第3章
Name Change
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〜対話〜
しばらく走っていると、街についた
流石のユーリももう疲れきっていたので宿屋で休むことにした
「だぁぁぁ……なんなんだよ…ほんとあいつら……」
「さっきもそれ聞いたよ…」
ドサッとベッドに倒れ込みながら、もう何度聞いたかわからない問を繰り返す
呆れ気味にユーリが倒れ込んだベッドの淵に座って頭を撫でる
「オレのアリシアとろうとしやがって……」
「…まだ、取られるとは決まってないんだけど…」
苦笑いしながらユーリに言う
本当、評議会の議員達が今の彼を見たらどう思うのだろうか…
普段、あれだけの威迫を出しているユーリが、私の前だと子供のように甘えてくるのを知ったら…
…ものすごく驚くことが目に見えている
「それに……」
チュッと軽くユーリの唇にキスをする
「私の大好きなユーリはここに居るユーリだけだよ?」
ユーリの左手に、自分の左手を重ねながら微笑む
「ははっ、それもそうだな…」
帽子を外した頭を右手でくしゃっと撫でてくる
それが嬉しくて目を細める
「オレが愛してるアリシアも…ここにいるアリシアだけだわ…」
ユーリの目は既にトロンとしていて、今にも寝そうだ
「ユーリ、少し寝てなよ?」
優しく頭を撫でて言うと、ん…と呟いたのを最後に眠りに入った
「……こうやって見るとすっごい子供っぽくて可愛いんだけどなぁ…」
クスッと笑いながら小声で呟く
本当はまだまだユーリも遊んでいたいのだろうなぁ…
幼い時から私と違って執務をしていたと聞いているから、余計にそう思う
私といる時は執務中よりも一層わがままなのだ
まるで子供が甘えてくるみたいに
とってもわがまま
無理難題突き出してきたりするし
だけど、無理だってわかってることは冗談だって言って本気でやらせたりしない
子供になりきれてない子供…というか
大人になりきれてない大人…というか
半分大人だけど、もう半分は子供なんだ
だからこそ、わがままを言われても許せる
家柄どうのこうのなんて関係ない
子供のうちに沢山遊べなかったからこそ、今遊びたいんだって思う
…だからと言って執務を抜け出してきて欲しくはないんだけどね…
「……ユーリ……あい…してる…っ////」
ボソッと呟いてみたが、やはり恥ずかしい
鏡を見なくっても赤くなっているのがわかる
(…まだユーリに面と向かっては言えなさそう…///)
本当は言ってあげたいのだが…と苦笑する
なんでこの旦那様は恥ずかしがりもせず言えるのだろうか…
窓の外に視線を移すと、ポツポツと水が降ってきていた
恐らく、『雨』なのだろう
出るか出ないか少し迷ったが、好奇心に勝てずそっとユーリの髪にキスして、帽子を被り直し部屋を出た
ーーーーーーー
「ワンッ!」
「え?ここに?」
『彼ら』はラピードに連れられヘリオードへ来た
「ま、まさか~ここにいるわけが……」
「っ!?!!」
宿屋からすっと出てきた影に驚いた
それは…先ほど見かけた《アリシア》がいた
「……居たけど」
「追いかけてみましょう!」
『エステル』の呼びかけにみんな彼女を追いかける
追いつくと、もう動かなくなった魔導器の前に立っていた
「………ど……………こと……だ……て……は………」
何かブツブツと呟いているが、何を言ってるかはわからない
「……ユーリ……」
『フレン』に声をかけられて頷き、ゆっくり近づいて行く
「……やっぱり、『ここ』は面白いものがいっぱいあるんだなぁ……」
空を見上げながら《アリシア》はボソッと言う
声までもがよく知った彼女と同じだ
…ただ一つ、気になるのはボソッと聞こえた『ここ』という単語
まるで何も知らないかのように
彼女の目は輝いているように見える
知らない世界にやって来たとでも言いたげな目をしている
「…………アリシア…………」
そっと呼ぶとビクッと肩を震わせる
振り向いた彼女の目は驚きに満ちていて
それと同時に、しまった!とでも言いたげな表情をしている
「…………ごめん………やらかした……」
消えそうな謝る声は、今ここに居ないもう一人の《ユーリ》に向けられたものなのだろう
