第3部〜星喰みの帰還と星暦の使命〜
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哀れな暗殺者の末路
バウルでタルカロンに乗り込んだ私達は、そのあまりの大きさに驚いた
まさかここまで大きいなんて…
資料で見たことはあったけれど、こんなにだとは思わなかった
「はえ~」
「すげえ、でかさだな」
「まさに天まで届けって感じだね」
「こんなのがアスピオの側に眠ってたなんて、いろんな意味でショックだわ」
「あの周りに展開しているのが、生命力を吸収する術式だろうか」
「……そうみたいね。まずいわ、結構早く組みあがって来てる」
「あまり時間は残されてないってか」
「いいことなのじゃ。時間が差し迫った方が人はやる気になるものじゃ」
「それはそうかもしれないけど…」
「今はご先祖様の加護が私達を守ってくれているから平気だよ。…少なくとも、あの術式が完成するまでは、ね」
「ならその間にてっぺんまで走って昇るのじゃ」
パティはニコッと笑ってそう言った
いやそれはちょっときついでしょ…
「星喰みとやる前にばてちゃうよ…」
「バウルに乗ってピューって天辺に行く訳にいかないの?」
「バウルに影響がないとしても私達が耐えられないと思うわ」
「あんた、塔登るのが嫌なんでしょ」
「あったりめえよ、俺様を誰だと思ってんの」
「んー、ナマケモノ?かな?」
「ちょっ!アリシアちゃん…!俺様そんなに怠けてはいないわよ…!?」
冗談混じりに言ったつもりが、本気にされてしまったみたいだ
慌てて言い返してくる彼の反応が面白くて、思わずクスッと笑ってしまった
「おっさんには悪いが歩きで登るしかねぇな」
「とほほ…」
「気を引き締めていこう」
「ああ。何が待ってるかわからねえ。油断するなよ」
ユーリを先頭に私達はタルカロンの中へと足を踏み入れた
中には今までに見たことのない風景が広がっていた
これ全部、魔導器なのかな…
「うわあ…」
「すげえな、これが全部、今まで土の下に埋まってたってのかよ」
「アスピオ周辺で多くの魔導器が発掘されたのも、ここがあってからなのかもしれないな」
「古代ゲライオス文明……本に書いてあったよりもずっとすごいです」
「なんだか変な感じね。星喰みに使うってくらいだから、これは兵器なんだろうけど、外からの眺めは都市みたいだった。都市を改造して兵器にしたのかな」
みんな思い思いにタルカロンについて考察をしている
……けど……
「星喰みと対等に戦うにはこんなに大きな街を犠牲にしなくてはならなかったのかの」
「……違う」
「へ?」
「…確かに兵器だけど…違う」
ポツリと小さく呟いた言葉は、一番近くにいたカロルでさえしっかりと聞き取れなかったらしく、傍で首を傾げていた
「デュークか…できればやりあいたくないねえ。やっこさん、人魔戦争の時、既に大した英雄だった。今となっちゃどれだけの力を身に付けていることやら」
「なぁに。デュークとケンカする前に星喰みを倒しちまえばいいんだよ」
「そうすればデュークだって人間を犠牲にする理由はなくなるもんね」
「そうだといいけどねぇ……」
そう言ってレイヴンは大きくため息をついた
……デュークさんと戦わないのは……
恐らく、無理だと思う
そんな気がしてならないんだ
暫く私達は塔を登り続けた
どこか帝都に似た雰囲気の街並みがあったり、複雑な仕掛けがあったりと、登るのに大分苦労している
恐らく、当時これを造った人が住人が上まで行けないように造ったんだろう
…まぁ、行かれても困るからなんだろうけど……
