第1部〜水道魔導器魔核奪還編〜
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再びハルルへ
「じゃあ、あたし先に戻って警備隊呼んでくるから。あ、後、あんた達私の家で待ってなさいよ。待ってなかったら酷い目にあわせるから」
私の怒りが落ち着いたところで、リタはそう言うと先に行ってしまった
リタも自由奔放だなぁと思いながら、ユーリ達の後ろをついていく
空を見上げると、先ほどまで気づかなかったが、既に暗くなり始めていて星達が話している声が微かに聞こえていた
『散々な一日でしたね』
星を見ているとペテルギウスが話しかけてきた
(本当だよ…まぁ、最近ずっとだけどね)
声には出さずに、心の中で話しかける
彼女とは昔からよくこうして話すことが多かった
『そうですね。お身体を壊さぬよう、気をつけてくださいね』
どの星達もそうだが、いつもみんな私のことを心配してくれる
(わかってるよ)
『そうそう、エフミドの丘を超えるのでしたら、途中にある魔導器にお気をつけくださいね。始祖の隷長の使いの者が壊しているものと同じものなので』
(ん、ありがとう、気をつけるよ)
「まーた星と話してんのか?」
唐突に話しかけられて前を向くと、目の前にユーリの顔が見えた
「っ!ゆ、ユーリ!」
ペテルギウスと話すのに夢中になっていて、気が付かなかった
よく見ればエステル達がいない
「あ、あれ!?エステル達は!?」
慌ててそう聞くと若干呆れたようにユーリは話し出す
「先にアスピオに行ったよ。いつまで経ってもお前が来ないから心配になってエステル達先行かせて戻ってきたんだよ」
「えっ!?嘘っ!?」
あたりを見回すと、相当話すことに集中していたようで、まだ全然進んでいなかった
「ったく、ほら行くぞ」
ユーリはさり気なく私の手をとって歩き出すが、久々に手を繋いだからか少し恥ずかしい
……いや、それよりも、だ
「…ねぇ、ユーリ?」
少し遠慮がちにユーリに話しかける
「ん?なんだ?」
若干不思議そうにユーリは私の方を向く
「えっと…さっきはごめんね…殴ったりして…エステル達がいるところで急にあんなこと言うからつい……」
素直に先ほどのことを謝る
手を出したのは完全に私が悪かったし…
「ふーん…ま、別に気にしてねーから心配すんなって。シアか手出すのは恥ずかしい時だけだもんな」
意地悪そうな笑みを浮かべながらユーリはそう答えた
バレてるなら言う必要なかったかなっと思うとまた恥ずかしくなる
こうした二人きりの時間も久々だったからか、すごくドキドキしている
「……それに、オレもお前の友達疑っちまったしな。それでチャラにしよう。……悪かったな」
私の方は向かずに、前を見てユーリは言う
…それ、気にしてたんだ
「…ふふ、謝るなら、私じゃなくてリタに謝らないと」
クスッと笑うと、わーってるよと、少し投げやり気味にユーリは言う
若干耳が赤くなってたのは、気付かないふりをしておこう
その後、しばらく無言で歩いていると目的のアスピオが見えてきた
すると、今まで無言だったユーリが不意に立ち止まって思い切り抱き寄せてきた
「っ!?/////ゆ、ユーリ…?////」
「しばらく二人きりになれそうにねーから、今のうちに充電しておこうかなっと」
「充電って……///」
「いいだろ?別に。シア不足なんだよ」
「….知ってる///私もユーリ不足だもん」
顔を上げると目の前にユーリの顔が見える
少し恥ずかしいがユーリの言う通り、しばらく二人きりにはなれそうにないから、こうしているのも悪くない
「さてと、そろそろ戻るとしますかね」
「ん、そうだね。あんまり待たせたらリタに怒られそうだしね」
ユーリの腕から離れてアスピオへ向かおうとするが、少し歩いたところでユーリがついて来ないことに気づいて振り返った
「?ユー………んっ!?」
