第2章
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〜罪状〜
ー翌日ー
「アリシア、絶っっ対!勝手に出歩くなよっ!?」
「もう……わかったから…」
ふぅ……っとため息をつく
今朝からこの会話の繰り返しだ
今いるのはユーリの執務室の隣の書庫
今回のことで心配性をこじらせたユーリが、すぐに駆けつけられるようにと彼が執務中はここにいることになった
まぁ、それは構わないんだけど…
何度も何度も同じことを言われ、そろそろ鬱陶しくなってきた
一人で出歩かないって言ってるのに聞かないし…
「ユーリ……いい加減戻って来てくれないか……?」
執務室から繋がっている扉の前でフレンが呆れた顔をしている
それもそうだろう
かれこれ小一時間、ずっとこんな状態なんだから
「あのね、ユーリ…これじゃ私が何処にいても変わらないでしょ?はい、執務して来るっ!」
コツンと軽くユーリの頭を叩いて読みかけていた本を手に取る
「…本当、マジでここ居てくれよ…?」
「わかったから…」
何度か振り向いた後、ようやく執務室へ戻った
(心配してくれるのは嬉しいんだけど、心配しすぎなのよね……)
苦笑いしながら執務室へ続く扉を見た
とりあえずやることもないから読みかけていた本の続きを読もう
ーーーーーーーー
「……暇」
机に突っ伏してボソッ呟く
本は読み切ったし、ここの部屋のものは動けなかった時に全て読んでしまっている
もういっそのこと勝手に出ていこうかと思ったが、絶対それやったら怒られるじゃ済まない
この部屋には執務室に繋がる扉以外に、廊下に繋がる扉もある
そっちの扉は護衛が一人居るだけなのだが…
出て行ったらすぐわかるだろう
だからといって流石に暇すぎる
「むぅ………」
もうこうなったらユーリのところに行ってしまおうか
でも流石にそれはなぁ……
なんて考えながら本棚を眺めていると、一番上に置いてある本に目がいった
あれだけは読んだ記憶がない
側にあった脚立を登って、その本を手に取ると見たことのない文字が書いてあった
「……?」
試しに一ページ捲ってみると、家でよく読んでいた人間界の風景画と似たような絵が書かれていた
「……!これ……人間が書いたのかな……?」
もう一ページ捲るとまた見たことない文字がぎっしり書いてある
何が書かれているかはわからないけど、これは日記……?
かろうじて年号と、後ろにあった紋章だけは読めた
「『アスール歴二百四十』…?それと、人間界の王家の紋章…?」
アスール歴は千年前まで使われていた暦らしい
今は使われてないようだが……
それと、王家の紋章
これはアスール歴が終わった年に作られたものらしい
「……なんでこんなものあるんだろ……?」
でもこれ、読めたらちょっと面白そう
文字の形状自体は似ているし、頑張れば読めそう
「ん、とりあえず……どうやって降りよ……」
登ったはいいが降りれないことを思い出した
しかも結構高いとこだし飛び降りるに飛び降りれない
……ユーリ呼ぶ……?
いや、怒られて終わりだからそれは却下
じゃあフレン……いや、それも怒られるな…
ここは無難にレイヴン……
……いや、そもそも人を呼ぶ術がない
叫べば聞こえるだろうけど真っ先にユーリが吹っ飛んでくるのが目に見えている
時計を見るともう十一時を指している
正午になったらユーリ来るじゃん……
どーしようか……
「……えーっと、何しているんだい?アリシア…」
「っ!フ、フレン……」
廊下側の扉からフレンが入ってきた
タイミングがいいと言えばいいし、悪いと言えば悪い
「まさかとは思うけど…上の方の本を取ろうとして降りれなくなった…とかじゃないだろうね?」
「……ごもっともです……」
はぁ……とため息をついて、脚立の近くまで来る
「アリシア、ちょっと危ない事するけど叫ばないでね」
「?う、うん?」
そう返事をするとフレンは脚立の足を倒す
「……へ?」
まぁ、当然だけど落下しますよね…!?
「……っ!?」
叫ばないって言ったけどこれちょっと無理が……っ!!!