「……なぁ、お前は……アリシアなのか……?」
消えそうで、押しつぶされそうな声で『ユーリ』は目の前にいる彼女に聞いた
ーーーーーーーー
宿屋を出て中央に見えた広場へ向かった
ポツポツと水が体にあたる感覚が楽しい
広場には大きな『何か』が置いてあった
恐らく、どの街にもあった『魔導器』なのだろう
ただ、もう機能していないようだ
「……なるほど………そうゆうことなんだ……てことは………」
見ただけで何となく仕組みはわかった
中央にあるとされていたコアが無くなっている
その変わり、何か人ではない生き物の気配がする
人間でもないその気配はすぐそこに居るようなのだが……
どうやら目に見えない存在のようだ
この前見つけた日記には、そんなことは書いてなかった
「……やっぱり、『ここ』の世界は面白いものがいっぱいあるんだなぁ……」
そらを見上げながら呟く
凄く、楽しい
見たことのないもの、見たことない風景…
魔界では体験出来ない事が沢山ある
……もう少しここに居たいと思ってしまうのは私のわがままだ
「…………アリシア…………」
「っ!?」
唐突に名前を呼ばれて驚いてしまう
ユーリだけれども、『ユーリ』じゃない声
少し寂しさが混じったような声
ゆっくりと振り向くと、『こちら』の世界の『ユーリ』達が居た
「…………ごめん…………やらかした………」
小声で今ここに居ない、私の知ってるユーリに謝る
「……なぁ、お前は……アリシアなのか……?」
寂しそうな、消えてしましそうな声で問いかけてくる
声はユーリなのに、ユーリじゃない
見た目もユーリなのに、ユーリじゃない
私の知ってる彼じゃない
答えに詰まってしまう
なんて答えればいいかわからない
…彼らの反応から見て、恐らく『この』世界にはもう…『私』は存在していないのだろう
「……頼む、答えてくれないか……?」
『フレン』は遠慮気味に聞いてくる
それは他のみんなも同じようだ
…言うしかないかな…
本当はユーリの所に逃げたいのだが……
恐らく、逃げたところでまた追いかけて来るだろう
……そもそも、逃げ切れる自信が無い……
「……ごめんなさい……私は…………『あなた達』の知っている私ではないの…だって、『あなた達』のことを、私は何も知らないから…」
少し視線を背けつつ答える
見れなかった、彼らのことを
きっと、落ち込んでいるだろうから……
「……じゃあ…なんで逃げたんだよ……なんで目合わせようとしねぇんだよっ!?」
『ユーリ』は声を荒らげてそう問いかけてくる
「……似ていたから、『あなた達』が私の知っている人達にそっくりだったから…」
「……だとしても、逃げる必要が何処にあったんだよ……っ!」
「そ……れは……」
言葉に詰まってしまう
……言えるわけが無い
魔界からユーリとお忍びで来ましたとか言えるわけが無い……
…絶対信じてくれないもん……
「…答えられねぇってか…?理由もわかんねぇのにオレらを知らねぇってことを信じろってか!?」
『ユーリ』の言葉が胸に突き刺さる
……確かに、それもそうかもしれない……
理由もわからず逃げられた、だなんて彼らからしたら知っているから、としか考えられないだろう
私だって、きっとそう思うだろう
……でも、私にはこれ以上説明のしようがなかった
言ってはいけないと、ユーリに何度も言われていたから……
何も言えなくなって、俯いてしまう
「……なぁ……頼むから……本当のこと話してくれよ………」
今にも消えてしまいそうな声で、ゆっくりと近づいてくる音がする
……お願い近づかないで……
近づかれてしまったら……
……わからなくなってしまうから……
私の知っているユーリがどちらか……わからなくなってしまいそうだから……
「悪ぃけど、アンタらが探してる『アリシア』じゃねぇぞ、こいつは」
不意に、トンッと私の横によく知った声と共に誰かが降り立った
……誰かなんて、すぐにわかった
「ったく、一人で勝手に出掛けて……目覚めたら居ねぇからマジで焦っただろ…?」
「っ!!ユ、ユーリ……ごめんなさい……」
そう、隣に来たのは私のよく知ったユーリだ
咄嗟に謝るけど、ユーリが心配するようなことが沢山あった身だ
