第2部〜満月の子と星暦の真実〜
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いざ、幽霊船へ
「うっわぁ……何この船……」
唖然として目の前に見える船を見上げる
一言で言うなら『幽霊船』と言っても過言じゃない
過言じゃないっていうか、そのまま幽霊船だと思う…
「何…っ!?」
カウフマンさんが船室から飛び出し、目の前に見える巨船に眉を寄せた
「見たことない型ね……大分古いみたいだけど…」
「アーセルム号…?」
船体に書かれた文字を読む
……なんか、どっかで聞いたことある気がするような……
「なんか…不気味な船だね…」
ギギィーーーーッ
カロルが自身の腕を摩ってると、突然船のタラップが降りてきた
「ひゃっ!?」
音に驚いたのかリタがキョロキョロと辺りを見渡す
「ま、まるで、呼んでいるみたい……」
エステルは驚きつつも、何処か楽しそうにしている
まぁ…確かにちょっと面白そうではあるけど…
「ば、バカなこと言わないでよっ!さっさと船出してっ!」
「うーむ、駄目じゃの。駆動魔導器 がうんともすんともいわぬのじゃ」
魔導器の側でうーんと唸っているパティの隣に慌てて駆け寄って魔導器を点検し始める
だが、魔導器に異常はなかったみたいで、悲壮な声をあげる
「なんで!?どうなってるのよっ!?」
「こいつが原因とかか…?」
「うひひ、お化けの呪いってか?」
怪訝そうに目の前の巨船を見上げているユーリに、楽しそうにレイヴンが笑う
リタは顔を真っ青にしてるけどね…
そーいえば、リタもこの手のもの…苦手だったなぁ……
苦笑いしてリタを見てると、面白そうだし、見張りを残して何人かで入ろうと言う話になっていた
ユーリもジュディスもすっかり行く気満々だ
「ラピードも来るよな?」
「ワフンッ!」
「ユーリとラピードが行くなら私も行こっかな」
ユーリ居ないと怖いし…と、心の中で呟きながらタラップに飛び乗る
「こっちの戦力配分も考えてよね?何があるかわからないんだから」
カウフマンさんに釘を刺されたが、リタが居るし治癒術の使えるエステルも居る
エステルが力を使うのはあまり気乗りしないが、このメンバーなら問題ないだろう
近距離戦闘の得意なメンバーが居ないのは少々心配だが『あの人』も居ることだし、なんとかなるだろう
「なんだ?シアが来るなんて珍しいな?」
物珍しげにユーリは首を傾げる
「アリシア…あんた、怖くなくなったの?」
リタも有り得ないというように首を傾げる
「……じっとしてる方が余計怖いじゃんか……!!」
クルッと顔だけユーリ達の方に向けながら言う
引きつった顔をしているのが、鏡を見なくても容易に想像出来た
私もリタ同様、心霊現象なんていう類のものはてんで苦手だ
それでも、ここで待ってろなんて絶対無理
ましてや、ユーリが居ない所で待てだなんて何のお仕置きだっていうレベルだ
「ありゃ、アリシアちゃんもお化け嫌いなのね~ちょっと意外~」
ニヤニヤと面白いものでも見つけたかのようにレイヴンが笑っている
…知ってる癖に…とツッコミたくなるのを必死で押さえ込んだ
「も、もうっ!行くなら早く行こっ!」
そう声をかけると、仕方ないなと言いたげにラピードもタラップに飛び乗ってくる
それに続くように、ユーリとジュディスもついてきた
いってきます、と三人揃って手を振る
カウフマンさんの部下が、魔導器が動いたら発煙筒で知らせる、というのを聞いてから巨船の中へと足を進めた
「……ぼく…なんかちょっと心配だよ…」
残ったメンバーを見ながら、カロルは不満を漏らす
「まぁ、なんとかなるでしょ~」
相変わらずヘラヘラ呑気に笑いながらレイヴンは言う
「なんでそんなに呑気で居られるのよ…!!」
「リタ…?大丈夫です?」
ガタガタと怯えているリタにエステルがそっと寄り添う
そんなリタを見てか、ますます不安が増してしまったようで、カロルは項垂れてしまう
普段何事にも物怖じしないリタがこの状態なのだから仕方ないことかもしれない
レイヴンはリタを見て、おもしろいおもちゃを見つけたかのようにいじりだし始めてしまっている
なんとかしてそのレイヴンを止めようとエステルがわたわたしていると…
バキバキッ!!ドカーンッ!!
