第2部〜満月の子と星暦の真実〜
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~ユーリside~
「アリシア…今頃どうしてるかな?」
不意にカロルがそんなことを呟く
俺らは今、ジュディの友達…バウルに乗って、クリティア族の町、ミョルゾに向かっている途中だ
バウルに乗る、と言うよりも、俺らの船、フェルティア号をバウルが運んでくれている、と言った方が正しいか
ここまで来るのに色々あった
船を直すこととハリー(ドンの孫)を送るのに、一度ダングレストに向かい、そこで事情を知ったドンがイエガーの元に殴り込みに行き……
ベリウスが死んだ償いに、自決した
その介錯を俺はした
シアに散々手を汚させたくない、と言われておいて自ら名乗り出た
…知りたかった、というのが一番だったかもしれない
誰もやらないから、ではなく、単にシアが、どんな思いで今までこういうことをしてきたか、それを知りたかった
状況は違うにしろ、気分がいいものではない
…ずっとこんなこともしてきていたのかと思うと、胸が痛くなる
それからはジュディの元に向かった
ギルドとしての、ケジメをつける為に
当たり前ではあるが、リタは猛激怒だった
が、事の経緯を聞けば、怒るに怒れなくなっていた
ヘルメス式魔導器……
それは、従来の魔導器よりも効率よく、かつ新しい魔核で動かすことが出来るが、同時にエアルの流れを乱す程、大量のエアルを使うものらしい
だから、壊して回っていたのだと
怒っていたリタも、いつ怒りが引いたのか、一人で抱え込むなと、皆のことを頼れと言い出すものだからそれにも驚いたが…
そんなことに驚いてる暇もなく、成長途中のバウルをいつかの魔狩りの剣の連中が狙って来やがって戦闘になるわ
バウルの成長が終わってすぐに、フェローの元に行くことになるわ
フェローに会ったら、姫に言われたから仕方なくだからな!?を連呼されてから、エステルのことを聞いた
大方はシアに聞いたのと同じだった
が、聞いていないこともあった
…それについては、本人に会った時に問い詰めようと思うが……
満月の子について、もっと詳しく知りたいのであればクリティア族の街へ行けとフェローに言われ
リタとジュディの記憶を頼りに、トート、という名のクリティア族を探しにアスピオに向かい
彼から、赤い花の咲いた海岸の洞窟に鍵があることと、その代わりに、エゴソーの森にいる奴らを倒してくれという条件をつけられるわ
鍵を取りに行った場所には、アイフリードの犠牲者の墓があるし、パティはそれを見てうわの空になっちまうし
エゴソーの森にゃ、騎士団がうじゃうじゃいやがるし
ようやく倒して、今に至るわけだ
「さぁ……検討もつかねーな」
船室の壁に寄りかかりながら、カロルの問に答えた
今、何処で何をしているかなんて、俺が一番知りたい
星たちはここ何日か話しかけても答えてこねーし
「あら、連絡もないの?」
不思議そうにジュディは聞いてくる
「ないのよ。何も。あの子からこんなに連絡ないなんて……ちょっとおかしくない?」
若干心配そうにリタは言う
「……何も無ければいいんですけど……」
それにつられるようにエステルも心配そうに顔を歪める
「不吉なこと言うのは止めるのじゃ!シア姐ならきっと大丈夫じゃ!」
パティが励ますように言うが、それでも暗い雰囲気のままだった
まぁ……正直明るい雰囲気ではいられないだろう
「もう少しでミョルゾにつくわよ」
ジュディの声に顔を上げると、目の前にデカいクラゲのような何かが見えた
「えっ、もしかして……あの中……なんてことないよね…?!」
カロルが驚いきながらジュディに聞く
「あの中ね」
にっこりと笑いながらジュディは言う
「おいおい、マジかよ」
苦笑いしながら呟く
「ありゃぁ……空の上に浮いてるだけで驚きになのに、こんなのの中とはねぇ……」
苦い顔でレイヴンは言う
「こんなのなんて失礼ね、彼女も立派な始祖の隷長よ」
少し不服そうにジュディは言う
そんなジュディに、レイヴンは平謝りをしている
…この始祖の隷長のことも、シアは知っていたのだろうか?
もしかしたら知らないかもしれない
シアが見たら、なんて言うだろうか?
彼女なら、喜ぶ気がする
…厄介事が全て片付いたら、見せてやりたいな
「あらぁ、ジュディスじゃないの!元気そうでよかったわぁ」
ミョルゾについてすぐに、ジュディは街の人々に囲まれて質問攻めにされている
…クリティア族は変わった奴が多いとは思っていたが、ここまでとは……
「それよりも、長老はどこかしら?」
「長老?それなら今頃散歩でもしてるはずだ」
「そう、ありがとう
…それじゃ、行きましょ?」
ジュディの言葉に頷いて、街の中へと入って行く
街の至る所に、魔導器の筐体 だけが山になっている
「…本当に、この街の人は魔導器を捨てたんですね」
ポツリと、エステルは呟く
「おや?外からお客さんが来るとは珍しい」
しがれた声に振り向くと、長老らしき人影があった
「あら長老、お久しぶり、ね」
ジュディが挨拶をすると、懐かしそうに長老はジュディに近く
ここに来た経緯を手短に話すと、家まで来てくれ、と言われた
ジュディを先頭に長老の家に行くと、めちゃくちゃ古そうな壁が目に入る
「ジュディスよ、ナギーグで壁にふれながらこの言葉をいうのじゃ
…霧のまにまに浮かぶ夢の都、それが現実の続き」
「…霧のまにまに浮かぶ夢の都、それが現実の続き?」
ジュディが言われた言葉を復唱すると、壁に絵が浮かび上がる
「これは……」
「へぇ、こんなことも出来ちゃうわけね」
「ナギーグを知ってなさるか
この力と口伝の秘文により、この壁画は真の姿を表すのじゃ」
レイヴンが後ろ手に口笛を拭きながら言うと、関心するように長老は言った
「クリティアこそ知恵の民なり、大いなるゲライオスの礎、古の世の賢人 なり
されど賢明ならざる知恵は禍なるかな
我らが手になる魔導器、天地に恵みをもたらすも、星の血なりしエアルを穢したり
エアルの穢れ、蒿じて大いなる災いを招き
我ら怖れもてこれを星喰み と名付けたり………
ここに世のことごとく一丸となりて星喰みに挑み、忌まわしき力を消さんとす」
「これ、始祖の隷長じゃない?」
リタが指差した場面には、魔物のようなものが描かれていた
「結果、古代ゲライオス文明は滅んでしまったが、人々は生き残ることが出来たわけじゃ」
「ようするに、この絵はその星喰みを鎮めてる図ってこと?」
「この丸いのはなんじゃ?」
リタの言葉を遮るように、パティは図の下の方を指差す
「さて、のう…?そこまではわからんのう」
「………」
「ジュディ?」
急に真剣そうな顔をして黙ってしまったジュディに声をかける
「……我らと魔を繋げし星暦、満月の子に代わりてその身を捧げ、その半が消え去れり」
「……は………?」
「それでもなお、去らん星喰みに、世は祈り込めて満月の子らは命燃え果つ。星喰み虚空へと消え去れり」
「なんだと?」
「かくして世は永らえたり。されど我らは罪を忘れず、ここに世々語り継がん」
「どういうこと!?」
ジュディが言い終わると同時に、リタは声を荒らげて長老の方を向く
「個々の言葉が全部、何を意味しているかまでは伝わっておらんのじゃ」
「………」
長老の言葉を聞き終わると、エステルは外へと飛び出して行った
…シアから目を離すなと言われたが……今は一人にしてやった方がいいだろう
エステルが落ち着くまでは、隣の空き家を借りることになり、俺たちは先にそこへ移動した
移動してから、エステル抜きで話し合いを始めた
「さっきの話しからすると、満月の子だけが原因ではなさそうだが……」
「でも、満月の子らは命燃え果つって言うのはねぇ……」