呼ぼうとしたがそれ以上声が出なかった
振り返った瞬間、ユーリに唇を塞がれてしまっていたからだ
突然すぎる出来事に頭がついていかなかった
触れるだけのキスだけれど、随分長い間その状態から動かなかった
「ふぁっ……ゆ、ユーリぃ…いきなりは反則だって///」
「お前だってこの前いきなりしてきたろ?お返しだよ」
「もうっ!////ほら!早く戻るよ///」
そう言ってユーリの手を引いてアスピオへと早足で戻る
…きっとリタ、怒ってるだろうなぁ……
「あ、アリシア、ユーリ、お帰りなさい。何処に行ってたんです?」
「ワンッワンッ」
「もう、二人とも遅いよ!」
リタの家に入った途端、エステルとカロルから怒られてしまった
エステルは質問のような言い方だが、顔が笑っていない…相当心配させてしまったようだ…
リタがまだ帰っていないのが不幸中の幸いだ
「悪ぃ悪ぃ、ちょっと探しもんしててな。遅くなったわ」
「探し物…ですか?」
「え?あ、うん、そーなのよ。あの馬鹿追っかけてる時に大事な物落としちゃってね。探してたの」
ユーリのフォローに便乗して相槌を打つ
こうゆう時の言い訳はものすごく得意だ
「えー!だったら僕達にも言ってくれれば良かったのに!」
「悪かったよ、次からはそうするわ」
どうやら信じてくれたようで、言って欲しかったという顔をして文句を言い出した
「ごめんね、今度なんかあったらちゃんと頼るからさ、ね?」
「約束ですよ?」
「わかった、わかったよ」
そうエステルに言ってラピードの横に座ると、心配したと言うように体を寄せてきた
ごめんねと声を掛けながら背を撫でると安心したような顔をした
「ったく、オレよりも懐いてんじゃねーの?」
少し拗ねたように言いながら、ユーリは私の隣に座る
「んー、そんなことないでしょ?」
ポンポンっとラピードの背を撫でながら答える
「………ほんと、おいしいとこばっか持ってかれるな………」ボソッ
「?ユーリ、なんか言った?」
「いーや?別に?」
何故かユーリがラピードを見る目が怖い…
ラピードはラピードで、ちょっと誇らしげにユーリを見ているような気がする…
そんな会話をしていると、待っていた人物はようやく戻って来たようで
「待ってろとは言ったけど、どんだけくつろいでんのよ…」
呆れ気味に見回しながらリタはため息をついた
…まぁ、確かにくつろぎ過ぎではあるかな…
「あ、リタ!さっきの人はどうなりましたか?」
エステルがそう首を傾げる
「さぁ?あいつなら今頃、檻の中でひーひー言ってるんじゃない?」
リタはにやっと笑いながらそう言う
……リタはリタで怖いと思うんだけど……
「まぁ…確かに言ってそうだね」
苦笑いしながらリタに相槌を打つ
「それで?あたしの疑いは晴れたのかしら?」
一瞬私の方を見てから、リタは隣にいるユーリへと視線を向けた
「そーだな。お前はドロボウしてるより、研究してる方がお似合いだわ
……疑って悪かったな」
ユーリはそう言って軽くリタに頭を下げる
彼なりの謝罪のつもりなのだろう
それを見て、リタは別にいいわよとだけ言って顔を背けた
「では私達はそろそろ行きますね。フレンを追いかけないと…」
エステルはそう言いながら立ち上がる
「何?もう行くの?」
「急ぎの用事もあるしね~あのドロボウとっ捕まえないと」
そう言いながら私も立ち上がる
「また会いましょう。お礼はまた後日」
エステルはリタに歩み寄ってそう告げる
「……わかったわ」
リタの返事を聞いて、私達はその場を後にした
少し進んだところで何故かリタが追いかけてきた
「見送りならここでいいぜ?」
ユーリが冗談交じりにそう言うと、リタは首を横に振る
「違うわ、あたしも一緒に行く。あの騎士追いかけるならハルルに行くんでしょ?結果魔導器が直ったか確認しないといけないし」
別にいいでしょ?と言わんばかりにリタが言う
「え?ドロボウを追いかけるならノール港じゃない?ここから西へ真っ直ぐだよ?」