「おっ…と」
「……あ…れ?」
「大丈夫かい?」
床と激突…かと思ったらフレンが片手で私を受け止めて、反対の手で脚立を止めていた
「あ…う、うん、大丈夫だよ…ありがとうフレン……でも流石にあれは怖いよ………」
そう言ってフレンから離れる
「あれくらいしないと危険度がわからないかと思ってね。それと、この脚立は片付けさせて貰うね」
笑顔だけど、目は笑ってない
そんなことしなくてもわかったから……
「う、うん…」
「フレン?なんかあったか?」
ガチャッと執務室の扉が開いてユーリが入ってくる
「何でもないよ、アリシアが本棚の上の方の本を脚立取ろうと脚立使おうとしていたから、代わりに取ってあげただけさ」
「なっ!呼んでくれりゃよかったのに」
「…………人が多いとこに1人で入って来いって、言うの……?」
本を抱えてながら少し不機嫌に言う
すると、あ…悪ぃ…と謝ってきた
「んで、なんの本だよ、それ」
「さぁ?僕も表紙を見たけど程度だけど、少し文字が違うみたいだね」
「あん?んな本あったか?」
ちょい見せてみ?と言って本を取る
「……確かに見たことねぇ文字だな」
「形状は僕らが使ってるものと酷似しているけどね」
フレンとユーリは二人してなんて読むかと話している
まぁ、気になるよね…
「にしても、なんでこの本が気になったんだい?」
フレンは私の方を向いて聞いてきた
「え?お城に来てから読んだ記憶がなかったからっていうのと……実家にいた時によく読んでいた人間界の風景画の本とよく似ていたから、ちょっと気になって」
「あー、なるほどな」
パタンと本を閉じて渡してくれる
「でもよ、それ読めんのか?」
「へ?だって、文字の形状自体は似ているんだから読めないことはないと思うけど…」
時間かかりそうだけどね、と苦笑いする
「そんなに読みたいのかい?」
「…だって、暇なんだもん、やること無くて」
そう言うと、あぁ……と息ぴったり言った二人だった
ー一週間後ー
「青年!青年!せーいーねーんー!!!」
「だぁぁっ!うるっせぇっ!レイヴンっ!」
バンッ!!!
「!?な、何何何何っ!?」
執務室横の書庫で、先週見つけた日記の解読をしていると、レイヴンがユーリを呼ぶ声と、それにキレるユーリの声と、何がぶつかった音が聞こえた
余り気は進まないけど、執務室の扉を開けて中に入る
「ユーリっ!?今の音……っ!?」
入ってすぐに目の前に広がる現場を見て状況を把握した
はぁ…とため息をついてスタスタとユーリの傍に行く
「…ユーリ?」
「っ!?あ…アリシア……あー………えっと、だな?」
私を見るなり、しまった!という顔をして慌て始める
「言い訳はいらないよ?ユーリ、幾らレイヴンが叫んで何度も呼んでるからってさ?ここまでする必要なかったよね?」
ユーリの目線の先には、思いっきり殴られた挙句、壁に激突したと思われるレイヴンが倒れていた
……壁ヒビ入ってるんだけど……
「…はい……」
「…アリシア……ちゃん………青年の説教………する前に………嬢ちゃんを…………」ガクッ
「!?エ、エステリーゼ様ーっ!!!」
レイヴンが完全にダウンするとフレンが急いでエステルを呼びに行った
「…はい、じゃあユーリ?ちょっとそこに座ろっか?」
ニコッと笑顔で言う
……ここが執務室なのも忘れてフレンがエステルを連れて来るまでずっとユーリに説教していた……
ーーーーーーーー
「…嬢ちゃんありがとう…マジでおっさん死ぬかと思ったわよ…」
エステルのおかげでレイヴンはなんとか復活し、今私達は揃って玉座の間にいる
…百歩譲ってそれはいいんだけど、ユーリの隣のこの席に座っているのは違和感しかない
「それで、レイヴン。なんでユーリのこと呼びまくってたの?」
「そうそう!聞いてよ!おっさんを褒めてよ!ラゴウの奴の居場所見っけた上に取っ捕まえたのよ!」
「っ!?」
ものすごい勢いでユーリは立ち上がった
私や他の人達は唖然としている
あの見つからなかったラゴウが、こうも簡単に捕まったのだ
そりゃ驚くだろう
「あー、まぁ、デュークのあんちゃんのおかげでもあるんだけど…」
と、少し気まづそうに言うが、そんなの些細な問題だ
「…レイヴン、連れて来い」
「はいよん~」
そう言ってレイヴンはそそくさと出て行った
「ラゴウ、かなりの悪人だよ」
「誘拐、強盗、市民虐殺、オマケにアリシアの両親に掛けた領地横領の本当の犯人よ、あいつ」
「…っ!!!」
「それに、監禁と脅迫未遂、だね」
「…あぁ」
ユーリの手に力が入っているのがわかる
私は何も言えないで俯く
少し体が震える
忘れかけていた恐怖が、すぐ近くまで来ている