流石に簡単に許してくれるわけなんてなくて……
「…本当、いい加減マジで首輪つけっぞ…?」
「えっ!?それは絶対になしだよ…!!本当にごめんってばぁ…!!」
本気でやりかねない目をして言ってくるのもだから、目の前のそっくりさん達のことも忘れて、必死で謝った
……冗談だと気づいたのは、ユーリがクスッと笑ってからだった
「ユーリ……っ!!!!!」
「くくっ……わ、悪かったって…くくっ」
お腹を押さえて必死に笑いを堪えようとしているユーリを見ていると、段々恥ずかしくなっていつもの癖でユーリの後ろに隠れた
「ははっ……悪ぃ悪ぃ、ついいつもの癖でからかっちまったわ」
後ろに隠れた私の頭を撫でながら、目元に溜まっている涙を拭っている
……もちろん、笑い堪えて出た涙だよ……
「ま、こうゆうことだから、ここに居んのはアンタらが知ってるアリシアじゃねぇんだわ」
そっくりさん達の方に目線を向けながらユーリはそう言う
チラッと彼らを見ると、みんな唖然としている
……それもそうだ、よく知った人物が目の前に2人もいるんだから…
「え、えぇ……ユーリが……二人です……?」
「……だめ、おっさんには理解不能よ……リタっちにパス……」
「あ、あたしにもわからないわよ……!!」
「服以外、全部そっくりなのじゃ……」
「私にも見分けがつかないわ……」
「…………すまない、ユーリ……僕にもわからない……」
「……オレが一番わかんねぇよ……!!」
みんな口々にそう言ってる
……そうだよね……わかんないよね……
ユーリの後ろで苦笑いしながらそんな彼らを見る
本当に、そっくり過ぎるよ……
「……んで、そこのお嬢さんの言う通り別人だとして、なんでオレらから逃げた?それと、そもそもどっから来たんだよ……」
はぁ……っとため息をつきながら質問してくる
「えーっと……」
答えようとするが、言葉に詰まってしまった
……だって、言えるわけないじゃん……
「何処って、魔界としか言いようがねぇんだけど」
「え、それ言っちゃっていいの…?」
「緊急事態だからしゃーねぇだろ?」
いやそれもそうなのだが…と驚くが、驚いているのは私だけじゃない
『エステル』もまた、私同様驚いている
他のみんなはふざけてるのかこいつは…みたいな顔してるけど……
「ま、魔界……って、またまたぁ、そんな場所あるわけ」
「え……えぇっ!?あの扉、開いたんですっ!?」
「あん?知ってんのか?」
「知ってるも何も…!あの扉は皇族の秘密中の秘密で、こちら側からは開けられないものですよ…!?」
『エステル』の言葉に『ユーリ』達は驚く
なんて言ったって無いと思っていた世界があるのだから
「おいおい……マジかよ……」
「あはは…まだまだ、この世界には不思議なことが沢山あるんだね……」
唖然とした顔で『ユーリ』と『フレン』は呟く
「あの……つかぬことお聞きしますが……」
少し遠慮気味に『エステル』は話しかけてくる
「あん?なんだ?」
「お城で読んだ言い伝えでは、その扉は魔界からも魔王様しか開かないとか……」
「あぁ、そうだけど」
「………えっと……まさかとは……思うのですが…………」
「オレがそうだけど?」
ピシッとこちらの世界の『ユーリ』達が固まった
それもそうだろうね…
よく見知った顔が魔王なんだから……
「ユ、ユーリが魔王とか……想像つかない……」
「オレが一番想像つかねぇよ……!!」
「あんたが真面目に仕事してるとことか想像出来ないわ……」
「おい……それどうゆう意味だよ……!!」
がやがやと言い合いが始まっていたが、一つだけ訂正させて欲しい箇所があった
「…あ…あの……真面目…ではないよ?」
少しユーリから離れて、姿を表しながらそう言うとえ?と口を揃えて聞き返してくる
…こっちの『ユーリ』達も仲いいなぁ……
「バっ!アリシアっ!」
口を抑えようとしてくるユーリをかわして、言葉を続ける
「だって、ほぼ毎日執務中抜け出しては私のとこ逃げてきて、サボってフレンとレイブンにおこっ……!?」
「言うなよ…馬鹿野郎…っ!!」
……ユーリに捕まって口抑えられました…←
まぁ、ほとんど言った後だからそんな行動無意味なわけで
