第3部〜星喰みの帰還と星暦の使命〜
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パティの真実
「…ん………」
目を開けると、そこはカプア・ノールの宿屋だった
…懐かしいなぁ…
確か久しぶりに会ったフレンと早々に喧嘩したっけ…
「ん?シア、起きたのか」
ベッドの縁に腰掛けていたらしいユーリが頭をそっと撫でてくる
「…ん…みんなは…?」
そう聞きながらユーリの方へと体を向ける
「リタとエステルは買い物行ってるよ。リタがどうしても欲しいものあんだってよ」
そう言ったユーリは若干苦笑いしていた
「お、アリシアちゃん、目覚めた?」
「よかった、大分顔色も良さそうだね!」
レイヴンとカロルの声が聞こえてきて、体を少し起こして見ると、二人の他にジュディスとパティ、ラピードの姿が見えた
「…たく、キツかったんならもっと前に言えっての」
「…ごめん」
「ま、突然ぶっ倒れる前だったしな。今回はよしとしてやるよ」
そう言ってユーリは頬にそっとキスしてくる
「アリシア、暫くは戦闘禁止よ?ね、首領」
「うん。そうだね!」
「…わかったよ。大人しくしてる」
二人の問いに苦笑いしながら答える
「…それにしても、こうやってゆっくりするの、久しぶりな気がするね」
横になりながらユーリを見上げて微笑む
「だな。…ま、あんまりゆっくりも出来ねえがな」
「ふふ…そうだねぇ…。…街、どうだった?」
「…閑散としていたよ。ま、あの空じゃ、逃げ出したくもなるだろうな」
「そっか…」
小さく呟いて枕に顔を埋めた
…やっぱり、早く何とかしないと…
「こんな時でも港町はやっぱりものがあるわね。おかげでなんとかなりそうだわ」
ガチャリと音を立てて、リタ達が部屋に入って来た
顔を上げてみると、両手いっぱいに荷物を持った姿が見える
「…なに買って来たの?」
「アリシア…あんた、目が覚めていたのね」
「術式紋章ひと揃えと、筐体パーツです」
「何しようってのよ?」
エステルの答えにレイヴンが首を傾げる
「精霊の力を収束するための装置を作ってるの。即席の宙の戒典をね」
「宙の戒典かぁ…。デューク、今頃何しているんだろうね」
「さぁな…あいつ、相当思い詰めた感じだったが…」
「…デュークさん…か…」
…止められる…かな…?
あの人のやろうとしていることを…
「パティ、どうした?」
ユーリの声にハッとして顔を上げる
どうやらパティもぼーっとしていたらしい
「……む?うちは腹が空いたのじゃ」
「何か作ろうか?」
カロルの申し出を軽くかわして、彼女は眠りについてしまう
…なんか、いつものパティらしくない
「シア、お前ももう少し休んでおけよ」
「…ん、そうするね」
ユーリにそう答えて布団を被る
パティのことも気になるけど、今は休まなきゃ…
ガチャ…
扉の開く音に目が覚める
…誰か出て行ったのかな…?
起き上がって見てみると、パティだけが居なかった
…どこに行ったんだろう?
そっとベットから抜け出す
…追いかけてみようかな
そう思って、静かに部屋を出る
外に出ると、パティが執政官邸の方に向かって走っていくのが見えた
「…こんな夜中に、何しに行くんだろ…」
『きっと、自身の過去を制裁しに行くのでしょう』
私の疑問に答えたのはアリオトだ
「制裁?」
『ええ、制裁、ですよ』
「その言い方、なんか知ってんのか?」
後ろから聞こえた声に振り向くと、みんなが居た
「え?何?星が何か知ってるの?」
一番最初に首を傾げたのはカロルだった
『知っていますよ。ですが…私から言ってしまっては意味がないでしょう?…ご自身の目で確認された方がよろしいかと』
「あはは…アリオトらしい答えだねぇ」
『彼女は港の方に居るはずですから、追いかけるならば早くした方がいいですよ?』
アリオトはどこか楽しそうにそう言った
「もう…アリオトってば…」
小さくため息をつきながら腰に手を当てた
いつもいつも言いたいことだけ言って居なくなるんだから
…
「にしてもあんた…相変わらず一人で行動する癖治らないわね…」
「…まぁ、一人で行動してることの方が多かったしさ…今更治すのも難しいって言うか…」
そう言って頬を掻く
実際その時間の方が長かったわけだし、今更治すには無理がある
「…今はそれよりも、パティじゃないの?」
いつの間にか私の話になりそうになっているのを無理矢理引き戻す
ここでパティを一人にさせちゃ絶対にいけない気がするんだ
「だな。ほら、さっさと行こうぜ」
ユーリはそう言うと、私の手を引いて歩き出した
…って、いや、ちょ、まっ…っ!?!!
