第1部〜水道魔導器魔核奪還編〜
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プロローグ
「あー、もうっ!やっと仕事終わって帰れると思ったのに!!」
赤髪を揺らしながら、女性は恨めしそうに目の前の魔物を見据える
「こっちはさっさと…帰りたいってのにっ!!」
投げやり気味に双剣を抜くと、一体の魔物が襲いかかってくる
それを難なく交わし、魔神剣を繰り出す
そして残りの二体が動き出す前に術を当てる
「大地の怒り…ストーンブラストっ!」
ドカンっ!!
襲ってきた魔物が動かないことを確認してから、抜いていた剣を鞘に収める
はぁ……と大きなため息をつきながら、彼女は目の前に倒れている魔物の亡骸を睨みつけた
「全くもう……またユーリに遅いって怒られるじゃん」
帝都で自分の帰りを待っているであろう幼馴染の名を呟きながら、彼女は苦笑いする
時刻で言えば、まだ昼前
が、既に予定よりも帰りが遅くなってしまっている様子で、真っ直ぐと帝都の方を見据える
「…さっさと帰らなくちゃ」
そう呟いて、彼女は帝都目掛けて走り出した
その頃、帝都の下町の宿屋の一室で、窓の縁に座り、ぼーっと外を眺めている青年の姿があった
いつもの変わらない、下町の風景…
だが、突然水道魔導器 から水が噴き出した事により、いつもと同じだった風景が一瞬にして消えてしまった
近隣住民は、水を掻き出そうと水道魔導器の周りに集まっているが、彼は一人その場から動こうとはしない
彼が必死になっている他の人々を見ながらぼーっとしていると、ドタドタと外の階段を駆け上がる音が聞こえてくる
その数秒後、彼の部屋の扉が勢いよく開かれる
「ユーリ!たいへんだよ!」
息を切らせながら、男の子が部屋へと入ってくる
「でかい声だしてどうした、テッド」
何も気付いていないかのような素振りで青年、ユーリは問いかける
「あれ、ほら!水道魔導器がまた壊れちゃったんだよ!さっき修理してもらったばっかりなのに!」
窓の外を指差しながらテッドは興奮気味にそう言う
「なんだよ、厄介事なら騎士団に任せとけって。そのためにいんだから」
手をひらひらさせながら彼はそう言う
「下町の為になんて動いちゃくれないよ。騎士団なんか!いいから早くきてっ!!」
テッドは投げやりにそう言うと、ユーリの手を引こうとする
「テッド!テッドぉ!早く降りて来なさい!お前も手伝うのよ!」
が、タイミングが良いのか悪いのか、下から宿屋の女将さんの呼ぶ声が聞こえてくる
「ちょっ!待ってよぉ…もう!ユーリのバカっ!」
そう言うとテッドはまた走って部屋を出て行く
彼は彼なりに焦っていたのだろう
その後を苦笑いしながら見送って、また窓の外に目を向ける
「………こりゃ、マジで魚しか住めなくなりそうだな」
ユーリが思っていたよりも水の出る勢いが強い
このまま放っておけば、下町は水に沈んでしまうかもしれない
「…シアが帰って来た時に手伝ってなかったら怒られそうだわな…」
今ここには居ない、幼馴染の彼女の名を呟いて大きくため息をつく
そして、窓から飛び降りて外に出る
「ユーリっ!来てくれたんだっ!」
地面に降り立つと、後ろからテッドの嬉しそうな声が聞こえてくる
彼は振り返って軽く肩を竦めると、水道魔導器の方へ足を進めた
水道魔導器の周りでは近隣住民たちが、一人の老人の掛け声で必死に水を掻き出しているところだった
「ユーリめ!やっと出てきおったな!お前さんも早く手伝え!」
老人はユーリを見つけるなり呆れたように声をかける
「げっ」
「ほれ!いっち、にー、いっち………」
はぁ……とため息をつきながら、渋々ユーリも水を掻き出し始める
「ったく…じいさん、やけに張り切ってるな」
水を掻き出しながら、近くに居た友人に少し小声で声をかける
「水道魔導器を直す資金、先頭立って集めてたから、責任感じてるんだよ。じいさん、ばあさんの形見まで手放したっていうのにさ」
その友人は若干肩を竦めながらそう答える
「なるほどな」
ユーリは一言そう返して一度手を止め、水道魔導器の周りを一周する
