第1章
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〜王都〜
ー次の日ー
「ワンッ!ワンッ!」
「んっ……んー……」
「ウー…ワンッ!!」
「う、うわぁぁぁ!?」
ドサッ!っと大きな音をたててベッドから転落した
「いっつぅぅぅ……リンク?」
「ワンッ!ワンッ!ワンッ!」
落ちた原因、リンクは私の横でいつまで寝ているんだ、と目で訴えてきた
「ふっ……うーんっ……もう…リンクったら…」
軽く伸びをして苦笑いしながらリンクの頭を撫でると、嬉しそうに喉を鳴らす
ドタドタッと音が聞こえてきて、ガチャッと部屋の扉がいきなり開かれる
「アリシア様…っ!どうなされましたかっ!?」
焦った様子で部屋に飛び込んで来たメイドが問いかけてくる
さっきの音を聞いて驚かせてしまったのだろう
「あ…いえ…寝ていたら急にリンクに吠えられてびっくりしてベッドから落ちてしまっただけです。心配かけてしまってすみません」
そう言って謝ると、扉の前に来ていた数人のメイドと執事は揃って安堵の息をつく
申し訳ないことをしたなと、俯いていると、メイド長が近くまでやってくる
「ご無事でなによりです。さ、お嬢様、お着替えいたしましょう?」
とニコッと笑って手を差し出してきた
優しく笑いかけてくれる彼女に、ありがとう、と声をかけその手をとり立ち上がった
時間はまだ朝早いが、彼のことだからいつ来るかなんてわかったもんじゃない
ささっと、寝巻きからドレスに着替えた
髪を解いたりしてもらっていると、窓の外からチラッと馬車が見えた気がした
まさか、とは思ったがその数秒後、お父様の慌てた声が聞こえてくる
お父様が慌てる人物なんて、ユーリ以外思いつかない
早すぎですよ……と、心の中で苦笑しつつも彼らしいなと自然と顔が緩む
そんな呑気にしているのは私くらいでメイドや執事、お母様達は揃ってあたふたとしている
「アリシアーっ!」
「はーい、今行きますよーっ!」
下から叫んでくるお父様に答えて、リンクを抱えて部屋を出る
扉を閉める前にもう一度部屋の中を見る
一人にしては少々広すぎた部屋には本やら家具やらがそのままにしてある
私がお父様に、たまに帰って来た時に自分の部屋が無かったら寂しいから、なんて我儘を言ったからだ
まぁ、お父様のことだからそんな事を言わなくても残してくれただろうが…
当分帰って来ることのない自分の部屋に、いってきますと、小さく呟いて部屋の扉を閉めた
ーーーーーーー
少し駆け足で階段を降りると、玄関前でお父様とユーリが話しているのが見えた
意気投合しているんだか、随分話が盛り上がっているようだ
だが、ユーリは私を見るなり嬉しそうな顔をし、それに気づいたお父様がスッと道をあけると走ってやって来た
なんて余計なことをするのだ、お父様…←
「アリシアっ!」
「ぅわっ!?ユ、ユーリっ!苦しいですって!」
抱き寄せられて思い切りぎゅっと抱き着かれる
流石に少し痛苦しくてケホッと咳き込むと慌てて離れてくれた
「ちょっと強すぎたか…?」
「もう…ちょっとじゃなくてかなりです…リンクだっているのに…大丈夫?」
「ク、クゥン……」
一緒に抱き着かれたリンクも苦しそうな顔をしている
少し背中を摩っていると、何かを見つけたのか私の腕から飛び出して外へ一直線に走り出す
「あっ!リンクっ!もう…何処かの誰かさんと同じで、自由奔放なんだから…」
「だーれのこと言ってんだ?」
小さく呟くと、ユーリが肩を抱き寄せて耳元で囁いてくる
少しこそばゆいが、こうして彼が傍にいるのがわかるのは嬉しい
「ユーリのことですよ?会議中でも勝手に抜け出してフラフラしているでしょう?」
クスッと笑いながらそう答える
「そーゆこと、言わねーでいいっつーの」
苦笑いしながらユーリにコツンと頭を小突かれた
「ユーリ…ゆっくりするのは後にしてくれないか?君はまだ仕事が残っているだろう?」
玄関前でフレンさんが呆れたように、だが少し強い口調でユーリに言う
ユーリは少しムッとして私の肩から手を離す
