第3部〜星喰みの帰還と星暦の使命〜
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また逢う日まで…
長い階段を上がった先にデュークさんの姿が見えた
「デューク……!」
私達はゆっくりと彼に近寄った
彼は私達に気づいてはいるみたいだったけど、振り返る事はしない
「デューク、オレ達は四属性の精霊を得た。精霊の力は星喰みに対抗できる」
「もう人の命を使って星喰みを討つ必要はありません!」
エステルの言葉にデュークさんはゆっくりと空を見上げた
「あの大きさを見るがいい。たった四体ではどうにもなるまい」
「四体は要よ。足りない分は、魔導器の魔核を精霊にして補うわ」
「世界中の魔核だもん、すごい数になるはずだよ」
「ついでにおたくの嫌いな魔導器文明も今度こそ終わり。悪い話じゃないでしょ?」
「……人間たちが大人しく魔導器を差し出すとは思えん。それとも無理矢理行うのか」
そう言って振り返った彼の目は、私達を蔑んでいるように見えた
「無理矢理なんてしないのじゃ!」
「人々が進んで応じるなんて、信じられないのかしら?」
「一度手にしたものを手放せないのが人間だ」
「わかってもらえねぇか……だけど、オレ達はオレ達の選んだ方法で星喰みを討つ。もう少し、待ってくれねぇか?」
ユーリはデュークさんに近づくとそう頼んだ
いつもなら、真っ先にぶっ飛ばしに行くのに……
「僕達は、人々の決意を、そして僕達自身の決意を無にしたくないのです!」
「……それで世界が元に戻るというのか?」
ゆっくりと、静かにデュークさんは口を開く
……あぁ、そっか、彼が望んでいるのは、『守る』事だけじゃないじゃない
……『戻す』事なんだ
「始祖の隷長によりエアルが調整されあらゆる命が最も自然に営まれていた頃に戻るのか、と聞いている」
その言葉に、みんな口を閉ざした
だって、それはできないことなんだから……
始祖の隷長は居なくなるのだから
「お前たちは人間の都合のいいようにこの世界を……テルカ・リュミレースを作り替えているにすぎん」
デュークさんは冷たくそう言い放った
「……確かにそうかもしれないですね」
ポツリとそう呟いた
確かに、私達のしようとしていることは、世界を作り替えようとしているだけだ
「でも、それは違う」
ゆっくりとユーリの前に立って彼を見つめる
「……違うだと?」
「確かにあなたの言ったことが、今までの世界の在り方だった。…でも、いつまでも同じままでは世界もいられない。いつかは変わらないといけない日が来る。本当は千年前だったけど……それが今に変わっただけの話ですよ」
「……変わることが、正しいことだと?」
「始祖の隷長は……フェロー達は、精霊になることを進化だと考えた。世界も進化するんだって、そうは考えられない?」
「……彼ら始祖の隷長の選択に口を挟むことはすまい。だが、私には私の選択がある」
「わかってくれねぇのはそれをやろうとしているオレ達が人間だからか?」
「人間が信用できないからって放っておいて手遅れになったらいきなり消そうとするってどうなのよ!?」
レイヴンは彼に向かってそう叫んだ
確かに、彼も自分勝手だと思う
……でも……
「……お前たちはこの塔がどういうものか知っているか?」
「…このタルカロンは、元々都市だったものを、古代人が自ら兵器に変えた。…始祖の隷長と星暦を滅ぼすために…」
「!」
私がそう呟くと、ユーリ達は驚く
「あくまで魔導器の危険を認めようとしない古代人にとって、魔導器を攻撃する始祖の隷長は邪魔でしかなかったのだ。…そして、彼らに手を貸し、忠告し続けた星暦もさえ邪魔者だと認識していた」
「そしてエアルの乱れにより星喰みが出現した……」
「そうなって初めて人間は始祖の隷長と星暦の言葉に耳を傾けた。今の世界は多くの犠牲の上にある。なのに人間はまた過ちを犯した。必ずまた繰り返すだろう。どうしようもないところまで世界を蝕み、自分たちの存続の為だけに世界のあり方まで変えようとする。そんな存在こそ、星喰みをも凌駕する破滅の使徒だ」
「……それがあなたが人間を滅ぼそうとする理由なのですか」
「私は友に誓ったのだ。この世界を守ると」
「エルシフル、ね」
「……!」
エル…シフル…?
