第3部〜星喰みの帰還と星暦の使命〜
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雪解けの光ーオルニオンー
「………!!っ……は………っ……はぁ………」
…何…?今の、声……
不吉な声に目が覚めて、辺りを見回す
部屋はまだ薄暗くて、でも、窓からほんの少し光が見えている
ベッドから出て窓に寄ると、太陽がゆっくりと顔を出し始めていた
…もう、朝……なんだ
部屋を見回して見ると、みんなはまだ眠っているみたい
シンとした部屋の中で、時折レイヴンのいびきと、カロルの寝言が聞こえてくる
…みんな、よくこれで寝られるな…
そんなことを考えながらユーリの寝ているベッドに近づく
珍しくぐっすりと眠っているらしく、私が隣に来ても起きる気配はない
…本当は起きていて欲しかったんだけど……
さっきの声が、頭から離れない
夢にしてはやけにリアルな声で……現実みたいだった
…あの姿も、妙に現実帯びてて、手を伸ばせば触れてしまいそうで……
…でももし、あの声が…見たものが、夢じゃなかったとしたら…
そう考えただけで背筋が凍る
一瞬で頭の中を恐怖が埋めつくした
もしも、本当に手遅れだったら……
そんなこと、考えたくもない
それでも…考えなければいけないのだ
怯えてる暇なんてないんだ
「……シリウス……」
ポツリと、小さく名前を呼んだ
彼は本当の親ではないし、彼が生きている時に出会ったことも無い
……それでも、本当の父親のように接してくれている彼だからこそ、こうゆう時にどうしても頼りたくなってしまう
『どうした?こんな夜明け頃に呼ぶなど…お前にしては珍しいな』
頭の中にシリウスの声が響く
まさか本当に答えてくれるとは思っていなくて、少し驚いた
「………ちょっと、怖い夢……見ちゃって、つい…」
小さな子どものような理由に、自分で言って恥ずかしくなった
もうそんな歳でもないのに…
『……そうか。ならば布団に戻れ。…昔のように寝かしつけてやろう。起きるには…まだ早いだろう?』
「………寝かしつけて貰わなきゃいけないほど子どもでもないけど……わかったよ」
そう答えて布団に戻ろうとした
…その時、急に腕を引っ張られた
…誰、かなんて、わかってる
「ぅわっ…!」
「…こんな時間にシリウスとお話か?」
私を引っ張ったのはもちろんユーリで
気づけば彼の布団の中に引き込まれていた
「ゆ、ユーリ…みんな起きたらどうするのさ…」
「いいだろ?別に。んで、どうしたんだよ?」
私の頬を撫でながら、ユーリは問いかけてくる
思わず言葉に詰まってしまう
だって、笑われかねないし…
『怖い夢を見て目が覚めたそうだ。今から寝かしつけてやるところだったのだよ』
シリウスはあっさりとそう伝えてしまう
…これで笑われたら、本気で怒る…
でも、ユーリから返ってきた言葉は意外なものだった
「ふーん…珍しいな、シアがそんなんで目覚ますの」
そう言って私を強く抱きしめると、そっと頭を撫でてきた
何故だか変にドキドキして、心臓の音が妙に煩い
『ユーリもどうせ眠れないのだろう?…特別に寝かしつけてやろう。二人とも目を瞑るといい』
「そんな歳でもねえんだが…ま、お言葉に甘えさせてもらうとしますか。…シア、目閉じろ」
「…う、ん……」
「大丈夫だって。…オレは傍にいるぜ?」
ユーリの言葉に、渋々目を閉じて背に手を回して軽く服を掴んだ
また同じものを見るのではと、思わずユーリの服を掴んだ手に力が入った
…あれはもう、見たくない……
そんな私を落ち着かせようと、ユーリは優しく背を撫でてくれる
それだけでもだいぶ気持ちは楽になった
ユーリの傍にいるだけで安心出来るのは不思議だ
そうしていると、シリウスの歌う声が聞こえてくる
久しぶりに聞くこの歌はなんて歌だったっけ…
聞くのは久しぶりで、名前は覚えてない
ただ……シリウスだけじゃなくて、お母様も、お父様も歌って下さった歌だ
歌詞だけはしっかり覚えてる
妙に落ち着く歌を聞きながら、私はもう一度眠りについた
ー朝ー
「よく眠れたようだな」
宿屋の外でみんなを見ながらユーリは言った