今こうして進んでる私達からしたら、大分余計なことだ
そんなことを考えながらかなり上の階へと登って来た
闘技場によく似た空間の中央に誰かがいる
「待ちかねたぞ……ユーリ・ローウェル」
その声はザギのものだった
闘技場で見かけて以来だけれど、その姿は大分変ってしまっている
魔導器と一体化している身体に機械音に近い声
最初の頃の面影はかなりなくなっていた
「どこに行こうってんだ?お前にはオレが居るだろう?」
「あいつは…!」
「生きていたのね。信じられないしぶとさ」
「こんな高いところまで疲れたじゃろう。わざわざご苦労さんじゃの」
「ホントのしつこい野郎だな。何度も言わせるなっつったろ?てめえに用はねえんだよ」
「世界を救うため、か?くっくっく。急がないと世の中ぐちゃぐちゃだからか?」
「わかってんなら…」
「それとも、急がないと大事なそいつが犠牲になるからか?」
ニヤニヤと、気味の悪い笑いを浮かべてザギは私を見る
「……知ってるなら、邪魔しないで」
「おいおいおいおいおい!だからこそ意味があるんだろうが!」
「こいつ…何言ってんの?」
「こいつを見な。この先の封印式の構成式よ。つまり、この腕をぶっ壊さない限りこの先には進めねぇなぁ」
ザギの見た方向を見ると、次の階に向かう道の前に封印式が見えた
「なんてことを……」
「てめぇ……!」
「クハハハハハ!ユゥゥリィィ!世界とやらを……アリシアを救いたければオレとのぼりつめるしかないみたいだぜぇ?」
高らかに笑いながらザギはユーリを見る
ユーリの目は嫌悪と怒りに染まっている
「どうして!なぜこんな無意味なことを!」
「無意味?無意味だと?意味ならあるだろうが!この方が本気 で戦れる だろう?」
「ザギ……ここまでイカれた野郎だったとはな。いいぜ。ケリつけてやる」
そう言ってユーリは刀を抜いた
こいつとの因縁は……ここで終わらせないと
「はーっはっは!怒れ!もっとだ!もっと昂れ!本気 で来い!でないと……のぼりつめられないからなぁぁぁぁ!」
そう叫んでザギも武器を取った
こいつとの最後の戦いの火蓋が落とされた
「ははははははは!さぁ散れ散れ散れぇぇぇ!」
「もうここまでにしておこうぜ」
「その情熱、別のところに向けた方がいいぞ」
「ふはは!オレは貴様が死ぬまで追いつめてやる!」
「先に死ぬのはおまえだよ」
「ケハハハハハハ!!!減らず口も叩けるうちに叩いとけよ」
「お前こそそろそろ黙っとけ!」
「おらおらおらおらおらぁ!どうしたどうしたどうだだうだぁ!!」
「マジでケリつけるぜ」
戦闘中だというのに、ザギは必要にユーリに話かけている
彼の目にはユーリ以外は映っていないらしく、私達の方を見ようともしない
「微塵に砕け!ライオットホーン!」
リタが彼の背後から術を仕掛ける
その術がザギに当たる……と思いきや、みえていたかのように彼はそれを避ける
さっきからずっとそう
攻撃しても軽くあしらわれてしまうんだ
これじゃあユーリが持たない
「…カストロ…」
ポツリと名を呼ぶ
怒られるかもしれないけど、でも、これしかない
『僕は平気だけど……アリシアは?」
「……大丈夫、いけるよ」
『……そっか、ならいこう!』
カストロの声を合図に、みんなから離れる
「…神聖なる雫よ、この名を似ちて悪しきを散らせ!」
「…!ば、!シア!」
「ライトニングブラスター!」
私が発動させた術がザギに当たる
途中、レイヴンに当たり掛けたのは見なかったことにしておこう…
それでも、彼は倒れそうにない
なんか…むしろ標的私に変わった?