彼とデュークさんは友人だったの?
「……クロームから聞いたか」
「ああ。彼女、あんたを止めてくれって言ってたぜ」
「彼女も私達の話を聞き入れてくれて精霊に転生しました。だから、どうか一緒に…」
「……ふざけるな。始祖の隷長がその使命を放棄すると言うなら、私が引き継ぐ。お前たちの手段を待つまでもなく、私がこの術式を完成すれば世界は救われる」
そう言いながら彼は宙の戒典に近づいて行く
「デュークさん…!」
彼とは争いたくない
その一心で彼の名前を呼ぶ
「このまま人間が世を治めていけば必ず同じ過ちを繰り返す。そうなれば人の心は荒み、より辛い未来になるのではないか?」
「例えそうであっても自分たちで選んだ道です。傷ついても、立ち止まっても、諦めなければまた歩き出せるはずです!」
「そうよ。間違ったり失敗したりするのを怖がってたら、新しい事なんて何も見つからないもんね。それに、あたしたちはあんたみたいに勝手に決めつけてこの道を選んだんじゃない。みんなで決めたよ」
「うん。一人じゃ難しいのかもしれない。でも僕達は一人じゃないんだ。一人で出来なかったらみんなで頑張る。そうやって歩いて行けるってことに気づいたんだ。だから!」
「のじゃ。一人で出した答えはいつか必ず行き止まりのぶち当たる。でも、みんなで船を漕げば、どんな嵐でも、いつか海を越えられるのじゃ」
エステルにリタ、カロルにパティはデュークさんをしっかりと見つめてそう言った
「心が繋がっている者同士はそれでいいのだろう。だが、必ず辛い未来を受け入れられぬ者がいる。それがわからぬお前たちではないだろう?」
彼は足を止めると、ゆっくりと振り返った
「そうね。厳しいけど、それが現実でしょうね。けど、変わろうとしていくものを受け止め、考え、また変わっていく。人も世界も、ね。だから何年…何十年…何百年かかったとしてもいつか受け入れてくれる、今はそう思えるわ。だって、それが生きるという事なのだから」
「変化とは痛みを伴うもの。でも、それを恐れていては前には進めない……誰もが同じように進める訳じゃないと言うなら、僕らがそれを支えます。そのための騎士団、そのためのギルドです」
「んだな。守らなきゃいけないもんは確かにあるだろうが……おっさん、次の時代に生きる奴らの
ジュディスもフレンも、レイヴンも……自分たちの思いをデュークさんにぶつけていく
「……相容れぬな。……お互い、世界を思う気持ちは変わらぬというのに不思議なものだ」
「不思議じゃねぇ。あんたとオレ達は選んだ先……未来に見ているものが違う」
「未来は守らねばならん。守らねば破滅が待っている」
「未来は創り出すもんだろ。選んだ道を信じて創り出すもんだ」
ジッと、ユーリはデュークさんを見つめる
彼もまた、ユーリを見つめていた
「……お前はそれで納得したのか?」
ユーリから視線を外して、デュークさんは私を見つめた
「人と満月の子に祖先を虐殺され、自らの両親さえ人に殺されたというのに……そんな人間を、助けるのか?」
真っすぐに彼は私だけを見つめてくる
……今ならまだ、選択し直せるとでも言いたげに
「………確かに、両親を見捨てた人たちは憎いよ」
「アリシア……」
「では何故、そちらにいる?エアルの乱れを正す以外にも、お前にはやるべきことがあるだろう」
どこか怒り気味に、彼は言葉を繋げていく
「お前は、具現化した憎悪を鎮めることも使命の一つだろう?人のいる世では、いつか必ず鎮められなくなる」
デュークさの言っていることは正しい
確かにいつかはそうなるかもしれない
「………そう、だね。…………でも…………」
目を閉じて今までのことを思い返した
今でも、みんなが助けてくれたことが鮮明に思い出せる