突然、巨船から不気味な音が鳴って一同が振り返ると、帆が折れてしまったらしく、埃が舞っているのが見えた
「ユーリ達……大丈夫かな……?」
心配そうに巨船を見ながらカロルは呟く
「…あの……カウフマンさん…私達も様子を見に行って来てもいいですか…?」
遠慮気味にエステルが尋ねると、渋々ではあるが許可してくれた
レイヴンは意外にもノリノリでタラップに飛び乗った
パティも一緒に行くと言い、レイヴンの後を追いかける
こうして、エステルとカロルも嫌がるリタを半分引きずるように連れて、ユーリ達の後を追って巨船へと足を踏み入れた
~一方その頃~
船内を探索していると、外からバキバキッと大きな音が聞こえたと同時にグラッと大きく揺れた
「わわっ!?何何何っ!?」
「また船がぶつかりでもしたか?」
「あら、この扉…開かなくなっているわ……今の揺れで歪んでしまったのかしら?」
入ってきた扉のノブを回しながらジュディスは言う
どことなく楽しそうに見えるのは気の所為だろうか……
「完全に閉じ込められちまう前にここから出ようぜ」
そう言いながら、ユーリは入って来た方と反対側を指さす
「賛成…!早く出よ出よ…!!」
「それもそうだけれど、あなたがそうやってユーリにくっ付いていたら、彼歩きにくいと思うわよ?」
少し肩を竦めて苦笑いしながら私を見る
そう言われるのも無理はなかった
私は今、ユーリの腕に思いっきり引っ付いているのだから
音に驚いて思わず傍に居たユーリにしがみついてしまったのを忘れていた…
「ご、ごめんっ!」
慌ててユーリ離れる
「別にいいっての、そんくらい気にすんなって」
ははっと笑いながら頭に手を乗せてくる
別に嫌ではないけど、すっごい子供扱いされてる気がする…
「さ、行こうぜ?」
「ええ、行きましょ」
ユーリとジュディスを先頭に、再び探索を始めた
二人の後を追うように私とラピードも付いて行く
「それにしてもなんでこんなに鏡があるのかしら?」
不思議そうにジュディスが首を傾げる
周りを見れば、壁という壁に鏡が貼られていて、正直気味が悪い
この鏡のせいで魔物が何処から来るかわからなくなりそうだ
「さあな、そんなもん作った奴にしかわかんねぇさ」
興味無さそうに手をヒラヒラさせて、先に進み出す
「あっ!ユーリ、置いてかないでよ!」
慌ててその後を追いかけようと足を踏み出した途端
バキッ!!
「……へ…?」
足元から嫌な音が聞こえたのと、ほぼ同時に体が落下していく感覚に襲われる
「きゃあぁっ!?」
「シアっ!?」
間一髪の所でユーリが手を掴んでくれたおかげで落下はしなかった
「あっぶねぇ……ちょっと待ってろよ?今ひきあ……うおっ!?」
バギッ!!!
ユーリが私を引き上げようと腕に力を込めた途端、床が抜けてユーリ諸共落下してしまった
「きゃあっ!!」
落下する感覚に思わず目をぎゅっと瞑る
ドサッ!!!!
鈍い音と共に浮遊感は消えたが、来るはずの衝撃は来なかった
恐る恐る目を開けると、ユーリの胸が目に入った
どうやらユーリが下になってくれていたらしい
「わわっ!?ご、ごめんねっ!!」
慌ててユーリの上から退くと、ゆっくりと起き上がりながら頭を摩っている
「いっつぅ……オレは大丈夫だよ。それよか、シアは怪我してねぇか?」
「う、うん、ユーリのおかげでなんともないよ」
「そっか、それならよかった」
優しく微笑みながら頬を撫でてくる
本当は痛いだろうに…
確かに昔からユーリは頑丈だったけど、かなりの高さがあった上に、私を守るようにして落ちたのだ
絶対痛いはずだ
それでも平気だと言って笑ってくる彼に胸が痛む
……こうゆう時、アリオトさえいてくれれば……
「にしても、そっちに戻れそうにねぇな」
私達が落ちた穴を見上げながらユーリはジュディスに話しかけている
「そうね、そっちに降りようにも、また床が抜けてしまいそうね」
「ならこのまま二手に別れて進もう。どっかで落ち合えるだろ?」
「ええ、それがいいわね。それじゃ気を付けて」
そう言うとラピードと一緒にジュディスは進み出した
「さてと…オレらも進むとしますかね」
ゆっくりと立ち上がって、服についた埃を軽く払うと、当たり前のように右手を差し出してくる
「ん、そうしよっか」
ニコッと笑ってその手を取って、肩を並べて進み出す
ダングレストで沢山手を汚したことを伝えた時には、もうニ度とこうやって肩を並べることはないって思ってた
隣にはもう居られないって思ってた
それでも、ユーリはこうして隣に居てくれる
それだけで、私は嬉しい
……今の状況でこんな事言ったら、笑われそうだけど……
もう少し…こうやってニ人きりで居たい…
…なんて、ちょっとわがままかな…?
