第4部~星暦の行方と再会そして…~
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
帝都を出てから数時間
バウルに乗った一行は、ユルゾレア大陸の上空へ辿りついていた
「空からでもわかるくらいに霧で包まれていますね…」
下を見下ろしながらエステルはポツリと呟く
上空からでも分かるほど、ユルゾレア大陸のほぼ全域を濃い霧が覆っていた
「ユーリ…この中を一人で歩き回ったの…?」
ジト目でユーリを見つめながらカロルは問う
その問にユーリは答えずただ視線を逸らした
「あんたねぇ…いくら何でも無謀すぎるんじゃないの?」
「リタの言う通りね。何の情報もなくこの中歩き回るなんて、自殺行為じゃないかしら?」
「……悪かったって」
リタとジュディスの言葉に、ユーリは肩を竦めた
「まぁまぁ、ユーリを説教するのはアリシアちゃんに任せて、俺らはこれ以上言わないでおきましょーよ」
ユーリを睨みつけているリタをそう言ってレイヴンが宥める
「…そうね、あたしらの言葉より、あの子の言葉の方が何倍も反省できるでしょ」
レイヴンの言葉に少し不服そうにしながらも、彼女は睨むのをやめた
「もう充分反省してるつもりなんだが…」
ユーリは困ったように苦笑いをした
「えっと…あの、ユーリ、白雷に反応はあります?」
「ん?…いや、今はないな」
自身の左腰に下げた白雷の柄に触れながらそう答える
「…ユーリ、一つ気になる事があるんだが…」
ユーリの腰に下げられた白雷を見つめながら、聞きづらそうにフレンが声をかける
「なんだ?」
「その…白雷は確か、黒雷の写し……って話だよね?」
「あぁ、シアはそう言ってたが…」
「君が以前、黒雷を持っていた時もさっきのように星の声が僕らにも聞こえていただろ?あれは君がアリシアから渡されたペンダントと黒雷が揃って出来たことだった。写しである白雷でも同じことが出来るのであれば、なんでアリシアはあの時白雷も一緒に隠さなかったのか…と、思ってさ」
そうフレンに言われ、皆が違和感に気づいた
アレクセイに囚われた際、彼女は自身の力を制御するための黒雷を隠し、白雷だけを手元に残していた
だがフレンの言う通り、白雷にも同じことが出来るのであれば、白雷も同様に隠したはずだ
「…言われてみりゃそうだな……
これをシアが持ってりゃ、アレクセイの奴も星との会話が出来たはずだ。…あいつはそんなこと望んでなかったから黒雷を隠したわけだしな…」
そう言いながら、ユーリは白雷を掲げて見つめる
柄と鞘が漆黒だった黒雷とは違い、どちらも純白の白雷をじっと見つめていると、青白い光を帯び始めた
『ふむ…どうやら近くに来たようだな』
そして再び、辺りにレグルスの声が響いた
「あ…あぁ、確かに近くまで来たが…」
『…その刀が気になるか』
「聞いてたのか?今の話」
『あぁ。…気になるのであれば教えてやる。だが今はまず我との合流が先だ。この先の道は、お前が彼女から託されたペンダントが示す。その
レグルスの声は、言いたいことだけ告げ聞こえなくなり、白雷の光も消えてしまった
「…ったく、毎度こっちの話は聞かねーな」
大きくため息をつきながら、ユーリは白雷を下ろした
「それで?行先はペンダントが教えてくれるみたいだけど?」
そう言いながらジュディスはユーリの首にかかっているペンダントを見つめる
「示すって言ってもねぇ…なーんにも反応無さそうだけどねぇ?」
ジュディス同様、レイヴンもペンダントを見つめながら首を傾げた
「一度外してみたらどうだい?」
フレンの提案に、ほんの少し嫌そうな顔をしながらも、ユーリは首から下げていたペンダントを外し手のひらに乗せる
すると、光の筋が真っ直ぐと霧の中に向かって伸びていった
「この光を追って行けばいいんじゃない?!」
皆が驚いていると、少し興奮した様子でカロルは光の射す方を指した