「………私は、一人じゃないから。両親が見捨てられた時も、ユーリとフレンが居てくれたから、私は前を向けた。私がお兄様に操られていた時も、みんなが必死になって助けてくれようとしたから、私は自分を取り戻せた。……みんなが支えてくれたから、私は今、ここに立ててる。…星喰みの憎悪は、タルカロンじゃ癒せない。彼らの憎悪は、彼らと共に時を過ごした始祖の隷長達の意思でないと」
「………あれに、意思があるとでもいうのか?」
「あるよ。だって、元は世界を守ろうとした、始祖の隷長なんだから」
「………」
私の言葉にデュークさんは口を閉ざした
…………もしかしたら、戦わないで済むかもしれない
でも……あと一押し足りない
何か手は…………
《………………アリシア…………》
ふと聞こえてきた懐かしい声に息を呑んだ
この、声は……
《……デューク……に…………我…………人を犠牲……望まぬ…………》
途切れ途切れに聞こえてくる声の元を探す
一体、どこから……
《………………傍、に…………》
その言葉で、声がとても近くから聞こえていることに気づいた
…………もしかして…………
「………それに、エルシフルは、人を犠牲にすることを望んでいないって」
「………何?」
そっと、ペンダントを握る
ずーっと聖核が見つからないって、思ってたのに……
……こんなに近くにいたなんて……
ペンダントにゆっくりと力を注いでいく
…今なら一人でも、大丈夫だから
精霊化に成功するときの眩い光が辺りに広がる
光が消えた時には、私の傍に一体の精霊が居た
見た目は人だけど、腕が四本あって、彼が精霊だというのは明白だった
「………!」
《……ふむ…………これが精霊…か。中々いいものだな》
「おい、シア…!こんな時に何して」
「………おかえり、エルシフル」
新たな精霊を見ながら、私は言った
私が言った名前に、みんなは驚く
「え…?なんで?だって、アリシアのそのペンダントって…」
「……これね、お母様がくれたのとは別のなんだ。…前のは、耐えきれなくて壊れちゃったから…」
「なんでまたそれを隠してたのよ…」
「…約束だったから、誰にもそのことを言わないって。なんでかは知らなかったけど…まさか、エルシフルの聖核で出来てたなんて…」
《其方に渡すよう頼んだ男に伝えたのだ。我だと伝えるなと。…でなければ、其方はまた泣いていたろう?》
クスリと笑った彼の口調は昔から何も変わっていなかった
「……エルシフル…………」
小さく、デュークさんは彼の名前を呟いた
ゆっくりとエルシフルはデュークさんを見つめる
《……友よ。我はお主に、人間を否定して生きて欲しくはなかった。確かに我は人に殺された。…しかし、強大な力を持ったものを恐れ、排除しようとするのは当然のこと。この世界に生きるものであれば当然の行動だ》
「……だからと言って、人を恨まないというのか?」
《我はこの世界を守る事、いきとしいける者…心ある者の安寧を望んでいる。その中には、もちろん人間もいる。…我は見てみたいと思うぞ?この者達が進む
「……」
《友よ。我ら始祖の隷長は役目を放棄したわけではない。皆、新たな形となって、世界を守る事を決めたのだ。我らが使命は世界を守る事…それは、精霊になった今でも変わらぬぞ》
エルシフルの言葉にデュークさんは目を閉じた
…彼でもダメだったら…
その時は、戦うしかない、のかな…
「……いいだろう。友に免じて、お前たちに託そう。…………正し無理だとわかればすぐにこの術式を組み立てる」
そう言って、彼は術式を消した
良かった…………争わないで済んだ
「サンキュ。そうならないようにするさ」
ニヤリとユーリは自信に満ちた顔で笑う
…さぁ、ここからが本番だ