「はははははははははは!!!!アリシア!!!やっぱりお前もだ!!!お前もオレとのぼりつめようぜぇぇぇ!!!!」
「えぇ…ヤダよ、暑苦しいし」
そう言って向かってきたザギの攻撃をかわす
でも、必要に私を追いかけてくる
まぁ、これで少しはユーリが休めるけど…
私だって、そんなに長くは持たない
「くははははは!!どうした?さっきみたいに攻撃してこいよ!!」
そう言って、彼は剣を振りかざしてくる
…もう、面倒だなぁ…
「おらおらおらおら!!本気 で来いよ!!!」
「……その言葉、後悔しないでね?」
そう言って、ザギから少し距離を取る
術でもいいけど…でも、流石にこの距離じゃ詠唱に時間がかかる
…仕方ない、か…
「…白く輝くは白雷、暗黒轟くは黒雷、雷神纏うは二対なり…」
私の言葉に合わせて、白雷が白く、黒雷は黒く光を帯びる
…本当は、デュークさんと戦う時まで取っておくつもりだったけど…
「雷斬撃・白黒 !」
バチッと電気も帯びた刀をザギ目掛けて振りかざす
狙うのは身体じゃない
あの魔導器で出来た腕だけだ
黒雷が魔導器の腕に当たると、バチバチっと音が響く
「く……!!はははは!!面白い!やっぱり貴様も面白いなアリシア!!」
ザギはそう言って笑う
その顔がとてつもなく不気味で…
背筋がぞっとする
「…!アリシア!」
不意にフレンに名前を呼ばれる
振り返るよりも先に腕を引かれた
どうやら、ザギが攻撃しようとしていたらしく、さっきまで私のいた場所にザギの剣が振り下ろされていた
「くそっ!てめぇ…!腹ぁくくれよ!天狼滅牙!!」
続けざまにユーリのバーストアーツが入る
「く……ははははははは…」
それがクリーンヒットしたザギは、笑いながら地面に膝をついた
「いい加減くたばりやがれ!」
「執念深い男じゃのう」
「くくく、痛みがねえ、全然ねえ。おお?体が動かねえな。なんてやわな体なんだ。次は体も魔導器に変えてこよう。そうすりゃ、もっと楽しめる、そうだろ、ユーリィ?アリシア?」
そう言ってザギは高らかに笑う
…終わらせないと、か
ユーリよりも先にザギの元に近寄ってザギに刀を振り下ろす
「…地獄でやっててよ、そうゆうのは」
ザギはゆっくり後退していくとそのまま落ちて行った
「…………」
「人から理解されず、戦いに無理矢理意味をつけて……哀れな人」
「あれでもその筋じゃ結構、知られた名だったんだけどねえ。おたくらと関わってから、なんだか妙なことになってた」
「あの人、本当に戦いを楽しんでいるみたいでした。ユーリとなら…アリシアとなら本気で戦える、そう思ったんじゃないでしょうか?」
「それって、ユーリとアリシアくらいしか本気で戦える人がいなかったってこと?」
「知るかよ。あんないっちまったヤツのことなんざ」
「……だね。そんな理由でしつこくされるの迷惑だし」
「力をもてあましたヤツの成れの果て、じゃの」
「……」
口を閉ざしてザギの落ちた場所を見る
ジュディスの言う通り、確かに哀れな人だと思う
……でも、本当に、これしか彼を止める方法はなかったんだろうか…?