「…そうね、今はそれしか方法はないし、そうしましょ」
「わかったわ。バウル、お願い出来るかしら?」
ジュディスの言葉に、任せろと言うように鳴くとバウルは光の射す先へと高度を落としながら真っ直ぐに進んで行く
地面が近づくにつれ、どんどんと霧が濃くなっていく
ボヤけて見えていた景色もやがて真っ白に変わっていった
目印はペンダントの光のみだ
「…真っ白で何も見えないですね…」
エステルは不安そうに辺りを見回す
「ええ……正直進んでるのかさえわからないわね」
リタもまた、不安そうな声で呟く
「うーむ……上から見た何倍も真っ白なのじゃ…」
「こんな所、目印無しじゃ迷って出られないよ…」
「……ユーリ?」
少し怯えているカロルの肩に手を乗せながら、フレンは何か言いたげにユーリを見つめる
「だから、悪かったって言ってるだろ」
何を言いたいのか察したユーリは投げやりに答えた
「こうして霧の中入ると、ユーリのあんちゃんがどんだけ無謀な事したかよくわかるわ…」
そう呟いて、苦笑いしながらレイヴンは霧の中に射す光を見つめていた
「…お?そろそろ着くみたいよ?」
光を見つめていたレイヴンが皆の方を振り向きながら指を指した
その声にユーリ達は彼が指す先を見た
確かにペンダントの光とは別の小さな光がその先に見えていた
段々と近づいて行くと、目を開けていられないほどの強い光に覆われ、皆揃って目を閉じた
光に慣れ始め彼らがゆっくりと目を開けると、辺りに霧はなく、代わりに見えたのは沢山の建物だった
霧を抜けてすぐの開けた空間ににゆっくりとバウルが船を下ろす
皆船から降りると、辺りを見渡した
ミョルゾで見たような建物が所かしこにあり、集落と言うよりは町と言った方がいいほどの広さだった
「…ここが、星暦の集落……」
「建物の状態がすごくいいですね…今もまだ住んでいる人が居ると言われてもおかしくないです…」
エステルの言うように建物の欠損は少なく、今でも誰かが住んでいるのではないかと思わせるほど、綺麗な町並みを維持していた
『無事ついたようだな』
ユーリ達が辺りを見渡していると、不意にレグルスの声が響く
「あぁ。んで?オレらはどこに向かえばいいんだ?」
『この集落の中心部、周りよりも少し小高い場所に建っている建物だ』
その言葉に一行は集落の中心であろう方向に顔を向ける
その視線の先には、確かに周りより小高くなっており、一軒の家が立っていた
『我はそこにいる。…待っているぞ』
そう言うと再び彼の声は聞こえなくなってしまった
「『そこにいる』…って、どうゆう事だろう?」
不思議そうにカロルは首を傾げた
それもそのはずだ
レグルスには実体がないはずなのだから
「んー…もしかしたら…アーセルム号の時みたいにガイコツが動いたり…」
「そ、そそ、そんなわけないでしょ…!!!」
ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべながら呟いたレイヴンの言葉を遮るように、リタは悲鳴じみた声を上げる
非科学的な存在が苦手な彼女らしい反応だろう
「あら、ガイコツじゃなくて、透明な人型のお化けかもしれないわよ?」
「うーむ、どっちにしても、リタ姐は外で待っていた方がいいかもしれんのぅ」
「三人共、そのくらいにしてください!リタが可哀想です!」
レイヴンに続いてお化けが出る可能性を示唆したジュディスとパティの言葉に、エステルは反応した
「リタ、大丈夫です?」
彼女の後ろに隠れるように引っ付いているリタの頭を撫でながら問いかけると、今自分が何をしているのかに気がついたリタは慌ててエステルから離れる
「べ、べべっ!別に平気よ…っ!お、お化けなんてそんな…!非科学的な存在っ、い、いるわけないんだから…っ!」
そう言うとレグルスに指示された建物の方へと足を向ける
「ほら…!行くわよっ…!お化けなんていないって、証明してやるんだから…っ!」
