第1部〜水道魔導器魔核奪還編〜
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クオイの森と少年
砦から西に少し進むとクオイの森についた
本当、相変わらず薄暗い森だなぁ…
ユーリが入ろうとするとエステルが驚いた声をあげた
「あの…ここってクオイの森…ですよね?」
おずおずとしながらエステルはユーリと私を交互に見つめる
「ご名答」
ユーリがパチンッと指を鳴らすと、半分悲鳴に近い声をあげる
「呪いの森!!」
「知ってるのか?」
ユーリが答えると、エステルはますます怯えた声になる
「入った者に次々と恐ろしいことが降りかかる呪いの森…と、本で読みました」
「なるほどな。それがお楽しみってわけか」
ユーリは冷静に言うと、小さく笑って歩き出した
「エステル、行こ?」
「で、でも…」
そう躊躇するエステルの手を無理矢理引っ張って、ユーリの後を追いかける
しばらく森の中を歩いていると、エステルが森の暗さと雰囲気に耐えきれなくなったのか、繋いでいた私の手を思い切り握ってきた
「えっと、大丈夫?エステル」
少し心配になってそう声をかけた
「は、はい……アリシアは怖くないんですか…?」
怯えながらエステルは逆に問いかけてきた
「んー…まぁ、一度仕事で入ったことあるし…」
そう言うと、エステルは驚いた声をあげた
「入ったこと、あるんですか!?」
「うん。特に何も起こらなかったよ?」
まぁ、あんまり奥まで入ってないんだけど…
とは、あえて言わなかった
「ほーら、シアがそういってるし、大丈夫だろ。さっさといくぞー」
ユーリがそう言うと、エステルは辺りを見渡す
「この森…本当に砦の向こうに抜けられるんですか?」
「抜けられなかったら戻りゃいいって」
「……もし呪いでカエルやヘビになったりしたら、どうしましょう…」
そんなエステルの心配に、私は思わず笑ってしまった
「あははっ!そうだとしたら、私もカエルとかになってるはずだよ」
クスクスと笑っていると、思い出したようにエステルは声をあげる
「あ…それもそうですよね…」
「安心しとけ、もしそうなったとしてもちゃーんと面倒みてやったからよ」
冗談混じりにユーリはそう言うと、エステルは戸惑いながユーリを見る
「でも…私、ユーリ達がヘビやカエルになったら、お世話する自信ありません…」
自信が無さそうにエステルはそう呟く
「あはは…私も無理かな…」
肩を竦めてそう言うと、前に居たユーリが苦笑いする
「まあそうだろうな」
その会話にエステルは一人首を傾げる
「…私、ヘビとかカエル…触れないんだよね…」
と、苦笑してエステルの方を向く
「そうなんです?」
「うん…あの、ぬめぬめざらざらしてる感触が気持ち悪くって…」
…想像しただけでも鳥肌が立つ
繋いでいたエステルの手を離して両手で腕を擦る
「ほーら、それよかさっさと抜けちまおうぜ」
若干呆れ気味にそう言って、ユーリはスタスタと先へ歩いて行く
「あっ!お、置いていかないでくださいっ!」
その後をエステルは慌てて追いかける
私も二人の後を追いかけようと足を進めようとしたその時、後ろからガサガサっと、音が聞こえたきがして慌てて振り向く
が、特に魔物がいるわけでもないので少し立ち止まって辺りを見回した
「……確かに今、何かいた気がしたんだけど…」
ボソッ呟きもう一度、来た方向を見たがそこには入口へ続く道があるだけで、特に何もいなかった
「……おっかしいなぁ……」
「おーい、シア!早く来いよ!」
一人首を傾げていると、ユーリに呼ばれた
振り向くと、二人はかなり先へ進んでいたようだ。
「ごめん!今行く!」
気の所為……だったのかな…?