「つまんねぇ事で時間くっちまった。行こうぜ」
そう言いながらユーリは私の肩に手を乗せてきた
「……ジュディ?」
その声に振り返ると、ジュディスがバウルと会話しているようだった
「ええ、ええ分かったわ」
「バウルがどうかしたのか?」
「大丈夫、外の様子を聞いていただけ」
「生命力吸引の術式、どれくらい組み上がってる?」
「バウルは術式のことわからないから」
「そうよね……」
リタは少し残念そうに言いながら考え込み始めた
「……アルタイル」
『んー…七割程度…ってとこかな。この調子じゃ、あと数時間で組み上がりそうだね…』
「……そっか、ありがとう」
「何聞いてるの?」
「タイムリミットはあと数時間らしいぜ」
「なら急がないとですね」
「ええ。バウルには自分の判断で動いてって伝えておいたわ。私達も先に、ね?」
「うん。急ごう」
カロルのその声にみんな頷いて封印式の解けた道の先へ足を踏み出した
「……シア、平気か?」
歩きながらユーリが声をかけてくる
「ん?何が?」
「体だよ。さっき無駄に使いまくってたろ?」
「無駄って…一回しか使ってないもん」
「あん?じゃあ最後の技はなんだよ?」
「…あー…あれ、ね」
「あんなの見たことねえぞ?」
「そりゃあ…だって、あれ…使っちゃだめだし…」
「……は?」
「普段なら使うの禁止なの。あれ威力強すぎて人殺しちゃうから」
「ア…アリシアちゃん…何サラッと物騒な技使ってたのよ…」
「仕方ないじゃん、なかなか倒れなかったんだもん。まさかあれまともに食らって立ってられてるとは思わなかったよね…」
「……んで?そんなもん使ってて、本当にお前自身は平気なんだな?」
「だーかーらー!平気だってば。問題ないよ」
「それ、信じるわよ?」
「嘘じゃないから平気だって、もう…」
あまりにもみんな揃って心配してくるから思わず苦笑する
まぁ、それだけみんなに散々心配かけたってことなんだろうけど…
あれからさらに登った私達の目の前に長い階段が現れた
「あの階段は……」
階段に近づくと、上から光が差していた
「どうやら、この上が頂上みたいですね」
「みたいだね」
そう言ってみんなを見る
「ここが正念場だな。みんな、覚悟はいいか?」
「とっくに出来てるわよ」
「うん。僕達がやらなきゃいけないんだもん」
「ここで逃げたら、今晩の食事がまずくなるのじゃ」
「そゆこと。おっさんも流石にがんばっちゃうよ」
「わたしたちを信じて待っている人達の為にも必ず星喰みを倒します!」
「フェローやべリウス……始祖の隷長達の為にも、ね」
「ワン!」
「星が…シリウス達だって信じてくれてるんだもん。絶対倒そう」
私達の言葉にユーリとフレンは顔を見合わせた
二人はただ目を合わせると静かに頷き合った
「行こう!」
ユーリの掛け声を合図に、私達は階段を上って行った
「……レグルス……?」
バウルでタルカロンに乗り込んだ私達は、そのあまりの大きさに驚いた
まさかここまで大きいなんて…
資料で見たことはあったけれど、こんなにだとは思わなかった
「はえ~」
「すげえ、でかさだな」
「まさに天まで届けって感じだね」
「こんなのがアスピオの側に眠ってたなんて、いろんな意味でショックだわ」
「あの周りに展開しているのが、生命力を吸収する術式だろうか」
「……そうみたいね。まずいわ、結構早く組みあがって来てる」
「あまり時間は残されてないってか」
「いいことなのじゃ。時間が差し迫った方が人はやる気になるものじゃ」
「それはそうかもしれないけど…」
「今はご先祖様の加護が私達を守ってくれているから平気だよ。…少なくとも、あの術式が完成するまでは、ね」
「ならその間にてっぺんまで走って昇るのじゃ」
パティはニコッと笑ってそう言った
いやそれはちょっときついでしょ…
「星喰みとやる前にばてちゃうよ…」
「バウルに乗ってピューって天辺に行く訳にいかないの?」
「バウルに影響がないとしても私達が耐えられないと思うわ」
「あんた、塔登るのが嫌なんでしょ」
「あったりめえよ、俺様を誰だと思ってんの」
「んー、ナマケモノ?かな?」