私達はユーリを中心に円形に並ぶ
「いくわよ……エステル、同調して。ジュディス、アリシア、サポートお願い」
リタの合図で準備が始まる
「はい!」
「了解よ」
「任せて!」
みんなの足元に精霊化の時と同じ術式が展開される
「ユーリ、行くわよ」
「ドキドキなのじゃ……」
「…」
「たのむぜ~大将~」
「ああ!」
ユーリはそう言って剣を右手に持ち返ると、空に掲げた
明星弐号の魔核がキラリと光を放つ
それに合わせて、精霊たちが空に力を放つ
「…カープノス、頼んだよ」
『言われるまでもない』
私の声に合わせて、空に輝く星の一つが強く光る
世界中の魔核が、精霊となってユーリの元に集まって行く
空を飛ぶ光は、まるで流れ星のようだ
「本当に魔導器を捨てたというのか……」
ウンディーネが集まった精霊たちで出来た攻撃を星喰み目掛けて解き放つ
攻撃は見事に星喰みに届きはした
……でも…………
「と、止まった!?」
「まさか利いてないの!?」
「そんなことない!ただあと少し、あと少し足りない!」
「そんな、ここまできて!」
「なんとかならんのか!?」
「お願い!」
「まだ終わっちゃいない……!」
「……」
《……友よ》
不意にエルシフルがデュークさんを呼ぶ声が聞こえた
「…始祖の隷長……精霊……人間…………エルシフルよ、世界は変われるのか?」
《……行こう、今度こそ、共に。…
視界の隅でエルシフルが微笑んだのが見える
デュークさんは宙の戒典に力を籠める
そして眩い光を放ちながら、ユーリの傍に立った
これなら、私が手伝わなくても大丈夫かな
精霊たちの攻撃は、大きな一つの剣となった
ユーリはデュークさんを見て頷くと明星弐号を両手で握る
『『いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!!』』
みんなでそう叫びながら、ユーリは剣を振り下ろした
そして星喰みは真っ二つに分かれる
その切り口から、次々と精霊が誕生した
「精霊……」
「あれ全部が!?すごい……」
「星喰みになってた始祖の隷長がみんな精霊に変わったんだ……」
「星喰みも世界の一部だった……そういう事ね」
「綺麗……とても……」
「じゃの!」
みんなは空を見上げて微笑む
……間に合った……?
『…………アリシア……すまない…』
「…レグルス……?」
どこか辛そうなレグルスの声が聞こえる
『……我は……我は……』
《…クイ……ニクイ…………!!!!》
唐突に、辺りに不気味な声が聞こえてくる
その声の主から逃れようと、精霊たちは私の後ろに逃げてくる
《何故だ?!何故あれが生まれた!?》
そう叫んだのはイフリートだった
《まさか…我らの同胞が、あのようなものを生むなどとは……》
《予想外でした……》
《相当な大きさだ。こいつが降りてきたらまずいことになるぞ》
エルシフルたちは私の周りでそんな話をする
……結局、間に合わなかった……
ダメだった…
「ちょっと待って!あれは一体なんなの!?」
「……具現化された憎悪……始祖の隷長達の憎しみの塊……か」
ポツリと、デュークさんは呟く
「あれが……憎悪…………」
「あんなのどうすりゃいいのよ…………」
みんなの顔に絶望が移り出す
「…………」
静かに黒雷を鞘から抜く
そして白雷を腰から外しながら、ユーリに近づいた
「…ごめん、ユーリ。これ持ってて」
白雷を手渡すとユーリは目を見開いた
「シア……お前……!」
「……ごめんね」
たった一言だけ言って私はみんなから離れた
「…シリウス、みんな……準備はいい?」
そう空に向かって声をかける
すると、私の周りに星のみんなが現れた
ここはもっとも星に近い場所だから、みんなの姿がはっきり見える
