第1部〜水道魔導器魔核奪還編〜
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エフミドの丘
ルブラン達を撒いてハルルを後にし、エフミドの丘へ向かっている途中、私とリタがハルルの樹に先に行っている間に、ハルルの長からユーリが指名手配されたことや、フレンから早く追いついてこいと手紙があったことを聞いた
ユーリの指名手配の内容がエステルと私の誘拐だとなっていることが納得いかない
「にしてもアリシア、本当に元貴族なの?あの感じだと今も貴族って感じだったけど」
カロルは首を傾げながら私を見つめる
「そうね。あの騎士達、あんたのことアリシア殿とか言ってたしこいつの指名手配書見ても、誘拐されたってことになってるし」
リタもそれに賛同するように私を見つめてくる
「いやぁ…親の葬儀の時に評議会の人に言ったんだけどなぁ……」
苦笑いしながらそう答える
実際、それ以来貴族の集まりだって出てないし、そもそも家にも帰っていないんだから
「多分まだ審議中なんだと思います。ラグナロク家は古くから王家に仕えている一族ですし、簡単にその座から降ろせないんでは…」
少し遠慮がちにエステルが言う
まぁ、大方エステルの言った通りなんだろう
確かに無駄に長い歴史を持っているし、帝国が出来た時から仕えているみたいだし…
仕えてるって言っても、『形だけ』らしいけど……
「でも私的にはもう様付けは勘弁して欲しいよ…元々両親だって貴族嫌ってたんだし、貴族街とか居るだけで息つまりそうだし」
「つべこべ言ったって仕方ねーだろ?お前がもう貴族じゃねーって言ってんだからそれでいいだろ?」
顔を顰めていると、ユーリがそう言ってきた
「まぁ、そうだけどね~…あっ!ようやく着いたよ!エフミドの丘」
話しながら歩いていると、ようやく目的のエフミドの丘へとついた
だが、一つこの前来た時と少し様子が違った
カロルもあれ?と首を傾げている
ギルドに所属している彼は恐らくトルビキア大陸出身だろうし、ハルルの街へ行くのならここを通っているはずだから彼も知っているのだろう
「どうしたんだよ、二人して首傾げて」
「あ、いや…つい五日前にここに来た時には結界があったんだけどそれが無くなってるから…」
「こんな人も住んでない所に結界?随分と贅沢なもんだな」
ユーリは呆れたように言う
まぁ確かに贅沢だとは思う
ここじゃなくて、デイドン砦に置いた方が絶対いいと思う
「あんたらの見間違えじゃない?結界魔導器の設置位置はあたしも全部把握してるけど、こんなところに設置されてないわよ」
リタが少々攻撃的にそう言うが、カロルがそれに反論する
「リタが知らないだけでしょ。ここ最近設置されたってナンが言ってたし」
「ナンって誰です?」
「え…えっと……ギルドの仲間だよ!ぼ、僕、ちょっと情報集めてくる!」
「あたしもちょっと行ってくる」
そう言うとカロルとリタは先に行ってしまった
自分勝手なんだから…と呟き、ため息をついた
「私達も行こう?」
ユーリとエステルに声をかけてラピードと共に先に行ってしまった二人を追いかける
すると結界魔導器と思われる物が道の真ん中に倒れていた
その魔導器にリタはまっすぐ向かっていくが、調査員と思わしき人に静止される
だが、アスピオの魔導師だから通してもらう、と強引に魔導器の傍まで行ってしまった
「相変わらず強引なんだから…」
リタの強引さに思わずため息が出てしまう
「あの強引さ、オレにもわけて欲しわ」
「ユーリには必要なしっ!充分強引だよ」
いつの間にか後ろにいたユーリが、羨ましそうに言うので、呆れて言い返す
「ねぇねぇ!みんな!聞いてよ!」
後ろから、カロルが興奮した様子で走ってきた
どうやら何かすごいことがあったようなのだが、効果音ばかりで状況がのみこめない
「……誰が何したって?」
「竜使いが!槍で魔導器壊して!そのまま飛んで行ったんだって!」
興奮気味にカロルは言った
「竜使い?そんなのもいんだな」