「ちょっ、ユーリ…っ!なんで私の手掴んでるの?!」
「こうでもしてねぇと、お前また勝手に行動するだろ?」
「いやいやいや…っ!だからって、小さい子どもじゃないんだからさ…っ!」
「…嫌か?」
そう言って私を見つめてくるユーリの表情はどこか寂し気で、恥ずかしいから嫌だ、なんて、言えなくなってしまった
なんでそんな顔するのさ…
私はそんなにすぐに居なくなったりなんてしないのに
執政官邸の裏にある船着き場に着くと、パティが海に向けて何かを掲げたのが目に入った
その何かから、海に向かって真っすぐに光が伸びると、吸い寄せられたかのようにいつかの亡霊船がすぐ傍にやってきた
…アーセルム号…
初めて見たあの時は思い出せなかったけど…
…間違いない
この船は…この船を幽霊船にしてしまったのは…
「シア、行くぞ?」
ユーリの声にハッとして顔を上げる
どうやら相当ボケっとしていたみたい
「…うん!」
ゆっくり頷いて、パティの元に駆けよった
「パティ、待って下さい!」
エステルの声にパティは驚いたのか慌てて振り返った
「みんな…どうして…」
「それはこっちの台詞よ。一人で何してるのよ」
レイヴンの言葉に彼女は少し項垂れた
「精霊もそろった…この先は命を賭けた大仕事なのじゃ。でも、その大仕事の前に、自分の中の決着をつけようと思ったのじゃ」
「それはアイフリードの事か?」
ユーリの言葉に、パティは力強く頷いた
「これはうちの問題なのじゃ。誰にも任せられない、うちの…」
そう言った彼女は、どこか辛そうな雰囲気だ
…私は、何となくその理由がわかるかもしれない
パティ…もしかして、あなたは…
「だからって、一人で行かなくても」
カロルの声に彼女は何も答えない
「あれ…アーセルム号よね…?」
「どうしてここに…」
「パティ、お前が呼び出したのか?」
「そう言えばパティちゃん、麗しの星 かかげてなかった?」
「そんなに質問攻めにしたら、パティだって答えられないよ。…それに、行けばわかると思う」
パティとみんなの間に割って入る
流石にこれは可哀想だ
「ほら、行こう?」
「え…?」
私の言葉にパティは驚き気味に私を見つめてくる
「行かないの?」
「ついてきてくれるのか…?」
「当然!私達、仲間でしょ?……それに、私も用事あるし、ね……」
最後に呟いた言葉はどうやら誰にも聞こえていなかったらしく、パティが嬉しそうに微笑んだのが視界に映った
「じゃが、最後の決着だけはうちがつけるのじゃ」
「…うん、わかってるよ」
「あそこにボートがあるわ。あれで行きましょ」
ジュディスの視線の先にはボートが止まっていた
いつでも行けると言わんばかりにラピードが既に乗っていた
相変わらず行動が早いなぁ…
アーセルム号に着くと、前に来た時には感じなかった異様な空気を感じた
威圧されているかのような空気に息が詰まりそうだ
でもそんな空気を感じているのは私だけらしい
…いや、むしろ私だけが感じているのが正しいのか
パティ達の会話さえ聞き取れないくらいの威圧感に、引き返したくなる
…けれど、向き合わなきゃ
これは、『私の責任』でもあるんだから…
そんなことを考えていると、どこからか魔物の咆哮が聞こえてくる
慌てて辺りを見回す
「な、なによ!?」
「上だ!」
ユーリの言葉に上を見ると、いつかの時にここで倒した魔物がいた
「あの魔物、ここで倒したわね、前に」
みんながその魔物を見つめていると、突然パティが走り出した
「パティ!?」
エステルが彼女の名前を呼ぶが、彼女は魔物にどんどん近づいていく
「まさか、あれがアイフリード……」
「あれが?そんな、でも…」
カロルの言葉にエステルは困惑気味に振り返る
…確かに信じがたいことだ
人が魔物に…なんて
…でも…
「シア?」
突然視界ににユーリの顔が映る
「わっ…!な、何…?」
「何?じゃねえよ。追いかけるって言ってんっだろ?」
…言ってたっけ、そんなこと…
どうやら私がぼーっとしている間にそんな話になっていたらしい
「…ごめん、ちょっとぼーっとしちゃってた」
「…まだ体調悪いのか?」
心配そうにユーりが顔を覗き込んでくる
「ううん、大丈夫。…大丈夫だよ」
ニコッと笑ってユーリを見る
誤魔化しきれてはいないだろうけど…
「…無理、すんなよ?」
「ん、わかってるよ」
私がこれ以上なにも言わないと思ったのか、ユーリはそう言って私から離れた
前を歩き出したユーリ達の後ろをついて行く
『アリシア、辛かったら無理しちゃだめだからね!』
「…わかってる、大丈夫だよ」