「星喰みの原因の満月の子の命を絶ったことで、危機を回避したともとれるわ」
ジュディの発言に、誰も否定は出来なかった
確かにそうなのかもしれない
…だが、それよりも
「僕……それよりも、星暦の方が気になるな……」
ポツリとカロルが呟いた
「………我らを魔と繋ぎし星暦、満月の子に代わりてその身を捧げ、その半が消え去れり………だったな」
「………フェローが満月の子を意味嫌っているのは、これも原因だったのね」
再び沈黙が走る
シアに聞けばもっと色々わかるだろうが、今、当の本人はここにいない
「………認めたくなかった………魔導器は悪くない、悪いことに使う奴が悪いって…………でも違った」
悔しそうにリタは俯いたまま言う
彼女にとって、唯一無二の存在である魔導器が真っ向から悪だと否定されたのだから、仕方ないことなんだろう
「魔導器……全部止めなきゃだめなのかな?」
「そりゃ無理でしょ、今や俺たちの生活にとって必要不可欠なものよ??」
カロルの問に、レイヴンがバッサリと否定を投げる
確かにそうだ
結界魔導器にしろなんにしろ、魔導器なしで生活しろって言うのは無理な話だ
「エアルを使わないで使えればいいんだけど…そんなの夢物語なのかしら」
「…………リゾマータの公式」
「なんだそれ?」
ポツリと呟いたリタの言葉に聞き返す
「あらゆるものは、エアルの昇華、還元、構成、分解によって成り立ってるんだけど、そのエアルの仕組みに直接干渉することが可能になるはずの、未知の理論が予想されているの
確率されれば、エアルの制御が今よりもずっと容易になるはず
もちろん、エアルから変換された力をまたエアルとして再構成するような未知の術式が必要だけど……
でも、現にエステルは直接エアルに干渉している。アリシアも方法はもっと複雑だけど、殆ど直接干渉しているのと変わらない
リゾマータの公式に一番近いのは、あの二人なの!」
「なんだかよくわかんねぇがその公式ってやつに辿り着けりゃ、エステルは安心して暮らせるってことか?」
リタのよく分からない話を、俺なりに解釈して聞き返す
「増えすぎたエアルも制御できれば星喰みの心配もなくなるわね」
少し自慢げにリタは言葉を繋げる
よくわからないが、すごい、ということは理解できた
「で、その世界中の学者が見つけ出せない公式ってのを探すっていうの?
それこそ夢物語でしょ」
若干不満そうにレイヴンは口を挟んだ
エステルが離れてからというもの、どこか様子がおかしい
「絶対にたどり着いてみせるわ!エステルのためにも、あたしの為にも!」
「そうかい……」
リタが意気込んで言うと、レイヴンは何処か諦めたようにそう言って、玄関の方へ歩いていく
「あれ、レイヴン、どこ行くの?」
「散歩よ散歩、俺様の頭じゃちとついていけないんでね」
カロルの問にそう答えて、レイヴンは出て行った
……何故か、嫌な予感がする
「……俺もちょっと出かけてくるわ」
そう言って、仲間の静止も聞かずに飛び出した
出てすぐに、おっさんとエステルが話しているのが目に入った
どういわけか、街の入口の方へと歩いていく
少し急ぎ目にそのあとを追いかける
すると、入口にあった魔導器のような物にエステルが手をかざしているのが見えた
「エステル!!」
「え…?あ、ユーリ…!?」
エステルは驚いた顔をして俺とレイヴンを交互に見る
「ありゃりゃ……まっ、いいか」
レイヴンがそう呟いたのが僅かに聞こえた
「エステル!!おっさんから離れろ!!」
エステルに駆け寄りながら、大声で叫ぶ
「え……あ……え……???」
おどおどとしているエステルにおっさんの手が伸びる
やばい、と思った瞬間
おっさんは俺の方に向かってエステルを突き飛ばした
「うぉっ!?!!」
「きゃぁっ!!?!」
突然のことに支えきれず、エステルとそのまま後ろに倒れ込む
それとほぼ同時にドォーンッと大きな音が聞こえた
「いっつぅ………エステル、大丈夫か?」
「え、えぇ……大丈夫、です」
体を起こしながらエステルは答える
俺も体を起こして、辺りを見るが、おっさんの姿は何処にもない
……まさか、シアが散々用心しろって言ってたのは、おっさんのことなのか?
「ちょっと!!今の音何よ!?!!」
慌てた様子でリタ達が駆け寄って来た
「あ、あれ……?みんないる……??じゃあ…レイヴンが言ってたのは……?」
困惑した様子でエステルは呟く
「おっさんなら、あれ使ってどっかいっちまったよ」
クイッと親指で先程の魔導器を指差す
「どっかって……何処に??」
「んなもん、俺が知りてぇよ…」
カロルの問に苦笑いして答える
知っていたら答えているさ
「砂漠の方に向かったみたいね」
ジュディの言葉に少し驚いたが、上を向いたまま言ってるから、恐らく始祖の隷長が教えてくれたのだろう
「追いかけるかの??」
「そりゃ追いかけるだろ?エステル使ってまで何しに行ったか問い詰めてやんねぇと」
そう言って立ち上がる
まさか、とは思うが自分の目で確かめて見ないとわからない
そう思って歩こうとした時
『もう無理限界!言うなら今しかないでしょ!!!!』
『おい、待て!!待たんか!!カストロ!!!』
「………わり、先乗っててくれ、すぐ戻る」
久しぶりに星の声が聞こえてきた
だから、エステルたちにそう伝えて、少し離れた所に行く
「今の今まで返事しなかったくせに、どうゆう風の吹き回しだ??」
少し嫌味っぽく問いかける
すると、シリウスの焦った声が聞こえてきた
『すまぬ、連絡しようにも、奴がお前達の傍に居ては、勘づかれる恐れがあったのだ』
『シリウス!!それよりも!!』
『あっ……あぁ……そうだな……』
カストロ、と呼ばれていた声に促され、シリウスは言いにくそうに口を開いた
『アリシアが、アレクセイに捕まった』
「………笑えねぇ冗談だな」
たった一言、出てきた言葉はそれだった
『冗談じゃないんだ!!本当なんだよ!!彼奴、エステリーゼかアリシア、どっちかを手に入れられれば充分だったんだ!!早く助けないと、アリシアが危ないんだ!!』
「……冗談じゃねぇとして、なんでアレクセイなんかに捕まったんだよ…」
カストロの必死な訴えに、冗談じゃないことだけはわかった
が、何故そうなってしまったのかは理解ができない
シアがそう簡単にアレクセイに捕まるとも思えないのだが…
『……アリシアは、彼奴の計画を潰す為に、自ら戦いを挑んだのだよ
………相打ちを覚悟で、な……』
「んな……っ!?」
『奴の計画が成功してしまえば、帝都だけでなく、この星自体が危険に晒される……アリシアはそれを嫌がったのだ
………今まで、彼奴の言いなりで動いていたからこそ、せめてもの償いとばかりに、一人で立ち向かったのだ
確かに、途中までは上手くいった。……が、奴の方が一枚上手だったのだ……』
シリウスの言葉に絶句した
彼の悔しそうな声から、恐らく止めたのだということがわかる
……それでも、止めきれなかったんだろう
だから今、後悔しているのだろう
「くそ……っ!あん時、行かせなきゃ…一人にしなきゃよかった……っ!!」
ぎゅっと左手を思い切り握りしめる
何故、もっと前に気づけなかったのだろう
彼女が抱えていた闇に
何故、もっと前に助けてやれなかったのだろう
彼女を捕らえていた悪から
何故、もっと前に………
救えなかったのだろう
彼女を……あの男から
考えたところで答えは出ない
もっと前から行動しておくべきだったとしか思えない
…今は、出来ることをするしかない
『……頼む、お前だけが……お前たちだけが頼りなのだ
アリシアを……我らが姫を救ってくれ』
「…言われなくたって救ってくるさ。……絶対に、死なせたりなんてしねぇ」
そう言って、仲間の元へと戻る
絶対に救い出してみせる
何を犠牲にしても、絶対に!