ユーリは関心したように呟く
そんな話をしていると、リタが騎士と揉めている声が聞こえてきた
「離しなさいよっ!この魔導器はおかしいわ!」
「おかしくなんてありませんよ!あなたの知らない術式のひとつくらいあります!」
「こんな変な使い方して、魔導器が可哀想でしょ!」
騎士に両腕を抑えられながらも暴れて抵抗している
するとカロルが「火事だぁ!」と、叫んだが何処にも煙が出ていない為、すぐ嘘だとバレてしまい騎士に追いかけられてしまった
「ん…?お前、確か手配書の」
そして、最悪なことに、カロルを追いかけていた騎士の一人がユーリに気づいてしまった
そんな騎士には目もくれず、ユーリはリタを抑えている騎士を倒してしまう
はぁ…とため息をついて、ユーリを追いかけようとした騎士を倒す
「ごめんね」
思い切り殴ってしまった騎士を見つめて、若干申し訳なくなる
が、今捕まるのは非常に不味い
「よし、今のうちに逃げぞ」
ユーリの合図でそばにあった獣道に逃げ込んだ
獣道を少し進んだところでみんな足を止めた
振り返っても、騎士が追いかけてきている様子はない
「ふー…振り切ったな」
若干額に滲んだ汗を拭いながらユーリは息を吐く
「はぁ……まったくもう…リタは魔導器のことになると後先考えずに行動する癖、いい加減直しなよ…」
呆れ気味にリタを見つめながら私はそう言う
「すぐ実力行使するあんたに言われたくないわよ…それに、あの魔導器絶対おかしかったわ!」
リタは声を荒らげて反論してくる
「おかしいって、また厄介事か?オレの両手はいっぱいだからその厄介事はよそにやってくれ」
手をひらひらさせながらユーリは勘弁してくれ、と顔を歪める
「厄介事なんて可愛い言葉ですめばいいけど……どの道、あんた達には関係ないわよ」
ユーリ達に背を向けてリタは言う
人付き合いが悪いのも昔とあまり変わらない…いや、むしろ悪化している気がする
軽くため息をついて、獣道を進んで行こうとした時、後ろからユーリを呼ぶ声が聞こえた
「ユーリ・ローウェルー!どこへ逃げよったあ!」
茂みの間からルブランがやってきたのが見えた
リタは、呼ばれてるわよ?有名人、とユーリを見る
本人は呆れ気味に、またかよ…と俯いた
「エステルリーゼ様~出てきてくださいであ~る」
続いてアデコールがエステルの名を呼びながら探しに来た
「あんたら問題が多いわね。一体何者よ?」
二人の方を向いてリタが聞くが、エステルは言いよどんでしまう
「アリシア殿~!出てくるのだっ!」
「うっわぁ……私もなのね……そんな話後にしよっ!さっさと逃げるよ!」
ボッコスが私を探している声が聞こえ慌てて獣道を進もうとラピードと先頭を行くが、突然茂みに向かって威嚇し始めた
魔物かと思って剣に手をかけるが、茂みから出てきたのはカロルだった
「カロル…びっくりさせないでください…」
「あ、ご、ごめん…」
「さっさとノール港に行くぞ、捕まんのはごめんだからな」
嫌そうな顔でユーリは私とカロルを見る
「じゃあこのまま獣道通って行っちゃお?方角的にもこっちだし」
進もうとしていた方向を指差しながら私はそう提案する
「んじゃ、行くとしますかね」
コクリと頷いたユーリを先頭に、私達は獣道を歩き始めた
獣道をずっと進んでいくと、開けた場所に出た
「うわぁ!海だっ!」
目の前にはとても広い海が見えた
「風が気持ちいいな」
「本で読んだことはありますけど、本物を見るのは初めてです!」
「普通、結界をこえて旅するなんてないもんね。旅が続けばもっと面白いものがみられるよ!ジャングルとか滝の街とかね」
「旅が続けば、もっといろんなことを知ることが出来る…」
「そうだな、オレの世界も狭かったんだな」
「ありゃ珍しい、ユーリが素直な感想言うなんて」
普段、素直になることがあまりないから少し驚いた
ユーリはうるせえよと言いたげな目で見てきたがすぐ、海の方へ目線を戻した
後ろではリタとカロルが何やら言い合いをしているようだ