アルタイルの声に、小さく返す
これは私のせいでもある
だから…しっかり、見届けなきゃ…
「うわっ……!で、出たっ……!」
上に着くなり、リタが怯えた声を上げる
確かにそんな声上げたくなるけど…
「サイファー、うちじゃ!わかるか……!」
パティはそう言いながら魔物に近づいていく
…アリオトの口ぶりから何となくわかってはいた
パティがずっと探していたのは、アイフリードじゃなかったんだって
「サイファーって…アイフリードじゃなくて?」
パティの言葉にカロルは首を傾げた
「サイファーはそのアイフリードの参謀の名前だったわね、確か」
そんな話をしていると、魔物はパティに攻撃をする
「こりゃ、うだうだしてる暇なさそうだぜ……」
ユーリはそう言いながら武器を構える
「サイファー……今、決着をつけるのじゃ!」
パティは武器を取り出しながら、魔物をじっと見つめる
そして、魔物の咆哮と共に戦闘が始まった
珍しく私は後衛に回ることにした
『あれ』の正体を知っていても、やはり怖いものは怖いのだ
「ちっ!おい!シア!お前、前出ろって!!」
魔物の攻撃を防ぎながらユーリが私を呼ぶ
「アリシアちゃんがいけそうなら前衛回った方がいいじゃないの?流石にこれはちとキツいわ」
斜め前にいたレイヴンがそう声をかけてくる
前衛に出たいのは山々なんだが…
でも、周りの威圧がそれを許してくれそうにない
ぞわっと背筋が凍るような悪寒がして、冷や汗が伝っていく
…早々に終わらせないと、ヤバいかも…
「ちょっ!アリシア!!」
「…っ!!」
リタの呼び声に咄嗟に後ろに飛ぶと、私がさっきまでいた場所に魔物の剣が突き刺さっていた
まともに戦えないくらいに威圧が強くなってきている
…それ程、私に対する怨みが強いんだろう
だって……この惨状を生み出したのは……
「アリシア!!」
パティが焦った声で私を呼んでいるのが聞こえてくる
それもそうだ
目の前にはあの魔物がいるんだもの
振り下ろされた剣を愛刀で受ける
「…っ!」
押し返そうとするけど、私の力じゃ押し返し切れそうにない
「…そんなに、私が……」
ーーー憎いのかーーー
その言葉は声にならなかった
憎まれていても、当然だから
むしろそうじゃない方が不思議だ
殺したい程に憎まれてたって、おかしくない
…でも、ここで死ぬわけにはいかない!
「…レグ…ルス…!」
「…え…?」
しっかりとその名を呼べば、その魔物を光が包んだ
眩しさに思わず目を閉じそうになる
けど、閉じちゃダメだ
最後まで見届けるのが、私にできることだから
魔物の包んでいた光が消えると、魔物は私からゆっくりと離れて行く
そして、更に上へと登って行った
その後をパティは追いかける
パティを追いかけようとしたエステルを、ユーリは手で制止した
梯子を登り切った彼女の手には銃が握られていた
「サイファー、長い事、待たせてすまなかった。記憶を失って時間が掛かったが、ようやく、辿り着いたのじゃ」
「…やっぱり…記憶が戻ってやがったか…」
パティの言葉に、ユーリは小さく呟いた
どのタイミングかはわからないけど、いつの間にか彼女は記憶を取り戻していたみたいだ
「アイ…フリード…」
「…!」
「あ、あ、あれは…」
途端、骸骨の前に一人の人影が浮かび上がった
「アイフリード、か…久しいな…」
「ア、アイフリードって、え? まさか…?」
男性の言葉に、カロルは驚いた表情でパティを見上げる
「アイフリードは…うちの事じゃ!」
彼女は静かにそう告げた
ずっと探し続けていたはずのアイフリードが、まさかパティ本人だったなんて…
「サイファー、うちが解るのか!?」
「ああ…だが、再び自我を失い、お前に刃を向ける前に此処を去れ」
「…そう言う訳にはいかないのじゃ。うちはお前を解放しに来たのじゃ。その魔物の姿とブラックホープ号の因縁から」
「俺はあの事件で多くの人を手に懸け、罪を犯した…」
「じゃあ、ブラックホープ号事件ってのは…」
静かにパティは首を横に振った
「ああしなければ、彼等は苦しみ続けたのじゃ。今のお前のように。あの事故で魔物化した人達をサイファーは救ったのじゃ」
「だが、彼等を手に懸けた俺はこんな姿で今ものうのうと生きている…」
「お前はうちを助け、逃がしてくれた。だから…今度はうちがお前を助ける番なのじゃ、サイファー」
「アイフリード…俺をこの苦しみから解放してくれるというのか」
「お前には随分世話になった。荒くれ者の集まりだった 海精の牙 を良く見守ってくれた。そして…うちを良く支えてくれたのじゃ」
