「だな。んじゃ、後一人……ラピード、お前はどうする?」
足元にいるラピードに、ユーリは問いかける
「いや、やめて置いた方がいい。人間と違い、小動物はエアルの影響を大きく受ける。加護がついていたとしても、この者が入るのは危険だ」
ラピードを連れて行こうとするユーリを、レグルスは制止した
「……だとよ。今回はお前も留守番だな」
ユーリはラピードの傍にしゃがむと、その背を撫でた
「……ワフゥ…………」
何処か寂しげに、ラピードは鳴く
「平気だって。……すぐ戻る」
そう言ってラピードの頭を撫でると、ユーリは立ち上がった
「んで、どうする?フレン、おっさん、パティ」
ユーリは残った三人を見る
「むぅ……うちは今回は役に立てそうにないから、やめておくのじゃ」
ほんの少し悔しそうにしながら、パティはそう言った
「そうさねぇ…パティちゃんも術多めだし、今回はお留守番の方が良さそうね」
頭の後ろで手を組みながら、レイヴンはフレンの方を向く
「……んで、どうするよ?フレンちゃん」
「……そうですね……」
そう言いながら、フレンは残ったメンバーを見回す
「……レイヴンさん、行ってもらえますか?」
意を決したように、フレンはレイヴンを見る
「おろ?おっさんが行っちゃっていいの?」
ほんの少し驚いたようにレイヴンは問い返す
「はい……本音を言えば僕が行きたいですが……森から魔物が出てこないとも限りません。その時、僕が残っていた方がいいかと」
少し悔しそうにしながらも、フレンは真っ直ぐにレイヴンを見つめていた
「……そうさな……俺じゃ嬢ちゃん達を守りながら戦うのは無理だしねぇ。…んじゃ、行ってくるとしますか」
レイヴンはそう言うと、ユーリとジュディスの方へ歩み寄る
「ってことらしいわ」
そう言って、レイヴンは二人を見た
「足引っ張んなよ、おっさん」
「頑張りましょ、おじ様」
「おうよ!」
三人はそう言い合うと、レグルスを見る
「……準備はいいようだな」
レグルスはそう言うと指を鳴らす
すると、彼の手の中に大太刀が現れる
どことなく白雷に似た刀を懐かしげに見つめると、それを腰に下げた
「カープノス、リゲルの元につき次第呼ぶ。星の回収を頼む」
『……ああ』
短い答えを聞くと、レグルスは船から降りる
その後を追いかけるように、ユーリ達も船から降りた
「……行くぞ」
レグルスはそう言うと、森に向かって歩き始めた
ーーーーーー
「うっはぁ……ホントにエアルが濃いわ……」
辺りを漂う黄色い光に、レイヴンは顔を顰める
森の中も以前来た時と雰囲気がかなり変わっていた
以前よりも更に木々は巨大化し、陽の光は全く入って来ない
「こんなに濃いなんて……」
辺りを警戒しながら、ジュディスが言う
「これ、シアの力の欠片を回収したら、どうなんだ?」
ユーリも顔を顰めながらレグルスを見る
「……何も対策せずに回収すれば、この辺り一体のエアルが異常な量になるな。すぐ側に見えた街まで広がる危険がある」
真っ直ぐ前を見つめたまま、レグルスは静かにそう告げる
「……そりゃ笑えないわね」
ほんの少し、レイヴンの声が低くなる
「対策しなければの話だ。その為に、我は来たのだ」
レグルスはそう言って、腰に下げた刀に触れた
「黒雷のような力はないが……この刀にも、エアルを鎮める力がある。多少は鎮める事が出来よう」
そう告げたレグルスの表情はどこか懐かしそうだった
「それも、あんたが作ったのか?」
レグルスの腰にある刀を見ながら、ユーリは問いかける
「ああ、そうだ」
「黒雷があるのに、何故かしら?」
不思議そうにジュディスは首を傾げた
「……白雷も黒雷も、本来非常時に使用する目的で作ったのだ。歴代の当主達も、通常時は各々が得意とする武器を作り、持っていた。……非常時以外で両方を使うのは、ライラックとアリシアくらいのものだ」
呆れたようにレグルスはため息をついた
「全く…何故二人揃って宝刀を振り回すのか…
宝刀の意味を理解していないのか……?」
ほんの少し肩を落としながら、彼は足を進める
「……あんたも大変だな」
「……何、我の子孫達が言うことを聞かぬのは、今に始まったことでは無い。星となった者たちも、アリシアが言う事を聞かんと文句を言っておったが……彼らとて、我の言う事など聞かぬ存ぜぬだったからな」
歩く足は止めずに、レグルスは振り返る