何部屋か進んで行くと、ようやくジュディスとラピードと合流出来たのだが…
「おいおい……なーんでエステル達までいんだよ?」
ユーリは大きくため息をつきながら、目の前を見据える
そこにはジュディスとラピード以外に、エステルにリタにカロル、レイヴン…更にパティまで居た
「船の護衛はして無くていいの?」
呆れ気味に聞くと、レイヴンがヘラヘラ笑いながら大丈夫だと言う
…この人の言うことは何も信用出来ないのはきっと私だけじゃない気がする…
「と、とにかくっ!さっさとこんなとこ出るわよっ!!」
リタがそう言うと、ギィっと音を立てて入って来た扉が閉まった
「え!?な、なんで!?!!」
ガチャガチャッと扉のノブを回しながらカロルは悲痛な声をあげる
「……この部屋を見てからにしろってことかな…?」
クイッと背後にある少し大きめの扉を指さす
他の部屋とは違って装飾が多少豪華なものになってる
「アリシアっ!?あんたなんてこと言うのよっ!?」
顔を真っ青にしたリタがものすごい勢いで私の元に吹っ飛んで来て、二の腕を思い切り掴まれる
「痛っ!?リタっ!痛いからっ!!」
リタ力入りすぎ…っ!!爪くい込んでるっ!!
あまりの痛さに思わず涙目になる
いや、流石にこれは痛すぎだから…!!
「リ、リタ!離してあげてください!」
見兼ねたエステルがリタを半分無理矢理引き剥がしてくれた
「いったぁ…ありがとう…エステル…」
リタに掴まれていた箇所を擦りながらエステルにお礼を言う
「アリシア…大丈夫?」
「あはは…大丈夫大丈夫~…これでも慣れてる方だからさ」
心配そうに見詰めてくるカロルの方を向いて、軽く肩を竦める
幼い頃にも何度かあったから、慣れてると言えば慣れてる
…ただ、昔よりもかなり力が強くなっているが…
「ほら、早く入るなら入ろ入ろ!」
「同感だな、ここで立ち止まってても何も始まんねぇしな」
「じゃ、開けるわね」
ギイィィッと、大きな音を立てて扉が開くと、今まで見てきた部屋よりも明らかに広い部屋だった
中央には机と……
「がっ…ガイコツ…っ!?」
予想外のものが見えて、思わずユーリに飛びつく
「見た感じこの船の船長さんって感じの服ねぇ」
「あら、これは日記かしら?」
驚きもせずにレイヴンとジュディスは机に近づく
…なんで近寄れるのさ…
私には無理だよ……
「おーいシア、大丈夫か?」
ユーリはポンポンッと頭を撫でてくるが、今の私に答えてる余裕はない
恐らくリタよりも怖がりだと自分でも思う
ブンブンッと首を横に振る
冗談抜きでこれ以上は無理だ
…なんで入る前、ちょっと楽しそうだなんて思ったんだよ私…!
全っ然、楽しくないっ!
私が怯えている間に、ジュディスが日記読んだりとか、ガイコツが抱えてた箱を腕ごと取ったりとかしてるみたいなんだけど…
度胸があるというか…無鉄砲って言うか……
そんなことを考えているとまたしてもエステルが突拍子もないことを言い出した
箱の中身を届けたい、と…
その箱の中身は、魔物を退ける力があるらしい
だが、その日記は千年以上前の話だ
流石に無理があると思うんだけど…
「僕達みたいなちっちゃいギルドは、基本的に一つしか仕事を受けちゃいけないんだ」
「一つ一つ確実に仕事をこなす事が、ギルドの信用に繋がるからねぇ」
ギルドの規則についてカロルとレイヴンが話す
確かに、一度に何個も仕事を受けるのはどうかと思う
「あら、またその子の意見でギルドの意向が右往左往するの?」
少しきつい口調でジュディスが苦言を放つと、リタがそれに対して怒鳴り声をあげる
言い方に少し問題はあるが、ジュディスが言いたい事はわかる
「待ってリタ…ジュディス、ごめんなさい……でも、この人の思いを待ってる人に届けてあげたい…」
しゅんとしてエステルは言うが、千年も昔の話だ
「うーむ、流石に千年は待ちくたびれるのじゃ」
「あ、あ、あ、あれっ!」
急にカロルが大声を出して、私の背後にある鏡を指さした
「ん?…うぉっ!?」
「え…?……きゃあぁっ!?」
鏡を見て驚いたレイヴンにならうように振り向くと……
そこには骸骨の騎士がこちらをじっと見つめてきていた
思わず飛び退いて、ユーリの背に逃げるように隠れた
それとほぼ同時に、ゆっくりと鏡の中から出てくると剣を構えた
「どうやら逆のようね」
すっと槍を構えながらジュディスはため息をつく
「何がよっ!?」
慌てて身構えながらリタは帯を構える
「魔物を引き寄せてるってこと」