本来であれば魔核 が光り輝いているはずの中央部に輝きがなくなっていることに気づき、その場で足を止める
少し考え込んだ後に、老人の元に近づく
「………じいさん、魔核見なかったか?水道魔導器の真ん中で光ってるやつ。」
彼がそう聞くと、老人は首を傾げる
「…さて?見てないのぅ………ないのか?」
深刻そうに声を低くして、老人はユーリに問いかけた
それに、軽く頷いて彼は答える
「……確か魔導器直しに来た貴族様って、貴族街に住んでんだよな?」
「あぁ、そうじゃよ。モルディオさんじゃ」
「………悪ぃ、急用思い出したから行くわ」
ユーリはそう言うと、市民街へと続く通路へと足を向ける
「待たんか!…まさか、モルディオさんの所へ行くんじゃあるまいな?」
彼の考えを見透かしたかのように、老人は聞く
「オレが貴族様の住むとこに?冗談、用事があっても行かねぇよ」
そう言って、彼は坂道を駆け上がって行った
「全く……また無茶せんとええが……」
老人はそう言いながら、先程と同じように水を書き出し始める
「そりゃ無理だって。ユーリのやつ、下町のことになるとすぐ無茶するから」
先程ユーリと話していた彼の友人はケラケラ笑いながら言う
「全く……アリシアが居れば、少しは大人しくなるんじゃがのう……」
老人はそう言って、大きくため息をついた
「あー…やっとついたよ…」
ぐったりしながら、アリシアは帝都の下町の入口に近づいた
あの後も幾度となく魔物に追われ、大分疲労したようだ
「……とりあえず、最初にユーリのとこ行かなきゃなぁ…」
苦笑いしながら、帝都の結界魔導器 を潜る
下町の中心部に向かって歩いていくが、普段と様子が少し違うことに彼女は気づいた
水路を流れる水の量がかなり多い
「…………まさか、ね……?」
そう呟くと、疲労困憊の体にムチを打って水道魔導器の元へと走り出す
その場所につけば、彼女の嫌な予感は的中してしまい、水道魔導器から有り得ないほどの水が流れ出て、辺り一面水浸しになっているのが目に入る
「おぉ!アリシア!帰ってきおったか!」
皆に声をかけながら作業をしていた老人が、帰って来たアリシアに気付いて声をかけてくる
「ハンクスさん!これは一体…」
「うむ、水道魔導器の修理を頼んだんじゃがな…まーた壊れてしまっての…」
落ち込んだように肩を落として、ハンクスはそう言った
言われてみれば、私が帝都を出る時も調子が悪いのか水が出たり出なかったりしてたっけ…と、アリシアは帝都から離れる前のことを思い出す
「そう……私も手伝う!」
「おぉ、すまんの…」
そう言い、彼女も水をかき出すのを手伝い始める
「本当、ユーリとは大違いだよな」
近くに居たユーリの友人はアリシアを見ながら苦笑いする
「あれ…?そういえば、ユーリは?」
彼に言われて、ユーリの姿が何処にもないことに気がつく
キョロキョロと見渡して見るが、遠くから傍観しているようでもなかった
「ユーリなら、水道魔導器直しに来た貴族様のところに向かったわい。どうも魔核が無くなってしまったようでのう」
ハンクスは呆れ気味に市民街に続く道の方を見つめながら呟く
「って、まさか一人で!?」
アリシアは驚いて水を掻き出す手を止めてハンクスの方を向くと、彼は静かに頷く
「はぁ……人には無茶するなって言う癖に……」
アリシアはそう言って、大きくため息をつきながら項垂れる
人にはダメだと言うことを、自分がやったらダメではないかと彼女は散々言っていたのだが、どうやら彼には通用しないらしい
苦笑いしながら、彼女は再び水を掻き出すのを再開した
水道魔導器の魔核が盗まれたことにより、後に大きな事件へと繋がることは、まだ誰も知らない
「あー、もうっ!やっと仕事終わって帰れると思ったのに!!」
赤髪を揺らしながら、女性は恨めしそうに目の前の魔物を見据える
「こっちはさっさと…帰りたいってのにっ!!」
投げやり気味に双剣を抜くと、一体の魔物が襲いかかってくる
それを難なく交わし、魔神剣を繰り出す
そして残りの二体が動き出す前に術を当てる
「大地の怒り…ストーンブラストっ!」
ドカンっ!!