「わーったよ…アリシア行こう」
そう言うとスッと手を差し出してくる
「ん…わかりました」
なんの躊躇もなくその手を取った
「アリシア…会いに来れる時はいつでも来ていいですからね」
「はい!…お母様、お父様、いってきます」
ニッコリと笑って告げるとお父様は泣きそうになっていた
ユーリに連れられて馬車の側まで歩いて行く
馬車の前でもう一度振り返って見送る為に扉の前まで出てきていたお母様とお父様に手を振ると、限界だったらしく泣いてしまっていた
「アリシアの父親は本当に溺愛しているんだな…」
少し困ったような顔でユーリはそう言うので、私も思わず苦笑いする
「ワンッ!」
「あ、リンク!もう、勝手に乗っちゃダメでしょう」
馬車の中を見ると、リンクが既に乗っていた
リンクの隣に綺麗な青い毛並みの獣がいるのには驚いたが、2匹は仲良さそうに寄り添っている
「なんだ?ラピード、もう気に入ったのか?」
「ラピード?」
「そ、オレの相棒」
馬車に乗り込みながら聞く
なるほど、ユーリの相棒だから仲が良いのかもしれないわ
そう思って微笑みながら二匹を見る
「普段気安く尻尾降ったりなんてしねぇのにな。まったく懐かねぇし」
ラピードの背をポンポンと叩きながらユーリは言う
「君と同じで、アリシア様のご愛犬に夢中になっているんじゃないかい?」
やれやれと、後から乗り込んで来たフレンさんが言う
「それはありえそうですね」
そう言って笑っていると、真正面に座ったユーリが不服そうに顔を歪めた
「なーんか、やけにフレンと意気投合してねぇか?」
「そんなことないですよ?」
ニコニコと笑ってそう答えるが、納得いかないのかムスッとしている
「君の婚約者を僕がとるわけがないだろう?」
フレンさんは冗談言うなとユーリを見据えながら、御者さんに進むように合図を出していた
それと同時に馬車が動き出す
が、相変わらずお互いバチバチと火花を散らしている
……私のいるところで喧嘩始めないで……怖いから……
「ワフゥン…」
ほんの少し怯えていると、先ほどまでラピードと一緒にいたはずのリンクが傍にやってきた
「リンクー…ユーリとフレンさんが怖いよ……」
小声で呟いて、ぎゅっとリンクに抱きつき顔を真っ白でふわふわな毛にうずくめる
そうしていると、私が怖がっている事にようやく気づいたようで、とりあえず2人共落ち着いてくれたようでピリピリとした空気は感じられなくなった
「あ…アリシア様、もう少しで王都に付きますよ」
フレンさんの声に窓の外をチラッと見ると、綺麗な街並みが見えてきた
ここに来るのは何年ぶりだろうか
だいぶ景色が変わっていて違う街のようにも見える
「ここに来んの、久々だろ?」
「ええ。……だいぶ変わりましたね。私が覚えている景色がほとんどないですよ」
リンクの背を撫でながら外を眺める
最後に見た時とかなり変わってしまっていて、少し寂しい気もするが……それでも、あの頃よりもずっと綺麗で……それして、華やかな街並みにほんの少し胸が踊る
少しワクワクとしながら外を眺めていると、リンクが私に引っ付いているのが不満なのか、もしくはリンクが羨ましいのか……急にラピードが寄り添って来た
「珍しいな…ラピードがすぐ懐くなんて」
私に寄り添って来たラピードを見ながら、ユーリが驚いた顔をする
「え…?これ、懐いているんですか?」
……先ほど中々懐かないと言ってたのはなんだったのだろうか←
「おう、珍しいこともあるんだな」
「ふーん……そうなんですね」
そう言いながらラピードの背を撫でると少し嬉しそうにしている気がした
「……」
「ユーリ…あからさまに不機嫌にならないでくれ…ラピードにまで嫉妬しているのかい?」
無言でジッとラピードを見つめるユーリに、フレンさんが呆れたように問いかける
「ユーリ?嫉妬してるんですか?」
「…うっさい」
私が聞くとぷぃっと顔を背けてしまった
そうゆう反応が可愛いなぁと思いながらリンクを降ろす
そして、目の前に座っているユーリに飛びついた
「うぉっ!?ったく…アリシア…いきなりは駄目だって、昨日言ったばかりだろ?