「あ、リタ!待ってください!」
一人歩き始めたリタの背を追うようにエステルが後に続いた
「そ、そうだよね…お化けなんて、いるはずないんだ…!」
二人の後ろに若干怯えながらもカロルが続く
「あーぁ、強がっちゃって…」
「あら、おじ様が焚き付けたからでしょ?」
「それを言うならジュディ姐もじゃないかの?」
クスクスと笑いながら三人も歩き始める
「…ユーリ、行こう」
一人その場から動かないユーリに、フレンが声を掛ける
その視線は、ただ一点、レグルスが告げた建物に向けられていた
「……あぁ」
小さく呟くと、ようやく足を進め始める
その隣をラピードがぴったりとくっ付いて歩いている
そんな幼馴染に小さくため息をついて、フレンも後に続いた
「ここ……ですね……」
そう言ったエステルの目の前には周りの建物よりも大きな建物が立っている
「うわぁ………こんなに大きな建物だったんだ」
ほんの少し目をキラキラさせてカロルが呟く
「そうね。遠目からでは分からなかったわ…」
「いかにも一族の頭が住んでますって風貌ねぇ」
想像よりも遥かに大きな建物に皆驚きを隠せずにいた
「………中、入るか」
一番最初に動いたのはユーリだった
すぐ側にいたフレンでさえ聞き取れるかあやふやな程、小さく掠れ気味な声で呟くと、扉のノブに手を掛ける
鍵自体はかかっておらず、いとも簡単に扉は開いた
特に仲間達に何か声を掛ける訳でもなく、無言のまま、ユーリは足を進めた
そんな彼に違和感を感じたものの、今の彼に何を言ったとしても聞き入れては貰えないだろうと察したフレン達は、彼の後をただついて歩く
大きな外観とは違い、中は薄暗く、ただただひたすらに長い廊下が続いていた
「…なんか、変な感じ…扉が一つもないよ」
あまりの違和感にカロルは怯え気味に辺りを見回す
「のじゃ…一つも扉がないのはおかしいのじゃ」
カロルに同調するようにパティもそう呟く
「つまり、この先に彼がいる、という事じゃないかしら?」
「そういうことなんだろうね」
ジュディスとフレンはそう言って前方を見つめる
長い廊下は未だ続いており、先は全く見えない
「こんなにデカい建物の中に、バカ長い廊下しかないなんて、住みづらそうだわ」
ほんの少し、呆れたようにリタはため息をつく
「でも、この長い廊下も何か意味があるのではないでしょうか…?」
「意味?こんなただ長い廊下に?」
リタの返しにエステルは小さく頷く
「はい、だって、ここは満月の子から隠れる為に作られた星暦の集落なんですよ?何か仕掛けがあっても不思議ではないと思います」
エステルがそう告げると、今までただ無言で歩き続けてたユーリの足が止まった
それに合わせて皆も足を止める
「急に止まってどしたのよ?」
不思議そうにレイヴンが問いかける
すると、ユーリはゆっくりと振り返る
「…いや、エステルの話聞いてたらその線もあるな、と…」
先程までではないが、相変わらず聞き取りずらい声でユーリは言う
「彼は何も言って来ないのかしら?」
胸の下で腕を組みながらジュディスが問いかけると、ユーリは首を横に振った
「さっきから何度も声掛けてはいるんだが…反応なしだ」
その言葉に仲間達はほんの少し肩を落とす
彼と話せさえすれば、何かわかったかもしれないのに…という思いが少なからずあった
「…あ!そうだ!」
何か閃いたようにカロルが声を上げた
「カロル、なんか思いついたのか?」
「うん!ここに来る途中、アリシアのペンダントが道を教えてくれたでしょ?もしかしたら、また教えてくれるかも!」
少し得意げにカロルはそう告げた
「そう簡単にいくかしら?」
訝しげにリタはカロルを見る
「も、ものは試しだよ!ユーリ!やってみてよ!」
ムッと頬を軽く膨らませながら、カロルはユーリに声をかける
ユーリもリタと同意見ではあったが、このままでは埒が明かないのも事実