「はい」
「もうぐっすり」
「最初に来た時とはダンチで快適なベッドだったわ」
「ああ。随分しっかりとした街になったからな」
「もうここは立派な街なのだから名前を付けないとね」
「それならうちの名付け係達の出番ね」
そう言ってリタは私とエステルを見た
自分が呼ばれたと思ったらしく、名付けようとしたカロルにチョップをしていたことには触れないでおこう…
「それなら…オルニオン、なんてどう?」
「意味は雪解けの光、ですね」
「オルニオン……いい名前ですね」
ヨーデル様の声に振り返ると、満面の笑みを浮かべた彼とフレン達の姿が見えた
「殿下のお墨付きだ。決まりだな」
「そうそう、こっちも出来てるわよ」
リタはそう言って一本の剣を取り出した
「明星壱号じゃな?」
「……これ、ヨーデルの剣、ですね」
「ええ!?そんなの使っちゃっていいの?」
「構造といい、大きさといい、丁度良かったのよ。これレアメタル製だしね」
「レアメタル……確か、非常に高い硬度が特徴の希少金属、ですね」
…あれ、それどっかで聞いたことあるような…
…どこ、だっけ?割と身近だった気が…
「皆さんが議論しているのを聞いて、この剣のことを思い出したんです。どうせ私は剣はからきしですし、お役に立つなら本望ですよ」
「でもなんかもう別物って感じよ」
「剣としても悪くないな」
何度か素振りをしながらユーリは満足げに言った
「それじゃあ、壱号改め弐号だね♪」
「…もう何でもいいわよ」
はぁ…っと大きくため息をつきながらリタは項垂れた
「いよいよだね」
いつになく真剣な表情でフレンはユーリを見る
「ああ、今度こそ本当の本当に最後の決戦だ」
「魔導器ネットワークの構築は我々に任せてくれ」
「……いえ、隊長も彼らと共に行って下さい」
そう言って、ソディアはフレンの前に出た
これに一番驚いたのはフレンだった
「ソディア!?」
「何があるか分かりません。彼らには隊長の助けがいるはずです」
フレンを見つめるその瞳には決意が見て取れた
この間のことで、彼女なりの答えを見つけられたのだろうか
「騎士団は魔導器のことで人々を説得する任務もあるんだぞ」
「分かっています。人々の協力なくして成功しない。肝に銘じています」
「大丈夫です。僕だっているんですから」
ソディアの言葉に続けてウィチルフレンを見つめて言う
若干戸惑い気味にフレンはヨーデル様を見る
彼もまた、フレンに行くことを促すかのように頷いた
「……分かった。ただしソディア、ウィチル。例え別々に行動していても僕達は仲間だ。それだけは忘れないでくれ」
「はい!」「……はい!」
そう言ったフレンはユーリを見て頷く
それにユーリもまた、頷いて答える
…言葉にしなくても通じ合える二人の関係が、ほんの少し羨ましかったりもする
「魔導器と精霊の件は、私達指導者は納得し、その後の方針を話し合いましたが全ての人々がこの変化を受け入れるのには時間がかかると思います」
「そうですね…。戸惑う人は大勢いるでしょう」
「ですが、受け入れなければ新しい世界を生きていくことはできません」
「ああ、その通りだ」
「まずはここに居る人達から話してみます。ただの野原から、このオルニオンという素晴らしい街を生み出した彼らなら……」
「ええ。きっと受け入れてくれるでしょう」
「頼むぜ、オレが言ったって誰も聞きゃしないからな」
自嘲気味にユーリはそう言う
「下町のみんななら聞いてくれると思うけどね」
クスッと笑いながらユーリを見ると、彼は困ったように笑いながら肩を竦めた
「エステリーゼ、それに皆さんも気を付けて」
ヨーデル様の言葉を受けて、私達は街の入り口へと足を向けた
「アリシアさん」
一番後ろを歩いていた私にヨーデル様は声をかけてくる
「…どうか、ご無事で。皆さんと一緒に此処に帰って来ることを、心から願っています」
私だけに聞こえるように彼は言った
どこか寂し気な笑顔から、強くそう思っていることが読み取れた
「……ありがとうございます。私も……ここにまた、戻って来られることを望んでいますよ」