「来るぞっ!」
シュッと鞘を後ろに飛ばしたユーリから少し離れた所で私も剣を抜いた
………近づく気はさらさらないんだけどね……
ユーリとラピード、ジュディスを筆頭に攻撃を与えていくが、一向に倒れる気配がない
倒れることは愚か、膝をつくことさえない
「参ったわねぇ…」
風を纏わせた矢を正確に当てながら、私の隣に居るレイヴンは苦笑いする
「アリシアっ!あんたの術でなんとかしなさいよっ!」
ファイヤーボールを当てながらリタは言うが、ここでは火なんてすぐに燃え移りそうだからやめて欲しい…
「無理無理無理っ!!ここで術なんて使ったら最悪船ごと吹っ飛ぶって!」
蒼破刃と魔神剣を交互に飛ばしながらリタに告げる
私の魔術はただでさえ威力が強い上に、星達が見えるときじゃ無ければ全くと言っていいほどコントロールが効かない
だから、大技を使う場合はなるべく広い場所じゃないと仲間は愚か、自分の身まで危ない
この狭い空間では使えないし、そもそも大技使ったところで倒れるかだってわからない
「おいっシアっ!話してる余裕あんなら前来いって!!」
「私達だけじゃ食い止めるの少しキツイものね…」
怒鳴り声をあげながらも、ラピードと息ぴったりに攻撃を当てていくユーリ
それに続くようにジュディスも攻撃していく
「近寄れてたらとっくに前出てるよ…」
実体があるとはいえ、本来動くはずのないものが動いているのだ
リタはもう慣れてきているようだが、私にはどうにも受け入れられそうにない
「ぼ…僕だっ……うわっ!?」
「あっ!カロルっ!?」
武器を構えて骸骨の騎士に突っ込んで行こうとしたカロルだが、床に空いている穴に足が引っかかってしまったらしく、派手に転んでしまった
転んだと同時に手に持っていた武器がすっ飛んで、騎士の足にクリーンヒットすると、僅かに騎士の体制が崩れた
「たまにはやるじゃない!ガキンチョ!よけられないわよ!デモンズランス!!」
「煌めいて、魂瑶の力…フォトンっ!」
好機と見てすかさずリタとエステルが畳み掛けるように術を放つ
「ポン・チー・カン・ローン、ツモ!!ジャンパイ!!」
後に続くようにパティが術を食らわせると、胸元が一瞬赤く光った
強力な攻撃がくるのかと身構えたが、骸骨の騎士はゆっくりと鏡の中へと戻って行った
「逃げるのじゃ!」
パティがその後を追いかけようとするが、それをユーリが静止した
「待て、パティ。白黒付けなきゃいけない相手でもないだろ?ほっとこうぜ」
そう言って剣を鞘に戻す
それに倣って、他のメンバーも武器を収めた
「勘弁してよ、もう…」
大きくため息をついてレイヴンは項垂れる
「なら返してあげる?あの人に」
ジュディスがそう言いながら骸骨になった船長を指さす
「「そ、そうしよ!!/そうしようよ!!」」
カロルとほぼ同時に力強く頷いた
またこんなことが起きたりなんてしたらたまったものじゃない
「でも……」
エステルは不満気に箱と船長を交互に見る
すると、リタが諦めたように鼻を鳴らして腕を組んだ
「あたしが届ける」
「リタ……!」
キッパリと言い切ったリタを驚いて見つめると、その隣に居たエステルは嬉しそうに頬を緩ませていた
そして、あたしが勝手にやるから、あんた達は自分達の仕事をすればいいと言う
呆気にとられていると、カロルとユーリが手伝うと名乗りをあげる
「どうせオレらについてくんだろ。仕事外で手伝う分には、問題ねぇよ」
ひらりと手をあげてユーリがそう言うと、エステルはありがとうございますと嬉しそうに言う
「若人達は元気ねぇ……ん?」
茶化すようにレイヴンは言ったが、怪訝そうに窓の外を見つめて黙ってしまう
何事かと窓の方を向けば、煙が尾を引いて上がっている
どうやら駆動魔導器が動き出したようだ
それと同時にギィっと扉が開いた
「おや、呪いが解けたかな?」
うひひっと笑うレイヴンの足を思いっきり踏みつける
「馬鹿言ってなくていいから、行くよっ!」
そう言って扉に向かって歩き出す
正直、これ以上ここに居たくない
もう幽霊とかいらないから…
「アリシア、あなたはリタの手伝いしなくていいのかしら?」
先頭を歩いていると、クスクス笑いながらジュディスが聞いてきた
「名乗りあげなくても私が手伝うこと、リタは知ってるから大丈夫だよ」
「ふふ、あなたもお人好しね」
「まぁ…これでも親友だからね、手伝うのが普通でしょ?」
ジュディスのお友達と同じで、と小声で付け足すと、クスッと肩を竦ませた