怖い、逃げ出してしまいたい程に
周りにはみんなが居ることなんてわかっている
それでも、怖いのだ
「…アリシア、あなたは無理してそこに居るべきではないと思うわ」
ジュディスの声にはっとして顔をあげると、みんなが心配そうにしているのが見えた
「で……でも………」
怖くても、私はユーリと結婚した時に王妃になったのだ
だから…簡単に離れていいのかと躊躇していると
「…アリシア、おいで?」
不意にユーリに手招きされた
「……?」
疑問に思いつつもユーリの傍へ行くと
「わっ…!?」
「よっと」
ユーリに引っ張られて、膝の上に乗せられてぎゅっと抱きしめられる
「ラゴウ来るまでここ居りゃ大丈夫だろ?あいつが来たらジュディんとこ逃げろ」
「………うん…」
ごめんね……ユーリ……
まだ、立場がどうのよりも恐怖の方が強いみたい
ギュッとユーリにしがみつく
「ふふ、本当に仲が良いですね」
「…ちょっとうらやましいね」
エステルとカロルがそんな会話をしているのが聞こえた
「ヴゥゥゥゥ~っ!」
「ガルルルル…っ!」
突然、リンクとラピードが扉のほうに向かって威嚇を始めた
「…来たか。ジュディ、アリシア頼む」
「えぇ、任せて。さ、こっちに行きましょ?」
頷いて答える
ジュディスと一緒にみんなから少し離れたところに行くと、ほぼ同時に扉が開いた
ギィィィ……
「せーいねーんっ!連れてきたわよ~ん!ほら、ちゃっちゃか歩くっ!」
ちょっと楽しそうにしながらレイヴンはラゴウを連れてきた
私が見た時の仮面はつけていなくて、しわがれた老人の顔がそこにはあった
『この顔』は知らない、だからまだ平気だった
「おやおや、皆様お揃いですね」
「……っ!!!!」
…この声を、聞くまでは
「…なんでここに連れてこられてっか、理由くらいわかってんだよな?」
冷ややかな声でユーリは言うが、ラゴウは何処か余裕そうにしている
「はて?なんのことでしょうか?」
「領地横領及びその罪をラグナロク家に押し付け、ありもしない証言をした偽証罪、貴族街に住む女性を誘拐した誘拐罪、そして監禁罪、更にはユーリ…魔王に脅迫しようと企てていたことから脅迫未遂、以上があなたに出ている罪状です。既に証拠と証人も揃っています」
淡々とフレンもまた険悪な雰囲気を出しつつ言う
「…!?なんですって?」
「あんたに雇われてたデュークが全部話してくれたぜ?」
「っ!!デューク!裏切るのですか!」
「…元々、お前に忠誠を誓った覚えなどない」
デュークさんも初めて私と話していた時よりも冷たい声で言う
「くっ……!完璧な筈だったというのに…!!」
「さてと…オレ的にゃ極刑がお前にはお似合いだと思うが?」
愛刀片手にゆっくりとラゴウに近づいて行く
みんなじっとその場から動かない
ジュディスの手を握りつつそれを見守る
…ふと、後ろから見られているような視線を感じた
なんとなく、本当になんとなく振り向くと、見たことのない、不思議な髪の色をした男がいた
「………誰………?」
ボソッと呟くとジュディスも気づいて振り向くが
「……邪魔だ」
「っ!?」
素早くジュディスの懐に入ると、その男はいとも容易くジュディスを吹っ飛ばす
「くっ……!」
「何…っ!?」
フレンが壁に激突する前にジュディスを受け止めたが、今の問題はそこじゃない
「こっちに来い」
そう言って男に腕を掴まれる
「…っ!いやっ…!!」
振り払おうとするが、所詮男女の差がある
振り解けるほど私の力は強くない
「アリシアっ!」
「動くなよ?動いたらこの女、グサリだぜ?」
ラゴウによく似た人を嘲笑うような声
突き付けられた刃はヒヤッとしている
それは、キュモールの時と同じで
忘れかけていた恐怖が幾つも頭の中に反響する
「遅いですよ、ザギ。まぁ、デュークよりはマシな働きですね」
ニヤニヤと、勝ち誇ったような笑みを浮かべるラゴウ
デュークさんもこれは計算外だったらしく、唖然としている
「てめぇ……っ!」
「本当はこんな事はしたくないのですがねぇ」
怒りに満ちているユーリの前でも平然としていられるのは、私があいつの手の中だからだろう
「私を評議会に戻しさえすれば彼女に危害は加えませんよ。ただし、あなた様の元へ返したら即極刑が下されそうなので、返せませんがね」
ケラケラと笑う姿は、あの時と同じだ
…私が、ここにいる以上ユーリ達は手が出せない
無力な自分に嫌気がさす
いつもいつも守られてばかりで…
こんな時、足でまといでしかない
…あの時、無理にでもユーリの傍に居るべきだったんだ
後悔したって遅い
