短編(sss)
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内緒のキスをちょうだい
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ネズミは目を覚ました。寝返りを打ち、隣で眠る紫苑を見つめる。彼が僅かに身じろぎすると白い髪がぱらりと顔にかかり肌を隠した。
指先をのばし頬を撫でる。
警戒心など持ち合わせていない安心しきった寝顔。もしこれが自分ではない他人でも彼は変わらないだろう。自分なら触(さわ)られる前に飛び退いてナイフを片手に臨戦態勢をとるのに。
育ってきた環境の違いでこんなにも人は違いがでるのだから恐ろしいものだ。
ネズミの指先は頬から顎へ、唇へとなめらかに滑っていく。紅唇をゆったりとなぞり手を止めた。
紫苑の目蓋が微かに動いた。
「ネズミ…?」
消え入りそうな声で呼ばれる。
瞳が開かれる前にそっと目蓋を手の平で覆(おお)った。紫苑に顔を近づけ、密やかに囁く。
「何もございません陛下。ごゆるりと、夢の最中へ……」
朦朧(もうろう)とした意識を彼方へ誘う、甘くとろりとした声だった。
柔らかな唇にキスを落とし 押さえていた手をよける。再び頬を撫でると、紫苑の細い指がその手に絡んで 掴むことなく滑り落ちた。
朝まで彼が目覚めぬように。
安息の地を今此処に──…。
何かを求め、すがるようにして落ちた指先を ネズミは愛おしげに包み込んだ。
END.
(眠り姫はキスされたことを知らない)
内緒のキスをちょうだい
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ネズミは目を覚ました。寝返りを打ち、隣で眠る紫苑を見つめる。彼が僅かに身じろぎすると白い髪がぱらりと顔にかかり肌を隠した。
指先をのばし頬を撫でる。
警戒心など持ち合わせていない安心しきった寝顔。もしこれが自分ではない他人でも彼は変わらないだろう。自分なら触(さわ)られる前に飛び退いてナイフを片手に臨戦態勢をとるのに。
育ってきた環境の違いでこんなにも人は違いがでるのだから恐ろしいものだ。
ネズミの指先は頬から顎へ、唇へとなめらかに滑っていく。紅唇をゆったりとなぞり手を止めた。
紫苑の目蓋が微かに動いた。
「ネズミ…?」
消え入りそうな声で呼ばれる。
瞳が開かれる前にそっと目蓋を手の平で覆(おお)った。紫苑に顔を近づけ、密やかに囁く。
「何もございません陛下。ごゆるりと、夢の最中へ……」
朦朧(もうろう)とした意識を彼方へ誘う、甘くとろりとした声だった。
柔らかな唇にキスを落とし 押さえていた手をよける。再び頬を撫でると、紫苑の細い指がその手に絡んで 掴むことなく滑り落ちた。
朝まで彼が目覚めぬように。
安息の地を今此処に──…。
何かを求め、すがるようにして落ちた指先を ネズミは愛おしげに包み込んだ。
END.
(眠り姫はキスされたことを知らない)
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