第2部〜満月の子と星暦の真実〜
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「……ねぇ、ユーリ、フレン、無理を承知で一つ我儘言っていい?」
笑顔を崩して、二人をみる
「ん??なんだ?急に」
ユーリは首を傾げて聞き返してくる
「…明日、私も連れて行って欲しい」
少し間を置いてそう言うと、案の定二人は唖然とした表情を浮かべた
「………アリシア………?今、なんて…?」
フレンが珍しく素っ頓狂な声を出す
「だから、私も明日連れて行って欲しい」
「だ…………ダメに決まってるだろっ?!!?!」
もう一度言うと、大慌てでユーリが止めに入って来た
…まぁ、そんなことわかってたんだけどね
「危険なことも、足でまといになるのも、わかってる。それでも一緒に行きたい」
じっとユーリの目を見つめて訴える
「………でも、歩くだけで精一杯なんだろう?」
ゆっくりと、フレンは口を開く
「一晩寝れればそれなりに動けるようになるよ」
少し苦笑いしながら答える
ユーリもフレンも、困惑した表情を浮かべて私見つめている
「……仮に動けるようになったとしても、エステルや魔導器の傍に居すぎたら……!」
「うん、また動けなくなるだろうね
……それでも、一緒に行かせて欲しい
あれは……ザウデ不落宮は、人の手に触れさせちゃいけない代物……それを出現させたのは私のミスだ
…そして、お兄様を、止められなかったのも、私が……私達がもっと、彼をしっかり見ておかなければいけなかったんだ……そうすれば、こんな事態にはならなかったかもしれない…
私達、星暦の一族が犯したことの落とし前は、お父様の跡を継いだ私が取りたい。……ううん、私が取らなきゃいけないんだ
……それが、一族としてのケジメだから」
お父様亡き後、星暦の当主は一人娘の私に自動的になった
……だから、この件に関しては私が責任を取らなきゃいけないんだ
例え、それが自分の命を削る結果になったとしても…
ユーリもフレンもら黙って俯いたまま微動だにしない
余程考え込んでいるのだろう
「…それが、アリシアの体を蝕むことだとしても、かい?」
少し経ってからフレンがゆっくり口を開いた
「そんなこと百も承知だよ。わかった上で、決めたことだから」
「…………自分でアレクセイを止める、それがシアの決めたことなんだな?」
「うん」
大きく頷くと、ユーリはため息をつきながら項垂れる
「……ったく、しゃーねぇな……そこまで言われちゃ、連れてくしか無くなっちまうだろ」
そう言って苦笑いしながら、ユーリは優しく頭を撫でてくる
「だね。それに、一人にしたらまた勝手に行動しかねないしね」
困った様に笑いながら、フレンはそう言った
「ありがとう、ユーリ、フレン」
ニコッと再び微笑む
「さてと……んじゃ、あんまり遅くまで起こしてられねぇが……」
そう言いながら、ユーリは首を後ろに向ける
「そこ、コソコソ覗いてねぇでこっち来いっての」
そう叫ぶと、エステとリタ、それにレイヴンがひょこっと顔を出した
「三人とも……今の聞いてたの?」
私がそう問いかけると、苦い顔をして頷いた
…全然、気づかなかった…
「全く、覗き見は関心できませんよ、エステリーゼ様。それに、リタとレイヴンさんも」
大きくため息をつきながら、フレンはじっと三人を見つめる
「あーいやぁ……そーゆーつもりじゃなかったんだけどねぇ…」
バツが悪そうに言いながら、レイヴンは明後日の方向を見る
「ご、ごめんなさい…そんなつもりはなかったんです…」
「あんたらのせいじゃないわよ。あたしが、アリシアが心配だから、あんた達について行こうとしたの、この二人は止めようとして付いてきただけよ」
申し訳なさそうにしているエステルとは対称的に、リタはなにも悪びれる様子もなくそう言った
「ったく……しょうがねぇやつらだな」
苦笑いしながらユーリは立ち上がり、体の向きを変えて三人を見る
「……アリシア、あんた本気なの?さっきの話聞くと、もう……」
そんなユーリを他所に、リタは寂しそうに私を見つめてくる