そう思い、それ以上音の主を探すのをやめ、ユーリ達の元へと走っていく
アリシアが立ち去った後、茂みの中から大きな影がのっそりと出てきたことを、彼女達は知ることはなかった
森の中央付近まで来たところで、少し開けた広場のような空間に出た
そこにはもう動かなくなった感じの魔導器が置いてあった
「これ…魔導器ですね。なんでこんなところに…」
魔導器を見つめながらエステルは首を傾げる
「これ…もう動かないんでしょうか?」
「魔核はあるみたいだから、動きそうだけどね」
私がそう答えると、エステルは徐ろに動いていない魔導器に触れようとした
その途端、魔導器から眩い光が放たれた
「うわっ!」「きゃあっ!!?」
光が収まると、魔導器の前でエステルが倒れていた
「エステル!?」
起き上がってすぐに私はエステルの傍に駆け寄った
どうやらただ気絶しているだけのようだ
ほっと一息つき、すぐに魔導器からエステルを遠ざけ、離れたところに寝かしつけた
「シア、エステルは!?」
「大丈夫、気絶してるだけだよ」
肩を軽く竦めてそう答えると、ユーリはほっと息をつく
「そうか。にしても、なんで急に…」
ユーリもすぐに傍にやってきた
膝の上にエステルの頭を乗せていたが、ラピードが気を利かせてくれているのか、自分の背中に乗せていいと、合図してきた
「ありがとう、ラピード」
私はそう言って、ラピードの頭を撫でる
そして、ユーリの方を向いて
「多分、エアルに酔ったんだと思う。濃度が高いエアルは体に毒だからさ」
と告げた
「エアル?って空気中に漂ってるやつだよな?さっきの光がそうなのか?」
首を傾げるユーリにコクンと頷いた
「私にもよくわからないけど、多分そうだと思う。なんでそんな急激にエアルが集まったのかはわからないけど…」
「ふーん…ま、エステルも目を覚まさなさそうだし、今日はここで休むとするか」
ユーリの提案に頷いて賛同する
「だね。エステルが目を覚ましてもすぐに動くのは危ないだろうし…ね」
そうゆうことで今日はもう休むことに決めた
あの魔導器には近づかないようにしよう、とユーリは言って下町の人達から貰った食材で夕飯を作り始めた
「う…ん……?」
「あ、エステル!目覚めた?」
あれから数時間経った頃にエステルは目を覚ました
「あ…れ?私……」
「気絶してたんだよ。大丈夫か?」
ゆっくりとエステルは起き上がる
どうやらそこまでダメージは高くないようだ
「はい…大丈夫です」
「よかった…でも、今日はここでこのまま休もう?この先で倒れちゃったら元も子もないしさ」
「はい……迷惑かけてごめんなさい…」
「迷惑なんかじゃないよ!」
しゅんとしてしまうエステルをすかさずフォローする
そんな話をしていると、温めなおした夕飯をもってユーリが来た
「ほら、腹減ってるだろ?」
そう言って先ほど作ったマーボーカレーを手渡した
「美味しそう!これ、ユーリが作ったんです?」
「ん?あぁ、そうだぜ」
「すごいです!私、料理とかしたことないんです!」
「んな大したもんじゃねーけどな」
「いただきます!」
そう言って美味しそうに食べるエステル
そんなエステルを嬉しそうに眺めるユーリ
(………やば、ちょっと嫉妬しそう)
ズキッと心が痛む
ユーリが嬉しそうなのはエステルに褒めてもらったからだし、そんな気持ちがあるわけではないことはわかっているけれども…
それでも心配になってしまう
駄目だなぁ…私もまだまだだな…
「ユーリ!」
「おう?どうした?シア?」
「ちょっと星見に行ってくるからっ!」
「え?あ、おい!シア!」
星を見に行く、と、言うだけ言って木を登って行く