「とりあえず、助けたら一度ぶっ飛ばしとかないとね、あの大馬鹿者……!!一人で抱え込むなって、何度言えばわかるのよ!!」
レイヴンが向かった方向へ移動中、先程のシリウスたちとの会話を手短に話した
やはりと言うか、リタは大分ご立腹のようだ
…まぁ、俺もおかえり、と素直に言ってられる余裕はねぇんだが
「ぶっ飛ばすのは別として、ちゃんとペナルティは渡さないとね。ギルドの掟、破ったんだから」
「そうね、皆のためとは言え、黙って単独行動なんて、不義よね」
カロルとジュディも若干怒り気味だ
…まぁ、俺らもペナルティうけたし、当たり前っちゃ当たり前か
「アリシア……大丈夫でしょうか……」
エステルは一人心配そうに呟く
…本来なら彼女の反応が正しいんだろうが…
「シア姐なら、きっと大丈夫なのじゃ!心配しすぎはよくないのじゃ!」
そんなエステルをパティは必死に励ましている
「…とりあえず、今はシリウスたちの情報元に、最後にいた場所と、おっさん探しだな」
「でも……なんかおかしくない??アリシアが最後いた場所にレイヴンが行くなんて……」
俺の言葉に少し不安げにカロルが反応する
…確かに、それもそうだ
偶然、というわけではないかもしれない
「そろそろつくわよ」
ジュディの言葉に全員、顔を合わせて頷く
何が待っているか、わからない
用心に越したことはないだろう
「逃がした、か……まぁいいだろう。…それよりも、見つかったか?」
「残念ながらどこにも
…それと、お客様デース」
ヨームゲンがあった場所につくと、アレクセイとイエガーの姿と声が聞こえてきた
「アレクセイ……!!」
「これはこれは、エステリーゼ様御一行ではないか。何故ここに?」
何処か楽しそうに笑いながらアレクセイは言う
「何故だ??んなもん決まってんだろ!!シアを返せ!!」
そう言うと、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑いに変わる
「くっくっく、今更知ったのか??彼女には、我が待望の為にまだまだ働いてもらわねばならぬのだよ」
「ふざけないで!!これ以上、あの子が力を使ったら、死んじゃうかもしれないのよ?!」
何処か勝ち誇ったかのような笑みに苛立ちを覚える
それは、リタも……いや、他のメンバーも同じようで、一斉にアレクセイを睨みつける
「…どうやら、もう一人の道化も来たようだな?」
ニヤリと笑いながら、アレクセイは俺らの後ろを見つめる
「アレクセイ騎士団長!!」
その声に振り向けば、そこにはフレンの姿があった
「古くはアイフリード、そして今はバルボス、ラゴウ……みなそれなりに役に立ったが、それを上回る素晴らしい働きだった
全く、見事な道化ぶりだったよ」
「やっぱり全ての黒幕はお前かよ、アレクセイ!!」
剣の鞘を飛ばしながら言う
こんなやつに、シアは今まで言いなりにされてきて、今なおこき使われていると考えると、虫酸が走る
「何故、何故です!!何故あなたが、謀反など!!」
「謀反ではない。真の支配者が進むべき覇道だ」
「ヨーデル様を裏切るのですか!!」
「ヨーデル殿下……あぁ、殿下にもご退場願わないとな」
「ばかな……」
淡々と言葉を繋げるアレクセイに、フレンは絶句するしかなかった
「マイロード、準備は整いました」
「では、私は予定通りバクティオン神殿に向かう。ここは任せたぞ」
そう言うと、アレクセイはその場を去っていった
「待て!!アレクセイ!!」
「行かせない!」
追いかけようとした所を、ゴーシュとドロワットが邪魔に入る
「通して下さい!!」
「ユーたちのプリンセスもバクティオン神殿デース。バット、早く行かないと手遅れにナリマスヨ」
「何……?!」
イエガーの言葉に奴を思い切り睨みつける
が、二人の煙幕により、すぐに姿は消えてしまった
「くそっ……!!」
ギリッと歯を食いしばる
ただただ、焦りだけが残る
「ユーリ、アリシアに一体、何があったんだ?」
「…ついさっき、星たちから聞いた。……アレクセイに攫われたってな」
「……!!!」
「お前こそ、何があった?もう元騎士団長様に遠慮することねぇだろ」
絶句したフレンに何があったかを聞く
一瞬間を置いてから、フレンは話し出した
アレクセイが聖核を集めていること
帝国で禁止されていた新しい魔導器の開発
マンタイクでの住民の迫害
更に、ヘリオードの武装都市化
全てがアレクセイの命令だったという
「ったく、そんなんに自分の目的見失ってたら世話ねーな」
若干呆れ気味に言う
「…ま、シアを守りきれなかった俺が言えた口じゃねーけどな」
「いいや、それは違う。僕の判断ミスだ。あの時、僕も止めるべきだったんだ
…だから、彼女は僕が救い出す」
「あん?!」
フレンの答えに驚いた
別にそういうつもりで言ったのではないのだが…
「フレン隊長!?ヨーデル様はどうなされるのですか!?」
ゾディアが焦ったように問う
「わかっている、だから、我が隊の総力をあげてお守りしてくれ」
「おいおい…いいのかよ、それで
それと、シアを助けんのは俺ら凛々の明星だ」
「なら、僕も入れてくれるかい?凛々の明星に」
「お前にゃギルドはむいてねーよ
…ま、どうしてもって言うんだったら好きに着いてくりゃいいさ
でも、お前の本当にやるべき事、忘れんなよ?」
「ユーリ……!!あぁ、わかっている。アリシアを助け次第、ヨーデル殿下の元に戻るよ
……ゾディア、ウィチル、頼む」
「……わかりました。お早めにお戻りください。ヨーデル殿下にもそのようにお伝えします」
そう言うと、二人は走り去っていった
「……ありがとう、ユーリ」
「お互い様、だろ?」
珍しく礼を言ってきたフレンに、ニヤッと笑いかける
「むむ??……これは……?!?ユーリ!!!こっちに来るのじゃ!!」
パティの声に振り返ると、何やら砂に埋もれた何かを引っ張り出そうとしていた
「おいおい……こんな時に何してんだよ……」
軽くため息をつきながら傍に行き、引っ張り出そうとしていたものをグッと引っ張り上げる
「…!!!!これ、シアの剣の片割れじゃねぇか!!」
柄の部分を観ればわかる
彼女がずっと持ち続けていた剣だ
「なんでアリシアの剣がこんな所に??しかも、片方だけ…」
カロルが首を傾げながら言うが、残念ながら、俺にもわからない
『それは……!!写しではない方か!!』
「あ??なんか、いつもより声でかくねぇ…か……って、お前らどうした??」
シリウスが驚いた声をあげたのとほぼ同時に、俺以外のメンバー全員が驚いた顔をして辺りを見回す
「いっ、今の声何よ?!!」
「は??何って……もしかして、聞こえてんのか?」
「きっ、聞こえてるって…何がっ!?」
『アリシア……まさかその剣だけでも守ろうとするとは……流石、我らのお姫様だ』
