ひとりごと
さぁ 呑んで呑んで
2024/12/08 23:01恋薬
「自分でも分かっているんだ。なのに私はなぜこんなに……」
机に突っ伏したレオナールが、グズグズと鼻を鳴らす。この男はこうして顔を合わせて飲む度に情けない姿を晒すのだが、酒の力とは恐ろしいもので何度同じ話題をループしようとも全くもって飽きさせないのである。見栄っ張りな一面を持つ旧友の赤裸々な告白はどんな肴より旨い。
「だから言ってるだろう、お前さんのそのありのままの気持ちを一度伝えてみろ。何かが変わるかもしれん。変わらなくとも、胸の内は少しは軽くなるだろうよ」
「軽くなるのは私の心だけだ。姫には関係ない。こんな……、自分でもワケの分からない気持ちをいきなり告げられたら姫だって困るに決まってる」
「そりゃぁ多少は困るかもしれんが、あの姫のことだ。すぐに自分なりの答えをだしてくるさ」
「私にはその答えを聞く勇気がない」
「勇気がない~!?腑抜けたもんだなぁ、レオナール。昔の威勢の良さはどこにいったんだ」
睡魔は何百年も生きた大の男の小さく丸まった背中を叩いた。右を向けと言えば左を向き、前を向けと言えば後ろを向く。危ない橋を『俺なら出来る!』と意気込んで渡り、自ら墓石になっていた過去はついこの間の記憶のように思えるが、牙の抜けた男のなんと情けないことか。
好きと言えと言ってるのではない。愛を語れと言ってるのでもない。今の自分の気持ちを伝えろと言っているのだが、何をそんなに躊躇う必要があるのだろう。
「いつも寝てばかりのお前には分からないよ」
「うん?」
不意にレオナールが落とした言葉に、睡魔の手が止まる。
「お前、他人に強い想いを抱いたこと、あるのか?」
「強い想い?」
「私みたいに気が触れそうなほど、他人に興味や関心を抱いた事があるのかと聞いてるんだ」
「それは女にか?」
「女でも男でもいいよ。胸が苦しくなるほど人に気を取られたこと、ないだろう?」
レオナールはやれやれと吐き捨てるように言い、手元の酒をぐっと飲み干した。
「もしあれば、そうそう軽口は叩けないと思うぞ」
「人のアドバイスを軽口とは言うじゃないかレオ。俺にだってひとりやふたり……」
ひとりやふたり──…、
指折り数えようと持ち上げた手が固まる。
魔王であったウシミツに対しては尊敬の念はあれど、度を越すような反応をした覚えなどない。他より親密なレオナールにだってこの通り。なんてことはない。つまり、折る指がないのだ。
「おや~?」
自然と、眉間にシワがよる。翠色の双眸は折れない指をまじまじと見つめた。

「ないな」
「そらみろ」
言われてみれば、レオナールやあの男のように『恋』をしたことがなかった。暇な時に本は読むので知識はあれど、体感としては皆無であった。しいて言うなら、自分のときめきは全て「睡眠」に持っていかれているといっても過言ではない。「睡眠に恋している」、実にいい響きだ。
──────
今日はここまで.
これ、睡あくになるのかな…?
机に突っ伏したレオナールが、グズグズと鼻を鳴らす。この男はこうして顔を合わせて飲む度に情けない姿を晒すのだが、酒の力とは恐ろしいもので何度同じ話題をループしようとも全くもって飽きさせないのである。見栄っ張りな一面を持つ旧友の赤裸々な告白はどんな肴より旨い。
「だから言ってるだろう、お前さんのそのありのままの気持ちを一度伝えてみろ。何かが変わるかもしれん。変わらなくとも、胸の内は少しは軽くなるだろうよ」
「軽くなるのは私の心だけだ。姫には関係ない。こんな……、自分でもワケの分からない気持ちをいきなり告げられたら姫だって困るに決まってる」
「そりゃぁ多少は困るかもしれんが、あの姫のことだ。すぐに自分なりの答えをだしてくるさ」
「私にはその答えを聞く勇気がない」
「勇気がない~!?腑抜けたもんだなぁ、レオナール。昔の威勢の良さはどこにいったんだ」
睡魔は何百年も生きた大の男の小さく丸まった背中を叩いた。右を向けと言えば左を向き、前を向けと言えば後ろを向く。危ない橋を『俺なら出来る!』と意気込んで渡り、自ら墓石になっていた過去はついこの間の記憶のように思えるが、牙の抜けた男のなんと情けないことか。
好きと言えと言ってるのではない。愛を語れと言ってるのでもない。今の自分の気持ちを伝えろと言っているのだが、何をそんなに躊躇う必要があるのだろう。
「いつも寝てばかりのお前には分からないよ」
「うん?」
不意にレオナールが落とした言葉に、睡魔の手が止まる。
「お前、他人に強い想いを抱いたこと、あるのか?」
「強い想い?」
「私みたいに気が触れそうなほど、他人に興味や関心を抱いた事があるのかと聞いてるんだ」
「それは女にか?」
「女でも男でもいいよ。胸が苦しくなるほど人に気を取られたこと、ないだろう?」
レオナールはやれやれと吐き捨てるように言い、手元の酒をぐっと飲み干した。
「もしあれば、そうそう軽口は叩けないと思うぞ」
「人のアドバイスを軽口とは言うじゃないかレオ。俺にだってひとりやふたり……」
ひとりやふたり──…、
指折り数えようと持ち上げた手が固まる。
魔王であったウシミツに対しては尊敬の念はあれど、度を越すような反応をした覚えなどない。他より親密なレオナールにだってこの通り。なんてことはない。つまり、折る指がないのだ。
「おや~?」
自然と、眉間にシワがよる。翠色の双眸は折れない指をまじまじと見つめた。

「ないな」
「そらみろ」
言われてみれば、レオナールやあの男のように『恋』をしたことがなかった。暇な時に本は読むので知識はあれど、体感としては皆無であった。しいて言うなら、自分のときめきは全て「睡眠」に持っていかれているといっても過言ではない。「睡眠に恋している」、実にいい響きだ。
──────
今日はここまで.
これ、睡あくになるのかな…?