「さぁ?どう致しますか魔王様?このまま黙っていらっしゃっても、彼は少々気が荒いのでね、殺してしまうかもしれませんよ?」
「くっ………!」
確かに少しずつだが、剣先が喉に刺さりかけている
……どうしたらいいの……
「ウゥゥゥ……っ!ワンッ!」
考えていると、不意にリンクの鳴き声が聞こえた
「いってぇぇぇっ!?このっ!クソ犬がぁ!」
突然、リンクがザギと呼ばれた男の腕に噛み付いた
呆気に取られていると、一瞬目のあったリンクが何かを訴えていた
その目を見て、はっと思い出す
右の太もも、デュークさんがラゴウを探しに行く前、護身用と言って渡してきた短剣を隠していたことを
ユーリとフレンはもちろん知ってるけど、絶対にお前にそれを使わせないって何度も言われた
「キャンッ!!?」
「っ!!リンクっ!!」
ザギに後ろへ吹っ飛ばされてしまったリンクを間一髪ラピードが受け止めてが、かなり状況はやばい
私を片手で捕らえたままラピードとリンクに剣技を放ちまくっている
「おやおや、このままだと彼女に矛先が剥きそうですねぇ」
「…っ!!!」
「くっ……ユーリ……もう……」
ユーリもフレンも悔しそうに手を握っている
他のみんなもラゴウに向かって睨みつけている
……ただ一人、デュークさんを除いて
デュークさんは私をただじっと見つめている
…理由なんて分かってる
どうしたらいいかなんてわかってる
ただ、それをする勇気がないのだ
自分が人を傷つけるのが怖いのだ
そうしなければ助からないのに…
ユーリを見つめると少しだけ目線があった
何かを、短い間に訴えるように
ラゴウからどう見えているかわからないけど
私から見えるユーリは何処か申し訳なさそうな雰囲気で
でも、はっきりと、私を一瞬でも見据えていて
……うん、そうだよね
何があったとしても、きっとユーリは傍に居てくれる
私が悪いだなんて、本当に私が悪いことしない限り言わない
仕方なかったんだって
当然の報いだって
苦笑いしながら言ってくるんだろうな
ザギに気付かれないように、そっと短剣を抜き取る
右手は視覚、ラゴウには見えない
ふとフレンと目があい、小さく頷いてきた
その反応に顔を俯かせてバレないように微笑む
多分、フレン達のとこに行ったら腰抜かしそうだけど
今だけ、私に勇気を頂戴…
後で思いっきり甘えるし、ちゃんと謝るから
「………ごめんなさい………」ボソッ
小声で、謝って短剣を彼の腹部に突き刺した
「ぐぁぁぁぁっ!?!!」
捕まれてる腕が緩んだ隙に思いっきり突き飛ばして、フレン達の方へ駆け出す
ザギの叫ぶ声と共に、フレンが私の方へ腕を伸ばす
フレン目掛けて思いきり、これでもかってくらい腕を伸ばす
フレンと手が触れた瞬間、とんでもないくらいの力で引き寄せらせた
「っ!!ユーリっ!!」
私を抱きかかえたまま、ラゴウとザギから距離をとると、ユーリだけでなく他のみんなも一斉にザギとラゴウ目掛けて技や術を繰り出す
……あの…ちょっと…派手過ぎじゃないですかね……?
散々二人をボッコボコにした後、ユーリは鋭い目でラゴウを睨みつける
「……とりあえずこんだけで終わりにしてやる。てめぇの処分は後で考える」
「じゃ、独房突っ込んで置くわ」
「ついでにこっちも入れときましょ」
ジュディスはザギの首根っこを持ち上げながらいう
「だね。また暴れられても面倒だし」
そう言って三人はザギとラゴウを連れて(引きずって)玉座の間を後にする
「そういや、ワンコ達は?」
「あっ!リンク!ラピード!!今治しますからね」
リタとエステルはリンクとラピードの方に向かう
「……アリシア、行っておいで?」
そっとユーリの方を指指してフレンは言う
「……ん、そうするね!」
そう言ってフレンの元を離れる
「ユーリ…っ!!」
ぼーっと自身の手を見つめて突っ立っているユーリ目掛けて飛び込む
「ん…!?おわっ!?…はぁ…アリシア…いつになったら急に飛びつく癖、直してくれんだよ」
そう言いながらも腰に手をまわしてくる
多少バランスを崩したけど、それでも倒れこまないところがユーリらしい
背中に手をまわしてぎゅっと服を掴む
…あぁ…駄目だ…ユーリの傍に居ると我慢してた感情が一気に溢れてくる
少しだけ肩が震え出す
「アリシア?」
「…………た…………」
「?」
「…こわ……かっ…た……っ」
「っ!!アリシア…」
ユーリの抱きしめてくる腕にも力が入った
ユーリの腕の中でめいいっぱい泣いた
私には重かった、恐怖の中、別の怖さが襲いかかってくる感覚が
それでも、あの時行動出来たのはきっと、こうして泣けるところがあるから
受け止めてくれる人がいるから
だから、今はたくさん甘えさせて…?