「『我らのお姫様』…?もしかして、今聞こえているのが、星の声、なのかしら?」
首を傾げながらジュディは言う
『あぁ、そうだ。……手短に言おう、その剣は古くから星暦の一族に伝わる、当主のみが持つことを許された剣だ。それは、ユーリが身につけているペンダントと同調し、周囲の者にも我らの声が聞こえるようになるものだ』
「……まーた便利グッズが出てきたわけだな」
そう言って肩をすくめると、シリウスとは別の声が聞こえてくる
『そんなんじゃないよ!!今それが君の手にあるって事は、アリシアは力の制御が全く出来ない!それは、アリシアの力を抑える、二つ目のお守りなんだから!!』
「二つ目??なら一つ目は何処に??」
『そこの満月の子が付けてるネックレスだよ!!それこそ、アリシアの力を抑えて、体を守る一つ目のお守り!!二つとも無くなっちゃったらいよいよやばいって!!』
ものすごく慌てた口調のカストロに、本気でやばいということだけが伝わってくる
「アリシアは……自分を犠牲にして、私にこれを……?」
相当ショックだったのか、申し訳なさそうに顔を歪める
『…アリシアのそのネックレスのおかげで、今はまだ、満月の子のエアルの消費量が抑えられているはずだ
だが、アリシアに、これ以上、守りがない状態で居させるのは危険だ
……どうか頼む。みまもることしか出来ぬ、我らが変わりに、彼女を……アリシアを、一刻も早く、救ってくれ…』
悲痛な声が辺りに響く
二人目の父親だ、とシアが自慢する程に、彼は彼女を慕っているのだろう
「……必ず、必ず、僕らが助け出します!」
フレンは意気込んでそう答える
「さっきも言ったけど、言われなくても助け出してみせるっての」
「当たり前よ!あんな奴にアリシアを利用されてたまるもんですか!!」
「私を守ってくれたアリシアを、これ以上、酷い目になんて合わさせません!!」
「シア姐は絶対に助け出すのじゃ!!」
「凛々の明星の一員だもん、助けるのは当然だよ!!」
「彼女に何があったら、始祖の隷長も黙っていないでしょうね。絶対に助け出すわ」
口々にそう答える
誰も、シアを見捨てようなんて思っていない
それがわかったのか、少し安心したような声が響く
『…頼んだぞ…凛々の明星』
その声を最後に、聞こえなくなった
「…さてと、こんだけ頼み込まれたんだ、さっと行って、さっと助け出して来ようぜ?」
「はいっ!」「うん!!」「もちろん!」「ええ!」「あぁ!」「なのじゃ!」「ワオーン!!」
全員が同時に返事をした所で、フェルティア号の元へと急いで戻った
イエガーの情報を頼りにするのはいけ好かないが、頼れるものはそれしかない
バウルに頼んで、バクティオン神殿へと向かった
~その頃~
カツン、コツン……
足音が聞こえて目を開けると、牢屋のような場所の風景が目に入った
動こうにも両手足、それと首を鎖で繋がれていて、身動きが取れない
…ここまでしなくても逃げられないって……
「……啖呵切って置いてこのざまとは、笑えないですね」
ずっと聞いてきた、お兄様の次に嫌いな声に、顔をあげる
「……相変わらず、死んだ顔のままね、シュヴァーン
エステルの監視は、もういいの?」
少しおどけたように彼に聞く
「……監視しなくてもいいようにしたのは貴方でしょう?」
「えぇ、そうだったわね」
「……何故、そんなに余裕そうなのですか?」
ニコニコとしている私に、表情を変えずに聞いてくる
「……今の私にはリミッターがないもの、お兄様でも、制御するのは容易じゃないわ。…それに、ユーリたちなら、助けてくれるって、信じてるから……たとえ、どんな形になっても…ね」
「……何故、まだ強くいられるのですか?」
「……まだ、やりたいことがあるの。それが達成出来るまで死ねないの。…貴方も、もう少し自分に正直になってみなさいよ。…やりたいこと、なんでもいいから探してみるべきよ」
そう言うと、シュヴァーンは俯いてしまう
探すことが出来ないから、彼はこうなってしまったのだろう
「もし、見つからないって言うんだったら、ユーリ達との旅を思い出して、そして考えてよ。彼らとの旅が、どうだったかを。シュヴァーンとしてじゃなく、『レイヴン』としてどうだったかを、思い出してみて」
はっとしたように彼は顔をあげる
その顔には、何処か迷いが見えた
「……アリシアちゃん……俺……」
「シュヴァーン隊長、ここに居られましたか!騎士団長閣下がお呼びです!」
何か言おうとしていたが、その言葉は騎士によってかき消された
シュヴァーンはすこし悩んだ後、騎士の後をついて、この場を去っていった
「……少しでも、心に響いてればいいけど…」
『シュヴァーン』として生きる彼は嫌いだ
まったくもって自分の意思がない
けど、『レイヴン』としての彼には、まだ自分の意思があるように見えた
……だからこそ、思い出して欲しい
自分の意思で動くことを
皆と過ごした日々を
そうしたら、彼はきっと、変われるから
「………私はちょっと、これ以上頑張れないかもなぁ………」
体の痛みに加え、胸が苦しい
限界は、もう近いのだろう
「………もう少し……寝てても……いいかな…………」
そう呟いて目を閉じる
星の声は聞こえない
今はその方が都合がいい
静かに、わたしの意識はフェイドアウトしていった
「アリシア…今頃どうしてるかな?」
不意にカロルがそんなことを呟く
俺らは今、ジュディの友達…バウルに乗って、クリティア族の町、ミョルゾに向かっている途中だ
バウルに乗る、と言うよりも、俺らの船、フェルティア号をバウルが運んでくれている、と言った方が正しいか
ここまで来るのに色々あった
船を直すこととハリー(ドンの孫)を送るのに、一度ダングレストに向かい、そこで事情を知ったドンがイエガーの元に殴り込みに行き……
ベリウスが死んだ償いに、自決した
その介錯を俺はした
シアに散々手を汚させたくない、と言われておいて自ら名乗り出た
…知りたかった、というのが一番だったかもしれない
誰もやらないから、ではなく、単にシアが、どんな思いで今までこういうことをしてきたか、それを知りたかった
状況は違うにしろ、気分がいいものではない
…ずっとこんなこともしてきていたのかと思うと、胸が痛くなる
それからはジュディの元に向かった
ギルドとしての、ケジメをつける為に
当たり前ではあるが、リタは猛激怒だった
が、事の経緯を聞けば、怒るに怒れなくなっていた
ヘルメス式魔導器……
それは、従来の魔導器よりも効率よく、かつ新しい魔核で動かすことが出来るが、同時にエアルの流れを乱す程、大量のエアルを使うものらしい
だから、壊して回っていたのだと
怒っていたリタも、いつ怒りが引いたのか、一人で抱え込むなと、皆のことを頼れと言い出すものだからそれにも驚いたが…
そんなことに驚いてる暇もなく、成長途中のバウルをいつかの魔狩りの剣の連中が狙って来やがって戦闘になるわ