パティはそこで言葉を切って、静かに銃を持った手をあげる
「でも…此処で…終わりなのじゃ」
決意の固まった目で彼女はサイファーを見つめる
「…くっ…」
それでも、その顔は辛そうで、寂しさに歪んでいた
「サイファーだけは…うちが…」
「辛い想いをさせて、すまぬな、アイフリード」
「ツラいのはうちだけではない。サイファーはうちよりずっと辛い想いをしてきたのじゃ。うちらは仲間じゃ。だから、うちはお前の辛さの分も背負うのじゃ。お前を苦しみから解放する為、お前を…殺す」
「その決意を支えているのはそこにいる者達か?」
彼はそう言いながら、私達を見下ろした
「そうか…記憶を無くし、一人で頼りない想いをしていないかそれだけが気掛かりだったが、良い仲間に巡り会えたのだな、アイフリード。受け取れ、これを…」
サイファーがそう言うと、パティの目の前に光り輝く紋章が現れた
「これは… 馨しの珊瑚 …」
「これで、安心して死にゆける」
彼はそう言って爽やかに微笑む
「…そして、奴の身内よ」
そう言いながらサイファーは私を見る
ほんの少し肩が強ばる
「奴がした事を、俺は許すことはできない。だが…お前を怨むことは、見当違いだったな。…この惨状を、一番悔いているのはお前だと、剣を交えた時に俺は知った。奴のした事に責任を感じているのだと。…怨んでしまっていた俺が言うことではないが…お前が気に病むことはない。だが、忘れることだけはするな。この事件で犠牲になった者たちのことを…」
静かに、でも、厳しい声で彼は言い切った
「…わかってる。忘れるなんて、絶対にしない」
彼を見つめながらそう返す
すると、彼は満足そうに微笑んだ
「それならいい。…さぁ、やれ、アイフリード」
サイファーはそう言うと、静かに目を閉じた
沈黙が続いた数秒後、辺りに銃声が響いた
「…バイバイ…」
銃声の後、パティは静かにそう呟いた
「サイファー………」
アーセルム号から、ノール港の船着き場に戻って来ると、パティは船を見つめながら小さく呟いた
今にも崩れ落ちてしまいほうな涙声で、彼女は彼の名を呼んでいた
「我慢しなくてもいい。泣きたければ泣いた方がいい」
「つらくても泣かないのじゃ。それがうちのモットーなのじゃ…!」
「パティ…」
「うちは泣かないのじゃ、涙を見せたら、死んでいった大切な仲間に申し訳ないのじゃ。うちは 海精の牙 の首領、アイフリードなのじゃ。だから…泣かない…絶対、泣かない、泣きたく、ない…」
今にも消えてしまいそうなパティの姿が、いつかの私と重なる
そっと彼女を抱きしめると、耐えきれなくなった彼女は大声を出し泣き崩れた
パティが泣いている間、みんなはずっと黙ったまま、彼女が泣き止むのを待った
暫くして、泣き疲れたらしいパティはそのまま眠ってしまった
「…寝ちゃったね」
そう言いながら、静かに彼女の背を撫でた
「…俺が宿屋まで連れてくよ。アリシアちゃんはちとキツいでしょ?」
レイヴンはそう言いながら、私の腕の中で眠ったパティを抱き抱えた
「…ごめん、ありがと、レイヴン」
そう言って、ゆっくり立ち上がる
…ほんの少し、頭がグラッとする
「アリシア、あんた、大丈夫なわけ?」
その様子を見てか、リタが訝しげな表情で見つめてくる
「……大丈夫、ではないかな。ちょっとキツい」
苦笑いしながらそう答えると、隣からため息が聞こえてきた
「それ、いつからだ?」
ほんの少しキツめな口調でユーリが聞いてくる
「アーセルム号に入った辺りから…かな」
「大分前からじゃん!なんで言わなかったの?!」
「…言ったら戻れって言うでしょ?でも…最後まで、ちゃんと見届けたかったの」
「…では…さっきサイファーが言っていた『奴 』と言うのは…」
「そ、お兄様のこと…だよ」
エステルの言葉にそう返すと、ジュディスもユーリも、納得した表情を浮かべた
「それじゃ、あなたは事の真相を知っているのかしら?」
「まさか。私も資料を少し読んで知っただけだから、詳しくは知らないよ。…話すとしてもパティが起きてからにしよう。リタの聞きたいことも、ね」
何かを聞きたそうにしているリタに向かってそう言うと、不服そうな表情を浮かべる
「ま、その方がいいだろ。シアだって休ませねぇとな」
「…そうね。今は二人を休ませましょ」
ユーリの言葉にリタは渋々頷くと、宿屋の方へと足を向けた
それにならって、みんなも宿屋へと足を向ける
「シア、歩けるか?」
「ん…大丈夫だよ」
そう答えると、ユーリは私の手を握る
