短編(sss)
─────
rainy day
─────
ソファーに気の抜けた身体を預け、ぼんやりと天井を見上げていると、ひょっこりと紫苑が上からのぞき込んできた。
「どうしたんだネズミ。やけに暇そうにしてるじゃないか」
「『暇そう』じゃなくて、暇」
ネズミは見下ろす紫苑の額を小突いた。
雨の日の今日に限って仕事は休み。紫苑も犬洗いの手伝いなんかできない。二人揃って朝から地下室に籠もりっぱなしだった。
紫苑は暇になれているのか小ネズミと戯れたり、本を読んだり、掃除をしてみたり。とにかく何かしら行動している。対照的にネズミはソファーやらベッドやらでごろごろとしているだけだ。だらけるネズミの横に笑顔の紫苑が座る。
「する事がないなら僕に舞台をみせてくれ」
「金貨三枚」
「高!」
「仕事じゃないとしないから」
天井を見上げる姿勢はそのままに、ネズミは口を開いた。
「あんたが演じてくれよ」
「無理だ」
「やってみないとわからないだろ」
「わかる。君に笑われて終わるのが目に見えてる」
「笑わないさ」
「じゃぁ金貨三枚」
「あんたの演技に?法外だな」
ネズミが笑う。身体を起こし背伸びをした。ふっと力を抜いたと思ったら、紫苑に寄りかかり目を閉じた。
「なぁ紫苑」
「ん?」
「時間有り余ってるし、運動する?」
「ダンスの事かい?」
「なわけないだろ」
ネズミは見当違いの返事に不満げに歪んだ顔を上げ、紫苑に詰め寄る。迫る影が顔にかかり、驚いて瞬きをする一瞬に口を塞がれた。
「─ッ、ン」
片寄る重量に古びたソファーが軋む。その音に反応して、紫苑はネズミの衣服をぎゅっと握り目を瞑った。
紫苑の顎に手をかけ顔を上に向かせる。唇をついばみ舐めてやると、乾いた紅唇がネズミの唾液でぬりたくられ滑りが良くなった。優しく、それでもって ねっとりと愛撫する。かたくなに閉ざしていた唇は次第に開き、その口内への侵入を許した。
力の抜けた身体を押し倒し、覆い被さる。尚も続く接吻に紫苑は酸素を求め息を洩らした。互いの唾液の混ざる音が耳に入り、徐々に舌先の感度が上がる。度々角度を変えながら咥内を貪り、絡めとられ、与えられる甘い痺れに意識がふやけていった。
ネズミの手が衣服の下に隠された白い肌に触れる。瞬間、紫苑の肩がピクリと跳ね、慌ててネズミの身体を押し返す。
「なんだよ。イイところだったのに」
ネズミが口を尖らせる。唇が離れ、呼吸が楽になった紫苑は大きく息を吸った。
「こ、ここじゃ嫌だ。ベッド!せめてベッドだろ」
顔を紅くしたままの紫苑はソファーをバンバン叩き、その固さを訴える。
「あー、はいはいはい。ではアチラへお運びしましょうお姫様」
空気の読めない相手に多少の苛立ちを込めて言う。ネズミは立ち上がり、力任せに紫苑を抱き上げその顔を見た。不服なのは一緒だと言わんばかりに、大きな瞳もコチラを見ていた。
「場所なんて関係ないだろ」
「大ありだ。腰が痛くなる」
「じゃぁ終わったらマッサージしてやる」
「そう言ってしてくれた事無いじゃないか」
「そうだっけ」
「そうだよ」
「じゃ、今から全身マッサージしてやる」
目を細め、ニヤリと口の端を上げて笑う。ベッドに紫苑を降ろしその身体に跨がった。緊張している彼の顔に掛かった白髪を払いのけ、頬にある紅い蛇行跡にキスをする。紫苑はネズミの手に指先を絡め、ゆっくりと目を瞑った。
END.