それに、ここ馬車ん中だし余計危ねぇだろ」
ほんの少し不機嫌そうに、ユーリは私に言ってくる
動物にまで嫉妬してしまう彼に少し呆れもするけれど……
けど、それ以上に、それだけ愛されているのだと思うと嬉しくなる
「だって、こうでもしないと納得してくれないでしょう?私が好きなのはユーリだけですよ」
ぎゅっと抱きしめながら、ユーリを見上げてニッコリと微笑んだ
「……ったく、しょうがねぇお嬢様だな」
呆れたような声でそう言ってくるが、ユーリも嬉しそうにニコニコと微笑んでくれている
そんな私達の様子を見て、苦笑いしながらフレンさんは向かいの席へ移った
フレンさんが退くと、ユーリは飛びついた私を自分の膝の上へ座らせると腰に手を回してきた
「もーすぐ着くんだがな…いいのか?」
「何がです?私は何も気にしませんよ?」
何故そんなことを聞いてくるのかがわからず、小さく首を傾げた
「あー…いや……多分かなりの野次馬いるぜ?」
オレが堂々と出掛けたから…とユーリは小声で付け足す
「……それはちょっと……面倒ですね…」
まぁ、だからといって離れたくはないのだが…
言われてみれば、確かに先ほどから少し外が騒がしい気がする
「一応カーテンは閉めたけど……どうする?やはり門の奥までこのまま入ってもらもうか?」
「それがいいな。オレ、まだアリシアを城に住んでる奴ら以外に会わせる気ねーぞ?」
そう答えながら、ユーリは軽く抱きしめてくる力を少し強めてきた
余程野次馬に私を会わせるのは嫌らしい
まぁ……私も会いたくなんてないのだけれど……
「そう言うと思っていたよ。じゃあ、そうしてもらおう」
そう言ってフレンさんは小窓から、御者さんに小声で話しかけている
そんな様子を見ていると、リンクがピョンっと膝の上に乗ってきた
それに合わせるようにラピードもまた寄り添ってくる
「随分とまぁモテモテだな、アリシア」
ニヤニヤとしながらユーリは言ってくる
「む…モテるのは私、ユーリだけでいいのですが…それと、リンクとラピードは別ですよ?」
ムッとしてユーリの腰あたりに回していた腕を首元の方へ回し直した
「へいへい、わかってるっての」
腰に回してきている手と反対の手で、そっと頬に触れてくる
目元をなぞるように親指で優しく撫でられる
くすぐったくて肩をすくめるが、それと同時に嬉しくて微笑むと、すっとその手で顎をクイッとあげられ、唇が重なりそうになるが…
「はいはい、そこまで。もう着くから」
パンパンっと手を鳴らしてフレンさんに止められてしまう
ユーリはあからさまに不機嫌にフレンさんを睨みつける
呆れたように頭を抱えて、後でも出来るだろう…と彼は呟く
「わーったよ…」
不服そうにユーリは呟くと、チュッと頬にキスして、また後でな?と耳元で言われた
それに、ニコッと微笑み返したのと同時に、馬車が止まった
ーーーーーーーー
「うわぁ……相変わらず広い…」
久しぶりに来たお城の中は昔と変わらずとても広かった
「はっはっは、そりゃんな簡単に小さくなったりしねぇっての」
隣にいるユーリがそう笑う
確かにそれもそうだが、久しぶりに見ると驚くものだ
「さてと、んじゃ先に一応城の中案内しとかなきゃなんだが……」
そう言いながらユーリはチラッとフレンさんの方を見る
「君は執務がまだまだ残っているだろ?案内はジュディスに頼めばいい」
少し怒り気味に彼はユーリを見つめる
「ジュディス……?」
聞いた事のない名前に首を傾げると、ユーリが口を開こうとする
「私のことよ」
が、それよりも前に柱の後ろから青い髪の女性がそう言いながら出てきた
「なんだジュディ、もう居たのか」
「ええ、あなたには執務に戻って貰わないと困るもの。ここから先は、私の仕事よ」
彼女はユーリに向かって微笑みながら言うと、今度は私の方を向く