フェルティア号に戻ると、案の定カウフマンさんにどやされてしまったが、私達が居ない間に特に魔物に襲われることもなかったらしい
結局魔導器の止まった理由はわからなかったが、パティの目利きでノードポリカについたら駆動魔導器を新しいものに変えてもらえることになった
……それ以前に、この船貰えることになってたの知らなかったんだけど……
「うっわぁ……何この船……」
唖然として目の前に見える船を見上げる
一言で言うなら『幽霊船』と言っても過言じゃない
過言じゃないっていうか、そのまま幽霊船だと思う…
「何…っ!?」
カウフマンさんが船室から飛び出し、目の前に見える巨船に眉を寄せた
「見たことない型ね……大分古いみたいだけど…」
「アーセルム号…?」
船体に書かれた文字を読む
……なんか、どっかで聞いたことある気がするような……
「なんか…不気味な船だね…」
ギギィーーーーッ
カロルが自身の腕を摩ってると、突然船のタラップが降りてきた
「ひゃっ!?」
音に驚いたのかリタがキョロキョロと辺りを見渡す
「ま、まるで、呼んでいるみたい……」
エステルは驚きつつも、何処か楽しそうにしている
まぁ…確かにちょっと面白そうではあるけど…
「ば、バカなこと言わないでよっ!さっさと船出してっ!」
「うーむ、駄目じゃの。
魔導器の側でうーんと唸っているパティの隣に慌てて駆け寄って魔導器を点検し始める
だが、魔導器に異常はなかったみたいで、悲壮な声をあげる
「なんで!?どうなってるのよっ!?」
「こいつが原因とかか…?」
「うひひ、お化けの呪いってか?」
怪訝そうに目の前の巨船を見上げているユーリに、楽しそうにレイヴンが笑う
リタは顔を真っ青にしてるけどね…
そーいえば、リタもこの手のもの…苦手だったなぁ……
苦笑いしてリタを見てると、面白そうだし、見張りを残して何人かで入ろうと言う話になっていた
ユーリもジュディスもすっかり行く気満々だ
「ラピードも来るよな?」
「ワフンッ!」
「ユーリとラピードが行くなら私も行こっかな」
ユーリ居ないと怖いし…と、心の中で呟きながらタラップに飛び乗る
「こっちの戦力配分も考えてよね?何があるかわからないんだから」
カウフマンさんに釘を刺されたが、リタが居るし治癒術の使えるエステルも居る
エステルが力を使うのはあまり気乗りしないが、このメンバーなら問題ないだろう
近距離戦闘の得意なメンバーが居ないのは少々心配だが『あの人』も居ることだし、なんとかなるだろう
「なんだ?シアが来るなんて珍しいな?」
物珍しげにユーリは首を傾げる
「アリシア…あんた、怖くなくなったの?」
リタも有り得ないというように首を傾げる
「……じっとしてる方が余計怖いじゃんか……!!」
クルッと顔だけユーリ達の方に向けながら言う
引きつった顔をしているのが、鏡を見なくても容易に想像出来た
私もリタ同様、心霊現象なんていう類のものはてんで苦手だ
それでも、ここで待ってろなんて絶対無理
ましてや、ユーリが居ない所で待てだなんて何のお仕置きだっていうレベルだ
「ありゃ、アリシアちゃんもお化け嫌いなのね~ちょっと意外~」
ニヤニヤと面白いものでも見つけたかのようにレイヴンが笑っている
…知ってる癖に…とツッコミたくなるのを必死で押さえ込んだ
「も、もうっ!行くなら早く行こっ!」
そう声をかけると、仕方ないなと言いたげにラピードもタラップに飛び乗ってくる
それに続くように、ユーリとジュディスもついてきた
いってきます、と三人揃って手を振る
カウフマンさんの部下が、魔導器が動いたら発煙筒で知らせる、というのを聞いてから巨船の中へと足を進めた
「……ぼく…なんかちょっと心配だよ…」
残ったメンバーを見ながら、カロルは不満を漏らす
「まぁ、なんとかなるでしょ~」
相変わらずヘラヘラ呑気に笑いながらレイヴンは言う
「なんでそんなに呑気で居られるのよ…!!」
「リタ…?大丈夫です?」
ガタガタと怯えているリタにエステルがそっと寄り添う
そんなリタを見てか、ますます不安が増してしまったようで、カロルは項垂れてしまう
普段何事にも物怖じしないリタがこの状態なのだから仕方ないことかもしれない
レイヴンはリタを見て、おもしろいおもちゃを見つけたかのようにいじりだし始めてしまっている
なんとかしてそのレイヴンを止めようとエステルがわたわたしていると…
バキバキッ!!ドカーンッ!!