元々、昔から活発だったうえに身軽だったから、木を登るくらい簡単で、一番上に着くまでにそう時間はかからなかった
とりあえず、今だけは二人と居たくなかった
また昨日みたいに星達と話そうと思った
なんでもいい
ただ、気を紛らせたかった
頂上につくと目の前にはうっそうとしている森と、綺麗な星空だけが見えた
「……やっぱり、この時間のこの空が一番好きだなぁ…」
それは星暦という一族に生まれたからか、またはそんなことは関係なくなのか
私にはわからなかった
木に登ってからどのくらい時間が経っただろうか
星達の会話はものすごく弾んでいて、昔話から最近のことなど、沢山の話をしていた
気がついた時にはもう、日がゆっくりと登り始めていた
「わ……もう夜明けかぁ……」
結局、寝ずに話し込んでしまったなぁ…と若干苦笑いする
『じゃあ、また夜に話そうか』
カストロが少し名残惜しそうに言う
時間的にも話すのが難しいんだろう
「ん、わかった。また話の続き、聞かせてね」
ニコッと空に笑いかける
『うん!またね!アリシア!』
『あ、そうだ!大事なこと伝えるの忘れてた!』
別れを告げるとカストロの気配はなくなったが、ポルックスが何かを伝え忘れたと少し慌てて話しかけてくる
「大事なこと?」
『この先のハルルの結界魔導器 、なんだか大変なことになってるみたいだよ。何が起こるかわかんないから、気をつけてね!』
そう早口で言うと、ポルックスの気配もなくなった
「……ありがとう、気をつけるね」
小声で二人にお礼を言う
そして小さく背伸びをして、空を見る
何もかも吸い込むような黒から、優しい青へと変わっていた
「…まるで、ユーリとフレンみたい」
「何がオレとフレンみたいだって?」
「うわっ!?ゆ、ユーリ!?」
空を眺めていながらそう考えていると、急に後ろから声をかけられた
「んなに驚くなよ…で?何がオレとフレンみたいだって?」
近くまで登って来て、ユーリはもう一度同じ質問を繰り返す
「空の色がってことだよ。夜はユーリみたいに黒くて、昼はフレンみたいに青いでしょ?」
そう笑顔で答える
するとユーリは、あぁなるほどな、っと納得したように指を鳴らす
「ほーら、朝ごはん作ったからいい加減、下降りるぞ」
「はーい」
そう答えて器用に木をスタスタと降りていく
そんな彼女を見て、小さくため息をついた
「ったく…人の気も知らないで、自由に動き回るお嬢さんだな…」
苦笑いしながら小さく呟き、ゆっくりと木を降りていった
朝食を食べ終えた一行は、森の奥へと進んでいく
時折茂みの中から魔物が飛び出してくるが、いとも簡単に倒していく
アリシアは仕事上、しょっちゅう結界の外へ出ているので、戦い慣れしているのは当たり前だし、ユーリは短い間ながら騎士団にいたという実績がある
それに比べ、エステルはずっとお城にいた筈なのに予想以上に戦い慣れていて、アリシアはかなり関心していた
しばらくそうして魔物と戦いながら森を進んでいくと、茂みの中から物音がした
「え、エッグベアめ!か、覚悟ー!!」
「え?」
「でやぁぁぁぁぁ!」
「よっ、と」
バキッ
草むらから出てきたのは小さな男の子で、身なりに合わない大きなハンマーを持っていた
魔物と勘違いしたのだろう
真っ直ぐにユーリに襲いかかってきたが、それをさらりと避けると同時に、ハンマーの柄の部分を折った
「いったったぁぁ……」
「あ、あの、大丈夫d」
「うわぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁ!」
恐らく、まだ魔物だと勘違いしているのだろう
エステルが声をかけようとすると、自分を守るかのようにハンマーを振り回す
「うわっ!?あぶなっ!?」