……こんな事なくても、君はたくさん甘えさせてくれると思うけどね…
ー翌日ー
「アリシア、絶っっ対!勝手に出歩くなよっ!?」
「もう……わかったから…」
ふぅ……っとため息をつく
今朝からこの会話の繰り返しだ
今いるのはユーリの執務室の隣の書庫
今回のことで心配性をこじらせたユーリが、すぐに駆けつけられるようにと彼が執務中はここにいることになった
まぁ、それは構わないんだけど…
何度も何度も同じことを言われ、そろそろ鬱陶しくなってきた
一人で出歩かないって言ってるのに聞かないし…
「ユーリ……いい加減戻って来てくれないか……?」
執務室から繋がっている扉の前でフレンが呆れた顔をしている
それもそうだろう
かれこれ小一時間、ずっとこんな状態なんだから
「あのね、ユーリ…これじゃ私が何処にいても変わらないでしょ?はい、執務して来るっ!」
コツンと軽くユーリの頭を叩いて読みかけていた本を手に取る
「…本当、マジでここ居てくれよ…?」
「わかったから…」
何度か振り向いた後、ようやく執務室へ戻った
(心配してくれるのは嬉しいんだけど、心配しすぎなのよね……)
苦笑いしながら執務室へ続く扉を見た
とりあえずやることもないから読みかけていた本の続きを読もう
ーーーーーーーー
「……暇」
机に突っ伏してボソッ呟く
本は読み切ったし、ここの部屋のものは動けなかった時に全て読んでしまっている
もういっそのこと勝手に出ていこうかと思ったが、絶対それやったら怒られるじゃ済まない
この部屋には執務室に繋がる扉以外に、廊下に繋がる扉もある
そっちの扉は護衛が一人居るだけなのだが…
出て行ったらすぐわかるだろう
だからといって流石に暇すぎる
「むぅ………」
もうこうなったらユーリのところに行ってしまおうか
でも流石にそれはなぁ……
なんて考えながら本棚を眺めていると、一番上に置いてある本に目がいった
あれだけは読んだ記憶がない
側にあった脚立を登って、その本を手に取ると見たことのない文字が書いてあった
「……?」
試しに一ページ捲ってみると、家でよく読んでいた人間界の風景画と似たような絵が書かれていた
「……!これ……人間が書いたのかな……?」
もう一ページ捲るとまた見たことない文字がぎっしり書いてある
何が書かれているかはわからないけど、これは日記……?
かろうじて年号と、後ろにあった紋章だけは読めた
「『アスール歴二百四十』…?それと、人間界の王家の紋章…?」
アスール歴は千年前まで使われていた暦らしい
今は使われてないようだが……
それと、王家の紋章
これはアスール歴が終わった年に作られたものらしい
「……なんでこんなものあるんだろ……?」
でもこれ、読めたらちょっと面白そう
文字の形状自体は似ているし、頑張れば読めそう
「ん、とりあえず……どうやって降りよ……」
登ったはいいが降りれないことを思い出した
しかも結構高いとこだし飛び降りるに飛び降りれない
……ユーリ呼ぶ……?
いや、怒られて終わりだからそれは却下
じゃあフレン……いや、それも怒られるな…
ここは無難にレイヴン……
……いや、そもそも人を呼ぶ術がない
叫べば聞こえるだろうけど真っ先にユーリが吹っ飛んでくるのが目に見えている
時計を見るともう十一時を指している
正午になったらユーリ来るじゃん……
どーしようか……
「……えーっと、何しているんだい?アリシア…」
「っ!フ、フレン……」
廊下側の扉からフレンが入ってきた
タイミングがいいと言えばいいし、悪いと言えば悪い
「まさかとは思うけど…上の方の本を取ろうとして降りれなくなった…とかじゃないだろうね?」
「……ごもっともです……」
はぁ……とため息をついて、脚立の近くまで来る
「アリシア、ちょっと危ない事するけど叫ばないでね」
「?う、うん?」
そう返事をするとフレンは脚立の足を倒す
「……へ?」
まぁ、当然だけど落下しますよね…!?
「……っ!?」
叫ばないって言ったけどこれちょっと無理が……っ!!!