「…本気だよ。もう、決めたから」
そう言って頷き返すと、あからさまなため息が聞こえてくる
「全くもう……アリシアも、自分で決めた事は意地でも譲らないの、忘れてたわ」
呆れ気味にため息をつくと、苦笑いしながら私の元に寄ってくる
そして、頭に手を乗せたかと思いきや、思い切り髪をぐしゃぐしゃにされた…
「うわっ!?ちょっ!!リタ!!!」
「散々心配かけたんだから、このくらいしないと気が済まないのよ」
ふぃっと顔を背けながら、リタははっきりとそう言った
正直あのリタが、『心配』だなんて、言うと思わなかった
驚いて何も言い返せないでいると、リタは自分が何を言ったのか思い出したようで、顔を赤らめた
「いっ!今のは、別にあたしがって意味じゃないんだからね!みんなもって意味なんだから!」
私の方を向きながら、必死でリタは取り繕おうとする
が、全くもって取り繕えていないし、むしろ墓穴を掘っている
そんなリタに、不覚にもクスッと笑ってしまった
「そっかぁ、リタも心配してくれてたんだね
…ありがとう、リタ」
笑いながらそう言えば、更に顔を赤くして明後日の方向を向いてしまう
「アリシア……あの……私……」
おどおどとしながら、エステルはそっと出てくるが、私の近くに来ようとはしない
先程の会話を気にしているんだろう
「エステル、おいでよ?大丈夫だから」
ニコッと笑って、彼女を呼ぶ
「でも……私の力は、アリシアにとって…」
「平気平気!傍に来るくらい問題ないよ!だから、おいで?」
依然躊躇するエステルにそう声をかけると、躊躇いながらも近くに来る
申し訳なさそうに歪めたその表情から、気にしてることはすぐにわかった
「そんな顔しないでよ、エステル。私は大丈夫だからさ」
「でも、私のせいで…」
「エステルのせいじゃないよ。私がエステルと一緒に居たいから居ただけだもん。一緒に居たくて、無理し続けたからこうなった。まぁ、原因はエステルだけじゃなくて、力を使いすぎたことにもあるんだけど、さ?…だから、エステルがきにする必要はないよ」
ゆっくり立ち上がって、エステルの頭を撫でる
「アリシア………」
寂しそうな顔をしながら、エステルは私を見つめてくる
「もー!そんな顔しないの!」
そう言って、先程リタにやられたように、エステルの髪をぐしゃぐしゃっと撫でた
「あっ!!もう、アリシア!」
むっと頬を膨らませて、少し前とは違いジト目で見つめてくる
「あははっ!やっといつものエステルになったね」
笑いながらそう言うと、少し驚いた顔を見せる
「いつも通り笑っててよ。私の目標は、私とエステルがずーっと仲良くしていられることなんだから!」
ニッと目を細めて笑う
満月の子と、星暦の共存…それが、私の最終目的なのだ
「ったく、アレクセイ討伐が今の目標じゃねぇのかよ?」
苦笑いしながら、隣にいるユーリが口を挟んでくる
「お兄様ぶっ飛ばすのは途中経過に過ぎないもん。あの人止めなきゃ、エステルはおろか皆と一緒にいられなくなっちゃうもん」
「そうねぇ……今の大将、何しでかしてくれるか、わかったもんじゃないもねぇ…」
レイヴンがこちらにやってきながらそう言った
「考え、ちゃーんと直してくれたんだね、レイヴン」
ちょっと嫌味っぽく笑うと、気まづそうに頬を掻く
「そうねぇ…シュバーンの時は、アリシアちゃんにゃ、色々冷たい言葉ふっかけたりしちゃったけど……こっちの方が性に合ってたみたいなのよね」
「ん、そっか。シュバーンの時よりも今の方が生き生きしてるし、それでいいと思うな」
「本当、感謝してるわよ。…ありがとね、あん時思い出させてくれて、さ」
少し真剣な表情を浮かべて、レイヴンはそう言う
今までの暗い、死んだような表情はそこにはなくて、迷いも完全に晴れた顔つきになっていた
「いえいえ、こちらこそ」
ニコッと笑えば、レイヴンもいつものようなおどけた表情を浮かべる
「ほーらシア、そろそろお前は寝ろっての。明日、一緒に来るんだろ?」
「そうだね。なるべく沢山寝た方がいい」
両肩にそれぞれ手を乗せつつ、ユーリとフレンが促してくる