「ユーリは…どこに住んでてもユーリだね」
「おいコラカロル…それ、どーゆう意味だよ…!」
「それよりも…僕と同じ名前のが魔界にも居ることが驚きだよ…しかもユーリの下って……」
「あからさまに嫌そうな顔すんなっ!」
「おっさんも驚きよ~!」
どこか楽しそうにまた言い合いしだした
そんな彼らを少し遠くから見ている
…うん、ちょっと『ユーリ』の表情も明るくなった気がする
…………さてと……………
いい加減息が苦しい←
軽く腕を叩くと、ようやく手を離してくれた
「…ぷはぁっ!!けほっ!けほっ……ユーリっ!私を殺す気っ!!息出来なかったじゃんっ!!」
半分涙目でユーリに訴える
「いや……だってアリシアが…」
「……ユーリ?」
「……これは流石にオレが悪かったです……」
ちょっと怒り気味に言うと、すんなり謝ってきた
……なんか、少しお父様に似てる気がする……
「……ん、私も勝手に出ていっちゃったから、おあいこってことにする」
背伸びして頭を撫でると、ちょっと嬉しそうに目を細めた
……単純なんだから……と、心の中で苦笑した
「…ちょっと、魔界のこと聞いてみたいです!」
不意に『エステル』にそう言われる
チラッとユーリを見ると、軽く肩を竦めた
言葉に出さないけど、それは少しならいいよって合図
だから、私もれニコッと笑ってユーリに答える
「…はぁ…なら、立ち話もなんだし……宿屋で話さねぇか?丁度休むとこだったし」
「はいっ!!」
嬉しそうに微笑みながら『エステル』は答える
他のみんなも話を聞きたいらしくて、早く行こう!と手招きしてくる
そんな彼らを見ていると、少し魔界にいるみんなが懐かしく思えた
……まだ、一日しか経ってないのにね……
軽く苦笑いして、ユーリの手を引く
「ほら、行こ?」
「…へいへい、わかりましたよ」
仕方ねぇなって顔をしてユーリも歩き出す
それを見て、彼らも宿屋の方へと足を運んだ
『ユーリ』の横を通り過ぎた時、彼が少し羨ましそうにユーリを見ていたことになんて、気づかなかった
ーーーーーー
「……ねぇ、ユーリ?」
宿屋に向かってる途中、アリシアが小声で話しかけて来た
オレがアイツらをあまり信用していないこともあって、少し距離を置いて歩いているから、聞かれることはないだろう
「ん?どうした?」
「……ここ、マナが薄いのによく私の居るところわかったね……」
少し驚いたように言われて、逆にオレが驚いた
……また、いつものアレか……
「…………あのなぁ……マナ薄くったって、気配くらいは感じ取れるって、昨日話したじゃねぇか……」
「えっ……あ………そ、そうだった……」
あはは……と気まづそうに苦笑いする
……それもそうだよな…オレ教えたの昨日だし……
「っつーか、またぼーっとしてたのか?結構前から上に居たけど全っ前気が付かねぇしさ」
「うっ………えっと………ごめんなさい………『魔導器』ってやつ見るのについつい夢中になってて……」
俯きながらそう言うが、本当は違うことくらい知ってる
それでも、オレが言わないのは、彼女本人から聞いた話じゃないから
彼女自身、相当気にしてる様子だから敢えて聞かなかった
……アリシアが、自分から話してくれるまで、知らない振りをするつもりだ
「……向こうに帰ったら覚えておけよ……?たっぷり可愛がってやるよ」
耳元で低く呟くと、ビクッと反応する
……本当、この反応が可愛すぎていじめんのやめられないわ←
「……もう………/////」
少し顔を赤くさせて見つめてくるが、嫌だという否定の目じゃない
むしろ肯定だろう
周りに人が居る時はいつもそうだ
口では絶対に言ったりしない
…そこがまた可愛いんだよなぁ
「二人ともー!早く早く!!」
宿屋の前で『カロル』が手を振りながら呼んでくる
……こっちのカロルもせっかちだな
「ほーら、行こうぜ?」
「…うんっ!」
ぎゅっと手を繋ぎ直して軽く走り出す
アリシアは昔っから体弱いから、そんなにスピードを出すことが出来ない
だから、歩幅を合わせて走ってるのだが……
……走るっつーか、早歩きだな、これ
今抱き上げたら後でめっちゃ怒られるのが目に見えてるから、それはしないが……
苦笑いしながらアイツらの元に向う