「おっ…と」
「……あ…れ?」
「大丈夫かい?」
床と激突…かと思ったらフレンが片手で私を受け止めて、反対の手で脚立を止めていた
「あ…う、うん、大丈夫だよ…ありがとうフレン……でも流石にあれは怖いよ………」
そう言ってフレンから離れる
「あれくらいしないと危険度がわからないかと思ってね。それと、この脚立は片付けさせて貰うね」
笑顔だけど、目は笑ってない
そんなことしなくてもわかったから……
「う、うん…」
「フレン?なんかあったか?」
ガチャッと執務室の扉が開いてユーリが入ってくる
「何でもないよ、アリシアが本棚の上の方の本を脚立取ろうと脚立使おうとしていたから、代わりに取ってあげただけさ」
「なっ!呼んでくれりゃよかったのに」
「…………人が多いとこに1人で入って来いって、言うの……?」
本を抱えてながら少し不機嫌に言う
すると、あ…悪ぃ…と謝ってきた
「んで、なんの本だよ、それ」
「さぁ?僕も表紙を見たけど程度だけど、少し文字が違うみたいだね」
「あん?んな本あったか?」
ちょい見せてみ?と言って本を取る
「……確かに見たことねぇ文字だな」
「形状は僕らが使ってるものと酷似しているけどね」
フレンとユーリは二人してなんて読むかと話している
まぁ、気になるよね…
「にしても、なんでこの本が気になったんだい?」
フレンは私の方を向いて聞いてきた
「え?お城に来てから読んだ記憶がなかったからっていうのと……実家にいた時によく読んでいた人間界の風景画の本とよく似ていたから、ちょっと気になって」
「あー、なるほどな」
パタンと本を閉じて渡してくれる
「でもよ、それ読めんのか?」
「へ?だって、文字の形状自体は似ているんだから読めないことはないと思うけど…」
時間かかりそうだけどね、と苦笑いする
「そんなに読みたいのかい?」
「…だって、暇なんだもん、やること無くて」
そう言うと、あぁ……と息ぴったり言った二人だった
ー一週間後ー
「青年!青年!せーいーねーんー!!!」
「だぁぁっ!うるっせぇっ!レイヴンっ!」
バンッ!!!
「!?な、何何何何っ!?」
執務室横の書庫で、先週見つけた日記の解読をしていると、レイヴンがユーリを呼ぶ声と、それにキレるユーリの声と、何がぶつかった音が聞こえた
余り気は進まないけど、執務室の扉を開けて中に入る
「ユーリっ!?今の音……っ!?」
入ってすぐに目の前に広がる現場を見て状況を把握した
はぁ…とため息をついてスタスタとユーリの傍に行く
「…ユーリ?」
「っ!?あ…アリシア……あー………えっと、だな?」
私を見るなり、しまった!という顔をして慌て始める
「言い訳はいらないよ?ユーリ、幾らレイヴンが叫んで何度も呼んでるからってさ?ここまでする必要なかったよね?」
ユーリの目線の先には、思いっきり殴られた挙句、壁に激突したと思われるレイヴンが倒れていた
……壁ヒビ入ってるんだけど……
「…はい……」
「…アリシア……ちゃん………青年の説教………する前に………嬢ちゃんを…………」ガクッ
「!?エ、エステリーゼ様ーっ!!!」
レイヴンが完全にダウンするとフレンが急いでエステルを呼びに行った
「…はい、じゃあユーリ?ちょっとそこに座ろっか?」
ニコッと笑顔で言う
……ここが執務室なのも忘れてフレンがエステルを連れて来るまでずっとユーリに説教していた……
ーーーーーーーー
「…嬢ちゃんありがとう…マジでおっさん死ぬかと思ったわよ…」
エステルのおかげでレイヴンはなんとか復活し、今私達は揃って玉座の間にいる
…百歩譲ってそれはいいんだけど、ユーリの隣のこの席に座っているのは違和感しかない
「それで、レイヴン。なんでユーリのこと呼びまくってたの?」
「そうそう!聞いてよ!おっさんを褒めてよ!ラゴウの奴の居場所見っけた上に取っ捕まえたのよ!」
「っ!?」
ものすごい勢いでユーリは立ち上がった
私や他の人達は唖然としている
あの見つからなかったラゴウが、こうも簡単に捕まったのだ
そりゃ驚くだろう
「あー、まぁ、デュークのあんちゃんのおかげでもあるんだけど…」
と、少し気まづそうに言うが、そんなの些細な問題だ
「…レイヴン、連れて来い」
「はいよん~」
そう言ってレイヴンはそそくさと出て行った
「ラゴウ、かなりの悪人だよ」
「誘拐、強盗、市民虐殺、オマケにアリシアの両親に掛けた領地横領の本当の犯人よ、あいつ」
「…っ!!!」
「それに、監禁と脅迫未遂、だね」
「…あぁ」
ユーリの手に力が入っているのがわかる
私は何も言えないで俯く
少し体が震える
忘れかけていた恐怖が、すぐ近くまで来ている