「この水は世界の海を回ってすべてをみてきているんですね。この海を通じて、世界が繋がっている…」
大袈裟だなぁと思いつつ、当たりを見回すとこれから向かう道の方に人影が見えた気がした
みんなは海に見とれていて気づいていないようだから、そっと静かに離れて人影が見えた方へ行く
崖から少し離れた場所に以前、デイドン砦で会った男が立っていた
「…こんなところで何してる?」
不愉快そうに彼は顔を歪める
「何って…あなたには関係ないことでしょ?それよりも、この前の質問に答えて」
私がそう言うと、彼は私から少し顔を逸らす
「……デュークだ」
そして、低い声でそう答える
「デュー……ク……!?それってお父様がよく話していた…!?じゃああなたも騎士なの…?」
驚いた
昔、お父様が帰ってくるとよく話に出てきていた名前だった
その人物が今、目の前にいるのだから
「いや…私は騎士ではない。人の世に興味などない」
『人の世に興味などない』…その言葉が、やけに突っかかった
「……?それってどうゆう意味?」
首を傾げて問いかける
「…お前には関係ないことだ」
たった一言そう返されてしまうと聞きようがない
「おーいっ!シアっ!どこ行ったっ!?」
もう少し質問しようとした時、遠くからユーリが探している声が聞こえた
まだ彼に聞きたいことはたくさんあるのだが…
「…今は仲間の元へ戻れ。また何処かで会うだろう…聞きたいことがあるなら、その時にだ」
先ほどよりも少し優しい声でデュークさんはそう私に言った
「……わかった。約束だから、ね?」
一拍間を置いてから渋々頷く
「あぁ…」
短く答えるとデュークさんは茂みの中へと姿を消してしまった
彼が去っていった方を見つめていると、ユーリ達がやって来た
「シアっ!?お前っ!一人で勝手に動くなよっ!」
「え?あぁ、ごめんごめん、人影が見えた気がしたから…気のせいだったけどさ」
「ったく……マジで焦ったぜ…」
本気で慌てている様子のユーリを見て苦笑する
「アリシアも見つかったし、このままノール港へ進もう!このまま街道を道なりに進めばもう目の前だよ!」
ルブラン達を撒いてハルルを後にし、エフミドの丘へ向かっている途中、私とリタがハルルの樹に先に行っている間に、ハルルの長からユーリが指名手配されたことや、フレンから早く追いついてこいと手紙があったことを聞いた
ユーリの指名手配の内容がエステルと私の誘拐だとなっていることが納得いかない
「にしてもアリシア、本当に元貴族なの?あの感じだと今も貴族って感じだったけど」
カロルは首を傾げながら私を見つめる
「そうね。あの騎士達、あんたのことアリシア殿とか言ってたしこいつの指名手配書見ても、誘拐されたってことになってるし」
リタもそれに賛同するように私を見つめてくる
「いやぁ…親の葬儀の時に評議会の人に言ったんだけどなぁ……」
苦笑いしながらそう答える
実際、それ以来貴族の集まりだって出てないし、そもそも家にも帰っていないんだから
「多分まだ審議中なんだと思います。ラグナロク家は古くから王家に仕えている一族ですし、簡単にその座から降ろせないんでは…」
少し遠慮がちにエステルが言う
まぁ、大方エステルの言った通りなんだろう
確かに無駄に長い歴史を持っているし、帝国が出来た時から仕えているみたいだし…
仕えてるって言っても、『形だけ』らしいけど……
「でも私的にはもう様付けは勘弁して欲しいよ…元々両親だって貴族嫌ってたんだし、貴族街とか居るだけで息つまりそうだし」
「つべこべ言ったって仕方ねーだろ?お前がもう貴族じゃねーって言ってんだからそれでいいだろ?」
顔を顰めていると、ユーリがそう言ってきた
「まぁ、そうだけどね~…あっ!ようやく着いたよ!エフミドの丘」
話しながら歩いていると、ようやく目的のエフミドの丘へとついた
だが、一つこの前来た時と少し様子が違った
カロルもあれ?と首を傾げている
ギルドに所属している彼は恐らくトルビキア大陸出身だろうし、ハルルの街へ行くのならここを通っているはずだから彼も知っているのだろう