こっちの『オレ』が、少し恨めしそうに見ているのには、敢えて気づかない振りをした
しばらく走っていると、街についた
流石のユーリももう疲れきっていたので宿屋で休むことにした
「だぁぁぁ……なんなんだよ…ほんとあいつら……」
「さっきもそれ聞いたよ…」
ドサッとベッドに倒れ込みながら、もう何度聞いたかわからない問を繰り返す
呆れ気味にユーリが倒れ込んだベッドの淵に座って頭を撫でる
「オレのアリシアとろうとしやがって……」
「…まだ、取られるとは決まってないんだけど…」
苦笑いしながらユーリに言う
本当、評議会の議員達が今の彼を見たらどう思うのだろうか…
普段、あれだけの威迫を出しているユーリが、私の前だと子供のように甘えてくるのを知ったら…
…ものすごく驚くことが目に見えている
「それに……」
チュッと軽くユーリの唇にキスをする
「私の大好きなユーリはここに居るユーリだけだよ?」
ユーリの左手に、自分の左手を重ねながら微笑む
「ははっ、それもそうだな…」
帽子を外した頭を右手でくしゃっと撫でてくる
それが嬉しくて目を細める
「オレが愛してるアリシアも…ここにいるアリシアだけだわ…」
ユーリの目は既にトロンとしていて、今にも寝そうだ
「ユーリ、少し寝てなよ?」
優しく頭を撫でて言うと、ん…と呟いたのを最後に眠りに入った
「……こうやって見るとすっごい子供っぽくて可愛いんだけどなぁ…」
クスッと笑いながら小声で呟く
本当はまだまだユーリも遊んでいたいのだろうなぁ…
幼い時から私と違って執務をしていたと聞いているから、余計にそう思う
私といる時は執務中よりも一層わがままなのだ
まるで子供が甘えてくるみたいに
とってもわがまま
無理難題突き出してきたりするし
だけど、無理だってわかってることは冗談だって言って本気でやらせたりしない
子供になりきれてない子供…というか
大人になりきれてない大人…というか
半分大人だけど、もう半分は子供なんだ
だからこそ、わがままを言われても許せる
家柄どうのこうのなんて関係ない
子供のうちに沢山遊べなかったからこそ、今遊びたいんだって思う
…だからと言って執務を抜け出してきて欲しくはないんだけどね…
「……ユーリ……あい…してる…っ////」
ボソッと呟いてみたが、やはり恥ずかしい
鏡を見なくっても赤くなっているのがわかる
(…まだユーリに面と向かっては言えなさそう…///)
本当は言ってあげたいのだが…と苦笑する
なんでこの旦那様は恥ずかしがりもせず言えるのだろうか…
窓の外に視線を移すと、ポツポツと水が降ってきていた
恐らく、『雨』なのだろう
出るか出ないか少し迷ったが、好奇心に勝てずそっとユーリの髪にキスして、帽子を被り直し部屋を出た
ーーーーーーー
「ワンッ!」
「え?ここに?」
『彼ら』はラピードに連れられヘリオードへ来た
「ま、まさか~ここにいるわけが……」
「っ!?!!」
宿屋からすっと出てきた影に驚いた
それは…先ほど見かけた《アリシア》がいた
「……居たけど」
「追いかけてみましょう!」
『エステル』の呼びかけにみんな彼女を追いかける
追いつくと、もう動かなくなった魔導器の前に立っていた
「………ど……………こと……だ……て……は………」
何かブツブツと呟いているが、何を言ってるかはわからない
「……ユーリ……」
『フレン』に声をかけられて頷き、ゆっくり近づいて行く
「……やっぱり、『ここ』は面白いものがいっぱいあるんだなぁ……」
空を見上げながら《アリシア》はボソッと言う
声までもがよく知った彼女と同じだ
…ただ一つ、気になるのはボソッと聞こえた『ここ』という単語
まるで何も知らないかのように
彼女の目は輝いているように見える
知らない世界にやって来たとでも言いたげな目をしている
「…………アリシア…………」
そっと呼ぶとビクッと肩を震わせる
振り向いた彼女の目は驚きに満ちていて
それと同時に、しまった!とでも言いたげな表情をしている
「…………ごめん………やらかした……」
消えそうな謝る声は、今ここに居ないもう一人の《ユーリ》に向けられたものなのだろう
「……なぁ、お前は……アリシアなのか……?」