襲ってきた魔物が動かないことを確認してから、抜いていた剣を鞘に収める
はぁ……と大きなため息をつきながら、彼女は目の前に倒れている魔物の亡骸を睨みつけた
「全くもう……またユーリに遅いって怒られるじゃん」
帝都で自分の帰りを待っているであろう幼馴染の名を呟きながら、彼女は苦笑いする
時刻で言えば、まだ昼前
が、既に予定よりも帰りが遅くなってしまっている様子で、真っ直ぐと帝都の方を見据える
「…さっさと帰らなくちゃ」
そう呟いて、彼女は帝都目掛けて走り出した
その頃、帝都の下町の宿屋の一室で、窓の縁に座り、ぼーっと外を眺めている青年の姿があった
いつもの変わらない、下町の風景…
だが、突然
近隣住民は、水を掻き出そうと水道魔導器の周りに集まっているが、彼は一人その場から動こうとはしない
彼が必死になっている他の人々を見ながらぼーっとしていると、ドタドタと外の階段を駆け上がる音が聞こえてくる
その数秒後、彼の部屋の扉が勢いよく開かれる
「ユーリ!たいへんだよ!」
息を切らせながら、男の子が部屋へと入ってくる
「でかい声だしてどうした、テッド」
何も気付いていないかのような素振りで青年、ユーリは問いかける
「あれ、ほら!水道魔導器がまた壊れちゃったんだよ!さっき修理してもらったばっかりなのに!」
窓の外を指差しながらテッドは興奮気味にそう言う
「なんだよ、厄介事なら騎士団に任せとけって。そのためにいんだから」
手をひらひらさせながら彼はそう言う
「下町の為になんて動いちゃくれないよ。騎士団なんか!いいから早くきてっ!!」
テッドは投げやりにそう言うと、ユーリの手を引こうとする
「テッド!テッドぉ!早く降りて来なさい!お前も手伝うのよ!」
が、タイミングが良いのか悪いのか、下から宿屋の女将さんの呼ぶ声が聞こえてくる
「ちょっ!待ってよぉ…もう!ユーリのバカっ!」
そう言うとテッドはまた走って部屋を出て行く
彼は彼なりに焦っていたのだろう
その後を苦笑いしながら見送って、また窓の外に目を向ける
「………こりゃ、マジで魚しか住めなくなりそうだな」
ユーリが思っていたよりも水の出る勢いが強い
このまま放っておけば、下町は水に沈んでしまうかもしれない
「…シアが帰って来た時に手伝ってなかったら怒られそうだわな…」
今ここには居ない、幼馴染の彼女の名を呟いて大きくため息をつく
そして、窓から飛び降りて外に出る
「ユーリっ!来てくれたんだっ!」
地面に降り立つと、後ろからテッドの嬉しそうな声が聞こえてくる
彼は振り返って軽く肩を竦めると、水道魔導器の方へ足を進めた
水道魔導器の周りでは近隣住民たちが、一人の老人の掛け声で必死に水を掻き出しているところだった
「ユーリめ!やっと出てきおったな!お前さんも早く手伝え!」
老人はユーリを見つけるなり呆れたように声をかける
「げっ」
「ほれ!いっち、にー、いっち………」
はぁ……とため息をつきながら、渋々ユーリも水を掻き出し始める
「ったく…じいさん、やけに張り切ってるな」
水を掻き出しながら、近くに居た友人に少し小声で声をかける
「水道魔導器を直す資金、先頭立って集めてたから、責任感じてるんだよ。じいさん、ばあさんの形見まで手放したっていうのにさ」
その友人は若干肩を竦めながらそう答える
「なるほどな」
ユーリは一言そう返して一度手を止め、水道魔導器の周りを一周する
本来であれば
少し考え込んだ後に、老人の元に近づく
「………じいさん、魔核見なかったか?水道魔導器の真ん中で光ってるやつ。」