ニッコリと微笑んで彼にそう告げた
そして、少し小走りでみんなの後を追いかける
出る直前、ソディアの掛け声が聞こえた
みんなは立ち止まって心配そうに後ろを振り返る
「大丈夫かしら」
「みんな私達を信じて送り出してくれたんだから、私達も信じよう」
「ええ」
そう言っても尚心配そうにしているフレンの肩を、ユーリは軽く叩いた
それにゆっくりとフレンは頷いた
「さぁ、オレ達はオレ達の仕事をこなさなきゃな。カロル、締めろ」
「うん。みんな!絶対成功させるよ!凛々の明星、出発!」
「了解」「ええ」「のじゃ」「はい!」「ああ」「おう」「ほいさ」「ワン!」「うん!」
そう気合を入れて私達はバウルに乗り込んだ
《何故人は、争いを求めるのだろうか?》
《何故人は、他者の言葉を受け入れぬのだろうか?》
《何故人は、ろくに知識もないというのに、知識のある者の助言や忠告を聞き入れぬのだろうか?》
《何故人は、自分と違う姿形をした者を受け入れぬのだろうか?》
《何故人は、己と違う思考の者を受け入れようとしないのだ?》
《他者を陥れ、己らだけの繁栄を望み、世界さえも犠牲にしようとする彼らは必要か?》
《己とは違う者をいとも容易く死に追い詰めるような、生命の重さも分からぬ彼らは必要か?》
《殺さずとも、常に他者を見下すことでしか己に価値を見出せない彼らに存在価値はあるのか?》
《……否。彼らに存在意義等ない》
《彼ら等、世界に必要ではない》
《他者と分かり合えぬ者等はこの世界に不必要だ》
《己と似た姿形をした者しか認めぬ奴ら等、この世界には不要だ》
《そうだと言うのに、無能な同胞らは彼らまで救おうとする》
《奴ら等助けて何になるというのだ?》
《世界を破滅に追いやった奴らを救う価値はなんだ?》
《世界を救おうとし、唯一我らと共に行動した一族を滅亡寸前まで追い込んだ奴らを助ける意味はなんだ?》
《そして…忘れたとでも言うのか?我らが悲劇を》
《奴らの繁栄の為が故に殺された同胞たちの無念をも、あやつらは忘れたのか?》
《…憎い。人も、人に手を貸す同胞も……この世界そのものが憎い》
《何故世界の為にと働いた我らが、このような仕打ちに合うのだ?》
《何故世界を救おうと命を賭けた我らがこのような目にあうのだ?》
《世界の為に生きた我らが世界に拒まれるなどあり得ぬ》
《……いや、あっては為らぬ》
《……憎い、憎い、憎い憎い憎い、にくい、にくいにくいにくいにくい、にくイにくイ、にクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ……》
《……コノ、世界モロとも、ヒトなど滅びテしまエバいい》
《ヒトに手を貸ス同胞も、ヤツラと共ニ滅びルが良い》
《同胞ラが、ヤツらに手を貸スというのならバ、我ラは自ら、ヤツラに裁きヲ下してヤロウ》
《己ラの間違いにモ気づけナイ無能共に、裁キを下してヤロウ》
《己ラの繁栄ガ為に、他者を貶めル強欲ナヤツラに、裁キを下そウ》
《破滅ノ前に、悔いルガよい》
《ソシテ思い知レ…己ラが業を。我ラの痛ミを。永久二続く終わりなきクルシミヲ……!その身を持っテ味わうガイイ……!》
「………!!っ……は………っ……はぁ………」
…何…?今の、声……
不吉な声に目が覚めて、辺りを見回す
部屋はまだ薄暗くて、でも、窓からほんの少し光が見えている
ベッドから出て窓に寄ると、太陽がゆっくりと顔を出し始めていた
…もう、朝……なんだ
部屋を見回して見ると、みんなはまだ眠っているみたい
シンとした部屋の中で、時折レイヴンのいびきと、カロルの寝言が聞こえてくる
…みんな、よくこれで寝られるな…
そんなことを考えながらユーリの寝ているベッドに近づく
珍しくぐっすりと眠っているらしく、私が隣に来ても起きる気配はない
…本当は起きていて欲しかったんだけど……
さっきの声が、頭から離れない
夢にしてはやけにリアルな声で……現実みたいだった
…あの姿も、妙に現実帯びてて、手を伸ばせば触れてしまいそうで……
…でももし、あの声が…見たものが、夢じゃなかったとしたら…
そう考えただけで背筋が凍る