バウルの成長が終わってすぐに、フェローの元に行くことになるわ
フェローに会ったら、姫に言われたから仕方なくだからな!?を連呼されてから、エステルのことを聞いた
大方はシアに聞いたのと同じだった
が、聞いていないこともあった
…それについては、本人に会った時に問い詰めようと思うが……
満月の子について、もっと詳しく知りたいのであればクリティア族の街へ行けとフェローに言われ
リタとジュディの記憶を頼りに、トート、という名のクリティア族を探しにアスピオに向かい
彼から、赤い花の咲いた海岸の洞窟に鍵があることと、その代わりに、エゴソーの森にいる奴らを倒してくれという条件をつけられるわ
鍵を取りに行った場所には、アイフリードの犠牲者の墓があるし、パティはそれを見てうわの空になっちまうし
エゴソーの森にゃ、騎士団がうじゃうじゃいやがるし
ようやく倒して、今に至るわけだ
「さぁ……検討もつかねーな」
船室の壁に寄りかかりながら、カロルの問に答えた
今、何処で何をしているかなんて、俺が一番知りたい
星たちはここ何日か話しかけても答えてこねーし
「あら、連絡もないの?」
不思議そうにジュディは聞いてくる
「ないのよ。何も。あの子からこんなに連絡ないなんて……ちょっとおかしくない?」
若干心配そうにリタは言う
「……何も無ければいいんですけど……」
それにつられるようにエステルも心配そうに顔を歪める
「不吉なこと言うのは止めるのじゃ!シア姐ならきっと大丈夫じゃ!」
パティが励ますように言うが、それでも暗い雰囲気のままだった
まぁ……正直明るい雰囲気ではいられないだろう
「もう少しでミョルゾにつくわよ」
ジュディの声に顔を上げると、目の前にデカいクラゲのような何かが見えた
「えっ、もしかして……あの中……なんてことないよね…?!」
カロルが驚いきながらジュディに聞く
「あの中ね」
にっこりと笑いながらジュディは言う
「おいおい、マジかよ」
苦笑いしながら呟く
「ありゃぁ……空の上に浮いてるだけで驚きになのに、こんなのの中とはねぇ……」
苦い顔でレイヴンは言う
「こんなのなんて失礼ね、彼女も立派な始祖の隷長よ」
少し不服そうにジュディは言う
そんなジュディに、レイヴンは平謝りをしている
…この始祖の隷長のことも、シアは知っていたのだろうか?
もしかしたら知らないかもしれない
シアが見たら、なんて言うだろうか?
彼女なら、喜ぶ気がする
…厄介事が全て片付いたら、見せてやりたいな
「あらぁ、ジュディスじゃないの!元気そうでよかったわぁ」
ミョルゾについてすぐに、ジュディは街の人々に囲まれて質問攻めにされている
…クリティア族は変わった奴が多いとは思っていたが、ここまでとは……
「それよりも、長老はどこかしら?」
「長老?それなら今頃散歩でもしてるはずだ」
「そう、ありがとう
…それじゃ、行きましょ?」
ジュディの言葉に頷いて、街の中へと入って行く
街の至る所に、魔導器の
「…本当に、この街の人は魔導器を捨てたんですね」
ポツリと、エステルは呟く
「おや?外からお客さんが来るとは珍しい」
しがれた声に振り向くと、長老らしき人影があった
「あら長老、お久しぶり、ね」
ジュディが挨拶をすると、懐かしそうに長老はジュディに近く
ここに来た経緯を手短に話すと、家まで来てくれ、と言われた
ジュディを先頭に長老の家に行くと、めちゃくちゃ古そうな壁が目に入る
「ジュディスよ、ナギーグで壁にふれながらこの言葉をいうのじゃ
…霧のまにまに浮かぶ夢の都、それが現実の続き」
「…霧のまにまに浮かぶ夢の都、それが現実の続き?」
ジュディが言われた言葉を復唱すると、壁に絵が浮かび上がる
「これは……」
「へぇ、こんなことも出来ちゃうわけね」
「ナギーグを知ってなさるか
この力と口伝の秘文により、この壁画は真の姿を表すのじゃ」
レイヴンが後ろ手に口笛を拭きながら言うと、関心するように長老は言った
「クリティアこそ知恵の民なり、大いなるゲライオスの礎、古の世の
されど賢明ならざる知恵は禍なるかな
我らが手になる魔導器、天地に恵みをもたらすも、星の血なりしエアルを穢したり
エアルの穢れ、蒿じて大いなる災いを招き
我ら怖れもてこれを
ここに世のことごとく一丸となりて星喰みに挑み、忌まわしき力を消さんとす」
「これ、始祖の隷長じゃない?」
リタが指差した場面には、魔物のようなものが描かれていた
「結果、古代ゲライオス文明は滅んでしまったが、人々は生き残ることが出来たわけじゃ」
「ようするに、この絵はその星喰みを鎮めてる図ってこと?」
「この丸いのはなんじゃ?」
リタの言葉を遮るように、パティは図の下の方を指差す
「さて、のう…?そこまではわからんのう」
「………」
「ジュディ?」
急に真剣そうな顔をして黙ってしまったジュディに声をかける
「……我らと魔を繋げし星暦、満月の子に代わりてその身を捧げ、その半が消え去れり」
「……は………?」
「それでもなお、去らん星喰みに、世は祈り込めて満月の子らは命燃え果つ。星喰み虚空へと消え去れり」
「なんだと?」
「かくして世は永らえたり。されど我らは罪を忘れず、ここに世々語り継がん」
「どういうこと!?」
ジュディが言い終わると同時に、リタは声を荒らげて長老の方を向く
「個々の言葉が全部、何を意味しているかまでは伝わっておらんのじゃ」
「………」
長老の言葉を聞き終わると、エステルは外へと飛び出して行った
…シアから目を離すなと言われたが……今は一人にしてやった方がいいだろう
エステルが落ち着くまでは、隣の空き家を借りることになり、俺たちは先にそこへ移動した
移動してから、エステル抜きで話し合いを始めた
「さっきの話しからすると、満月の子だけが原因ではなさそうだが……」
「でも、満月の子らは命燃え果つって言うのはねぇ……」
「星喰みの原因の満月の子の命を絶ったことで、危機を回避したともとれるわ」
ジュディの発言に、誰も否定は出来なかった
確かにそうなのかもしれない
…だが、それよりも
「僕……それよりも、星暦の方が気になるな……」
ポツリとカロルが呟いた
「………我らを魔と繋ぎし星暦、満月の子に代わりてその身を捧げ、その半が消え去れり………だったな」
「………フェローが満月の子を意味嫌っているのは、これも原因だったのね」
再び沈黙が走る
シアに聞けばもっと色々わかるだろうが、今、当の本人はここにいない
「………認めたくなかった………魔導器は悪くない、悪いことに使う奴が悪いって…………でも違った」
悔しそうにリタは俯いたまま言う
彼女にとって、唯一無二の存在である魔導器が真っ向から悪だと否定されたのだから、仕方ないことなんだろう
「魔導器……全部止めなきゃだめなのかな?」