(憂鬱な雨の日も君となら)
rainy day
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ソファーに気の抜けた身体を預け、ぼんやりと天井を見上げていると、ひょっこりと紫苑が上からのぞき込んできた。
「どうしたんだネズミ。やけに暇そうにしてるじゃないか」
「『暇そう』じゃなくて、暇」
ネズミは見下ろす紫苑の額を小突いた。
雨の日の今日に限って仕事は休み。紫苑も犬洗いの手伝いなんかできない。二人揃って朝から地下室に籠もりっぱなしだった。
紫苑は暇になれているのか小ネズミと戯れたり、本を読んだり、掃除をしてみたり。とにかく何かしら行動している。対照的にネズミはソファーやらベッドやらでごろごろとしているだけだ。だらけるネズミの横に笑顔の紫苑が座る。
「する事がないなら僕に舞台をみせてくれ」
「金貨三枚」
「高!」
「仕事じゃないとしないから」
天井を見上げる姿勢はそのままに、ネズミは口を開いた。
「あんたが演じてくれよ」
「無理だ」
「やってみないとわからないだろ」
「わかる。君に笑われて終わるのが目に見えてる」
「笑わないさ」
「じゃぁ金貨三枚」
「あんたの演技に?法外だな」
ネズミが笑う。身体を起こし背伸びをした。ふっと力を抜いたと思ったら、紫苑に寄りかかり目を閉じた。
「なぁ紫苑」
「ん?」
「時間有り余ってるし、運動する?」
「ダンスの事かい?」
「なわけないだろ」
ネズミは見当違いの返事に不満げに歪んだ顔を上げ、紫苑に詰め寄る。迫る影が顔にかかり、驚いて瞬きをする一瞬に口を塞がれた。
「─ッ、ン」
片寄る重量に古びたソファーが軋む。その音に反応して、紫苑はネズミの衣服をぎゅっと握り目を瞑った。
紫苑の顎に手をかけ顔を上に向かせる。唇をついばみ舐めてやると、乾いた紅唇がネズミの唾液でぬりたくられ滑りが良くなった。優しく、それでもって ねっとりと愛撫する。かたくなに閉ざしていた唇は次第に開き、その口内への侵入を許した。
力の抜けた身体を押し倒し、覆い被さる。尚も続く接吻に紫苑は酸素を求め息を洩らした。互いの唾液の混ざる音が耳に入り、徐々に舌先の感度が上がる。度々角度を変えながら咥内を貪り、絡めとられ、与えられる甘い痺れに意識がふやけていった。
ネズミの手が衣服の下に隠された白い肌に触れる。瞬間、紫苑の肩がピクリと跳ね、慌ててネズミの身体を押し返す。
「なんだよ。イイところだったのに」
ネズミが口を尖らせる。唇が離れ、呼吸が楽になった紫苑は大きく息を吸った。
「こ、ここじゃ嫌だ。ベッド!せめてベッドだろ」
顔を紅くしたままの紫苑はソファーをバンバン叩き、その固さを訴える。
「あー、はいはいはい。ではアチラへお運びしましょうお姫様」
空気の読めない相手に多少の苛立ちを込めて言う。ネズミは立ち上がり、力任せに紫苑を抱き上げその顔を見た。不服なのは一緒だと言わんばかりに、大きな瞳もコチラを見ていた。
「場所なんて関係ないだろ」
「大ありだ。腰が痛くなる」
「じゃぁ終わったらマッサージしてやる」
「そう言ってしてくれた事無いじゃないか」
「そうだっけ」
「そうだよ」
「じゃ、今から全身マッサージしてやる」
目を細め、ニヤリと口の端を上げて笑う。ベッドに紫苑を降ろしその身体に跨がった。緊張している彼の顔に掛かった白髪を払いのけ、頬にある紅い蛇行跡にキスをする。紫苑はネズミの手に指先を絡め、ゆっくりと目を瞑った。
END.
(憂鬱な雨の日も君となら)
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