みんな表情が沈んでいる
……それもそっか……
『…アリシア……すまない……我らが力が足りないせいで、お前にもっとも辛いことを任せることになってしまった……』
レグルスの言葉にゆっくりと首を振った
「みんなのせいじゃない。……私は大丈夫。だって……一人じゃ、ないでしょ?」
『あぁ、その通りだ。……最期まで、一緒だ』
シリウスはそう言って、ニコリと微笑んだ
「アリシア……?」
恐る恐る、エステルは私に声をかけてくる
「……みんな、ごめん。…私、みんなと一緒に帰れないや」
苦笑いしながらみんなを見る
「え…?ど、どうして!?」
「……あの憎悪を鎮めるには、星だけじゃダメなんだ。…あれを鎮めるには、それなりの対価が必要なの」
「対価…って…あんた………まさか…!」
「……私は…………
星の力と、私自身の命を代償に、あれを鎮める」
ゆっくりと静かに、でも、はっきりとそう答えた
「そんな……!そんなの、ダメなのじゃ……!」
「そうよ!言ったじゃない!居なくなったりなんてしたら、許さないって…!そんなの、ダメよ…!」
「落ち着いたら、私達とバウルで世界を見て回る約束だってあるわ。…自分の命を代償になんてしないで…」
「みんなで一緒に、星を見ようって、約束したじゃん…!アリシアの家族を、みんなで…!」
「何か…何か、他に方法があるはずです…!」
「君一人だけが帰れないなんて、そんなのダメだ!…全員で帰ると、みんなに言ったんだ!君が欠けてしまっては意味がない!」
「……シア、他に方法はねえのか…?」
縋るようにみんなは問いかけてくる
…本当に、みんないい人だ
静かに首を横に振った
「……これは星暦だけが出来ること。…星暦だけが、することを許されたもの。…だから、ごめんね」
「……っ!!…あんたら…その子の事、大事なんでしょ…!?だったら…っ…だったら、何とかしてよ…っ!」
今にも泣き出しそうな声でリタは訴えた
星達は黙って俯く
『…………我らも、姫にこのような選択、させたくありませんでした…』
『……でも…………だって……!!始祖の隷長達はそれだけ人間を恨んでいたんだ…っ!』
『自分たちだけ助かろうとする人間が、憎くて憎くて仕方ないんだ…』
『…そして、彼らに手を貸す同胞も憎んでいる』
『……最期には、世界そのものを憎みだした。もう我らではどうにもできないのだ』
その言葉に、みんなは口を閉ざす
諦めきれないという表情を浮かべて、ただただ唇を噛んでいる姿も見えた
《……ヒトナド…!ドウホウナド…!世界ナド……!全テ無に返るガイイ……!》
「……もう、待てないね……」
小さく呟いて黒雷を掲げる
「「「「アリシア!」」」」「シア!」「クゥン…」
「エステル、私も、エステルに出会えてよかったよ」
私の一番の目標だった
最初は彼女が満月の子だって知らなかったけど…
でも、エステルに出会って、旅をして…仲良くなって……
ずーっと目標だったことが叶って、本当に嬉しかった
「カロル、一緒にギルドやれて、よかったよ」
初めは危なっかしい子だな……なんて思ったけど……
でも、旅をして、どんどん成長して、大人びていって……
今のカロルなら、きっと、凛々の明星をもっともっといいギルドに出来る
「レイヴン、私ね、昔よりも、今のままのレイヴンが一番いいと思うよ」
シュバーンの時は正直嫌いだった
でも、おどけて、レイヴンなりにみんなを元気にしようとするところは嫌いじゃない
「パティ、私が居なくなっても、ユーリのこと、捕っちゃだめだからね?」
神出鬼没で、いつも突然現れてた不思議な子
毎回毎回ユーリ狙ってきてたのには、少し腹立たしくも思ったけど…
……でも、初めて、ちゃんとこうして競争みたいなことが出来る相手で、少し楽しくもあった