消えそうで、押しつぶされそうな声で『ユーリ』は目の前にいる彼女に聞いた
ーーーーーーーー
宿屋を出て中央に見えた広場へ向かった
ポツポツと水が体にあたる感覚が楽しい
広場には大きな『何か』が置いてあった
恐らく、どの街にもあった『魔導器』なのだろう
ただ、もう機能していないようだ
「……なるほど………そうゆうことなんだ……てことは………」
見ただけで何となく仕組みはわかった
中央にあるとされていたコアが無くなっている
その変わり、何か人ではない生き物の気配がする
人間でもないその気配はすぐそこに居るようなのだが……
どうやら目に見えない存在のようだ
この前見つけた日記には、そんなことは書いてなかった
「……やっぱり、『ここ』の世界は面白いものがいっぱいあるんだなぁ……」
そらを見上げながら呟く
凄く、楽しい
見たことのないもの、見たことない風景…
魔界では体験出来ない事が沢山ある
……もう少しここに居たいと思ってしまうのは私のわがままだ
「…………アリシア…………」
「っ!?」
唐突に名前を呼ばれて驚いてしまう
ユーリだけれども、『ユーリ』じゃない声
少し寂しさが混じったような声
ゆっくりと振り向くと、『こちら』の世界の『ユーリ』達が居た
「…………ごめん…………やらかした………」
小声で今ここに居ない、私の知ってるユーリに謝る
「……なぁ、お前は……アリシアなのか……?」
寂しそうな、消えてしましそうな声で問いかけてくる
声はユーリなのに、ユーリじゃない
見た目もユーリなのに、ユーリじゃない
私の知ってる彼じゃない
答えに詰まってしまう
なんて答えればいいかわからない
…彼らの反応から見て、恐らく『この』世界にはもう…『私』は存在していないのだろう
「……頼む、答えてくれないか……?」
『フレン』は遠慮気味に聞いてくる
それは他のみんなも同じようだ
…言うしかないかな…
本当はユーリの所に逃げたいのだが……
恐らく、逃げたところでまた追いかけて来るだろう
……そもそも、逃げ切れる自信が無い……
「……ごめんなさい……私は…………『あなた達』の知っている私ではないの…だって、『あなた達』のことを、私は何も知らないから…」
少し視線を背けつつ答える
見れなかった、彼らのことを
きっと、落ち込んでいるだろうから……
「……じゃあ…なんで逃げたんだよ……なんで目合わせようとしねぇんだよっ!?」
『ユーリ』は声を荒らげてそう問いかけてくる
「……似ていたから、『あなた達』が私の知っている人達にそっくりだったから…」
「……だとしても、逃げる必要が何処にあったんだよ……っ!」
「そ……れは……」
言葉に詰まってしまう
……言えるわけが無い
魔界からユーリとお忍びで来ましたとか言えるわけが無い……
…絶対信じてくれないもん……
「…答えられねぇってか…?理由もわかんねぇのにオレらを知らねぇってことを信じろってか!?」
『ユーリ』の言葉が胸に突き刺さる
……確かに、それもそうかもしれない……
理由もわからず逃げられた、だなんて彼らからしたら知っているから、としか考えられないだろう
私だって、きっとそう思うだろう
……でも、私にはこれ以上説明のしようがなかった
言ってはいけないと、ユーリに何度も言われていたから……
何も言えなくなって、俯いてしまう
「……なぁ……頼むから……本当のこと話してくれよ………」
今にも消えてしまいそうな声で、ゆっくりと近づいてくる音がする
……お願い近づかないで……
近づかれてしまったら……
……わからなくなってしまうから……
私の知っているユーリがどちらか……わからなくなってしまいそうだから……
「悪ぃけど、アンタらが探してる『アリシア』じゃねぇぞ、こいつは」
不意に、トンッと私の横によく知った声と共に誰かが降り立った
……誰かなんて、すぐにわかった
「ったく、一人で勝手に出掛けて……目覚めたら居ねぇからマジで焦っただろ…?」
「っ!!ユ、ユーリ……ごめんなさい……」
そう、隣に来たのは私のよく知ったユーリだ
咄嗟に謝るけど、ユーリが心配するようなことが沢山あった身だ
流石に簡単に許してくれるわけなんてなくて……
