短編(sss)
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僕は君を思いながら今を生きています
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暗闇の中、目が覚めた。光の入らない地下室は人の手で灯りをつけない限り朝でも夜でも真っ暗だ。しかし毎日暮らしていれば馴れてくるもので、物の形や位置。そして隣で眠る彼の表情までもよく見える。
どの角度からいつ見ても、やっぱりネズミの顔は綺麗で美しい。綺麗とか美しいだなんて本来女の人に使うべき言葉なんだろうけど、ネズミに対してはきっと誰もが口にしてしまうのではないだろうか。思わず見惚れてため息が出るなんて事はしょっちゅうだ。
加えて高い身長とバランスのとれた体格、滑らかな手に長い指、光に当たると藍色に変わる黒髪に、人を誘惑する声。天は二物を与えないと言うが、彼には数え切れないほどの褒美がなされていると思う。
そんな彼だから、同じベッドに僕みたいなのがこうして毎晩一緒に寝てるなんてネズミのファンに知れたら羨ましがられるか殺される。でもちょっとした優越感があったりする。
紫苑はふふっと笑った。
「何がおかしい?」
「あ……ネズミ、起きてたの?」
「あんたの熱い視線でな」
彼は目を瞑ったまま口元だけニヤリと笑い、紫苑は頬をほんのりと紅く染めた。
「男の寝顔に欲情した?」
「まさか」
「あ、そう」
ネズミはつまらなそうに吐き捨ててシーツを頭まですっぽりと被る。
「触れたいとは思った」
ぽつりと紫苑がごちてネズミは再び顔を出した。
「ばか。それを欲情って言うんだ」
「そうなの?」
「そうだよ」
「じゃぁ、触っていい?」
正直、理由などどうでも良い。透き通る肌に触りたかった。シーツの中にしまってあった手を伸ばす。とたん、ネズミがスッと目を開き、その灰色の瞳に紫苑の姿を捕らえた。射抜く様な視線に思わず手が止まる。
「いいけど、責任とれよ」
「責任?」
「そうだな、先に言っておこう。触れた瞬間に俺はあんたを襲う」
襲う?何故?
紫苑はぽかんと呆けた顔をした。
「今度は僕のどこに傷をつけるのさ」
ネズミは何かあれば度々ナイフを紫苑にあてがう。つけられた傷はすぐに消えるが記憶は消えない。別にそれで心が傷ついた事はないが、薄くついた傷はピリピリと痛痒いのでそれが嫌だった。
「傷なんてつけない。……あ、でもつくかも」
紫苑を余所にネズミは一人でぶつぶつと言っている。その隙に紫苑は指先をネズミの頬に滑らせた。互いの目が合う。
「触ったな」
「触ったよ」
ネズミがクスリと笑い、紫苑もつられて笑った。
伸ばした腕の手首を捕み紫苑を仰向けに抑えつける。ネズミはおもむろにその身体に跨がった。
「ネズミ」
「ん?」
「君が言いたいこと、何となく分かったけど」
「へぇ、珍しい」
「これじゃどっちが責任をとるべきか分からなくなる」
ネズミが笑った。
「女だったら何かあれば責任とるさ。あんたは男だから大丈夫だ」
言いながら紫苑の首筋に噛みつく。生温かい舌が薄い皮膚を這いずり耳の後ろまで舐め上げる。震えた吐息がネズミの髪にかかった。
指を絡め合い、顔を見合わせキスをする。
「──…、ン」
深く、深く、互いの口内を貪るようにキスをした。重なる身体の衣服越しから熱が伝わり自然と気分が高ぶっていく。
「君を全身で感じられるなんて嬉しくてたまらないな」
本当にそう思う。
「光栄でございます陛下」
そう言って微笑む君も、やっぱり美しかった。
END.
(僕は君を思いながら今を生きています。)
title by 確かに恋だった
僕は君を思いながら今を生きています
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暗闇の中、目が覚めた。光の入らない地下室は人の手で灯りをつけない限り朝でも夜でも真っ暗だ。しかし毎日暮らしていれば馴れてくるもので、物の形や位置。そして隣で眠る彼の表情までもよく見える。
どの角度からいつ見ても、やっぱりネズミの顔は綺麗で美しい。綺麗とか美しいだなんて本来女の人に使うべき言葉なんだろうけど、ネズミに対してはきっと誰もが口にしてしまうのではないだろうか。思わず見惚れてため息が出るなんて事はしょっちゅうだ。
加えて高い身長とバランスのとれた体格、滑らかな手に長い指、光に当たると藍色に変わる黒髪に、人を誘惑する声。天は二物を与えないと言うが、彼には数え切れないほどの褒美がなされていると思う。
そんな彼だから、同じベッドに僕みたいなのがこうして毎晩一緒に寝てるなんてネズミのファンに知れたら羨ましがられるか殺される。でもちょっとした優越感があったりする。
紫苑はふふっと笑った。
「何がおかしい?」
「あ……ネズミ、起きてたの?」
「あんたの熱い視線でな」
彼は目を瞑ったまま口元だけニヤリと笑い、紫苑は頬をほんのりと紅く染めた。
「男の寝顔に欲情した?」
「まさか」
「あ、そう」
ネズミはつまらなそうに吐き捨ててシーツを頭まですっぽりと被る。
「触れたいとは思った」
ぽつりと紫苑がごちてネズミは再び顔を出した。
「ばか。それを欲情って言うんだ」
「そうなの?」
「そうだよ」
「じゃぁ、触っていい?」
正直、理由などどうでも良い。透き通る肌に触りたかった。シーツの中にしまってあった手を伸ばす。とたん、ネズミがスッと目を開き、その灰色の瞳に紫苑の姿を捕らえた。射抜く様な視線に思わず手が止まる。
「いいけど、責任とれよ」
「責任?」
「そうだな、先に言っておこう。触れた瞬間に俺はあんたを襲う」
襲う?何故?
紫苑はぽかんと呆けた顔をした。
「今度は僕のどこに傷をつけるのさ」
ネズミは何かあれば度々ナイフを紫苑にあてがう。つけられた傷はすぐに消えるが記憶は消えない。別にそれで心が傷ついた事はないが、薄くついた傷はピリピリと痛痒いのでそれが嫌だった。
「傷なんてつけない。……あ、でもつくかも」
紫苑を余所にネズミは一人でぶつぶつと言っている。その隙に紫苑は指先をネズミの頬に滑らせた。互いの目が合う。
「触ったな」
「触ったよ」
ネズミがクスリと笑い、紫苑もつられて笑った。
伸ばした腕の手首を捕み紫苑を仰向けに抑えつける。ネズミはおもむろにその身体に跨がった。
「ネズミ」
「ん?」
「君が言いたいこと、何となく分かったけど」
「へぇ、珍しい」
「これじゃどっちが責任をとるべきか分からなくなる」
ネズミが笑った。
「女だったら何かあれば責任とるさ。あんたは男だから大丈夫だ」
言いながら紫苑の首筋に噛みつく。生温かい舌が薄い皮膚を這いずり耳の後ろまで舐め上げる。震えた吐息がネズミの髪にかかった。
指を絡め合い、顔を見合わせキスをする。
「──…、ン」
深く、深く、互いの口内を貪るようにキスをした。重なる身体の衣服越しから熱が伝わり自然と気分が高ぶっていく。
「君を全身で感じられるなんて嬉しくてたまらないな」
本当にそう思う。
「光栄でございます陛下」
そう言って微笑む君も、やっぱり美しかった。
END.
(僕は君を思いながら今を生きています。)
title by 確かに恋だった
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