半信半疑になりながらも、首から下げていたペンダントを外し、先程同様手のひらに乗せる
すると、これまた先程と同様に光の線が真っ直ぐと廊下の先に向かって伸びていった
「え、ウソ…当たりなの?」
ありえないとでも言いたげにリタはその光の先を見つめた
「ほら!ボクの言った通りでしょ!」
ふふんっと鼻を鳴らしながら、カロルはリタを見る
悔しそうにしながら、彼女はカロルを睨みつけた
「んー、まだ結論を出すのは早いんでない?この先に本当に奴さんがいるとも限らんしねぇ」
そう言いながら、レイヴンも光の線の先を見た
彼の言う通り、この先にいるという保証はない
「…それでも、進んでみるしかない…だろう?ユーリ」
フレンはそう言ってユーリを見た
ユーリの視線も光の先へと向けられていた
「……あぁ…そうだな」
そう言うと、ユーリは再び足を進め始めた
光の線を辿って歩き始め、どのくらい経っただろうか
延々と続いているような廊下に、ついに終わりが見えた
「あ…!扉だ…!」
最初に声を上げたのはユーリのすぐ後ろを歩いていたカロルだった
薄暗い廊下の中に、明かりに照らされた扉が一つだけ見えていた
光の線は、その扉に向かって伸びている
「だはぁ……ようやくついたのかしら…おっさんもうヘトヘトよ…」
肩で息をしながらレイヴンは言う
扉の前まで来ると、ユーリはようやく足を止めた
それと同時に、エステルとリタ、カロルは床に座り込んだ
「あー!疲れたぁ……」
「長かった……です…」
「もう…どんだけ…長いのよ…!」
かなりの距離を歩き続けたからか、三人も肩で息をしていた
「この距離は…さすがにキツいね…」
「あら、意外ね…あなたでもキツいと思うのね」
フレンとジュディスも四人程ではないが、ほんの少し息が上がっていた
全く疲れた素振りがないのはユーリくらいであろう
疲れている仲間達には目もくれず、ただただ目の前の扉を凝視していた
「あー……大将?ほんのすこーしでいいから、休憩させてもらえたり…?」
遠慮気味にレイヴンが問いかけると、ユーリは無言でペンダントを首にかけ直し、その場に座った
その隣に、寄り添うようにラピードが伏せる
光の線は消えてしまったが、扉は確かにそこにある
ユーリの行動を肯定と見たレイヴンとジュディス、パティもその場に座る
「全く……なんでこんなに長いのよ……!」
「リタ、それ、さっきも言ってました…」
「むむ……でも、リタ姐の気持ちもわかるのじゃ…長すぎなのじゃ……」
「そうだよね……それに結局、ずーっと真っ直ぐな道だったし…」
「エステルが言ったように、何か意味や仕掛けがあったのかもしれないけど…もしかしたら本当にただ歩かせたかっただけかもしれないわね」
「うへぇ……だとしたら相当な嫌がらせじゃなぁい…?」
座り込んだ六人がそんな会話を繰り広げる中、ユーリはただ一人無言で扉を見つめ続けていた
そんな彼の隣に、フレンが腰掛ける
「…さっきから一体、何を考えているんだい?」
ほんの少し呆れ気味に問いかける
答えが返ってくるとは、フレンは一ミリも思ってはいない
が、彼が何を考えているか、なんて分かりきっていた
「……大方、アリシアの事を考えているんだろうけど」
ため息混じりにフレンがそう言うと、無反応だったユーリの肩がピクリと動いた
「この先にいるんじゃないか……いたとして、話せる状態なのか……傷だらけになっているんじゃないか……もしかしたら自分の事なんて忘れているんじゃないか……そんなところか」
「んな……っ?!」
今の今まで無言だった彼がようやく口を開いた
フレンの方を見て、驚いた表情で口をパクパクとさせている
そんな彼の反応に、フレンは再びため息をつい
「図星か」
「……っ!…っせーよ……」
「全く……本当に彼女の事となると、いつもの自信は何処に行ったのかってくらいなくなるな。さっきから少し泣きそうなんだろ?」
「…フレン……本当にうっせーよ……」