アリシアの声にようやく気づいたのか、振り回していたハンマーを下ろして、顔を上げる
「あ、あれ…?ま、魔物が人に…!?」
「んなわけねーだろ」
「あ、あはは…そ、そうだよね!僕、カロル・カペル!ギルド『魔狩りの剣』のエースだよ!」
何事も無かったかのように、少年は笑顔でそう言った
エース、とは言ったが、本当にエースなのであれば先程のような反応はしないだろう
「へぇ、小さいのにエースなんだ!」
そんなこと気にもとめずにアリシアがニコッと笑って言うと、カロルは照れ臭そうに頬を掻く
「えへへ、そ、それほどでもないよ!」
そう言った言葉とは裏腹に、すごいだろ!と言いたげに鼻を鳴らす
ユーリはそれが気に入らなかったのか、あるいはカロルが強がっていることに気がついているのか、ジト目でカロルを見詰める
「三人ともクオイの森を通り抜けようとしてるんでしょ?この僕が一緒に行ってあげても」
「あっ、私たちハルルに行くために、クオイの森の反対側から来たんです」
カロルの言葉を遮ってエステルがそう答えると、彼はものすごく驚いた顔をする
「えっ!?呪いの森を通り抜けて来たの!?じゃっ、じゃあさ!!途中でエッグベア、見かけなかった??」
興奮気味に問いかけてくるが、全く見覚えのない三人は首を傾げる
「見てねぇと思うな」
ユーリがそう答えると、カロルは残念そうに肩を落として俯く
「そっか……じゃあ一度、ハルルに戻ろうかな……きっとすごく怒ってるだろうし……」
ボソボソとユーリたちに聞き取れるか聞き取れないかくらいの小声で言うと、よし!と意気込んでユーリたちを見詰める
「それじゃあ、魔狩りの剣のエースの僕が、ハルルまで案内するよ!」
胸を張ってそう言うカロルに、アリシアは内心、場所知ってるんだけどなぁ…と、思いつつ、折角申し出てくれているのだからと、その言葉をグッと飲み込んだ
「んじゃ、お願いしますかね」
苦笑いしながら、ユーリはそう答えた
こうして、カロルを含めた四人と一匹は、ハルルへと足を向けた
砦から西に少し進むとクオイの森についた
本当、相変わらず薄暗い森だなぁ…
ユーリが入ろうとするとエステルが驚いた声をあげた
「あの…ここってクオイの森…ですよね?」
おずおずとしながらエステルはユーリと私を交互に見つめる
「ご名答」
ユーリがパチンッと指を鳴らすと、半分悲鳴に近い声をあげる
「呪いの森!!」
「知ってるのか?」
ユーリが答えると、エステルはますます怯えた声になる
「入った者に次々と恐ろしいことが降りかかる呪いの森…と、本で読みました」
「なるほどな。それがお楽しみってわけか」
ユーリは冷静に言うと、小さく笑って歩き出した
「エステル、行こ?」
「で、でも…」
そう躊躇するエステルの手を無理矢理引っ張って、ユーリの後を追いかける
しばらく森の中を歩いていると、エステルが森の暗さと雰囲気に耐えきれなくなったのか、繋いでいた私の手を思い切り握ってきた
「えっと、大丈夫?エステル」
少し心配になってそう声をかけた
「は、はい……アリシアは怖くないんですか…?」
怯えながらエステルは逆に問いかけてきた
「んー…まぁ、一度仕事で入ったことあるし…」
そう言うと、エステルは驚いた声をあげた
「入ったこと、あるんですか!?」
「うん。特に何も起こらなかったよ?」
まぁ、あんまり奥まで入ってないんだけど…
とは、あえて言わなかった
「ほーら、シアがそういってるし、大丈夫だろ。さっさといくぞー」
ユーリがそう言うと、エステルは辺りを見渡す
「この森…本当に砦の向こうに抜けられるんですか?」
「抜けられなかったら戻りゃいいって」
「……もし呪いでカエルやヘビになったりしたら、どうしましょう…」