「あんたら……この子の保護者みたいよね」
呆れたようにリタは二人を見つめる
「ふふっ、二人とも、アリシアが大事、なんですよね」
ニッコリと笑いながら、エステルはそう言う
「保護者じゃねーっての」
呆れた顔をしてユーリは腰に手をついた
「ほら、行こうアリシア」
「あっ、ちょっと待って」
フレンに促され、歩き出す前にリタに静止された
何かと首を傾げていると、彼女は操作パネルを開く
「……………うん、大丈夫………全部解除出来てる。これなら、多分問題ないはず」
そう言って、パネルを閉じた
「なんだ??さっき解除仕切ったんじゃねぇのか?」
「一応、ね。アレクセイがどこでどんな罠仕掛けてるか、わからないから念には念を」
首を傾げるユーリにリタは言った
…確かに、お兄様のことだ
どこで何を仕掛けてるかわかったものじゃない
「っていうか、あんたさっきの短剣なんだったのよ?」
ジト目で私を見つめながら、リタは言う
……忘れてた、そう言えば、あの短剣……突き刺したのみんなの前じゃん…
「あーー……あれ、ねぇ……」
「そうね、あの行動に関してちと詳しく説明してもらおうじゃないのよ」
「私たち、すっごいひやひやしたんですよ?」
「ユーリたちから話は聞いたよ。納得いく説明、寝る前にしてもらおうか?」
「っつーわけだ、寝るのはその後だな」
散々寝ろって言っていたユーリとフレンもこの有様だ
言うまで解放してもらえそうにないが…
「んー…それは、私よりも『みんな』の方が詳しいかなぁ……」
そう言って、空を見上げる
『そうだな。アリシアよりは我らの方が知っているだろう』
シリウスの声が辺りに響く
その声に、リタの肩が若干あがったことは触れないでおこう
「あれ一体どうゆうものなのですか?」
怖気ることもなく、エステルはシリウスに問いかけた
『あれは本来、宙の宝剣同様エアルの流れを正すものだ。宙の宝剣と違うのは、あの短剣は『もの』にしか反応しないことだな。植物や物、それに人だな』
「それが、どうしてアリシアちゃんの意識を引っ張ってきたっていうのよ」
『先程のアリシアは、結界魔導器や聖核で強制的に力やその身体を使われていたに過ぎん。それは、体内に存在しているエアルの流れを外から強制的に変えられていたからだ』
「………なるほどね、外から変えられた流れを、あの短剣で無理矢理戻したってことね」
『そういう事だ。…あの短剣の欠点は乱れを正す対象に突き刺さねばならないことだな。どうしてもその対象を傷つけてしまう』
「んで、容赦なくシアの腕に突き刺した、と」
呆れ気味にユーリが言うと、シリウスは大きくため息をついた
『アリシアの体を一時的にでも自由にさせるには、それしかなかったのだよ。それに、そうしろと頼んできたのはアリシア本人だからな』
「あっ、ちょっ!シリウス!それは言わない約束でしょ!」
大声でそう言うが時既に遅く……
両肩にポンッと手を乗せられる
ゆっくりと振り返ると、ものすっごく怒った顔のユーリとフレンの姿が目に入る
「アリシア……?ちょっと三人で話しようか?」
「え……あーー………えっとですね……」
「言い訳はなし、だからな?」
ユーリはそう言うと、ひょいっと私を持ち上げる
「うわっ!?ちょっ!!ユーリっ!」
「悪ぃ、リタ。この馬鹿ちと持ってくわ」
「しょうがないわねぇ……本当は話したいこと山ほどあるけど、あんたらに譲ってあげるわ」
「ちょっリタ!!見捨てないでよー!!」
バタバタとユーリの腕の中で暴れるが、一向に下ろしてくれそうにない
「あはは……二人とも程々にしてあげてくださいね?」
苦笑いしながら、エステルはただ手を振ってくるだけだった
「さ、行こうか、ユーリ」
「怒るのはいーけども、ちゃんと寝かせてあげなさいね〜」
頭の後ろで手を組むレイヴンも、助けてくれる気は全くないのだろう
「いーやーだーーー!!!!下ろしてよユーリ!!」
「へいへい、フレンの部屋ついたらな?」
完全に下ろす気のない返事をされ、いよいよ困った
諦めて怒られる、なーんて選択肢は私にはない
結局、必死で逃げようとしたが、二人にかなうわけもなく……