「そりゃ無理でしょ、今や俺たちの生活にとって必要不可欠なものよ??」
カロルの問に、レイヴンがバッサリと否定を投げる
確かにそうだ
結界魔導器にしろなんにしろ、魔導器なしで生活しろって言うのは無理な話だ
「エアルを使わないで使えればいいんだけど…そんなの夢物語なのかしら」
「…………リゾマータの公式」
「なんだそれ?」
ポツリと呟いたリタの言葉に聞き返す
「あらゆるものは、エアルの昇華、還元、構成、分解によって成り立ってるんだけど、そのエアルの仕組みに直接干渉することが可能になるはずの、未知の理論が予想されているの
確率されれば、エアルの制御が今よりもずっと容易になるはず
もちろん、エアルから変換された力をまたエアルとして再構成するような未知の術式が必要だけど……
でも、現にエステルは直接エアルに干渉している。アリシアも方法はもっと複雑だけど、殆ど直接干渉しているのと変わらない
リゾマータの公式に一番近いのは、あの二人なの!」
「なんだかよくわかんねぇがその公式ってやつに辿り着けりゃ、エステルは安心して暮らせるってことか?」
リタのよく分からない話を、俺なりに解釈して聞き返す
「増えすぎたエアルも制御できれば星喰みの心配もなくなるわね」
少し自慢げにリタは言葉を繋げる
よくわからないが、すごい、ということは理解できた
「で、その世界中の学者が見つけ出せない公式ってのを探すっていうの?
それこそ夢物語でしょ」
若干不満そうにレイヴンは口を挟んだ
エステルが離れてからというもの、どこか様子がおかしい
「絶対にたどり着いてみせるわ!エステルのためにも、あたしの為にも!」
「そうかい……」
リタが意気込んで言うと、レイヴンは何処か諦めたようにそう言って、玄関の方へ歩いていく
「あれ、レイヴン、どこ行くの?」
「散歩よ散歩、俺様の頭じゃちとついていけないんでね」
カロルの問にそう答えて、レイヴンは出て行った
……何故か、嫌な予感がする
「……俺もちょっと出かけてくるわ」
そう言って、仲間の静止も聞かずに飛び出した
出てすぐに、おっさんとエステルが話しているのが目に入った
どういわけか、街の入口の方へと歩いていく
少し急ぎ目にそのあとを追いかける
すると、入口にあった魔導器のような物にエステルが手をかざしているのが見えた
「エステル!!」
「え…?あ、ユーリ…!?」
エステルは驚いた顔をして俺とレイヴンを交互に見る
「ありゃりゃ……まっ、いいか」
レイヴンがそう呟いたのが僅かに聞こえた
「エステル!!おっさんから離れろ!!」
エステルに駆け寄りながら、大声で叫ぶ
「え……あ……え……???」
おどおどとしているエステルにおっさんの手が伸びる
やばい、と思った瞬間
おっさんは俺の方に向かってエステルを突き飛ばした
「うぉっ!?!!」
「きゃぁっ!!?!」
突然のことに支えきれず、エステルとそのまま後ろに倒れ込む
それとほぼ同時にドォーンッと大きな音が聞こえた
「いっつぅ………エステル、大丈夫か?」
「え、えぇ……大丈夫、です」
体を起こしながらエステルは答える
俺も体を起こして、辺りを見るが、おっさんの姿は何処にもない
……まさか、シアが散々用心しろって言ってたのは、おっさんのことなのか?
「ちょっと!!今の音何よ!?!!」
慌てた様子でリタ達が駆け寄って来た
「あ、あれ……?みんないる……??じゃあ…レイヴンが言ってたのは……?」
困惑した様子でエステルは呟く
「おっさんなら、あれ使ってどっかいっちまったよ」
クイッと親指で先程の魔導器を指差す
「どっかって……何処に??」
「んなもん、俺が知りてぇよ…」
カロルの問に苦笑いして答える
知っていたら答えているさ
「砂漠の方に向かったみたいね」
ジュディの言葉に少し驚いたが、上を向いたまま言ってるから、恐らく始祖の隷長が教えてくれたのだろう
「追いかけるかの??」
「そりゃ追いかけるだろ?エステル使ってまで何しに行ったか問い詰めてやんねぇと」
そう言って立ち上がる
まさか、とは思うが自分の目で確かめて見ないとわからない
そう思って歩こうとした時
『もう無理限界!言うなら今しかないでしょ!!!!』
『おい、待て!!待たんか!!カストロ!!!』
「………わり、先乗っててくれ、すぐ戻る」
久しぶりに星の声が聞こえてきた
だから、エステルたちにそう伝えて、少し離れた所に行く
「今の今まで返事しなかったくせに、どうゆう風の吹き回しだ??」
少し嫌味っぽく問いかける
すると、シリウスの焦った声が聞こえてきた
『すまぬ、連絡しようにも、奴がお前達の傍に居ては、勘づかれる恐れがあったのだ』
『シリウス!!それよりも!!』
『あっ……あぁ……そうだな……』
カストロ、と呼ばれていた声に促され、シリウスは言いにくそうに口を開いた
『アリシアが、アレクセイに捕まった』
「………笑えねぇ冗談だな」
たった一言、出てきた言葉はそれだった
『冗談じゃないんだ!!本当なんだよ!!彼奴、エステリーゼかアリシア、どっちかを手に入れられれば充分だったんだ!!早く助けないと、アリシアが危ないんだ!!』
「……冗談じゃねぇとして、なんでアレクセイなんかに捕まったんだよ…」
カストロの必死な訴えに、冗談じゃないことだけはわかった
が、何故そうなってしまったのかは理解ができない
シアがそう簡単にアレクセイに捕まるとも思えないのだが…
『……アリシアは、彼奴の計画を潰す為に、自ら戦いを挑んだのだよ
………相打ちを覚悟で、な……』
「んな……っ!?」
『奴の計画が成功してしまえば、帝都だけでなく、この星自体が危険に晒される……アリシアはそれを嫌がったのだ
………今まで、彼奴の言いなりで動いていたからこそ、せめてもの償いとばかりに、一人で立ち向かったのだ
確かに、途中までは上手くいった。……が、奴の方が一枚上手だったのだ……』
シリウスの言葉に絶句した
彼の悔しそうな声から、恐らく止めたのだということがわかる
……それでも、止めきれなかったんだろう
だから今、後悔しているのだろう
「くそ……っ!あん時、行かせなきゃ…一人にしなきゃよかった……っ!!」
ぎゅっと左手を思い切り握りしめる
何故、もっと前に気づけなかったのだろう
彼女が抱えていた闇に
何故、もっと前に助けてやれなかったのだろう
彼女を捕らえていた悪から
何故、もっと前に………
救えなかったのだろう
彼女を……あの男から
考えたところで答えは出ない
もっと前から行動しておくべきだったとしか思えない
…今は、出来ることをするしかない
『……頼む、お前だけが……お前たちだけが頼りなのだ
アリシアを……我らが姫を救ってくれ』
「…言われなくたって救ってくるさ。……絶対に、死なせたりなんてしねぇ」
そう言って、仲間の元へと戻る
絶対に救い出してみせる
何を犠牲にしても、絶対に!