「ちょっ!アリシアちゃん…!俺様そんなに怠けてはいないわよ…!?」
冗談混じりに言ったつもりが、本気にされてしまったみたいだ
慌てて言い返してくる彼の反応が面白くて、思わずクスッと笑ってしまった
「おっさんには悪いが歩きで登るしかねぇな」
「とほほ…」
「気を引き締めていこう」
「ああ。何が待ってるかわからねえ。油断するなよ」
ユーリを先頭に私達はタルカロンの中へと足を踏み入れた
中には今までに見たことのない風景が広がっていた
これ全部、魔導器なのかな…
「うわあ…」
「すげえな、これが全部、今まで土の下に埋まってたってのかよ」
「アスピオ周辺で多くの魔導器が発掘されたのも、ここがあってからなのかもしれないな」
「古代ゲライオス文明……本に書いてあったよりもずっとすごいです」
「なんだか変な感じね。星喰みに使うってくらいだから、これは兵器なんだろうけど、外からの眺めは都市みたいだった。都市を改造して兵器にしたのかな」
みんな思い思いにタルカロンについて考察をしている
……けど……
「星喰みと対等に戦うにはこんなに大きな街を犠牲にしなくてはならなかったのかの」
「……違う」
「へ?」
「…確かに兵器だけど…違う」
ポツリと小さく呟いた言葉は、一番近くにいたカロルでさえしっかりと聞き取れなかったらしく、傍で首を傾げていた
「デュークか…できればやりあいたくないねえ。やっこさん、人魔戦争の時、既に大した英雄だった。今となっちゃどれだけの力を身に付けていることやら」
「なぁに。デュークとケンカする前に星喰みを倒しちまえばいいんだよ」
「そうすればデュークだって人間を犠牲にする理由はなくなるもんね」
「そうだといいけどねぇ……」
そう言ってレイヴンは大きくため息をついた
……デュークさんと戦わないのは……
恐らく、無理だと思う
そんな気がしてならないんだ
暫く私達は塔を登り続けた
どこか帝都に似た雰囲気の街並みがあったり、複雑な仕掛けがあったりと、登るのに大分苦労している
恐らく、当時これを造った人が住人が上まで行けないように造ったんだろう
…まぁ、行かれても困るからなんだろうけど……
今こうして進んでる私達からしたら、大分余計なことだ
そんなことを考えながらかなり上の階へと登って来た
闘技場によく似た空間の中央に誰かがいる
「待ちかねたぞ……ユーリ・ローウェル」
その声はザギのものだった
闘技場で見かけて以来だけれど、その姿は大分変ってしまっている
魔導器と一体化している身体に機械音に近い声
最初の頃の面影はかなりなくなっていた
「どこに行こうってんだ?お前にはオレが居るだろう?」
「あいつは…!」
「生きていたのね。信じられないしぶとさ」
「こんな高いところまで疲れたじゃろう。わざわざご苦労さんじゃの」
「ホントのしつこい野郎だな。何度も言わせるなっつったろ?てめえに用はねえんだよ」
「世界を救うため、か?くっくっく。急がないと世の中ぐちゃぐちゃだからか?」
「わかってんなら…」
「それとも、急がないと大事なそいつが犠牲になるからか?」
ニヤニヤと、気味の悪い笑いを浮かべてザギは私を見る
「……知ってるなら、邪魔しないで」
「おいおいおいおいおい!だからこそ意味があるんだろうが!」
「こいつ…何言ってんの?」
「こいつを見な。この先の封印式の構成式よ。つまり、この腕をぶっ壊さない限りこの先には進めねぇなぁ」
ザギの見た方向を見ると、次の階に向かう道の前に封印式が見えた
「なんてことを……」
「てめぇ……!」
「クハハハハハ!ユゥゥリィィ!世界とやらを……アリシアを救いたければオレとのぼりつめるしかないみたいだぜぇ?」
高らかに笑いながらザギはユーリを見る
ユーリの目は嫌悪と怒りに染まっている
「どうして!なぜこんな無意味なことを!」
「無意味?無意味だと?意味ならあるだろうが!この方が
「ザギ……ここまでイカれた野郎だったとはな。いいぜ。ケリつけてやる」
そう言ってユーリは刀を抜いた
こいつとの因縁は……ここで終わらせないと
「はーっはっは!怒れ!もっとだ!もっと昂れ!