突然、巨船から不気味な音が鳴って一同が振り返ると、帆が折れてしまったらしく、埃が舞っているのが見えた
「ユーリ達……大丈夫かな……?」
心配そうに巨船を見ながらカロルは呟く
「…あの……カウフマンさん…私達も様子を見に行って来てもいいですか…?」
遠慮気味にエステルが尋ねると、渋々ではあるが許可してくれた
レイヴンは意外にもノリノリでタラップに飛び乗った
パティも一緒に行くと言い、レイヴンの後を追いかける
こうして、エステルとカロルも嫌がるリタを半分引きずるように連れて、ユーリ達の後を追って巨船へと足を踏み入れた
~一方その頃~
船内を探索していると、外からバキバキッと大きな音が聞こえたと同時にグラッと大きく揺れた
「わわっ!?何何何っ!?」
「また船がぶつかりでもしたか?」
「あら、この扉…開かなくなっているわ……今の揺れで歪んでしまったのかしら?」
入ってきた扉のノブを回しながらジュディスは言う
どことなく楽しそうに見えるのは気の所為だろうか……
「完全に閉じ込められちまう前にここから出ようぜ」
そう言いながら、ユーリは入って来た方と反対側を指さす
「賛成…!早く出よ出よ…!!」
「それもそうだけれど、あなたがそうやってユーリにくっ付いていたら、彼歩きにくいと思うわよ?」
少し肩を竦めて苦笑いしながら私を見る
そう言われるのも無理はなかった
私は今、ユーリの腕に思いっきり引っ付いているのだから
音に驚いて思わず傍に居たユーリにしがみついてしまったのを忘れていた…
「ご、ごめんっ!」
慌ててユーリ離れる
「別にいいっての、そんくらい気にすんなって」
ははっと笑いながら頭に手を乗せてくる
別に嫌ではないけど、すっごい子供扱いされてる気がする…
「さ、行こうぜ?」
「ええ、行きましょ」
ユーリとジュディスを先頭に、再び探索を始めた
二人の後を追うように私とラピードも付いて行く
「それにしてもなんでこんなに鏡があるのかしら?」
不思議そうにジュディスが首を傾げる
周りを見れば、壁という壁に鏡が貼られていて、正直気味が悪い
この鏡のせいで魔物が何処から来るかわからなくなりそうだ
「さあな、そんなもん作った奴にしかわかんねぇさ」
興味無さそうに手をヒラヒラさせて、先に進み出す
「あっ!ユーリ、置いてかないでよ!」
慌ててその後を追いかけようと足を踏み出した途端
バキッ!!
「……へ…?」
足元から嫌な音が聞こえたのと、ほぼ同時に体が落下していく感覚に襲われる
「きゃあぁっ!?」
「シアっ!?」
間一髪の所でユーリが手を掴んでくれたおかげで落下はしなかった
「あっぶねぇ……ちょっと待ってろよ?今ひきあ……うおっ!?」
バギッ!!!
ユーリが私を引き上げようと腕に力を込めた途端、床が抜けてユーリ諸共落下してしまった
「きゃあっ!!」
落下する感覚に思わず目をぎゅっと瞑る
ドサッ!!!!
鈍い音と共に浮遊感は消えたが、来るはずの衝撃は来なかった
恐る恐る目を開けると、ユーリの胸が目に入った
どうやらユーリが下になってくれていたらしい
「わわっ!?ご、ごめんねっ!!」
慌ててユーリの上から退くと、ゆっくりと起き上がりながら頭を摩っている
「いっつぅ……オレは大丈夫だよ。それよか、シアは怪我してねぇか?」
「う、うん、ユーリのおかげでなんともないよ」
「そっか、それならよかった」
優しく微笑みながら頬を撫でてくる
本当は痛いだろうに…
確かに昔からユーリは頑丈だったけど、かなりの高さがあった上に、私を守るようにして落ちたのだ
絶対痛いはずだ
それでも平気だと言って笑ってくる彼に胸が痛む
……こうゆう時、アリオトさえいてくれれば……
「にしても、そっちに戻れそうにねぇな」
私達が落ちた穴を見上げながらユーリはジュディスに話しかけている
「そうね、そっちに降りようにも、また床が抜けてしまいそうね」
「ならこのまま二手に別れて進もう。どっかで落ち合えるだろ?」
「ええ、それがいいわね。それじゃ気を付けて」
そう言うとラピードと一緒にジュディスは進み出した
「さてと…オレらも進むとしますかね」
ゆっくりと立ち上がって、服についた埃を軽く払うと、当たり前のように右手を差し出してくる
「ん、そうしよっか」
ニコッと笑ってその手を取って、肩を並べて進み出す
ダングレストで沢山手を汚したことを伝えた時には、もうニ度とこうやって肩を並べることはないって思ってた
隣にはもう居られないって思ってた
それでも、ユーリはこうして隣に居てくれる
それだけで、私は嬉しい
……今の状況でこんな事言ったら、笑われそうだけど……
もう少し…こうやってニ人きりで居たい…
…なんて、ちょっとわがままかな…?