そう言いながらカロルは首を傾げるが、その問に更にユーリが首を傾げる
「ノール港?黒幕がいんのはトリム港だろ?」
…あ、そっか、ユーリは結界の外に出ないから、知らないんだった
「ノール港とトリム港は二つの大陸に跨った一つの街なんだ!だから先にノール港ってわけ!」
カロルがさらっとそう説明してくれる
流石ギルド所属なだけあって物知りだ
「まぁ、追いかけるにせよ、ハルルは通り道でしょ?それに、フレンを探してるお姫様を一人で行かせらんないじゃん」
ニコッと笑いながらそう言う
「まっ、黒幕の拠点はそこみたいだしな。寄り道しても逃げやしねーさ」
ユーリも納得したようでコクンと頷く
「あれ…でも、結界魔導器なら僕達で直したよ?」
不思議そうに首を傾げるカロルに、リタは怪訝そうに顔を顰めた
「はぁ?素人がどうやって?」
ありえないと言わんばかりに問いかけてくる
「それはね!エステ」
カロルがエステルの名前を出そうとしたので、慌てて口を塞ぐ
彼女の力をここの魔導師達が知ったら大騒ぎだろう
「ますます怪しいわね…」
ジト目でリタは私達を見つめてくる
ユーリはリタを連れて行くことにあまり乗り気ではないようで少し顔をしかめている
でもリタもリタで引く気はないようで…
最終的にユーリが折れて、勝手にしてくれと言って入口の方へ歩いって行ってしまった
「あ!ユーリ!待ってよ!」
慌ててユーリの後を追いかけて引き止める
「ん?どーしたんだよ?」
「…あれ見て」
私はエステルとリタの方を指さす
友達が出来て嬉しいと喜んでいるエステルと、友達と言われて戸惑うリタ、それを見て呆れているカロルがいた
「リタやカロルはともかく、エステルまで置いてく気なの?」
「…悪ぃ、付いてきてるもんだと思ってた」
「ったくもう…エステルー!リター!カロルー!行くよー!」
私が声を掛けると三人は慌てて追いかけて来た
ハルルに戻れば、恐らくフレンが居るはずだ
そうしたらエステルとの旅は終わりだろう
……そう考えると少し寂しいな…と一人苦笑する
「嘘…もう満開の時期なの!?」
ハルルについた途端、リタは目の前の光景に驚いていた
それもそうだろう
機能していなかった筈の結界魔導器が動いているのだから
「ちょっと見てくるわっ!」
「あ、ちょっ!リタっ!待ってよ!」
「ばっ!シアっ!お前まで勝手に行くなってっ!」
リタがハルルの樹のもとへ走って行ってしまったので、私も慌てて追いかける
ユーリの声が後ろから聞こえたがまた無視だ
樹の根本につくと、リタは唖然とした様子で樹を見上げていた
「嘘…完全に直ってる…これ、本当にエステリーゼがやったの?」
私の気配に気づいたのか、振り返ってそう聞かれた
「ありゃ、バレてたのね…」
苦笑いしながら頬を掻く
「そりゃ、カロルが口滑らせてたからね。…で?実際どーなのよ?」
「ま、気になるよな、簡単に魔導器直されちまったら魔導師がいる必要ねーもんな」
第三者の声に驚いていて振り向くと、呆れたような、でも、何処か怒ったような顔をしたユーリが追いついてきていた
「そりゃそうよ。こんなことされちゃったらあたしら魔導師は形無しよ!」
「あはは……まぁ…そうだよね…」
確かにこんなこと簡単にされたら魔導師からしたら目の敵にされそうだが、私にも出来ることだから苦笑いするしかない
「まぁ…あたしは別にアリシアのことを目の敵なんかしてないし、エステリーゼに対してもそんな態度とるつもりはないわよ」
気まづそうにしていると、リタは付け足すように私の方を向いて言った
「あ?なんだぁ?お前も知ってんのか」
少し驚いたようにユーリはリタの方を見る
「お前もってことはあんたも?…あぁ、そっか、アリシアの親に気に入られてて尚且つこの子が好きな男なら当たり前か」
一人で勝手に自己解決されてしまったんだけれど…
ってそれよりも…!