「どうしたんだよ、二人して首傾げて」
「あ、いや…つい五日前にここに来た時には結界があったんだけどそれが無くなってるから…」
「こんな人も住んでない所に結界?随分と贅沢なもんだな」
ユーリは呆れたように言う
まぁ確かに贅沢だとは思う
ここじゃなくて、デイドン砦に置いた方が絶対いいと思う
「あんたらの見間違えじゃない?結界魔導器の設置位置はあたしも全部把握してるけど、こんなところに設置されてないわよ」
リタが少々攻撃的にそう言うが、カロルがそれに反論する
「リタが知らないだけでしょ。ここ最近設置されたってナンが言ってたし」
「ナンって誰です?」
「え…えっと……ギルドの仲間だよ!ぼ、僕、ちょっと情報集めてくる!」
「あたしもちょっと行ってくる」
そう言うとカロルとリタは先に行ってしまった
自分勝手なんだから…と呟き、ため息をついた
「私達も行こう?」
ユーリとエステルに声をかけてラピードと共に先に行ってしまった二人を追いかける
すると結界魔導器と思われる物が道の真ん中に倒れていた
その魔導器にリタはまっすぐ向かっていくが、調査員と思わしき人に静止される
だが、アスピオの魔導師だから通してもらう、と強引に魔導器の傍まで行ってしまった
「相変わらず強引なんだから…」
リタの強引さに思わずため息が出てしまう
「あの強引さ、オレにもわけて欲しわ」
「ユーリには必要なしっ!充分強引だよ」
いつの間にか後ろにいたユーリが、羨ましそうに言うので、呆れて言い返す
「ねぇねぇ!みんな!聞いてよ!」
後ろから、カロルが興奮した様子で走ってきた
どうやら何かすごいことがあったようなのだが、効果音ばかりで状況がのみこめない
「……誰が何したって?」
「竜使いが!槍で魔導器壊して!そのまま飛んで行ったんだって!」
興奮気味にカロルは言った
「竜使い?そんなのもいんだな」
ユーリは関心したように呟く
そんな話をしていると、リタが騎士と揉めている声が聞こえてきた
「離しなさいよっ!この魔導器はおかしいわ!」
「おかしくなんてありませんよ!あなたの知らない術式のひとつくらいあります!」
「こんな変な使い方して、魔導器が可哀想でしょ!」
騎士に両腕を抑えられながらも暴れて抵抗している
するとカロルが「火事だぁ!」と、叫んだが何処にも煙が出ていない為、すぐ嘘だとバレてしまい騎士に追いかけられてしまった
「ん…?お前、確か手配書の」
そして、最悪なことに、カロルを追いかけていた騎士の一人がユーリに気づいてしまった
そんな騎士には目もくれず、ユーリはリタを抑えている騎士を倒してしまう
はぁ…とため息をついて、ユーリを追いかけようとした騎士を倒す
「ごめんね」
思い切り殴ってしまった騎士を見つめて、若干申し訳なくなる
が、今捕まるのは非常に不味い
「よし、今のうちに逃げぞ」
ユーリの合図でそばにあった獣道に逃げ込んだ
獣道を少し進んだところでみんな足を止めた
振り返っても、騎士が追いかけてきている様子はない
「ふー…振り切ったな」
若干額に滲んだ汗を拭いながらユーリは息を吐く
「はぁ……まったくもう…リタは魔導器のことになると後先考えずに行動する癖、いい加減直しなよ…」
呆れ気味にリタを見つめながら私はそう言う
「すぐ実力行使するあんたに言われたくないわよ…それに、あの魔導器絶対おかしかったわ!」
リタは声を荒らげて反論してくる
「おかしいって、また厄介事か?オレの両手はいっぱいだからその厄介事はよそにやってくれ」
手をひらひらさせながらユーリは勘弁してくれ、と顔を歪める
「厄介事なんて可愛い言葉ですめばいいけど……どの道、あんた達には関係ないわよ」
ユーリ達に背を向けてリタは言う
人付き合いが悪いのも昔とあまり変わらない…いや、むしろ悪化している気がする
軽くため息をついて、獣道を進んで行こうとした時、後ろからユーリを呼ぶ声が聞こえた
「ユーリ・ローウェルー!どこへ逃げよったあ!」