「とりあえず、助けたら一度ぶっ飛ばしとかないとね、あの大馬鹿者……!!一人で抱え込むなって、何度言えばわかるのよ!!」
レイヴンが向かった方向へ移動中、先程のシリウスたちとの会話を手短に話した
やはりと言うか、リタは大分ご立腹のようだ
…まぁ、俺もおかえり、と素直に言ってられる余裕はねぇんだが
「ぶっ飛ばすのは別として、ちゃんとペナルティは渡さないとね。ギルドの掟、破ったんだから」
「そうね、皆のためとは言え、黙って単独行動なんて、不義よね」
カロルとジュディも若干怒り気味だ
…まぁ、俺らもペナルティうけたし、当たり前っちゃ当たり前か
「アリシア……大丈夫でしょうか……」
エステルは一人心配そうに呟く
…本来なら彼女の反応が正しいんだろうが…
「シア姐なら、きっと大丈夫なのじゃ!心配しすぎはよくないのじゃ!」
そんなエステルをパティは必死に励ましている
「…とりあえず、今はシリウスたちの情報元に、最後にいた場所と、おっさん探しだな」
「でも……なんかおかしくない??アリシアが最後いた場所にレイヴンが行くなんて……」
俺の言葉に少し不安げにカロルが反応する
…確かに、それもそうだ
偶然、というわけではないかもしれない
「そろそろつくわよ」
ジュディの言葉に全員、顔を合わせて頷く
何が待っているか、わからない
用心に越したことはないだろう
「逃がした、か……まぁいいだろう。…それよりも、見つかったか?」
「残念ながらどこにも
…それと、お客様デース」
ヨームゲンがあった場所につくと、アレクセイとイエガーの姿と声が聞こえてきた
「アレクセイ……!!」
「これはこれは、エステリーゼ様御一行ではないか。何故ここに?」
何処か楽しそうに笑いながらアレクセイは言う
「何故だ??んなもん決まってんだろ!!シアを返せ!!」
そう言うと、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑いに変わる
「くっくっく、今更知ったのか??彼女には、我が待望の為にまだまだ働いてもらわねばならぬのだよ」
「ふざけないで!!これ以上、あの子が力を使ったら、死んじゃうかもしれないのよ?!」
何処か勝ち誇ったかのような笑みに苛立ちを覚える
それは、リタも……いや、他のメンバーも同じようで、一斉にアレクセイを睨みつける
「…どうやら、もう一人の道化も来たようだな?」
ニヤリと笑いながら、アレクセイは俺らの後ろを見つめる
「アレクセイ騎士団長!!」
その声に振り向けば、そこにはフレンの姿があった
「古くはアイフリード、そして今はバルボス、ラゴウ……みなそれなりに役に立ったが、それを上回る素晴らしい働きだった
全く、見事な道化ぶりだったよ」
「やっぱり全ての黒幕はお前かよ、アレクセイ!!」
剣の鞘を飛ばしながら言う
こんなやつに、シアは今まで言いなりにされてきて、今なおこき使われていると考えると、虫酸が走る
「何故、何故です!!何故あなたが、謀反など!!」
「謀反ではない。真の支配者が進むべき覇道だ」
「ヨーデル様を裏切るのですか!!」
「ヨーデル殿下……あぁ、殿下にもご退場願わないとな」
「ばかな……」
淡々と言葉を繋げるアレクセイに、フレンは絶句するしかなかった
「マイロード、準備は整いました」
「では、私は予定通りバクティオン神殿に向かう。ここは任せたぞ」
そう言うと、アレクセイはその場を去っていった
「待て!!アレクセイ!!」
「行かせない!」
追いかけようとした所を、ゴーシュとドロワットが邪魔に入る
「通して下さい!!」
「ユーたちのプリンセスもバクティオン神殿デース。バット、早く行かないと手遅れにナリマスヨ」
「何……?!」
イエガーの言葉に奴を思い切り睨みつける
が、二人の煙幕により、すぐに姿は消えてしまった
「くそっ……!!」
ギリッと歯を食いしばる
ただただ、焦りだけが残る
「ユーリ、アリシアに一体、何があったんだ?」
「…ついさっき、星たちから聞いた。……アレクセイに攫われたってな」
「……!!!」
「お前こそ、何があった?もう元騎士団長様に遠慮することねぇだろ」
絶句したフレンに何があったかを聞く
一瞬間を置いてから、フレンは話し出した
アレクセイが聖核を集めていること
帝国で禁止されていた新しい魔導器の開発
マンタイクでの住民の迫害
更に、ヘリオードの武装都市化
全てがアレクセイの命令だったという
「ったく、そんなんに自分の目的見失ってたら世話ねーな」
若干呆れ気味に言う
「…ま、シアを守りきれなかった俺が言えた口じゃねーけどな」
「いいや、それは違う。僕の判断ミスだ。あの時、僕も止めるべきだったんだ
…だから、彼女は僕が救い出す」
「あん?!」
フレンの答えに驚いた
別にそういうつもりで言ったのではないのだが…
「フレン隊長!?ヨーデル様はどうなされるのですか!?」
ゾディアが焦ったように問う
「わかっている、だから、我が隊の総力をあげてお守りしてくれ」
「おいおい…いいのかよ、それで
それと、シアを助けんのは俺ら凛々の明星だ」
「なら、僕も入れてくれるかい?凛々の明星に」
「お前にゃギルドはむいてねーよ
…ま、どうしてもって言うんだったら好きに着いてくりゃいいさ
でも、お前の本当にやるべき事、忘れんなよ?」
「ユーリ……!!あぁ、わかっている。アリシアを助け次第、ヨーデル殿下の元に戻るよ
……ゾディア、ウィチル、頼む」
「……わかりました。お早めにお戻りください。ヨーデル殿下にもそのようにお伝えします」
そう言うと、二人は走り去っていった
「……ありがとう、ユーリ」
「お互い様、だろ?」
珍しく礼を言ってきたフレンに、ニヤッと笑いかける
「むむ??……これは……?!?ユーリ!!!こっちに来るのじゃ!!」
パティの声に振り返ると、何やら砂に埋もれた何かを引っ張り出そうとしていた
「おいおい……こんな時に何してんだよ……」
軽くため息をつきながら傍に行き、引っ張り出そうとしていたものをグッと引っ張り上げる