「ちょっ!//リタっ!!余計なこと言わないのっ!ほらっ!戻るよっ!!//」
まさかここでこんなこと言われると思っていなかったので顔が急に熱くなる
私は二人に背を向けて、先にエステル達のもとへと走り出す
後ろで、ユーリとリタが何か話している声が聞こえたが、今はそんなこと気にしてる余裕がないくらい恥ずかしかった
街の入口の近くまで来ると、エステルとカロルが誰かと揉めているような声が聞こえた
立ち止まって聞き耳を立てると、懐かしいが今は絶対会いたくない奴らの声が聞こえた
「ささっ!エステリーゼ様、こちらにどうぞでアール」
「ユーリがいない間に帝都にお戻りましょう!」
「奴らは我々が必ず捕まえますので、ご安心ください!」
シュヴァーン隊のルブラン、アデコール、ボッコスだ
「で、ですが!まだフレンに伝えていません!」
エステルが必死に拒否している声が聞こえるが、そんなこと聞くような奴らじゃないのは、私もよく知ってるわけで
「我々が伝えますから!さぁ!帰りましょう!」
案の定、無理矢理連れ帰ろうとしている
私にとっては確かに彼らに連れて帰って貰える方がいいのだが……
「いやって言ってるのに無理矢理女性を連れて行こうとするなんて、最っ低ね」
あまりにも横暴過ぎる行動に耐えきれなくなって、ユーリを待っているつもりだったが飛び出してしまった
案の定、ルブラン達は私を見るなり硬直してしまった
「なっ!アリシア・ラグナロク殿っ!?な、何故ここに!?」
「あー、その言い方やめてくれない?もう貴族って身分捨てたし」
どうやらまだ騎士団の中でも私は貴族という扱いらしく、エステルに話す口調で話しかけてきた
それに対して手をひらひらさせて拒絶する
「し、しかし……」
「おいおい…こんなとこまで追っかけて来たのかよ…暇人だな」
ルブランが言葉に詰まっていると、ユーリとリタが戻ってきた
ユーリを見るなりルブランの顔色が変わった
「ユーリ・ローウェルっ!!ようやく追いついたであーるっ!」
「今日こそはとっつかまえてやるっ!」
そう言ってアデコールとボッコスは剣を抜いた
「ったく、面倒な奴らだわ」
ユーリも剣を抜いて応戦しようとする
それをエステルは慌てて止めようとルブラン達に、自分から行きたいとユーリ頼んだと説明したが、何故かユーリがエステルを脅していると誤解されてしまった
これでは説得など無理だろう
「あー、もうっ!頭悪いんだからっ!」
「アリシア殿…!?なっ、何をっ!?」
「エステルは自分でフレンに伝えるって言ってんのっ!邪魔するんだったら…吹っ飛べっ!!」
「「「うぎゃぁぁぁあ!?」」」
ルブラン達目掛けてファイヤーボールを放つ
ドジな三人には見事命中し、後ろへと吹っ飛ぶ
「さ、さっさと行こ行こ」
唖然とするエステルに声をかけて街の入口へと向かう
ユーリとラピード、カロルは付いてきたがエステルはまだ迷っているようで、ルブラン達をチラチラ見ていた
すると痺れを切らしたのか、リタが少し強い口調でエステルに話しかける
「どうすんの?こいつらと帰んの?それとも一緒に行くの?」
「……今はまだ帰れません。一緒に行きます」
少し間を置いてエステルはハルルの街の入り口の方をしっかりと向く
「懸命な判断だわ。こうゆうやつらには行動で示さないとわからないわよ」
付いてくることを決めたようで、エステルとリタも追いかけてきた
「ノール港に行くならとりあえずエフミドの丘まで行こう!」
「りょーかい、んじゃさっさっと行きますかね」
フレンを追いかける為、私達はエフミドの丘へと向かった
「じゃあ、あたし先に戻って警備隊呼んでくるから。あ、後、あんた達私の家で待ってなさいよ。待ってなかったら酷い目にあわせるから」
私の怒りが落ち着いたところで、リタはそう言うと先に行ってしまった