「…本当、いい加減マジで首輪つけっぞ…?」
「えっ!?それは絶対になしだよ…!!本当にごめんってばぁ…!!」
本気でやりかねない目をして言ってくるのもだから、目の前のそっくりさん達のことも忘れて、必死で謝った
……冗談だと気づいたのは、ユーリがクスッと笑ってからだった
「ユーリ……っ!!!!!」
「くくっ……わ、悪かったって…くくっ」
お腹を押さえて必死に笑いを堪えようとしているユーリを見ていると、段々恥ずかしくなっていつもの癖でユーリの後ろに隠れた
「ははっ……悪ぃ悪ぃ、ついいつもの癖でからかっちまったわ」
後ろに隠れた私の頭を撫でながら、目元に溜まっている涙を拭っている
……もちろん、笑い堪えて出た涙だよ……
「ま、こうゆうことだから、ここに居んのはアンタらが知ってるアリシアじゃねぇんだわ」
そっくりさん達の方に目線を向けながらユーリはそう言う
チラッと彼らを見ると、みんな唖然としている
……それもそうだ、よく知った人物が目の前に2人もいるんだから…
「え、えぇ……ユーリが……二人です……?」
「……だめ、おっさんには理解不能よ……リタっちにパス……」
「あ、あたしにもわからないわよ……!!」
「服以外、全部そっくりなのじゃ……」
「私にも見分けがつかないわ……」
「…………すまない、ユーリ……僕にもわからない……」
「……オレが一番わかんねぇよ……!!」
みんな口々にそう言ってる
……そうだよね……わかんないよね……
ユーリの後ろで苦笑いしながらそんな彼らを見る
本当に、そっくり過ぎるよ……
「……んで、そこのお嬢さんの言う通り別人だとして、なんでオレらから逃げた?それと、そもそもどっから来たんだよ……」
はぁ……っとため息をつきながら質問してくる
「えーっと……」
答えようとするが、言葉に詰まってしまった
……だって、言えるわけないじゃん……
「何処って、魔界としか言いようがねぇんだけど」
「え、それ言っちゃっていいの…?」
「緊急事態だからしゃーねぇだろ?」
いやそれもそうなのだが…と驚くが、驚いているのは私だけじゃない
『エステル』もまた、私同様驚いている
他のみんなはふざけてるのかこいつは…みたいな顔してるけど……
「ま、魔界……って、またまたぁ、そんな場所あるわけ」
「え……えぇっ!?あの扉、開いたんですっ!?」
「あん?知ってんのか?」
「知ってるも何も…!あの扉は皇族の秘密中の秘密で、こちら側からは開けられないものですよ…!?」
『エステル』の言葉に『ユーリ』達は驚く
なんて言ったって無いと思っていた世界があるのだから
「おいおい……マジかよ……」
「あはは…まだまだ、この世界には不思議なことが沢山あるんだね……」
唖然とした顔で『ユーリ』と『フレン』は呟く
「あの……つかぬことお聞きしますが……」
少し遠慮気味に『エステル』は話しかけてくる
「あん?なんだ?」
「お城で読んだ言い伝えでは、その扉は魔界からも魔王様しか開かないとか……」
「あぁ、そうだけど」
「………えっと……まさかとは……思うのですが…………」
「オレがそうだけど?」
ピシッとこちらの世界の『ユーリ』達が固まった
それもそうだろうね…
よく見知った顔が魔王なんだから……
「ユ、ユーリが魔王とか……想像つかない……」
「オレが一番想像つかねぇよ……!!」
「あんたが真面目に仕事してるとことか想像出来ないわ……」
「おい……それどうゆう意味だよ……!!」
がやがやと言い合いが始まっていたが、一つだけ訂正させて欲しい箇所があった
「…あ…あの……真面目…ではないよ?」
少しユーリから離れて、姿を表しながらそう言うとえ?と口を揃えて聞き返してくる
…こっちの『ユーリ』達も仲いいなぁ……
「バっ!アリシアっ!」
口を抑えようとしてくるユーリをかわして、言葉を続ける
「だって、ほぼ毎日執務中抜け出しては私のとこ逃げてきて、サボってフレンとレイブンにおこっ……!?」
「言うなよ…馬鹿野郎…っ!!」
……ユーリに捕まって口抑えられました…←
まぁ、ほとんど言った後だからそんな行動無意味なわけで
「ユーリは…どこに住んでてもユーリだね」
「おいコラカロル…それ、どーゆう意味だよ…!」