「初めまして、ジュディスよ。ユーリからあなたの護衛役を頼まれたわ。よろしくね」
ニッコリと笑いながら手を差し出してくる
「あ……アリシア・リベリット・ラグナロクです。よ、よろしくお願いします!」
そう言って、彼女の手を握った
護衛役……か……
なんとなくわかってはいたが、やっぱり私にも付けられるんだなぁ
「……んじゃぁ……ジュディ、悪ぃけど頼む」
ものすごく嫌そうな顔をしながらユーリは言う
「ええ、任せて頂戴」
そんな事気にもせずにジュディスは返事を返した
「アリシア、夕飯前には迎え行くから、それまで色々連れてってもらってこい」
ポンポンっと頭を撫でながらユーリは少し寂しそうに微笑んでくる
「はい、わかりました」
それにニコッと笑って答えた
「んじゃ、オレ行くわ。……あー、ジュディ、おっさんだけは気をつけてくれよな…?」
「ふふ、大丈夫よ、わかってるわ」
ジュディスの返事を聞くと、ユーリは半分フレンさんに引きずられるようにして、去って行った
「それじゃ、行きましょうか?」
「はい!……あ、その前に……1つ、聞いてもいいですか?」
「あら、どうしたのかしら?」
「えっと……ユーリが言ってた方はそんなに危険なのですか…?」
恐る恐るそう聞くと、彼女はクスッと笑う
「そうね、あなたにはちょっと危ない人になるかもしれないわね。けど大丈夫よ、そのための私だから」
私にとっては……って、どうゆうことでしょう…?
「さ、日が暮れてしまう前に行きましょう。ユーリと仲の良い人達も紹介したいから」
「あ…はい、わかりました!」
そう言って、少し前を歩き出したジュディスの後をついて行く
ユーリと仲の良い人……どんな人達なのだろう?
ー次の日ー
「ワンッ!ワンッ!」
「んっ……んー……」
「ウー…ワンッ!!」
「う、うわぁぁぁ!?」
ドサッ!っと大きな音をたててベッドから転落した
「いっつぅぅぅ……リンク?」
「ワンッ!ワンッ!ワンッ!」
落ちた原因、リンクは私の横でいつまで寝ているんだ、と目で訴えてきた
「ふっ……うーんっ……もう…リンクったら…」
軽く伸びをして苦笑いしながらリンクの頭を撫でると、嬉しそうに喉を鳴らす
ドタドタッと音が聞こえてきて、ガチャッと部屋の扉がいきなり開かれる
「アリシア様…っ!どうなされましたかっ!?」
焦った様子で部屋に飛び込んで来たメイドが問いかけてくる
さっきの音を聞いて驚かせてしまったのだろう
「あ…いえ…寝ていたら急にリンクに吠えられてびっくりしてベッドから落ちてしまっただけです。心配かけてしまってすみません」
そう言って謝ると、扉の前に来ていた数人のメイドと執事は揃って安堵の息をつく
申し訳ないことをしたなと、俯いていると、メイド長が近くまでやってくる
「ご無事でなによりです。さ、お嬢様、お着替えいたしましょう?」
とニコッと笑って手を差し出してきた
優しく笑いかけてくれる彼女に、ありがとう、と声をかけその手をとり立ち上がった
時間はまだ朝早いが、彼のことだからいつ来るかなんてわかったもんじゃない
ささっと、寝巻きからドレスに着替えた
髪を解いたりしてもらっていると、窓の外からチラッと馬車が見えた気がした
まさか、とは思ったがその数秒後、お父様の慌てた声が聞こえてくる
お父様が慌てる人物なんて、ユーリ以外思いつかない
早すぎですよ……と、心の中で苦笑しつつも彼らしいなと自然と顔が緩む
そんな呑気にしているのは私くらいでメイドや執事、お母様達は揃ってあたふたとしている
「アリシアーっ!」
「はーい、今行きますよーっ!」
下から叫んでくるお父様に答えて、リンクを抱えて部屋を出る
扉を閉める前にもう一度部屋の中を見る
一人にしては少々広すぎた部屋には本やら家具やらがそのままにしてある