「キツくなったらすぐ言えよ?」
「わかってるよ」
そう言って、私達もみんなの後を追いかけた
「…ん………」
目を開けると、そこはカプア・ノールの宿屋だった
…懐かしいなぁ…
確か久しぶりに会ったフレンと早々に喧嘩したっけ…
「ん?シア、起きたのか」
ベッドの縁に腰掛けていたらしいユーリが頭をそっと撫でてくる
「…ん…みんなは…?」
そう聞きながらユーリの方へと体を向ける
「リタとエステルは買い物行ってるよ。リタがどうしても欲しいものあんだってよ」
そう言ったユーリは若干苦笑いしていた
「お、アリシアちゃん、目覚めた?」
「よかった、大分顔色も良さそうだね!」
レイヴンとカロルの声が聞こえてきて、体を少し起こして見ると、二人の他にジュディスとパティ、ラピードの姿が見えた
「…たく、キツかったんならもっと前に言えっての」
「…ごめん」
「ま、突然ぶっ倒れる前だったしな。今回はよしとしてやるよ」
そう言ってユーリは頬にそっとキスしてくる
「アリシア、暫くは戦闘禁止よ?ね、首領」
「うん。そうだね!」
「…わかったよ。大人しくしてる」
二人の問いに苦笑いしながら答える
「…それにしても、こうやってゆっくりするの、久しぶりな気がするね」
横になりながらユーリを見上げて微笑む
「だな。…ま、あんまりゆっくりも出来ねえがな」
「ふふ…そうだねぇ…。…街、どうだった?」
「…閑散としていたよ。ま、あの空じゃ、逃げ出したくもなるだろうな」
「そっか…」
小さく呟いて枕に顔を埋めた
…やっぱり、早く何とかしないと…
「こんな時でも港町はやっぱりものがあるわね。おかげでなんとかなりそうだわ」
ガチャリと音を立てて、リタ達が部屋に入って来た
顔を上げてみると、両手いっぱいに荷物を持った姿が見える
「…なに買って来たの?」
「アリシア…あんた、目が覚めていたのね」
「術式紋章ひと揃えと、筐体パーツです」
「何しようってのよ?」
エステルの答えにレイヴンが首を傾げる
「精霊の力を収束するための装置を作ってるの。即席の宙の戒典をね」
「宙の戒典かぁ…。デューク、今頃何しているんだろうね」
「さぁな…あいつ、相当思い詰めた感じだったが…」
「…デュークさん…か…」
…止められる…かな…?
あの人のやろうとしていることを…
「パティ、どうした?」
ユーリの声にハッとして顔を上げる
どうやらパティもぼーっとしていたらしい
「……む?うちは腹が空いたのじゃ」
「何か作ろうか?」
カロルの申し出を軽くかわして、彼女は眠りについてしまう
…なんか、いつものパティらしくない
「シア、お前ももう少し休んでおけよ」
「…ん、そうするね」
ユーリにそう答えて布団を被る
パティのことも気になるけど、今は休まなきゃ…
ガチャ…
扉の開く音に目が覚める
…誰か出て行ったのかな…?
起き上がって見てみると、パティだけが居なかった
…どこに行ったんだろう?
そっとベットから抜け出す
…追いかけてみようかな
そう思って、静かに部屋を出る
外に出ると、パティが執政官邸の方に向かって走っていくのが見えた
「…こんな夜中に、何しに行くんだろ…」
『きっと、自身の過去を制裁しに行くのでしょう』
私の疑問に答えたのはアリオトだ
「制裁?」
『ええ、制裁、ですよ』
「その言い方、なんか知ってんのか?」
後ろから聞こえた声に振り向くと、みんなが居た
「え?何?星が何か知ってるの?」
一番最初に首を傾げたのはカロルだった
『知っていますよ。ですが…私から言ってしまっては意味がないでしょう?…ご自身の目で確認された方がよろしいかと』
「あはは…アリオトらしい答えだねぇ」
『彼女は港の方に居るはずですから、追いかけるならば早くした方がいいですよ?』
アリオトはどこか楽しそうにそう言った
「もう…アリオトってば…」
小さくため息をつきながら腰に手を当てた
いつもいつも言いたいことだけ言って居なくなるんだから
…
「にしてもあんた…相変わらず一人で行動する癖治らないわね…」
「…まぁ、一人で行動してることの方が多かったしさ…今更治すのも難しいって言うか…」
そう言って頬を掻く
実際その時間の方が長かったわけだし、今更治すには無理がある
「…今はそれよりも、パティじゃないの?」
いつの間にか私の話になりそうになっているのを無理矢理引き戻す
ここでパティを一人にさせちゃ絶対にいけない気がするんだ
「だな。ほら、さっさと行こうぜ」
ユーリはそう言うと、私の手を引いて歩き出した
…って、いや、ちょ、まっ…っ!?!!