茂みの間からルブランがやってきたのが見えた
リタは、呼ばれてるわよ?有名人、とユーリを見る
本人は呆れ気味に、またかよ…と俯いた
「エステルリーゼ様~出てきてくださいであ~る」
続いてアデコールがエステルの名を呼びながら探しに来た
「あんたら問題が多いわね。一体何者よ?」
二人の方を向いてリタが聞くが、エステルは言いよどんでしまう
「アリシア殿~!出てくるのだっ!」
「うっわぁ……私もなのね……そんな話後にしよっ!さっさと逃げるよ!」
ボッコスが私を探している声が聞こえ慌てて獣道を進もうとラピードと先頭を行くが、突然茂みに向かって威嚇し始めた
魔物かと思って剣に手をかけるが、茂みから出てきたのはカロルだった
「カロル…びっくりさせないでください…」
「あ、ご、ごめん…」
「さっさとノール港に行くぞ、捕まんのはごめんだからな」
嫌そうな顔でユーリは私とカロルを見る
「じゃあこのまま獣道通って行っちゃお?方角的にもこっちだし」
進もうとしていた方向を指差しながら私はそう提案する
「んじゃ、行くとしますかね」
コクリと頷いたユーリを先頭に、私達は獣道を歩き始めた
獣道をずっと進んでいくと、開けた場所に出た
「うわぁ!海だっ!」
目の前にはとても広い海が見えた
「風が気持ちいいな」
「本で読んだことはありますけど、本物を見るのは初めてです!」
「普通、結界をこえて旅するなんてないもんね。旅が続けばもっと面白いものがみられるよ!ジャングルとか滝の街とかね」
「旅が続けば、もっといろんなことを知ることが出来る…」
「そうだな、オレの世界も狭かったんだな」
「ありゃ珍しい、ユーリが素直な感想言うなんて」
普段、素直になることがあまりないから少し驚いた
ユーリはうるせえよと言いたげな目で見てきたがすぐ、海の方へ目線を戻した
後ろではリタとカロルが何やら言い合いをしているようだ
「この水は世界の海を回ってすべてをみてきているんですね。この海を通じて、世界が繋がっている…」
大袈裟だなぁと思いつつ、当たりを見回すとこれから向かう道の方に人影が見えた気がした
みんなは海に見とれていて気づいていないようだから、そっと静かに離れて人影が見えた方へ行く
崖から少し離れた場所に以前、デイドン砦で会った男が立っていた
「…こんなところで何してる?」
不愉快そうに彼は顔を歪める
「何って…あなたには関係ないことでしょ?それよりも、この前の質問に答えて」
私がそう言うと、彼は私から少し顔を逸らす
「……デュークだ」
そして、低い声でそう答える
「デュー……ク……!?それってお父様がよく話していた…!?じゃああなたも騎士なの…?」
驚いた
昔、お父様が帰ってくるとよく話に出てきていた名前だった
その人物が今、目の前にいるのだから
「いや…私は騎士ではない。人の世に興味などない」
『人の世に興味などない』…その言葉が、やけに突っかかった
「……?それってどうゆう意味?」
首を傾げて問いかける
「…お前には関係ないことだ」
たった一言そう返されてしまうと聞きようがない
「おーいっ!シアっ!どこ行ったっ!?」
もう少し質問しようとした時、遠くからユーリが探している声が聞こえた
まだ彼に聞きたいことはたくさんあるのだが…
「…今は仲間の元へ戻れ。また何処かで会うだろう…聞きたいことがあるなら、その時にだ」
先ほどよりも少し優しい声でデュークさんはそう私に言った
「……わかった。約束だから、ね?」
一拍間を置いてから渋々頷く
「あぁ…」
短く答えるとデュークさんは茂みの中へと姿を消してしまった
彼が去っていった方を見つめていると、ユーリ達がやって来た
「シアっ!?お前っ!一人で勝手に動くなよっ!」
「え?あぁ、ごめんごめん、人影が見えた気がしたから…気のせいだったけどさ」
「ったく……マジで焦ったぜ…」
本気で慌てている様子のユーリを見て苦笑する
「アリシアも見つかったし、このままノール港へ進もう!このまま街道を道なりに進めばもう目の前だよ!」