夜遅くまで、お説教されました………
…………ゆっくり休めって言ったの、ユーリたちの癖に………
笑顔を崩して、二人をみる
「ん??なんだ?急に」
ユーリは首を傾げて聞き返してくる
「…明日、私も連れて行って欲しい」
少し間を置いてそう言うと、案の定二人は唖然とした表情を浮かべた
「………アリシア………?今、なんて…?」
フレンが珍しく素っ頓狂な声を出す
「だから、私も明日連れて行って欲しい」
「だ…………ダメに決まってるだろっ?!!?!」
もう一度言うと、大慌てでユーリが止めに入って来た
…まぁ、そんなことわかってたんだけどね
「危険なことも、足でまといになるのも、わかってる。それでも一緒に行きたい」
じっとユーリの目を見つめて訴える
「………でも、歩くだけで精一杯なんだろう?」
ゆっくりと、フレンは口を開く
「一晩寝れればそれなりに動けるようになるよ」
少し苦笑いしながら答える
ユーリもフレンも、困惑した表情を浮かべて私見つめている
「……仮に動けるようになったとしても、エステルや魔導器の傍に居すぎたら……!」
「うん、また動けなくなるだろうね
……それでも、一緒に行かせて欲しい
あれは……ザウデ不落宮は、人の手に触れさせちゃいけない代物……それを出現させたのは私のミスだ
…そして、お兄様を、止められなかったのも、私が……私達がもっと、彼をしっかり見ておかなければいけなかったんだ……そうすれば、こんな事態にはならなかったかもしれない…
私達、星暦の一族が犯したことの落とし前は、お父様の跡を継いだ私が取りたい。……ううん、私が取らなきゃいけないんだ
……それが、一族としてのケジメだから」
お父様亡き後、星暦の当主は一人娘の私に自動的になった
……だから、この件に関しては私が責任を取らなきゃいけないんだ
例え、それが自分の命を削る結果になったとしても…
ユーリもフレンもら黙って俯いたまま微動だにしない
余程考え込んでいるのだろう
「…それが、アリシアの体を蝕むことだとしても、かい?」
少し経ってからフレンがゆっくり口を開いた
「そんなこと百も承知だよ。わかった上で、決めたことだから」
「…………自分でアレクセイを止める、それがシアの決めたことなんだな?」
「うん」
大きく頷くと、ユーリはため息をつきながら項垂れる
「……ったく、しゃーねぇな……そこまで言われちゃ、連れてくしか無くなっちまうだろ」
そう言って苦笑いしながら、ユーリは優しく頭を撫でてくる
「だね。それに、一人にしたらまた勝手に行動しかねないしね」
困った様に笑いながら、フレンはそう言った
「ありがとう、ユーリ、フレン」
ニコッと再び微笑む
「さてと……んじゃ、あんまり遅くまで起こしてられねぇが……」
そう言いながら、ユーリは首を後ろに向ける
「そこ、コソコソ覗いてねぇでこっち来いっての」
そう叫ぶと、エステとリタ、それにレイヴンがひょこっと顔を出した
「三人とも……今の聞いてたの?」
私がそう問いかけると、苦い顔をして頷いた
…全然、気づかなかった…
「全く、覗き見は関心できませんよ、エステリーゼ様。それに、リタとレイヴンさんも」
大きくため息をつきながら、フレンはじっと三人を見つめる
「あーいやぁ……そーゆーつもりじゃなかったんだけどねぇ…」
バツが悪そうに言いながら、レイヴンは明後日の方向を見る
「ご、ごめんなさい…そんなつもりはなかったんです…」
「あんたらのせいじゃないわよ。あたしが、アリシアが心配だから、あんた達について行こうとしたの、この二人は止めようとして付いてきただけよ」
申し訳なさそうにしているエステルとは対称的に、リタはなにも悪びれる様子もなくそう言った
「ったく……しょうがねぇやつらだな」
苦笑いしながらユーリは立ち上がり、体の向きを変えて三人を見る
「……アリシア、あんた本気なの?さっきの話聞くと、もう……」
そんなユーリを他所に、リタは寂しそうに私を見つめてくる
「…本気だよ。もう、決めたから」
そう言って頷き返すと、あからさまなため息が聞こえてくる