「ちょっ、ユーリ…っ!なんで私の手掴んでるの?!」
「こうでもしてねぇと、お前また勝手に行動するだろ?」
「いやいやいや…っ!だからって、小さい子どもじゃないんだからさ…っ!」
「…嫌か?」
そう言って私を見つめてくるユーリの表情はどこか寂し気で、恥ずかしいから嫌だ、なんて、言えなくなってしまった
なんでそんな顔するのさ…
私はそんなにすぐに居なくなったりなんてしないのに
執政官邸の裏にある船着き場に着くと、パティが海に向けて何かを掲げたのが目に入った
その何かから、海に向かって真っすぐに光が伸びると、吸い寄せられたかのようにいつかの亡霊船がすぐ傍にやってきた
…アーセルム号…
初めて見たあの時は思い出せなかったけど…
…間違いない
この船は…この船を幽霊船にしてしまったのは…
「シア、行くぞ?」
ユーリの声にハッとして顔を上げる
どうやら相当ボケっとしていたみたい
「…うん!」
ゆっくり頷いて、パティの元に駆けよった
「パティ、待って下さい!」
エステルの声にパティは驚いたのか慌てて振り返った
「みんな…どうして…」
「それはこっちの台詞よ。一人で何してるのよ」
レイヴンの言葉に彼女は少し項垂れた
「精霊もそろった…この先は命を賭けた大仕事なのじゃ。でも、その大仕事の前に、自分の中の決着をつけようと思ったのじゃ」
「それはアイフリードの事か?」
ユーリの言葉に、パティは力強く頷いた
「これはうちの問題なのじゃ。誰にも任せられない、うちの…」
そう言った彼女は、どこか辛そうな雰囲気だ
…私は、何となくその理由がわかるかもしれない
パティ…もしかして、あなたは…
「だからって、一人で行かなくても」
カロルの声に彼女は何も答えない
「あれ…アーセルム号よね…?」
「どうしてここに…」
「パティ、お前が呼び出したのか?」
「そう言えばパティちゃん、
「そんなに質問攻めにしたら、パティだって答えられないよ。…それに、行けばわかると思う」
パティとみんなの間に割って入る
流石にこれは可哀想だ
「ほら、行こう?」
「え…?」
私の言葉にパティは驚き気味に私を見つめてくる
「行かないの?」
「ついてきてくれるのか…?」
「当然!私達、仲間でしょ?……それに、私も用事あるし、ね……」
最後に呟いた言葉はどうやら誰にも聞こえていなかったらしく、パティが嬉しそうに微笑んだのが視界に映った
「じゃが、最後の決着だけはうちがつけるのじゃ」
「…うん、わかってるよ」
「あそこにボートがあるわ。あれで行きましょ」
ジュディスの視線の先にはボートが止まっていた
いつでも行けると言わんばかりにラピードが既に乗っていた
相変わらず行動が早いなぁ…
アーセルム号に着くと、前に来た時には感じなかった異様な空気を感じた
威圧されているかのような空気に息が詰まりそうだ
でもそんな空気を感じているのは私だけらしい
…いや、むしろ私だけが感じているのが正しいのか
パティ達の会話さえ聞き取れないくらいの威圧感に、引き返したくなる
…けれど、向き合わなきゃ
これは、『私の責任』でもあるんだから…
そんなことを考えていると、どこからか魔物の咆哮が聞こえてくる
慌てて辺りを見回す
「な、なによ!?」
「上だ!」
ユーリの言葉に上を見ると、いつかの時にここで倒した魔物がいた
「あの魔物、ここで倒したわね、前に」
みんながその魔物を見つめていると、突然パティが走り出した
「パティ!?」
エステルが彼女の名前を呼ぶが、彼女は魔物にどんどん近づいていく
「まさか、あれがアイフリード……」
「あれが?そんな、でも…」
カロルの言葉にエステルは困惑気味に振り返る
…確かに信じがたいことだ
人が魔物に…なんて
…でも…
「シア?」
突然視界ににユーリの顔が映る
「わっ…!な、何…?」
「何?じゃねえよ。追いかけるって言ってんっだろ?」
…言ってたっけ、そんなこと…
どうやら私がぼーっとしている間にそんな話になっていたらしい
「…ごめん、ちょっとぼーっとしちゃってた」
「…まだ体調悪いのか?」
心配そうにユーりが顔を覗き込んでくる
「ううん、大丈夫。…大丈夫だよ」
ニコッと笑ってユーリを見る
誤魔化しきれてはいないだろうけど…
「…無理、すんなよ?」
「ん、わかってるよ」
私がこれ以上なにも言わないと思ったのか、ユーリはそう言って私から離れた
前を歩き出したユーリ達の後ろをついて行く
『アリシア、辛かったら無理しちゃだめだからね!』