私がお父様に、たまに帰って来た時に自分の部屋が無かったら寂しいから、なんて我儘を言ったからだ
まぁ、お父様のことだからそんな事を言わなくても残してくれただろうが…
当分帰って来ることのない自分の部屋に、いってきますと、小さく呟いて部屋の扉を閉めた
ーーーーーーー
少し駆け足で階段を降りると、玄関前でお父様とユーリが話しているのが見えた
意気投合しているんだか、随分話が盛り上がっているようだ
だが、ユーリは私を見るなり嬉しそうな顔をし、それに気づいたお父様がスッと道をあけると走ってやって来た
なんて余計なことをするのだ、お父様…←
「アリシアっ!」
「ぅわっ!?ユ、ユーリっ!苦しいですって!」
抱き寄せられて思い切りぎゅっと抱き着かれる
流石に少し痛苦しくてケホッと咳き込むと慌てて離れてくれた
「ちょっと強すぎたか…?」
「もう…ちょっとじゃなくてかなりです…リンクだっているのに…大丈夫?」
「ク、クゥン……」
一緒に抱き着かれたリンクも苦しそうな顔をしている
少し背中を摩っていると、何かを見つけたのか私の腕から飛び出して外へ一直線に走り出す
「あっ!リンクっ!もう…何処かの誰かさんと同じで、自由奔放なんだから…」
「だーれのこと言ってんだ?」
小さく呟くと、ユーリが肩を抱き寄せて耳元で囁いてくる
少しこそばゆいが、こうして彼が傍にいるのがわかるのは嬉しい
「ユーリのことですよ?会議中でも勝手に抜け出してフラフラしているでしょう?」
クスッと笑いながらそう答える
「そーゆこと、言わねーでいいっつーの」
苦笑いしながらユーリにコツンと頭を小突かれた
「ユーリ…ゆっくりするのは後にしてくれないか?君はまだ仕事が残っているだろう?」
玄関前でフレンさんが呆れたように、だが少し強い口調でユーリに言う
ユーリは少しムッとして私の肩から手を離す
「わーったよ…アリシア行こう」
そう言うとスッと手を差し出してくる
「ん…わかりました」
なんの躊躇もなくその手を取った
「アリシア…会いに来れる時はいつでも来ていいですからね」
「はい!…お母様、お父様、いってきます」
ニッコリと笑って告げるとお父様は泣きそうになっていた
ユーリに連れられて馬車の側まで歩いて行く
馬車の前でもう一度振り返って見送る為に扉の前まで出てきていたお母様とお父様に手を振ると、限界だったらしく泣いてしまっていた
「アリシアの父親は本当に溺愛しているんだな…」
少し困ったような顔でユーリはそう言うので、私も思わず苦笑いする
「ワンッ!」
「あ、リンク!もう、勝手に乗っちゃダメでしょう」
馬車の中を見ると、リンクが既に乗っていた
リンクの隣に綺麗な青い毛並みの獣がいるのには驚いたが、2匹は仲良さそうに寄り添っている
「なんだ?ラピード、もう気に入ったのか?」
「ラピード?」
「そ、オレの相棒」
馬車に乗り込みながら聞く
なるほど、ユーリの相棒だから仲が良いのかもしれないわ
そう思って微笑みながら二匹を見る
「普段気安く尻尾降ったりなんてしねぇのにな。まったく懐かねぇし」
ラピードの背をポンポンと叩きながらユーリは言う
「君と同じで、アリシア様のご愛犬に夢中になっているんじゃないかい?」
やれやれと、後から乗り込んで来たフレンさんが言う
「それはありえそうですね」
そう言って笑っていると、真正面に座ったユーリが不服そうに顔を歪めた
「なーんか、やけにフレンと意気投合してねぇか?」
「そんなことないですよ?」
ニコニコと笑ってそう答えるが、納得いかないのかムスッとしている
「君の婚約者を僕がとるわけがないだろう?」
フレンさんは冗談言うなとユーリを見据えながら、御者さんに進むように合図を出していた
それと同時に馬車が動き出す
が、相変わらずお互いバチバチと火花を散らしている
……私のいるところで喧嘩始めないで……怖いから……