「全くもう……アリシアも、自分で決めた事は意地でも譲らないの、忘れてたわ」
呆れ気味にため息をつくと、苦笑いしながら私の元に寄ってくる
そして、頭に手を乗せたかと思いきや、思い切り髪をぐしゃぐしゃにされた…
「うわっ!?ちょっ!!リタ!!!」
「散々心配かけたんだから、このくらいしないと気が済まないのよ」
ふぃっと顔を背けながら、リタははっきりとそう言った
正直あのリタが、『心配』だなんて、言うと思わなかった
驚いて何も言い返せないでいると、リタは自分が何を言ったのか思い出したようで、顔を赤らめた
「いっ!今のは、別にあたしがって意味じゃないんだからね!みんなもって意味なんだから!」
私の方を向きながら、必死でリタは取り繕おうとする
が、全くもって取り繕えていないし、むしろ墓穴を掘っている
そんなリタに、不覚にもクスッと笑ってしまった
「そっかぁ、リタも心配してくれてたんだね
…ありがとう、リタ」
笑いながらそう言えば、更に顔を赤くして明後日の方向を向いてしまう
「アリシア……あの……私……」
おどおどとしながら、エステルはそっと出てくるが、私の近くに来ようとはしない
先程の会話を気にしているんだろう
「エステル、おいでよ?大丈夫だから」
ニコッと笑って、彼女を呼ぶ
「でも……私の力は、アリシアにとって…」
「平気平気!傍に来るくらい問題ないよ!だから、おいで?」
依然躊躇するエステルにそう声をかけると、躊躇いながらも近くに来る
申し訳なさそうに歪めたその表情から、気にしてることはすぐにわかった
「そんな顔しないでよ、エステル。私は大丈夫だからさ」
「でも、私のせいで…」
「エステルのせいじゃないよ。私がエステルと一緒に居たいから居ただけだもん。一緒に居たくて、無理し続けたからこうなった。まぁ、原因はエステルだけじゃなくて、力を使いすぎたことにもあるんだけど、さ?…だから、エステルがきにする必要はないよ」
ゆっくり立ち上がって、エステルの頭を撫でる
「アリシア………」
寂しそうな顔をしながら、エステルは私を見つめてくる
「もー!そんな顔しないの!」
そう言って、先程リタにやられたように、エステルの髪をぐしゃぐしゃっと撫でた
「あっ!!もう、アリシア!」
むっと頬を膨らませて、少し前とは違いジト目で見つめてくる
「あははっ!やっといつものエステルになったね」
笑いながらそう言うと、少し驚いた顔を見せる
「いつも通り笑っててよ。私の目標は、私とエステルがずーっと仲良くしていられることなんだから!」
ニッと目を細めて笑う
満月の子と、星暦の共存…それが、私の最終目的なのだ
「ったく、アレクセイ討伐が今の目標じゃねぇのかよ?」
苦笑いしながら、隣にいるユーリが口を挟んでくる
「お兄様ぶっ飛ばすのは途中経過に過ぎないもん。あの人止めなきゃ、エステルはおろか皆と一緒にいられなくなっちゃうもん」
「そうねぇ……今の大将、何しでかしてくれるか、わかったもんじゃないもねぇ…」
レイヴンがこちらにやってきながらそう言った
「考え、ちゃーんと直してくれたんだね、レイヴン」
ちょっと嫌味っぽく笑うと、気まづそうに頬を掻く
「そうねぇ…シュバーンの時は、アリシアちゃんにゃ、色々冷たい言葉ふっかけたりしちゃったけど……こっちの方が性に合ってたみたいなのよね」
「ん、そっか。シュバーンの時よりも今の方が生き生きしてるし、それでいいと思うな」
「本当、感謝してるわよ。…ありがとね、あん時思い出させてくれて、さ」
少し真剣な表情を浮かべて、レイヴンはそう言う
今までの暗い、死んだような表情はそこにはなくて、迷いも完全に晴れた顔つきになっていた
「いえいえ、こちらこそ」
ニコッと笑えば、レイヴンもいつものようなおどけた表情を浮かべる
「ほーらシア、そろそろお前は寝ろっての。明日、一緒に来るんだろ?」
「そうだね。なるべく沢山寝た方がいい」
両肩にそれぞれ手を乗せつつ、ユーリとフレンが促してくる
「あんたら……この子の保護者みたいよね」
呆れたようにリタは二人を見つめる
「ふふっ、二人とも、アリシアが大事、なんですよね」