「…わかってる、大丈夫だよ」
アルタイルの声に、小さく返す
これは私のせいでもある
だから…しっかり、見届けなきゃ…
「うわっ……!で、出たっ……!」
上に着くなり、リタが怯えた声を上げる
確かにそんな声上げたくなるけど…
「サイファー、うちじゃ!わかるか……!」
パティはそう言いながら魔物に近づいていく
…アリオトの口ぶりから何となくわかってはいた
パティがずっと探していたのは、アイフリードじゃなかったんだって
「サイファーって…アイフリードじゃなくて?」
パティの言葉にカロルは首を傾げた
「サイファーはそのアイフリードの参謀の名前だったわね、確か」
そんな話をしていると、魔物はパティに攻撃をする
「こりゃ、うだうだしてる暇なさそうだぜ……」
ユーリはそう言いながら武器を構える
「サイファー……今、決着をつけるのじゃ!」
パティは武器を取り出しながら、魔物をじっと見つめる
そして、魔物の咆哮と共に戦闘が始まった
珍しく私は後衛に回ることにした
『あれ』の正体を知っていても、やはり怖いものは怖いのだ
「ちっ!おい!シア!お前、前出ろって!!」
魔物の攻撃を防ぎながらユーリが私を呼ぶ
「アリシアちゃんがいけそうなら前衛回った方がいいじゃないの?流石にこれはちとキツいわ」
斜め前にいたレイヴンがそう声をかけてくる
前衛に出たいのは山々なんだが…
でも、周りの威圧がそれを許してくれそうにない
ぞわっと背筋が凍るような悪寒がして、冷や汗が伝っていく
…早々に終わらせないと、ヤバいかも…
「ちょっ!アリシア!!」
「…っ!!」
リタの呼び声に咄嗟に後ろに飛ぶと、私がさっきまでいた場所に魔物の剣が突き刺さっていた
まともに戦えないくらいに威圧が強くなってきている
…それ程、私に対する怨みが強いんだろう
だって……この惨状を生み出したのは……
「アリシア!!」
パティが焦った声で私を呼んでいるのが聞こえてくる
それもそうだ
目の前にはあの魔物がいるんだもの
振り下ろされた剣を愛刀で受ける
「…っ!」
押し返そうとするけど、私の力じゃ押し返し切れそうにない
「…そんなに、私が……」
ーーー憎いのかーーー
その言葉は声にならなかった
憎まれていても、当然だから
むしろそうじゃない方が不思議だ
殺したい程に憎まれてたって、おかしくない
…でも、ここで死ぬわけにはいかない!
「…レグ…ルス…!」
「…え…?」
しっかりとその名を呼べば、その魔物を光が包んだ
眩しさに思わず目を閉じそうになる
けど、閉じちゃダメだ
最後まで見届けるのが、私にできることだから
魔物の包んでいた光が消えると、魔物は私からゆっくりと離れて行く
そして、更に上へと登って行った
その後をパティは追いかける
パティを追いかけようとしたエステルを、ユーリは手で制止した
梯子を登り切った彼女の手には銃が握られていた
「サイファー、長い事、待たせてすまなかった。記憶を失って時間が掛かったが、ようやく、辿り着いたのじゃ」
「…やっぱり…記憶が戻ってやがったか…」
パティの言葉に、ユーリは小さく呟いた
どのタイミングかはわからないけど、いつの間にか彼女は記憶を取り戻していたみたいだ
「アイ…フリード…」
「…!」
「あ、あ、あれは…」
途端、骸骨の前に一人の人影が浮かび上がった
「アイフリード、か…久しいな…」
「ア、アイフリードって、え? まさか…?」
男性の言葉に、カロルは驚いた表情でパティを見上げる
「アイフリードは…うちの事じゃ!」
彼女は静かにそう告げた
ずっと探し続けていたはずのアイフリードが、まさかパティ本人だったなんて…
「サイファー、うちが解るのか!?」
「ああ…だが、再び自我を失い、お前に刃を向ける前に此処を去れ」
「…そう言う訳にはいかないのじゃ。うちはお前を解放しに来たのじゃ。その魔物の姿とブラックホープ号の因縁から」
「俺はあの事件で多くの人を手に懸け、罪を犯した…」
「じゃあ、ブラックホープ号事件ってのは…」
静かにパティは首を横に振った
「ああしなければ、彼等は苦しみ続けたのじゃ。今のお前のように。あの事故で魔物化した人達をサイファーは救ったのじゃ」
「だが、彼等を手に懸けた俺はこんな姿で今ものうのうと生きている…」
「お前はうちを助け、逃がしてくれた。だから…今度はうちがお前を助ける番なのじゃ、サイファー」
「アイフリード…俺をこの苦しみから解放してくれるというのか」
「お前には随分世話になった。荒くれ者の集まりだった