掠れ気味な声でユーリは小さく呟き顔を背ける
先程から声が掠れ気味だったのも、フレンの予想通りだからだ
彼女がいるかもしれない期待と、いた時、彼女がどんな状態なのかという不安……
そして、もしいなかったら…という不安……
彼女を探し続けているユーリからしてみれば、この先に進むには不安が大きかった
それでも先に進まなければ会うことさえ叶わないからこそ、ユーリはここまで歩み続けて来たのだ
「…そもそも、僕に隠し事ができると思ってる方が間違いだよ。何年君たちと一緒にいると思ってるんだい?」
小さな子どもをあやすかのようにフレンは言葉を繋げる
「ユーリ、不安なのは君だけじゃない。…僕だって…もしこの先に彼女がいて、僕らがどうにもできない状態だったら……そんな風に考えたら、この先に進むのだって拒んでしまいそうだ…」
ユーリ同様、フレンもまたほんの少し掠れた声で告げる
ゆっくりと、ユーリはフレンの方へと顔を向ける
隣にいる金髪の幼馴染の瞳には、薄らと涙が光って見えた
「…僕だって不安だ。仮に戻って来ても、忘れられていたら…なんて、考えたくもない」
「……フレン…」
「ユーリ、僕はまだ、彼女を諦めたつもりはないんだよ」
そう言って、フレンはユーリを見つめた
その瞳には既に涙などなく、代わりにニヤッと挑発気味な笑みを浮かべていた
「あんまりウジウジしてるようなら、僕がアリシアをもらってしまうよ?」
「な…っ!!おまっ!まだそれ言うか?!」
ガバッと立ち上がりながらユーリはフレンを見下ろす
突然声を上げたユーリを何事かとエステル達は見つめる
「ははっ!だからいつも言ってるだろ?諦めたつもりはないって」
クスクスと笑いながら、フレンも立ち上がる
そんなフレンを半分睨み気味にユーリは見つめる
「あーくっそ!何度も言ってるだろ?!シアはぜってぇ渡さねーかんな?!」
そう言うが早いか、首から下げていたペンダントを再び外し、扉の方へと向ける
「ふふ、休憩は終わりみたいよ、おじ様?」
「もー……もうちょい休みたかったんだけど……フレンちゃん、大将を焚き付けないでよー…」
やれやれと言いたげに座っていた仲間達も立ち上がる
先程まで彼に感じていた違和感は、もうそこにはなかった
いつも通りの彼が扉の前に立っていた
「…全く………」
世話のかかるやつ、と心の中で言いながら、フレンは隣に立つ幼馴染を見た
アリシアが自分の事をそういう対象として見てくれる可能性なんて、一ミリもないとフレン自身わかっている
諦めたつもりはないだのと言いはしたが、ユーリに勝てる見込みがないこともわかっていた
わかっていた上で、自信を無くしている幼馴染を焚き付けるには一番有効な手であるからこそ、わざと言ったのだ
そんなに心配しなくても大丈夫、などと言っても聞く耳なんて持たないだろう
もらってしまう、と言った方がいつもの状態に戻る
長い間時間を共にしていたフレンだからこその選択だった
「……開けるぜ」
ユーリはそう言って扉を押し開けた
ーーーー???ーーーーー
『嘘……なんで……?!』
悲鳴地味た声が辺りに響く
彼女の目の前には暗い周りよりも一際黒い塊が『いた』
『それ』は彼女の元へとゆっくりと近いている
『ーーーー!!!』
離れたところで星達は倒れていた
彼女だけでも逃がそうと、シリウスは名前を叫びながら手を伸ばすが、彼女には届かない
『それ』に今捕まる訳にはいかない
だが、今の彼女には為す術もない
『……っ!捕まるくらいなら……!』
彼女がそう言うと、彼女の身体が光り始める
何をしようとしているか察した星達は、必死に彼女を制止するが、その声は彼女に届かなかった
一瞬強く光を放つと、彼女の身体から五つの光の玉が現れ、散り散りとなっていった
残った彼女の身体を『それ』が覆い尽くす
『…ユーリ、私…信じてるよ』
胸元のペンダントを強く握り締めながら、彼女は『それ』に身を委ねた