リタも自由奔放だなぁと思いながら、ユーリ達の後ろをついていく
空を見上げると、先ほどまで気づかなかったが、既に暗くなり始めていて星達が話している声が微かに聞こえていた
『散々な一日でしたね』
星を見ているとペテルギウスが話しかけてきた
(本当だよ…まぁ、最近ずっとだけどね)
声には出さずに、心の中で話しかける
彼女とは昔からよくこうして話すことが多かった
『そうですね。お身体を壊さぬよう、気をつけてくださいね』
どの星達もそうだが、いつもみんな私のことを心配してくれる
(わかってるよ)
『そうそう、エフミドの丘を超えるのでしたら、途中にある魔導器にお気をつけくださいね。始祖の隷長の使いの者が壊しているものと同じものなので』
(ん、ありがとう、気をつけるよ)
「まーた星と話してんのか?」
唐突に話しかけられて前を向くと、目の前にユーリの顔が見えた
「っ!ゆ、ユーリ!」
ペテルギウスと話すのに夢中になっていて、気が付かなかった
よく見ればエステル達がいない
「あ、あれ!?エステル達は!?」
慌ててそう聞くと若干呆れたようにユーリは話し出す
「先にアスピオに行ったよ。いつまで経ってもお前が来ないから心配になってエステル達先行かせて戻ってきたんだよ」
「えっ!?嘘っ!?」
あたりを見回すと、相当話すことに集中していたようで、まだ全然進んでいなかった
「ったく、ほら行くぞ」
ユーリはさり気なく私の手をとって歩き出すが、久々に手を繋いだからか少し恥ずかしい
……いや、それよりも、だ
「…ねぇ、ユーリ?」
少し遠慮がちにユーリに話しかける
「ん?なんだ?」
若干不思議そうにユーリは私の方を向く
「えっと…さっきはごめんね…殴ったりして…エステル達がいるところで急にあんなこと言うからつい……」
素直に先ほどのことを謝る
手を出したのは完全に私が悪かったし…
「ふーん…ま、別に気にしてねーから心配すんなって。シアか手出すのは恥ずかしい時だけだもんな」
意地悪そうな笑みを浮かべながらユーリはそう答えた
バレてるなら言う必要なかったかなっと思うとまた恥ずかしくなる
こうした二人きりの時間も久々だったからか、すごくドキドキしている
「……それに、オレもお前の友達疑っちまったしな。それでチャラにしよう。……悪かったな」
私の方は向かずに、前を見てユーリは言う
…それ、気にしてたんだ
「…ふふ、謝るなら、私じゃなくてリタに謝らないと」
クスッと笑うと、わーってるよと、少し投げやり気味にユーリは言う
若干耳が赤くなってたのは、気付かないふりをしておこう
その後、しばらく無言で歩いていると目的のアスピオが見えてきた
すると、今まで無言だったユーリが不意に立ち止まって思い切り抱き寄せてきた
「っ!?/////ゆ、ユーリ…?////」
「しばらく二人きりになれそうにねーから、今のうちに充電しておこうかなっと」
「充電って……///」
「いいだろ?別に。シア不足なんだよ」
「….知ってる///私もユーリ不足だもん」
顔を上げると目の前にユーリの顔が見える
少し恥ずかしいがユーリの言う通り、しばらく二人きりにはなれそうにないから、こうしているのも悪くない
「さてと、そろそろ戻るとしますかね」
「ん、そうだね。あんまり待たせたらリタに怒られそうだしね」
ユーリの腕から離れてアスピオへ向かおうとするが、少し歩いたところでユーリがついて来ないことに気づいて振り返った
「?ユー………んっ!?」
呼ぼうとしたがそれ以上声が出なかった
振り返った瞬間、ユーリに唇を塞がれてしまっていたからだ
突然すぎる出来事に頭がついていかなかった
触れるだけのキスだけれど、随分長い間その状態から動かなかった