「…ジュディス、まだ残ってる始祖の隷長達のこと、お願いね」
出会った時、私のことを知っていたことは驚いたし、いっつも予想外のことをするから、毎回驚いてばっかりだった
…そんな毎日が、楽しかった
始祖の隷長の話を出来ることも嬉しかった
今まで話せなかったことを話せる相手が出来たのが嬉しかった
「…リタ、約束守れなくてごめん。…でも、私達、いつまでも親友だよ!」
私の初めての女友達で大親友
久しぶりに会った時には、大分印象が変わっちゃってたけど…
それでも、旅をしているうちに、昔のように戻って来ていて
また、一緒に笑いあえて…
それがすごく嬉しかった
「…フレン、下町の…皆の事、お願いね。…フレンなら、ヨーデル様なら、帝国を変えられるって、信じてる」
大切な私の幼馴染…
下町で子供時代、一緒に過ごした親友
騎士の仕事をしている時の彼はあまり好きじゃなかったけど…
でも今は…今の彼なら、騎士の仕事をしている時でも、嫌悪しないでいられる
「…ラピード、ユーリのこと、お願いね」
大事な幼馴染たちの愛犬
私にも懐いてくれた、大事な愛犬
出来ればもう少し、一緒にいたかった…
「……ユーリ」
静かに名前を呼んで、ユーリを見る
今にも泣き出しそうに顔を歪めていた
…それはきっと、私も同じ
「……大好きだよ。私、ユーリに出会えて…ユーリと付き合えて…ユーリの側にいられて、よかった」
「……っ!シア…!」
「……愛してるよ、誰よりも、一番。…ユーリの事、愛してる」
そう言って目を細める
つぅっと涙が頬を伝った
『…………アリシア…………』
「……いこうか、みんな」
そう言って、ユーリ達に背を向けた
「……癒しを与えるは『治癒』……」
そう言うと、アリオトが黒雷に宿る
「確固たる守りは盾たる『守護』」
次にリゲルが黒雷に宿る
「未来を告げるは『予言』」
次にベガが
「世界を覆う暗き『闇』は、世界を照らす『光』と対なり」
次にポルックスとカストロが
「世界をかたどるは『地』」
次にカペラが
「地に流るは『水』」
次にペテルギウスが
「大地をかけるは『風』」
次にアルタイルが
「全てを焼き尽くすは『火』」
そして、シリウスが……
「……怒り、憎しみにとらわれし御霊を救うは『浄化』なり」
最後にレグルスが黒雷に宿った
淡い光を放つ黒雷を、空に漂う『アレ』に向ける
ほんの少し手が震える
私自身が決めたことだから、引き下がりたくはない
……でも、怖い
本当はまだ、みんなと一緒にいたくて……
本当はまだ、さよならなんて、したくない……
「……シア」
すぐ傍で、ユーリの声が聞こえた
そっと私の右手に、左手を重ねてくる
「…言ったろ?最後まで傍にいてやるって。……オレはここに居るぜ?」
そう言ってはにかんだユーリの目は赤くなっていた
「……馬鹿……ホントに……馬鹿……っ」
「馬鹿で結構。……オレはこの手、絶対に離さないからな」
「……知ってるよ、そんなこと……。……一緒に居てくれるって、約束したもん、ね」
そう言って、ニコッと笑う
……やっぱり最期まで……この手は離せなかったや
『…………大丈夫、また会えますよ。必ず』
頭の中に響いたベガの言葉に、薄っすらと微笑む
《……何故………何故……!ソナタまで、人に手を貸ス!?何故……ヒトを恨まない……?!》
憎悪の塊は私にそう問いかけてくる
…邪魔するなと、言いたげに…
「…恨んでも、何も生まないから。恨んでも、奪われたものは帰ってこない……。……それなら、もう奪われないように、大切なものを、大切な人を失わないようにどうすればいいか…。………それを考える方が、恨むなんて事よりよっぽどいいよ」