そう叫んでザギも武器を取った
こいつとの最後の戦いの火蓋が落とされた
「ははははははは!さぁ散れ散れ散れぇぇぇ!」
「もうここまでにしておこうぜ」
「その情熱、別のところに向けた方がいいぞ」
「ふはは!オレは貴様が死ぬまで追いつめてやる!」
「先に死ぬのはおまえだよ」
「ケハハハハハハ!!!減らず口も叩けるうちに叩いとけよ」
「お前こそそろそろ黙っとけ!」
「おらおらおらおらおらぁ!どうしたどうしたどうだだうだぁ!!」
「マジでケリつけるぜ」
戦闘中だというのに、ザギは必要にユーリに話かけている
彼の目にはユーリ以外は映っていないらしく、私達の方を見ようともしない
「微塵に砕け!ライオットホーン!」
リタが彼の背後から術を仕掛ける
その術がザギに当たる……と思いきや、みえていたかのように彼はそれを避ける
さっきからずっとそう
攻撃しても軽くあしらわれてしまうんだ
これじゃあユーリが持たない
「…カストロ…」
ポツリと名を呼ぶ
怒られるかもしれないけど、でも、これしかない
『僕は平気だけど……アリシアは?」
「……大丈夫、いけるよ」
『……そっか、ならいこう!』
カストロの声を合図に、みんなから離れる
「…神聖なる雫よ、この名を似ちて悪しきを散らせ!」
「…!ば、!シア!」
「ライトニングブラスター!」
私が発動させた術がザギに当たる
途中、レイヴンに当たり掛けたのは見なかったことにしておこう…
それでも、彼は倒れそうにない
なんか…むしろ標的私に変わった?
「はははははははははは!!!!アリシア!!!やっぱりお前もだ!!!お前もオレとのぼりつめようぜぇぇぇ!!!!」
「えぇ…ヤダよ、暑苦しいし」
そう言って向かってきたザギの攻撃をかわす
でも、必要に私を追いかけてくる
まぁ、これで少しはユーリが休めるけど…
私だって、そんなに長くは持たない
「くははははは!!どうした?さっきみたいに攻撃してこいよ!!」
そう言って、彼は剣を振りかざしてくる
…もう、面倒だなぁ…
「おらおらおらおら!!
「……その言葉、後悔しないでね?」
そう言って、ザギから少し距離を取る
術でもいいけど…でも、流石にこの距離じゃ詠唱に時間がかかる
…仕方ない、か…
「…白く輝くは白雷、暗黒轟くは黒雷、雷神纏うは二対なり…」
私の言葉に合わせて、白雷が白く、黒雷は黒く光を帯びる
…本当は、デュークさんと戦う時まで取っておくつもりだったけど…
「雷斬撃・
バチッと電気も帯びた刀をザギ目掛けて振りかざす
狙うのは身体じゃない
あの魔導器で出来た腕だけだ
黒雷が魔導器の腕に当たると、バチバチっと音が響く
「く……!!はははは!!面白い!やっぱり貴様も面白いなアリシア!!」
ザギはそう言って笑う
その顔がとてつもなく不気味で…
背筋がぞっとする
「…!アリシア!」
不意にフレンに名前を呼ばれる
振り返るよりも先に腕を引かれた
どうやら、ザギが攻撃しようとしていたらしく、さっきまで私のいた場所にザギの剣が振り下ろされていた
「くそっ!てめぇ…!腹ぁくくれよ!天狼滅牙!!」
続けざまにユーリのバーストアーツが入る
「く……ははははははは…」
それがクリーンヒットしたザギは、笑いながら地面に膝をついた
「いい加減くたばりやがれ!」
「執念深い男じゃのう」
「くくく、痛みがねえ、全然ねえ。おお?体が動かねえな。なんてやわな体なんだ。次は体も魔導器に変えてこよう。そうすりゃ、もっと楽しめる、そうだろ、ユーリィ?アリシア?」
そう言ってザギは高らかに笑う
…終わらせないと、か
ユーリよりも先にザギの元に近寄ってザギに刀を振り下ろす
「…地獄でやっててよ、そうゆうのは」
ザギはゆっくり後退していくとそのまま落ちて行った
「…………」
「人から理解されず、戦いに無理矢理意味をつけて……哀れな人」
「あれでもその筋じゃ結構、知られた名だったんだけどねえ。おたくらと関わってから、なんだか妙なことになってた」
「あの人、本当に戦いを楽しんでいるみたいでした。ユーリとなら…アリシアとなら本気で戦える、そう思ったんじゃないでしょうか?」
「それって、ユーリとアリシアくらいしか本気で戦える人がいなかったってこと?」
「知るかよ。あんないっちまったヤツのことなんざ」
「……だね。そんな理由でしつこくされるの迷惑だし」
「力をもてあましたヤツの成れの果て、じゃの」
「……」
口を閉ざしてザギの落ちた場所を見る
ジュディスの言う通り、確かに哀れな人だと思う
……でも、本当に、これしか彼を止める方法はなかったんだろうか…?