何部屋か進んで行くと、ようやくジュディスとラピードと合流出来たのだが…
「おいおい……なーんでエステル達までいんだよ?」
ユーリは大きくため息をつきながら、目の前を見据える
そこにはジュディスとラピード以外に、エステルにリタにカロル、レイヴン…更にパティまで居た
「船の護衛はして無くていいの?」
呆れ気味に聞くと、レイヴンがヘラヘラ笑いながら大丈夫だと言う
…この人の言うことは何も信用出来ないのはきっと私だけじゃない気がする…
「と、とにかくっ!さっさとこんなとこ出るわよっ!!」
リタがそう言うと、ギィっと音を立てて入って来た扉が閉まった
「え!?な、なんで!?!!」
ガチャガチャッと扉のノブを回しながらカロルは悲痛な声をあげる
「……この部屋を見てからにしろってことかな…?」
クイッと背後にある少し大きめの扉を指さす
他の部屋とは違って装飾が多少豪華なものになってる
「アリシアっ!?あんたなんてこと言うのよっ!?」
顔を真っ青にしたリタがものすごい勢いで私の元に吹っ飛んで来て、二の腕を思い切り掴まれる
「痛っ!?リタっ!痛いからっ!!」
リタ力入りすぎ…っ!!爪くい込んでるっ!!
あまりの痛さに思わず涙目になる
いや、流石にこれは痛すぎだから…!!
「リ、リタ!離してあげてください!」
見兼ねたエステルがリタを半分無理矢理引き剥がしてくれた
「いったぁ…ありがとう…エステル…」
リタに掴まれていた箇所を擦りながらエステルにお礼を言う
「アリシア…大丈夫?」
「あはは…大丈夫大丈夫~…これでも慣れてる方だからさ」
心配そうに見詰めてくるカロルの方を向いて、軽く肩を竦める
幼い頃にも何度かあったから、慣れてると言えば慣れてる
…ただ、昔よりもかなり力が強くなっているが…
「ほら、早く入るなら入ろ入ろ!」
「同感だな、ここで立ち止まってても何も始まんねぇしな」
「じゃ、開けるわね」
ギイィィッと、大きな音を立てて扉が開くと、今まで見てきた部屋よりも明らかに広い部屋だった
中央には机と……
「がっ…ガイコツ…っ!?」
予想外のものが見えて、思わずユーリに飛びつく
「見た感じこの船の船長さんって感じの服ねぇ」
「あら、これは日記かしら?」
驚きもせずにレイヴンとジュディスは机に近づく
…なんで近寄れるのさ…
私には無理だよ……
「おーいシア、大丈夫か?」
ユーリはポンポンッと頭を撫でてくるが、今の私に答えてる余裕はない
恐らくリタよりも怖がりだと自分でも思う
ブンブンッと首を横に振る
冗談抜きでこれ以上は無理だ
…なんで入る前、ちょっと楽しそうだなんて思ったんだよ私…!
全っ然、楽しくないっ!
私が怯えている間に、ジュディスが日記読んだりとか、ガイコツが抱えてた箱を腕ごと取ったりとかしてるみたいなんだけど…
度胸があるというか…無鉄砲って言うか……
そんなことを考えているとまたしてもエステルが突拍子もないことを言い出した
箱の中身を届けたい、と…
その箱の中身は、魔物を退ける力があるらしい
だが、その日記は千年以上前の話だ
流石に無理があると思うんだけど…
「僕達みたいなちっちゃいギルドは、基本的に一つしか仕事を受けちゃいけないんだ」
「一つ一つ確実に仕事をこなす事が、ギルドの信用に繋がるからねぇ」
ギルドの規則についてカロルとレイヴンが話す
確かに、一度に何個も仕事を受けるのはどうかと思う
「あら、またその子の意見でギルドの意向が右往左往するの?」
少しきつい口調でジュディスが苦言を放つと、リタがそれに対して怒鳴り声をあげる
言い方に少し問題はあるが、ジュディスが言いたい事はわかる
「待ってリタ…ジュディス、ごめんなさい……でも、この人の思いを待ってる人に届けてあげたい…」
しゅんとしてエステルは言うが、千年も昔の話だ
「うーむ、流石に千年は待ちくたびれるのじゃ」
「あ、あ、あ、あれっ!」
急にカロルが大声を出して、私の背後にある鏡を指さした
「ん?…うぉっ!?」
「え…?……きゃあぁっ!?」
鏡を見て驚いたレイヴンにならうように振り向くと……
そこには骸骨の騎士がこちらをじっと見つめてきていた
思わず飛び退いて、ユーリの背に逃げるように隠れた
それとほぼ同時に、ゆっくりと鏡の中から出てくると剣を構えた
「どうやら逆のようね」
すっと槍を構えながらジュディスはため息をつく
「何がよっ!?」
慌てて身構えながらリタは帯を構える
「魔物を引き寄せてるってこと」
「来るぞっ!」
シュッと鞘を後ろに飛ばしたユーリから少し離れた所で私も剣を抜いた
………近づく気はさらさらないんだけどね……