怖い、逃げ出してしまいたい程に
周りにはみんなが居ることなんてわかっている
それでも、怖いのだ
「…アリシア、あなたは無理してそこに居るべきではないと思うわ」
ジュディスの声にはっとして顔をあげると、みんなが心配そうにしているのが見えた
「で……でも………」
怖くても、私はユーリと結婚した時に王妃になったのだ
だから…簡単に離れていいのかと躊躇していると
「…アリシア、おいで?」
不意にユーリに手招きされた
「……?」
疑問に思いつつもユーリの傍へ行くと
「わっ…!?」
「よっと」
ユーリに引っ張られて、膝の上に乗せられてぎゅっと抱きしめられる
「ラゴウ来るまでここ居りゃ大丈夫だろ?あいつが来たらジュディんとこ逃げろ」
「………うん…」
ごめんね……ユーリ……
まだ、立場がどうのよりも恐怖の方が強いみたい
ギュッとユーリにしがみつく
「ふふ、本当に仲が良いですね」
「…ちょっとうらやましいね」
エステルとカロルがそんな会話をしているのが聞こえた
「ヴゥゥゥゥ~っ!」
「ガルルルル…っ!」
突然、リンクとラピードが扉のほうに向かって威嚇を始めた
「…来たか。ジュディ、アリシア頼む」
「えぇ、任せて。さ、こっちに行きましょ?」
頷いて答える
ジュディスと一緒にみんなから少し離れたところに行くと、ほぼ同時に扉が開いた
ギィィィ……
「せーいねーんっ!連れてきたわよ~ん!ほら、ちゃっちゃか歩くっ!」
ちょっと楽しそうにしながらレイヴンはラゴウを連れてきた
私が見た時の仮面はつけていなくて、しわがれた老人の顔がそこにはあった
『この顔』は知らない、だからまだ平気だった
「おやおや、皆様お揃いですね」
「……っ!!!!」
…この声を、聞くまでは
「…なんでここに連れてこられてっか、理由くらいわかってんだよな?」
冷ややかな声でユーリは言うが、ラゴウは何処か余裕そうにしている
「はて?なんのことでしょうか?」
「領地横領及びその罪をラグナロク家に押し付け、ありもしない証言をした偽証罪、貴族街に住む女性を誘拐した誘拐罪、そして監禁罪、更にはユーリ…魔王に脅迫しようと企てていたことから脅迫未遂、以上があなたに出ている罪状です。既に証拠と証人も揃っています」
淡々とフレンもまた険悪な雰囲気を出しつつ言う
「…!?なんですって?」
「あんたに雇われてたデュークが全部話してくれたぜ?」
「っ!!デューク!裏切るのですか!」
「…元々、お前に忠誠を誓った覚えなどない」
デュークさんも初めて私と話していた時よりも冷たい声で言う
「くっ……!完璧な筈だったというのに…!!」
「さてと…オレ的にゃ極刑がお前にはお似合いだと思うが?」
愛刀片手にゆっくりとラゴウに近づいて行く
みんなじっとその場から動かない
ジュディスの手を握りつつそれを見守る
…ふと、後ろから見られているような視線を感じた
なんとなく、本当になんとなく振り向くと、見たことのない、不思議な髪の色をした男がいた
「………誰………?」
ボソッと呟くとジュディスも気づいて振り向くが
「……邪魔だ」
「っ!?」
素早くジュディスの懐に入ると、その男はいとも容易くジュディスを吹っ飛ばす
「くっ……!」
「何…っ!?」
フレンが壁に激突する前にジュディスを受け止めたが、今の問題はそこじゃない
「こっちに来い」
そう言って男に腕を掴まれる
「…っ!いやっ…!!」
振り払おうとするが、所詮男女の差がある
振り解けるほど私の力は強くない
「アリシアっ!」
「動くなよ?動いたらこの女、グサリだぜ?」
ラゴウによく似た人を嘲笑うような声
突き付けられた刃はヒヤッとしている
それは、キュモールの時と同じで
忘れかけていた恐怖が幾つも頭の中に反響する
「遅いですよ、ザギ。まぁ、デュークよりはマシな働きですね」
ニヤニヤと、勝ち誇ったような笑みを浮かべるラゴウ
デュークさんもこれは計算外だったらしく、唖然としている
「てめぇ……っ!」
「本当はこんな事はしたくないのですがねぇ」
怒りに満ちているユーリの前でも平然としていられるのは、私があいつの手の中だからだろう
「私を評議会に戻しさえすれば彼女に危害は加えませんよ。ただし、あなた様の元へ返したら即極刑が下されそうなので、返せませんがね」
ケラケラと笑う姿は、あの時と同じだ
…私が、ここにいる以上ユーリ達は手が出せない
無力な自分に嫌気がさす
いつもいつも守られてばかりで…
こんな時、足でまといでしかない
…あの時、無理にでもユーリの傍に居るべきだったんだ
後悔したって遅い
「さぁ?どう致しますか魔王様?このまま黙っていらっしゃっても、彼は少々気が荒いのでね、殺してしまうかもしれませんよ?」