「…!!!!これ、シアの剣の片割れじゃねぇか!!」
柄の部分を観ればわかる
彼女がずっと持ち続けていた剣だ
「なんでアリシアの剣がこんな所に??しかも、片方だけ…」
カロルが首を傾げながら言うが、残念ながら、俺にもわからない
『それは……!!写しではない方か!!』
「あ??なんか、いつもより声でかくねぇ…か……って、お前らどうした??」
シリウスが驚いた声をあげたのとほぼ同時に、俺以外のメンバー全員が驚いた顔をして辺りを見回す
「いっ、今の声何よ?!!」
「は??何って……もしかして、聞こえてんのか?」
「きっ、聞こえてるって…何がっ!?」
『アリシア……まさかその剣だけでも守ろうとするとは……流石、我らのお姫様だ』
「『我らのお姫様』…?もしかして、今聞こえているのが、星の声、なのかしら?」
首を傾げながらジュディは言う
『あぁ、そうだ。……手短に言おう、その剣は古くから星暦の一族に伝わる、当主のみが持つことを許された剣だ。それは、ユーリが身につけているペンダントと同調し、周囲の者にも我らの声が聞こえるようになるものだ』
「……まーた便利グッズが出てきたわけだな」
そう言って肩をすくめると、シリウスとは別の声が聞こえてくる
『そんなんじゃないよ!!今それが君の手にあるって事は、アリシアは力の制御が全く出来ない!それは、アリシアの力を抑える、二つ目のお守りなんだから!!』
「二つ目??なら一つ目は何処に??」
『そこの満月の子が付けてるネックレスだよ!!それこそ、アリシアの力を抑えて、体を守る一つ目のお守り!!二つとも無くなっちゃったらいよいよやばいって!!』
ものすごく慌てた口調のカストロに、本気でやばいということだけが伝わってくる
「アリシアは……自分を犠牲にして、私にこれを……?」
相当ショックだったのか、申し訳なさそうに顔を歪める
『…アリシアのそのネックレスのおかげで、今はまだ、満月の子のエアルの消費量が抑えられているはずだ
だが、アリシアに、これ以上、守りがない状態で居させるのは危険だ
……どうか頼む。みまもることしか出来ぬ、我らが変わりに、彼女を……アリシアを、一刻も早く、救ってくれ…』
悲痛な声が辺りに響く
二人目の父親だ、とシアが自慢する程に、彼は彼女を慕っているのだろう
「……必ず、必ず、僕らが助け出します!」
フレンは意気込んでそう答える
「さっきも言ったけど、言われなくても助け出してみせるっての」
「当たり前よ!あんな奴にアリシアを利用されてたまるもんですか!!」
「私を守ってくれたアリシアを、これ以上、酷い目になんて合わさせません!!」
「シア姐は絶対に助け出すのじゃ!!」
「凛々の明星の一員だもん、助けるのは当然だよ!!」
「彼女に何があったら、始祖の隷長も黙っていないでしょうね。絶対に助け出すわ」
口々にそう答える
誰も、シアを見捨てようなんて思っていない
それがわかったのか、少し安心したような声が響く
『…頼んだぞ…凛々の明星』
その声を最後に、聞こえなくなった
「…さてと、こんだけ頼み込まれたんだ、さっと行って、さっと助け出して来ようぜ?」
「はいっ!」「うん!!」「もちろん!」「ええ!」「あぁ!」「なのじゃ!」「ワオーン!!」
全員が同時に返事をした所で、フェルティア号の元へと急いで戻った
イエガーの情報を頼りにするのはいけ好かないが、頼れるものはそれしかない
バウルに頼んで、バクティオン神殿へと向かった
~その頃~
カツン、コツン……
足音が聞こえて目を開けると、牢屋のような場所の風景が目に入った
動こうにも両手足、それと首を鎖で繋がれていて、身動きが取れない
…ここまでしなくても逃げられないって……
「……啖呵切って置いてこのざまとは、笑えないですね」
ずっと聞いてきた、お兄様の次に嫌いな声に、顔をあげる
「……相変わらず、死んだ顔のままね、シュヴァーン
エステルの監視は、もういいの?」
少しおどけたように彼に聞く
「……監視しなくてもいいようにしたのは貴方でしょう?」
「えぇ、そうだったわね」
「……何故、そんなに余裕そうなのですか?」
ニコニコとしている私に、表情を変えずに聞いてくる
「……今の私にはリミッターがないもの、お兄様でも、制御するのは容易じゃないわ。…それに、ユーリたちなら、助けてくれるって、信じてるから……たとえ、どんな形になっても…ね」
「……何故、まだ強くいられるのですか?」
「……まだ、やりたいことがあるの。それが達成出来るまで死ねないの。…貴方も、もう少し自分に正直になってみなさいよ。…やりたいこと、なんでもいいから探してみるべきよ」
そう言うと、シュヴァーンは俯いてしまう
探すことが出来ないから、彼はこうなってしまったのだろう
「もし、見つからないって言うんだったら、ユーリ達との旅を思い出して、そして考えてよ。彼らとの旅が、どうだったかを。シュヴァーンとしてじゃなく、『レイヴン』としてどうだったかを、思い出してみて」
はっとしたように彼は顔をあげる
その顔には、何処か迷いが見えた
「……アリシアちゃん……俺……」
「シュヴァーン隊長、ここに居られましたか!騎士団長閣下がお呼びです!」
何か言おうとしていたが、その言葉は騎士によってかき消された
シュヴァーンはすこし悩んだ後、騎士の後をついて、この場を去っていった
「……少しでも、心に響いてればいいけど…」
『シュヴァーン』として生きる彼は嫌いだ
まったくもって自分の意思がない
けど、『レイヴン』としての彼には、まだ自分の意思があるように見えた
……だからこそ、思い出して欲しい
自分の意思で動くことを
皆と過ごした日々を
そうしたら、彼はきっと、変われるから
「………私はちょっと、これ以上頑張れないかもなぁ………」
体の痛みに加え、胸が苦しい
限界は、もう近いのだろう
「………もう少し……寝てても……いいかな…………」
そう呟いて目を閉じる
星の声は聞こえない
今はその方が都合がいい
静かに、わたしの意識はフェイドアウトしていった