ニッコリと笑いながら、エステルはそう言う
「保護者じゃねーっての」
呆れた顔をしてユーリは腰に手をついた
「ほら、行こうアリシア」
「あっ、ちょっと待って」
フレンに促され、歩き出す前にリタに静止された
何かと首を傾げていると、彼女は操作パネルを開く
「……………うん、大丈夫………全部解除出来てる。これなら、多分問題ないはず」
そう言って、パネルを閉じた
「なんだ??さっき解除仕切ったんじゃねぇのか?」
「一応、ね。アレクセイがどこでどんな罠仕掛けてるか、わからないから念には念を」
首を傾げるユーリにリタは言った
…確かに、お兄様のことだ
どこで何を仕掛けてるかわかったものじゃない
「っていうか、あんたさっきの短剣なんだったのよ?」
ジト目で私を見つめながら、リタは言う
……忘れてた、そう言えば、あの短剣……突き刺したのみんなの前じゃん…
「あーー……あれ、ねぇ……」
「そうね、あの行動に関してちと詳しく説明してもらおうじゃないのよ」
「私たち、すっごいひやひやしたんですよ?」
「ユーリたちから話は聞いたよ。納得いく説明、寝る前にしてもらおうか?」
「っつーわけだ、寝るのはその後だな」
散々寝ろって言っていたユーリとフレンもこの有様だ
言うまで解放してもらえそうにないが…
「んー…それは、私よりも『みんな』の方が詳しいかなぁ……」
そう言って、空を見上げる
『そうだな。アリシアよりは我らの方が知っているだろう』
シリウスの声が辺りに響く
その声に、リタの肩が若干あがったことは触れないでおこう
「あれ一体どうゆうものなのですか?」
怖気ることもなく、エステルはシリウスに問いかけた
『あれは本来、宙の宝剣同様エアルの流れを正すものだ。宙の宝剣と違うのは、あの短剣は『もの』にしか反応しないことだな。植物や物、それに人だな』
「それが、どうしてアリシアちゃんの意識を引っ張ってきたっていうのよ」
『先程のアリシアは、結界魔導器や聖核で強制的に力やその身体を使われていたに過ぎん。それは、体内に存在しているエアルの流れを外から強制的に変えられていたからだ』
「………なるほどね、外から変えられた流れを、あの短剣で無理矢理戻したってことね」
『そういう事だ。…あの短剣の欠点は乱れを正す対象に突き刺さねばならないことだな。どうしてもその対象を傷つけてしまう』
「んで、容赦なくシアの腕に突き刺した、と」
呆れ気味にユーリが言うと、シリウスは大きくため息をついた
『アリシアの体を一時的にでも自由にさせるには、それしかなかったのだよ。それに、そうしろと頼んできたのはアリシア本人だからな』
「あっ、ちょっ!シリウス!それは言わない約束でしょ!」
大声でそう言うが時既に遅く……
両肩にポンッと手を乗せられる
ゆっくりと振り返ると、ものすっごく怒った顔のユーリとフレンの姿が目に入る
「アリシア……?ちょっと三人で話しようか?」
「え……あーー………えっとですね……」
「言い訳はなし、だからな?」
ユーリはそう言うと、ひょいっと私を持ち上げる
「うわっ!?ちょっ!!ユーリっ!」
「悪ぃ、リタ。この馬鹿ちと持ってくわ」
「しょうがないわねぇ……本当は話したいこと山ほどあるけど、あんたらに譲ってあげるわ」
「ちょっリタ!!見捨てないでよー!!」
バタバタとユーリの腕の中で暴れるが、一向に下ろしてくれそうにない
「あはは……二人とも程々にしてあげてくださいね?」
苦笑いしながら、エステルはただ手を振ってくるだけだった
「さ、行こうか、ユーリ」
「怒るのはいーけども、ちゃんと寝かせてあげなさいね〜」
頭の後ろで手を組むレイヴンも、助けてくれる気は全くないのだろう
「いーやーだーーー!!!!下ろしてよユーリ!!」
「へいへい、フレンの部屋ついたらな?」
完全に下ろす気のない返事をされ、いよいよ困った
諦めて怒られる、なーんて選択肢は私にはない
結局、必死で逃げようとしたが、二人にかなうわけもなく……
夜遅くまで、お説教されました………
…………ゆっくり休めって言ったの、ユーリたちの癖に………