「ふぁっ……ゆ、ユーリぃ…いきなりは反則だって///」
「お前だってこの前いきなりしてきたろ?お返しだよ」
「もうっ!////ほら!早く戻るよ///」
そう言ってユーリの手を引いてアスピオへと早足で戻る
…きっとリタ、怒ってるだろうなぁ……
「あ、アリシア、ユーリ、お帰りなさい。何処に行ってたんです?」
「ワンッワンッ」
「もう、二人とも遅いよ!」
リタの家に入った途端、エステルとカロルから怒られてしまった
エステルは質問のような言い方だが、顔が笑っていない…相当心配させてしまったようだ…
リタがまだ帰っていないのが不幸中の幸いだ
「悪ぃ悪ぃ、ちょっと探しもんしててな。遅くなったわ」
「探し物…ですか?」
「え?あ、うん、そーなのよ。あの馬鹿追っかけてる時に大事な物落としちゃってね。探してたの」
ユーリのフォローに便乗して相槌を打つ
こうゆう時の言い訳はものすごく得意だ
「えー!だったら僕達にも言ってくれれば良かったのに!」
「悪かったよ、次からはそうするわ」
どうやら信じてくれたようで、言って欲しかったという顔をして文句を言い出した
「ごめんね、今度なんかあったらちゃんと頼るからさ、ね?」
「約束ですよ?」
「わかった、わかったよ」
そうエステルに言ってラピードの横に座ると、心配したと言うように体を寄せてきた
ごめんねと声を掛けながら背を撫でると安心したような顔をした
「ったく、オレよりも懐いてんじゃねーの?」
少し拗ねたように言いながら、ユーリは私の隣に座る
「んー、そんなことないでしょ?」
ポンポンっとラピードの背を撫でながら答える
「………ほんと、おいしいとこばっか持ってかれるな………」ボソッ
「?ユーリ、なんか言った?」
「いーや?別に?」
何故かユーリがラピードを見る目が怖い…
ラピードはラピードで、ちょっと誇らしげにユーリを見ているような気がする…
そんな会話をしていると、待っていた人物はようやく戻って来たようで
「待ってろとは言ったけど、どんだけくつろいでんのよ…」
呆れ気味に見回しながらリタはため息をついた
…まぁ、確かにくつろぎ過ぎではあるかな…
「あ、リタ!さっきの人はどうなりましたか?」
エステルがそう首を傾げる
「さぁ?あいつなら今頃、檻の中でひーひー言ってるんじゃない?」
リタはにやっと笑いながらそう言う
……リタはリタで怖いと思うんだけど……
「まぁ…確かに言ってそうだね」
苦笑いしながらリタに相槌を打つ
「それで?あたしの疑いは晴れたのかしら?」
一瞬私の方を見てから、リタは隣にいるユーリへと視線を向けた
「そーだな。お前はドロボウしてるより、研究してる方がお似合いだわ
……疑って悪かったな」
ユーリはそう言って軽くリタに頭を下げる
彼なりの謝罪のつもりなのだろう
それを見て、リタは別にいいわよとだけ言って顔を背けた
「では私達はそろそろ行きますね。フレンを追いかけないと…」
エステルはそう言いながら立ち上がる
「何?もう行くの?」
「急ぎの用事もあるしね~あのドロボウとっ捕まえないと」
そう言いながら私も立ち上がる
「また会いましょう。お礼はまた後日」
エステルはリタに歩み寄ってそう告げる
「……わかったわ」
リタの返事を聞いて、私達はその場を後にした
少し進んだところで何故かリタが追いかけてきた
「見送りならここでいいぜ?」
ユーリが冗談交じりにそう言うと、リタは首を横に振る
「違うわ、あたしも一緒に行く。あの騎士追いかけるならハルルに行くんでしょ?結果魔導器が直ったか確認しないといけないし」
別にいいでしょ?と言わんばかりにリタが言う
「え?ドロボウを追いかけるならノール港じゃない?ここから西へ真っ直ぐだよ?」
そう言いながらカロルは首を傾げるが、その問に更にユーリが首を傾げる