「ワフゥン…」
ほんの少し怯えていると、先ほどまでラピードと一緒にいたはずのリンクが傍にやってきた
「リンクー…ユーリとフレンさんが怖いよ……」
小声で呟いて、ぎゅっとリンクに抱きつき顔を真っ白でふわふわな毛にうずくめる
そうしていると、私が怖がっている事にようやく気づいたようで、とりあえず2人共落ち着いてくれたようでピリピリとした空気は感じられなくなった
「あ…アリシア様、もう少しで王都に付きますよ」
フレンさんの声に窓の外をチラッと見ると、綺麗な街並みが見えてきた
ここに来るのは何年ぶりだろうか
だいぶ景色が変わっていて違う街のようにも見える
「ここに来んの、久々だろ?」
「ええ。……だいぶ変わりましたね。私が覚えている景色がほとんどないですよ」
リンクの背を撫でながら外を眺める
最後に見た時とかなり変わってしまっていて、少し寂しい気もするが……それでも、あの頃よりもずっと綺麗で……それして、華やかな街並みにほんの少し胸が踊る
少しワクワクとしながら外を眺めていると、リンクが私に引っ付いているのが不満なのか、もしくはリンクが羨ましいのか……急にラピードが寄り添って来た
「珍しいな…ラピードがすぐ懐くなんて」
私に寄り添って来たラピードを見ながら、ユーリが驚いた顔をする
「え…?これ、懐いているんですか?」
……先ほど中々懐かないと言ってたのはなんだったのだろうか←
「おう、珍しいこともあるんだな」
「ふーん……そうなんですね」
そう言いながらラピードの背を撫でると少し嬉しそうにしている気がした
「……」
「ユーリ…あからさまに不機嫌にならないでくれ…ラピードにまで嫉妬しているのかい?」
無言でジッとラピードを見つめるユーリに、フレンさんが呆れたように問いかける
「ユーリ?嫉妬してるんですか?」
「…うっさい」
私が聞くとぷぃっと顔を背けてしまった
そうゆう反応が可愛いなぁと思いながらリンクを降ろす
そして、目の前に座っているユーリに飛びついた
「うぉっ!?ったく…アリシア…いきなりは駄目だって、昨日言ったばかりだろ?
それに、ここ馬車ん中だし余計危ねぇだろ」
ほんの少し不機嫌そうに、ユーリは私に言ってくる
動物にまで嫉妬してしまう彼に少し呆れもするけれど……
けど、それ以上に、それだけ愛されているのだと思うと嬉しくなる
「だって、こうでもしないと納得してくれないでしょう?私が好きなのはユーリだけですよ」
ぎゅっと抱きしめながら、ユーリを見上げてニッコリと微笑んだ
「……ったく、しょうがねぇお嬢様だな」
呆れたような声でそう言ってくるが、ユーリも嬉しそうにニコニコと微笑んでくれている
そんな私達の様子を見て、苦笑いしながらフレンさんは向かいの席へ移った
フレンさんが退くと、ユーリは飛びついた私を自分の膝の上へ座らせると腰に手を回してきた
「もーすぐ着くんだがな…いいのか?」
「何がです?私は何も気にしませんよ?」
何故そんなことを聞いてくるのかがわからず、小さく首を傾げた
「あー…いや……多分かなりの野次馬いるぜ?」
オレが堂々と出掛けたから…とユーリは小声で付け足す
「……それはちょっと……面倒ですね…」
まぁ、だからといって離れたくはないのだが…
言われてみれば、確かに先ほどから少し外が騒がしい気がする
「一応カーテンは閉めたけど……どうする?やはり門の奥までこのまま入ってもらもうか?」
「それがいいな。オレ、まだアリシアを城に住んでる奴ら以外に会わせる気ねーぞ?」
そう答えながら、ユーリは軽く抱きしめてくる力を少し強めてきた
余程野次馬に私を会わせるのは嫌らしい
まぁ……私も会いたくなんてないのだけれど……
「そう言うと思っていたよ。じゃあ、そうしてもらおう」
そう言ってフレンさんは小窓から、御者さんに小声で話しかけている