「それよりも…僕と同じ名前のが魔界にも居ることが驚きだよ…しかもユーリの下って……」
「あからさまに嫌そうな顔すんなっ!」
「おっさんも驚きよ~!」
どこか楽しそうにまた言い合いしだした
そんな彼らを少し遠くから見ている
…うん、ちょっと『ユーリ』の表情も明るくなった気がする
…………さてと……………
いい加減息が苦しい←
軽く腕を叩くと、ようやく手を離してくれた
「…ぷはぁっ!!けほっ!けほっ……ユーリっ!私を殺す気っ!!息出来なかったじゃんっ!!」
半分涙目でユーリに訴える
「いや……だってアリシアが…」
「……ユーリ?」
「……これは流石にオレが悪かったです……」
ちょっと怒り気味に言うと、すんなり謝ってきた
……なんか、少しお父様に似てる気がする……
「……ん、私も勝手に出ていっちゃったから、おあいこってことにする」
背伸びして頭を撫でると、ちょっと嬉しそうに目を細めた
……単純なんだから……と、心の中で苦笑した
「…ちょっと、魔界のこと聞いてみたいです!」
不意に『エステル』にそう言われる
チラッとユーリを見ると、軽く肩を竦めた
言葉に出さないけど、それは少しならいいよって合図
だから、私もれニコッと笑ってユーリに答える
「…はぁ…なら、立ち話もなんだし……宿屋で話さねぇか?丁度休むとこだったし」
「はいっ!!」
嬉しそうに微笑みながら『エステル』は答える
他のみんなも話を聞きたいらしくて、早く行こう!と手招きしてくる
そんな彼らを見ていると、少し魔界にいるみんなが懐かしく思えた
……まだ、一日しか経ってないのにね……
軽く苦笑いして、ユーリの手を引く
「ほら、行こ?」
「…へいへい、わかりましたよ」
仕方ねぇなって顔をしてユーリも歩き出す
それを見て、彼らも宿屋の方へと足を運んだ
『ユーリ』の横を通り過ぎた時、彼が少し羨ましそうにユーリを見ていたことになんて、気づかなかった
ーーーーーー
「……ねぇ、ユーリ?」
宿屋に向かってる途中、アリシアが小声で話しかけて来た
オレがアイツらをあまり信用していないこともあって、少し距離を置いて歩いているから、聞かれることはないだろう
「ん?どうした?」
「……ここ、マナが薄いのによく私の居るところわかったね……」
少し驚いたように言われて、逆にオレが驚いた
……また、いつものアレか……
「…………あのなぁ……マナ薄くったって、気配くらいは感じ取れるって、昨日話したじゃねぇか……」
「えっ……あ………そ、そうだった……」
あはは……と気まづそうに苦笑いする
……それもそうだよな…オレ教えたの昨日だし……
「っつーか、またぼーっとしてたのか?結構前から上に居たけど全っ前気が付かねぇしさ」
「うっ………えっと………ごめんなさい………『魔導器』ってやつ見るのについつい夢中になってて……」
俯きながらそう言うが、本当は違うことくらい知ってる
それでも、オレが言わないのは、彼女本人から聞いた話じゃないから
彼女自身、相当気にしてる様子だから敢えて聞かなかった
……アリシアが、自分から話してくれるまで、知らない振りをするつもりだ
「……向こうに帰ったら覚えておけよ……?たっぷり可愛がってやるよ」
耳元で低く呟くと、ビクッと反応する
……本当、この反応が可愛すぎていじめんのやめられないわ←
「……もう………/////」
少し顔を赤くさせて見つめてくるが、嫌だという否定の目じゃない
むしろ肯定だろう
周りに人が居る時はいつもそうだ
口では絶対に言ったりしない
…そこがまた可愛いんだよなぁ
「二人ともー!早く早く!!」
宿屋の前で『カロル』が手を振りながら呼んでくる
……こっちのカロルもせっかちだな
「ほーら、行こうぜ?」
「…うんっ!」
ぎゅっと手を繋ぎ直して軽く走り出す
アリシアは昔っから体弱いから、そんなにスピードを出すことが出来ない
だから、歩幅を合わせて走ってるのだが……
……走るっつーか、早歩きだな、これ
今抱き上げたら後でめっちゃ怒られるのが目に見えてるから、それはしないが……
苦笑いしながらアイツらの元に向う
こっちの『オレ』が、少し恨めしそうに見ているのには、敢えて気づかない振りをした