一瞬で頭の中を恐怖が埋めつくした
もしも、本当に手遅れだったら……
そんなこと、考えたくもない
それでも…考えなければいけないのだ
怯えてる暇なんてないんだ
「……シリウス……」
ポツリと、小さく名前を呼んだ
彼は本当の親ではないし、彼が生きている時に出会ったことも無い
……それでも、本当の父親のように接してくれている彼だからこそ、こうゆう時にどうしても頼りたくなってしまう
『どうした?こんな夜明け頃に呼ぶなど…お前にしては珍しいな』
頭の中にシリウスの声が響く
まさか本当に答えてくれるとは思っていなくて、少し驚いた
「………ちょっと、怖い夢……見ちゃって、つい…」
小さな子どものような理由に、自分で言って恥ずかしくなった
もうそんな歳でもないのに…
『……そうか。ならば布団に戻れ。…昔のように寝かしつけてやろう。起きるには…まだ早いだろう?』
「………寝かしつけて貰わなきゃいけないほど子どもでもないけど……わかったよ」
そう答えて布団に戻ろうとした
…その時、急に腕を引っ張られた
…誰、かなんて、わかってる
「ぅわっ…!」
「…こんな時間にシリウスとお話か?」
私を引っ張ったのはもちろんユーリで
気づけば彼の布団の中に引き込まれていた
「ゆ、ユーリ…みんな起きたらどうするのさ…」
「いいだろ?別に。んで、どうしたんだよ?」
私の頬を撫でながら、ユーリは問いかけてくる
思わず言葉に詰まってしまう
だって、笑われかねないし…
『怖い夢を見て目が覚めたそうだ。今から寝かしつけてやるところだったのだよ』
シリウスはあっさりとそう伝えてしまう
…これで笑われたら、本気で怒る…
でも、ユーリから返ってきた言葉は意外なものだった
「ふーん…珍しいな、シアがそんなんで目覚ますの」
そう言って私を強く抱きしめると、そっと頭を撫でてきた
何故だか変にドキドキして、心臓の音が妙に煩い
『ユーリもどうせ眠れないのだろう?…特別に寝かしつけてやろう。二人とも目を瞑るといい』
「そんな歳でもねえんだが…ま、お言葉に甘えさせてもらうとしますか。…シア、目閉じろ」
「…う、ん……」
「大丈夫だって。…オレは傍にいるぜ?」
ユーリの言葉に、渋々目を閉じて背に手を回して軽く服を掴んだ
また同じものを見るのではと、思わずユーリの服を掴んだ手に力が入った
…あれはもう、見たくない……
そんな私を落ち着かせようと、ユーリは優しく背を撫でてくれる
それだけでもだいぶ気持ちは楽になった
ユーリの傍にいるだけで安心出来るのは不思議だ
そうしていると、シリウスの歌う声が聞こえてくる
久しぶりに聞くこの歌はなんて歌だったっけ…
聞くのは久しぶりで、名前は覚えてない
ただ……シリウスだけじゃなくて、お母様も、お父様も歌って下さった歌だ
歌詞だけはしっかり覚えてる
妙に落ち着く歌を聞きながら、私はもう一度眠りについた
ー朝ー
「よく眠れたようだな」
宿屋の外でみんなを見ながらユーリは言った
「はい」
「もうぐっすり」
「最初に来た時とはダンチで快適なベッドだったわ」
「ああ。随分しっかりとした街になったからな」
「もうここは立派な街なのだから名前を付けないとね」
「それならうちの名付け係達の出番ね」
そう言ってリタは私とエステルを見た
自分が呼ばれたと思ったらしく、名付けようとしたカロルにチョップをしていたことには触れないでおこう…
「それなら…オルニオン、なんてどう?」
「意味は雪解けの光、ですね」
「オルニオン……いい名前ですね」
ヨーデル様の声に振り返ると、満面の笑みを浮かべた彼とフレン達の姿が見えた
「殿下のお墨付きだ。決まりだな」
「そうそう、こっちも出来てるわよ」
リタはそう言って一本の剣を取り出した
「明星壱号じゃな?」
「……これ、ヨーデルの剣、ですね」
「ええ!?そんなの使っちゃっていいの?」
「構造といい、大きさといい、丁度良かったのよ。これレアメタル製だしね」
「レアメタル……確か、非常に高い硬度が特徴の希少金属、ですね」
…あれ、それどっかで聞いたことあるような…
…どこ、だっけ?割と身近だった気が…