困ったような笑顔を彼は浮かべていた
「問題児はアリシアちゃんだけじゃなかったのねえ……」
たはは、とレイヴンも呆れ気味に笑う
「こりゃ無理無茶も、シアの専売特許って訳じゃなさそうだな」
それに釣られて、ユーリも困ったように笑った
「ふふ、だって彼女は誰よりも星たちと多くの時間を過ごしたのだもの、似ても仕方ないわ」
クスッと笑いながら、ジュディスは言う
「……にしても、さっきから魔物、あんまり出てこないわねぇ」
辺りを見回しながらレイヴンは不思議そうに呟く
以前来た時はそれなりに魔物の姿を見ていたが、今は影も形もない
「前みたいに、エアルクレーネに近づいた瞬間、うようよ出てこなきゃいいが……」
ほんの少し面倒くさそうにユーリは言う
「……その可能性は捨てられぬ。常に警戒しておいた方がいいだろう」
レグルスはそう言って、再び前を向く
鬱蒼とした森の中、徐々に周りを漂うエアルの光が赤みを帯び始める
「だいぶエアルが濃いわ……」
ほんの少し息苦しそうに、ジュディスが呟く
「……これ以上はエアルが濃すぎるな……」
そう言ってレグルスは足を止める
後ろを歩いていたユーリ達もそれにならって足を止める
「……この辺りで一度、鎮めておくとしようか
お主ら、少し下がっていろ」
そう言うと、レグルスは刀の柄を握り、鞘から刀を抜いた
三人は彼から離れるように後ろに下がった
それを確認すると、レグルスは刀を柄を両手で握り、左へ引いた
「……はぁ!!!!」
そして勢いよく右へ振った
すると、急に風が吹き上げる
突然の出来事に、三人は目を閉じた
風が止み、三人が目を開くと、先程まで異常な量だったエアルが収まっていた
「……すげぇな」
ポツリとユーリが呟きながら、レグルスの元へと歩み寄る
「……後一回が限界だな」
レグルスは自身の手の中にある刀を見ながら、そう言った
ユーリがその刀を見ると、刀身には若干の亀裂が入っていた
「次使えば壊れる。濃度が低い内に、エアルクレーネまで辿り着かなければ」
顔を上げながら、レグルスは告げる
「……ああ、そうだな。急ごう」
ユーリはそう言って頷く
少し駆け足で、彼らは再び奥へと足を進めた
先程の場所から数分、再びエアルの濃度が濃くなり始めていた
「またエアルが濃くなってきたわ」
辺りを見回しながらジュディスは顔を顰めた
「エアルクレーネ、そろそろ見えてもいい頃だと思うんだけどねぇ……」
ほんの少し息苦しそうにしながら、レイヴンが言う
「この辺りのはずだ、おっさん、もうちょい踏ん張れ」
自身の後ろにいるレイヴンの方に少し顔を向けながらユーリは声をかける
「なんのこれしき…!まだまだ若人に負けちゃいらんないわよ…!!」
額に汗をかきながらも、レイヴンはニッと笑う
「……見えた!」
不意にレグルスが声を上げる
三人がレグルスが見ている方向を見ると、自分達よりも少し低い位置に、エアルクレーネとその側で蹲る少年の姿、そして……
多くの魔物の姿が見えた
『もう……っ!!こっち来ないでよ……っ!!』
泣きそうな声で少年は魔物に向かってそう怒鳴り声を上げていた
「!!リゲルっ!!」
レグルスはそう名前を呼ぶと、魔物の群れへ向かって飛び降りた
「っ!!オレらも行くぞ!!」
そう声をかけると、ユーリもレグルスに続いて飛び降りた
その後に二人も続く
リゲルと呼ばれた少年と魔物の間に降り立つと、四人は武器を構えた
「我はエアルを鎮める!」
レグルスはそう言って、後ろを向く
「なら、私たちは魔物の相手ね」
どこか楽しげにジュディスはニヤリと笑った
「だな。気合い入れろよ、おっさん!」
ジュディス同様楽しげな声で、ユーリはレイヴンに声をかける
「うへぇ……おっさんもうヘトヘトなんだけど……ま、やるしかないわね」
疲れたと言いながらも、レイヴンも魔物に向かって弓を構える
「行くぜ!」
ユーリの合図で三人は魔物に向かって行った
手前の魔物をユーリとジュディスが
背後に回ろうとする魔物をレイヴンが撃ち落としていく
「リゲル、もう少し耐えよ」
そんな三人の後ろで、レグルスは蹲る少年にそう声をかけた
『……レグルス様……?』
小さな声でそう呼びながら、少年は顔を上げた
オレンジ色の瞳には薄らと涙が溜まっていた
右手でそっと彼の頭を撫でると、レグルスはエアルクレーネを見据える