そんなエステルの心配に、私は思わず笑ってしまった
「あははっ!そうだとしたら、私もカエルとかになってるはずだよ」
クスクスと笑っていると、思い出したようにエステルは声をあげる
「あ…それもそうですよね…」
「安心しとけ、もしそうなったとしてもちゃーんと面倒みてやったからよ」
冗談混じりにユーリはそう言うと、エステルは戸惑いながユーリを見る
「でも…私、ユーリ達がヘビやカエルになったら、お世話する自信ありません…」
自信が無さそうにエステルはそう呟く
「あはは…私も無理かな…」
肩を竦めてそう言うと、前に居たユーリが苦笑いする
「まあそうだろうな」
その会話にエステルは一人首を傾げる
「…私、ヘビとかカエル…触れないんだよね…」
と、苦笑してエステルの方を向く
「そうなんです?」
「うん…あの、ぬめぬめざらざらしてる感触が気持ち悪くって…」
…想像しただけでも鳥肌が立つ
繋いでいたエステルの手を離して両手で腕を擦る
「ほーら、それよかさっさと抜けちまおうぜ」
若干呆れ気味にそう言って、ユーリはスタスタと先へ歩いて行く
「あっ!お、置いていかないでくださいっ!」
その後をエステルは慌てて追いかける
私も二人の後を追いかけようと足を進めようとしたその時、後ろからガサガサっと、音が聞こえたきがして慌てて振り向く
が、特に魔物がいるわけでもないので少し立ち止まって辺りを見回した
「……確かに今、何かいた気がしたんだけど…」
ボソッ呟きもう一度、来た方向を見たがそこには入口へ続く道があるだけで、特に何もいなかった
「……おっかしいなぁ……」
「おーい、シア!早く来いよ!」
一人首を傾げていると、ユーリに呼ばれた
振り向くと、二人はかなり先へ進んでいたようだ。
「ごめん!今行く!」
気の所為……だったのかな…?
そう思い、それ以上音の主を探すのをやめ、ユーリ達の元へと走っていく
アリシアが立ち去った後、茂みの中から大きな影がのっそりと出てきたことを、彼女達は知ることはなかった
森の中央付近まで来たところで、少し開けた広場のような空間に出た
そこにはもう動かなくなった感じの魔導器が置いてあった
「これ…魔導器ですね。なんでこんなところに…」
魔導器を見つめながらエステルは首を傾げる
「これ…もう動かないんでしょうか?」
「魔核はあるみたいだから、動きそうだけどね」
私がそう答えると、エステルは徐ろに動いていない魔導器に触れようとした
その途端、魔導器から眩い光が放たれた
「うわっ!」「きゃあっ!!?」
光が収まると、魔導器の前でエステルが倒れていた
「エステル!?」
起き上がってすぐに私はエステルの傍に駆け寄った
どうやらただ気絶しているだけのようだ
ほっと一息つき、すぐに魔導器からエステルを遠ざけ、離れたところに寝かしつけた
「シア、エステルは!?」
「大丈夫、気絶してるだけだよ」
肩を軽く竦めてそう答えると、ユーリはほっと息をつく
「そうか。にしても、なんで急に…」
ユーリもすぐに傍にやってきた
膝の上にエステルの頭を乗せていたが、ラピードが気を利かせてくれているのか、自分の背中に乗せていいと、合図してきた
「ありがとう、ラピード」
私はそう言って、ラピードの頭を撫でる
そして、ユーリの方を向いて
「多分、エアルに酔ったんだと思う。濃度が高いエアルは体に毒だからさ」
と告げた
「エアル?って空気中に漂ってるやつだよな?さっきの光がそうなのか?」
首を傾げるユーリにコクンと頷いた
「私にもよくわからないけど、多分そうだと思う。なんでそんな急激にエアルが集まったのかはわからないけど…」
「ふーん…ま、エステルも目を覚まさなさそうだし、今日はここで休むとするか」