「皆さんが議論しているのを聞いて、この剣のことを思い出したんです。どうせ私は剣はからきしですし、お役に立つなら本望ですよ」
「でもなんかもう別物って感じよ」
「剣としても悪くないな」
何度か素振りをしながらユーリは満足げに言った
「それじゃあ、壱号改め弐号だね♪」
「…もう何でもいいわよ」
はぁ…っと大きくため息をつきながらリタは項垂れた
「いよいよだね」
いつになく真剣な表情でフレンはユーリを見る
「ああ、今度こそ本当の本当に最後の決戦だ」
「魔導器ネットワークの構築は我々に任せてくれ」
「……いえ、隊長も彼らと共に行って下さい」
そう言って、ソディアはフレンの前に出た
これに一番驚いたのはフレンだった
「ソディア!?」
「何があるか分かりません。彼らには隊長の助けがいるはずです」
フレンを見つめるその瞳には決意が見て取れた
この間のことで、彼女なりの答えを見つけられたのだろうか
「騎士団は魔導器のことで人々を説得する任務もあるんだぞ」
「分かっています。人々の協力なくして成功しない。肝に銘じています」
「大丈夫です。僕だっているんですから」
ソディアの言葉に続けてウィチルフレンを見つめて言う
若干戸惑い気味にフレンはヨーデル様を見る
彼もまた、フレンに行くことを促すかのように頷いた
「……分かった。ただしソディア、ウィチル。例え別々に行動していても僕達は仲間だ。それだけは忘れないでくれ」
「はい!」「……はい!」
そう言ったフレンはユーリを見て頷く
それにユーリもまた、頷いて答える
…言葉にしなくても通じ合える二人の関係が、ほんの少し羨ましかったりもする
「魔導器と精霊の件は、私達指導者は納得し、その後の方針を話し合いましたが全ての人々がこの変化を受け入れるのには時間がかかると思います」
「そうですね…。戸惑う人は大勢いるでしょう」
「ですが、受け入れなければ新しい世界を生きていくことはできません」
「ああ、その通りだ」
「まずはここに居る人達から話してみます。ただの野原から、このオルニオンという素晴らしい街を生み出した彼らなら……」
「ええ。きっと受け入れてくれるでしょう」
「頼むぜ、オレが言ったって誰も聞きゃしないからな」
自嘲気味にユーリはそう言う
「下町のみんななら聞いてくれると思うけどね」
クスッと笑いながらユーリを見ると、彼は困ったように笑いながら肩を竦めた
「エステリーゼ、それに皆さんも気を付けて」
ヨーデル様の言葉を受けて、私達は街の入り口へと足を向けた
「アリシアさん」
一番後ろを歩いていた私にヨーデル様は声をかけてくる
「…どうか、ご無事で。皆さんと一緒に此処に帰って来ることを、心から願っています」
私だけに聞こえるように彼は言った
どこか寂し気な笑顔から、強くそう思っていることが読み取れた
「……ありがとうございます。私も……ここにまた、戻って来られることを望んでいますよ」
ニッコリと微笑んで彼にそう告げた
そして、少し小走りでみんなの後を追いかける
出る直前、ソディアの掛け声が聞こえた
みんなは立ち止まって心配そうに後ろを振り返る
「大丈夫かしら」
「みんな私達を信じて送り出してくれたんだから、私達も信じよう」
「ええ」
そう言っても尚心配そうにしているフレンの肩を、ユーリは軽く叩いた
それにゆっくりとフレンは頷いた
「さぁ、オレ達はオレ達の仕事をこなさなきゃな。カロル、締めろ」
「うん。みんな!絶対成功させるよ!凛々の明星、出発!」
「了解」「ええ」「のじゃ」「はい!」「ああ」「おう」「ほいさ」「ワン!」「うん!」
そう気合を入れて私達はバウルに乗り込んだ
《……彼らが子孫ハ、何故ヒトの為にその身ヲ捧げヨウトしてイルのだ?》
《無能な満月が子ノ過ちデ、先祖が殺サレタというノニも関わらず……》
《……何故、ヤツラを助けようとシテイル?》
《我らハ彼女と争いタクはナイ》
《我らが失いシ同胞ヲ弔っタ彼ガ子孫と争イタクはナイ》
《……ダガ、我らは世界ガニクイ》
《……ヒトがニクイ》
《彼女がヒトに手を貸スというのデアレバ……》
《……我らハ……》