再び刀を抜き、今度は刀を振り上げる
「…………はぁっ!!!」
一瞬躊躇いを見せたが、真っ直ぐに、エアルクレーネに向けて、刀を振り下ろした
再び風が吹き上げ、ユーリ達も魔物も、動きを止める
風が止んだ時には、エアルクレーネの暴走は収まっていた
それに気づいた魔物達は、ゾロゾロとその場を去って行った
「……終わり、かしら?」
武器を収めながら、ジュディスは振り返る
二人も武器を収め、彼女同様振り返った
「………ああ……終わりだ」
どこか寂しそうな声でレグルスは答えた
その時、彼の手の中の刀がパキンッと音を立てて崩れていった
「…………お疲れだったな……」
崩れ、消えていく刀を寂しそうに見つめながら、レグルスは微笑んだ
刀が壊れた事に三人が驚いていると、レグルスはゆっくりと三人の方を見た
「……寿命だったのだ。千年も昔に作った物だからな……壊れても致し方ない」
寂しげに彼はそう言って笑う
「……それでも、あんたにとっては大事な物だったんだろ?……なんか、悪かったな」
少しバツが悪そうにそう言いながら、ユーリは頭を搔いた
「……何、また作ればいい事だ。お主らが気にすることでは無い」
レグルスはそう言うと、未だに地べたに座り込んでいるリゲルの傍にしゃがむ
「…無事か?リゲルよ」
青い短髪を優しく撫でながら、レグルスは問いかける
『……お……遅いよ……!!レグルス様も、ユーリも……!!!』
そう叫んで、いよいよ泣き出した
『怖かった……っ!!!ずっと魔物に囲まれて、怖かった……っ!!僕、皆みたいに戦えないのにっ!!』
そう言って泣く姿はアリシアそっくりだった
「あ、ああ……そりゃ悪かったよ」
肩を竦めて、苦笑いしながら、ユーリはリゲルを見た
「その文句はカープノスに言ってやるがいい。向かう順番を決めたのはあやつだからな」
『……っ!!カープノス……っ!!僕、絶対許さない……っ!!』
キッと目を釣り上げながら、リゲルは立ち上がる
背丈は恐らくカロルくらいだろう
どこからどう見ても小さな子どもにしか見えない
「リゲル、そろそろ泣き止まんか?アリシアの欠片を渡して欲しいしな」
困り気味に微笑みながら、レグルスはリゲルの頭を撫でた
『……あ…そうだったね……』
目元に溜まった涙を服の袖で拭くと、リゲルはユーリを手招きする
ユーリが傍に来ると、彼は胸に手を当て、小さな光の玉を取り出す
それを見たユーリは、彼に言われる前に白雷を彼に向けると、光の玉は白雷の中へと収まった
『……ん、終わったね』
まだ少し涙声のまま彼はそう言うと、不意にユーリにしがみついた
「……っと?!…あー……どうしたんだよ?」
ほんの少し困った顔をして、しがみついて来たリゲルにユーリは声をかける
『……なんとなく、こうしてみたかっただけだから…………だめ?』
ユーリを見上げながら、リゲルは首を傾げる
「……っ!……別に、だめじゃねーよ」
アリシアそっくりな仕草に戸惑いながらも、ユーリはそう言って彼の頭に手を置いた
そうすると、少し嬉しそうに笑い、再び顔をユーリの体に埋めた
「あらら……ホント、アリシアちゃんそっくりな事するわねえ……」
頬を指で搔きながら、レイヴンは二人を見た
「ふふ、ユーリも形無しね」
クスッとどこか楽しそうに笑いながら、ジュディスは腕を組む
「全く……ところでリゲル、お主の星がこの辺りに落ちてきてないか?」
軽くため息をつきながら、レグルスはリゲルに問いかける
リゲルは何も言わず、代わりに自身の左側を指さした
四人がその方向を見ると、先程も見た白い球体が転がっていた
「……呼ぶのは少々気が引けるが……致し方あるまい……」
レグルスがスっと息を吸い込む
それを見たユーリは、咄嗟にリゲルの耳を塞いだ
「カープノス!」
空に向かってレグルスが声をかけると、彼のすぐ側に、カープノスが姿を現す
『……あれか』
短く言うと、彼は球体の傍に行き、球体を屋敷へと飛ばした
『……ついでだ、このまま戻るか?』
ほんの少し面倒くさそうな表情で、彼は問いかける
「ああ、リゲルが気づく前にそうしてくれ……」
苦笑いしながら、ユーリに引っ付いたままのリゲルを見てレグルスは言う
『…………? わかった』
ほんの少し不思議そうに首を傾げながら、カープノスは答えると五人と共にその場から姿を消した