「つまんねぇ事で時間くっちまった。行こうぜ」
そう言いながらユーリは私の肩に手を乗せてきた
「……ジュディ?」
その声に振り返ると、ジュディスがバウルと会話しているようだった
「ええ、ええ分かったわ」
「バウルがどうかしたのか?」
「大丈夫、外の様子を聞いていただけ」
「生命力吸引の術式、どれくらい組み上がってる?」
「バウルは術式のことわからないから」
「そうよね……」
リタは少し残念そうに言いながら考え込み始めた
「……アルタイル」
『んー…七割程度…ってとこかな。この調子じゃ、あと数時間で組み上がりそうだね…』
「……そっか、ありがとう」
「何聞いてるの?」
「タイムリミットはあと数時間らしいぜ」
「なら急がないとですね」
「ええ。バウルには自分の判断で動いてって伝えておいたわ。私達も先に、ね?」
「うん。急ごう」
カロルのその声にみんな頷いて封印式の解けた道の先へ足を踏み出した
「……シア、平気か?」
歩きながらユーリが声をかけてくる
「ん?何が?」
「体だよ。さっき無駄に使いまくってたろ?」
「無駄って…一回しか使ってないもん」
「あん?じゃあ最後の技はなんだよ?」
「…あー…あれ、ね」
「あんなの見たことねえぞ?」
「そりゃあ…だって、あれ…使っちゃだめだし…」
「……は?」
「普段なら使うの禁止なの。あれ威力強すぎて人殺しちゃうから」
「ア…アリシアちゃん…何サラッと物騒な技使ってたのよ…」
「仕方ないじゃん、なかなか倒れなかったんだもん。まさかあれまともに食らって立ってられてるとは思わなかったよね…」
「……んで?そんなもん使ってて、本当にお前自身は平気なんだな?」
「だーかーらー!平気だってば。問題ないよ」
「それ、信じるわよ?」
「嘘じゃないから平気だって、もう…」
あまりにもみんな揃って心配してくるから思わず苦笑する
まぁ、それだけみんなに散々心配かけたってことなんだろうけど…
あれからさらに登った私達の目の前に長い階段が現れた
「あの階段は……」
階段に近づくと、上から光が差していた
「どうやら、この上が頂上みたいですね」
「みたいだね」
そう言ってみんなを見る
「ここが正念場だな。みんな、覚悟はいいか?」
「とっくに出来てるわよ」
「うん。僕達がやらなきゃいけないんだもん」
「ここで逃げたら、今晩の食事がまずくなるのじゃ」
「そゆこと。おっさんも流石にがんばっちゃうよ」
「わたしたちを信じて待っている人達の為にも必ず星喰みを倒します!」
「フェローやべリウス……始祖の隷長達の為にも、ね」
「ワン!」
「星が…シリウス達だって信じてくれてるんだもん。絶対倒そう」
私達の言葉にユーリとフレンは顔を見合わせた
二人はただ目を合わせると静かに頷き合った
「行こう!」
ユーリの掛け声を合図に、私達は階段を上って行った
『千年前とは違い、我らが理想とした行動を、今を生きる者たちはとった』
『懸命に、未来を勝ち取ろうと……』
『……だが……その先に待つ未来に、我が子孫は存在するのか?』
『…我らが姫は、そこにいるのか?』
『…………否、それは不可能だ』
『……我に、もっと力があれば……』
『……我が、もっと前に奴を宥めていれば……』
『何が最強の初代だ。子孫一人守れない我に、そのような名を名乗る資格はない』
『…………すまない……----……我は……』
「……レグルス……?」