彼がそう聞くと、老人は首を傾げる
「…さて?見てないのぅ………ないのか?」
深刻そうに声を低くして、老人はユーリに問いかけた
それに、軽く頷いて彼は答える
「……確か魔導器直しに来た貴族様って、貴族街に住んでんだよな?」
「あぁ、そうじゃよ。モルディオさんじゃ」
「………悪ぃ、急用思い出したから行くわ」
ユーリはそう言うと、市民街へと続く通路へと足を向ける
「待たんか!…まさか、モルディオさんの所へ行くんじゃあるまいな?」
彼の考えを見透かしたかのように、老人は聞く
「オレが貴族様の住むとこに?冗談、用事があっても行かねぇよ」
そう言って、彼は坂道を駆け上がって行った
「全く……また無茶せんとええが……」
老人はそう言いながら、先程と同じように水を書き出し始める
「そりゃ無理だって。ユーリのやつ、下町のことになるとすぐ無茶するから」
先程ユーリと話していた彼の友人はケラケラ笑いながら言う
「全く……アリシアが居れば、少しは大人しくなるんじゃがのう……」
老人はそう言って、大きくため息をついた
「あー…やっとついたよ…」
ぐったりしながら、アリシアは帝都の下町の入口に近づいた
あの後も幾度となく魔物に追われ、大分疲労したようだ
「……とりあえず、最初にユーリのとこ行かなきゃなぁ…」
苦笑いしながら、帝都の
下町の中心部に向かって歩いていくが、普段と様子が少し違うことに彼女は気づいた
水路を流れる水の量がかなり多い
「…………まさか、ね……?」
そう呟くと、疲労困憊の体にムチを打って水道魔導器の元へと走り出す
その場所につけば、彼女の嫌な予感は的中してしまい、水道魔導器から有り得ないほどの水が流れ出て、辺り一面水浸しになっているのが目に入る
「おぉ!アリシア!帰ってきおったか!」
皆に声をかけながら作業をしていた老人が、帰って来たアリシアに気付いて声をかけてくる
「ハンクスさん!これは一体…」
「うむ、水道魔導器の修理を頼んだんじゃがな…まーた壊れてしまっての…」
落ち込んだように肩を落として、ハンクスはそう言った
言われてみれば、私が帝都を出る時も調子が悪いのか水が出たり出なかったりしてたっけ…と、アリシアは帝都から離れる前のことを思い出す
「そう……私も手伝う!」
「おぉ、すまんの…」
そう言い、彼女も水をかき出すのを手伝い始める
「本当、ユーリとは大違いだよな」
近くに居たユーリの友人はアリシアを見ながら苦笑いする
「あれ…?そういえば、ユーリは?」
彼に言われて、ユーリの姿が何処にもないことに気がつく
キョロキョロと見渡して見るが、遠くから傍観しているようでもなかった
「ユーリなら、水道魔導器直しに来た貴族様のところに向かったわい。どうも魔核が無くなってしまったようでのう」
ハンクスは呆れ気味に市民街に続く道の方を見つめながら呟く
「って、まさか一人で!?」
アリシアは驚いて水を掻き出す手を止めてハンクスの方を向くと、彼は静かに頷く
「はぁ……人には無茶するなって言う癖に……」
アリシアはそう言って、大きくため息をつきながら項垂れる
人にはダメだと言うことを、自分がやったらダメではないかと彼女は散々言っていたのだが、どうやら彼には通用しないらしい
苦笑いしながら、彼女は再び水を掻き出すのを再開した
水道魔導器の魔核が盗まれたことにより、後に大きな事件へと繋がることは、まだ誰も知らない
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