パティはそこで言葉を切って、静かに銃を持った手をあげる
「でも…此処で…終わりなのじゃ」
決意の固まった目で彼女はサイファーを見つめる
「…くっ…」
それでも、その顔は辛そうで、寂しさに歪んでいた
「サイファーだけは…うちが…」
「辛い想いをさせて、すまぬな、アイフリード」
「ツラいのはうちだけではない。サイファーはうちよりずっと辛い想いをしてきたのじゃ。うちらは仲間じゃ。だから、うちはお前の辛さの分も背負うのじゃ。お前を苦しみから解放する為、お前を…殺す」
「その決意を支えているのはそこにいる者達か?」
彼はそう言いながら、私達を見下ろした
「そうか…記憶を無くし、一人で頼りない想いをしていないかそれだけが気掛かりだったが、良い仲間に巡り会えたのだな、アイフリード。受け取れ、これを…」
サイファーがそう言うと、パティの目の前に光り輝く紋章が現れた
「これは…
「これで、安心して死にゆける」
彼はそう言って爽やかに微笑む
「…そして、奴の身内よ」
そう言いながらサイファーは私を見る
ほんの少し肩が強ばる
「奴がした事を、俺は許すことはできない。だが…お前を怨むことは、見当違いだったな。…この惨状を、一番悔いているのはお前だと、剣を交えた時に俺は知った。奴のした事に責任を感じているのだと。…怨んでしまっていた俺が言うことではないが…お前が気に病むことはない。だが、忘れることだけはするな。この事件で犠牲になった者たちのことを…」
静かに、でも、厳しい声で彼は言い切った
「…わかってる。忘れるなんて、絶対にしない」
彼を見つめながらそう返す
すると、彼は満足そうに微笑んだ
「それならいい。…さぁ、やれ、アイフリード」
サイファーはそう言うと、静かに目を閉じた
沈黙が続いた数秒後、辺りに銃声が響いた
「…バイバイ…」
銃声の後、パティは静かにそう呟いた
「サイファー………」
アーセルム号から、ノール港の船着き場に戻って来ると、パティは船を見つめながら小さく呟いた
今にも崩れ落ちてしまいほうな涙声で、彼女は彼の名を呼んでいた
「我慢しなくてもいい。泣きたければ泣いた方がいい」
「つらくても泣かないのじゃ。それがうちのモットーなのじゃ…!」
「パティ…」
「うちは泣かないのじゃ、涙を見せたら、死んでいった大切な仲間に申し訳ないのじゃ。うちは
今にも消えてしまいそうなパティの姿が、いつかの私と重なる
そっと彼女を抱きしめると、耐えきれなくなった彼女は大声を出し泣き崩れた
パティが泣いている間、みんなはずっと黙ったまま、彼女が泣き止むのを待った
暫くして、泣き疲れたらしいパティはそのまま眠ってしまった
「…寝ちゃったね」
そう言いながら、静かに彼女の背を撫でた
「…俺が宿屋まで連れてくよ。アリシアちゃんはちとキツいでしょ?」
レイヴンはそう言いながら、私の腕の中で眠ったパティを抱き抱えた
「…ごめん、ありがと、レイヴン」
そう言って、ゆっくり立ち上がる
…ほんの少し、頭がグラッとする
「アリシア、あんた、大丈夫なわけ?」
その様子を見てか、リタが訝しげな表情で見つめてくる
「……大丈夫、ではないかな。ちょっとキツい」
苦笑いしながらそう答えると、隣からため息が聞こえてきた
「それ、いつからだ?」
ほんの少しキツめな口調でユーリが聞いてくる
「アーセルム号に入った辺りから…かな」
「大分前からじゃん!なんで言わなかったの?!」
「…言ったら戻れって言うでしょ?でも…最後まで、ちゃんと見届けたかったの」
「…では…さっきサイファーが言っていた『奴 』と言うのは…」
「そ、お兄様のこと…だよ」
エステルの言葉にそう返すと、ジュディスもユーリも、納得した表情を浮かべた
「それじゃ、あなたは事の真相を知っているのかしら?」
「まさか。私も資料を少し読んで知っただけだから、詳しくは知らないよ。…話すとしてもパティが起きてからにしよう。リタの聞きたいことも、ね」
何かを聞きたそうにしているリタに向かってそう言うと、不服そうな表情を浮かべる
「ま、その方がいいだろ。シアだって休ませねぇとな」
「…そうね。今は二人を休ませましょ」
ユーリの言葉にリタは渋々頷くと、宿屋の方へと足を向けた
それにならって、みんなも宿屋へと足を向ける
「シア、歩けるか?」
「ん…大丈夫だよ」
そう答えると、ユーリは私の手を握る
「キツくなったらすぐ言えよ?」
「わかってるよ」
そう言って、私達もみんなの後を追いかけた