ユーリの提案に頷いて賛同する
「だね。エステルが目を覚ましてもすぐに動くのは危ないだろうし…ね」
そうゆうことで今日はもう休むことに決めた
あの魔導器には近づかないようにしよう、とユーリは言って下町の人達から貰った食材で夕飯を作り始めた
「う…ん……?」
「あ、エステル!目覚めた?」
あれから数時間経った頃にエステルは目を覚ました
「あ…れ?私……」
「気絶してたんだよ。大丈夫か?」
ゆっくりとエステルは起き上がる
どうやらそこまでダメージは高くないようだ
「はい…大丈夫です」
「よかった…でも、今日はここでこのまま休もう?この先で倒れちゃったら元も子もないしさ」
「はい……迷惑かけてごめんなさい…」
「迷惑なんかじゃないよ!」
しゅんとしてしまうエステルをすかさずフォローする
そんな話をしていると、温めなおした夕飯をもってユーリが来た
「ほら、腹減ってるだろ?」
そう言って先ほど作ったマーボーカレーを手渡した
「美味しそう!これ、ユーリが作ったんです?」
「ん?あぁ、そうだぜ」
「すごいです!私、料理とかしたことないんです!」
「んな大したもんじゃねーけどな」
「いただきます!」
そう言って美味しそうに食べるエステル
そんなエステルを嬉しそうに眺めるユーリ
(………やば、ちょっと嫉妬しそう)
ズキッと心が痛む
ユーリが嬉しそうなのはエステルに褒めてもらったからだし、そんな気持ちがあるわけではないことはわかっているけれども…
それでも心配になってしまう
駄目だなぁ…私もまだまだだな…
「ユーリ!」
「おう?どうした?シア?」
「ちょっと星見に行ってくるからっ!」
「え?あ、おい!シア!」
星を見に行く、と、言うだけ言って木を登って行く
元々、昔から活発だったうえに身軽だったから、木を登るくらい簡単で、一番上に着くまでにそう時間はかからなかった
とりあえず、今だけは二人と居たくなかった
また昨日みたいに星達と話そうと思った
なんでもいい
ただ、気を紛らせたかった
頂上につくと目の前にはうっそうとしている森と、綺麗な星空だけが見えた
「……やっぱり、この時間のこの空が一番好きだなぁ…」
それは星暦という一族に生まれたからか、またはそんなことは関係なくなのか
私にはわからなかった
木に登ってからどのくらい時間が経っただろうか
星達の会話はものすごく弾んでいて、昔話から最近のことなど、沢山の話をしていた
気がついた時にはもう、日がゆっくりと登り始めていた
「わ……もう夜明けかぁ……」
結局、寝ずに話し込んでしまったなぁ…と若干苦笑いする
『じゃあ、また夜に話そうか』
カストロが少し名残惜しそうに言う
時間的にも話すのが難しいんだろう
「ん、わかった。また話の続き、聞かせてね」
ニコッと空に笑いかける
『うん!またね!アリシア!』
『あ、そうだ!大事なこと伝えるの忘れてた!』
別れを告げるとカストロの気配はなくなったが、ポルックスが何かを伝え忘れたと少し慌てて話しかけてくる
「大事なこと?」
『この先のハルルの
そう早口で言うと、ポルックスの気配もなくなった
「……ありがとう、気をつけるね」
小声で二人にお礼を言う
そして小さく背伸びをして、空を見る
何もかも吸い込むような黒から、優しい青へと変わっていた
「…まるで、ユーリとフレンみたい」
「何がオレとフレンみたいだって?」
「うわっ!?ゆ、ユーリ!?」
空を眺めていながらそう考えていると、急に後ろから声をかけられた
「んなに驚くなよ…で?何がオレとフレンみたいだって?」
近くまで登って来て、ユーリはもう一度同じ質問を繰り返す
「空の色がってことだよ。夜はユーリみたいに黒くて、昼はフレンみたいに青いでしょ?」