憎悪に向かって、そう告げる
…ユーリ達のお陰で、私もようやくそう思えるようになったんだ
「あなたの憎しみ……全部、私達が受け止めるよ。…だから……ごめんなさい。
……今、古きより残りし憎悪を…星が力と、我が命を代償に、鎮めん……グランド、クロス」
小さく言葉を繋ぐと辺りを光が覆った
……そして、光が晴れた時には、黒い光の玉がすぐ傍にふよふよと浮かんでいた
「……あれは……?」
《…ニクイ…………ニクイ…………ナゼ……何故……我が……》
「消しきれなかったのか……!?」
舌打ちをしながら、ユーリはそれを睨みつけた
……もう、限界も近い、けど…
ゆっくりと、それに手を伸ばして、私の胸の前に引き寄せる
「……もう……憎まなくて、いいよ……。もう……苦しまなくて、いいよ」
《………ナニガわかる……貴様に、ナニガ……!》
「……永遠の苦しみはわからない、終わりのない時間が……どういうことなのかも……でも、それを理解できる人達は居るよ」
《……ナニ……?》
「……一緒にそこに行こう。……何年、何十年……かかっても……きっと、わかり……あえるよ……」
そう言うと、黒い光は私の中に入ってくる
それと同時に、体から力が抜けた
「シア!」
すぐにユーリが私を抱きとめた
パキン……と、黒雷が砕ける音がした
……シリウス達は先にいったのかな……
「……ユー……リ」
「シア……っ」
「……なか、ないで……?」
「……っ」
「……だい、じょうぶ……。きっと……また、あえる……から……」
「……でも…………っ!!」
ユーリが私を見て驚く
……だって、私の体は光に変わり始めていたから
「…………あえる、よ……だって……ベガが……そう、いったんだもん……はずれない……んだよ……?べがの……よげん……」
そう言って笑って見せる
「…………信じて……いいのか?」
「……ん……しんじて……?きっと……あえるから…。……だから……まってて……ほしい、な……」
「…………いいぜ、待っててやるよ。……でも、待ってるだけは性に合わねぇ。……あんまりにも戻って君の遅かったら……見つけてやるよ、どこにいても、絶対に。…見つけ出してやる。……当たるんだもんな?ベガって奴の予言は」
その言葉にニッコリと笑って返す
もう、しゃべるのも辛い
「……アリシア、愛してるよ。……オレも世界で一番、お前を愛してる」
その言葉に笑いかける
そっとユーリの唇が触れた
こうして居られるのも、最期なんだ……
……でも、きっと、絶対に会える
また、ここに戻って来れるって、信じてる
…ユーリなら、見つけてくれるって、信じてる
私の視界に最後に映ったユーリは……
ー涙を流しながらも、優しく微笑んでくれていたー
~あとがき~
今回で『星降る夜に』本編最終回となります
今までご愛読いただき、ありがとうございます!
占いツクールというサイトで初めて書き始めてから約3年…
ついに完結いたしました!
書きやすさを求めて二度のサイト移行やら、長編三本同時進行やら、急な更新停止など…
色々あってなかなか進んでいませんでしたが、ようやくここまでくることが出来ました!
こんなぐだぐだな夢小説でしたが、楽しみにしてくださっタ皆様には本当に感謝しております!
本当にありがとうございました!
本編はこれで終わりとなりますが、引き続き番外編を更新させていただきます
まだまだ、ユーリとアリシアの物語は続きますので、興味のある方は、更新を楽しみにしていただければと思います
最期になりますが、ここまでお読みいただきありがとうございます!
今後ともよろしくお願いいたします!
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