そんな様子を見ていると、リンクがピョンっと膝の上に乗ってきた
それに合わせるようにラピードもまた寄り添ってくる
「随分とまぁモテモテだな、アリシア」
ニヤニヤとしながらユーリは言ってくる
「む…モテるのは私、ユーリだけでいいのですが…それと、リンクとラピードは別ですよ?」
ムッとしてユーリの腰あたりに回していた腕を首元の方へ回し直した
「へいへい、わかってるっての」
腰に回してきている手と反対の手で、そっと頬に触れてくる
目元をなぞるように親指で優しく撫でられる
くすぐったくて肩をすくめるが、それと同時に嬉しくて微笑むと、すっとその手で顎をクイッとあげられ、唇が重なりそうになるが…
「はいはい、そこまで。もう着くから」
パンパンっと手を鳴らしてフレンさんに止められてしまう
ユーリはあからさまに不機嫌にフレンさんを睨みつける
呆れたように頭を抱えて、後でも出来るだろう…と彼は呟く
「わーったよ…」
不服そうにユーリは呟くと、チュッと頬にキスして、また後でな?と耳元で言われた
それに、ニコッと微笑み返したのと同時に、馬車が止まった
ーーーーーーーー
「うわぁ……相変わらず広い…」
久しぶりに来たお城の中は昔と変わらずとても広かった
「はっはっは、そりゃんな簡単に小さくなったりしねぇっての」
隣にいるユーリがそう笑う
確かにそれもそうだが、久しぶりに見ると驚くものだ
「さてと、んじゃ先に一応城の中案内しとかなきゃなんだが……」
そう言いながらユーリはチラッとフレンさんの方を見る
「君は執務がまだまだ残っているだろ?案内はジュディスに頼めばいい」
少し怒り気味に彼はユーリを見つめる
「ジュディス……?」
聞いた事のない名前に首を傾げると、ユーリが口を開こうとする
「私のことよ」
が、それよりも前に柱の後ろから青い髪の女性がそう言いながら出てきた
「なんだジュディ、もう居たのか」
「ええ、あなたには執務に戻って貰わないと困るもの。ここから先は、私の仕事よ」
彼女はユーリに向かって微笑みながら言うと、今度は私の方を向く
「初めまして、ジュディスよ。ユーリからあなたの護衛役を頼まれたわ。よろしくね」
ニッコリと笑いながら手を差し出してくる
「あ……アリシア・リベリット・ラグナロクです。よ、よろしくお願いします!」
そう言って、彼女の手を握った
護衛役……か……
なんとなくわかってはいたが、やっぱり私にも付けられるんだなぁ
「……んじゃぁ……ジュディ、悪ぃけど頼む」
ものすごく嫌そうな顔をしながらユーリは言う
「ええ、任せて頂戴」
そんな事気にもせずにジュディスは返事を返した
「アリシア、夕飯前には迎え行くから、それまで色々連れてってもらってこい」
ポンポンっと頭を撫でながらユーリは少し寂しそうに微笑んでくる
「はい、わかりました」
それにニコッと笑って答えた
「んじゃ、オレ行くわ。……あー、ジュディ、おっさんだけは気をつけてくれよな…?」
「ふふ、大丈夫よ、わかってるわ」
ジュディスの返事を聞くと、ユーリは半分フレンさんに引きずられるようにして、去って行った
「それじゃ、行きましょうか?」
「はい!……あ、その前に……1つ、聞いてもいいですか?」
「あら、どうしたのかしら?」
「えっと……ユーリが言ってた方はそんなに危険なのですか…?」
恐る恐るそう聞くと、彼女はクスッと笑う
「そうね、あなたにはちょっと危ない人になるかもしれないわね。けど大丈夫よ、そのための私だから」
私にとっては……って、どうゆうことでしょう…?
「さ、日が暮れてしまう前に行きましょう。ユーリと仲の良い人達も紹介したいから」
「あ…はい、わかりました!」
そう言って、少し前を歩き出したジュディスの後をついて行く
ユーリと仲の良い人……どんな人達なのだろう?