ユーリとラピード、ジュディスを筆頭に攻撃を与えていくが、一向に倒れる気配がない
倒れることは愚か、膝をつくことさえない
「参ったわねぇ…」
風を纏わせた矢を正確に当てながら、私の隣に居るレイヴンは苦笑いする
「アリシアっ!あんたの術でなんとかしなさいよっ!」
ファイヤーボールを当てながらリタは言うが、ここでは火なんてすぐに燃え移りそうだからやめて欲しい…
「無理無理無理っ!!ここで術なんて使ったら最悪船ごと吹っ飛ぶって!」
蒼破刃と魔神剣を交互に飛ばしながらリタに告げる
私の魔術はただでさえ威力が強い上に、星達が見えるときじゃ無ければ全くと言っていいほどコントロールが効かない
だから、大技を使う場合はなるべく広い場所じゃないと仲間は愚か、自分の身まで危ない
この狭い空間では使えないし、そもそも大技使ったところで倒れるかだってわからない
「おいっシアっ!話してる余裕あんなら前来いって!!」
「私達だけじゃ食い止めるの少しキツイものね…」
怒鳴り声をあげながらも、ラピードと息ぴったりに攻撃を当てていくユーリ
それに続くようにジュディスも攻撃していく
「近寄れてたらとっくに前出てるよ…」
実体があるとはいえ、本来動くはずのないものが動いているのだ
リタはもう慣れてきているようだが、私にはどうにも受け入れられそうにない
「ぼ…僕だっ……うわっ!?」
「あっ!カロルっ!?」
武器を構えて骸骨の騎士に突っ込んで行こうとしたカロルだが、床に空いている穴に足が引っかかってしまったらしく、派手に転んでしまった
転んだと同時に手に持っていた武器がすっ飛んで、騎士の足にクリーンヒットすると、僅かに騎士の体制が崩れた
「たまにはやるじゃない!ガキンチョ!よけられないわよ!デモンズランス!!」
「煌めいて、魂瑶の力…フォトンっ!」
好機と見てすかさずリタとエステルが畳み掛けるように術を放つ
「ポン・チー・カン・ローン、ツモ!!ジャンパイ!!」
後に続くようにパティが術を食らわせると、胸元が一瞬赤く光った
強力な攻撃がくるのかと身構えたが、骸骨の騎士はゆっくりと鏡の中へと戻って行った
「逃げるのじゃ!」
パティがその後を追いかけようとするが、それをユーリが静止した
「待て、パティ。白黒付けなきゃいけない相手でもないだろ?ほっとこうぜ」
そう言って剣を鞘に戻す
それに倣って、他のメンバーも武器を収めた
「勘弁してよ、もう…」
大きくため息をついてレイヴンは項垂れる
「なら返してあげる?あの人に」
ジュディスがそう言いながら骸骨になった船長を指さす
「「そ、そうしよ!!/そうしようよ!!」」
カロルとほぼ同時に力強く頷いた
またこんなことが起きたりなんてしたらたまったものじゃない
「でも……」
エステルは不満気に箱と船長を交互に見る
すると、リタが諦めたように鼻を鳴らして腕を組んだ
「あたしが届ける」
「リタ……!」
キッパリと言い切ったリタを驚いて見つめると、その隣に居たエステルは嬉しそうに頬を緩ませていた
そして、あたしが勝手にやるから、あんた達は自分達の仕事をすればいいと言う
呆気にとられていると、カロルとユーリが手伝うと名乗りをあげる
「どうせオレらについてくんだろ。仕事外で手伝う分には、問題ねぇよ」
ひらりと手をあげてユーリがそう言うと、エステルはありがとうございますと嬉しそうに言う
「若人達は元気ねぇ……ん?」
茶化すようにレイヴンは言ったが、怪訝そうに窓の外を見つめて黙ってしまう
何事かと窓の方を向けば、煙が尾を引いて上がっている
どうやら駆動魔導器が動き出したようだ
それと同時にギィっと扉が開いた
「おや、呪いが解けたかな?」
うひひっと笑うレイヴンの足を思いっきり踏みつける
「馬鹿言ってなくていいから、行くよっ!」
そう言って扉に向かって歩き出す
正直、これ以上ここに居たくない
もう幽霊とかいらないから…
「アリシア、あなたはリタの手伝いしなくていいのかしら?」
先頭を歩いていると、クスクス笑いながらジュディスが聞いてきた
「名乗りあげなくても私が手伝うこと、リタは知ってるから大丈夫だよ」
「ふふ、あなたもお人好しね」
「まぁ…これでも親友だからね、手伝うのが普通でしょ?」
ジュディスのお友達と同じで、と小声で付け足すと、クスッと肩を竦ませた
フェルティア号に戻ると、案の定カウフマンさんにどやされてしまったが、私達が居ない間に特に魔物に襲われることもなかったらしい
結局魔導器の止まった理由はわからなかったが、パティの目利きでノードポリカについたら駆動魔導器を新しいものに変えてもらえることになった
……それ以前に、この船貰えることになってたの知らなかったんだけど……