「ノール港?黒幕がいんのはトリム港だろ?」
…あ、そっか、ユーリは結界の外に出ないから、知らないんだった
「ノール港とトリム港は二つの大陸に跨った一つの街なんだ!だから先にノール港ってわけ!」
カロルがさらっとそう説明してくれる
流石ギルド所属なだけあって物知りだ
「まぁ、追いかけるにせよ、ハルルは通り道でしょ?それに、フレンを探してるお姫様を一人で行かせらんないじゃん」
ニコッと笑いながらそう言う
「まっ、黒幕の拠点はそこみたいだしな。寄り道しても逃げやしねーさ」
ユーリも納得したようでコクンと頷く
「あれ…でも、結界魔導器なら僕達で直したよ?」
不思議そうに首を傾げるカロルに、リタは怪訝そうに顔を顰めた
「はぁ?素人がどうやって?」
ありえないと言わんばかりに問いかけてくる
「それはね!エステ」
カロルがエステルの名前を出そうとしたので、慌てて口を塞ぐ
彼女の力をここの魔導師達が知ったら大騒ぎだろう
「ますます怪しいわね…」
ジト目でリタは私達を見つめてくる
ユーリはリタを連れて行くことにあまり乗り気ではないようで少し顔をしかめている
でもリタもリタで引く気はないようで…
最終的にユーリが折れて、勝手にしてくれと言って入口の方へ歩いって行ってしまった
「あ!ユーリ!待ってよ!」
慌ててユーリの後を追いかけて引き止める
「ん?どーしたんだよ?」
「…あれ見て」
私はエステルとリタの方を指さす
友達が出来て嬉しいと喜んでいるエステルと、友達と言われて戸惑うリタ、それを見て呆れているカロルがいた
「リタやカロルはともかく、エステルまで置いてく気なの?」
「…悪ぃ、付いてきてるもんだと思ってた」
「ったくもう…エステルー!リター!カロルー!行くよー!」
私が声を掛けると三人は慌てて追いかけて来た
ハルルに戻れば、恐らくフレンが居るはずだ
そうしたらエステルとの旅は終わりだろう
……そう考えると少し寂しいな…と一人苦笑する
「嘘…もう満開の時期なの!?」
ハルルについた途端、リタは目の前の光景に驚いていた
それもそうだろう
機能していなかった筈の結界魔導器が動いているのだから
「ちょっと見てくるわっ!」
「あ、ちょっ!リタっ!待ってよ!」
「ばっ!シアっ!お前まで勝手に行くなってっ!」
リタがハルルの樹のもとへ走って行ってしまったので、私も慌てて追いかける
ユーリの声が後ろから聞こえたがまた無視だ
樹の根本につくと、リタは唖然とした様子で樹を見上げていた
「嘘…完全に直ってる…これ、本当にエステリーゼがやったの?」
私の気配に気づいたのか、振り返ってそう聞かれた
「ありゃ、バレてたのね…」
苦笑いしながら頬を掻く
「そりゃ、カロルが口滑らせてたからね。…で?実際どーなのよ?」
「ま、気になるよな、簡単に魔導器直されちまったら魔導師がいる必要ねーもんな」
第三者の声に驚いていて振り向くと、呆れたような、でも、何処か怒ったような顔をしたユーリが追いついてきていた
「そりゃそうよ。こんなことされちゃったらあたしら魔導師は形無しよ!」
「あはは……まぁ…そうだよね…」
確かにこんなこと簡単にされたら魔導師からしたら目の敵にされそうだが、私にも出来ることだから苦笑いするしかない
「まぁ…あたしは別にアリシアのことを目の敵なんかしてないし、エステリーゼに対してもそんな態度とるつもりはないわよ」
気まづそうにしていると、リタは付け足すように私の方を向いて言った
「あ?なんだぁ?お前も知ってんのか」
少し驚いたようにユーリはリタの方を見る
「お前もってことはあんたも?…あぁ、そっか、アリシアの親に気に入られてて尚且つこの子が好きな男なら当たり前か」
一人で勝手に自己解決されてしまったんだけれど…
ってそれよりも…!