「くっ………!」
確かに少しずつだが、剣先が喉に刺さりかけている
……どうしたらいいの……
「ウゥゥゥ……っ!ワンッ!」
考えていると、不意にリンクの鳴き声が聞こえた
「いってぇぇぇっ!?このっ!クソ犬がぁ!」
突然、リンクがザギと呼ばれた男の腕に噛み付いた
呆気に取られていると、一瞬目のあったリンクが何かを訴えていた
その目を見て、はっと思い出す
右の太もも、デュークさんがラゴウを探しに行く前、護身用と言って渡してきた短剣を隠していたことを
ユーリとフレンはもちろん知ってるけど、絶対にお前にそれを使わせないって何度も言われた
「キャンッ!!?」
「っ!!リンクっ!!」
ザギに後ろへ吹っ飛ばされてしまったリンクを間一髪ラピードが受け止めてが、かなり状況はやばい
私を片手で捕らえたままラピードとリンクに剣技を放ちまくっている
「おやおや、このままだと彼女に矛先が剥きそうですねぇ」
「…っ!!!」
「くっ……ユーリ……もう……」
ユーリもフレンも悔しそうに手を握っている
他のみんなもラゴウに向かって睨みつけている
……ただ一人、デュークさんを除いて
デュークさんは私をただじっと見つめている
…理由なんて分かってる
どうしたらいいかなんてわかってる
ただ、それをする勇気がないのだ
自分が人を傷つけるのが怖いのだ
そうしなければ助からないのに…
ユーリを見つめると少しだけ目線があった
何かを、短い間に訴えるように
ラゴウからどう見えているかわからないけど
私から見えるユーリは何処か申し訳なさそうな雰囲気で
でも、はっきりと、私を一瞬でも見据えていて
……うん、そうだよね
何があったとしても、きっとユーリは傍に居てくれる
私が悪いだなんて、本当に私が悪いことしない限り言わない
仕方なかったんだって
当然の報いだって
苦笑いしながら言ってくるんだろうな
ザギに気付かれないように、そっと短剣を抜き取る
右手は視覚、ラゴウには見えない
ふとフレンと目があい、小さく頷いてきた
その反応に顔を俯かせてバレないように微笑む
多分、フレン達のとこに行ったら腰抜かしそうだけど
今だけ、私に勇気を頂戴…
後で思いっきり甘えるし、ちゃんと謝るから
「………ごめんなさい………」ボソッ
小声で、謝って短剣を彼の腹部に突き刺した
「ぐぁぁぁぁっ!?!!」
捕まれてる腕が緩んだ隙に思いっきり突き飛ばして、フレン達の方へ駆け出す
ザギの叫ぶ声と共に、フレンが私の方へ腕を伸ばす
フレン目掛けて思いきり、これでもかってくらい腕を伸ばす
フレンと手が触れた瞬間、とんでもないくらいの力で引き寄せらせた
「っ!!ユーリっ!!」
私を抱きかかえたまま、ラゴウとザギから距離をとると、ユーリだけでなく他のみんなも一斉にザギとラゴウ目掛けて技や術を繰り出す
……あの…ちょっと…派手過ぎじゃないですかね……?
散々二人をボッコボコにした後、ユーリは鋭い目でラゴウを睨みつける
「……とりあえずこんだけで終わりにしてやる。てめぇの処分は後で考える」
「じゃ、独房突っ込んで置くわ」
「ついでにこっちも入れときましょ」
ジュディスはザギの首根っこを持ち上げながらいう
「だね。また暴れられても面倒だし」
そう言って三人はザギとラゴウを連れて(引きずって)玉座の間を後にする
「そういや、ワンコ達は?」
「あっ!リンク!ラピード!!今治しますからね」
リタとエステルはリンクとラピードの方に向かう
「……アリシア、行っておいで?」
そっとユーリの方を指指してフレンは言う
「……ん、そうするね!」
そう言ってフレンの元を離れる
「ユーリ…っ!!」
ぼーっと自身の手を見つめて突っ立っているユーリ目掛けて飛び込む
「ん…!?おわっ!?…はぁ…アリシア…いつになったら急に飛びつく癖、直してくれんだよ」
そう言いながらも腰に手をまわしてくる
多少バランスを崩したけど、それでも倒れこまないところがユーリらしい
背中に手をまわしてぎゅっと服を掴む
…あぁ…駄目だ…ユーリの傍に居ると我慢してた感情が一気に溢れてくる
少しだけ肩が震え出す
「アリシア?」
「…………た…………」
「?」
「…こわ……かっ…た……っ」
「っ!!アリシア…」
ユーリの抱きしめてくる腕にも力が入った
ユーリの腕の中でめいいっぱい泣いた
私には重かった、恐怖の中、別の怖さが襲いかかってくる感覚が
それでも、あの時行動出来たのはきっと、こうして泣けるところがあるから
受け止めてくれる人がいるから
だから、今はたくさん甘えさせて…?
……こんな事なくても、君はたくさん甘えさせてくれると思うけどね…