そう笑顔で答える
するとユーリは、あぁなるほどな、っと納得したように指を鳴らす
「ほーら、朝ごはん作ったからいい加減、下降りるぞ」
「はーい」
そう答えて器用に木をスタスタと降りていく
そんな彼女を見て、小さくため息をついた
「ったく…人の気も知らないで、自由に動き回るお嬢さんだな…」
苦笑いしながら小さく呟き、ゆっくりと木を降りていった
朝食を食べ終えた一行は、森の奥へと進んでいく
時折茂みの中から魔物が飛び出してくるが、いとも簡単に倒していく
アリシアは仕事上、しょっちゅう結界の外へ出ているので、戦い慣れしているのは当たり前だし、ユーリは短い間ながら騎士団にいたという実績がある
それに比べ、エステルはずっとお城にいた筈なのに予想以上に戦い慣れていて、アリシアはかなり関心していた
しばらくそうして魔物と戦いながら森を進んでいくと、茂みの中から物音がした
「え、エッグベアめ!か、覚悟ー!!」
「え?」
「でやぁぁぁぁぁ!」
「よっ、と」
バキッ
草むらから出てきたのは小さな男の子で、身なりに合わない大きなハンマーを持っていた
魔物と勘違いしたのだろう
真っ直ぐにユーリに襲いかかってきたが、それをさらりと避けると同時に、ハンマーの柄の部分を折った
「いったったぁぁ……」
「あ、あの、大丈夫d」
「うわぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁ!」
恐らく、まだ魔物だと勘違いしているのだろう
エステルが声をかけようとすると、自分を守るかのようにハンマーを振り回す
「うわっ!?あぶなっ!?」
アリシアの声にようやく気づいたのか、振り回していたハンマーを下ろして、顔を上げる
「あ、あれ…?ま、魔物が人に…!?」
「んなわけねーだろ」
「あ、あはは…そ、そうだよね!僕、カロル・カペル!ギルド『魔狩りの剣』のエースだよ!」
何事も無かったかのように、少年は笑顔でそう言った
エース、とは言ったが、本当にエースなのであれば先程のような反応はしないだろう
「へぇ、小さいのにエースなんだ!」
そんなこと気にもとめずにアリシアがニコッと笑って言うと、カロルは照れ臭そうに頬を掻く
「えへへ、そ、それほどでもないよ!」
そう言った言葉とは裏腹に、すごいだろ!と言いたげに鼻を鳴らす
ユーリはそれが気に入らなかったのか、あるいはカロルが強がっていることに気がついているのか、ジト目でカロルを見詰める
「三人ともクオイの森を通り抜けようとしてるんでしょ?この僕が一緒に行ってあげても」
「あっ、私たちハルルに行くために、クオイの森の反対側から来たんです」
カロルの言葉を遮ってエステルがそう答えると、彼はものすごく驚いた顔をする
「えっ!?呪いの森を通り抜けて来たの!?じゃっ、じゃあさ!!途中でエッグベア、見かけなかった??」
興奮気味に問いかけてくるが、全く見覚えのない三人は首を傾げる
「見てねぇと思うな」
ユーリがそう答えると、カロルは残念そうに肩を落として俯く
「そっか……じゃあ一度、ハルルに戻ろうかな……きっとすごく怒ってるだろうし……」
ボソボソとユーリたちに聞き取れるか聞き取れないかくらいの小声で言うと、よし!と意気込んでユーリたちを見詰める
「それじゃあ、魔狩りの剣のエースの僕が、ハルルまで案内するよ!」
胸を張ってそう言うカロルに、アリシアは内心、場所知ってるんだけどなぁ…と、思いつつ、折角申し出てくれているのだからと、その言葉をグッと飲み込んだ
「んじゃ、お願いしますかね」
苦笑いしながら、ユーリはそう答えた
こうして、カロルを含めた四人と一匹は、ハルルへと足を向けた