「ちょっ!//リタっ!!余計なこと言わないのっ!ほらっ!戻るよっ!!//」
まさかここでこんなこと言われると思っていなかったので顔が急に熱くなる
私は二人に背を向けて、先にエステル達のもとへと走り出す
後ろで、ユーリとリタが何か話している声が聞こえたが、今はそんなこと気にしてる余裕がないくらい恥ずかしかった
街の入口の近くまで来ると、エステルとカロルが誰かと揉めているような声が聞こえた
立ち止まって聞き耳を立てると、懐かしいが今は絶対会いたくない奴らの声が聞こえた
「ささっ!エステリーゼ様、こちらにどうぞでアール」
「ユーリがいない間に帝都にお戻りましょう!」
「奴らは我々が必ず捕まえますので、ご安心ください!」
シュヴァーン隊のルブラン、アデコール、ボッコスだ
「で、ですが!まだフレンに伝えていません!」
エステルが必死に拒否している声が聞こえるが、そんなこと聞くような奴らじゃないのは、私もよく知ってるわけで
「我々が伝えますから!さぁ!帰りましょう!」
案の定、無理矢理連れ帰ろうとしている
私にとっては確かに彼らに連れて帰って貰える方がいいのだが……
「いやって言ってるのに無理矢理女性を連れて行こうとするなんて、最っ低ね」
あまりにも横暴過ぎる行動に耐えきれなくなって、ユーリを待っているつもりだったが飛び出してしまった
案の定、ルブラン達は私を見るなり硬直してしまった
「なっ!アリシア・ラグナロク殿っ!?な、何故ここに!?」
「あー、その言い方やめてくれない?もう貴族って身分捨てたし」
どうやらまだ騎士団の中でも私は貴族という扱いらしく、エステルに話す口調で話しかけてきた
それに対して手をひらひらさせて拒絶する
「し、しかし……」
「おいおい…こんなとこまで追っかけて来たのかよ…暇人だな」
ルブランが言葉に詰まっていると、ユーリとリタが戻ってきた
ユーリを見るなりルブランの顔色が変わった
「ユーリ・ローウェルっ!!ようやく追いついたであーるっ!」
「今日こそはとっつかまえてやるっ!」
そう言ってアデコールとボッコスは剣を抜いた
「ったく、面倒な奴らだわ」
ユーリも剣を抜いて応戦しようとする
それをエステルは慌てて止めようとルブラン達に、自分から行きたいとユーリ頼んだと説明したが、何故かユーリがエステルを脅していると誤解されてしまった
これでは説得など無理だろう
「あー、もうっ!頭悪いんだからっ!」
「アリシア殿…!?なっ、何をっ!?」
「エステルは自分でフレンに伝えるって言ってんのっ!邪魔するんだったら…吹っ飛べっ!!」
「「「うぎゃぁぁぁあ!?」」」
ルブラン達目掛けてファイヤーボールを放つ
ドジな三人には見事命中し、後ろへと吹っ飛ぶ
「さ、さっさと行こ行こ」
唖然とするエステルに声をかけて街の入口へと向かう
ユーリとラピード、カロルは付いてきたがエステルはまだ迷っているようで、ルブラン達をチラチラ見ていた
すると痺れを切らしたのか、リタが少し強い口調でエステルに話しかける
「どうすんの?こいつらと帰んの?それとも一緒に行くの?」
「……今はまだ帰れません。一緒に行きます」
少し間を置いてエステルはハルルの街の入り口の方をしっかりと向く
「懸命な判断だわ。こうゆうやつらには行動で示さないとわからないわよ」
付いてくることを決めたようで、エステルとリタも追いかけてきた
「ノール港に行くならとりあえずエフミドの丘まで行こう!」
「りょーかい、んじゃさっさっと行きますかね」
フレンを追いかける為、私達はエフミドの丘へと向かった